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アトピー性皮膚炎の診療で役立つTIPS

口唇の乾燥アトピー性皮膚炎の患者さんで「唇が乾燥する」という訴えは多いです。それは口唇炎の症状なのですが、リップなどを長い期間使っても治らない患者さんも多数います。なぜなら「唇が乾燥する」状態の患者さんは、唇をなめるクセがあることが多いからです。子供の患者さんに多いのですが、唇やその周りをずっとなめ回すことを繰り返していると、周囲が輪を描くように赤くなります。これを「舌なめずり皮膚炎」と言います。これが長期間続くと口の周囲に色素沈着を来すこともあります。口唇のシミ唇が長い期間荒れている方は、点々とシミができてきます。“labial melanotic macules”や「口唇メラノーシス」と言われたりします。アジア人に多いとされています1)。アトピー性皮膚炎の発症時期が早い患者さんに多い傾向があり、アトピー性皮膚炎があっても、IgEが高い患者さんに唇の色素沈着が多い傾向があります2)。口唇トラブルへの治療の仕方〔口唇炎の治療〕口唇炎に関してはステロイド外用剤を中心に治療していきます。ワセリンを中心とした保湿も有効です。乾燥した感覚がある間は改善するまでステロイド外用剤を使ってみてください。しっかり治った良い状態をワセリンや患者さんに合ったリップでキープすることも大切です。〔口唇のシミの治し方〕口唇の色素沈着にはQスイッチルビーレーザーを使用します。痛み止めのクリームを塗り、レーザーを患部に照射します。治療の所要時間は数分で、1回の治療で終了することが多いです。1)Aljasser MI, et al. J Dermatol. 2019;23:86-89.2)Kang IH, et al. Int J Dermatol. 2018;57:817-821.

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外用薬【アトピー性皮膚炎の治療】

外用薬ではステロイド、タクロリムス、デルゴシチニブ、ジファミラストを用います。外用薬はFTU(finger tip unit)を考えて使用します。やさしく、すりこまないように塗ることが大切です。私はステロイド外用薬を使わなくても良い状態まで改善させることを、治療目標の1つにしていますが、ステロイドを完全に止めてしまうのではなく、継続して治療することで再燃を防ぐことに心がけています。デルゴシチニブ(商品名:コレクチム)デルゴシチニブは、2020年6月24日から使用できる外用薬であり、プロトピック(タクロリムス)以来約20年ぶりの新発売です。ヤヌスキナーゼ阻害薬という、新しいメカニズムの外用薬で、発売から1年が経過し、小児用の0.25%製剤が発売されました。デルゴシチニブは、さまざまな種類のJAKを抑える働きがあります。その効果として、IL-4/13を代表とするサイトカインを抑えることや皮膚バリア機能を回復させることに役立つという基礎研究データがあります1)。デルゴシチニブの安全性について、副作用は比較的少なく、長期投与による皮膚萎縮、多毛などといったステロイドの弱点はまだありません。適用部位の刺激感はまれにありますが、使えなくなるほどのヒリヒリ感は経験しません。また、第III相臨床試験でも副作用発現頻度は、19.6%(69/352例)であり、主な副作用として適用部位毛包炎3.1%(11/352例)、適用部位ざ瘡2.8%(10/352例)、適用部位刺激感2.6%(9/352例)などが報告されています。デルゴシチニブの用法・用量通常、成人には、1日2回、適量を患部に塗布する。なお、1回当たりの塗布量は5gまで、体表面積の30%までとする。そのほか、生後6ヵ月以上のアトピー性皮膚炎の小児にも適応がとれ、小児には2021年6月21日に発売された0.25%製剤の使用が望ましいとされています。ただし、妊婦、授乳婦への使用は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること」と注意も記載されています。デルゴシチニブの薬価0.25%:1g 139.70円0.5%:1g 144.9円〔ワンポイント〕効果の強さに関してはストロングクラス、すなわちベタメタゾンやタクロリムスと同等程度と位置付けられ、症状がかなり強く、急速に寛解導入したい場合には向いていないことがあります。一方、デルゴシチニブの副作用は比較的少なく、長期投与によるものがないため、プロアクティブ療法などでの使用に向いています。また、光線療法、シクロスポリン、デュピルマブとの併用が可能で、ステロイド外用薬の副作用があるときには、光線療法と併用することでステロイド外用薬の減薬に期待できます。1)Wataru Amano W, et al. J Allergy Clin Immunol. 2015;136:667-677.2)コレクチム軟膏 電子添文(2023年1月改訂(第6版))ジファミラスト(商品名:モイゼルト軟膏)ジファミラストは、2022年6月1日に発売されたホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤の新しい外用薬です。PDE4阻害薬は、細胞の中の細胞内のサイクリックAMP(cAMP)濃度を回復させる薬で、cAMP濃度が回復することで免疫細胞の活性化が抑えられます。また、ジファミラストの第III相臨床試験結果について、投与開始後4週間でInvestigator’s Global Assessment(IGA)が0または1かつベースラインから2点以上減少を達成した患者さんの割合は、38.46%とプラセボ(12.64%)に比べて有意に高く1)、小児では0.3%製剤で44.6%、1%製剤で47.1%といずれもプラセボ(18.1%)に比べて有意に高い効果を得ていました2)。病勢の指標であるeczema area andseverity index(EASI)が50%減少した指標であるEASI50は、4週間の投与で58.24%とプラセボ(25.82%)に比べ、有意に高くなりました。同様にEASI75は42.86%(プラセボ13.19%)、EASI90は24.73%(プラセボ5.49%)でした。4週後の平均EASI改善率は−49.1%(プラセボ−10.5%)でした1)。ジファミラストの安全性としては、色素沈着障害(1.1%)、毛包炎、そう痒症、膿痂疹、ざ瘡、接触皮膚炎が記載されています3)が、明らかに多い副作用は認められませんでした1,2)。ジファミラストの用法・用量15歳以降は1%製剤を使用します。14歳以下は0.3%か1%製剤を使用します。通常、成人には1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。小児は0.3%製剤を1日2回、適量を患部に塗布します。また、症状に応じて、1%製剤を1日2回、適量を患部に塗布することができます3)。ジファミラストの薬価0.3%:1g 142.00円1%:1g 152.10円〔ワンポイント〕使用感について患者さんからの評価は良く、塗った際の刺激感を訴えられることはありませんでした。効果に関しても総じて好印象でした。1)Saeki H, et al. J Am Acad Dermatol. 2022;86:607-614.2)Saeki H, et al. Br J Dermatol. 2022;186:40-49.3)モイゼルト軟膏 電子添文(2023年6月改訂(第3版))

