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第225回 インフルエンザ猛威! 過去最多の感染者数で救急搬送困難事例が多発/厚労省

<先週の動き>1.インフルエンザ猛威! 過去最多の感染者数で救急搬送困難事例が多発/厚労省2.インフル治療薬不足が深刻化「過剰発注控えて」協力要請/厚労省3.2040年、医師の高齢化で自治体2割が「診療所なし」/厚労省4.高齢化社会の岐路、2040年の介護について検討開始/厚労省5.病院船で災害医療を強化、推進計画案パブコメ開始/政府6.看護師による不適切処置示唆のSNS投稿疑惑 病院が内部調査/千葉大1.インフルエンザ猛威! 過去最多の感染者数で救急搬送困難事例が多発/厚労省年末年始にかけて、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者が急増し、医療現場が逼迫している。とくに、救急搬送の困難事例が増加しており、患者の受け入れ先がみつからないケースが相次いでいる。厚生労働省によると、昨年12月23~29日の1週間に報告されたインフルエンザの患者数は、1医療機関当たり64.39人と、過去10年で最多を記録した。全国的に警報レベルを超えており、専門家はさらなる感染拡大を懸念している。COVID-19も増加傾向にあり、昨年12月23~29日の新規感染者数は、1定点当たり7.01人と、5週連続で増加している。感染拡大の影響で、発熱などを訴える患者が急増し、救急要請が殺到している。名古屋市では、12月の救急出動件数が過去最多を更新。救急車の稼働率が80%を超える「救急隊逼迫アラート」が頻繁に発令され、1月6日には稼働率が一時的に100%に達し、出動可能な救急車がない時間帯もあったという。救急搬送の困難事例が増加している背景には、医療従事者不足や病床不足など、医療体制の脆弱さがある。インフルエンザやCOVID-19だけでなく、他の疾患や怪我など、救急搬送が必要な患者は常に発生している。医療現場の逼迫を解消するためには、政府による医療体制の強化、国民一人ひとりの感染予防対策の徹底、そして、救急車の適切な利用などが求められる。参考1)全国インフルエンザ患者数 統計開始以来最多に(NHK)2)全国インフル定点報告64.39人、現行統計で最多 感染者数は30万人超え 厚労省(CB news)3)インフルエンザ流行、全国の感染者数が過去最多…タミフル後発薬は生産追いつかず供給停止(読売新聞)4)「救急搬送困難事案」も急増 ひっきりなしに鳴り続ける119番通報 名古屋(名古屋テレビ)5)インフルエンザの流行状況(東京都 2024-2025年シーズン)2.インフル治療薬不足が深刻化「過剰発注控えて」協力要請/厚労省インフルエンザの流行拡大を受け、治療薬の供給が逼迫し、各社が対応に追われている。沢井製薬は1月8日、インフルエンザ治療薬オセルタミビル(商品名:タミフル)の後発薬の供給を一時停止すると発表した。12月からの急激な流行拡大で需要が想定を上回り、生産が追いついていないためだ。カプセルは2月上旬、ドライシロップは1月下旬に供給を再開する予定という。厚生労働省は8日、タミフル後発薬の供給停止を受け、医療機関や薬局に対し、過剰な発注を控え、他社製品や代替薬への処方変更などを検討するよう要請した。中外製薬も9日、タミフルの先発品の一部を限定出荷すると発表した。昨年末以降、増産を続けてきたものの、製造が追いつかない状況だという。原料の入手が難しくなっていることなどから、増産分が今シーズンに間に合うか現時点では不明だという。塩野義製薬も9日、インフルエンザ治療薬バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)の供給調整を始めると発表した。他社製品の供給状況などを踏まえ、限定出荷などの措置を講じることで、過剰発注を防ぎ、市中での適正在庫の維持を目指す。インフルエンザは12月中旬頃から感染が急拡大しており、治療薬の供給不足が長期化すれば、患者の治療に影響が出る可能性もある。参考1)オセルタミビルリン酸塩製剤の適正な使用と発注について(厚労省)2)厚労省が「過剰発注控えて」と協力要請 タミフルのジェネリック一時供給停止で(産経新聞)3)中外製薬のタミフル、一部で限定出荷に インフルエンザの急激な流行拡大うけ(産経新聞)4)塩野義、インフルエンザ治療薬の供給調整 過剰発注防ぐ(日経新聞)3.2040年、医師の高齢化で自治体2割が「診療所なし」/厚労省2025年は「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者となる年であり、医療現場では大きな変化が予想されている。高齢化の進展に伴い、在宅医療や救急搬送の需要増加が見込まれる一方で、医師不足が深刻化し、地域医療の維持が困難になる可能性が高まっている。厚生労働省の推計によると、75歳以上の患者数は2025年には1日当たり7万9,000人と、2020年と比べて1万人以上増加する見通しだ。救急搬送される75歳以上の高齢者も、2025年には1ヵ月当たり28万人と、2020年と比較し4万2,000人増加すると予測されている。また、医師の高齢化も進み、2040年には市区町村の2割で診療所がゼロになる可能性があるという。厚労省の試算では、医師が75歳で引退すると仮定した場合、診療所のない自治体数は2040年に342となり、全国約1,700自治体の2割に相当する。医師不足は、とくに地方部で深刻化している。青森県佐井村や埼玉県東秩父村のように、常駐医師のいない状態が続く地域も少なくない。医師不足が解消されなければ、高齢者が住み慣れた地域で医療を受け続けることが難しくなり、医療崩壊につながる可能性もある。地域医療を維持するためには、医師の確保が急務である。国は、地域医療構想に基づき、在宅医療や高齢者救急への対応強化、医療機関と介護施設の連携強化などを推進しているが、医師不足は深刻であり、抜本的な対策が必要とされている。参考1)高齢化 “2025年問題” 在宅医療や救急搬送の体制構築が課題に(NHK)2)自治体2割が「診療所なし」 2040年試算、医師高齢化響く(日経新聞)4.高齢化社会の岐路、2040年の介護について検討開始/厚労省厚生労働省は1月9日、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会を立ち上げ、初会合を開いた。2040年に高齢者数がピークを迎える中、地域の実情に応じた介護サービスの提供体制や人材確保策を検討するのが狙い。検討会では、都市部、中山間地域、一般市といった地域特性に応じたサービス提供モデルの構築、介護人材の確保・定着、テクノロジー活用による生産性向上、経営支援、介護予防など、幅広い論点について議論が行われる。具体的には、中山間・人口減少地域では、介護ニーズの減少と人材不足に対応するため、介護報酬や人員基準の柔軟化、補助金などの財政支援の必要性が指摘されている。一方、都市部では増加する介護ニーズに対応するために新たなサービス提供体制の構築が課題となっている。今後不足するとみられる介護人材の確保・定着には、処遇改善の強化として、介護職員の賃金向上、キャリアアップ支援、働きがいのある職場環境作りなどが課題として、検討される。さらに外国人材の活用やICT・AIなどのテクノロジー活用による生産性向上も重要なテーマとなる。そのほか介護事業所の経営支援のほか、事業者間の連携、事業所の大規模化、職場環境改善などを促進するためのインセンティブや相談窓口の設置など具体的な支援策を検討する。検討会は今後、先進的な取り組みを行う自治体や事業者へのヒアリングなどを実施しながら、2025年春頃をめどに中間取りまとめを行う予定。この中間取りまとめは、今後の介護保険制度改正や2027年度の介護報酬改定に活用される。参考1)第1回「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(厚労省)2)2040年の介護制度を議論 厚労省が検討会(日経新聞)3)「2040年問題」議論開始 高齢者数ピークも介護人材不足 厚労省(朝日新聞)4)少子高齢化が地域ごとにバラバラに進む「2040年」見据え、介護サービス提供や介護人材確保などの在り方を考える-厚労省検討会(Gem Med)5)介護の大規模化インセンティブ付与へ 春ごろ中間まとめ 厚労省・新検討会(CB news)5.病院船で災害医療を強化、推進計画案パブコメ開始/政府政府は1月8日、災害時などに海上で医療活動を行う「病院船」の活用に向けた推進計画案を公表し、パブリックコメントの募集を開始した。締め切りは1月20日。病院船は、大規模災害発生時に被災地で医療を提供する船舶のことで、昨年6月に施行された「病院船の活用促進に関する法律」に基づき、政府は年内をめどに病院船の整備計画を策定する方針。推進計画案では、病院船の役割として、被災地における医療提供機能の補完、医療従事者や物資の輸送、被災者の避難などを挙げている。また、船舶の確保については、当面の間、民間事業者の協力を得て、民間の既存船舶を活用する方向性を示している。具体的には、民間船舶に医療機材を積み込み、災害時に被災地へ派遣する。政府はDMAT(災害派遣医療チーム)や日本赤十字社救護班、JMAT(日本医師会災害医療チーム)などと連携し、医療従事者の確保や保健医療福祉調整本部への支援を行うとしている。病院船の活用は、東日本大震災以降、たびたび議論されてきた。大規模災害発生時に、陸上の医療機関の被災やアクセスが困難になった場合でも、海路を通じて医療を提供できるという利点がある。具体的な活用イメージは以下の通り。発災直後~72時間:沖合で活動し、被災地から脱出する透析患者や入院患者などを搬送する「脱出船」としての役割を担う。発災後1週間~1ヵ月:被災地付近の港に接岸し、現地で救護活動を行う「救護船」としての役割を担う。亜急性期・慢性期:陸上機能の回復に伴い、船舶での医療活動ニーズが低下する。課題としては、被災地から離れた場所への移送に対する患者の同意取得、救護船へのアクセス確保などがある。一方で、病院船の建造・維持費や医療従事者の確保、平時における活用方法などが問題点として挙げられている。政府は、これらの問題点を解決しながら、病院船の活用を進めていく方針。今回のパブリックコメント募集では、推進計画案に対する意見を広く国民から募り、計画に反映させることで、より実効性の高いものにすることを目指している。参考1)災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する計画(案)に関する意見募集について(内閣府)2)船舶活用医療推進本部(内閣官房)3)病院船、体制整備推進計画案でパブコメ 政府(MEDIFAX)4)病院船、25年度に運用開始へ 岸田首相が計画づくり指示(日経新聞)6.看護師による不適切処置示唆のSNS投稿疑惑 病院が内部調査/千葉大千葉大学医学部附属病院(千葉市中央区)の看護師が、患者への不適切な処置を示唆する内容をX(旧ツイッター)に投稿していた疑惑が浮上し、病院が内部調査に乗り出している。問題の投稿は2023年秋頃から確認されていたとされ、「インシデントを隠蔽している」「薬を捨てている」「褥瘡を発生させた」など、患者の安全を脅かすような内容が含まれていた。また、所属する科の医師への暴言もあったという。これらの投稿は、看護師を名乗る匿名アカウントから発信されていた。アカウントは現在削除されているが、投稿内容から同病院の看護師によるものと疑われている。病院側は1月6日に不適切な投稿を把握し、事実関係の確認を開始。8日には大鳥 精司病院長名で「現在、事実関係などを調査中です。今後、調査結果を踏まえ、病院として適切に対応してまいります」とのコメントをホームページに掲載した。10日には、調査対象となっている職員に自宅待機を命じたことを明らかにした。病院は、SNSでの個人的な情報発信を禁止していないものの、院内ガイドラインで責任ある投稿を求めている。今回の件を受け、病院側は改めて職員への注意喚起を行うとともに、再発防止に向けた対策を検討する方針。この問題は、患者の安全確保や病院への信頼に関わる重大な事態であり、調査の行方が注目される。参考1)当院に関する「X」の投稿について(第2報)2)患者への不適切な処置を示唆するSNS投稿? 千葉大病院が内部調査(朝日新聞)3)千葉大学病院 “不適切処置”投稿の可能性ある職員 自宅待機に(NHK)4)千葉大医学部附属病院めぐる看護師のX不適切投稿疑惑、調査対象の職員に「自宅待機を命じた」「まだ断定できる事実はなく」(ZAKZAK)5)「薬を患者に飲ませず捨てている」千葉大病院関係者がXに不適切投稿か 内部調査を実施(産経新聞)

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第224回 入院できる医療機関が減少傾向 病院・有床診療所、2年間で332施設減/厚労省

<先週の動き>1.入院できる医療機関が減少傾向 病院・有床診療所、2年間で332施設減/厚労省2.赤穂市民病院、手術ミスで医師を在宅起訴 患者に重度の障害/神戸地検3.社会保障費が過去最大の38兆円超、高齢化と賃金上昇で増加/政府4.医療DX推進、標準型電子カルテの本格提供開始は2027年度に延期へ/政府5.社会保障改革と医療DXに向けた改革実行プログラムを策定/政府1.入院できる医療機関が減少傾向 病院・有床診療所、2年間で332施設減/厚労省入院可能な医療機関が減少傾向にあることが、厚生労働省の調査で明らかになった。2024年10月末時点の一般病院の数は6,999ヵ所と、1年前と比較し68ヵ所減少した。有床診療所も減少傾向が続き、2023年10月末~2024年10月末までの1年間で284ヵ所減少し、5,391ヵ所となった。2年前と比較し、病院と有床診療所を合わせて332ヵ所減少したことになる。病院の減少は、経営状況の悪化や医師不足、高齢化などが背景にあるとみられ、また、診療所の減少は、病院への統合や、無床診療所への転換などが要因と考えられている。有床診療所は、地域医療において重要な役割を担っており、入院患者の受け皿となるだけでなく、在宅医療や介護施設との連携など、地域包括ケアシステムにおいても重要な存在。しかし、有床診療所の経営状況は厳しく、2023年度の調査では、4割以上が赤字経営であることが明らかになっている。政府は、診療報酬改定などで有床診療所の経営支援を行っているが、減少傾向に歯止めがかかっていない状況。有床診療所の減少は、地域医療の提供体制に影響を与える可能性があり、今後の動向が注目される。参考1)医療施設動態調査[令和6年10月末概数](厚労省)2)一般病院7千カ所を割り込む、10月末概数 前年比68カ所減(CB news)3)物価高騰の影響、前年より「あり」227病院の65% 24年度上半期 福祉医療機構調べ(同)4)有床診療所はさらに減少し5,391施設に、2025年5月に7万床、26年3月に5,000施設を割る可能性大-医療施設動態調査[2024年10月末](Gem Med)2.赤穂市民病院、手術ミスで医師を在宅起訴 患者に重度の障害/神戸地検神戸地検姫路支部は12月27日、赤穂市民病院(兵庫県赤穂市)で2020年に行われた手術で、患者に重度の障害を負わせたとして、当時手術を担当した医師を業務上過失傷害罪で在宅起訴した。起訴状によると、医師は患者の腰椎を削る手術中、十分な止血を怠ったまま電動ドリルを操作し、脊髄神経を損傷した。その結果、患者は下半身に重い麻痺が残り、膀胱直腸障害も負った。地検姫路支部は、複数の専門家に手術の映像を確認してもらい、刑事責任を問えるだけの過失があると判断した模様。同院では、この医師が関わった手術で8件の医療事故が発生し、2人が死亡するなどしており、病院側は医療過誤を認めて謝罪した。医師は3年前に依願退職している。患者は、手術後に同院に対して損害賠償請求訴訟を起こし、病院側は医療過誤を認め、謝罪した。今回の在宅起訴を受け、患者の家族は「法廷で自分の過ちを素直に認めてほしい」と話している。参考1)“手術で患者に重い障害”担当医を在宅起訴 神戸地検姫路支部(NHK)2)赤穂市民病院で手術中、適切な処置怠り重度障害負わせる…医師を在宅起訴(読売新聞)3)兵庫の手術ミス、執刀医在宅起訴 業務上過失傷害罪で(日経新聞)3.社会保障費が過去最大の38兆円超、高齢化と賃金上昇で増加/政府政府は12月27日に、2025年度予算案を閣議決定した。一般会計総額は115兆円を超え、過去最大となった。その中で、医療や介護などの社会保障費は38兆2,778億円と、24年度から5,585億円増加し、過去最高を更新した。高齢化の進展に加え、賃金・物価上昇に伴う年金給付額の増加が主な要因。政府は、高額療養費制度の見直しや薬価の引き下げなどの歳出改革に取り組んでいるが、社会保障費の急速な伸びを抑えきれていない現状である。25年度の社会保障費は、高齢化による自然増に加え、年金給付額の増加や保育士などの賃上げなどが歳出増の要因となっている。一方、歳出抑制策としては、薬価の引き下げや高額療養費の見直しなどが盛り込まれた。薬価については、特許切れ新薬などを中心に引き下げる一方、物価高騰への配慮として最低薬価を引き上げるなどの措置も講じられているほか、高額療養費制度については、年収が多い人ほど自己負担の上限を引き上げる見直しが行われている。しかし、これらの抑制策だけでは、社会保障費の膨張を抑えることは難しく、さらなる改革が必要となっている。26年度には診療報酬改定が予定され、本体部分への切り込みや、医療・介護の自己負担の見直しなどが焦点となる。参考1)令和7年度予算案の概要(厚労省)2)社会保障費の抑制に腐心 「高額療養費」見直しで年1,600億円削減(朝日新聞)3)予算案115兆円決定 来年度 社保費膨張38兆円 過去最大(日経新聞)4)社会保障費最大の38.2兆円 製薬・高所得者負担で抑制 医療・介護、自己負担上げに反発強く(同)5)2025年度予算案で過去最高の社会保障費38兆円を閣議決定(日経メディカル)4.医療DX推進、標準型電子カルテの本格提供開始は2027年度に延期へ/政府政府は、国民の健康増進や切れ目のない質の高い医療の提供に向け、医療分野のデジタル化を進め、保健・医療情報(介護含む)の利活用を行うため、医療分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に、2023年6月に「医療DX推進に関する工程表」を策定していた。この工程表では、2025年度中に標準型電子カルテを本格運用し、2030年にはすべての医療機関への導入を目指すとされていた。しかし、2024年12月26日に政府の経済財政諮問会議が決定した「経済・財政新生計画 改革実行プログラム2024」では、標準型電子カルテの本格提供開始を2027年度に延期する方針が示された。これは、2025年1月から開始される試行版(α版)のモデル事業で、有用性や運用上の課題を検証した上で、本格版を提供するためのもの。標準型電子カルテは、クラウド型のシステムにより低コスト化を図り、とくに医科診療所などでの導入を促進することを目的としている。医療機関間での患者情報の共有を可能にすることで、医療の質向上と効率化を図る。その一方で、医療DXの推進には、いくつかの課題も指摘されている。医療機関、とくに大規模病院における標準型電子カルテの導入には、多額の費用と時間が必要であり、さらに電子カルテ情報共有サービスの運用費用は、将来的に社会保険料で賄う方針だが、保険者からは負担増への懸念の声が上がっている。医療情報は極めて機微な個人情報であるため、共有システムのセキュリティ対策が重要となる。医療DXの効果を最大限に発揮するためには、多くの医療機関が積極的に参加することが重要であり、政府は、これらの課題を解決しながら、医療DXを推進していく方針。参考1)経済・財政新生計画 改革実行プログラム2024(経済財政諮問会議)2)標準型電子カルテ、本格版を27年度に提供開始 改革実行プログラム2024決定 諮問会議(CB news)3)電子カルテ情報共有サービスの運用費用、標準型電子カルテが5割程度普及した段階で保険者等に負担求める-社保審・医療保険部会(Gem Med)4)2025年1月から無床診療上向けの標準型電子カルテのモデル事業を実施、既存電子カルテの標準化改修も支援-社保審・医療部会(同)5)電子カルテ情報共有サービスについて(厚労省)6)医療機関等向け総合ポータルサイト(社会保険診療報酬支払基金)5.社会保障改革と医療DXに向けた改革実行プログラムを策定/政府政府は、2024年12月26日に経済財政諮問会議を開催し、重要政策に対してEBPM(証拠に基づく政策立案)を実践・実装する「EBPMアクションプラン2024」および改革工程を具体化し実行する「改革実行プログラム2024」を決定した。2025年は、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、全人口の18%が高齢者となる超高齢社会の節目の年に当たる。社会保障分野においては、全世代型社会保障制度の構築に向け、現役世代と高齢世代の給付と負担のバランスを見直し、効率的で質の高い医療・介護サービスの提供体制を構築することが重要課題として掲げられている。主な改革項目は下記の通り。勤労者皆保険の拡大:短時間労働者への適用拡大や、個人事業所の適用業種の拡大など、働き方に中立的な社会保険制度の構築を目指す。医療DXの推進:全国医療情報プラットフォームの構築、診療報酬改定DX、電子カルテ情報共有サービスの導入など、デジタル技術を活用した医療の効率化と質向上を図る。地域医療構想:2027年度から新たな地域医療構想に基づいた医療提供体制の改革を推進する。医師の偏在対策も強化し、地域医療の充実を図る。医療・介護の連携:医療従事者におけるタスク・シフト/シェアを推進し、多剤重複投薬の適正化など、医療と介護の連携強化による効率的なサービス提供を目指す。能力に応じた全世代の支え合い:介護保険の負担割合の見直しや、高額療養費制度の見直しなど、能力に応じた負担と給付の公平性を確保する。医薬品政策:創薬力の強化、医薬品の安定供給確保、薬価制度の見直しなど、医薬品政策の改革を進める。これらの改革を実行するためには、医療現場の理解と協力、そして国民への丁寧な説明が不可欠となる。とくに、医療DXの推進には、医療従事者の負担軽減や情報セキュリティ対策など、解決すべき課題が多く残る。政府は、これらの課題を克服し、国民の理解と協力を得ながら、改革実行プログラムを着実に推進していく方針。参考1)ことし約5人に1人が後期高齢者に 医療や介護の体制拡大が課題(NHK)2)「EBPMアクションプラン2024」・「改革実行プログラム2024」(経済・財政一体改革推進委員会)3)改革実行プログラム2024(経済財政諮問会議)

