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GLP-1RAの腎保護効果はDPP-4iを上回る

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は慢性腎臓病(CKD)進行抑制という点で、DPP-4阻害薬(DPP-4i)より優れていることを示唆するデータが報告された。米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのShuyao Zhang氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に12月5日掲載され、2月10日には同大学からニュースリリースが発行された。Zhang氏は、「血糖管理におけるGLP-1RAの有用性は既によく知られていた。一方、われわれの研究によって新たに、CKDハイリスク患者におけるGLP-1RAの腎保護効果を裏付ける、待望のエビデンスが得られた」と述べている。 この研究は、米退役軍人保健局の医療データを用い、臨床試験を模倣した研究として実施された。腎機能低下が中等度(eGFR45mL/分/1.73m2未満)以上に進行したCKDを有する35歳以上の2型糖尿病患者のうち、GLP-1RAまたはDPP-4iで治療されていた9万1,132人から、傾向スコアマッチングにより背景因子の一致する各群1万6,076人から成る2群を設定。この2群はベースライン時点で、平均年齢(GLP-1RA群71.9歳、DPP-4i群71.8歳)、男性の割合(両群とも95%)、BMI(同33.5)、HbA1c(8.0%)、および併発症や治療薬なども含めて、背景因子がよく一致していた。 事前に設定されていた主要評価項目は急性期医療(救急外来の受診・入院など)の利用率であり、副次評価項目は全死亡および心血管イベントの発生率だった。このほか、事後解析として、CKD進行リスク(血清クレアチニンの倍化、CKDステージ5への進行で構成される複合アウトカム)も評価した。 2.2±1.9年の追跡で、1人1年当たりの急性期医療利用率は、GLP-1RA群が1.52±4.8%、DPP-4i群は1.67±4.4%で、前者の方が有意に低かった(P=0.004)。また、全死亡は同順に17.7%、20.5%に発生していて、やはりGLP-1RA群の方が少なかった(オッズ比〔OR〕0.84〔95%信頼区間0.79~0.89〕、P<0.001)。CKD進行についても2.23%、3.46%で、GLP-1RA群の方が少なかった(OR0.64〔同0.56~0.73〕、P<0.001)。心血管イベントに関しては有意差がなかった(OR0.98〔0.92~1.06〕、P=0.66)。 著者らは、本研究結果が糖尿病の臨床を変化させるのではないかと考えている。論文の共著者の1人である同医療センターのIldiko Lingvay氏は、「糖尿病でCKDを有する患者は、低血糖、感染症、心血管疾患などの合併症のリスクが非常に高いにもかかわらず、有効な薬剤が非常に少なく、かつ、そのような患者は臨床試験に参加する機会が限られている。われわれの研究結果は、GLP-1RAがCKDの進行の抑制や医療費の削減につながることを示している」と話す。 Zhang氏もLingvay氏と同様に、今回の研究結果が糖尿病臨床を変え得るとしている。同氏は、「歴史的に見て、糖尿病によるCKDの治療は困難なものであった」と解説。そして、「今後の研究次第では、糖尿病に伴うCKDの包括的治療アプローチの一部として、GLP-1RAを組み込んだ新しいガイドラインが策定される可能性がある。そのガイドラインに基づく治療によって、患者の長期的な転帰が改善し、生活の質の向上につながっていくのではないか」と付け加えている。

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GLP-1受容体作動薬は目に悪影響を及ぼす?

 減量薬として広く使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、まれに視力障害を引き起こす可能性のあることが分かってきた。しかし、新たな小規模研究によると、現時点では、そのような目の合併症の原因がGLP-1RAであるのかどうかについての結論は出せないという。米ユタ・ヘルス大学のジョン・A・モラン・アイセンターのBradley Katz氏らによるこの研究は、「JAMA Ophthalmology」に1月30日掲載された。 この研究を実施するきっかけとなったのは、論文の筆頭著者であるKatz氏が、ある患者において、GLP-1RAのセマグルチドの使用開始後に片方の目の視力が突然、痛みもなく低下したことに気付いたことだったという。患者は一時的にセマグルチドの使用を中止したが、使用を再開したところ、もう片方の目にも視力低下が起こったという。不安を感じたKatz氏は、メーリングリストを通じて他の眼科医に同じようなことが起きていないかを尋ねた。その結果、GLP-1RAの使用後に目の視神経周辺の血管の機能障害など視力を低下させるような問題が起こった症例として、9例の報告が寄せられた。 そこでKatz氏らは、これらの9人の症例(平均年齢57.4歳、範囲33〜77歳、女性56%)について検討した。症例はいずれも、肥満や糖尿病の治療薬としてセマグルチド(商品名ウゴービ、オゼンピック)やチルゼパチド(商品名マンジャロ、ゼップバウンド)などのGLP-1RAを使用していた。 その結果、9人のうち7人は非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)として知られる疾患を発症していた。これは、視神経に十分な血液が供給されないことで起こる疾患だ。NAIONでは、視神経の損傷から視野の部分的な欠損が突然起こり、それが恒久的に残る可能性がある。他の1人はGLP-1RAの使用後に視野の一部が見えにくくなる傍中心窩急性中間層黄斑症を、残る1人は視神経の端に炎症が起こる両側性視神経乳頭炎を発症していた。 Katz氏らは、これまでに、極めてまれではあるが勃起不全治療薬や不整脈治療薬の使用に関連してNAIONを発症した例が報告されていると指摘している。その一方で、糖尿病や心臓病などの慢性疾患や肥満も視力障害を引き起こす可能性のあることが知られている。したがって、視力障害に関連しているのがGLP-1RAなのか、あるいは患者が抱えていた基礎疾患の一つなのかについては不明であるとKatz氏らは述べている。また、論文の共著者である米ニューヨーク州立大学バッファロー校神経学分野のNorah Lincoff氏は、「まれなケースではあるが、GLP-1RAの使用に伴う突然の急激だが正常範囲内の血糖値の低下が目を脆弱にすることもある」と話す。 Lincoff氏は、「患者へのメッセージとしては、これらの薬が虚血性視神経障害のリスクを高めるかどうかに関しては、まだ調査中の段階にあるということだ」と述べている。また、医師に対しては、「GLP-1RAを使用中の患者から目のかすみや視力低下があるとの連絡があった場合には、できるだけ早く眼科医に診てもらうようにしてほしい。目の症状は、グルコースの変動のせいかもしれないが、より深刻な問題の兆候である可能性もある」と助言している。 一方、すでにGLP-1RAを使用している人に対して研究グループは、この薬剤による視力障害の発生は極めてまれであり、パニックに陥る必要はないが、万一、問題が起こった場合には主治医に確認する必要があるとしている。

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GLP-1受容体作動薬はパーキンソン病全般にも有効か?(解説:内山真一郎氏)

 パーキンソン病患者に対するGLP-1受容体作動薬の効果を検討する第III相無作為化比較試験が英国で行われた。25~80歳でドーパミン治療を行っているHoehn & Yahrステージが2.5以下のパーキンソン病患者に、徐放型エキセナチド2mgかプラセボを96週間にわたって週1回皮下注射し、1次評価項目としてパーキンソン病の運動障害スケールであるUPDRS Part IIIを評価したところ、エキセナチド群とプラセボ群の悪化度には有意差がなく、疾患修飾薬としてのエキセナチドの有効性は証明されなかった。このエキセナチドの臨床効果の欠如は、DATスキャンの画像所見上の効果の欠如とも一致していた。 この試験結果が否定的だったのは、中枢神経へのエキセナチドの移行が不十分であったことが原因である可能性も否定できないが、2型糖尿病患者ではパーキンソン病の進行がGLP-1受容体作動薬により抑制されたという強力なエビデンスがあることを考えると、GLP-1受容体作動薬はインスリン抵抗性による神経炎症反応を抑制して効果を発揮している可能性があり、HbA1cが比較的高いサブグループのパーキンソン病患者に標的を絞った臨床試験を行う価値があるように思われる。