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経口薬【アトピー性皮膚炎の治療】

経口JAK阻害薬では、ウパダシチニブ、バリシチニブ、アブロシチニブがアトピー性皮膚炎の治療薬として使用できるようになり、重症の患者さんにも治療が届きやすくなりました。時にシクロスポリンを用いることもありますが、長期間の使用で血圧上昇や腎臓への負担がかかりますので短期間の使用が望ましいです。ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)ウパダシチニブはJAK1を阻害する薬剤です。通常は15mg錠を1日1回1錠、毎日服用しますが、患者さんの状態によっては7.5mgへの減量が可能です。アトピー性皮膚炎に限って倍量の30mgを処方することができます。ウパダシチニブの薬価7.5mg:2594.6円/錠15mg:5089.2円/錠30mg:7351.8円/錠バリシチニブ(商品名:オルミエント)バリシチニブはJAK1/JAK2を阻害する薬剤で、皮膚科領域ではアトピー性皮膚炎と円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合限定)に適応があります。用量は4mgを1日1回経口投与する。状態に応じ適宜減量となっています。相互作用がありますので、プロベネシドを内服している患者さんは減量が望ましいとされています。バリシチニブの薬価2mg:2705.9円/錠4mg:5274.9円/錠アブロシチニブ(商品名:サイバインコ)アブロシチニブはウパダシチニブと同じくJAK1を阻害する薬剤です。50mg、100mg、200mgの3剤形があり、通常用量の100mgから増やしたり減らしたりできます。状況に応じて柔軟な処方ができるのは利点です。適応はアトピー性皮膚炎のみになります。アブロシチニブの薬価50mg:2587.4円/錠100mg:5044円/錠200mg:7566.1円/錠〔アトピー性皮膚炎でのJAK阻害薬処方の注意点〕診療ガイドラインでは、次のように定められています。JAK阻害薬の内服は、「事前に十分な外用薬などの治療を行っていても難治であった方」が対象となります。今まで何もやっていない方であれば6ヵ月程度はガイドラインに沿った外用薬による治療を行い、それでも改善しない場合に使用します。投与の要否にあたっては、以下に該当する患者であることを確認する必要があります。(1)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインを参考に、アトピー性皮膚炎の確定診断がなされている。(2)抗炎症外用薬による治療では十分な効果が得られず、一定以上の疾患活動性を有する、または、ステロイド外用薬やカルシニューリン阻害外用薬に対する過敏症、顕著な局所性副作用もしくは全身性副作用により、これらの抗炎症外用薬のみによる治療の継続が困難で、一定以上の疾患活動性を有する成人アトピー性皮膚炎患者である。a)アトピー性皮膚炎診療ガイドラインで、重症度に応じて推奨されるステロイド外用薬(ストロングクラス以上)やカルシニューリン阻害外用薬による適切な治療を直近の6ヵ月以上行っている。b)以下のいずれにも該当する状態。IGAスコア3以上EASIスコア16以上、または顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する(目安として頭頸部のEASIスコアが2.4以上)体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合が10%以上同時に、投与できる施設も決められております。次に掲げる医師要件のうち、本製剤に関する治療の責任者として配置されている者が該当する施設です。ア)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に、5年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること。イ)医師免許取得後2年の初期研修を終了した後に6年以上の臨床経験を有していること。うち、3年以上は、アトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っていること。また、日本皮膚科学会でも届出制度を作っています。乾癬の生物学的製剤のように承認制度は設けていませんが、薬剤の特性上、下記の要件を満たした上で届出した上で、使用することになっています。1)皮膚科専門医が常勤していること2)乾癬生物学的製剤安全対策講習会の受講履歴があること3)薬剤の導入および維持において近隣の施設に必要な検査をお願いできること

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注射薬【アトピー性皮膚炎の治療】

デュピルマブ(商品名:デュピクセント)デュピルマブは、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体の治療薬で、2018年から使用できるようになったアトピー性皮膚炎の治療薬です。2週間に1回注射をします。生物学的製剤であり、生体が作る抗体タンパクを人工的に作成しアトピーを悪化させる活性物質にピンポイントで作用させることを目的としています。デュピルマブの対象患者ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤などの抗炎症外用剤による適切な治療を一定期間施行しても、十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者。デュピルマブの注射の種類注射器型のシリンジと自己注射に向いているペンの2種類。デュピルマブの特徴アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみに大きく関わる蛋白であるインターロイキン4(IL-4)、IL-13の働きを抑えます。具体的には、IL-4受容体α(IL-4Rα)をブロックする薬です。ブロックすることでアトピー性皮膚炎のかゆみ、皮膚炎症状が改善します。また、IL-4、13はフィラグリンという皮膚のバリア機能を保つための重要な蛋白を作りにくくさせることが知られており、これを抑制することで皮膚バリア機能の回復も期待できます。デュピルマブの用法・用量15歳以上の成人の初回投与は600mg(2本)です。以後、2週間おきに300mg(1本)ずつ注射します。初診時は問診と診察で適応があるかどうかの確認を行います。なお、初診時にデュピルマブの投与はできません。2023年9月25日より生後6ヵ月以上の小児に適応が追加されました。また、2023年12月18日より200mgシリンジが発売されました。小児では体重ごとに用法が変わります。具体的には5kg以上15kg 未満:1回 200mgを4週間隔、15kg以上30kg未満:1回 300mgを4週間隔、30kg以上60kg未満:初回に400mg、その後は1回 200mgを2週間隔、60kg以上:初回に600mg、その後は1回 300mgを2週間隔(成人と同様の用法、用量)で投与します。デュピルマブの薬価300mgシリンジ:5万8,593円300mgペン:5万8,775円200mg シリンジ:4万3,320円〔ワンポイント〕高額療養費制度の勧め:薬剤費が高額なため、高額療養費制度を利用されることを強くお勧めします。収入や年齢により適応となる場合やそうでない場合があります。自己注射をする場合、最大6本の注射薬を処方することができ、一部の方には高額療養費制度を用いて医療費の負担軽減が可能です。デュピクセント皮下注 電子添文(2023年9月改訂(第6版))ネモリズマブ(商品名:ミチーガ)ネモリズマブは、ヒト化抗ヒトIL-31受容体A(IL-31RA)モノクローナル抗体です。IL-31は、かゆみに重要な役割を果たすサイトカインで、主にTh2細胞から作られます。ネモリズマブは、アトピー性皮膚炎に伴うかゆみを改善する新しい発想の治療薬です。IL-31とアトピー性皮膚炎、そしてかゆみIL-31は、Th2細胞から産生され、アトピー性皮膚炎の皮膚病変部では、過剰に産生されていることが知られています1)。また、血清中のIL-31の濃度はアトピー性皮膚炎患者では上昇しており、病勢と相関していることが知られています2)。IL-31は神経線維が成長することを促進し、かゆみを増強する働きもあります3)。IL-31の受容体は神経線維や表皮角化細胞に分布しています。また、IL-31はバリア低下にも働くことが知られています4)。そして、この受容体は、感覚情報の中継点として機能する脊髄後根神経節に多く発現しており、かゆみを脳に伝えることにも深く関わっています5)。つまり、IL-31はかゆみに関係する神経を刺激して脳にそのかゆみを伝え、そして神経の成長を助けてかゆみを起こしやすくする働きがあります。この受容体は、IL-31RAとオンコスタチンM受容体(OSMR)が合わさってできており、ネモリズマブはそのうちIL-31RAに結合して働きを抑えます。ネモリズマブの効果第III相臨床試験の結果6)より、かゆみに関しては、1週目より有意な差がみられています。速やかなかゆみの改善という点を期待したいところです。ネモリズマブの副作用電子添文7)によると、アトピー性皮膚炎(18.5%)、皮膚感染症(ヘルペス感染、蜂巣炎、膿痂疹、二次感染など)(18.8%)が頻度の多い副作用です。ウイルス、細菌、真菌などによる重篤な感染症が3.4%に認められ、アナフィラキシー(血圧低下、呼吸困難、蕁麻疹など)などの重篤な過敏症が0.3%報告されています。使用上の注意ネモリズマブはかゆみを治療する薬剤であり、かゆみが改善した場合も含め、投与中はアトピー性皮膚炎に対して外用薬をはじめとした必要な治療を継続することが必要です。ネモリズマブはIgGという種類の抗体製剤ですので、胎盤や乳汁に移行することがあります。そのため、妊娠中や授乳中の投与は禁忌ではありませんが、治療上の有益性が投与の危険性を上回ると判断された場合にのみ使用することになっています。ネモリズマブの適応13歳以上のアトピー性皮膚炎に伴うそう痒(既存治療で効果不十分な場合に限る)となっています。ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤などの抗炎症外用剤および抗ヒスタミン剤などの抗アレルギー剤による適切な治療を一定期間施行しても、そう痒を十分にコントロールできない患者さんが対象です。ネモリズマブの用法・用量ネモリズマブとして60mgを4週に1回皮下注射で投与します。在宅自己注射も可能です。ネモリズマブの薬価60mgシリンジ:11万7,181円1)Guttman-Yassky E, et al: J. Allergy Clin. 2019;143:155-172.2)Ezzat M H M, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2011;25:334-339.3)Feld M, et al. J Allergy Clin Immunol. 2016;138:500-508.4)Cornelissen C, et al. J Allergy Clin Immunol. 2012;129:426-433.5)Furue M, et.al. Allergy. 2018;73:29-36.6)Kabashima K, et al. N Engl J Med. 2020;383:141-150.7)ミチーガ皮下注 電子添文(2023年11月改訂(第3版))トラロキヌマブ(商品名:アドトラーザ)トラロキヌマブは、IL-13を選択的に阻害するヒト免疫グロブリンIgG4モノクローナル抗体であり、IL-13がその受容体に結合するのをブロックします。IL-13はアトピー性皮膚炎の病変ができ、慢性化していくのに重要な働きをしますので、IL-13をブロックするのは合理的と考えられます。2022年12月に製造販売承認を取得、2023年3月に薬価基準に収載されました。2023年9月26日、アドトラーザ皮下注150mgシリンジが発売されました。IL-13の働きアトピー性皮膚炎の病変が持続するために重要な働きをするのが、Th2細胞というリンパ球です。Th2細胞は、IL-13やIL-4を産生することで皮膚のバリア機能低下、抗菌ペプチドの産生低下、IL-31というかゆみに関連するサイトカインの産生などを起こしてアトピー性皮膚炎の特徴的な病変を作ります。IL-13はIL-4と似た働きをしていますが、アトピー性皮膚炎の病態が作られる上で、IL-4よりIL-13のほうがより中心的な働きをしていることが知られています。また、線維化に関しても重要な役割を果たすことが解明され、アトピー性皮膚炎の慢性病変では苔癬化という皮膚がゴワついた感じになる病変ができますが、それにもIL-13の働きが重要であることが判明しています。トラロキヌマブの効果ステロイド外用剤併用下で、16週間トラロキヌマブを投与することで皮膚炎の重症度指標であるEASIが75%減少した患者割合であるEASI75は56.0%でした。これに対し外用薬だけの患者は35.7%でした。トラロキヌマブの適応従来の治療(ステロイド外用剤など)で十分な効果が得られない15歳以上のアトピー性皮膚炎患者トラロキヌマブの用法・用量トラロキヌマブはシリンジ製剤で、初回4本、その後2週間隔で2本を皮下注射します。現段階では在宅自己注射はできません。トラロキヌマブの薬価150mgシリンジ:2万9,295円アドトラーザ皮下注 電子添文(2023年9月改訂(第2版))