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第223回 押さえておきたい令和7年度スタートの「かかりつけ医機能報告制度」と「新たな地域医療構想」

毎週、さまざまな医療ニュースをお届けしていますが、今回は、これまでの厚生労働省の政策から、今後の医療のあり方などを考えてみたいと思います。2025年は、団塊の世代が全員75歳以上となり、全人口の18%が後期高齢者となる超高齢社会の節目となる年です。15年前の2010年には、死亡者数は119.7万人でしたが、高齢化の進展により死亡者数はさらに増加すると予想されていました(2023年には157.6万人)。全日本病院協会の「病院のあり方に関する報告書」に目を通すと、当時から人口減少・少子高齢社会の急速な進展で、生産年齢人口、労働力人口の減少で看護師や介護職員の不足が予見されていました。このため、政府は平成26年(2014年)に医療介護総合確保促進法を制定し、都道府県において、病床の機能ごとの将来の必要量など、地域の医療提供体制について、二次医療圏ごとに将来のあるべき姿として「地域医療構想」を策定して、バランスのとれた医療機能の分化・連携を進めてきました。成功したかのように思えた政府の計画人口動態などから、「医療需要は2025年がピークとなり、その後は減少傾向、介護需要は2035年がピーク」と導き出されましたが、東京や大阪など大都市圏では介護需要のピークが2040年になるなど地域差も見出されました。さらに入院医療においては「肺炎、骨折、脳卒中・虚血性心疾患、がん、糖尿病」が、外来医療では「循環器系疾患、筋骨格系疾患、神経系疾患、眼および付属器疾患」で患者数の増加が見込まれました。「病院のあり方に関する報告書(2015-2016年版)」では、2015年当時の病床数は125.1万床でしたが、「2025年の時点で152万床程度の病床が必要」との予測から、「病院のベッド数の不足などから死に場所に困る者が年間50万人にも上るのでは」と懸念されていました(当時は看取りの場が病院・診療所が約8割と大半を占めていたため)。このため、厚労省は平成26年(2014年)に医療法を改正し、2025年に向けて地域医療構想の実現を、各都道府県に働きかけてきました。毎年、病床を有する医療機関に対して、病床機能報告を行わせて、医療機関は病棟単位で現在の病床機能と今後の方向性などの報告を行い、それを地域の実情に応じて病床機能の転換、再編などについて協議をしてきました。あわせて、一般病床において医療資源投入量の少ない患者の在宅医療や介護施設への移行などを通じて、2025年に119.1万床となることを目標としていました。結果として、「病床機能報告上の病床数について、2015年から2023年にかけて、125.1万床から119.2万床になり、2025年の必要病床数である119.1万床と同程度の水準」となり、「2025年の必要病床数の方向性に沿って、全体として地域医療構想の進捗が認められる」とほぼ成功したと判断しています。一方、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染爆発で明らかになったように、感染患者の急増によって、救急医療がパンクしたのは事実ですが、政府がこのときに行った規制改革でICTなどを用いた遠隔診療の普及、ナーシングホームでの在宅医による看取りなどが急増したのも事実です。このため、COVID-19が落ち着いた現在では、むしろ患者不足によって病床稼働率が低下し、多くの医療機関や介護施設が赤字に苦しんでいます。病院や介護施設では、患者や利用者が減少しても、看護師やリハビリ職員などの専門職を簡単には解雇できないため、人件費の負担が大きくなり、経営状況の悪化に拍車をかけているのです。労働力不足の中での医療の未来図今後は、人口構造がさらに変化して後期高齢者が増え、労働者が不足する中で、医療や介護の担い手に対するニーズは増え続けるのにかかわらず、弾力的な対応ができません。COVID-19の流行が落ち着いた現在、厚労省は2040年に向けて新たな地域医療構想を策定するため、検討会での議論を経て、12月18日に「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」が公表されました。2024年の骨太の方針に沿った形で「2040年頃を見据えて、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少等に対応できるよう、地域医療構想の対象範囲について、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携、人材確保等を含めた地域の医療提供体制全体に拡大するとともに、病床機能の分化・連携に加えて、医療機関機能の明確化、都道府県の責務・権限や市町村の役割、財政支援の在り方等について、法制上の措置を含めて検討を行い、2024年末までに結論を得る」とされています。具体的には、さらなる医療機関の機能分化や連携強化、在宅医療の推進、ICTの活用のほか、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)取組みの推進が含まれます。とくにACPについては2024年の診療報酬改定で、入院料の通則に人生の最終段階における意思決定支援と身体的拘束の最小化の取り組みを要件化しています。通則に盛り込まれたということは、実施しなければ、入院料の算定は認めないということであり、多くの入院医療機関は対応が必須となります。かかりつけ医機能報告制度の趣旨と狙いこの「新たな地域医療構想」に向けて用いられるのが、「かかりつけ医機能報告制度」です。これについては、12月22日に開催された「日本在宅療養支援病院連絡協議会」の第2回研究会(2024年12月22日)で、厚労省の高宮 裕介氏(大臣官房参事官救急・周産期・災害医療等、医療提供体制改革担当)の基調講演「かかりつけ医機能報告制度について」がYouTubeで公開されています。解説を聞きましたが、非常に詳細でわかりやすかったので視聴をお勧めします。この中でわかったことは、かかりつけ医機能の報告自体が目的ではなく、報告の結果を基に地域の協議の場で、医療関係者や自治体などともに在宅医療や時間外対応などの対応のほか、介護施設との連携などが図られることが理解できました。現在、在宅医療を行っている在宅医療機関としては、在宅療養支援診療所と在宅療養支援病院がありますが、最近は後者が増えており2,021施設になりました。日本全国で病院数は8,097施設なので、約25%は在宅医療を実施しており、今後も在宅医療ニーズが増えるのに応じて、急性期病院であっても中小規模の病院がさらに在宅医療に参入することが予想されます。日本在宅療養支援病院連絡協議会は、病院勤務医には馴染みがない訪問診療について、会員向けに在宅医療塾のほか、訪問栄養食事指導の講習会などを行うとのことです。ぜひご参考にされてください。2024年もご愛読ありがとうございました。また、2025年もよろしくお願いします。参考1)新たな地域医療構想に関するとりまとめ(厚労省)2)かかりつけ医機能報告制度(同)3)かかりつけ医機能報告制度について研修・説明会(同)4)地域医療構想に関する主な経緯や都道府県の責務の明確化等に係る取組・支援等(同)5)病院のあり方に関する報告書[2015-2016年版](全日病)6)日本在宅療養支援病院連絡協議会

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第222回 インフル・コロナ同時流行、対症療法薬不足の恐れ/厚労省

<先週の動き>1.インフル・コロナ同時流行、対症療法薬不足の恐れ/厚労省2.電子処方箋で誤表示トラブル、24日まで発行停止で一斉点検/厚労省3.帯状疱疹ワクチン、2025年度から65歳定期接種へ2025年4月開始/厚労省4.医師偏在対策で地方勤務医に手当増額へ、2026年度から/厚労省5.進む医療の「在宅シフト」在宅患者は過去最多、入院は減少/厚労省6.高額療養費制度の見直し、来年夏から70歳以上の外来2千円増/厚労省1.インフル・コロナ同時流行、対症療法薬不足の恐れ/厚労省インフルエンザの流行が全国的に拡大している。厚生労働省によると、2024年12月9~15日までの1週間に、全国約5,000の定点医療機関から報告されたインフルエンザの患者数は9万4,259人、1医療機関当たり19.06人となり、前週比110.9%増と8週連続で増加。40都道府県で注意報レベルの10人を超え、大分県(37.22人)、福岡県(35.40人)では警報レベルの30人を超えた。全国の推計患者数は約71万8,000人に上る。札幌市ではインフルエンザ警報が発令され、小中学校で学級閉鎖などの措置が相次いでいる。一方、新型コロナウイルスの感染者数も3週連続で増加。同期間の全国の新規感染者数は19,233人、1医療機関当たり3.89人(前週比1.27倍)で、44都道府県で増加。北海道(11.93人)、岩手県(10.51人)、秋田県(9.29人)で多く、沖縄県(1.09人)、福井県(1.49人)、鹿児島県(1.51人)で少ない。新規入院患者数も1,980人(前週比1.21倍)と増加傾向にある。北海道では新型コロナウイルスの患者が2024年度最多を更新し、インフルエンザとの同時流行が懸念されている。さらに、マイコプラズマ肺炎や手足口病の報告も過去5年間に比べて多く、医療現場では、発熱外来がひっ迫し、受診を断らざるを得ない状況も発生している。こうした状況を受け、厚労省は、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなどの対症療法薬(解熱鎮痛薬、鎮咳薬、去痰薬、トラネキサム酸)の需給が逼迫する恐れがあるとして、医療機関や薬局に対し、過剰な発注を控え、必要最小限の処方・調剤を行うよう要請した。具体的には、医療機関には治療初期からの長期処方を控え、必要最小日数での処方や残薬の活用を、薬局には地域での連携による調剤体制の確保や代替薬の使用検討を求めている。厚労省は対症療法薬の増産を製薬会社に依頼しているが、増産分の出荷前に感染症が急激に流行すれば、需給が逼迫する可能性もある。現時点では、在庫放出などで昨年同期の1.2倍の出荷量の調整が可能だが、今後の感染状況によっては不足する懸念もあるため、安定供給されるまでは過剰発注を控えるよう呼びかけている。専門家は、年末年始は人の移動や接触機会が増え、感染がさらに広がる可能性があると指摘。とくに今年は新型コロナ流行でインフルエンザへの免疫がない人が多いと考えられ、流行のピークは来年1月頃と予測されている。手洗いや咳エチケット、マスク着用、ワクチン接種など、基本的な感染対策の徹底が重要となる。また、小児科ではインフルエンザ以外にも感染性胃腸炎や溶連菌感染症なども増えており、注意が必要だ。参考1)インフルの定点報告数が注意報レベルに 感染者数は9万人超え(CB news)2)コロナやインフルの対症療法薬、過剰な発注抑制を 需給逼迫の恐れ 厚労省が呼び掛け(同)3)コロナ感染者3週連続増 前週比1・27倍、厚労省発表(東京新聞)4)インフルエンザ患者数 前週の2倍以上 40都道府県が“注意報”(NHK)5)新型コロナ患者数 3週連続増加 “冬休み 感染広がる可能性も”(同)6)今般の感染状況を踏まえた感染症対症療法薬の安定供給について(厚労省)2.電子処方箋で誤表示トラブル、24日まで発行停止で一斉点検/厚労省厚生労働省は、マイナ保険証を活用した「電子処方箋」システムにおいて、医師の処方と異なる医薬品が薬局側のシステムに表示されるトラブルが7件報告されたことを受け、12月20~24日までの5日間、電子処方箋の発行を停止し、全国の医療機関・薬局に対し一斉点検を実施する。電子処方箋は、処方箋情報を電子化し、複数の医療機関や薬局がオンラインで共有できるサービス。2023年1月から運用が開始され、重複投薬や飲み合わせの悪い薬の処方を防ぎ、薬局での待ち時間短縮などのメリットがあるとされる。一方で、2024年11月時点で導入率は病院で3.0%、医科診療所で7.6%、薬局で57.1%に止まっている。今回報告された7件のトラブルは、いずれも医療機関や薬局におけるシステムの設定ミスが原因で、医師が処方した薬とは別の薬が薬局の画面に表示されていた。薬剤師らが気付いたため、誤った薬が患者に渡ることはなかったが、健康被害が発生する可能性もあったと福岡 資麿厚生労働相は指摘している。一斉点検期間中、医療機関は紙の処方箋で対応し、点検が完了した医療機関から順次、電子処方箋の発行を再開する。厚労省は、点検が完了した医療機関をホームページで公表する予定。また、医療機関に対し、医薬品マスタの設定確認や、特殊な事例を除きダミーコードを設定しないよう呼びかけているほか、薬局に対しては、調剤時に必ず薬剤名を確認するよう求めている。厚労省は、電子処方箋のベンダーに対しても提供するコードの使用について報告を求め、その結果を公表する。2024年11月時点で、電子処方箋を発行している医療機関は2,539施設、同月の推定処方箋枚数約7,500万枚のうち、電子処方箋は約11万枚(約0.15%)だった。政府は2024年度中に、おおむねすべての医療機関と薬局に電子処方箋を導入する目標を立てていたが、今回のトラブルを受け、目標達成に影響が出る可能性もある。厚労省は、国民に必要な医薬品を確実に届けられるよう、システムの安全性確保に万全を期すとしている。参考1)電子処方箋システム一斉点検の実施について(厚労省)2)電子処方箋の導入薬局で「処方と異なる医薬品」が表示されるトラブル、福岡厚労相「健康被害が発生しうる」(読売新聞)3)マイナ保険証活用「電子処方箋」でトラブル 20日から発行停止(NHK)4)電子処方箋システム、一斉点検へ 薬局で誤った薬の表示トラブル7件(朝日新聞)3.帯状疱疹ワクチン、2025年度から65歳定期接種へ2025年4月開始/厚労省厚生労働省は、2025年4月から帯状疱疹ワクチンについて原則65歳を対象とした定期接種とする方針を決定した。高齢者に多い帯状疱疹の予防と重症化を防ぐことが目的で、接種費用は公費で補助される。また、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染で免疫が低下した60~64歳も対象となる。帯状疱疹は、水疱瘡と同じウイルスが原因で、加齢や疲労などによる免疫力の低下で発症する。50歳以上でかかりやすく、患者は70代が最も多い。皮膚症状が治まった後も、神経痛が数年間残るケースもあり、80歳までに3人に1人が発症するという研究データもある。現在、50歳以上を対象に「生ワクチン」と「組換えワクチン」の接種が行われているが、任意接種のため自己負担が必要(約8,000~44,000円)。定期接種化により、接種費用は国や自治体からの補助が見込まれ、自己負担額は自治体によって異なる見通しだ。開始時期は2025年4月(予定)、対象は原則65歳とするが、HIV感染で免疫が低下した60~64歳も対象とされるほか、経過措置として2025年4月時点で65歳を超えている人に対し、5年間の経過措置を設け、70、75、80、85、90、95、100歳で接種機会を提供するほか、100歳以上の人は定期接種初年度(2025年度)に限り全員を対象とする。帯状疱疹は、高齢になるほど発症しやすく、重症化しやすい。また、長年にわたって生活の質を低下させることもあるため、定期接種化により、高齢者の健康維持に寄与することが期待されている。一方で、定期接種化前に接種希望者が増え、ワクチンの供給が不足する可能性も指摘されている。厚労省は、ワクチンの安定供給に向けて必要な対応を検討するとしている。今後は、政令の改正手続きを進め、準備が整った自治体から順次、定期接種が開始される予定。参考1)帯状疱疹ワクチンについて(厚労省)2)帯状ほう疹ワクチン 来年度定期接種へ 65歳になった高齢者など(NHK)3)帯状疱疹ワクチン、65歳対象の「定期接種」に…66歳以上には経過措置(読売新聞)4)帯状疱疹ワクチン、65歳を対象に25年4月から定期接種へ 5年の経過措置を設け、70歳なども対象に 厚科審(CB news)4.医師偏在対策で地方勤務医に手当増額へ、2026年度から/厚労省厚生労働省は12月19日に開催したの社会保障審議会医療保険部会で、医師偏在対策を検討した。医師不足が深刻な地域で働く医師を増やすため、2026年度を目途に新たな支援策の導入を図る見込み。具体的には、医師少数区域に「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」を指定し、同区域で勤務または派遣される医師の勤務手当を増額する。この財源には医療保険の保険料を充てることが了承された。手当増額の仕組みは、社会保険診療報酬支払基金が保険者から徴収した保険料を財源とし、都道府県が実施主体となる。費用総額は、国が人口、可住地面積、医師の高齢化率、医師偏在指標などを基に設定し、各都道府県へ按分・配分する予定。この措置に対し、健康保険組合連合会(健保連)など保険者側からは、保険料負担増への懸念や費用対効果への疑問が示された。これを受け厚労省は、対策の進捗や効果を検証する仕組みを整備する方針を示した。国、都道府県、健保連などが参加する会議体を想定し、効果や現役世代の保険料負担への影響を検証する。さらに、保険医療機関に「管理者」の役職を新設し、医師の場合、臨床研修後2年、保険医療機関での勤務3年以上を要件とする。これにより、適切な管理能力を持つ医師を管理者に据え、保険医療の質・効率性向上を図るとともに、美容医療などへの医師流出を抑える狙いがある。今回の措置は医師偏在解消に向けた一歩となる。しかし、保険者の理解を得て実効性を高めるためには、費用総額の設定、効果検証の具体化、保険料負担増を抑えるための診療報酬抑制策など、今後の議論が重要となる。参考1)第190回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)2)医師の手当て増額支援、保険者から財源徴収 偏在対策 医療保険部会で了承(CB news)3)医師偏在対策の効果、検証の仕組み整備へ 厚労省(日経新聞)4)都心に集中する医師 「前例なき」参入規制検討も、踏み込み不足?(毎日新聞)5.進む医療の「在宅シフト」在宅患者は過去最多、入院は減少/厚労省厚生労働省が2024年12月20日に発表した2023年「患者調査」の結果によると、在宅医療を受けた外来患者数が1日当たり推計23万9千人と、1996年の調査開始以来、過去最多を記録したことが明らかになった。前回調査(2020年)から6万5,400人増加しており、在宅医療の需要が高まっていることがうかがえた。一方、同年10月の病院・一般診療所を合わせた入院患者数は1日当たり推計117万5,300人で、現在の調査方法となった1984年以降で過去最低を更新した。前回調査から3万6千人減少しており、入院から在宅への移行が進んでいることが示唆された。患者調査は3年ごとに実施され、今回は全国の病院や診療所、歯科診療所計約1万3千施設を対象に、2023年の特定の1日における入院・外来患者数を調査し、推計した。参考1)令和5年(2023)患者調査の概況(厚労省)2)入院患者数、過去最低を更新 23年患者調査(MEDIFAX)3)在宅医療患者1日23万人で最多 23年調査、入院は最少更新(共同通信)6.高額療養費制度の見直し、来年夏から70歳以上の外来2千円増/厚労省厚生労働省は、医療費の自己負担を軽減する「高額療養費制度」について、2025年夏から段階的に見直す方針を固めた。所得区分ごとに自己負担の上限額を2.7~15%引き上げる。とくに高所得者層の引き上げ幅を大きくし、年収約1,160万円以上の区分では月約3万8,000円増の約29万円となる。一方、住民税非課税世帯などの低所得者層に対しては、引き上げ幅を抑えたり、段階的な引き上げを実施することで、急激な負担増による受診控えを防ぐ狙いがある。今回の見直しは、高額な医療費負担を軽減するセーフティーネットである同制度の持続可能性を確保しつつ、子供関連政策の財源確保に向けた医療費抑制を図る目的がある。また、保険給付の抑制により、現役世代を中心に保険料負担の軽減効果も見込まれる。具体的には、2025年8月に70歳未満は、所得区分ごとに自己負担限度額を2.7~15%引き上げ。一般的な収入層(主に年金収入約200万円以下、窓口負担1割)は月2,000円増の2万円。それ以上の所得水準の場合は特例対象外。また、70歳以上で年収約370万円を下回る人が外来受診にかかる費用を一定額に抑える「外来特例」の自己負担限度額も月額2,000円引き上げる方針であり、受診抑制につながる可能性も指摘されているが、詳細については今月末までに決定される見込み。さらに、2026年8月以降に、所得区分を3つに再編して、段階的に引き上げる予定。高額療養費制度の見直しは、国民皆保険制度を守るために、持続可能性と医療費抑制のバランスを取るために行われる。今後、社会保障審議会医療保険部会で具体的な制度設計をめぐる議論を深め、今月末までに最終決定される見通し。参考1)医療保険制度改革について(厚労省)2)高額療養費の外来特例 上限を2千~1万円引き上げ 厚労省最終調整(朝日新聞)3)高額療養費上限引き上げ 激変緩和 最終形は27年8月、3段階検討(同)4)高額療養費の負担上限、高所得で月3.8万円上げ 厚労省(日経新聞)

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第220回 インフルエンザ患者数が前週比2倍以上に増加、年内にも感染ピーク?/厚労省