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GLP-1薬エキセナチド、パーキンソン病進行を抑制せず/Lancet

 パーキンソン病患者に対して、GLP-1受容体作動薬エキセナチドの安全性および忍容性は確認されたが、疾患修飾薬として支持するエビデンスは示されなかった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのNirosen Vijiaratnam氏らが、第III相の多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果を報告した。GLP-1受容体作動薬は、in vitroおよびin vivoのパーキンソン病モデルにおいて神経栄養特性を有することが示され、疫学研究や小規模無作為化試験でパーキンソン病のリスクおよび進行を抑制する可能性が示唆されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「パーキンソン病ヘのGLP-1受容体作動薬使用を支持するエビデンスの確立には、より優れた標的結合を示す薬剤を用いた試験や、特定のサブグループを対象とした研究が必要である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年2月4日号掲載の報告。対プラセボ試験、96週時点のMDS-UPDRS III-ドーパミン作動薬中止スコアを評価 研究グループは、英国の6つの研究病院で、GLP-1受容体作動薬エキセナチドのパーキンソン病に対する進行抑制効果を明らかにする目的で試験を行った。 パーキンソン病と診断され、ドーパミン治療を受けている時点でホーン・ヤール重症度分類が2.5以下であり、登録前に少なくとも4週間ドーパミン治療を受けていた25~80歳の患者を対象とした。被験者は、ホーン・ヤール重症度分類と研究施設で最小化されたウェブベースシステムにより、徐放性エキセナチド2mgを皮下ペン注射にて週1回96週間投与、視覚的に同一のプラセボ投与のいずれかを受けるよう、1対1の割合で無作為に割り付けられた。全患者、全研究施設の研究チームメンバーが、無作為割り付けを盲検化された。 主要アウトカムは運動障害疾患学会・パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)Part IIIスコアとし、96週時点でドーパミン作動薬を中止した患者にて、線形混合モデリング法を用いてITT集団を対象に解析した。エキセナチド群5.7ポイント、プラセボ群4.5ポイント、スコアが悪化 2020年1月23日~2022年4月23日に215例が適格性のスクリーニングを受け、194例がエキセナチド群(97例)またはプラセボ群(97例)に無作為化された。56例(29%)が女性で、138例(71%)が男性であった。 エキセナチド群92例およびプラセボ群96例が、少なくとも1回のフォローアップを受け解析に含まれた。 96週時点で、MDS-UPDRS III-ドーパミン作動薬中止スコアは、エキセナチド群で平均5.7ポイント(SD 11.2)、プラセボ群では同4.5ポイント(11.4)上昇(悪化)し、エキセナチドの効果に関する補正後係数は0.92(95%信頼区間:-1.56~3.39、p=0.47)であった。 少なくとも1件以上の重篤な有害事象を発現したのは、エキセナチド群9例(9%)に対しプラセボ群は11例(11%)であった。

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SGLT2阻害薬やGLP-1薬のベネフィット、年齢・性別で違いは?/JAMA

 SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病患者の主要心血管イベント(MACE)のリスク低下と関連することが、英国・グラスゴー大学のPeter Hanlon氏らによる601試験のネットワークメタ解析の結果で示された。年齢×治療の交互作用の解析では、SGLT2阻害薬はヘモグロビンA1c(HbA1c)値の低下は小さいものの、若年者より高齢者で心臓保護効果が高く、一方、GLP-1受容体作動薬は若年者のほうで心臓保護効果が高いことが示された。先行研究で、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、DPP4阻害薬は高血糖を改善し、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は2型糖尿病患者のMACEリスクを軽減することが示されているが、これらの有効性が年齢や性別によって異なるかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2025年2月3日号掲載の報告。MEDLINEやEmbaseなどを2024年8月までレビュー 研究グループは、MEDLINE、Embase、および米国と中国の臨床試験登録について、2022年11月までに発表された論文を検索し、さらに試験結果を更新するため2024年8月に再検索した。 対象研究は、18歳以上の2型糖尿病成人患者を対象に、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬またはDPP4阻害薬と、プラセボや他の血糖降下薬を比較した無作為化臨床試験とし、2人の評価者が独立して適格性をスクリーニングした。 主要アウトカムはHbA1cとMACEで、個々の患者データおよび集計データを用い、マルチレベルネットワークメタ回帰モデルで年齢×治療の交互作用および性別×治療の交互作用を推定した。SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬はMACEリスク低下と関連 適格基準を満たした601試験が同定された。592試験はHbA1cを報告した試験(合計30万9,503例、平均年齢58.9±10.8歳、女性42.3%)、23試験がMACEを報告した試験(16万8,489例、64.0±8.6歳、35.3%)であった。なお、103試験で個々の患者データが得られた(HbA1c:103試験、MACE:6試験)。 SGLT2阻害薬の使用(プラセボとの比較)は、加齢に伴ってHbA1cの低下が少ないことと関連しており、30歳増加ごとの絶対低下率(AR)は、単剤療法で0.24%(95%信用区間[CrI]:0.10~0.38)、2剤併用療法で0.17%(0.10~0.24)、3剤併用療法で0.25%(0.20~0.30)であった。 GLP-1受容体作動薬の使用は、単剤療法(AR:-0.18%、95%CrI:-0.31~-0.05)および2剤併用療法(-0.24%、-0.40~-0.07)は加齢に伴ってHbA1cの低下が大きかったが、3剤併用療法(0.04%、-0.02~0.11)はHbA1cの低下と関連していなかった。 DPP4阻害薬の使用は、2剤併用療法では高齢者におけるHbA1cの低下がわずかに改善したが(AR:-0.09%、95%CrI:-0.15~-0.03)、単剤療法(-0.08%、-0.18%~0.01%)や3剤併用療法(-0.01%、-0.06%~0.05%)では改善がみられなかった。 MACEの相対的な減少は、SGLT2阻害薬の使用では、高齢者のほうが若年者より、30歳増加するごとの減少率が大きく(ハザード比:0.76、95%CrI:0.62~0.93)、GLP-1受容体作動薬の使用では、高齢者のほうが若年者よりも減少率が小さかった(1.47、1.07~2.02)。 SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の使用に関して、性別×治療の交互作用に関する一貫したエビデンスはなかった。

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GIP/GLP-1受容体に作用する週1回の肥満症治療薬「ゼップバウンド皮下注」【最新!DI情報】第32回