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重症ARDS、ECMO中の腹臥位は無益/JAMA

 重症急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で静脈脱血・静脈送血の体外式膜型人工肺(VV-ECMO)による治療を受けている患者において、腹臥位療法は仰臥位療法と比較し、ECMO離脱成功までの期間を短縮しなかった。フランス・ソルボンヌ大学のMatthieu Schmidt氏らが、同国14施設の集中治療室(ICU)で実施した医師主導の無作為化並行群間比較試験「PRONECMO試験」の結果を報告した。腹臥位療法は重症ARDS患者の転帰を改善する可能性が示唆されているが、VV-ECMOを受けているARDS患者に対して、仰臥位療法と比較し臨床転帰を改善するかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。ECMO施行48時間未満の重症ARDS患者を無作為化、60日以内のECMO離脱成功を比較 研究グループは2021年3月3日~12月7日に、ICUにてVV-ECMO施行開始から48時間未満の18歳以上75歳未満の重症ARDS患者を、腹臥位ECMO群または仰臥位ECMO群に1対1の割合に無作為に割り付けた。 腹臥位ECMO群では、腹臥位療法の早期中止基準を満たさない限り、最初の4日間に16時間の腹臥位を少なくとも4回行い、仰臥位ECMO群ではECMO施行中の腹臥位を60日目まで禁止した。 主要アウトカムは、無作為化後60日以内のECMO離脱成功までの期間。離脱成功は、ECMO中止後30日間、ECMOまたは肺移植を受けず生存した場合と定義した。副次アウトカムは、無作為化後90日時点の全死亡、ECMOおよび人工呼吸器非装着期間、ICU在室および入院期間などであった。また、有害事象(無作為化後7日間の褥瘡を含む)および重篤な有害事象についても評価した。腹臥位療法と仰臥位療法で、主要アウトカムおよび副次アウトカムに有意差なし 適格性を評価された250例のうち170例が無作為化され(腹臥位ECMO群86例、仰臥位ECMO群84例)、全例が追跡調査を完了した。 170例の年齢中央値は51歳(四分位範囲[IQR]:43~59)、女性は60例(35%)。170例中159例(94%)は、ARDSの主な原因が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)肺炎であった。ECMO開始前に164例(96%)が腹臥位で、呼吸器系コンプライアンス中央値は15.0mL/cm H2O(IQR:10.7~20.6)であった。 無作為化後60日以内にECMO離脱に成功した患者は、腹臥位ECMO群86例中38例(44%)、仰臥位ECMO群84例中37例(44%)であった(群間リスク差:0.1%[95%信頼区間[CI]:-14.9~15.2]、部分分布ハザード比:1.11[95%CI:0.71~1.75]、p=0.64)。 また、無作為化後90日以内に腹臥位ECMO群で44例(51%)、仰臥位ECMO群で40例(48%)が死亡し(絶対群間リスク差:2.4%、95%CI:-13.9~18.6、p=0.62)、90日以内のECMO装着期間(日数)の平均値はそれぞれ27.51および32.19(絶対群間差:-4.9、95%CI:-11.2~1.5、p=0.13)であり、すべての副次アウトカムで両群間に有意差はなかった。 重篤な有害事象については、心停止の発生率は腹臥位ECMO群より仰臥位ECMO群で有意に高かったが(3.5% vs.13.1%、絶対群間リスク差:-9.6%[95%CI:-19.0~-0.2]、相対リスク:0.27[95%CI:0.08~0.92]、p=0.05)、それ以外の重篤な有害事象の発現率は両群で同等であり、両群とも不測のECMO脱血管、予定外の抜管および重度の喀血の発生は認められなかった。