<先週の動き>1.インフルエンザ患者数が前週比2倍以上に増加、年内にも感染ピーク?/厚労省2.2040年を見据えた新たな地域医療構想、在宅医療強化が必要/厚労省3.移植希望、複数医療機関に登録可能に、体制改革案を公表/厚労省4.医師の働き方改革でガイドラインを改正、時短計画見直しを強化/厚労省5.地方は分娩数減、都市部はコスト増で産科診療所の経営が悪化/日医総研6.担当医が画像診断報告書を見逃し、肺がん診断が1年遅れる医療過誤/神戸大1.インフルエンザ患者数が前週比2倍以上に増加、年内にも感染ピーク?/厚労省インフルエンザの流行が拡大している。厚生労働省によると、11月25日~12月1日の1週間における定点1医療機関当たりの患者報告数は4.86人と、前週の2倍以上に増加した。全国的な流行期に入ってから6週連続の増加で、患者数は2万4,027人に達した。都道府県別では、福岡県が11.43人と最も多く、ついで長野県(9.07人)、千葉県(8.18人)と続いている。専門家は、このペースで患者数が増加すると、年内にも感染のピークを迎える可能性があると指摘している。インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症で、発熱、咳、のどの痛み、頭痛、関節痛、筋肉痛などの症状を引き起こす。感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染や、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ることによる接触感染。厚労省では、手洗い、マスクの着用、咳エチケットなどの感染対策を呼びかけている。また、ワクチンの接種も有効な予防策となる。ワクチンは、接種してから効果が出るまでに約2週間かかるため、流行期前に接種することが推奨されている。参考1)インフルエンザの定点報告数が倍増 感染者数2万人超える(CB news)2)インフルエンザ 感染ピークはいつ?流行期入り後 患者増続く(NHK)2.2040年を見据えた新たな地域医療構想、在宅医療強化が必要/厚労省厚生労働省は、12月6日に「新たな地域医療構想等に関する検討会」を開き、2040年の高齢社会を見据えた新たな地域医療構想案について検討を行った。2040年頃に迎える高齢者人口のピークと医療ニーズの変化に対応するため、入院医療だけでなく在宅医療の強化や医療機関の機能分担を明確化し、地域完結型の医療体制構築を目指す内容となった。2040年には、85歳以上の高齢者が2020年比で42%増加すると予測され、都市部を中心として在宅医療の需要も62%増加する見込みとなっている。新たな構想では、各地域で将来の在宅医療需要を推計し、医療関係者と連携して必要な体制について検討を行っていく。具体的には、医療機関の機能を「急性期拠点機能」「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」の4つに分類し、地域での役割分担の明確化を行う。大学病院などには、医師の派遣や医療従事者育成といった広域的な機能を担うことも期待されており、行政は、地域ごとの医療ニーズを踏まえ、医療機関の機能強化を支援する。この構想は、2024年度補正予算案にも反映されており、医療機関の経営支援、医師不足地域への支援、医療DX推進などに1,311億円が計上されている。一方、財政制度等審議会は、医療費総額の伸びを抑制するため、診療報酬の適正化や医師偏在対策などを提言している。医療現場からは、介護ヘルパーなど在宅医療の担い手不足や、診療報酬改定による経営悪化を懸念する声も上がっており、新たな地域医療構想の実現には、医療費抑制と医療提供体制の充実を両立させることが課題となる。今回、討議されなかった医師偏在対策については来週、開催する会議で検討を行い、年末までに関係者の合意を得て、対策パッケージとして取りまとめたい考えだ。参考1)第14回 新たな地域医療構想等に関する検討会(厚労省)2)新たな地域医療構想、取りまとめ案を大筋了承 連携・再編・集約化を28年度までに協議(CB news)3)新「地域医療構想」案を公表 「在宅医療」対応強化など 厚労省(NHK)3.移植希望、複数医療機関に登録可能に、体制改革案を公表/厚労省厚生労働省は12月5日、脳死からの臓器移植の体制を抜本的に見直す改革案をまとめ、有識者委員会に提示した。改革案では、提供者(ドナー)家族への対応や移植希望者の選定、臓器搬送の調整など、これまで日本臓器移植ネットワーク(JOT)に集中していた業務を分割し、あっせん機関を複数化する。具体的には、ドナー家族への対応は地域ごとに新設する法人に移管し、JOTは移植希望者の選定や臓器搬送の調整などに専念する。また、移植希望者が登録できる医療機関を、現在の原則1ヵ所から複数ヵ所に拡大する。これにより、第1希望の医療機関が受け入れを断念した場合でも、他の医療機関で移植を受けられる可能性が高まる。さらに、知的障害などで意思表示が困難な人からの臓器提供についても、本人の意思を丁寧に推定した上で判断できるようにガイドラインを見直す予定。この改革案は、JOTの業務多忙化や人員不足による対応の遅れ、移植実施病院の受け入れ体制不足など、現在の臓器移植体制が抱える課題を解決することを目指している。厚労省は、今後、パブリックコメントなどを経てガイドラインを改正し、新たな体制を構築していく方針。参考1)第70回 厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会(厚労省)2)厚生労働省 脳死からの臓器移植 実施体制の大幅な見直し案示す(NHK)3)臓器あっせん、複数機関で 厚労省改革案 移植増狙い負担軽減(日経新聞)4)移植医療体制の抜本見直し案、厚労省臓器移植委が了承…移植希望者の複数施設登録を可能に(読売新聞)4.医師の働き方改革でガイドライン改正、時短計画見直しを強化/厚労省厚生労働省は、医師の労働時間短縮計画作成ガイドラインを一部改正し、11月28日に都道府県などに通知した。改正のポイントは、計画の年度途中における「年度暫定評価」と次年度開始後に行う「年度最終評価」の2段階評価を導入し、よりきめ細かく計画を見直すことができるようにした。今回の改正は、「医師の働き方改革を推進するための医療法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第49号)に基づくもの。同法では、時間外や休日の労働時間が年960時間を超え、特例水準を適用する医師が勤務する医療機関などに、医師の労働時間短縮計画の作成を義務付けている。ガイドラインでは、計画期間について5年を超えない範囲で設定することとし、4月を計画の開始月とした場合を例に、毎年の見直し方法を解説している。初年度は、第3四半期頃に「年度暫定評価」を実施し、計画の対象となる医師の時間外・休日労働時間数や、タスク・シフト/シェアによる労働時間の短縮に向けた取り組みについて実績を確認する。確認期間は4月からおおむね6~8ヵ月間とした。その結果に基づき、第4四半期頃に計画見直しを検討し、年度末までに2年目の計画の変更を行う。2年目以降は、前年度全体の「年度最終評価」を第1四半期頃に実施し、「年度暫定評価」と同様に実績を確認する。その結果に基づき、2年目の計画の見直しが必要かどうかを検討し、計画を見直す場合は6月末日までに計画の変更を行う。一連の見直しは毎年行い、特定労務管理対象機関は時間外・休日労働時間の実績などを記入する参考資料とともに計画を都道府県に提出する。それ以外の医療機関は医療機関等情報支援システム「G-MIS」に登録する。厚労省は、今回のガイドライン改正により、医療機関における医師の労働時間短縮に向けた取り組みが、より効果的に推進されることを期待している。参考1)医師労働時間短縮計画作成ガイドラインの一部改正について(厚労省2)医師の時短計画、2段階評価で毎年見直し タスクシフト・シェアの状況も確認 厚労省(CB news)5.地方は分娩数減、都市部はコスト増で産科診療所の経営が悪化/日医総研日本医師会総合政策研究機構は、全国の産科診療所の経営状況などを把握するため、9月にアンケート調査を実施した。その結果をワーキングペーパーとしてまとめ公表した。これによると、2023年度の産科診療所の経常利益率は3.0%で、前年度から0.4ポイント悪化し、赤字診療所の割合は42.4%と、前年度から0.5ポイント拡大したことが明らかとなった。調査は、日本産婦人科医会の会員の産婦人科と産科の診療所1,000ヵ所を対象に、ウェブ形式と紙の調査票で実施された。有効回答は449ヵ所(有効回答率44.9%)で、このうち医療法人の産科診療所は191ヵ所だった。2023年度の経常利益率を地域別にみると、大都市は2.9%、中都市は3.0%、小都市・町村は3.0%だった。前年度に比べ、中都市では1.1ポイント上昇したが、小都市・町村で2.8ポイント、大都市では1.5ポイント悪化した。都市部では物価高騰と賃上げなどによるコストの増加が経営悪化につながり、地方では分娩数の減少が経営を圧迫している現状が浮き彫りになった。回答施設の病床利用率は、平均5割を切っており、入院患者数が減少していることがわかる。しかし、24時間対応の医療スタッフを維持する必要があるため、人件費の削減が難しく、経営悪化に拍車をかけている。日医総研は、こうした状況が続けば、医療スタッフを維持するのが困難になり、分娩の取り扱いを止めざるを得ない診療所が増えるとして、国による支援を呼びかけている。参考1)産科診療所の特別調査(日医総研)2)産科診療所の4割超が経常赤字 日医総研 医業利益率は悪化(CB news)6.担当医が画像診断報告書を見逃し、肺がん診断が1年遅れる医療過誤/神戸大神戸大学医学部附属病院は12月6日、医師2人が患者のCT画像診断報告書に記載された肺がんの疑いを見落とし、診断が約1年遅れる医療過誤があったと発表した。患者は70代の女性で、2016年から心臓血管疾患の経過観察のため、同病院で定期的にCT検査を受けていた。2022年10月のCT検査で放射線科医が肺がんの疑いを指摘したが、当時の担当医は報告書の内容を確認しなかった。翌2023年10月にも同様の指摘がされたが、別の担当医もまた見落としていた。同年10月中旬、患者のかかりつけ医が診断報告書を確認し、肺がんの疑いに気付き、同病院の呼吸器内科に紹介したことで、肺がんの診断が確定した。しかし、発見時にはすでに進行がんの状態であり、完治が難しい状態になっていた。同病院は、早期に発見できていれば手術などの治療が可能だった可能性が高いことを認め、「患者とご家族に多大な苦痛をおかけしたことを反省し、謝罪申し上げる」と発表した。再発防止策として、同病院では、報告書の見落としを防ぐシステムの活用や、診療科ごとに診断リポートの重大な指摘を見逃さないよう確認する責任者を置くなどの対策を講じるとしている。参考1)画像診断レポートの確認不足による肺癌の確定診断及び治療の遅延について(神戸大)2)神戸大付属病院で医療ミス、肺がん疑いの患者CT検査結果の確認怠る…発見遅れ完治困難に(読売新聞)3)神戸大病院 肺がん疑いのCT画像報告書を主治医が見落とし 1年放置し「重大な影響」(神戸新聞)4)神戸大病院で肺がんの診断遅れるミス 疑い指摘を担当医2人が見逃す(朝日新聞)

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第241回 相変わらず診療所開業医をターゲットとする財務省、財政制度等審議会「秋の建議」の注目点

「診療所開業医=日本医師会」がまたまたカチンとくる内容こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は一昨年秋にも登った埼玉県・奥武蔵の伊豆ヶ岳に行って来ました。西武秩父線の吾野駅から子ノ権現、天目指峠を経て伊豆ヶ岳、正丸峠を経て正丸駅に下りるいつものコースです。子ノ権現までの山道のイチョウの黄葉や、伊豆ヶ岳周辺のカエデの紅葉、正丸峠にある奥村茶屋名物のジンギスカンなどを堪能して帰路につきました。このコース、昨年は左足の中手骨を骨折していて行っていません。その前の2022年は苗場山で痛めた右膝をかばいながらの登山、2021年は正丸峠からの下りで転倒し、左手小指を骨折しました。個人的に何かと整形外科と縁があるので少々不安でしたが、今年は特に何のイベントも起きず無事下山できました。ちなみに、正丸峠はしげの秀一の漫画「頭文字(イニシャル)D」にも登場する、かつての“走り屋”の聖地でもあります。車で秩父を訪れる方は、ハイカーと“走り屋”が混在する歴史的レストラン、奥村茶屋をぜひ訪れてみてください。さて、今回は財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会が11月29日に2025年度の予算編成に向けた意見書(令和7年度予算の編成等に関する建議、通称「秋の建議」)をとりまとめ、加藤 勝信財務相に提出しましたので、その内容について書いてみたいと思います。昨年のように、翌年に診療報酬改定を控えた年の秋の建議には、財務省の考えを反映させた厳しい提言や大胆な施策案が盛り込まれることが多く、昨年などは診療報酬本体マイナス改定が適当だとし、とくに診療所に入る報酬の単価を5.5%程度引き下げるよう求め、日本医師会などの大きな反発を招きました(「第188回 診療報酬改定シリーズ本格化(後編) 『財務省による医療界を分断するような動きがある』と日医・松本会長、『私たちは、財務省の奴隷なのでしょうか』と都医・尾崎会長。その財務省は地域別診療報酬を提案」)。今年の「秋の建議」も総じて「診療所開業医=日本医師会」がまたまたカチンとくる内容になっており、医療について財務省の主要ターゲットが相変わらず診療所(とくに大都市の)であることが伺えます。「自由開業制・自由標榜制が、医師の偏在の拡大につながっている」「秋の建議」の医療分野の重点項目としては、創薬力強化、薬価改定、医師偏在対策などが並びました。このうち、厚生労働省で今、「総合的な対策パッケージ」の策定が進められている医師偏在対策については、「自由開業制・自由標榜制が、医師の偏在の拡大につながっている。(中略)地域間、診療科間、病院・診療所間の医師偏在を解決するためには、保険医療機関の指定を含む公的保険上の指定権限の在り方にまで踏み込んだ実効的な規制を導入することが不可欠」として、「外来医師多数区域での保険医の新規参入に一定の制限を設けることはもとより、さらに、既存の保険医療機関も含めて需給調整を行う仕組みを創設する」といった手法の導入を提言しています。また、かねてより財務省が提言してきた「診療所の偏在是正のための診療報酬の地域別単価の導入」も再度盛り込まれました。地域別単価については本連載の「第209回 これぞ財務省の執念? 財政審・財政制度分科会で財務省が地域別単価導入を再び提言、医師過剰地域での開業制限も」などでも度々書いてきたことです。秋の建議でも「医師偏在対策として、地域別診療報酬の仕組みを活用し、報酬面からも診療所過剰地域から診療所不足地域への医療資源のシフトを促していくべきである。なお、当面の措置として、診療所過剰地域における1点当たり単価(10円)の引下げを先行させ、それによる公費節減効果を活用して医師不足地域における対策を別途強化することも考えられる」としています。建議ではさらに、医師偏在対策をエビデンスベースで進めるためには、診療科ごとの医師偏在指標が必要であるにもかかわらず、そうした指標が存在しないことの問題点も指摘、「例えば『○○科のサービスが特に過剰な地域』について、都道府県や地域医療関係者が客観的・絶対的な形で判断できるような『医師偏在指標』に拠った基準を速やかに策定すべき」としています。この診療科ごとの医師偏在指標の提案は今回初めて出てきた項目です。将来的には標榜科目の制限にもつながっていく提案だと言えます。もっと知事がぐいぐい地域医療提供体制のリストラに介入しろ!「秋の建議」では、現在検討中が進められている新しい地域医療構想についても提言しています。「現状投影に基づく医療ニーズを入院・外来・在宅医療・介護の間で割り当てるという発想ではなく、患者像の変化(需要面での変容)に加えて、希少な医療資源を最大限活用する観点から、各医療機関における入院・外来機能の役割分担の明確化・集約化を加速させることによる地域医療提供体制の効率化(供給面での取組)をしっかりと反映した必要病床数や外来需要等の推計に立脚したものであるべき」といった至極真っ当な提言に続き、「医療法において、地域の会議における協議が整わない場合には、地域で不足している病床機能を提供するよう、個別の病院に指示・要請・勧告できるとの規定があるが、ほとんど発動実績はない」として、「各医療機関に対し、病床の機能分化・連携や病床数の縮減など、構想と整合的な対応を行うよう求めるに際して、国の保険医療機関の指定の在り方の検討と合わせ、知事の権限強化を図るべきである」と、知事の権限強化が必要であると強調しています。要は「もっと知事がぐいぐい地域医療提供体制のリストラに介入しろ!」と言っているわけです。2025年が目標年の地域医療構想の達成具合を考えれば、こちらも真っ当な提言と言えるでしょう。建議にはその他、原則全ての医薬品を対象にした毎年薬価改定の実施、バイオシミラーが出ているバイオ先発品の一部に選定療養を導入すること、セルフメディケーション推進策(医薬品の有用性に応じた自己負担率の設定、薬剤費の定額自己負担の導入、OTC類似薬の自己負担の検討など)、リフィル処方の推進に向けた取り組みなども盛り込まれました。日本医師会は自由開業・標榜の制限、診療報酬の地域別単価の導入、セルフメディケーション推進などの提案に反対を表明ところで、「秋の建議」に向けて財政制度等審議会の財政制度分科会が11月13日に社会保障に関する議論を行い、資料を公表した段階で、日本医師会は自由開業・標榜の制限、診療報酬の地域別単価の導入、セルフメディケーション推進などの提案に反対を表明しています。11月22日付の日経メディカルなどの報道によれば、11月20日に開かれた定例記者会見で日医会長の松本 吉郎氏は、「国民皆保険制度の下で、誰もがどこでも一定の自己負担で適切な診療を受けられることを基本的な理念とし、被保険者間の公平性を期する観点から全国一律の点数が公定価格として設定されている」として1点10円の堅持を強調、セルフメディケーション推進については「薬剤師による的確な受診勧奨・情報共有、医療機関との連携が重要である」として断固反対の姿勢を示しました。また自由開業・標榜の制限については、「職業選択の自由に抵触する」としてこちらも強く反対しています。大都市と地方の土地代や物価差などの実情や、現実には患者は実感できずその存在すら疑わしい医療機関と薬剤師の情報共有・連携などを考えると、松本会長の反論の説得力は極めて弱いと言えるでしょう。それにしても、厚生労働大臣を何度も務め、親日本医師会とも見られる加藤氏が財務大臣になっても、診療報酬の地域別単価導入など、日本医師会が嫌がることを相変わらず提言してくるあたり、財務省の執拗さ、執念を改めて感じることができます。加藤大臣下の財務省と日医との今後の“戦い”に注目したいと思います。

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第216回 マイコプラズマ肺炎5週連続で過去最多更新、厚労省が注意喚起/厚労省