GIP/GLP-1受容体に作用する週1回の肥満症治療薬「ゼップバウンド皮下注」今回は、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド皮下注2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、週1回投与の肥満症治療薬であり、食欲を調節すると同時に、脂質などの代謝を亢進させることによって体重を減少させることが期待されています。<効能・効果>肥満症を適応として、2024年12月27日に製造販売承認を取得しました。本剤は高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に使用されます。BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有するBMIが35kg/m2以上<用法・用量>通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射します。患者の状態に応じて適宜増減し、週1回5mgまで減量、または4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量することができます。なお、本剤は週1回投与する薬剤であり、同一曜日に投与します。<安全性>重大な副作用として、低血糖、胆嚢炎、胆汁うっ滞性黄疸、アナフィラキシー、血管性浮腫(いずれも頻度不明)、急性膵炎、胆管炎(いずれも0.1%未満)が報告されています。胃腸障害が現れた場合は急性膵炎の可能性を考慮し、必要に応じて画像検査などによる原因の精査が行われることがあります。また、下痢や嘔吐が続くことで脱水となり、急性腎障害を起こす恐れがあるため、適度な水分補給が必要です。その他の副作用は、悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、消化不良、食欲減退、注射部位反応(紅斑、そう痒感、疼痛、腫脹など)(いずれも5%以上)、腹部膨満、胃食道逆流性疾患、おくび、鼓腸、疲労、浮動性めまい、脱毛症(いずれも1~5%未満)、心拍数増加、低血圧、血圧低下、胆石症、糖尿病網膜症、過敏症(湿疹、発疹、そう痒性皮疹など)、味覚不全、異常感覚、膵アミラーゼ増加、リパーゼ増加、体重減少(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は肥満症の患者さんのうち、高血圧や脂質異常症、または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない人に用いられます。2.この薬は食欲を調節すると同時に、脂質などの代謝を亢進させることによって体重を減少させる作用があります。3.美容やダイエットの目的で使用しないでください。4.この薬の使用中も食事療法・運動療法を継続してください。5.週1回の投与で効果が持続するように製剤的な工夫をした注射薬です。毎週、同じ曜日に注射してください。6.のどの渇きや立ちくらみなどの脱水症状が現れた場合は、十分な水分摂取を行い、速やかに主治医に相談してください。<ここがポイント!>ゼップバウンドは、持続性のグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)およびグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。本剤の成分であるチルゼパチドは、2023年4月より2型糖尿病の治療薬としてマンジャロの商品名で販売されていますが、今回新たに肥満症の治療薬として承認を取得しました。肥満症は個人の生活習慣のみによって引き起こされるという誤解がありますが、遺伝的、心理的、社会的なさまざまな要因が複合的に影響し発症する慢性疾患です。チルゼパチドは中枢神経系においてGIP/GLP-1受容体に作用して食欲を調節すると同時に、脂肪細胞のGIP受容体に作用して脂質などの代謝を亢進し、体重を減少させる効果があります。本剤は、食事療法や運動療法を行っても十分に効果が得られない高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有する患者を対象にしています。美容や痩身、ダイエットなど肥満症治療以外の目的で使用することはできません。投与には1回使い切りのオートインジェクター型注入器(商品名:アテオス)を使用し、週1回皮下注射します。適切な在宅自己注射教育を受けた患者または家族は自宅で自己注射が可能です。日本人肥満症患者を対象とした国内第III相試験(GPHZ試験:SURMOUNT-J)において、投与72週時の体重のベースラインからの平均変化率は、プラセボ群が-1.8%であったのに対し、チルゼパチド10mg群では-18.4%、チルゼパチド15mg群では-22.6%であり、チルゼパチド両群でプラセボ群に対する優越性が示されました。また、5%以上の体重減少を達成した試験参加者の割合は、プラセボ群が21.2%であったのに対し、チルゼパチド10mg群では94.9%、チルゼパチド15mg群では96.9%であり、チルゼパチド両群でプラセボ群に対する優越性を示しました。

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肥満症治療薬、減量効果が特に高いのはどれ?

 GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬などの肥満症治療薬のうち、肥満や過体重の人の減量に最も効果的なのはどれなのだろうか? マギル大学(カナダ)医学部教授のMark Eisenberg氏らにより「Annals of Internal Medicine」に1月7日掲載された新たな研究によると、その答えは、デュアルG(GIP〔グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド〕/GLP-1)受容体作動薬のチルゼパチド(商品名ゼップバウンド)、GLP-1受容体作動薬のセマグルチド(商品名ウゴービ)、および開発中のトリプルG(GLP1/GIP/グルカゴン)受容体作動薬のretatrutide(レタトルチド)であるようだ。これに対し、GLP-1受容体作動薬のリラグルチド(商品名サクセンダ)の減量効果は、これら3種類ほど高くないことも示された。 GLP-1受容体作動薬は、食物を摂取したときに小腸から分泌されるホルモンのGLP-1の作用を模倣した薬剤で、もともと糖尿病の治療薬として開発された。GLP-1は、胃の内容物の排出を遅らせることで食後の血糖値の急上昇を抑えるとともに、中枢神経に作用して満腹感を高める効果を持つ。これにより、食物の摂取量が減り、それが体重減少につながる。デュアルGやトリプルG受容体作動薬は、GLP-1受容体に加え、GIP受容体やグルカゴン受容体などをターゲットにすることで、血糖値上昇を抑制したり満腹感を促進したりする効果を高めようとするもの。 今回Eisenberg氏らは、総計1万5,491人(女性72%、平均BMI 30〜41、平均年齢34〜57歳)を対象にした26件のランダム化比較試験(RCT)のデータを用いて、糖尿病のない肥満者に対する肥満症治療薬の有効性と安全性を検討した。これらのRCTでは、3種類の市販薬(リラグルチド、セマグルチド、チルゼパチド)およびretatrutideなど9種類の承認前薬剤の計12種類の効果が検討されており、治療期間は16週間から104週間(中央値43週間)に及んだ。 その結果、プラセボ投与と比較して、72週間のチルゼパチド(週1回15mg)投与により最大17.8%、68週間のセマグルチド(週1回2.4mg)投与により最大13.9%、48週間のretatrutide(週1回12mg)投与により最大22.1%の体重減少が確認された。また、これらの効果に比べると控え目ではあるものの、26週間のリラグルチド(1日1回3.0mg)投与によっても最大5.8%の体重減少が認められた。安全性の点では、吐き気、嘔吐、下痢、便秘などが一般的な副作用として報告されていたが、薬の服用を中止しなければならないほどひどい副作用はまれだった。 論文の上席著者であるEisenberg氏は、「われわれの調査で対象とした12種類の肥満症治療薬のうち、RCTにおいて最も大きな減量効果が報告されていたのは、retatrutide、チルゼパチド、セマグルチドであることが判明した」と結論付けている。 研究グループは、これらの肥満症治療薬の欠点の一つは、治療効果を維持するために継続的な服用が必要な点であると指摘し、「われわれが実施したシステマティックレビューでは、治療期間が長いRCTでは、追跡期間の短いRCTと同様の減量結果が示されている。この結果は、継続的な治療の必要性を裏付けている」と述べている。なお、retatrutideは、イーライリリー社により開発が進められている薬剤で、現在、臨床試験が進行中である。

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抗精神病薬誘発性体重増加にGLP-1受容体作動薬セマグルチドが有効