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皮膚疾患へのJAK阻害薬、心血管リスクを増加させず

 無作為化比較試験35件の皮膚疾患患者2万例超を対象としたメタ解析において、JAK阻害薬の使用はプラセボ/実薬対照と比較して、主要心血管イベント(MACE)および全死亡、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク増加と関連しなかった。米国・New York University Grossman School of MedicineのJenne P. Ingrassia氏らが報告した。JAK阻害薬は、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症などの皮膚疾患に対する有効な治療選択肢であるが、米国食品医薬品局(FDA)が経口・外用JAK阻害薬について、MACE、VTE、重篤な感染症、悪性新生物、死亡のリスク増加に関する枠囲み警告(boxed warning)を付している。しかし、この枠囲み警告は関節リウマチ患者を対象とした「Oral Rheumatoid Arthritis Trial(ORAL)Surveillance試験」の結果に基づくもので、皮膚疾患患者で同様の関連が観察されるかは明らかになっていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年11月1日号掲載の報告。 研究グループは、皮膚疾患患者におけるJAK阻害薬とMACE、全死亡、VTEの関連を評価するシステマティック・レビューおよびメタ解析を実施した。 データベース開始日~2023年4月1日の期間にPubMed、ClinicalTrials.govに登録された研究を検索し、皮膚疾患に対してJAK阻害薬を用いた第III相無作為化比較試験を抽出した。JAK阻害薬はFDA承認または承認申請中、あるいはEUや日本で承認されている薬剤とした。対照群の設定されていない試験、ケースレポート、観察研究、レビューに関する論文は除外した。 システマティック・レビューおよびメタ解析は、PRISMAガイドラインに則って実施した。有害事象はランダム効果モデルとDerSimonian-Laird法を用いてオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出して評価した。2人の独立した著者によりデータの抽出と質的評価が行われた。 主要アウトカムは、MACEおよび全死亡の複合、VTEであった。 主な結果は以下のとおり。・システマティック・レビューおよびメタ解析は、無作為化比較試験35件とその参加者2万651例を対象とした。・対象患者の平均年齢(標準偏差[SD])は38.5(10.1)歳、男性は54%であった。・平均追跡期間(SD)は、4.9(2.68)ヵ月であった。・MACEおよび全死亡の複合(OR:0.83、95%CI:0.44~1.57)、VTE(同:0.52、0.26~1.04)について、JAK阻害薬とプラセボ/実薬対照に有意差は認められなかった。

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ネモリズマブ、結節性痒疹のそう痒・皮膚病変を改善/NEJM

 ネモリズマブ単剤療法はプラセボとの比較において、結節性痒疹のそう痒と皮膚病変を有意に改善したことが、海外第III相二重盲検無作為化比較試験「OLYMPIA 2試験」で示された。結節性痒疹は、慢性の神経免疫疾患であり、重度のそう痒を伴い疾病負荷が大きいとされる。ネモリズマブは、インターロイキン(IL)-31受容体αを標的としたモノクローナル抗体で、結節性痒疹の発症に重要な経路を阻害する。第II相試験では、IL-31を介したシグナル伝達を阻害し、そう痒と皮膚病変の改善、Th2細胞(IL-13)とTh17細胞(IL-17)を介した免疫応答を抑制することが示されていた。本結果は、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のShawn G. Kwatra氏らによって、NEJM誌2023年10月26日号で報告された。 OLYMPIA 2試験は、9ヵ国68施設において実施され、18歳以上の中等度~重度の結節性痒疹患者が対象となった。登録は2020年9月~2021年11月に行われた。対象患者は、ネモリズマブ群(初回用量60mg、その後は30mgまたは60mg[ベースライン時の体重[90kg未満または90kg以上]に基づく]を4週ごとに16週間皮下注射)、プラセボ群へ無作為に2対1の割合で割り付けられた。 有効性の主要評価項目は、16週目のPeak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS、スコア範囲:0~10点、スコアが高いほど重度)に基づくそう痒の改善(PP-NRSスコアが4点以上低下)と、16週目のInvestigator's Global Assessment(IGA、スコア範囲:0~4点)に基づく奏効(IGAスコア0点[消失]または1点[ほとんど消失]かつベースラインから2点以上低下)であった。 主要な副次評価項目は以下の5つ。(1)4週目のPP-NRSスコアがベースラインから4点以上低下(2)4週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満(3)16週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満(4)4週目のsleep disturbance numerical rating scale(SD-NRS、スコア範囲:0~10点、スコアが高いほど重度)スコアがベースラインから4点以上低下(5)16週目のSD-NRSスコアがベースラインから4点以上低下 主な結果は以下のとおり。・合計274例が無作為化された(ネモリズマブ群183例、プラセボ群91例)。・16週目において、2つの主要評価項目に関して治療効果が示された。・16週目においてそう痒の改善を達成した患者の割合は、ネモリズマブ群56.3%、プラセボ群20.9%であり、ネモリズマブ群が有意に改善した(調整群間差:37.4パーセントポイント[95%信頼区間[CI]:26.3~48.5]、p<0.001)。・16週目においてIGAに基づく奏効を達成した患者の割合も、ネモリズマブ群37.7%、プラセボ群11.0%であり、ネモリズマブ群が有意に改善した(調整群間差:28.5パーセントポイント[95%CI:18.8~38.2]、p<0.001)。・5つの主要な副次評価項目について、いずれもネモリズマブ群が有意に改善した(いずれもp<0.001)。(1)4週目のPP-NRSスコアがベースラインから4点以上低下:41.0% vs.7.7%(2)4週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満:19.7% vs.2.2%(3)16週目の週間平均PP-NRSスコアが2点未満:35.0% vs.7.7%(4)4週目のSD-NRSスコアがベースラインから4点以上低下:37.2% vs.9.9%(5)16週目のSD-NRSスコアがベースラインから4点以上低下:51.9% vs.20.9%・主な有害事象(ネモリズマブ群で5%以上に発現)は、頭痛(ネモリズマブ群6.6%、プラセボ群4.4%)、アトピー性皮膚炎(それぞれ5.5%、0%)であった。

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デュピルマブによる皮膚T細胞性リンパ腫が疑われた患者の臨床・病理学的特徴

 日常診療でのアトピー性皮膚炎に対するデュピルマブの使用が増加して以降、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)やリンパ球浸潤が生じた症例が報告されているという。そこで、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのCeleste M. Boesjes氏らは、デュピルマブ治療中に臨床的にCTCLが疑われたアトピー性皮膚炎患者の臨床的および病理学的特徴の検討を目的として、後ろ向きケースシリーズ研究を実施した。その結果、デュピルマブによる治療を受けた患者は、特有の病理学的特徴を持ちながら、CTCLに類似した可逆的な良性のリンパ球集簇(lymphoid reaction:LR)が生じる可能性があることが示された。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年10月18日号掲載の報告。 本研究は、2017年10月~2022年7月にユトレヒト大学医療センターにおいて、デュピルマブによる治療中にCTCLが疑われた18歳以上のアトピー性皮膚炎成人患者14例を解析対象とした。臨床的特徴を評価し、治療前・中・後の皮膚生検のデータを収集して病理学的な再評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者14例の年齢中央値は56歳(四分位範囲[IQR]:36~66)、男性の割合は54.5%であった。・14例のうち3例は、CTCLの1つである菌状息肉症(MF)をデュピルマブによる治療前に有していたことが再評価により認められた。・残りの11例は、最終的にLRと診断された。・これらの患者はMF様症状を示したが、病理学的所見は異なり、表皮上層での小型の濃染性のリンパ球が点在し、CD4/CD8比の異常、CD30の過剰発現が認められたが、汎T細胞抗原(CD2、CD3、CD5)の消失はみられなかった。・臨床的な悪化までの期間の中央値は、4.0ヵ月(IQR:1.4~10.0)であった。・治療後の生検では、すべての患者でLRの完全な消失が示された。