<先週の動き>1.マイコプラズマ肺炎5週連続で過去最多更新、厚労省が注意喚起/厚労省2.新たな地域医療構想で、2次救急病院はどう分類? 定義が課題に/厚労省3.外科医不足解消へ集約化・重点化を検討 厚労省が提案/厚労省4.信頼できるがん情報はどこに? 半数近くの患者はがん情報が入手困難/国立がん研5.出生数減少、過去最少を更新 社会保障制度への影響も懸念/厚労省6.コロナ禍の補助金、不正受給21億円 会計検査院が厳正な対応を要求/会計検査院1.マイコプラズマ肺炎5週連続で過去最多更新、厚労省が注意喚起/厚労省マイコプラズマ肺炎の感染拡大が続いている。国立感染症研究所の発表によると、10月21~27日の1週間における定点医療機関当たりの患者報告数は2.49人で、5週連続で過去最多を更新した。都道府県別では、愛知県の5.4人が最も多く、次いで福井県(5.33人)、青森県(5.0人)、東京都(4.84人)、埼玉県(4.67人)と続いている。マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ細菌による呼吸器感染症で、咳や発熱が主な症状。子供や若者に多くみられるが、大人も感染する可能性がある。厚生労働省は、咳が長引くなどの症状がある場合は医療機関を受診するよう呼びかけている。また、感染拡大防止のため、手洗い、マスク着用などの基本的な感染対策を徹底するよう促している。一方、手足口病も依然として高止まりが続いている。10月21~27日の1週間における定点医療機関当たりの患者報告数は8.06人で、警報レベル(5.0人)を超えている。手足口病は、主に乳幼児がかかるウイルス性の感染症で、発熱や口内炎、手足の発疹などが主な症状。感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染や、接触感染。厚労省は、手足口病の流行状況を注視し、引き続き予防対策の徹底を呼びかけている。参考1)全数把握疾患、報告数、累積報告数、都道府県別(国立感染症研究所)2)マイコプラズマ肺炎が5週連続で過去最多 手足口病も高止まり 感染研(CB news)3)マイコプラズマ肺炎が猛威=感染者、4週連続で過去最多更新-厚労省「手洗い、マスク着用を」(時事通信)2.新たな地域医療構想で、2次救急病院はどう分類? 定義が課題に/厚労省2026年度から始まる新たな地域医療構想に向け、厚生労働省は病院機能報告制度の具体化を進めている。11月8日に開かれた「新たな地域医療構想等に関する検討会」では、地域ごとに整備する4つの機能と広域的な機能を担う大学病院本院の機能が提示された。地域ごとの機能は、(1)高齢者救急等機能、(2)在宅医療連携機能、(3)急性期拠点機能、(4)専門等機能(リハビリや専門性の高い医療など)となっており、1つの医療機関が複数の機能を併せ持つこともあり得るとされた。広域的な機能を担う大学病院本院は、「医育および広域診療機能」として、医師派遣、医師の卒前・卒後教育、移植や3次救急などの広域医療を担っていくこととされた。急性期拠点機能については、全国の2次救急医療機関(3,194施設)の半数以上が、救急車の受け入れが23年度に500件未満だったことから、手術や救急など医療資源を多く要する症例を集約化し、医療の質を確保するため、報告できる病院数を地域ごとに設定する方針となった。検討会では、機能の名称や定義が分かりにくいという意見や、高齢者救急等機能と急性期拠点機能の役割分担、2次救急病院の分類などについて議論があった。厚労省は、これらの意見を踏まえ、名称や定義を明確化し、2025年度中に新たな地域医療構想の策定ガイドラインを示す予定。参考1)第11回新たな地域医療構想等に関する検討会[資料](厚労省)2)医療機関機能4プラス1案示す、検討継続 厚労省「複数報告」も想定(CB news)3)新地域医療構想で報告する病院機能、高齢者救急等/在宅医療連携/急性期拠点/専門等/医育・広域診療等としてはどうか-新地域医療構想検討会(Gem Med)3.外科医不足解消へ集約化・重点化を検討 厚労省が提案/厚労省厚生労働省は10月30日に「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」を開き、外科医不足の解消に向け、外科医療の集約化・重点化を検討課題として提案した。背景には、外科医の増加がほかの診療科に比べて緩慢であること、時間外・休日労働の割合が高いことなど、外科医の労働環境の厳しさが挙げられている。検討会では、外科医の減少に対する学会の取り組みとして、日本消化器外科学会と日本脳神経外科学会からヒアリングが行われ、両学会からは、症例数の多い施設ほど治療成績が向上する傾向があること、救急対応など地域医療の均てん化が必要な領域もあることなどが報告された。構成員からは、集約化の必要性や、地域や領域に応じた対応の必要性などが指摘された。一方、集約化によって医師の都市部集中が加速する可能性や、地域での専門医育成の難しさなどが課題として挙げられた。厚労省では、これらの意見を踏まえ、新たな地域医療構想等に関する検討会に報告し、医師偏在対策の総合的な対策パッケージ策定に向けて検討を進める方針。参考1)第7回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会(厚労省)2)外科の集約化・重点化は医師偏在対策で「喫緊の課題」、厚労省が提案(日経メディカル)3)急性期病院の集約化・重点化、「病院経営の維持、医療の質の確保」等に加え「医師の診療科偏在の是正」も期待できる-医師偏在対策等検討会(Gem Med)4.信頼できるがん情報はどこに? 半数近くの患者はがん情報が入手困難/国立がん研国立がん研究センターなどが、2023年12月に実施したアンケート調査によるとオンラインでがん情報を入手する際に困難を感じているがん患者が45%に上ることが明らかになった。この調査は、インターネット上で約1,000人のがん患者を対象に行われ、オンラインでの情報収集における課題や情報源、情報活用について尋ねたもの。回答者の45%が「オンラインでがん関連情報を得る際に困難を感じたことがある」と回答し、そのうち5%は「常に困難を感じている/感じていた」と回答した。困難を感じた理由としては、「自分に合った情報をみつけることができない」「さまざまな情報が分散して掲載されている」「専門用語が多い」といった点が挙げられた。情報の入手元としては、検索エンジンが94%と最も多く、次いで動画共有サービスが30%、SNSが17%となった。この調査結果を受け、国立がん研究センターや全国がん患者団体連合会などは、「がん情報の均てん化を目指す会」を立ち上げた。同会は、アンケート調査の結果を踏まえて、患者が理解しやすい情報発信の必要性や、科学的根拠に基づかない情報への対応など、3つの課題と提言をまとめた。情報源に関する課題では、専門用語を避け、患者が理解しやすい情報発信が求められるとともに、信頼できる情報源の活用を促進するべきだと提言している。情報へのリーチに関する課題では、患者が適切な情報にアクセスできるよう、信頼できる情報を集めたポータルサイトの作成や、優良なWebサイト同士の相互リンクによる誘導強化を提言している。情報の活用に関する課題では、医師やがん相談支援センターによるサポート体制を強化し、患者が情報の意味を理解し、自分の状況に合わせて解釈できるよう支援するとともに、患者向けオンラインユーザーガイドを作成し、情報活用力を高めるための普及啓発を行うべきだと提言している。同会は今後、これらの提言を基に、具体的な対策を検討していく。参考1)がん情報のネットでの収集 半数近くが「困難」経験 患者調査で判明(朝日新聞)2)がん情報の均てん化に向けて~がん患者がオンライン上でがん情報を入手・活用する際の課題と提言~(がん情報の均てん化を目指す会)5.出生数減少、過去最少を更新 社会保障制度への影響も懸念/厚労省厚生労働省が11月5日に発表した人口動態統計によると、2024年上半期(1~6月)の出生数は、前年同期比6.3%減の32万9,998人だった。このペースで推移すると、2024年の年間出生数は70万人を割り込み、過去最少を更新する可能性が高まっている。出生数の減少は8年連続で、少子化に歯止めがかからない深刻な状況。背景には、未婚化・晩婚化の進行に加え、コロナ禍で結婚や出産を控える人が増えたことが挙げられる。出生数の減少は、労働力人口の減少や消費の冷え込みなど、経済への影響も懸念され、また、医療や年金などの社会保障制度の維持も困難になる可能性がある。政府は、少子化対策として児童手当や育児休業給付の拡充などを進めているが、今後、抜本的な対策が求められている。参考1)人口動態統計(厚労省)2)24年上半期の出生数は33万人 初の70万人割れか 人口動態統計(毎日新聞)3)ことし上半期の出生数 約33万人 年間70万人下回るペースで減少(NHK)4)今年上半期の出生数は33万人届かず 過去最低だった去年を下回る見込み 厚労省発表(テレビ朝日)6.コロナ禍の補助金、不正受給21億円 会計検査院が厳正な対応を要求/会計検査院会計検査院は11月6日、2023年度の決算検査報告を公表し、新型コロナウイルス対策の交付金や補助金を巡り、医療機関による不正受給など、計648億円の国費の不適切な取り扱いを指摘した。報告書によると、コロナ禍で医療体制を整備するために支払われた国の補助金において、約21億円が過大に交付されていた。中には虚偽の申請や制度の理解不足によるものなど、悪質なケースも含まれていた。具体的な事例として、空き病床とコロナ診療で休止した病床を重複申請するなどした病床確保料の過大請求、トイレや洗濯機置き場を診察室としてカウントするなどした発熱外来の補助金の不正受給、オペレーターの勤務時間を水増しするなどしたワクチン接種コールセンター業務の不正請求、納入されていない設備を納入したと虚偽報告などした救急・小児科医療機関の補助金不正受給などが挙げられている。会計検査院は、事業者側の制度理解不足や行政側の審査の甘さを指摘し、再発防止を求めている。また、コロナ交付金については、総額18兆3,000億円のうち約2割の約3兆2,000億円が不要になっていたことも判明した。使途に制限がないことから、「イカのモニュメント」や「ゆるキャラの着ぐるみ代」など、コロナ対策などとの関連性が不明瞭な事業に交付金が使われたケースもあり、批判が出ている。会計検査院は、自由度の高い交付金事業は、効果検証を行い国民に情報提供する必要があると指摘している。参考1)公金648億円余りが不適切取り扱いと指摘 会計検査院(NHK)2)コロナ医療支援21億円過大 トイレも「診察室」扱いで申請(日経新聞)3)今村洋史・元衆院議員の病院、新型コロナ診療体制の補助金1.6億円を不当申請…「考え甘かった」(読売新聞)

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第237回 「新たな地域医療構想」の議論本格化、どんどん増える“協議”する項目、元々機能していなかった地域医療構想調整会議のさらなる形骸化が心配

四病協が新たな地域医療構想における「医療機関機能」のイメージ案に再考求めるこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。野球シーズンも終わってしまいました。米国のMLBは、大谷 翔平選手が所属するロサンゼルス・ドジャースが4年ぶりのワールドシリーズ優勝を決めました。前の優勝は4年前、2020年です。このときはコロナ禍の真っ只中、レギュラーシーズンの試合数はわずか60試合で、ワールドシリーズも両チーム(相手はタンパベイ・レイズ)の本拠地でもないテキサス州のグローブライフ・フィールドで行われました。しかも、試合のとき以外は選手全員がホテルに缶詰めとなって全試合を戦うバブル方式(まとまった泡の中で開催する、という意味)でした。さらに、ジャスティン・ターナー選手が新型コロナウイルス陽性なのに出場して物議を醸すなど、優勝にちょっとしたケチも付きました。たった4年前ですが、コロナ禍というのはいろんなことが異常だったなと改めて思います。そのドジャース、今年は年間162試合をフルに戦い、ポストシーズンでさらに16試合、最後は宿敵ニューヨーク・ヤンキースを破っての優勝(しかもパレード付き)ということで、文句のつけようがない正真正銘の世界一です。選手にとってもファンにとっても喜びはひとしおでしょう。それにしても、ワールドシリーズ第5戦の5回表、ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手、アンソニー・ボルピー選手、ゲリット・コール投手が連続して守備のミスを連発、5点差を逆転され自滅していったのには驚きました。それも高校生でもしないような単純ミスばかりです。王者ヤンキースの選手も普通の人間で、大舞台では緊張したり、うっかりしたりするということですね。いやはや、野球は面白いです。さて、今回は厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」で議論されている「医療機関機能」のイメージ案に対して、四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会で構成)が再考を求めたことについて書いてみたいと思います。四病協はいったい何が不満だったのでしょうか。入院医療だけでなく、外来・在宅医療、介護との連携等を含む医療提供体制全体の課題解決を図る「新たな地域医療構想」厚生労働省の「新たな地域医療構想等に関する検討会」は、2025年を目標年とする現在の地域医療構想の「次」について検討を進める会です。2040年を目処に、それまでにどのような医療提供の姿を作っていくのかが、多面的に議論されています。2024年3月29日に第1回が開かれて以降、10月17日までに10回を数えました。8月26日に開かれた第7回では、厚労省が“中間取りまとめ”として「新たな地域医療構想を通じて目指すべき医療について」と題する資料を提示、次のような基本的な考え方が示され、委員の了承も得て本格的な議論に入りました。85歳以上の高齢者の増加や人口減少がさらに進む2040年以降においても、全ての地域・全ての世代の患者が、適切な医療・介護を受け、必要に応じて入院し、日常生活に戻ることができ、同時に、医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制を実現する必要がある。このため、入院医療だけでなく、外来医療・在宅医療、介護との連携等を含め、地域における長期的に共有すべき医療提供体制のあるべき姿・目標として、地域医療構想を位置づける。人口や医療需要の変化に柔軟に対応できるよう、二次医療圏を基本とする構想区域や調整会議のあり方等を見直した上で、医療・介護関係者、都道府県、市区町村等が連携し、限りある医療資源を最適化・効率化しながら、「治す医療」を担う医療機関と「治し、支える医療」を担う医療機関の役割分担を明確化し、「地域完結型」の医療・介護提供体制を構築する。端的に言えば、今の地域医療構想が、病床の機能分化・連携のみに重点を置いていたのに対し、次の地域医療構想は、入院医療だけでなく、外来・在宅医療、介護との連携等を含む、医療提供体制全体の課題解決を図るため大幅にバージョンアップを図る、ということです。四病協での指摘はちょっと神経質過ぎる気もさて、四病院団体協議会は、厚労省が示した構想区域で求められる「医療機関機能のイメージ案」が誤解を生みかねないなどとして、11月にも書き換えを求める意見を出す方針を決めました。これは、四病協が10月23日に開いた記者会見で、日本病院会の相澤 孝夫会長が明らかにしたものです。「医療機関機能のイメージ案」とは、9月30日と10月17日に開かれた「新たな地域医療構想等に関する検討会」で厚労省が示したものです。下図のように、医療機関に報告を求める機能の類型について、(1)高齢者救急の受け皿となり地域への復帰を目指す機能、(2)在宅医療を提供し、地域の生活を支える機能、(3)救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能、の3項目と「その他地域を支える機能」を提示しています。新たな地域医療構想等に関する検討会(令和6年10月17日)提出資料より10月23日付のキャリアブレインマネジメントなどの報道によれば、四病協では、(1)の病院は高齢者の救急医療のみに対応すればよいのか、という指摘があったほか、(3)の病院は3次救急医療だけを提供すればよいのか、といった意見が出て、「誤解を生む」との声が上がったとのことです。相澤氏は記者会見で、「イメージ案を書き直してもらうようにしたらどうかということで、四病協としての意見をまとめて厚労省に提出していく」と述べたとのことです。確かに、この図をぼーっと眺めると、「高齢者救急の受け皿」と「救急医療等の急性期の医療」は別の医療機関が担うように見えるかもしれません。ただ、「医療機関」と書かれているのではなく「医療機関機能」と、「機能」という言葉が付いています。四病協の指摘はちょっと神経質過ぎる気もします。とは言え、適当に書かれたポンチ絵が一人歩きしてしまうこともよくあります。まだ何も決まっていないので、誤解を生まない表現に変えておくことは大切かもしれません。地域医療構想調整会議も見直さないと次の地域医療構想も“絵に描いた餅”で終わりかねない私自身がこの「新たな地域医療構想」で気になるのは、検討すべき(あるいは協議すべき)項目が多岐に渡り、多過ぎる点です。病床の機能分化・連携推進だけが目的だった今の地域医療構想ですら、地域医療構想調整会議(いわゆる協議の場)の多くはほとんど機能しなかったと言われています。結果、多くの構想区域で病床の機能分化は進まず、急性期病床は思うようには減らず、回復期病床が足りない状況を招いたわけです。地域医療構想調整会議という組織には、現状、大きな強制力はありません。ダラダラ協議をして、何も決めなくても罰則もありません。唯一、地域医療構想調整会議での協議が整わないときに、都道府県知事は公的医療機関には「不足する医療機能を提供することを指示」でき、民間医療機関には「不足する医療機能を提供することを要請」できるくらいです。都道府県知事の医療機関に対する「要請」はほとんど意味がなく、実質機能しないことはコロナ禍で実証済みです。「新たな地域医療構想」に向けて、地域医療構想調整会議の位置付けや強制力、権限、さらには都道府県知事の権限も見直さないと、「地域医療構想」はまた“絵に描いた餅”で終わりかねません。これからの「検討会」の議論の行方に注目したいと思います。

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第214回 美容医療のトラブル増加、専門医資格の有無など報告義務化へ/厚労省

<先週の動き>1.美容医療のトラブル増加、専門医資格の有無など報告義務化へ/厚労省2.かかりつけ医機能報告制度、2026年夏から公表開始へ/厚労省3.新たな地域医療構想、急性期病院の集約化と外来医療の確保が課題に/厚労省4.2022年度、国民医療費46兆円超と過去最大、高齢化とコロナで増加/厚労省5.救急搬送で選定療養費徴収へ 軽症者増加で救急医療ひっ迫/茨城県6.新学長に山中 寿氏 不透明資金問題で理事ら総辞職/東京女子医大1.美容医療のトラブル増加、専門医資格の有無など報告義務化へ/厚労省美容医療に関するトラブルが増加していることを受け、厚生労働省は10月18日に「美容医療の適切な実施に関する検討会」を開き、医療機関に対し、安全管理状況の定期報告を義務付ける案を提示した。厚労省案では、美容医療などを行っている病院やクリニックに対し、安全管理状況を年1回、自治体に報告することを義務付ける事項などを検討した。国民生活センターなどへの美容医療に関する相談件数は、2023年度に5,507件と5年間で3倍以上に増加している。おもな相談内容は、皮膚障害などの健康被害や料金に関するものが多く、中には、カウンセラーや受付スタッフが施術を行っていたというケースも報告されている。このほか、医療機関に対して行った実態調査の結果、施術技術に関する研修や、施術後の管理についてのルールがないと回答した医療機関が多く、とくに麻酔下施術を行う医師に対する麻酔・全身管理に関する研修がないと回答した医療機関は60%を超えていた。こうした現状を受け、厚労省は報告の義務化を打ち出した。具体的には、専門医資格の有無や、副作用などの問題が起きた場合の相談窓口などを報告し、自治体がその内容を公表するとしている。また、検討会では、医療機関が遵守すべき法令や、医療事故発生時の対応などをまとめたガイドライン策定の必要性も議論された。さらに、保健所による立ち入り検査の法的根拠を明確化し、指導を強化する方針も示された。厚労省は、年内にも新たな対策をまとめる方針。参考1)第3回美容医療の適切な実施に関する検討会(厚労省)2)美容医療、安全管理体制報告・公表を検討 都道府県に年1回、厚労省案(CB news)3)美容医療 “受付スタッフが施術”のケースも 厚労省の被害調査(NHK)4)美容医療、安全管理状況の報告義務を議論 厚労省検討会、健康被害やトラブル増加(産経新聞)2.かかりつけ医機能報告制度、2026年夏から公表開始へ/厚労省厚生労働省は10月18日、自治体向け説明会を開催し、2025年4月から始まる「かかりつけ医機能報告制度」の詳細を明らかにした。この制度は、慢性疾患を持つ高齢者など地域住民が、身近な医療機関で継続的な医療を受けられる体制を強化することを目的としている。対象となるのは、特定機能病院と歯科医療機関を除くすべての医療機関。医療機関は「日常的な診療を総合的・継続的に行う機能」の有無や、時間外診療、入院・退院支援、在宅医療、介護との連携といった機能の提供状況を、毎年都道府県に報告する必要がある。初回の報告は2026年1~3月に行われ、都道府県は報告内容を確認した上で、2026年夏頃から順次公表する予定としている。報告された情報は、地域の関係者による協議の場で活用され、地域のかかりつけ医機能確保に向けた具体的な方策が検討される。そのため協議には、地域の実情に精通したキーパーソンを参加させることが重要となる。厚労省は、この制度を通じて、地域医療の充実と住民の健康増進に繋がることに期待を寄せている。参考1)かかりつけ医機能報告制度に係る第1回自治体向け説明会 資料(厚労省)2)「かかりつけ医機能」報告結果、26年夏ごろから公表 都道府県が順次(CB news)3.新たな地域医療構想、急性期病院の集約化と外来医療の確保が課題に/厚労省厚生労働省は、2040年頃を見据えた新たな地域医療構想の策定に向けて検討会で議論を進めている。10月17日に「新たな地域医療構想等に関する検討会」を開き、医療機関の機能分化と外来医療の確保について討論した。2040年までに高齢化の進展によって、医療需要は増加する一方、医療従事者の確保は困難になることが予想されている。とくに、救急医療や手術など高度な医療を提供する急性期病院においては、質の高い医療を提供し続けるために、一定の症例数を確保することが重要となる。検討会では、急性期病院の機能を明確化し、医療の質やマンパワー確保の観点から、都道府県への報告に当たり、一定の基準を設けることが提案された。具体的には、救急搬送の受け入れ件数や高度手術の実施件数などを基準とする案が示された。しかし、急性期病院の集約化は、一部病院の急性期からの撤退を意味し、病院経営や地域住民の医療アクセスへの影響も懸念されている。この課題を解決しつつ、地域の実情に応じた集約化を進めることが求められる。さらに2040年には、診療所医師の高齢化や医師不足により、診療所のない市区町村が342ヵ所に増加する可能性が指摘されている。地域住民が身近な場所で医療を受けられるよう、外来医療の確保も重要な課題となっている。また、検討会では、かかりつけ医機能を持つ医療機関と、紹介受診重点医療機関との連携強化、地域医療の確保、医療資源の有効活用などが議論された。具体的には、オンライン診療を含む遠隔医療の活用、医師派遣、巡回診療、診療所と病院の連携などが提案された。厚労省は、これらの議論を踏まえ、年内に新たな地域医療構想の大枠をまとめる予定。参考1)第10回 新たな地域医療構想等に関する検討会(厚労省)2)新たな地域医療構想、病院機能を【急性期病院】と報告できる病院を医療内容や病院数等で絞り込み、集約化促す-新地域医療構想検討会(Gem Med)3)265市区町村で診療所なくなる可能性、40年までに 医師が75歳で引退なら、厚労省集計(CB news)4.2022年度、国民医療費46兆円超と過去最大に/厚労省2022年度の国民医療費は、過去最大の46兆6,967億円に達したことが明らかになった。高齢化の進展に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、前年度比3.7%増と大幅な伸びとなった。厚生労働省が10月11日に発表した「国民医療費の概況」によると、1人当たり医療費は37万3,700円。65歳以上は1人当たり77万5千円と、医療費全体の6割以上を占めていた。医療費の財源は、国民や企業が負担する保険料が約半分、公費が約4割、患者の自己負担が約1割。高齢化による医療費増加や団塊の世代の後期高齢者入りにより、75歳以上の医療費が増加傾向にあった。また、1人当たり医療費は、最高額の高知県と最低額の埼玉県で1.44倍の格差があり、依然として地域間での偏りがみられている。高齢者の医療費の伸びは、65歳未満と比べて低い水準に抑えられており、後発医薬品の使用促進などの効果と考えられる。一方、がん医療費は、65歳未満、65歳以上ともに、シェアは減少していたが、コロナの影響で検診などが控えられた可能性があるため、今後の高齢化の進行とともに新しい技術導入などで増加も予想されている。今後の課題としては、高齢化の進展に伴う医療費増加への対応、地域格差の解消、医療費の適正化などが挙げられている。参考1)「令和4(2022)年度 国民医療費」を公表します-46兆6,967億円、人口一人当たり37万3,700円-(厚労省)2)22年度の医療費、46兆円超 過去最大、コロナも影響(共同通信)5.救急搬送で選定療養費徴収へ 軽症者増加で救急医療ひっ迫/茨城県茨城県は、救急搬送件数の増加と軽症者の利用による救急医療現場のひっ迫を受け、2024年12月2日から救急搬送における選定療養費の徴収を開始すると発表した。救急車で搬送された患者のうち、救急要請時の緊急性が低いと判断された場合の搬送が対象となる。具体的には、軽度の切り傷や擦り傷、微熱のみ、風邪の症状のみなどが該当する可能性があるが、意識障害や痙攣、大量出血を伴う怪我などは、これまで通り緊急性が高いと判断される。選定療養費は、紹介状を持たずに大病院を受診する際に患者側が負担する。今回の制度見直しにより、救急搬送であっても、緊急性が低いと判断された場合には、この選定療養費が徴収されることになる。対象となる病院は、県内22病院で、金額は病院によって異なる。県は、この制度導入により、軽症者の安易な救急車利用を抑制し、重症患者の搬送を優先することで、救急医療体制の確保を目指す。なお、緊急性の判断に迷う場合は、「茨城県救急電話相談」(#7119または#8000)に相談するよう呼びかけている。参考1)救急搬送における選定療養費の徴収について(茨城県)2)茨城県、12月に救急搬送時の選定療養費徴収を開始、独自の工夫でデメリット解消を目指す(日経メディカル)3)救急搬送時の「選定療養費」県が大規模病院ごとの徴収額公表(NHK)6.新学長に山中 寿氏 不透明資金問題で理事ら総辞職/東京女子医大東京女子医科大学は、同窓会組織を巡る不透明な資金の動きがあった問題で、ガバナンス機能不全の責任を取り、理事会の全理事と監事が辞任したと発表した。新たに選任された学長は、国際医療福祉大学の山中 寿教授(70)で、就任日は10月23日。山中氏は、1983~2018年まで女子医大に在籍しており、臨床と研究両面で高い実績を上げていた。選考委員会は、山中氏を「学長にふさわしい」と判断し、全会一致で選出した。女子医大では、同窓会組織の一般社団法人「至誠会」を巡る不透明な資金の動きが発覚し、当時の理事長だった岩本 絹子氏が今年8月に解任されており、今回の理事・監事の総辞職と新学長の選任は、この問題を受けた組織改革の一環とみられている。参考1)新生東京女子医科大学のための学長候補者の選考報告について(東京女子医大)2)東京女子医大の全理事・幹事11人が寄付金問題で引責辞任、新学長に国際医療福祉大の山中寿教授(読売新聞)3)東京女子医大、理事ら辞任 新学長選任、不透明資金で(東京新聞)