 抗精神病薬誘発性体重増加は、患者および臨床医にとって重要な臨床課題であり、抗精神病薬使用患者の体重増加を予防または回復するための適切な介入が求められる。最近、肥満管理の新たなアプローチとしてGLP-1受容体作動薬が大きな注目を集めている。GLP-1受容体作動薬セマグルチドは、顕著な体重減少をもたらすことが明らかとなっている薬剤である。オランダ・マーストリヒト大学のBea Campforts氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対してもセマグルチドが同等の体重減少効果を示すかを調査した。BMC Psychiatry誌2024年11月30日号の報告。 日常的な外来診療における抗精神病薬誘発性体重増加の治療に対するセマグルチドの有効性および安全性を評価するため、プロスペクティブ非ランダム化コホート研究を実施した。その後、メトホルミンを使用している抗精神病薬誘発性体重増加患者を対照群として、結果を比較した。 主な結果は以下のとおり。・16週間後の体重減少は、セマグルチド群(10例)で4.5kg(95%信頼区間[CI]:−6.7〜−2.3、p<0.001)、メトホルミン群(26例)で2.9kg(95%CI:−4.5〜−1.4、p<0.001)。・この結果は、平均体重減少率がセマグルチド群で4%、メトホルミン群で2.5%に相当する。・セマグルチド群におけるBMIの減少は−1.7kg/m2(95%CI:−2.4〜−1.0、p<0.001)、ウエスト周囲径の減少は−6.8cm(95%CI:−9.7〜−3.8、p<0.001)。・メトホルミン群におけるBMIの減少は−0.8kg/m2(95%CI:−1.4〜−0.3、p=0.001)、ウエスト周囲径の減少は−3.4cm(95%CI:−5.4〜−1.3、p=0.001)。・両群間で、統計学的に有意な差は認められなかった。・両群ともに副作用は、典型的に軽度、一時的であり、主な副作用は悪心であった。・さらに、精神症状の軽減、QOL向上が認められた。 著者らは「セマグルチドは、精神疾患患者の抗精神病薬誘発性体重増加に対し実行可能で効果的かつ安全な治療オプションであることが示唆された。これらの結果を裏付けるためにも、さらなる調査が求められる」と結論付けている。

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第248回 GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連

GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連セマグルチドなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)とてんかん発作を生じにくくなることの関連が新たなメタ解析で示されました1)。たいてい60~65歳過ぎに発症する晩発性てんかん(late-onset epilepsy)を生じやすいことと糖尿病やその他いくつかのリスク要因との関連が、米国の4地域から募った45~64歳の中高年の長期観察試験で示されています2)。近年になって使われるようになったGLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬を含む新しい血糖降下薬は多才で、糖尿病の治療効果に加えて神経保護や抗炎症作用も担うようです。たとえば血糖降下薬とパーキンソン病を生じ難くなることの関連が無作為化試験のメタ解析で示されており3)、血糖降下薬には神経変性を食い止める効果があるのかもしれません。米国FDAの有害事象データベースの解析では、血糖降下薬と多発性硬化症が生じ難くなることが関連しており4)、神経炎症を防ぐ作用も示唆されています。晩発性てんかんは神経変性と血管損傷の複合で生じると考えられています。ゆえに、神経変性を食い止めうるらしい血糖降下薬は発作やてんかんの発生に影響を及ぼしそうです。そこでインドのKasturba Medical CollegeのUdeept Sindhu氏らはこれまでの無作為化試験一揃いをメタ解析し、近ごろの血糖降下薬に発作やてんかんを防ぐ効果があるかどうかを調べました。GLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の27の無作為化試験に参加した成人20万例弱(19万7,910例)の記録が解析されました。血糖降下薬に割り振られた患者は半数強の10万2,939例で、残り半数弱(9万4,971例)はプラセボ投与群でした。有害事象として報告された発作やてんかんの発生率を比較したところ、血糖降下薬全体はプラセボに比べて24%低くて済んでいました。血糖降下薬の種類別で解析したところ、GLP-1 RAのみ有益で、GLP-1 RAは発作やてんかんの発生率がプラセボに比べて33%低いことが示されました(相対リスク:0.67、95%信頼区間:0.46~0.98、p=0.034)。発作とてんかんを区別して解析したところ、GLP-1 RAと発作の発生率の有意な低下は維持されました。しかし、てんかん発生率の比較では残念ながらGLP-1 RAとプラセボの差は有意ではありませんでした。試験の平均追跡期間は2.5年ほど(29.2ヵ月)であり、てんかんの比較で差がつかなかったことには試験期間が比較的短かったことが関与しているかもしれません。また、試験で報告されたてんかんがInternational League Against Epilepsy(ILAE)の基準に合致するかどうかも不明で、そのことも有意差に至らなかった理由の一端かもしれません。そのような不備はあったもの、新しい血糖降下薬が発作やてんかんを防ぎうることを今回の結果は示唆しており、さまざまな手法やより多様で大人数のデータベースを使ってのさらなる検討を促すだろうと著者は言っています1)。とくに、脳卒中患者などのてんかんが生じる恐れが大きい高齢者集団での検討を後押しするでしょう。参考1)Sindhu U, et al. Epilepsia Open. 2024;9:2528-2536.2)Johnson EL, et al. JAMA Neurol. 2018;75:1375-1382.3)Tang H, et al. Mov Disord Clin Pract. 2023;10:1659-1665.4)Shirani A, et al. Ther Adv Neurol Disord. 2024;17:17562864241276848.

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GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドは、駆出率の保たれた心不全肥満患者に有効(解説:佐田政隆氏)

 左室駆出率が40%未満の心不全を「左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)」、左室駆出率が50%以上の心不全を「左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)」、左室駆出率が40%以上50%未満の心不全は「左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)」と定義されている。 HFrEFに対する薬物療法では、この30年ほどの間に著明な進歩があった。β遮断薬、ACE阻害薬/ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)もしくはARNI (アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)、そして最近はSGLT2阻害薬の上乗せが予後をさらに改善することが証明された。現在、β遮断薬、ARNI、MRA、SGLT2阻害薬はfantastic fourと呼ばれ、HFrEF患者の予後改善のために1ヵ月以内に早期に導入することが強く推奨されている。 一方、HFpEFに対しては、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、ARNI、MRAを用いて各種大規模臨床研究が行われてきたが、いずれも予後を改善することは証明できなかった。近年、HFrEFよりHFpEFが増加しているという報告もあり、今後予想される心不全パンデミックに備えて、HFpEFに対する有効な治療法の開発が望まれていた。 この数年、SGLT2阻害薬がHFrEFのみでなくHFpEFに対しても有効性があることが証明され、ダパグリフロジンとエンパグリフロジンは糖尿病がなくても心不全治療薬として承認されている。しかし、HFpEF患者の予後改善のためには、さらなる追加の治療法が求められていた。 2023年、肥満を有するHFpEF患者において、セマグルチド2.4mgによる治療によって、プラセボと比較して、症状と身体的制限が軽減し、運動機能が改善し、体重が減少することがSTEP-HFpEF試験で報告された。 小腸から分泌されて膵臓に作用するインクレチン製剤としては長年GLP-1受容体作動薬が用いられてきたが、昨今、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドが糖尿病治療薬として開発され、その強力な血糖降下作用と体重減少効果から、本邦でも急速に普及している。 本論文では、BMI 30以上の肥満をもったHFpEF患者(2型糖尿病患者はおよそ48%)に対するチルゼパチドの効果を検討した。主要評価項目である104週間での「心血管死と心不全増悪」を、チルゼパチドでプラセボと比較して有意に減少させた。また、カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:スコア範囲は0~100で、数値が高いほど症状と身体的制限が少ないことを示す)と6分間歩行距離を改善した。体重減少は、チルゼパチド群で-13.9%、プラセボ群で-2.2%であった。注目すべきことには、高感度CRPがチルゼパチド群でなんと-38.8%低下し、プラセボ群では-5.9%であった。この抗炎症効果は、体重減少だけでは説明がつかないと思われ、膵臓以外の臓器へのチルゼパチドの多面的な作用の関与が大きいと思われる。 米国ではチルゼパチドは肥満症治療薬として2023年11月にすでに承認されているが、日本においてもセマグルチドに続いて2024年12月27日に承認された。肥満を有するHFpEF患者に対するチルゼパチドの効果のメカニズム、GLP-1受容体作動薬とGIP/GLP-1受容体作動薬でHFpEFに対してどちらがより効果的なのか、肥満のないHFpEFにも有効なのかと疑問は尽きないが、今後の臨床研究、基礎研究で解明されていくことが期待される。

91.