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教えて先輩! 皮膚科診療の困りごと

日常診療で生じる疑問をエキスパートが解説「皮膚科の臨床」65巻6号(2023年5月臨時増刊号)「皮膚科の用語ってとにかくわかりにくい!」「臨床写真はスマートフォンで撮影してもいい?」など、日常で生じるそんな“もやもや”を、名だたる皮膚科のエキスパートたちがあなただけの特別指導医となってやさしく解説します。外来診療の基本からキャリアデザインまで網羅した、専攻医の先生におすすめの1冊。すでに専門医を取得している先生にとっても、新薬の使用法など最新知識のアップデートに役立つ内容が満載です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    教えて先輩! 皮膚科診療の困りごと定価8,800円(税込)判型B5判頁数360頁発行2023年5月編集「皮膚科の臨床」編集委員会電子版でご購入の場合はこちら

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10月20日 床ずれ予防の日【今日は何の日?】

【10月20日 床ずれ予防の日】〔由来〕「床(10)ずれ(20)」の語呂合わせならびに日本褥瘡学会の定期的な褥瘡有病率全国調査が10月に実施されることなどから、同学会が社会に「床ずれ(褥瘡)」に対する理解を深めてもらうことを目的に2016年に制定。同学会では、適切な予防・管理のための情報提供やさまざまな活動を実施している。関連コンテンツ思わぬ情報収集から服薬直前の抗菌薬の変更を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第3回 褥瘡治療 処方提案のポイントは?【コクシで学ぼう(1)】褥瘡(床ずれ)【患者説明用スライド】第11回 陰部・肛門部の痛み【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

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アトピー性皮膚炎の成人・小児はIBD高リスク

 アトピー性皮膚炎(AD)の小児および成人は、炎症性腸疾患(IBD)のリスクが高く、そのリスクは年齢、AD重症度、IBDの種類によって異なることが、米国・ペンシルベニア大学医学大学院のZelma C. Chiesa Fuxench氏らによる住民ベースのコホート研究で明らかにされた。これまで、ADとIBDの関連に関するデータは一貫性がなく、ADまたはAD重症度と潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)リスクとの関連を個別に検討した研究はほとんどなかった。著者は、「今回示された所見は、ADとIBDの関連について新たな知見を提供するものである。臨床医は、とくにADと消化器症状が合併する可能性がある患者に対してADの全身治療を行う際に、これらのリスクに留意する必要がある」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年8月30日号掲載の報告。 研究グループは、住民ベースのコホート研究を実施し、小児および成人のAD患者におけるIBD、UC、CDの新規発症リスクを調べた。AD患者1例に対し、背景因子をマッチングさせた対照を最大5例組み込んだ。AD重症度は治療の内容に基づき判断した。 AD患者および対照の情報は、英国の電子医療記録データベースHealth Improvement Networkの1994年1月1日~2015年2月28日のデータより取得し、2020年1月8日~2023年6月30日にデータ解析を行った。注目したアウトカムは、IBD、UC、CDの発症であった。ロジスティック回帰法を用いて、ADの小児および成人と対照を比較して、それぞれの発症リスクを調べた。 主な結果は以下のとおり。・小児コホートは、小児AD患者40万9,431例(軽症93.2%、中等症5.5%、重症1.3%)と、背景因子をマッチングさせた小児対照180万9,029例から構成された。年齢中央値は4~5歳(範囲:1~10歳)であり、男児が多く(対照93万6,750例[51.8%]、軽症ADが19万6,996例[51.6%]、中等症ADが1万1,379例[50.7%]、重症ADが2,985例[56.1%])、社会経済的状況は同様であった。・成人コホートは、成人AD患者62万5,083例(軽症65.7%、中等症31.4%、重症2.9%)と、背景因子をマッチングさせた成人対照267万8,888例から構成された。年齢中央値は45~50歳(範囲:30~68歳)であり、女性が多かった(対照144万5,589例[54.0%]、軽症ADが25万6,071例[62.3%]、中等症ADが10万9,404例[55.8%]、重症ADが1万736例[59.3%])。・完全補正後モデルにおいて、小児AD患者はIBDリスクが44%高く(ハザード比[HR]:1.44、95%信頼区間[CI]:1.31~1.58)、CDのリスクは74%高かった(同:1.74、1.54~1.97)。それらのリスクはADの重症度が高いほど増大した。・一方で、小児AD患者において、UCのリスク増大はみられなかった(HR:1.09、95%CI:0.94~1.27)。ただし、重症AD例ではリスクが高かった(同:1.65、1.02~2.67)。・成人AD患者は、IBDリスクが34%高く(HR:1.34、95%CI:1.27~1.40)、CDリスクは36%高く(同:1.36、1.26~1.47)、UCリスクは32%高かった(同:1.32、1.24~1.41)。それらのリスクはADの重症度が高いほど増大した。

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中等症~重症アトピー性皮膚炎、トラロキヌマブは高齢者にも有用

 65歳以上の中等症~重症アトピー性皮膚炎患者において、トラロキヌマブの忍容性および有効性は良好であることが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のJoseph F. Merola氏らが、第III相無作為化プラセボ対照試験「ECZTRA試験(1、2、3)」の事後解析により明らかにした。アトピー性皮膚炎を有する高齢者には、併存疾患やポリファーマシー、感染症(帯状疱疹など)のリスクが高いなど、特有の治療課題が存在するが、臨床試験のデータは限られていた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年8月23日号掲載の報告。 研究グループは、中等症~重症アトピー性皮膚炎に対するトラロキヌマブとプラセボを比較したECZTRA試験の事後解析を行い、65歳以上の患者における安全性と有効性を評価した。ECZTRA試験は、米国、カナダ、欧州、アジアで実施された。ECZTRA 1および2試験ではトラロキヌマブ単剤、ECZTRA 3試験ではトラロキヌマブ+ステロイド外用剤(必要に応じて)が投与された。 事後解析は2022年に行われ、ECZTRA 1、2、3試験の最長16週間の治療データをプールして安全性を評価。統計解析は、主要エンドポイントの事前規定に従い行った。有効性はECZTRA 1および2試験データの併合解析、ECZTRA 3試験データの解析とし、それぞれ16週時点で評価した。 主な結果は以下のとおり。・事後解析の対象はECZTRA 1、2、3試験においてトラロキヌマブによる治療を受けた高齢患者75例(女性42例[56%])、プラセボによる治療を受けた高齢患者29例であった。・有害事象(AE)を報告した患者の割合は、トラロキヌマブ群58.7%(44例)、プラセボ群58.6%(17例)で同等であった。・重篤なAEは、トラロキヌマブ群3例(4.0%)、プラセボ群3例(10.3%)に認められ、投与中止に至ったAEは、それぞれ4例(5.3%)、2例(6.9%)に認められた。・ECZTRA 1および2試験において、Eczema Area and Severity Index(EASI)の75%以上低下(EASI 75)達成率は、トラロキヌマブ群33.9%、プラセボ群4.8%であり、トラロキヌマブ群が有意に高率であった(p<0.001)。ECZTRA 3試験においては統計学的有意差が示されなかったが、同様の傾向が認められた。・今回の解析集団における安全性と有効性は、若年患者コホートと同様であった。 著者は本結果について、「今回の解析結果は、サンプルサイズが小さいという限界が存在し、高齢者への一般化はできない可能性がある」としつつ、「トラロキヌマブは65歳以上の中等症~重症アトピー性皮膚炎患者において、安全かつ有効であることが示唆された」とまとめた。