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第233回 40年前の“駆け込み増床”を彷彿とさせる“駆け込み開業”が起こる?診療所が多い地域で新規開業を許可制にする案を厚労省が提起

「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」に関する議論進むこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。MLBのポストシーズンが盛り上がっています。10月6日(日本時間)のナショナルリーグ地区シリーズ、ドジャースvs.パドレス戦は、NHKはなんと地上波でライブで放送していました。第2戦は大谷 翔平選手と、ダルビッシュ 有投手の対戦が見応えがありました。大谷選手は3打数無安打で、ダルビッシュ投手の多彩な変化球に完全に抑えられていました。ダルビッシュ投手は2017年のポストシーズン、ロサンゼルス・ドジャースの投手としてワールドシリーズ進出に貢献、しかしその本番のワールドシリーズで、ヒューストン・アストロズとの戦いで2敗を喫し、ファンからは“戦犯”とまで非難され、同年にFA(フリーエージェント)で退団しています。ドジャースに対しては複雑な思いもあるであろうダルビッシュ投手のこの日の勝利は、いちファンとして感慨深いものがありました。サンディエゴ・パドレス、このまま上まで行くかもしれませんね。さて、今回は本格化してきた「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージ」に関する議論について書きます。この問題については、本連載でも幾度か取り上げてきました。「第229回 武見厚労相最後の大仕事か?『医師偏在是正に向けた総合的な対策』の議論本格化」では現在議論されている骨子案の内容を紹介しました。この「対策パッケージ」、厚生労働省(以下、厚労省)のいろんな検討会等で議論が行われていますが、一体どこが主導してまとめていくのか見えづらいです。最終的には厚労省内の官僚チームがエイヤッとまとめ上げ、大して誰も傷まない中途半端なパッケージが出来上がるのではないかと心配です。9月30日にこのテーマが議論されたのは、第9回「新たな地域医療構想等に関する検討会」(座長:遠藤 久夫・学習院大学長)でした。ここでは、診療所が多い「外来医師多数区域」におけるさまざまな規制的手法が厚労省から提起され議論されました。新規開業時に足りない医療機能を要請できる仕組みを法制化規制的手法の案でとくに注目されたのは、診療所が多い「外来医師多数区域」において、開業希望者に地域で足りない医療機能を要請したり、新規開業を許可制にしたりするという案です。現状、診療所は免許を持つ医師が地方自治体に届け出れば、原則自由に開業できます。その点は、医療計画で2次医療圏ごとに病床数が規制されている病院よりもハードルは極めて低いと言えるでしょう。また、開業できる診療科も自由です。都道府県が開業を希望する医師に救急対応など足りない医療機能を設けることを要請できる仕組みが指針(外来医療に係る医療提供体制の確保に関するガイドライン1))ベースでありますが、法律に規定されているわけではありません。つまり、在宅医療など地域に不足している医療機能の提供を開業希望者に強制することはできないのです。そこで今回、厚労省が「外来医師多数区域における新規開業希望者への地域で必要な医療機能の要請等の仕組みの実効性の確保」を目的に提起したのは、『指針』の仕組みの医療法での位置付け(法制化)です。それによって、外来医師多数区域の新規開業希望者に対して、事前に診療所で提供する予定の医療機能を記載した届け出を求め、都道府県はその届け出の内容を踏まえて、不足している医療機能の提供を要請できるようにするわけです。要請に従わない場合は勧告・公表などのペナルティも設けるとしています。また、外来医師多数区域での開業を許可制とし、開業の上限を定める案も提起しました。なお、検討に当たっては、憲法上の職業選択の自由・営業の自由との関係、規制の合理性、既存診療所との公平性および新規参入抑制による医療の質等について留意して検討を進めるとしています。「『営業の自由』に抵触する可能性も高く、規制的手法はまったく馴染まない」と日医常任理事こうした提起に対して、同検討会では賛成論、反対論の両方が出ました。10月1日付けのGemMed(旧メディ・ウォッチ)などの報道によれば、「医師偏在を強力に是正するためには規制を強める必要がある。優先すべき外来医師多数区域での新規開業対策である」(土居 丈朗・慶應義塾大学経済学部教授)、「医師多数区域に医師が集まる背景を分析して過剰集中を規制的に解決しなければ偏在は解消しない」(河本 滋史・健康保険組合連合会専務理事)といった積極的な賛成論が構成員から出ました。しかし一方で、「“日本国憲法第22条第1項から導かれる『営業の自由』”に抵触する可能性も高く、規制的手法はまったく馴染まない」(江澤 和彦・日本医師会常任理事)、「規制的手法を実行したとしても、医師は医師少数区域には行かず、医師多数区域の近隣に動くだけである」(伊藤 伸一・日本医療法人協会会長代行)といった反対論も、日本医師会をはじめとする医療提供側から出ました。ある構成員から、「都道府県が要請する機能を提供しない場合は保険医療機関の指定を取り消すなどの強い対応をすべき」との意見が出ましたが、日本医師会の江澤氏は、開業を希望する勤務医と地域の医師会などによる『協議の場』を作ることを提案、保険医療機関の指定取り消しなどの対応には反対したとのことです。地域の病院で働く医師を増やすために本当に効果があるかどうかは疑問私自身も、何らかの規制的手法の導入はもはや避けられないことだと思います。人口減少が急速に進む地方では、どんどん診療所や中小病院が閉鎖しています。そんなところに新規開業する医師はいませんから、早めに医療機関を集約して、基幹病院を中心とした医療・介護のネットワークを作っておかなければなりません(地方での診療所開業を促す策は、医療機関の集約化が喫緊の課題である現状では無意味でしょう)。しかし、その病院で働く医師がいないことにはネットワークも作れません。地方の病院で働く医師を半ば強制的に生み出す仕組みがまず必要です。現在検討されている医師偏在是正に向けたさまざまな対策には、そうした地域で働く医師を増やすための方策が多数盛り込まれており、それらがどこまで実効性のある仕組みにできるかがポイントと言えます。そのポイントの一つが、ベースとなる医師数の確保策であり、「外来医師多数区域」において足りない医療機能を要請して開業を牽制したり、新規開業を許可制にしたりする案もその一環ということになりますが、果たしてこれらの案が地域の病院で働く医師を増やすために本当に効果があるかどうか疑問です。「駆け込み増床」のように「駆け込み開業」が起きるかもとくに開業を許可制とし、開業の上限を定める案などは、医療計画の法制化で1980年代後半に起こった「駆け込み増床」のように「駆け込み開業」が起きるかもしれず、現実的ではないでしょう。現実的ではない、ということではこんな案はどうでしょう。そもそも医学部教育、医師の養成には、他学部の学生に比べて比較にならないほどの多額の税金が投入されています。ここはもう、“徴兵制”に匹敵するほどの厳しい勤務年限(自治医大や医学部地方枠のような)をすべて(か相当割合)の医学生に課すという案です。併せて医学部の授業料の無償化も進めていいかもしれません。いずれにせよ、「現実的ではない」と批判されるくらいの方策でないと、医師偏在対策の特効薬にはならないでしょう。今後の議論の行方に注目したいと思います。参考1)厚生労働省:外来医療について

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高齢者の便秘症放置は予後不良のリスクに/ヴィアトリス

 ヴィアトリス製薬は、「『便通異常症診療ガイドライン』改訂1年を踏まえた慢性便秘症治療の新しい当たり前」をテーマに都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、とくに高齢者に多い慢性便秘症についてガイドラインの作成に携わった専門医が便秘症の概要と高齢者に多い便秘症とその介護についてレクチャーを行った。便秘は循環器疾患や脳血管疾患のリスク 「慢性便秘症」をテーマに伊原 栄吉氏(九州大学大学院医学研究院病態制御内科学 准教授)が、便秘症の疾患概要、排便の仕組み、診療ガイドラインの内容、最新の慢性便秘症の治療について説明した。 最新の研究では、便秘は循環器や脳血管疾患などの重篤な疾患とも関連があり、排便回数が4日に1回以下の場合、そのリスクが上昇することが報告されている1)。便秘の有訴率は、60歳以下の女性に多いが、高齢者ではその性差はなくなり、高齢者の25%は便秘に悩んでいる。 排便は、消化管の蠕動運動と腸の水分調節が大きな因子となり、この両方に胆汁酸が関連することが知られている。そして、結腸からの通過時間と直腸の排便機能のどちらかに問題があると便秘となる。便の形状も重要であり、ブリストル便形状スケールの4(表面なめらか、やわらかいソーセージ様)が理想的な形状であり、これ以外の形状では排便で弊害をもたらす。こうした仕組みで、高齢者では先述の水の調整機能の低下や結腸蠕動の低下、直腸・肛門排便機能の低下により便秘になりやすいことが知られている2)。新しい診療ガイドラインのポイント 次に診療ガイドラインの改訂ポイントについて触れ、「便秘症と慢性便秘症の定義の改訂」、「新しい慢性便秘症治療薬を含めた診療フローチャートの作成」、「オピオイド誘発性便秘症の治療方針の提示」の3項目が大きく改訂、追加されたことを述べた。 とくに慢性便秘症では「長期生命予後に関連する」ことが追加記載されたほか、慢性便秘症診療のフローチャートが作成され、機能性便秘症とオピオイド誘発性便秘などの診療が区別された。 慢性便秘症の治療目的は、排便回数や症状改善、QOLの向上から「残便感のないスッキリ便」と「便形状の正常化」へシフトしている。また、診療では、まず大腸がんが隠れていないか鑑別診断を行い、「便が出ないか、出せないのか」の診断へと進んでいく。 通常の原因は結腸の運動が弱くなることで排便に問題があるケースが多く、治療では食事療法(3食摂取/適度な水分/食物繊維を多く、脂肪分を少なくなど)と生活習慣改善(生活のリズム/十分な睡眠/便意を我慢しない/適度な運動と休息など)がまず指導される。 これらで改善しない場合に内服薬治療として、酸化マグネシウム薬(腎臓機能低下者には使用しない)などの腸に水を引く治療薬が第1選択薬として使用される。  さらに改善しない場合には、新しい便秘薬として、上皮機能変容薬と胆汁酸トランスポーター阻害薬の使用が考慮され、ケースによっては短期間頓用として刺激性下剤の追加も考慮される。とくに刺激性下剤は、「頻用することで大腸などの蠕動運動を低下させ、さらなる便秘を誘発するリスクがあるため短期間で止めるべき」と伊原氏は注意を促す。 最後に伊原氏は「生活習慣改善・食事療法に非刺激性下剤で改善せず、刺激性下剤を使用しないと排便できないケースでは、医療機関を受診することを勧める。消化管を中心に体のバランスは維持されるので、便秘治療は重要」と述べ、講演を終えた。高齢者の便秘は、時に死亡のリスクへつながる 「たかが便秘? 高齢者便秘とその介護者の“便秘介護”」をテーマに、中島 淳氏(横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授)が高齢者の便秘診療について講演を行った。 高齢者は加齢による排便機能の低下などにより70歳以上で男女ともに便秘症の患者が増加する。とくに高齢者では、基礎疾患の治療に伴う「薬剤性の便秘」が問題となっており、糖尿病や消化器疾患の治療薬での便秘症状が多いという。また、高齢者では便の形状も重要で、ブリストル便形状スケール(4の正常便が理想)の1~3の硬い便だと排便時のいきみなどで血圧上昇が起こり心血管系疾患を誘発するリスクとなる。一方、便スケール5~6の軟便だと本人も不快であるばかりでなく、介護状態では介護者にも負担をかけると指摘する3)。そのほか、高齢者はトイレで心停止などを起こすリスクがあり、その際家人などに発見される確率も低いという4)。また、排便頻度と循環器系疾患の死亡リスクも相関するとされ、排便のいきみが血圧の変動に影響することも指摘されているほか、近年の研究から便秘がパーキンソン病の発症前駆期にみられる症状であることや、慢性腎臓病の累積発症では便秘がリスクの1つになっている可能性が示唆されていることから、高齢者の便秘(慢性便秘症)はきちんと治療する必要があると指摘する。在宅患者の便秘ケアでは介護者のQOLも視野に 2017年時点で在宅医療を受けている患者は約18万人に上り、年々増加しており、在宅医療を受診している56.9%に便秘がみられるというレポートがある5)。在宅患者が慢性便秘症になる要因としては、先述の加齢に伴う身体変化に加え、四肢機能障害や自室からトイレまでの距離、自力での排便の困難さなど複合的な要因で起こることが知られている。 そして、緩和ケア領域でのマネジメント目標として「快適かつ満足のいく排便習慣の確保」、「排便習慣の自立維持」、「腹痛などの便秘関連症状の予防」の3項目が掲げられている。また、便秘の予防として「プライバシーが保たれ排便が行えるように配慮すること」、「水分や食物繊維を無理のない範囲で摂取すること」、「運動を無理のない範囲で行うこと」、「(禁忌などでない場合)腹部マッサージを行うこと」の4つが提案されている6)。 そのほか、排便管理は、患者家族などの介護する側にも身体的、心理的、社会・経済的負担をかけることにもつながるので、介護者のQOLも視野に入れた排便管理が望まれるという。 慢性便秘症の治療薬としては、浸透圧性下剤が推奨されているが、マグネシウムを含む塩類下剤の使用では定期的なマグネシウム測定が推奨されている。2020年に厚生労働省からもマグネシウム血症へのリスクを考慮した適正使用の文書も発出され、注意喚起がされている。また、中島氏は「刺激性下剤については、有効ではあるものの、日常的に使うと依存性になり、効果減弱となるため、できるだけ必要最小限の使用に止め、頓用か短期間の使用が望ましい」と提唱した。 最後に中島氏は「高齢者の便秘対策は生活指導・食事療法が基本であり、薬物療法では、用量調節が可能な薬剤の考慮が必要。患者の特性に応じた薬剤選択を行い、患者だけでなく、介護者のQOLも視野に便秘治療を行うことが重要」と語り、レクチャーを終えた。■参考文献1)Chang JY, et al. Am J Gastroenterol. 2010;105:822-832.2)伊原栄吉. 日本臨床. 2023;81:242-249.3)Ohkubo H, et al. Digestion. 2021;102:147-154. 4)Inamasu J, et al. Environ Health Prev Med. 2013;18:130-135. 5)Komiya H, et al. Geriatr Gerontol Int. 2019;19:277-281. 6)馬見塚勝郎. 診断と治療. 2018;106:833-838.

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第231回 入院料通則に入ったACP、「人生会議」のネーミングもそろそろ変えどきか?地域包括ケアシステム・セミナーを覗いて考えた(前編)

病院再編の時代から、在宅医療・かかりつけ医・介護との連携の時代へこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。秋になって、政治の世界も野球の世界も、決戦の時を迎えようとしています。野球では、日本のプロ野球もMLBもシーズン終盤に差し掛かり、順位争いが熾烈になってきました。9月24日(日本時間)現在本塁打53、盗塁55を達成した大谷 翔平選手が属するロサンゼルス・ドジャースは、25日からナショナルリーグ西地区の首位を争う、サンディエゴ・パドレスとの3連戦です。先発、中継ぎ、抑えの投手陣全体がズタボロのドジャースが、今年のポストシーズンでどこまで駒を進めることができるのか、それを占う上でもパドレス戦の勝敗(とくに投手の出来)はとても重要です。できることなら2勝1敗でいきたいところですが……。さて、今回は9月2日に東京で開かれた「第10回 地域包括ケアシステム特別オープンセミナー」(医療経済研究機構主催)を覗いてきましたので、その内容を簡単に報告したいと思います。「地域包括ケアシステム」と言えば、かつては介護の世界で使われる言葉でしたが、最近では医療の世界でも普通に使われる言葉となりました。オープニングで、地域包括ケアシステムの育ての親とも言える田中 滋氏(埼玉県立大学理事長)が、医療の世界は「病院再編に重点が置かれた時代から、在宅医療・かかりつけ医・介護との連携重視」へと時代が移りつつあると指摘されたのは、まさに至言だと感じました。「地域包括ケアを支える上でACPは非常に大事」と仲井 培雄氏第10回となった同セミナーのテーマは「尊厳ある”在宅での看取り”とは」でした。基調講演の田中氏に続いて、武田 俊彦氏(日本在宅ケアアライアンス 副理事長)、花戸 貴司氏(東近江市 永源寺診療所 所長)、仲井 培雄氏(医療法人社団和楽仁 芳珠記念病院理事長/地域包括ケア推進病棟協会 会長)、高砂 裕子氏(全国訪問看護事業協会 副会長)、柴田 久美子氏(日本看取り士会 会長)がそれぞれレクチャーし、その後パネルディスカションとなったのですが、私が印象的だったのは仲井氏のACPに関する発言です。地域包括ケア推進病棟協会(2024年6月までは地域包括ケア病棟協会)の会長を務め、2014年の診療報酬改定で新設された地域包括ケア病棟の発展に努めてきた仲井氏は、レクチャー、そしてその後のディスカッションにおいて、「地域包括ケアを支える上でACPは非常に大事」と話し、テーマである「尊厳ある”在宅での看取り”」だけでなく、地域包括ケア定着のためにも今後ACPが地域で広がっていくことが重要である、と幾度も強調していました。「人生会議」という珍妙なネーミング、国民には浸透せずACP(Advance Care Planning)は、将来意思決定能力を失った場合に備えた、患者さん本人によるあらゆる計画のことです。話し合う内容は、将来受けたい、あるいは受けたくない医療・ケア、希望する生活や看取りの場所など、さまざまです。医療機関のスタッフだけでなく、地域の訪問看護や介護サービスのスタッフと連携を取りながらACPを進めることが求められています。日本では、2018年3月に厚生労働省が「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の改訂版を公表、この中にACPの概念が盛り込まれました。ACPのゴールは一般的に「その人が重篤な慢性疾患に罹患したときに、その人の価値観、目標や治療選好に一致した医療が受けられることが確実になるようにサポートすること」とされています。2018年11月には、厚生労働省の公募によって、 ACPの愛称が「人生会議」と決まり、一般に向けた普及・啓発活動もスタートしました。この「人生会議」という珍妙なネーミングは、巨額の広報予算を使ったにもかかわらずほとんど国民には浸透していませんが、ACPの取り組み自体は医療現場で徐々に広がっています。「入院料の通則」見直しでACPに関する指針の作成が必要な医療機関の対象拡大前回、2020年の診療報酬改定では、ACPの取り組み(適切な意思決定支援に係る指針を定めていること)がすべての地域包括ケア病棟の施設基準盛り込まれました(それまでは一部の同病棟)。そして、今年の診療報酬改定では、「入院料の通則」が見直され、「人生の最終段階における適切な意思決定支援の推進」のため、ACPに関する指針の作成が必要な医療機関の対象が拡大、小児や思春期精神科病棟など特定の病棟以外のすべて入院に求められることになりました。「入院料の通則」は入院基本料を算定するための基本的なルールです。実施しなければ、入院料の算定そのものが認められません。なお、この指針作成については、在宅療養支援診療所・病院をはじめとする「看取り」に関わる「かかりつけ医機能」を有する医療機関にも求められることになりました。厚生労働省が作った「人生会議」という言葉はダサすぎてわかりづらい地域包括ケア病棟での地道な実践などが認められるかたちで、ACPは小児以外のほぼ全病棟においてもその取り組みが必須となったわけです。しかし、実際には「指針」を作成するだけで、本当に患者に寄り添ったかたちでACPが医療・介護の現場で行われているかどうかは甚だ疑問です。とはいうものの、地域包括ケアの合言葉とも言える「ときどき入院、ほぼ在宅」を実践し、患者が望まない過剰な医療を提供せず、尊厳ある死を迎えてもらうためにも、ACPの普及・定着は必要でしょう。そのためには、医療機関側からの働きかけのみならず、患者や家族側からのアクション、ACPの要望を伝えることも必要だと思います。そう考えると、厚生労働省が作った「人生会議」という言葉はダサすぎてわかりづらく、普及・定着を逆に妨げているのではないでしょうか。なんならそのまま「ACP」でもいいので、今一度そのネーミングを考え直すべきだと思いますが、皆さんいかがでしょう。ところで、この地域包括ケアシステム特別オープンセミナーでは、もう一人、とても興味深い発言をした人がいました。武田 俊彦氏です。この日は、日本在宅ケアアライアンス副理事長という肩書での出席でしたが、これからの病院と診療所の役割について言及した発言は、元厚生労働省医政局長ということを踏まえると、なかなかに重いものでした。(この稿続く)