GLP-1RAによる肥満治療が食品ロスを増やしている

 減量目的で使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が、食品の廃棄を増やしているとする、米オハイオ州立大学のBrian Roe氏と同パデュー大学のJamil Mansouri氏による論文が、「Nutrients」に9月27日掲載された。このような問題が示された一方で、GLP-1RAによる減量を開始後に、人々が摂取する食品が健康的なものにシフトする傾向も認められたという。 この研究では、GLP-1RAの新規使用者505人を対象に、食品廃棄状況の調査を行った。その結果、GLP-1RAの使用を開始後に「食べ物を無駄にする量が増えたか」という問いかけに否定した人が60.8%(強い不同意が26.7%、やや不同意が34.1%)いた一方で、同意した人が25.3%(強い同意が6.7%、やや同意が18.6%)を占めていた。ただし、GLP-1RAの使用開始から時間がたつほど食品の廃棄が減る傾向も認められた。 この結果についてRoe氏は、「GLP-1RA使用開始後に増加した食品廃棄が、薬剤使用の影響に患者が慣れるにつれて減るという事実は、この問題に対する簡単な解決策が存在する可能性を示唆している。つまり、GLP-1RAを新たに使い始める人たちに対してあらかじめ、食生活が変化するために食品廃棄が増加する可能性があることをアドバイスしておけば、使用開始後初期の食品廃棄を減らせ、出費も抑えられるだろう」と述べている。 GLP-1RAは、消化管ホルモンに作用して血糖値を下げるほかに、胃の内容物の排出を遅らせたり、脳に満腹感を伝えたりする働きを持つ。研究グループによると、米国では2024年春の時点で成人の6%がGLP-1RAを使用しているという。本調査の回答者の中で、GLP-1RAを1年以上継続使用していた人の減量幅は約20%だった。ただし、1年以上継続使用していたのは全体の4分の1程度だった。 調査データを詳しく解析した結果、同薬の使用に伴う吐き気が、人々が食べ物を廃棄する主な原因となっていることが示された。ただしそればかりでなく、GLP-1RA使用開始後に、人々が特定の食べ物をあまり好まなくなる傾向のあることも分かった。具体的には、GLP-1RA使用開始後は、アルコール、パスタなどの炭水化物、揚げ物、菓子、乳製品を避け、代わりに野菜、タンパク質食品、魚、健康的な脂質を食事に取り入れるような変化が見られるという。また野菜の消費量が増え始めるとともに、通常は最も廃棄されやすい食品である野菜の廃棄量は減る傾向が見られた。 では、GLP-1RAを使用している人に見られるこのような食習慣の変化は、食料品への出費を減らすことにつながるだろうか? この質問に対してRoe氏は、「おそらくそうだろう」と答え、実際にGLP-1RA使用による家計への影響を調査する研究を計画していることを明らかにした。また同氏は大学発のリリースの中で、「これらの薬剤を使用している人は、おそらく食費が減るだろう。その食費の削減効果がGLP-1RAの薬剤費によって相殺されてしまう可能性については、現時点では何とも言えない」と述べている。

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セマグルチドは心血管系疾患の既往と心不全を有する肥満患者の心不全イベントリスクを低下する:SELECT試験の2次解析(解説:原田和昌氏)

 肥満の人では心血管疾患のリスクが高まるが、これまでMACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)のリスクを低減しつつ効果的な体重管理ができることが証明された治療薬はなかった。SELECT試験は、糖尿病の既往がない過体重または肥満で、アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の既往を有する成人を対象に、GLP-1受容体作動薬セマグルチド2.4mg週1回皮下投与のMACE予防に対する有効性をプラセボ投与と比較した無作為化二重盲検試験であり、41ヵ国にて45歳以上の過体重または肥満の成人1万7,604例が登録された。なお、BMIが30以上を「肥満」とし、BMIが25以上30未満を「過体重」とした。セマグルチド2.4mg投与群ではプラセボ群と比較してMACEが20%有意に減少した。 本論文は英国のDeanfield氏らが、SELECT試験の症例登録時に心不全の既往を有する患者における、セマグルチドのMACE、および心不全(HF)リスクの軽減効果について、SELECT試験の事前規定分析により検証したものである。登録時にHFのあった患者4,286例中、53%がHFpEF、31.4%がHFrEF、15.5%が詳細不明のHFであった。エンドポイントは、MACE、複合HFエンドポイント(心血管死、HF入院、HF緊急受診)、心血管死、および全死因死亡である。 HFと非HFで、ベースライン特性は同様であったが、HF患者の臨床イベントの発生率が高かった。セマグルチド治療により、HF患者は非HF患者と比較してMACEのリスクが28%低下し、複合HFエンドポイントのリスクが21%有意に低下した。心血管死のリスクは24%低下し、全死因死亡のリスクは19%低下した。HFrEF患者はHFpEF患者よりも絶対リスクが高かった。セマグルチド治療により、HFrEF患者でMACEのリスクが35%、HFpEF患者では31%低下し、両タイプに有効であることが示された。複合HFエンドポイントのリスクは、HFrEFで21%、HFpEFで25%低下したがタイプ別では有意ではなかった。 本試験の結果はSELECT試験の主要結果と一致し、とくにHFrEF、HFpEFのタイプによらないHFイベントリスク低減効果を示したが、これまでGLP-1アナログ(リラグルチド)が急性心不全で入院したHFrEFの糖尿病患者の予後(死亡、再入院)を改善せず、むしろ悪化したという報告もあるため(FIGHT試験)、クラス・エフェクトと考えることは難しいかもしれない。また、Lancet誌の同じ号にてSELECT、FLOW、STEP-HFpEF、STEP-HFpEF DM試験の統合解析が行われて、「現時点で治療選択肢がほとんどないHFpEF患者において、セマグルチドが心血管死または心不全増悪イベントの複合を低減する有効かつ安全な治療法であることを支持する最も包括的なエビデンスをもたらすものである」(?)と結論付けているが、過体重または肥満で糖尿病のない、心血管系疾患の既往を有するというHFpEFの表現型が、とくに日本においてどれだけの患者に当てはまるのかは明らかでない。

93.

GLP-1RAが飲酒量を減らす?