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熱傷の処置【漫画でわかる創傷治療のコツ】第12回

第12回 熱傷の処置《解説》今回は、熱傷の処置について解説します。熱傷の病態は、熱による皮膚の損傷とそれに続いて生じる炎症反応です。広範囲であれば全身性の炎症反応による多臓器障害を引き起こします。外来で処置できるものか、形成外科や皮膚科への紹介が必要なものか、さらに入院が必要なものか判断するのが重要です。ここでは主に外来で診ることができる範囲の熱傷について紹介します。熱傷深度と熱傷面積について判断できるようになりましょう!<熱傷の深度について>熱傷の深度の見極めにはUSA分類を用いるのが一般的です(図1)。深度によって局所の治療方法が変わります。主に症状や肉眼所見で推定しますが、精度の高い検査としてレーザードプラ血流計測法やビデオマイクロスコープが用いられたり、補助的な診断法として針刺法や抜毛法が用いられたりすることがあります。一般外来で診ることができるのは浅逹性II度熱傷までと考え、それ以上の深度の熱傷は形成外科や皮膚科へ紹介しましょう。図1画像を拡大するI度熱傷(EB)組織障害が表皮に留まり真皮に及ばないもの。局所の発赤、熱感、疼痛が主症状。→治療はステロイド軟膏(ワセリンのみ、創傷被覆材)による2~3日の経過で改善する。II度熱傷:真皮まで及ぶものを2つに分類浅逹性(SDB)-組織損傷が真皮の浅層に留まるもの。水疱形成がみられる。真皮深層の血流が保たれており、水疱基底部の真皮色調がピンク色や赤色を呈する(水疱は無理に破かないで!)。-真皮内の知覚神経受容体が刺激されるため極めて疼痛が強い。-毛根、汗腺、脂腺などの皮膚付属器が多数温存される。→治療は保存的治療(軟膏治療、創傷被覆材)で2週間以内にほとんど瘢痕を残さず上皮化する。深達性(DDB)-組織損傷が真皮の深層に至るもの。真皮の血行が障害されるため、水疱基底部は白色を呈する。-知覚神経受容体も損傷されるため、知覚は減退し疼痛も少ない。-皮膚付属器は温存されないことが多い。→上皮化までに3週間以上かかる。治療後に肥厚性瘢痕を形成する。→生命予後に影響を与える広範囲熱傷や機能障害が懸念される手や顔には手術を選択する。III度熱傷(DB)熱による損傷が皮膚全層に及ぶ。創面皮膚は乾燥、灰白色〜黄褐色を呈する。知覚は消失する。→上皮化は生じないため、極小範囲以外では壊死組織の切除と植皮(手術療法)が必要となる。<熱傷面積(%TBSA;%total body surface area)について>手掌法、9の法則(小児は5の法則)、Lund and Browderの法則があります(図2、3)。外来で簡易的にできるのは手掌法と9の法則(5の法則)でしょう。図2画像を拡大する図3画像を拡大する15%を超える場合の受け入れは皮膚科や形成外科など、熱傷の全身管理が可能な施設に依頼します。と言っても15%は外来で診ることができるギリギリの範囲です。実際は数%でも十分広範囲なので、近くに形成外科や皮膚科がある場合は早めに相談しましょう!熱傷深度、熱傷面積は受傷時の診断は経過によって変化していくことが多いため、毎回再度診断します。感染兆候、深度や面積の進行がある場合は、外科的なデブリードマンが必要になることもあるため、形成外科や皮膚科に紹介しましょう。<重症度について(予後指数)>どの施設で加療を行うかの基準としてBIやArtsの重症度判定があります。搬送医療機関の選定や治療方法の選択に必要です。BI:III度熱傷の体表に占める割合とII度熱傷の体表に占める割合を1/2にした数値との和で、目安として体表の15%以上がII度以上の熱傷を被ったら補液を伴う入院管理が必要。Artsの重症度判定:重症熱傷(熱傷センターなど熱傷専門施設のある総合病院に入院)-30%以上のII度熱傷-10%以上もしくは顔面、手足などの特殊部位のIII度熱傷-気道熱傷、広範囲軟部損傷、骨折などの合併症を伴う電撃傷中等度熱傷(形成外科のある一般総合病院に入院)-15~30%のII度熱傷-10%以下のIII度熱傷(顔、手足を除く)軽症熱傷(形成外科を有する外来治療施設を受診)-15%以下のII度熱傷-2%以下のIII度熱傷そのほか、皮膚科や形成外科に紹介すべき熱傷気道熱傷がある場合:気管内挿管と呼吸管理が必要なため、場合によっては救急や耳鼻科、皮膚科、形成外科のある総合病院へ紹介。体幹四肢の減張切開が必要:形成外科など専門医へ紹介。深度や面積を評価しデブリードマンが必要または感染の疑いがある:形成外科、皮膚科へ紹介。参考1)波利井 清紀ほか監修. 形成外科治療手技全書III 創傷外科. 克誠堂出版;2015.2)医療情報科学研究所編. 病気が見えるvol.14皮膚科第1版. メディックメディア;2020.3)日本熱傷学会編. 熱傷診療ガイドライン(改訂第3版).2021.

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084)創傷治癒に感じる若さのチカラ【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第84回 創傷治癒に感じる若さのチカラゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆老若男女、さまざまな年齢層を診る皮膚科の外来。下は赤ちゃんから、上は高齢者まで。年齢ごと、ありがちな症状、辿りがちな経過などありますが、とくに創傷治癒に関しては、年代による差を感じます。漫画で例に挙げた高齢者の褥瘡と、若者の熱傷では、受傷の経緯も治癒の環境も異なるため、比較対象としては適切ではないかもしれませんが、やはり全体的に高齢になるほど治りが悪く、若いほど治りが良い印象があります。とくに感じるのが、赤ちゃんや幼児の傷。こちらの予想を上回る治癒力で回復することが多々あり、その度に「やっぱり、若いってスゴい!」と思ってしまいます。個人的な話ですが、「年々、自分の傷の治りが遅くなっているな〜」と感じることもあり、こんなところでも年齢の影響を感じてしまったり…。大好きなランニングで、脚を痛めてしまうことがたまにあるのですが、年々治りが遅くなっていくことを考えると、今後ますます故障には気を付けたいなと思います。創傷治癒に感じる若さの力についての記事でした〜。それでは、また次の連載で。