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第210回 在宅医療の看取り件数が急増、訪問看護も利用拡大、コロナ禍で在宅ケアが進展/慈恵医大

<先週の動き>1.在宅医療の看取り件数が急増、訪問看護も利用拡大、コロナ禍で在宅ケアが進展/慈恵医大2.2025年度専攻医募集数のシーリングは継続、シーリング逃れに対策を/厚労省3.大学病院の医師、残業時間の上限緩和申請は4割に、研究時間不足が課題/全国医学部長病院長会議4.医療訴訟の発生率、東京・大阪が高く、茨城、福島、岐阜などは低め/東邦大5.働き方改革の影響で9大学病院が医師派遣の取り止めや中止を検討/全国医学部長病院長会議6.「疲労回復」謳う美容医療、治療効果にエビデンスなし、クリニックを提訴/消費者機構日本1.在宅医療の看取り件数が急増、訪問看護も利用拡大、コロナ禍で在宅ケアが進展/慈恵医大新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、在宅医療における看取りが急増したことが、東京慈恵会医科大学の青木 拓也准教授らの研究で明らかになった。調査は、2020年4月の緊急事態宣言を境に、終末期医療の利用や自宅での看取りが急増したことを示している。病院での受診控えや面会制限が影響し、在宅でのケアが選ばれるケースが増えたと考えられる。研究チームは、厚生労働省のNDBデータベースを用いて2019~2022年にかけて在宅医療サービスの利用動向を分析。訪問診療に大きな変化はみられなかったが、往診や終末期医療は増加傾向にあった。また、訪問看護の利用件数も増加しており、とくに医療保険適用型の訪問看護費が過去10年間で5.4倍に増加していることが、共同通信の分析で明らかになった。利用者数が4倍近く増加したことに加え、1人当たりの費用も1.4倍に増えたことが、費用増加の主因とされる。医療保険適用型の増加幅は介護保険適用型を大幅に上回っており、入院患者の早期在宅復帰を促す政策や、医療保険には利用限度額がないことが背景にある。訪問看護を巡っては、精神科や難病患者を対象にした診療報酬の過剰請求が指摘されており、利益を目的にした一部事業者による制度の乱用が費用増加の一因とも考えられている。財務省はこの問題を医療財政の圧迫要因として問題視しており、今後の対策が注目される。参考1)自宅でのみとり急増 緊急事態宣言境に、終末期医療も 受診控え、面会制限影響か・慈恵医大など(時事通信)2)医療保険の訪問看護費5倍 10年間、1人当たりも増加(共同通信)2.2025年度専攻医募集数のシーリングは継続、シーリング逃れに対策を/厚労省厚生労働省は、9月9日に医師専門研修部会を開き、日本専門医機構が提案した2025年度の専攻医募集に関するシーリング案を審議し、特別地域連携プログラムにおける新要件を却下する方針を決定した。この結果、2024年度と同様のシーリングを継続することになった。新要件は、医師充足率が0.7以下(小児科は0.8以下)の都道府県で医師を1年以上派遣する案だったが、地域内での医師偏在を助長する恐れがあるとの意見が相次ぎ、採用を見送った。今後、1ヵ月以内に厚生労働大臣の意見として正式に日本専門医機構に伝達する予定。一方で、「シーリング逃れ」と呼ばれる問題が引き続き指摘されている。これは、シーリング対象外のプログラムが、実際にはシーリング対象地域で長期間の研修を行う形態を指し、その実態把握と報告が求められている。また、特別地域連携プログラムに関しては、地域偏在是正の実効性を検証し、今後の改良が提案される予定。厚労省は、医師偏在是正に向けた総合的対策を2024年末までに策定する予定であり、9月5日に開いた社会保障審議会・医療部会では、医師偏在是正に向けた対策を議論し、偏在是正のために若手医師だけに負担をかけるのではなく、即戦力となる40歳以上の医師に対する施策の強化が求められている。参考1)令和7年度専攻医募集におけるシーリング案に対する厚生労働大臣からの意見案(厚労省)2)医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案について(同)3)2025年度プログラム募集専攻医シーリング数(案)(日本専門医機構)4)2025年度の新専門医目指す専攻医募集、「玉突き案」は却下、「シーリング逃れ」の実態を解明-医師専門研修部会(Gem Med)5)医師偏在対策の総合パッケージ策定に向け医療部会で議論スタート「若手医師による偏在対策はもう限界」、少数区域に中堅医師の派遣求める声も(日経メディカル)3.大学病院の医師、残業時間の上限緩和申請は4割に、研究時間不足が課題/全国医学部長病院長会議9月11日に全国医学部長病院長会議は、医師の働き方改革施行後の令和6年4月の状況について、大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果を発表した。これによると、大学病院に勤務する医師のうち、時間外労働の上限緩和を申請した医師が4割に達したことが明らかになった。これは2024年4月に導入された医師の働き方改革に伴い、年間960時間の時間外労働上限が1,860時間に引き上げられる特例措置を活用した結果で、2022年の調査時の34%から増加している。調査は全国82の大学病院を対象に行われ、約4万2,000人の医師のうち41%が特例措置を申請していることが判明した。また、医師の約56%が週平均5時間以下の研究時間しか確保できていないことが指摘され、とくに20歳代の医師では96%がこの状況にある。若手医師が診療業務に追われ、十分な研究時間が確保できていない実態が浮き彫りとなり、医療の将来に重大な影響を及ぼす可能性があると懸念されている。一方、労働時間の短縮は徐々に進んでおり、週50時間未満で勤務する医師の割合は49.6%となり、2022年の調査よりも8.1ポイント増加している。複数主治医制の導入や業務の時間内完了を進める取り組みが功を奏しているが、週60時間以上働く医師が依然として3割を超えており、とくに外科や小児科での改善が求められている。また、大学病院の給与に関しては、20歳代医師の87%、30歳代では51%が年収500万円未満であることが明らかとなり、国立病院や一般医療機関と比べて低い水準にあることが問題視されている。働き方改革を進めるためには、ICTの活用やタスクシフトの推進が求められており、診療報酬による支援が必要とされている。参考1)大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果2)医師の残業時間、4割が上限緩和申請 大学病院団体調べ(日経新聞)3)若手医師の研究時間が少なく「医療の将来に重大な影響」 医師の働き方改革で調査(産経新聞)4)週50時間未満勤務の大学病院医師49.6% 4月時点 22年7月から8.1ポイント増(CB news)4.医療訴訟の発生率、東京、大阪が高く、茨城、福島、岐阜などは低め/東邦大学東邦大学薬学部の平賀 秀明講師らの研究グループは、最高裁判所の協力を得て2005~2021年にかけて全国の地方裁判所に提訴された医事関係訴訟の都道府県別発生率を調査した結果、発生率に地域差があることを明らかにした。今後、地域ごとの医療安全対策や医療事故後の患者応対、訴訟実務における指針として活用されることが期待される。調査によると、人口100万人当たりの医事関係訴訟発生率が全国平均(6.30件/年)と比べて有意に高い地域は東京都(12.97件/年)および大阪府(10.99件/年)。逆に、発生率が有意に低い地域は茨城県(1.77件/年)、福島県(1.93件/年)、岐阜県(2.50件/年)など12地域に及ぶ。また、医療機関1,000施設当たりや医師・歯科医師1,000人当たりの発生率においても、東京と大阪が高く、茨城、福島、岐阜などでは低い傾向がみられた。この地域差の要因については、医療機関側の過誤が少ないことや、弁護士不足による訴訟へのアクセスの違いが影響している可能性が指摘され、追加解析が進められている。今後、地域ごとの実情に応じた医療訴訟対策が求められる。この研究は、2024年7月31日に『医療の質・安全学会誌』に公開された。参考1)最高裁判所の協力を得て医事関係訴訟の都道府県別発生率を調査~発生率における地域差の存在が明らかに~(東邦大学)2)東邦大学 医事関係訴訟の都道府県別発生率に地域差 東京、大阪が高く、茨城、福島、岐阜等12地域は低い(ミクスオンライン)5.働き方改革の影響で9大学病院が医師派遣の取り止めや中止を検討/全国医学部長病院長会議2024年4月に始まった医師の働き方改革により、全国9つの大学病院が他の医療機関への医師派遣を取りやめ、または中止を検討していることが明らかになった。この調査は、全国医学部長病院長会議が82の大学病院を対象に実施したアンケート結果から判明したもので、働き方改革に伴う時間外労働の制限が影響を及ぼしている。調査結果によると、82の大学病院のうち、9つの病院が派遣中止や検討をしており、24の病院では勤務体制の見直しが進められている。具体的には、勤務間インターバルの導入などにより、医師の負担軽減を図る取り組みが行われている。一方、53の病院では現時点でとくに派遣に関する変更はないとされている。働き方改革により、医師の労働時間は減少傾向にあるが、とくに若手医師は診療業務、教授クラスの医師は研究業務に影響が出ている。若手医師の78%が診療時間の増加を感じており、教授の66%が研究時間の減少を挙げている。これにより、研究の遅れや診療体制の見直しが必要となっている。全国医学部長病院長会議の相良 博典会長は、「大学病院は地域医療にとって重要な存在であり、派遣中止が広がれば医療崩壊のリスクが高まる」と懸念を表明。今後、国に対して待遇の改善や医師確保に向けた対策を求めていく考えを示している。医師派遣の中止や制限が進むことで、地域医療に大きな影響を与える可能性があり、早急な対応が求められている。参考1)大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果(全国医学部長病院長会議)2)全国9大学病院 ほかの医療機関への医師派遣 取りやめ 中止検討(NHK)3)医師派遣の取りやめ・中止検討、大学病院1割超で 4月時点 AJMC調査(CB news)6.「疲労回復」謳う美容医療、治療効果にエビデンスなし、クリニックを提訴/消費者機構日本特定適格消費者団体「消費者機構日本」は9月10日、東京都渋谷区のクリニック「サカイクリニック62」を相手取り、同クリニックが提供する自由診療に関するインターネット広告の表示が景品表示法における「優良誤認表示」に該当するとして、広告の停止を求める訴訟を東京地裁に起こした。クリニックは「疲労回復」や「アンチエイジング」などの効能を謳ったが、これらの効果には医学的なエビデンスがなく、厚生労働省も安全性に関する注意喚起を行っていた。提訴の対象となったのは、点滴や温熱療法など8種類の治療法に関する広告で、これらに関する効果を裏付ける客観的な医学的証拠がないことが問題視された。とくに「エクソソーム点滴療法」などの治療法は、その安全性が確認されていないとされており、消費者団体は「このままの状態が続くことが患者の利益を損なう」と指摘している。この訴訟は、医療機関による広告が景品表示法違反に問われた初のケースとなる。自由診療は保険診療とは異なり、高額で提供されることが多く、効能のエビデンスが不十分なまま提供される治療が広がっている現状がある。今回の訴訟は、こうした問題を是正し、消費者の利益を保護する狙いがある。また、訴訟に至るまでの経緯として、消費者機構日本が、4月にクリニックへ広告の削除を要請したものの、クリニック側のウェブサイトの改修対応などが遅れたこと、そして、当初「来年に改訂予定」として広告の表示を続けていたが、最終的には削除作業を進めていることを公表した。今回のケースは、自由診療分野における医療広告の規制が緩く、消費者保護が不十分であることを示しているとされ、今後も消費者機構日本は、同様の訴訟を展開し、他の医療機関に対しても適切な表示を促す姿勢を示している。参考1)再生医療・免疫療法と称する自由診療行為を行う医療社団法人サカイクリニック62(渋谷区)に対し、インターネット上の広告表示が優良誤認表示に該当するとして差止請求訴訟を提起しました(消費者機構日本)2)医療広告で「疲労回復」効能なし 消費者団体が東京・渋谷のクリニック提訴(産経新聞)3)「アンチエイジング」「睡眠の質改善」…自社サイトで優良誤認表示にあたる表現があるとしてクリニック側を提訴 原告「自由診療分野はやりたい放題」(TBS)4)「自由診療は野放しになっている」 “ネット広告”が「優良誤認表示」に該当するとして、消費者団体が医療クリニックに差し止め請求(弁護士JPニュース)

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第229回 武見厚労相最後の大仕事か?「医師偏在是正に向けた総合的な対策」の議論本格化

付け焼き刃的な視察をして、できるかどうかわからない“約束手形”を切る総裁選、代表戦候補者たちこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。メディアは、自民党総裁選、立憲民主党代表戦のニュースでもちきりです。それにしても、裁選選、代表戦が近づくと候補者の政治家たちが農業や子育て、あるいは医療の現場などにいそいそと出かけていって(なぜか葛飾柴又に行った人もいました)、付け焼き刃的な視察をして、できるかどうかわからない“約束手形”をぽんぽん切るのはどうなんでしょう。日頃からいかに現場を見ていないかがわかってしまいます。また、多くの候補者たちが相変わらず「地方創生」を掲げていますが、本当にできると思っているのでしょうか?立候補後に誰かに御膳立てをしてもらって視察するのではなく、一人で東北や山陰の地方都市にでも何日か旅行してから「地方創生」を語ってもらいたいと思います。また、人口減少が進み、経済も縮小均衡に向かう中、誰も国会議員の定員削減を言い出さないのも身勝手過ぎます。彼らは日本の将来を心配しているのではなく、自分の議員としての将来(と自分の党の議席数)だけを心配しているように感じます。ということで、今回は自民党総裁選後に総選挙となり内閣も変わるだろうということで、おそらくこれが最後の大仕事になるとみられる、武見 敬三厚生労働大臣の医師偏在対策について書いてみたいと思います。厚労省の「医師偏在対策推進本部」が初会合特定の地域や美容外科など特定診療科への医師の偏在是正に向けて、厚生労働省は9月5日、「医師偏在対策推進本部」の初会合を開きました。本部長を務める武見厚労相は冒頭に「急激な人口構造の変化や医師の高齢化が進むことを考えると、医師の偏在対策は早急に取り組まなければならない課題だ。厚労省の関連部局が一丸となり、具体的な検討を加速させていく」と述べ、医師養成課程での取り組み、外来医師多数区域における規制的手法など複数の手法、管理者要件の拡大、経済的インセンティブなどについて検討し、総合的な対策パッケージを2024年末までに策定する考えを改めて示しました。「医師の偏在を規制によってきちんと管理していくことを我が国もやらなければならない」と語っていた武見厚労相医師の偏在問題を巡っては、武見厚労相になってからその検討が加速・本格化したことは事実です。その議論の実質的な幕開けは4月7日にNHKで放送された「日曜討論」でした。「医療」がテーマのこの会で武見厚労相は、医師の偏在対策について「今まで、入学試験に地域枠を設けるなど色んな試行錯誤をしてきたがまだまだ偏在を解消できない。ここまで来ると、地域において医師の数の割り当てを、本気で考えなければならない時代となった。したがって、医師の偏在を規制によってきちんと管理していくことを我が国もやらなければならない段階に入ってきた」と述べました。厚労大臣から発せられた「規制」という言葉にメディアも反応、この発言は朝日新聞デジタルや日本経済新聞でも報道されました(「第208回 『地域ごとの医師の数の割り当てを、本気で考えなければならない時代に入ってきた』と武見厚労大臣、地域偏在、診療科偏在の解消に向け抜本策の検討スタート」参照)。厚労省内にも波紋を広げた武見氏のこの発言を反映する形で、政府が6月に閣議決定した「骨太方針2024」では、総合的な対策パッケージを24年末までに策定する方針が打ち出されました(「第218回 2040年に向けさまざまな改革が本格始動、『骨太の方針2024』から見えてくる医療提供体制の近未来像」参照)。厚労省「近未来健康活躍社会戦略」で医師偏在対策の骨子案示されるそして8月30日に厚労省が公表した「近未来健康活躍社会戦略」では、その対策パッケージの骨子案が示されました1)。「近未来健康活躍社会戦略」は、「少子高齢化・人口減少、デジタル化、グローバル化という大変革時代の渦中にあり、国民皆保険の持続可能性を確保しつつ、未来に向けて、イノベーションと社会のダイナミズムを医療・介護分野に取り込み、人生100年時代を健康で有意義な生活を送りながら活躍できる社会(健康活躍社会)の実現が待ったなしの課題」との観点から、厚労省が今後推進していく近未来の政策方針をまとめたもので、「医療・介護DXの更なる推進」、「後発医薬品の安定供給等を実現する産業構造改革」、「イノベーションを健康づくり・医療・介護に活かす環境整備」など9つの政策方針(戦略)の1つに、「医師偏在是正に向けた総合的な対策」が盛り込まれました。そこで示された総合的なパッケージの骨子案は下図に示すように、(1)医師確保計画の深化、(2)医師の確保・育成、(3)実効的な医師配置――の3本柱となっており、大きく規制的手法(医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅な拡大、外来医師多数区域の都道府県知事の権限強化、保険医制度における取扱いなど)と、経済的インセンティブ(地域医療介護総合確保基金等による重点的な支援区域の医療機関や処遇改善など)の両輪で進めていく考えが示されました。画像を拡大する規制的手法については、開業医が多い地域での新規開業を抑えるための方策が検討されます。具体的には都道府県知事が開業予定者に対し地域で不足している医療(在宅医療など)の提供を法的に強制できるようにする、美容医療分野への若手医師流出を防ぐために保険医療機関指定の要件に一定期間の保険医としての実績を求める、などの規制が案として挙がっています。社会保障審議会医療部会においても「骨子案」についての議論「医師偏在対策推進本部」において厚労省が「医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案」の骨子案と「主な論点」を提示したのに続いて、同じ9月5日には社会保障審議会医療部会においても「骨子案」についての議論が行われました。9月7日付のエムスリーの報道によれば、「『若手医師の配置で何とかしようというのはもはや限界』との指摘が出て、40歳以上など中堅医師を医師少数県に派遣するなどの施策を求める声が相次いだ」とのことです。また、「主な論点」に示された、地域医療支援病院の管理者の資格を得るのに医師少数区域等で6ヵ月以上勤務経験を求めるという現行ルールの対象病院を広げる案については、「院長のなり手を探すのに非常に苦労している。逆のインセンティブになりかねない」といった声も挙がったとのことです。どの国会議員よりも医療現場を見てきたはずの武見厚労相に期待議論は始まったばかりですが、なかなか前途は多難のようです。最終的にどんな総合的な対策パッケージができあがるかは不透明ですが、“言い出しっぺ”の武見厚労相に残された時間はあとわずかです。岸田首相に半ば論功行賞的に厚労相に据えてもらった(「第179回 驚きの新閣僚人事、武見厚労相は日医には大きな誤算?“ケンカ太郎”の息子が日医とケンカをする日」参照)と言われる武見厚労相の再任はおそらくないからです。3期25年間も日本医師会長を務めた父親、武見 太郎氏は、政府や厚生省の官僚に対する強い対決姿勢から“ケンカ太郎”とも呼ばれました。就任会見で、「医療関係団体の代弁者ではない」と言い切った武見厚労相は、それこそ付け焼き刃ではなく、どの国会議員よりも医療現場を見てきたはずです。最後の大仕事として、10年、20年先にも通用する医師偏在対策の道筋を付けて、大臣職を全うしていただきたいと思います。参考1)近未来健康活躍社会戦略/厚生労働省

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第209回 医師の偏在是正、美容医療規制も含めて年末までに対策を策定へ/厚労省