 血糖降下薬であり近年では減量目的でも使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が、飲酒量を減らすことを示唆する新たな論文が報告された。特に肥満者において、この作用が高い可能性があるという。英ノッティンガム大学のMohsan Subhani氏らによるシステマティックレビューの結果であり、詳細は「eClinicalMedicine」に11月14日掲載された。なお、本研究で言及されているエキセナチド等、GLP-1RAの禁酒・節酒目的での使用は日本を含めて承認されていない。一方で同薬が作用するGLP-1受容体は脳内にも分布しており、同薬が飲酒量を抑制するという前臨床試験のデータがある。 この研究では、Ovid Medline、EMBASE、PsycINFOなどのデータベースを用いて、2024年3月末までに報告された研究結果を検索、同年8月7日に新たに追加された報告の有無を確認した。主要評価項目は、GLP-1RAの使用と飲酒量の関連の評価であり、副次的に、GLP-1RAと飲酒関連イベントや機能的磁気共鳴画像法(fMRI)のデータなどとの関連を評価した。 解析対象研究として、6件の報告が特定された。このうち2件はランダム化比較試験(RCT)、3件は後ろ向き観察研究、1件はケースシリーズ(複数の症例報告)であり、3件は欧州、2件は米国、1件はインドで行われていた。研究参加者数は合計8万8,190人で、このうち3万8,740人(43.9%)にGLP-1RAが投与されていた。ただし、エビデンスレベルが高いと評価されるRCTとして実施されていた研究の参加者は286人だった。平均年齢は49.6±10.5歳で、男性が56.9%だった。 RCTとして実施されていた研究では、GLP-1RAのエキセナチドによる24週間の治療後30日間での飲酒量は、プラセボと差がなかった(大量飲酒の日数の群間差がP=0.37)。ただし、サブグループ解析では、肥満者(BMI30超)では肯定的な影響が認められ、fMRIで脳内の報酬中枢の反応に差が認められた。また、RCTの二次解析では、GLP-1RAのデュラグルチド群はプラセボ群と比較して、飲酒量が減少する可能性が有意に高かった(相対効果量0.71〔95%信頼区間0.52~0.97〕、P=0.04)。 観察研究では、DPP-4阻害薬が処方されていた患者や無治療の患者に比べて、GLP-1RAによる治療が行われていた患者では飲酒量が有意に少なく、飲酒関連イベントの発生も少なかった。 Subhani氏は、「GLP-1RAが将来的には過度の飲酒を抑制するための潜在的な治療選択肢となり、結果的に飲酒関連の死亡者数の減少につながる可能性があるのではないか」と述べている。なお、論文には、「GLP-1RAは一部の人の飲酒量を減らす可能性があることが示唆された。ただし、研究の結果に一貫性がなく、飲酒量を抑える目的でのGLP-1RAの有効性と安全性を確立するため、さらなる研究が求められる」と付記されている。

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セマグルチド2.4mg、MASHで有意な改善示す(ESSENCE)/ノボ ノルディスク

 GLP-1受容体作動薬のセマグルチドは代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)に有益であることが実証されているが、主要評価項目を「肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失」「MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善」とする第III相ESSENCE試験1)のPart Iで得られた結果がAASLD 2024 The Liver Meeting(米国肝臓学会議)において発表された。 本発表内容は11月25日付けでノボ ノルディスク ファーマがプレスリリースし、セマグルチド2.4mg(以下、セマグルチド群)のプラセボに対する優越性が報告された。 本試験の主要評価項目「肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失」「MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善」について、セマグルチド群でプラセボと比較し統計学的に有意な差が認められ、72週時で肝線維化の悪化を伴わないMASHの消失が認められたのは、セマグルチド群62.9%、プラセボ群34.1%だった。また、MASHの悪化を伴わない肝線維化の改善が認められたのは、セマグルチド群37.0%、プラセボ群22.5%であった。 副次評価項目である肝機能検査(ALT、AST、γ-GT[γ-GTP])やELFスコアも改善が示され、セマグルチド群の32.8%でMASHの消失と肝線維化の改善の両方が認められた。なお、プラセボ群では16.2%であった。 本試験の治験責任医師である米国・VCU School of MedicineのArun J. Sanyal氏は「本データからセマグルチド2.4 mgはMASHの進行を遅らせ、既存の肝機能障害を回復させることが明らかになった」とコメントしている。ESSENCE試験とは ESSENCE試験は、肝線維化が中等度~高度(ステージF2またはF3)の成人MASH患者を対象に、セマグルチド2.4 mg週1回皮下投与の効果を評価する第III相試験で、2つのパートから成る。被験者1,200例をセマグルチド2.4 mgまたはプラセボに2:1の割合で無作為に割り付け、標準治療に上乗せして240週間投与する。Part Iでは、無作為割付した最初の800例において、72週時点の肝生検の組織学的所見がセマグルチド2.4 mg投与により改善するかを検証した。Part IIは、セマグルチド2.4 mgによりプラセボと比較して240週時における肝関連事象の発現リスクが低下するかを検証することを目的としている。

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『糖尿病治療ガイド2024』発刊、GIP/GLP-1受容体作動薬を追加/糖尿病学会

 日本糖尿病学会は、糖尿病診療で頻用されている『糖尿病治療ガイド』の2024年版を11月に発刊した。本書は、糖尿病診療の基本的な考え方から最新情報までをわかりやすくまとめ、専門医だけでなく非専門の内科医、他科の医師、医療スタッフなどにも、広く活用されている。今回の改訂では、GIP/GLP-1受容体作動薬の追加をはじめ、2024年10月現在の最新の内容にアップデートされている。【主な改訂のポイント】・「糖尿病診療ガイドライン2024」に準拠しつつ、診療上必要な専門家のコンセンサスも掲載。・GIP/GLP-1受容体作動薬の追加など、最新の薬剤情報にアップデート。・「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム(第2版)」に基づいた経口薬療法および注射薬療法の解説。・緩徐進行1型糖尿病の診断基準や糖尿病患者の脂質管理目標値、糖尿病性腎症の病期分類など、最新の基準・目標値の内容を反映。※アドボカシー活動の進展による言葉の変更は、いまだ適切な基準がないため、全面的な変更は見送った。 編集委員会は序文で「日々進歩している糖尿病治療の理解に役立ち、毎日の診療に一層活用されることを願ってやまない」と期待を述べている。

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減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性

 インクレチン製剤であるGLP-1受容体作動薬などの減量薬を、より広い対象に適用して多くの人がアクセスできるようにすることで、米国では年間4万人以上の命が救われる可能性があるとする論文が発表された。米イェール大学公衆衛生大学院のAlison Galvani氏らの研究によるもので、詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に10月15日掲載された。 肥満が死因として記録されることはめったにない。しかし、肥満は心血管代謝疾患をはじめとする多くの疾患のリスクを押し上げ、結果としてそれらの疾患による死亡リスクを高めている。米国では人口の74%が過体重や肥満(うち43%が肥満)に該当し、公衆衛生上の極めて大きな問題となっている。 消化管ホルモンであるインクレチンの作用を模倣した血糖降下薬であるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬(GLP-1RA)や、GLP-1とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)の両受容体作動薬(GIP/GLP-1RA)が近年、減量目的で使用されるようになり、顕著な効果が報告されている。しかし、これらの薬剤は高額で、かつ肥満治療における保険の適用範囲も限られている。具体的には、肥満に伴う何らかの疾患を抱えている場合にのみ保険が適用され、単に減量目的で処方を受けるには月額1,000ドル以上の負担が発生する。そのため現状では、多くの肥満者がこれらの薬剤にアクセスできていない。Galvani氏らは、仮に減量目的でのGLP-1RAやGIP/GLP-1RAが、必要な全ての人にいきわたったとした場合のインパクトを推計した。 この研究では、まず、現時点での減量薬(GLP-1RA、GIP/GLP-1RA)の米国人の死亡抑制効果を推計したところ、1年間で8,592人(95%不確定区間8,580~8,604)の命が救われていると計算された。そのうち、糖尿病患者が2,670人(同2,657~2,684)を占めていた。 次に、BMIが30以上の人の全て、およびBMI25以上の糖尿病患者の全てがアクセス可能な状況を仮定した推計を行った。この場合、米国成人の45%以上が減量薬を使用することになる。解析の結果、1年間でさらに4万2,027人(4万1,990~4万2,064)の命が救われると計算された。そのうち、糖尿病患者は1万1,769人(1万1,707~1万1,832)だった。 この研究に関連してGalvani氏は、「医薬品へのアクセス拡大には、疾患罹患者の治療選択肢を増やすということだけでなく、重要な公衆衛生対策という側面もある」と解説。ただし同氏らは、GLP-1RAやGIP/GLP-1RAが高価であるため、全てを保険適用とするのは困難であり、かつ、現在でも既に需要の高まりによって慢性的な供給不足になっているという課題を指摘している。 論文共著者の1人である米フロリダ大学のBurton Singer氏は、「これらの課題に対しては多面的なアプローチが必要だ。医薬品の価格を製造コストに見合ったものとし、需要を満たし得る生産能力を確保しなければならない。それと同時に、多くの人々が必要な治療を受けられていないという、アクセスの問題にも取り組まなければならない」と述べている。