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ネモリズマブ、6~12歳のアトピー性皮膚炎にも有用

 ネモリズマブは、アトピー性皮膚炎(AD)に伴うそう痒を有し、外用薬や経口抗ヒスタミン薬で効果不十分な6~12歳の小児患者にとって、新たな治療選択肢となる可能性が示された。いがらし皮膚科東五反田院長(前NTT東日本関東病院 皮膚科部長)の五十嵐 敦之氏らが、6~12歳の日本人AD患者を対象に行った第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。ヒト化抗IL-31受容体Aモノクローナル抗体ネモリズマブは、13歳以上のAD患者において外用薬との併用でそう痒を軽減し、QOLを改善することが示されていたが、13歳未満のAD患者における有効性および安全性に関するデータは不足していた。British Journal of Dermatology誌オンライン版2023年7月31日号掲載の報告。ネモリズマブによるそう痒の改善は投与2日目から観察された 研究グループは、ADに伴う中等度~重度のそう痒を有し、外用薬や経口抗ヒスタミン薬で効果不十分な6~12歳の日本人小児患者を対象とした試験を2020年9月より実施し、外用薬との併用投与によるネモリズマブの有効性と安全性を評価した。 被験者を1対1の割合で無作為にネモリズマブ30mgを投与する群(ネモリズマブ群)またはプラセボを投与する群(プラセボ群)に割り付け、4週ごとに投与し、16週間追跡比較した。 ネモリズマブの有効性の主要エンドポイントは、かゆみスコア(範囲:0~4、点数が高いほどそう痒が重度、3点以上を効果不十分と定義)の週平均値のベースライン時から16週時までの変化とした。ネモリズマブの有効性の副次エンドポイントは、そう痒(かゆみスコアのベースライン時から2週時までの変化、16週時における1点以下の達成率など)、AD指標(Eczema area and severity index[EASI]のベースライン時から16週時までの変化など)およびQOLであった。安全性は、有害事象および臨床検査値によって評価した。 ネモリズマブの有効性と安全性を評価した主な結果は以下のとおり。・合計で89例が無作為化され試験を完了した(ネモリズマブ群45例、プラセボ群44例)。・ベースライン時のネモリズマブ群とプラセボ群の患者特性は類似していた。被験者の平均年齢(標準偏差[SD])は9.1歳(1.9)、AD平均罹病期間(SD)は8.5年(2.7)であった。・かゆみスコアのベースライン時から16週時までの変化は、ネモリズマブ群-1.3点、プラセボ群-0.5点であり、ネモリズマブ群がプラセボ群と比較して有意に改善した(最小二乗平均差:-0.8、95%信頼区間[CI]:-1.1~-0.5、p<0.0001)。・ネモリズマブによるそう痒の改善は、投与2日目から観察された。・副次エンドポイントについても、ネモリズマブ群が良好であった。・投与中止に至った有害事象は報告されなかった。また、6~12歳のAD患者における安全性プロファイルは、13歳以上のAD患者におけるものと一貫していた。

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思わぬ情報収集から服薬直前の抗菌薬の変更を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第55回

 今回は、抗菌薬の服薬直前に患者さんから飛び出た思わぬ発言から処方変更につなげた症例を紹介します。患者さんの話をしっかり聞き、気になることは深掘りすることが大事だと改めて感じた事例です。患者情報50歳、男性(施設入居中)基礎疾患多発性血管炎性肉芽腫、脊髄梗塞、仙骨部褥瘡既往歴半年前に総胆管結石性胆管炎副作用歴シロスタゾールによる消化管出血疑い処方内容1.アザルフィジン錠50mg 1錠 朝食後2.プレドニゾロン錠5mg 2錠 朝食後3.ランソプラゾールOD錠15mg 1錠 朝食後4.アムロジピン錠5mg 1錠 朝食後5.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1C 朝食後6.アピキサバン錠5mg 2錠 朝夕食後7.マクロゴール4000・塩化ナトリウム・炭酸水素ナトリウム・塩化カリウム散 13.7046g 朝食後本症例のポイント訪問診療に同行したところ、この患者さんは褥瘡の状態が悪く、処置後の感染リスクを考慮して抗菌薬が処方されることになりました。アモキシシリン・クラブラン配合薬+アモキシシリン単剤(オグサワ処方)が処方となり、緊急対応の指示で当日中の服薬開始となりました。薬を準備して再度訪問した際に、患者さんより「過去に抗菌薬でひどい目にあったと思うんだよなぁ」と発言がありました。お薬手帳や過去の診療情報提供書には抗菌薬による副作用の記載はなく、その症状はいつ・何があったときに服用した薬なのかを患者さん確認してみると、「胆管炎を起こして入院したとき、抗菌薬を服用して2日目くらいに悪心と発疹が出て具合がものすごく悪くなった。医師に相談したら薬剤誘発性リンパ球刺激試験(DLST)のようなものを行ったら抗菌薬が原因だということで治療内容が変更になったことがある」とのことでした。準備した薬は服薬させず、過去に胆管炎で入院した病院に連絡し、病院薬剤師に詳細を確認することにしました。担当薬剤師によると、副作用の登録はシロスタゾールしかありませんでしたが、カルテの詳細な経過を追跡調査してもらうことにしました。すると、胆管炎時に使用したアンピシリン・スルバクタムを投与したところ、アナフィラキシー様反応があったという医師記録があり、投与を中止して他剤へ変更したことがわかりました。処方提案と経過病院薬剤師から得たペニシリン系抗菌薬アレルギーの結果をもとに、医師にすぐ電話連絡をして事情を話しました。そこで、代替薬として皮膚移行性が良好かつ表層菌をターゲットにできるドキシサイクリンを提案しました。医師より変更承認をいただき、ドキシサイクリン100mg 2錠 朝夕食後へ変更となり、即日対応で開始となりました。施設スタッフおよび本人には、過去に副作用が生じた抗菌薬とは別系統で問題ない旨を伝えて安心してもらいました。お薬手帳にも今後の重要な情報なのでペニシリンアレルギーの記載を入れ、臨時で受診などがある場合は必ずこのことを伝えるように共有しました。変更対応後に皮疹や悪心、下痢、めまいなどが出現することなく経過し、皮膚症状も悪化することなく無事に抗菌薬による治療は終了となりました。

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添付文書改訂:アメナリーフに再発性単純疱疹が追加/ミチーガが在宅自己注射可能に ほか【下平博士のDIノート】第125回