<先週の動き>1.医師の偏在是正、美容医療規制も含めて年末までに対策を策定へ/厚労省2.認知症施策、希望を持って生きる社会を目指す基本計画を閣議決定へ/内閣府3.喫煙率14.8%、規制強化で最低水準に/厚労省4.マイナ保険証の利用率に基づく医療DX加算、翌月から適用可能/厚労省5.新たな地域医療構想、二次医療圏見直しと在宅医療強化へ/厚労省6.75歳以上の医療費抑制、3割負担の対象拡大を検討/内閣府1.医師の偏在是正、美容医療規制も含めて年末までに対策を策定へ/厚労省厚生労働省は2024年9月5日、医師の地域・診療科偏在を是正するために「医師偏在対策推進本部」を設置し、9月5日に初会合を開催した。武見 敬三厚労相は冒頭で、「医師偏在の解消なしには、国民皆保険制度の維持は困難だ」と述べ、医師偏在問題に対する強い危機感を示した。本部は年末までに、経済的インセンティブや規制的手法を含む総合的な対策パッケージを策定する予定。会合では、主に「医師確保計画の深化」「医師の育成と配置」「実効的な医師配置」の3つの柱に基づき議論が進められた。とくに、医師少数区域での医師確保を目指し、若手医師や医学生に対する地域医療への理解促進や研修制度の見直しなどが検討されている。また、外来医師が多い都市部での新規開業を制限するため、規制的手法も導入される可能性がある。さらに、美容医療への若手医師の流出を抑えるため、公的保険診療の経験をクリニック開業の条件とする案も議論された。とくに美容外科などの分野で若手医師が急増している現状を踏まえ、保険外診療のみに依存する医療機関の乱立を防ぐ狙いがある。対策推進本部では、地方の医療機関への財政支援や医師が少ない地域への医師派遣制度の強化なども進める予定。都道府県が策定する医師確保計画に基づき、地域ごとの医師の需給バランスを見極めながら対策を推進する。今後、さらに具体的な議論が進み、年末には法改正も視野に入れた包括的な対策が発表される見通し。参考1)医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案について(厚労省)2)医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案 主な論点(同)3)美容クリニック開業に規制案 公的医療の経験必要に(日経新聞)4)外来医師多数区域における新規開業への規制的手法などを議論 厚生労働省「医師偏在対策推進本部」が始動(日経メディカル)5)医師偏在「もはや待ったなし」 厚労省、是正に向け部局横断会議(毎日新聞)2.認知症施策、希望を持って生きる社会を目指す基本計画を閣議決定へ/内閣府2024年9月2日に政府は、認知症施策の基本計画案を発表した。計画の中心には「認知症になっても希望を持って自分らしく暮らし続けることができる」という新たな認知症観が据えられ、その浸透を進めることが重点目標とされた。これにより、認知症の人を「支える対象」とする従来の考え方から、共に支え合う社会を目指す方針へと転換する。また、この計画は、認知症基本法に基づく初めての施策であり、2029年度までを計画期間とし、5年ごとに見直しを行う予定。計画案では、認知症になった後も、できることややりたいことがあるという前提を掲げ、偏見の解消を目指す。「ピアサポート活動」を推進し、認知症当事者が支え合う仕組みや、学校現場での教育活動なども盛り込まれた。また、当事者の意思を尊重し、地域での生活を支えることが重要視されている。さらに、重点目標として「当事者の意思尊重」「地域での安心した生活」「新技術の活用」が挙げられ、認知症の人が他者と支え合いながら住み慣れた地域で暮らせる社会を目指す。具体的な施策として、若年性認知症の人の就労支援強化や地域のバリアフリー化推進、認知症サポーターの養成などが含まれている。計画は今月下旬にも閣議決定され、各自治体においても地域の実情に応じた計画の策定が進められる。これにより、認知症の人々が、社会の一員として共に生きるための施策が強化される見通し。参考1)認知症施策推進基本計画[案](内閣府)2)「認知症でも自分らしく」 政府重点目標、基本計画案(日経新聞)3)希望を持って生きる「新しい認知症観」 基本計画案を了承(毎日新聞)4)「新しい認知症観」で社会参画促す 認知症基本計画 閣議決定へ(朝日新聞)5)認知症施策推進基本計画案、当事者らの参画を強調 認知症カフェなどでの交流促す 政府(CB news)6)「新しい認知症観」を明示 国の基本計画固まる(福祉新聞)3.喫煙率14.8%、規制強化で最低水準に/厚労省厚生労働省は、2022年に実施した国民健康・栄養調査の結果を公表した。これによると、20歳以上の喫煙率は14.8%と過去最低を記録した。前回の2019年の調査結果の16.7%を下回り、2003年以降の最低値を更新したが、政府が「健康日本21(第2次)」で掲げた目標の12%には届いていない。男女別の喫煙率は、男性が24.8%、女性が6.2%で、いずれも過去最低だった。とくに男性では30代が35.8%、女性は40代が10.5%と高い傾向がみられた。喫煙者のうち、たばこを止めたいと考えている人は全体の25%で、男性では21.7%、女性では36.1%が禁煙を希望している。今後、厚労省は、喫煙を止めたい人への治療支援をさらに充実させる方針を示している。また、「受動喫煙の機会がある」と答えた人の割合も減少しており、とくに飲食店や遊技場では規制強化により半減し、それぞれ14.8%、8.3%となった。一方、路上や職場での受動喫煙は依然として高く、路上では23.6%、職場では18.7%と報告されている。この調査は2022年11~12月にかけて、全国約2,900世帯を対象に実施された。新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年と2021年の調査は中止され、今回は3年ぶりの調査となった。厚労省は今後も、規制強化と禁煙支援の充実を進めることで、喫煙率のさらなる低下を目指す考えを強調している。参考1)令和4年「国民健康・栄養調査」の結果(厚労省)2)喫煙率14.8%、過去最低 国民健康・栄養調査(日経新聞)3)「喫煙率」14.8% 厚労省2022年の調査 2003年以降で最も低く(NHK)4.マイナ保険証の利用率に基づく医療DX加算、翌月から適用可能/厚労省9月3日に厚生労働省は「医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の取扱いに関する疑義解釈資料」を事務連絡で発出した。2024年10月から導入される「医療DX推進体制整備加算」では、マイナンバーカードによる保険証(マイナ保険証)の利用率に基づき、医療機関が算定する新たな評価制度がスタートする。資料によれば、この加算の算定基準となるマイナ保険証の利用率が、翌月に適用されることを明確にした。医療機関は、毎月中旬に社会保険診療報酬支払基金からメールで通知される利用率を基に、翌月1日から加算の算定が可能になる。この加算は、マイナ保険証利用率に応じて3区分に分類され、医療機関ごとの利用率が基準値を満たしている場合、施設基準の再届け出は不要とされる。ただし、利用率が基準に満たない場合は加算が算定できないことも示されている。さらに、利用率は2~5ヵ月前までの期間で「最も高い数値」を選択して算定できる柔軟な対応が可能となる。医療DX推進体制整備加算は、診療情報や処方箋情報の電子化、患者の医療情報の共有を促進する取り組みであり、医療の質と効率を高めることを目指す。2024年10月からの基準値は、最も高い加算(11点)を受けるためには15%以上の利用率を求め、来年1月以降は30%以上が必要となる。その他の区分も利用率に応じた基準が設けられている。さらに、今回の加算見直しでは、利用率の基準を確認できる仕組みが強化され、支払基金のポータルサイトを通じて、医療機関が確認できるようになっている。2025年4月以降の利用率基準も今後の状況を踏まえて再評価される予定であり、今後も医療機関の対応が重要視される。参考1)医療情報取得加算及び医療DX推進体制整備加算の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)(厚労省)2)通知のマイナ利用率、翌月に適用 DX加算で医療課(MEDIFAX)3)医療DX推進体制整備加算、マイナ保険証利用率は「自院に最も有利な数値」を複数月から選択適用可能な点など再確認-厚労省(Gem Med)5.新たな地域医療構想、二次医療圏見直しと在宅医療強化へ/厚労省2025年に向けて地域の病床機能の再編や地域ごとの医療体制を整備するために取り組んできた地域医療構想を見直すために、厚生労働省は、新たに2040年に向けて立ち上げた「新たな地域医療構想に関する検討会」で、2040年に向けた新たな地域医療構想の方向性を示した。とくに85歳以上高齢者の救急医療や在宅医療の需要増加に対応するため、現行の二次医療圏よりも小規模な地域単位での医療提供体制を強化することが求められている。日本病院会も、二次医療圏の見直しを提言し、今後意見書を提出する予定。新たな地域医療構想の議論では、現行の考え方を継続する部分と新しい要素を組み込む部分を区別しながら進めるべきという意見が出されている。各都道府県が策定するガイドラインについて、国は細部を厳格に定めず、地域の実情に応じた柔軟な対応が求められている。9月5日に開かれた社会保障審議会医療部会では、市立病院の再編や経営支援、在宅医療や外来医療を含む包括的な地域医療体制の整備が提案された。また、現行の病床機能報告制度や病床数の不足が指摘されている回復期病床の見直しも求められている。精神科医療の組み込みやかかりつけ医機能報告制度に関する議論も進められ、これらを踏まえた新たな医療構想の実現が目指されている。2040年には後期高齢者の増加に伴い、介護・福祉との連携も重要視され、内科系の急性期医療や救急医療の需要が高まることが予想されている。とくに85歳以上の救急搬送件数は、2020年から2040年にかけて75%増加する見通しであり、ADL(活動能力)の低下を防ぐため、早期のリハビリ提供が重要になる。加えて、在宅医療の需要も同時期に62%増加すると予想され、24時間対応の体制構築やオンライン診療の活用が課題とされた。新たな地域医療構想では、入院医療だけでなく外来医療や在宅医療も対象とし、長期的に地域における医療提供体制を見直す方針が示された。また、医療圏を越えて一定の症例や医師の集約を進め、高度医療の提供体制を強化することも検討されている。過疎地域では医療機能の維持が重要視され、医師の派遣やICTの活用を通じて地域の医療提供力を高めることが求められている。今後、年末までに具体的な対策が取りまとめられ、2025年度からの実施を目指す。参考1)新たな地域医療構想の検討状況について(厚労省)2)2040年ごろを見据えた新しい地域医療構想の方針を提示 医療圏より小さい範囲で在宅医療の提供体制の検討を(日経メディカル)3)新たな地域医療構想、「2次医療圏」見直しを 日病(MEDIFAX)4)新たな地域医療構想論議、「現行の考え方を延長する部分」と「新たな考え方を組み込む部分」を区分けして進めよ-社保審・医療部会(Gem Med)6.75歳以上の医療費抑制、3割負担の対象拡大を検討/内閣府政府は、75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担について、3割負担の対象範囲を拡大する方針を検討している。これは、2024年に改定予定の「高齢社会対策大綱」に盛り込まれ、高齢化に伴う医療費の膨張に対応するための措置として進められる。現在、75歳以上の高齢者は原則1割自己負担だが、一定の所得がある場合は2割、さらに現役並みの所得がある場合には3割を負担している。今回の改定では、この3割負担の適用範囲が広がる可能性がある。政府は2023年12月に決定した社会保障改革の工程表で、この負担増を検討課題として挙げており、2028年度までに「現役並み所得」の判断基準を見直す計画を示している。医療費の膨張を抑制するため、負担を増やす一方で、負担増に対する国民の反発も懸念され、今後の議論は難航する可能性がある。さらに、内閣府は、高齢者の就労を促進するための「在職老齢年金制度」の見直しも提言。具体的には、働く高齢者が一定以上の所得を得た場合に年金受給額を減らす現行の制度を見直し、就労を支援する方向での改革を進めるとされている。また、個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢の引き上げなど、私的年金制度の拡充も検討中であり、これらも大綱に含まれる予定。この改定案は、2024年内に閣議決定される見通しで、今後のわが国の高齢社会に対応する医療制度の持続性を高めるための重要な議論となる。参考1)高齢社会対策大綱の策定のための検討会 報告書[案](内閣府)2)75歳以上医療費、3割負担の対象拡大検討 高齢社会大綱(日経新聞)3)政府が75歳以上の医療費3割負担の対象拡大検討 高齢社会大綱案に明記、制度持続狙い(産経新聞)

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第208回 都市部での新規開業を制限、医師の偏在是正の対策案を発表/厚労省

<先週の動き>1.都市部での新規開業を制限、医師の偏在是正の対策案を発表/厚労省2.マイナ保険証の利用が低迷、医療機関への働きかけ強化へ/政府3.少子化の深刻化続く、2024年上半期の出生数が最少記録/厚労省4.75歳以上高齢者に2割負担導入で、医療費が3~6%減少/厚労省5.2022年度の体外受精児、過去最多の7.7万人に/日本産科婦人科学会6.独居高齢者の孤独死が2万8000人超に、2024年上半期/警察庁1.都市部での新規開業を制限、医師の偏在是正の対策案を発表/厚労省厚生労働省は、8月30日に地域ごとの医師の偏在を是正するための総合対策を発表した。医師が多い都市部での新規開業を抑制するため、法令改正を含む一連の措置を検討しており、都道府県知事の権限を強化する予定。武見 敬三厚生労働大臣は30日の記者会見で、医師の偏在を是正するため、省内に「医師偏在対策推進本部」を設置、9月には初会合を開くことを発表した。具体的には、新規開業希望者に対して、救急医療や在宅医療などの地域で不足している医療サービスを提供するよう要請する法的枠組みを整え、開業を事実上制限することが柱となっている。さらに、地方の医療機関への財政支援を強化し、医師不足地域への医師派遣を推進するためのマッチング支援を行うことが検討されている。これには、医師が少ない地域での勤務経験を管理者要件とする医療機関の拡大、大学医学部卒業後地元で働くことを条件に医学部入学を認める「地域枠」の再配置も含まれる。厚労省内では、部局横断の推進本部が新設され、年末までに具体的な対策パッケージがまとめられる予定。また、この対策は「近未来健康活躍社会戦略」の一環として、国民皆保険の維持や医療・介護産業の発展を目指している。今後、25年度予算案への反映や通常国会での法改正も視野に入れ、医師の偏在是正に向けた取り組みが本格化する見通し。参考1)武見大臣会見概要[令和6年8月30日](厚労省)2)今後の医師偏在対策について(同)3)近未来健康活躍社会戦略(同)4)医師偏在是正へ開業抑制、都道府県の権限強化 厚労省案(日経新聞)5)医師多い地域で開業抑制、厚労省が偏在是正へ対策骨子案 地方医療機関へ財政支援強化(産経新聞)6)医師偏在是正「多数区域」の知事権限強化など 厚労省が対策具体案、年末までに具体化(CB news)2.マイナ保険証の利用が低迷、医療機関への働きかけ強化へ/政府厚生労働省は、8月30日に社会保障審議会医療保険部会を開き、「マイナ保険証」の利用促進策について検討した。2024年7月時点でのマイナ保険証の利用率は11.13%と低迷し、政府が掲げる現行健康保険証の12月廃止に向けた利用促進には課題が残っていることが明らかになった。とくに利用率が低い医療機関や薬局に対しては、厚労省が地方厚生局を通じて個別に事情を確認し、利用促進を図るための支援を行う方針を明らかにした。厚労省は「消極的な利用は療養担当規則違反の恐れがある」としているが、医療機関側からは威圧的との批判も寄せられている。政府はマイナ保険証の利用率を引き上げるため、医療機関に対して一時金の支給や補助金の期間延長などのインセンティブを提供してきたが、利用率については最高の富山県で18.0%、最下位の沖縄県で4.75%と依然として利用率が伸び悩んでいる状況。今後、政府は利用促進策をさらに強化し、国民の不安を解消するための広報活動にも力を入れる予定。さらに総務省と厚労省は、マイナンバーカードの利用拡大を図るための一連の新対策として、マイナンバーカードの暗証番号をコンビニエンスストアやスーパーで再設定できるサービスを開始し、従来の自治体窓口に出向く必要をなくした。変更にはスマートフォンの専用アプリを使用して事前手続きを行い、イオングループの店舗やセブン-イレブンの一部店舗内のマルチコピー機端末で再設定が可能となり、今後さらに広がる予定。マイナンバーカードの普及と利用促進に向けた政府の取り組みが進んでいるが、現場の課題や地域差が浮き彫りになっており、さらなる対策が求められている。参考1)マイナ保険証の利用促進等について(厚労省)2)マイナ保険証 利用率低い医療機関や薬局に聞き取りへ 厚労省(NHK)3)マイナ保険証利用増へ追加策 厚労省、個別に働きかけ(日経新聞)4)マイナ保険証、利用実績低い施設に働き掛けへ 7月の利用率11.13%、新たな利用促進策(CB news)3.少子化の深刻化続く、2024年上半期の出生数が最少記録/厚労省厚生労働省が発表した2024年1~6月の人口動態統計(速報値)によると、出生数は前年同期比5.7%減の35万74人で、1969年の統計開始以来、上半期として最少を更新した。この減少は、少子化の深刻さを浮き彫りにしている。前年同期比で約2万人の減少がみられ、これで3年連続して40万人を下回る結果となった。また、2014年と比べると出生数は約3割減少しており、長期的な低下傾向が続いている。加えて、2024年の年間出生数が70万人を下回る可能性が高まっており、少子化対策の重要性が一層強調されている。婚姻数は、前年同期比で若干の増加がみられたが、新型コロナウイルス感染症の影響による晩婚化や晩産化が、今後の出生数減少に拍車をかける可能性がある。厚労省は、若い世代の減少や晩婚化により、出生数が今後も中長期的に減少する可能性が高いとし、少子化対策は待ったなしの危機的状況であると強調する。政府は、児童手当の拡充などの対策を進めているが、これまでの施策だけでは減少を食い止められていない状況。参考1)人口動態統計速報(令和6年6月分)(厚労省)2)上半期の出生数速報値で35万人余 統計開始以来最少に(NHK)3)1~6月の出生数は35万74人、上半期で過去最少 厚労省統計(朝日新聞)4)出生数1~6月最少、5.7%減の35万人 年70万人割れの恐れ(日経新聞)4.75歳以上高齢者に2割負担導入で、医療費が3~6%減少/厚労省厚生労働省は、8月30日に社会保障審議会医療保険部会を開き、一定の所得がある75歳以上の高齢者の窓口負担割合を、2022年10月から医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げられた影響で、1人当たりの1ヵ月の医療費が3~6%減少したことが明らかにした。この調査は、2割負担の高齢者と1割負担のままの高齢者の診療報酬データを比較して行われ、医療サービスの利用が減少したことが確認された。とくに、糖尿病や脂質異常症などの一部の疾病で外来利用が顕著に減少しており、負担増が受診控えに繋がった可能性が示唆されている。厚労省が行った厚労科学研究の結果、負担増に伴う「駆け込み需要」も一部でみられたことが報告された。調査では、2割負担への移行後に医療サービスの利用日数が約2%減少し、医療サービス全体の利用が約1%減少したことが確認された。これにより、高齢者の医療費総額が減少し、特定の疾病での外来受診が減る傾向がみられた。一方、負担増が高齢者の健康にどのような影響を与えているかについては、さらに詳しい調査が必要とされ、社会保障審議会委員からも健康影響の検証を求める声が上がっている。今後、厚労省は、この調査結果を基に、後期高齢者医療制度の窓口負担割合の見直しを検討する方針。この調査結果は、高齢者の医療費負担増が医療サービスの利用にどのような影響を及ぼしているかを理解する上で重要な資料となり、これからの政策立案に役立てられることが期待されている。参考1)後期高齢者医療の窓口負担割合の見直しの影響について(厚労省)2)受診控えで医療費3~6%減 窓口負担1割→2割に増の75歳以上 厚労省調査(産経新聞)3)75歳以上で窓口負担2割、1ヵ月の医療費3%減少 1割負担者と比べ 厚労科研で検証(CB news)5.2022年度の体外受精児、過去最多の7.7万人に/日本産科婦人科学会日本産科婦人科学会が、2024年8月30日に発表した調査結果によると、2022年に国内で実施された不妊治療の一環である体外受精によって誕生した子供は、過去最多の7万7,206人に達した。これは、前年よりも7,409人増加し、全出生数の約10人に1人が体外受精で生まれたことを意味している。2022年の総出生数は約77万人であり、体外受精による出生がこれまでで最も多くなったことが確認された。体外受精の治療件数も過去最多の54万3,630件に上り、前年から4万5,000件以上増加した。とくに42歳の女性での治療件数が突出して多く、4万6,095件に達した。これは、2022年4月から体外受精に対する公的医療保険の適用が始まり、費用面でのハードルが下がったことが大きく影響したと考えられている。保険適用の対象は43歳未満の女性であるため、この年齢までに治療を行いたいと考える人が増加したとされている。また、体外受精の治療件数は2021年の約50万件からさらに増加し、前年の45万件台の横ばい傾向から再び上昇に転じた。この増加傾向は、2021年に続く大規模なもので、新型コロナウイルス感染症の影響による一時的な減少を除けば、近年は一貫して増加していることが示されている。その一方で、適齢期の女性の人口が減少していることから、今後もこの増加傾向が続くかどうかは不透明であり、専門家からは、医療保険適用による一時的な増加が影響している可能性が高く、今後の動向については引き続き注視が必要だとしている。参考1)2022年体外受精・胚移植等の臨床実施成績(日本産科婦人科学会)2)22年の体外受精児、10人に1人で過去最多 識者「保険適用でハードル下がった」(産経新聞)3)体外受精児、最多7.7万人 22年、10人に1人の割合(日経新聞)4)2022年に国内で実施の体外受精で生まれた子ども 年間で最多に(NHK)6.独居高齢者の孤独死が2万8,000人超に、2024年上半期/警察庁警察庁は、2024年上半期(1~6月)に全国で自宅死亡した独居高齢者(65歳)が2万8,330人に達したことを初めて発表した。これは、同期間に全国の警察が取り扱った自宅で死亡した1人暮らしの人が、全国で3万7,227人(暫定値)いた中の約76.1%を占めている。この統計は、政府が進める「孤独死・孤立死」の実態把握の一環として行われ、今後の対策の議論に活用される予定。この中で孤独死は、85歳以上の高齢者が7,498人と最も多く、次いで75~79歳の5,920人、70~74歳の5,635人と、高齢者の孤独死が顕著だった。また、男女別では男性が2万5,630人、女性が1万1,578人と、男性の方が圧倒的に多い傾向がみられた。地域別では東京(4,786人)が最も多く、続いて大阪、神奈川といった都市部での高齢者の孤独死が目立っている。さらに、死亡から警察が認知するまでの期間が1日以内のケースが全体の約4割に当たる1万4,775人であった一方で、15日以上経過したケースも19.3%に達し、孤立した生活の中で発見が遅れる事例が少なくないことが浮き彫りとなった。政府は昨年8月から「孤独死・孤立死」の問題に対応するためのワーキンググループを設置し、今年4月には「孤独・孤立対策推進法」が施行された。この統計結果は、今後の政策立案や社会支援の強化に向けた貴重な資料として活用されることが期待されている。参考1)令和6年上半期(1~6月分)(暫定値)における死体取扱状況(警察取扱死体のうち、自宅において死亡した一人暮らしの者)について(警察庁)2)独居高齢者、今年上半期に2万8,000人が死亡 7,000人超が85歳以上 警察庁まとめ(産経新聞)3)高齢者の「孤独死」、今年1~6月で2万8,330人…警察庁が初めて集計(読売新聞)4)高齢者の「孤独死」、半年で2万8千人 死後1ヵ月以上経ち把握も(朝日新聞)