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エンパグリフロジン投与終了後もCKDの心・腎保護効果が持続、レガシー効果か?(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか EMPA-KIDNEY試験では、SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(エンパ)の心・腎保護作用が、糖尿病性腎症(DKD)のみならず非糖尿病CKD(CKD)においても示された(The EMPA-KIDNEY Collaborative Group. N Engl J Med. 2023;388:117-127.)。今回の報告は、同試験の終了後の追跡評価(post-trial follow-up)である。その結果、エンパの投与終了後、少なくとも1年間は心・腎保護作用が持続した。この成績が先行治療終了後も臓器保護作用が持続する、いわゆるレガシー(遺産)効果の初期像を観察しているとすれば、SGLT2阻害薬の新知見の可能性がある。EMPA-KIDNEY試験終了後の追跡研究 本研究では、EMPA-KIDNEY試験で無作為化された6,609例のうち、同意が得られた4,891例(74%)を登録し追跡評価の対象とした。EMPA-KIDNEY試験開始から追跡評価終了までを統合期間(4年間)とし、オーバーラップ期間を経て2年間を追跡観察期とした。全体での主要アウトカムイベントの発生は、エンパ群で865/3,304例(26.2%)、プラセボ群で1,001/3,305例(30.3%)であり(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.72~0.87)、統合期間中のエンパの有用性が示唆された。追跡期間の主要アウトカムは、腎疾患進行または心血管死の2つであった。その追跡評価期間の主要アウトカムイベントのHRは0.87(95%CI:0.76~0.99)であり、エンパ群で投与終了後も最長12ヵ月間、心・腎保護作用をもたらし続けることが示された。また、統合期間における腎疾患進行の発生率はエンパ群23.5%、プラセボ群27.1%、死亡または末期腎不全(ESKD)の複合の発生率はエンパ群16.9%、プラセボ群19.6%、心血管死の発生率はエンパ群3.8%、プラセボ群4.9%で、いずれもエンパ群で改善がみられた。一方、非心血管死への影響は両群とも5.3%で差異は認められなかった。なお、追跡期間中のエンパを含めたSGLT2阻害薬投与は治験担当医の判断に委ねられており、EMPA-KIDNEY試験終了後2年でエンパ群の45.4%、プラセボ群の42.0%がSGLT2阻害薬治療を受けていた。DKD/CKDにおけるSGLT2阻害薬の腎保護機序 DKD/CKDの進行性機序は多因子である。SGLT2阻害薬の腎保護作用は、Tubulo-Glomerular Feedback(TGF)機構を介した糸球体過剰濾過軽減が主な機序である。また、血圧改善、Na利尿、ブドウ糖尿とNa排泄による浸透圧利尿なども腎保護に寄与する。SGLT2阻害薬による代謝系改善は、血糖降下作用、尿酸値低下、脂質代謝改善、体重減少、Hb値上昇、ケトン体形成などがある。SGLT2阻害薬は、これらの複合的機序により、腎虚血改善、抗炎症作用、抗酸化作用、腎線維化抑制作用などを惹起する(Dharia A, et al. Annu Rev Med. 2023;74:369-384.)。CKDでは血糖低下による効果は期待されないため、腎保護にはTGFなど、他の機序が複合的に関与している。本論文のレガシー効果の信ぴょう性 2型糖尿病において早期から集中的に良好な血糖管理を行うと、全死亡リスク減少や糖尿病合併症を抑制するとの「レガシー効果」はUKPDS 91で報告された(1型糖尿病のDCCT研究のMetabolic Memoryも同義)。今回の所見が、エンパによる心・腎保護作用のレガシー効果の初期像を見ている可能性は否定できない。25万人の2型糖尿病治療のコホート研究において、SGLT2阻害薬を治療開始2年で早期導入することでCVD発症が減少するとのレガシー効果の報告はある(Ceriello A, et al. Lancet Reg Health Eur. 2023;31:100666.)。本研究は、観察期間がエンパ投与終了後2年と短期であることや、EMPA-KIDNEY試験終了後のエンパ群とプラセボ群とのSGLT2阻害薬投与率がほぼ同程度であることなどから、レガシー効果は(仮にあるとして)検出しにくい条件であった。それにもかかわらず、追跡期間に心・腎保護効果を認めたことは、レガシー効果を観察している可能性はある。DKD/CKDにおける心・腎保護療法の未来展望 DKDにおけるSGLT2阻害薬の心・腎保護作用は、EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Program、DECLARE-TIMI 48、CREDENCEなどで確認され腎保護療法として確立してきた。その後、DAPA-CKDやEMPA-KIDNEYにおいてCKDにも腎保護作用が報告された。これらの試験の結果を踏まえ、2024年KDIGOガイドラインのDKD/CKD治療のアルゴリズムでは、SGLT2阻害薬とRAS阻害薬が第1選択とされ、病態に応じGLP-1受容体作動薬、非ステロイド型MRAを選択すべきことが推奨されている (Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. Kidney Int. 2024;105(4S):S205-S254.)。ここでRAS阻害薬とSGLT2阻害薬の腎複合エンドポイント(EP)のリスク減少度(RR)に注目すると、 RAS阻害薬であるARBを使用したRENAAL試験での腎複合EPのRRは16%、IDNT試験では19%であったが、SGLT2阻害薬を使用したDAPA-CKD試験ではRRは39%と著しい改善がみられた。また、EMPA-KIDNEY試験は、RR 28%の時点で有効性のエビデンスが明白であるとの理由で、独立データモニタリング委員会の勧告で早期中止となった。両薬剤間のRRは直接比較することはできないが、SGLT2阻害薬の優れた腎保護作用は明白である。 実臨床の問題として、DKDは低レニン性低アルドステロン血症によって、RAS阻害薬投与による高K血症のリスクは少なからず危惧される(Sousa AG, et al. World J Diabetes. 2016;7:101-111.)。その点、SGLT2阻害薬は、近位尿細管でのSGLT2抑制とそれに伴う浸透圧利尿によりK喪失的に作用するため高K血症は少ない。これらの両剤の相違から、今後、「SGLT2阻害薬をDKD/CKDの早期から使用することにより、さらなる腎予後改善が望めるかもしれない」との治療上の作業仮説が注目される。たとえば、EMPA-KIDNEY試験の試算では、エンパを腎機能軽度低下の早期(eGFR 60mL/分/1.73m2)に開始すると、中等度に低下した晩期(eGFR 30mL/分/1.73m2)に開始することに比較し、末期腎不全への移行を9年ほど延長することが期待される(腎生存期間:早期群17.8年vs.晩期群8.9年)(Fernandez-Fernandez B, et al. Clin Kidney J. 2023;16:1187-1198.)。SGLT2阻害薬のメタ解析からも、将来的に同剤がDKD/CKD治療において、Foundational drug therapy(基礎治療薬)となりうる可能性が注目されている(Mark PB, et al. Lancet. 2022;400:1745-1747.)。