アメナリーフに再発性の単純疱疹が追加<対象薬剤>アメナメビル(商品名:アメナリーフ錠200mg、製造販売元:マルホ)<改訂年月>2023年2月<改訂項目>[追加]効能・効果再発性の単純疱疹[追加]効能・効果に関連する注意単純疱疹(口唇ヘルペスまたは性器ヘルペス)の同じ病型の再発を繰り返す患者であることを臨床症状および病歴に基づき確認すること。患部の違和感、灼熱感、そう痒などの初期症状を正確に判断可能な患者に処方すること。<Shimo's eyes>本剤の適応症はこれまで帯状疱疹のみでしたが、2023年2月から「再発性の単純疱疹」が追加されました。帯状疱疹の場合は1日1回2錠を原則7日間投与ですが、再発性の単純疱疹では1回6錠の単回投与となります。初発例は適応になりません。用法・用量に関連する注意には「次回再発分の処方は1回分に留めること」とあり、患者さんの判断で服用するPIT(Patient Initiated Therapy)分を前もって1回分処方することができます。患者さん自身が単純疱疹の症状の兆候を認識した際に速やかに服用することで、早期の対応が可能となります。パキロビッド:パック600と中等度腎機能障害用のパック300が承認<対象薬剤>ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッドパック600/同300、製造販売元:ファイザー)<承認年月>2022年11月<改訂項目>[変更]医薬品名、規格パキロビッドパック600、同300が承認<Shimo's eyes>パキロビッドパックは、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)に続く、2番目の新型コロナウイルス感染症の経口薬として2022年2月に承認されました。2023年3月21日以前は、登録センターに登録することで特定の医療施設に配分されていました。今回パキロビッドパック600/同300が薬価収載され、2023年3月22日以降は一般流通されています。パキロビッドパック600は従来のパキロビッドパックと同等の製剤で通常用のパッケージです。一方、パキロビッドパック300は中等度の腎機能障害(eGFR30mL/min以上60mL/min未満)の患者さん用のパッケージです。600と300はブースターであるリトナビルの投与量は同じですが、抗ウイルス薬であるニルマトレルビルが300では半分の量になっています。ミチーガ:在宅自己注射が可能に<対象薬剤>ネモリズマブ(遺伝子組換え)(商品名:ミチーガ皮下注用60mgシリンジ、製造販売元:マルホ)<在宅自己注射の保険適用日>2023年6月1日<改訂項目>[追加]重要な基本的注意自己投与の適用については、医師がその妥当性を慎重に検討し、十分な教育訓練を実施した後、本剤投与による危険性と対処法について患者が理解し、患者自ら確実に投与できることを確認したうえで、医師の管理指導のもと実施すること。自己投与の適用後、本剤による副作用が疑われる場合や自己投与の継続が困難な状況となる可能性がある場合には、ただちに自己投与を中止させ、医師の管理のもと慎重に観察するなど適切な処置を行うこと。また、本剤投与後に副作用の発現が疑われる場合は、医療施設へ連絡するよう患者に指導を行うこと。使用済みの注射器を再使用しないように患者に注意を促し、すべての器具の安全な廃棄方法に関する指導を行うと同時に、使用済みの注射器を廃棄する容器を提供すること。[追加]薬剤交付時の注意患者が家庭で保管する場合は、光曝露を避けるため外箱に入れたまま保存するよう指導すること。<Shimo's eyes>本剤は、4週間の間隔で皮下投与する抗体医薬品のアトピー性皮膚炎治療薬として2022年8月に発売され、2023年6月から在宅自己注射が可能となりました。近年、新しい作用機序のアトピー性皮膚炎治療薬が続々と開発されています。経口薬としては、関節リウマチへの適応から始まったJAK阻害薬、本剤のような抗体医薬品、外用薬ではPDE4阻害薬が発売され、難治性の患者さんにも選択肢が増えています。RA系阻害薬:妊娠禁忌について再度注意喚起<対象薬剤>RA系阻害薬<改訂年月>2023年5月<改訂項目>[新設]妊娠する可能性のある女性、妊婦妊娠する可能性のある女性に投与する場合には、本剤の投与に先立ち、代替薬の有無なども考慮して本剤投与の必要性を慎重に検討し、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。また、投与が必要な場合には次の注意事項に留意すること。(1)本剤投与開始前に妊娠していないことを確認すること。本剤投与中も、妊娠していないことを定期的に確認すること。投与中に妊娠が判明した場合には、ただちに投与を中止すること。(2)次の事項について、本剤投与開始時に患者に説明すること。また、投与中も必要に応じ説明すること。妊娠中に本剤を使用した場合、胎児・新生児に影響を及ぼすリスクがあること。妊娠が判明したまたは疑われる場合は、速やかに担当医に相談すること。妊娠を計画する場合は、担当医に相談すること。<Shimo's eyes>RA系阻害薬に関しては、2014年9月に妊婦や妊娠の可能性がある女性には投与しないこと、投与中に妊娠が判明したらただちに中止することなどが注意喚起されていましたが、それ以降も妊娠中のRA系阻害薬投与により、胎児や新生児への影響が疑われる症例(口唇口蓋裂、腎不全、頭蓋骨・肺・腎の形成不全、死亡など)が継続的に報告されていました。医師が妊娠を把握せずにRA系阻害薬を使用していた例が複数存在していたため、RA系阻害作用を有する降圧薬32成分(ACE阻害薬、ARB、レニン阻害薬、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬)の添付文書改訂が指示されました。

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成人のアトピー性皮膚炎は静脈血栓塞栓症のリスクか

 アトピー性皮膚炎(AD)の成人患者は、静脈血栓塞栓症(VTE)の発症リスクが高いことが、台湾・台北栄民総医院のTai-Li Chen氏らが実施した住民ベースの全国コホート研究で示唆された。AD成人と非AD成人のVTE発症の絶対差はわずかであったが、著者は、「VTEを示唆する症状を呈するAD成人患者には、心血管系の検査と指導管理を考慮すべきだろう」と述べ、「ADとVTEの関連の基礎をなす、病態生理を解明するため、さらなる研究が求められる」とまとめている。ADの病態メカニズムとして慢性全身性炎症があり、潜在的な血管への影響が考えられることから、複数の心血管疾患についてADとの関連が研究されているが、成人におけるADとVTEの関連はほとんど解明されていなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月31日号掲載の報告。 研究グループは、住民ベースの全国コホート研究によりADとVTE発症との関連を検討した。台湾のNational Health Insurance Research Databaseから20歳以上の成人(2003~17年に新規にADと診断された成人、および背景因子をマッチングさせた対照成人)を特定し解析した。主要アウトカムは、ADとVTE発症の関連であった。AD患者を重症度で層別化し、Cox比例ハザードモデルを用いて、VTEに関するハザード比(HR)を推算した。 主な結果は以下のとおり。・解析には28万4,858例が含まれた。AD群と非AD群はいずれも14万2,429例で、各群の年齢(平均値±標準偏差)は44.9±18.3歳、44.1±18.1歳、女性は7万8,213例、7万9,636例であった。・追跡期間中に、AD群1,066例(0.7%)、非AD群829例(0.6%)にVTE発症が認められた。・1,000人年当たりの発生率は、AD群1.05、非AD群0.82であり、AD成人は非AD成人と比べてVTE発症リスクが有意に高かった(HR:1.28、95%信頼区間[CI]:1.17~1.40)。・個々のアウトカム解析において、AD成人は深部静脈血栓症(HR:1.26、95%CI:1.14~1.40)および肺血栓塞栓症(同:1.30、1.08~1.57)の発症リスクが高くなることが示唆された。

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卵アレルギーが不安…、離乳食開始へのアドバイスは?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第4回

卵アレルギーが不安…、離乳食開始へのアドバイスは?講師長野県立病院機構 長野県立こども病院 小児アレルギーセンター長伊藤 靖典 氏【今回の症例】生後4ヵ月の女児。母乳栄養。アトピー性皮膚炎はない。乳幼児健診にて、食物アレルギーが心配なので、鶏卵の摂取をどのように進めたらよいかを相談された。鶏卵摂取の進め方の指導として適切なのはどれか?1.生後4ヵ月でプリックテストや特異的IgE抗体検査を実施し、陽性の場合は除去指導を行う2.生後5~6ヵ月ごろから、卵黄から摂取を開始させる3.リスクが高いので鶏卵は1歳を過ぎてから摂取するように指導する4.食物経口負荷試験にて確認する

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