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第226回 医療従事者の熱中症リスク、アンケートでみえてきたこと

昨今の報道でよく話題になるのが猛暑と台風だ。今年の7月の平均気温は2年連続過去最高を更新。福岡県太宰府市では8月27日まで最高気温が35℃以上の猛暑日が40日連続となり、国内の連続猛暑日最長記録を更新した。もっともそろそろ9月になるので暑さも和らぐかと思いきや、気象庁の3ヵ月予報によると、今年の9~10月の平均気温は全国的に高いとのこと。気象庁の異常気象情報センターは「残暑が厳しく、秋の訪れが遅くなる見込みのため、油断をせずに熱中症対策を続けてほしい」と呼び掛けている。その警戒すべき熱中症だが、総務省消防庁の集計では、7月の熱中症による救急搬送者は全国で4万3,195人。同集計が始まった2008年以降、2018年の5万4,220人に次ぐ多さとなっている。ちなみにこのうち死者は62人。入院が必要な「中等症」「重症」の合計は全体の3分の1以上にあたる1万5,326人で、搬送者の59%が65歳以上の高齢者である。以前から外気温の上昇やのどの渇きに対する感度が加齢により低下した高齢者では、熱中症の罹患とそれによる死亡リスクが高いのは周知のことである。加えて現在の国内高齢者層は家庭にエアコンが常備されていない時代を経験している世代のためか、エアコン使用そのものを避けたがる傾向があることなども、熱中症リスクの高さに影響していると言われる。そのような最中、たまたま見かけたある調査結果に驚愕している。人材マッチング事業を行う株式会社SOKKIN(本社:東京都新宿区)が2024年8月中旬に現役介護士を対象に実施したインターネット調査「(介護士限定)介護士の熱中症対策に関する簡単アンケート」の結果1)である。そもそも営利企業が行う調査は自社サービスを売り込むための我田引水の傾向があるため、自分の場合は流し読みすることがほとんど。しかも、この調査は回収サンプル数が59票と極めて小規模で本来ならば事実上無視するレベルのものだが、内容があまりにも想像を超えており、かつ同種の調査結果はほとんど見かけないため、ついつい読み込んでしまった。ちなみに調査回答者の年齢層は、30代までが7割強とかなり若年層であることも特徴的である。無視できない介護職のアンケート結果その内容なのだが、「勤務中に暑さが原因での体調不良を経験したことはありますか?」との問いに対しては「経験がある」との回答が93%、「勤務中に熱中症にかかったことはありますか?」との問いに対しては「頻繁にある」が7%、「ある」が54%。ざっくり言えば介護職の大半が業務中に熱中症を経験しているというのだから驚きしかない。ちなみに暑さが原因の体調不良に関しては、症状と発症したシチュエーションに関する自由記述回答も公開されており、「入浴介助が続き、飲水や休憩が取れなくて、頭痛や倦怠感が出現した(30代女性)」に代表されるような入浴介助に関するものが目立つ。確かに真夏の入浴介助の場合、日中の暑い時間はかなり湿気の高い環境になるので熱中症になる危険性が高まるだろう。また、これ以外には「クーラーが嫌いな利用者がいるので、そこの部屋はムシムシしていて暑さが強烈。扇風機だけ回して過ごしており、お風呂の手伝いや着替えなどさせている時に汗がダラダラ出てきて、終わった頃には全身びしょびしょになっている。汗をかき過ぎてめまいや吐き気がすることがあり、その時は車に戻ってエンジンをかけて休ませてもらっている(40代男性)」「施設内でもしっかり冷房が効いている場所とそうでない場所があり、洗濯物を干す時や倉庫に近い備品の補充などそうでない場所での作業が続いて、疲れやすさなどの体調不良が起きた(40代女性)」という記述もある。訪問系サービスの場合、自由記述の回答にあったように、利用者のエアコン嫌いなど相手方の環境に左右されるのが実状だが、後者のように施設系サービスでもリスクを抱えていることは驚きだった。しかも、調査回答者の勤務サービス種別では施設系が7割超。調査回答者の大半が勤務中の熱中症を経験している事実と重ね合わせれば、施設内勤務でもそれなりに熱中症リスクがあると解釈しなければ辻褄が合わないことになる。このあたりは利用者本人による室温設定ができるユニット型の施設が増加していることを考慮すれば、一部の説明がつくかもしれない。そして、同調査によると回答者の8割以上が自衛策として「こまめな水分補給」を行っているが、職場の熱中症対策については「対策はあるが不十分」が最多の59%、「十分な対策はある」が22%、「対策がない」が19%で、回答者の約8割が職場の熱中症対策が十分でないと指摘している。さて、医療者はどうなのかさてこの調査結果を知って気になったのが「では医師や看護師はどうなのだろう?」ということだ。この疑問から今回の介護職の熱中症実態調査に類する医師・看護師版の調査がないものかと検索をしてみたのだが、それらしきものは私の検索した範囲では見当たらない。批判を招く表現になるが、医師・看護師は介護職と比べれば“雲上人”なので、より快適な環境で業務についているのでは? という解釈もあるだろう。だが、介護関係でも介護老人保健施設(老健)のように医師が常勤している施設もあるし、看護師の場合は老健だけでなく介護老人福祉施設(特養)でも常勤者がいる。さらに昨今では在宅医療が増加し、それに応じて訪問看護ステーションも雨後の筍のごとく各地で開設され、医師・看護師が患者宅を訪問する機会はかなり増加している。ということは、勤務中の医療従事者の熱中症の実態は、単に少ないゆえに見逃されている、あるいは水面下でくすぶっているということだろうか?昨今の猛暑による熱中症リスク増加で、メディアでは一般市民に向けて熱中症リスクを訴える医師はよく見かけるが、「紺屋の白袴」でなければ良いのだが…と老婆心ながら思ってしまう。なお「勤務中に熱中症になってしまった」という医師・看護師の方がいらしたら、ぜひ体験談を聞きたいとも思っている。参考1)1)株式会社SOKKIN:現役介護士にアンケート!介護士に聞いた熱中症対策アンケート調査

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医師偏在に対する6項目の考え方/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、「医師偏在に対する日本医師会の考え方」について、過去の地域医療と医師会の取り組みや実績を辿りつつ、今後の医師偏在への医師会の取り組みについて、その考え方を説明した。 会見では松本会長が、日本医師会は、地域のかかりつけ医として自院の診療や在宅診療以外に「地域の時間外・救急対応」、「行政・医師会などの公益活動」、「地域保健・公衆衛生活動」、「多職種連携(訪問診療などの在宅医療ネットワークへの参画など)」、「その他(看護師・准看護師養成所、種々の診断書の作成など)」の活動を地域と連携して行い、住民の健康を守るため、それぞれの地域を面として支えてきたことを説明した。 そのうえで、「医師偏在については、解決のためあらゆる手段を駆使して複合的に対応していく必要がある」と簡単な解決策はないことを示唆し、「超高齢・人口減少社会を迎える中で、医師会も医師偏在対策に主体的かつ積極的に取り組み、地域医療の強化につなげていくとともに、都道府県における議論とこれまでの取り組みを引き続き充実させていく」として、以下6項目の取り組みを提示した。【医師偏在に対する日本医師会の考え方】(1)公的・公立病院の管理者要件 現在、2020年度に臨床研修を開始した医師から適用されている医師少数区域勤務経験を求める地域医療支援病院の管理者要件の対象病院を、今後医師免許を取得する医師のキャリア形成などに十分に配慮した上で、公的・公立病院にも拡大する。 臨床研修医への導入や、いわゆる後期研修医などの若手医師の研修で、医師少数地域での研修期間をのばすプログラムも検討する。(2)医師少数地域の開業支援など 医師少数地域において新たに診療所を開設する医師に対して、開設から一定期間の資金支援策を創設するとともに、医師少数地域で働く医師(勤務医・開業医)の確保・派遣を強化する。(3)全国レベルの医師マッチング支援 医師不足地域での勤務を希望する医師に対し、リカレント研修や現場体験を行いつつ、医師少数地域での勤務を全国的にマッチングする仕組みを創設する。(4)保険診療実績要件 保険医療機関の管理者として、卒後一定期間の保険診療実績の要件を加え、保険診療の質を高める。(5)地域医療貢献の枠組み推進 現行の地域に必要とされる医療機能を担うことへの要請の枠粗みを制度化し、地域で足りない医療機能を強化し、実績をフォローアップする仕組みを導入する。(6)医師偏在対策基金の創設 上記の施策を5~10年で推進するための1,000億円規模の基金を国において創設する。 とくに(1)では、管理者要件を緩和して拡大することに加え、研修プログラムの工夫とモチベーションの向上について整備すること、(2)では、地域の重要なクリニックなどの継承にも対応すること、(3)では、医師会の「女性医師支援センター」のノウハウを活用して、医師のマッチングにつなげること、(4)では、わが国の医療の根幹は保険医療であることから、保険医の経験を管理者要件として重視すること、(5)では、医師会の種々の取り組みを今後もフォローアップすること、(6)では、国に対して要望し、実現に向けて働きかけを行うことを各項目ごとに解説した。

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第205回 ポストコロナ時代、地域医療の存続に向けた病院の新たなアプローチとは?

毎週月曜日に先週にあった行政や学会、地域の医療に関する動きを伝える「まとめる月曜日」。今回は特別編として「すこし未来の地域医療の姿」について井上 雅博氏にご寄稿いただきました。新型コロナが医療・介護にもたらした影響とは今春、6年に1度のタイミングで医療報酬、介護報酬、障害福祉サービスの報酬が同時に改定されました。今回の改定では、医療と介護の連携の必要性を強く求めると同時に、マイナンバーカードの普及により医療情報の利活用を促進し、高血圧、脂質異常症、糖尿病を中心に診療を行っていた医療機関では「療養計画書」の作成などの対応に追われました。改定後、全国の病院関係者からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大時に救急患者の受け入れや転院、退院支援で苦労したのが、第11波の現在では、患者不足で病床が埋まらず、病床稼働率の低下が囁かれるようになったという声が聞かれます。もちろん、COVID-19のワクチン接種による軽症化や治療薬の開発による早期治療開始による早期退院が可能となったことが大きいとは思います。しかし、それ以外の原因として、感染拡大によって定期的な健康診断やがん検診によって発見された手術適応患者の紹介の減少が目立っていることが挙げられます。さらに、後期高齢者の場合、入院しても手術適応とならない方が増えている可能性があります。私が以前勤務していた広島県福山市の脳神経センター大田記念病院では、最新の統計によれば中央値では過去5年間大きな変動はないものの、高齢者層の増加(とくに90歳以上)が報告されています。じわじわと来る診療報酬改定の影響現在、病院が直面している経営課題は、昨年秋以降、コロナ対策の医療機関への病床確保基金などの制度が廃止され、以前の診療報酬体制に戻ったにも関わらず、患者の受診行動が変化してしまい、COVID-19拡大が落ち着いても元通りにならなかったという点です。このため、病床稼働率低下に加え、今春の改定で厳しくなった重症度、医療・看護必要度の対応で、10月からの病床再編や加算の対応に頭を悩ませている病院が多いと思います。さらに、原油高やエネルギー価格高騰に加え、デフレからインフレへの転換による経営環境の変化、人件費の増加といった影響も大きく、経営環境が激変しています。診療報酬改定では医療・介護職員の処遇改善のために賃上げの財源としてベースアップ評価料の算定が可能になりましたが、目新しい加算項目は少なく、サイバーセキュリティの強化など追加支出が求められているため、医療機関にとっては厳しい状況です。また、医療機関で問題となっているのは人手不足です。介護系サービス事業者は、高齢者の増加に備え設備投資を行い、施設を増やしてきましたが、現場に投入する医療・介護人材が必要となるため、医療機関よりも賃上げを先行して実施しており、同じ職種でも介護サービス事業者の賃金が高い状態になっています。さらに都市部では、コロナ禍にサービスを縮小していたホテル、飲食業などのサービス業界での人材不足が深刻化し、異業種との人材獲得競争も厳しくなっています。医療機関に求められる新たな「医療の形」病床稼働率の低下という現状を乗り切るための唯一の解決方法は、患者のニーズに応えることです。しかし、急性期の医療機関は専門医が多く、スペシャリストとして専門診療は得意である一方、後期高齢者のように2つ以上の慢性疾患が併存し、診療の中心となる疾患の設定が難しい「Multimorbidity(多疾患併存)」の場合、診療科ごとに縦割り構造のため、患者をチームで診ていると言いながら、病院内で診療科間の連携が取れていない、かかりつけ医や介護サービス事業者との連携協力が不十分なため、退院後にも内服薬の治療中断や退院前の指導不足による病状の悪化など、同じ患者が何回も入退院を繰り返す例が少なくありません。今後は、高度な急性期の医療機関は変わる必要がありそうです。とくに、在宅医やかかりつけ医との退院前のカンファレンスの開催や紹介状の内容の充実、情報共有の進化が必要ですが、多忙な急性期病院の医師がこれらを行うのは難しいと感じています。現状の解決手段としては、医師事務補助作業者の活用による書類作成の充実、退院サマリーや紹介状の作成業務のクオリティの向上が考えられます。また、今後は電子カルテにAIを導入し、カルテ内容の要約自動化を進めることや連携医療機関とカルテの開示を進めることが求められます。さらに、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟のある医療機関から退院する場合に、退院後のケアを担当する医療、福祉職へのわかりやすい指導(たとえば体重が〇kg以上増えたら早期に専門医に受診、食事や体重が減ったらインスリンは〇単位減量など)が求められると考えます。政府が模索する「新たな地域医療構想」の時代へ厚生労働省は、社会保障制度改革国民会議報告書に基づき、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年に向けて、地域医療構想を策定するよう各都道府県に働きかけてきました。厚労省は地域医療構想を「中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を見据え、医療機関の機能分化・連携を進め、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の確保を目的とするもの」と定義しています。現状、2025年を目指していた「地域医療構想」はほぼ完成形に近付いているように思います。高度急性期、急性期、回復期、慢性期の病床区分は、各医療機関の立ち位置を明確にし、担うべき役割と連携協力機関をはっきりさせることで、独立した医療機関が有機的に医療・介護連携を行い、全国の2次医療圏内で完結できるよう基盤整備を進めてきました。厚労省は、今後の日本が迎える「高齢者が増えない中、むしろ労働人口が減少していく」2040年を見据え、今年3月から「新たな地域医療構想等に関する検討会」を立ち上げました。地域によっては高齢化の進行によって外来患者のピークを過ぎた2次医療圏も増えています。これは国際医療福祉大学の高橋 泰教授らが作成した2次医療圏データベースシステムからも明らかになっています。これまで、医師や看護師といった人材リソースを増やすことで充実させてきた医療のあり方が変わる中、その地域でいかに残っていくのかを考える必要があります。そのために、最近読んでいる本を紹介します。今後の病院、クリニック運営を考える際の一助になりましたら幸いです。『病院が地域をデザインする』発行日2024年6月14日発行クロスメディア・パブリッシング発売インプレス定価1,738円(1,580円+税10%)https://book.cm-marketing.jp/books/9784295409861/著者紹介梶原 崇弘氏(医学博士/医療法人弘仁会 理事長/医療法人弘仁会 板倉病院 院長/日本大学医学部消化器外科 臨床准教授/日本在宅療養支援病院連絡協議会 副会長)千葉県の船橋市にある民間病院である板倉病院(一般病床 91床)の取り組みとして、救急医療、予防医療、在宅医療の提供、施設や在宅との連携を通して「地域包括ケア」の展開や患者に求められる医療機関の在り方など先進的な取り組みが、とても参考になります。ぜひ一度、手に取ってみられることをお勧めします。参考1)新たな地域医療構想等に関する検討会(厚労省)2)社会保障制度改革国民会議報告書(同)3)外来医療計画関連資料(同)4)診療報酬改定2024 「トリプル改定」を6つのポイントでわかりやすく解説!(Edenred)5)2次医療圏データベースシステム(Wellness)5)医療の価格どう変化? 生活習慣病、医師と患者の「計画」で改善促す(朝日新聞)

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第222回 未来の診療報酬、お手本は介護?~アウトカム評価のデータ化を実現

2024年診療報酬改定から施行時期が初めて6月に後ろ倒しされたのは周知のとおりだ。これまでの4月施行では医療機関、薬局、電子カルテ・レセコンのベンダーなどの負担が大きいための措置である。すでに施行から2ヵ月が経過したが、いまもバタバタしている医療機関や薬局は多いだろう。今回の改定では、▽医師の働き方改革、▽外来医療の機能分化、▽医療機能に応じた入院医療評価、さらには▽在宅医療の評価などが行われ、全体としては医療機関の機能分化と介護との連携に重点が置かれている印象がある。医師の働き方改革は、今改定での重点課題だったが、個人的にはむしろ医療機関の機能分化推進の補助的材料に使われたと感じている。そして気の早い人は、すでに2年後や4年後の改定、さらには6年後の介護報酬との同時改定も睨みつつあるだろう。それもこれも診療報酬改定が国の目指す医療体制実現のための誘導手段であり、ある種の目指す姿が実現するとより高い次元の医療体制実現のために診療報酬を付け替える「2階に上げて梯子を外す」かのようなことが繰り返されてきたからだと言える。その意味で昨今の診療報酬改定は、医療機関や薬局という“箱”が持つ機能、実施した対人業務に報酬や加算が付く出来高払いがかなり進行してきたが、私個人は次期同時改定までにこうした流れはかなり変化していくのではないかと考え始めている。その最大の理由は今回の診療報酬改定のもう1つのテーマだった医療DXの推進である。ご承知のように紙の保険証は今年12月の廃止が確定し、マイナンバーカードを利用したマイナ保険証へと一本化される。しかも、内閣府の医療DX推進本部は、オンライン資格確認等システムを拡充し、レセプト・特定健診情報、電子処方箋情報、電子カルテ情報などを網羅した「全国医療情報プラットフォーム」の2026年本格稼働を目指している。この中で電子カルテ情報の標準化はやや手間取るかもしれないが、次期同時改定の2030年には同プラットフォームはかなり目処が付いているだろう。そうなると、もはや医療は「どんな医療行為や業務を行ったか」に留まらず、その先のアウトカムまで白日の下にさらされる可能性が高まる。これを厚生労働省(以下、厚労省)が利用しないわけはない。つまり、いずれはアウトカム評価に基づく診療報酬体系が導入される可能性がある。私が「こうした流れはかなり変化していく」と前述したのは、こういうことだ。もっとも最近までこれは個人的な予想に過ぎなかったのだが、どうやら厚労省内部にも似たような考え方をしている御仁がいることを、7月に長崎市で開催された第17回日本在宅薬学会学術大会で知った。その御仁とは薬系技官で厚労省医薬局医薬品審査管理課長の中井 清人氏である。ちなみに日本在宅薬学会は主に在宅活動を行う薬剤師向けの学会で、中井氏はあくまで薬剤師向けとして講演していた。講演内で中井氏は突如、薬剤師業務と関係がない介護報酬の科学的介護情報システム(LIFE)を利用した通称LIFE関連加算を取り上げた。同加算は2021年度介護報酬改定で導入されたもので、事業所が利用者のADL、栄養状態、口腔機能を評価したデータをLIFEに入力することで算定できる。しかも、この仕組みでは厚労省が各事業者のLIFE入力値と全国平均値の比較などをフィードバックし、事業者はそれを基に改めてPDCAサイクルを回す。半ばアウトカム評価のような様相を呈しているのだ。そもそもLIFEの導入は、医療に比べてエビデンスが乏しい介護でのエビデンス構築の意味もある。この時の講演で中井氏は「医療のほうが介護より絶対電子化が早いと思っていたのにすげえなって。介護が来たんですよ。次にどういう時代が来るか、ぜひ皆さん考えてください」と語りつつ、「どういう時代」の結論は濁した。そのうえで中井氏が引き続き紹介したのが、米・オバマケアで実現した多職種連携でのケアを33の指標で評価し、その結果で医師を含むケア担当者らの報酬が変わる「ACOプログラム」だった。ここまで来れば、「次なる時代の診療報酬体系はアウトカム評価で」と言っているようなものだ。ちなみに中井氏はキャリア官僚としては珍しく私見丸出しの講演をする。時には自身のスライド内に「以下は私見の塊」と断っていたりもする。それゆえ今回の講演も「話半分で…」と言えるかもしれないが、口にしないだけで同じことを考えているキャリア官僚は必ずいるだろう。また、介護とは違い、医療はすでにかなりのエビデンスが集積している。要はデータと解析ツールさえあれば、一定のアウトカム分析とそれに基づく評価は今でも即時に可能と言ってもよい。そんなこんなで私個人は、今後の中央社会保険医療協議会(中医協)などでの医療DX議論もこのアウトカム評価導入の視点を注視していくつもりである。

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