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第241回 セマグルチドなどのGLP-1の類いが慢性痛の治療手段となりうる

セマグルチドなどのGLP-1の類いが慢性痛の治療手段となりうるGLP-1受容体作動薬セマグルチドが変形性膝関節症の痛みを緩和することが、先月末にNEJM誌に掲載された第III相STEP 9試験で示され1)、体重が大幅に減ればしばしば痛みが劇的に緩和することが確かとなりました2)。GLP-1受容体作動薬は多才で、体重を減らすことに加えて炎症抑制や免疫調節の働きがあります。心血管疾患では、体重減少以外のそのような作用が治療効果に寄与しているようです。たとえばGLP-1受容体作動薬の1つalbiglutideは2018年にLancet誌に結果が掲載されたHarmony Outcomes試験で、プラセボに比べて体重をほんの0.7kg多く減らしただけにも関わらず、心血管転帰(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)をより防ぎました3)。STEP 9試験で認められた鎮痛効果が心血管疾患での有益効果と同様に体重減少以外の要因を介しうるなら、痛みの新たな治療手段の道が開けそうです。そのような要因を示唆する動物実験結果が発表されています。10年前の2014年に発表されたネズミの実験では、脊髄のGLP-1受容体の活性化が炎症性の痛み、神経障害性疼痛、骨腫瘍の痛みを減らすことが示されています4)。最近発表された台湾のチームの研究では、セマグルチドが脊髄の神経炎症を阻害することで糖尿病ラットの神経障害性疼痛を緩和することが示されました。セマグルチドは糖尿病性神経障害による疼痛に対抗する神経保護作用を有するようであり、GLP-1受容体作動薬による炎症/痛覚過敏抑制が神経障害性疼痛の治療手段となりうると著者は言っています5)。また、韓国の研究者らによる別の最近の報告では、GLP-1から生じるペプチドの1つexendin 9-39がマウスの急性痛と慢性痛の両方を緩和しうることが示されました。さらに突き詰めたところ、exendin 9-39の一部のexendin 20-29がTRPV1に結合し、GLP-1受容体機能に手出しすることなく痛みを緩和すると判明しました。どうやらexendin 20-29は慢性痛の対処手段となりうると著者は言っています6)。セマグルチドはヒトのGLP-1と配列が94%一致するGLP-1アナログであり、セマグルチドもまたGLP-1受容体を介さない働きによる鎮痛作用を担うかもしれません。そのようなメカニズムの研究を進めることと並行して、セマグルチドをより活用できるようにする試験も実施できそうです。たとえば、肥満ではない変形性関節症(OA)患者の痛みもセマグルチドでSTEP 9試験と同様に緩和するかどうかを調べるべきでしょう2)。また、GLP-1受容体作動薬使用患者は軟骨がより損失し難いことが別の試験で示唆されており7)、OAでの関節の劣化をGLP-1受容体作動薬で抑制しうるかどうかを確かめるさらなる試験も必要なようです。参考1)Bliddal H, et al. N Engl J Med. 2024;391:1573-1583.2)Felson DT. N Engl J Med. 2024;391:1643-1644.3)Hernandez AF, et al. Lancet. 2018;392:1519-1529.4)Gong N, et al. J Neurosci. 2014;34:5322-5334.5)Lee SO, et al. Cells. 2024;13:857.6)Go EJ, et al. Exp Mol Med. 2024 Nov 1. [Epub ahead of print]7)Zhu H, et al. Ann Rheum Dis. 2023;82:1218-1226.

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肥満の膝OA患者へのセマグルチド、疼痛を改善/NEJM

 肥満(BMI値≧30)かつ中等度~重度の疼痛を伴う変形性膝関節症(OA)を有する患者において、週1回のセマグルチド皮下投与はプラセボと比較して、体重および膝OA関連の疼痛を有意に減少したことが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のHenning Bliddal氏らSTEP 9 Study Groupが二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。体重の減少は疼痛などの膝OAの症状を緩和することが示されているが、肥満者のGLP-1受容体作動薬の効果は十分には研究されていなかった。NEJM誌2024年10月31日号掲載の報告。ベースラインから68週までの体重変化率、疼痛スコアの変化を評価 試験は11ヵ国61施設で68週間にわたり行われた。被験者は、肥満(BMI値≧30)であり、米国リウマチ学会(ACR)の分類基準で臨床的に膝OAと診断され、対象となる膝に放射線学的に中等度の変形が認められ、膝OA関連の疼痛(無作為化時のWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index[WOMAC]疼痛スコアが40以上[スコア範囲:0~100、高スコアほどアウトカムが不良であることを示す])を有する患者を適格とした。 被験者を2対1の割合でセマグルチド群、プラセボ群に無作為に割り付け、セマグルチド(2.4mg)を週1回皮下投与またはプラセボを投与し追跡評価した。試験期間中、両群ともカロリー制限食と身体活動のカウンセリングを受けた。セマグルチドの投与は0.24mgで開始し、目標用量2.4mgの到達は16週時点とされた。2.4mgで許容できない副作用が認められた被験者には、治験担当医師が安全と判断すればより低用量(1.7mg)による投与の継続が可能であり、プロトコールでは、治験担当医師の裁量で目標用量2.4mgまで増量するための追加の試行を少なくとも1回行うことが推奨された。 主要エンドポイントは、ベースラインから68週までの体重変化率およびWOMAC疼痛スコアの変化。重要な検証的副次エンドポイントは、SF-36(ver.2)の身体機能スコア(スコア範囲:0~100、高スコアほどより良好な健康状態であることを示す)であった。体重、疼痛スコアいずれも有意に減少、SF-36身体機能スコアも有意に改善 2021年10月~2022年3月に計407例が無作為化された(セマグルチド群271例、プラセボ群136例)。平均年齢56歳、平均BMI値40.3、平均WOMAC疼痛スコア70.9であり、被験者の81.6%は女性であった。 被験者の多くが治療ピリオドを完了し(セマグルチド群86.7%、プラセボ群77.9%)、試験を完了した(それぞれ90.8%、89.7%)。試験ピリオドを完了したセマグルチド群235例において、最終受診時に2.4mgの投与を受けた被験者は211例(89.8%)であった。 ベースラインから68週までの体重の平均変化率は、セマグルチド群-13.7%、プラセボ群-3.2%であった(p<0.001)。同様にWOMAC疼痛スコアの変化は、セマグルチド群-41.7ポイント、プラセボ群-27.5ポイントであった(p<0.001)。 SF-36身体機能スコアの改善は、セマグルチド群がプラセボ群よりも有意に大きかった(スコアの平均変化12.0ポイントvs.6.5ポイント、p<0.001)。 重篤な有害事象の発現は、両群で同程度であった(セマグルチド群10.0%、プラセボ群8.1%)。最も多くみられた重篤な有害事象は良性、悪性および詳細不明の新生物(それぞれ3.3%、2.2%)および胃腸障害(1.5%、0.7%)であった。試験レジメンの永続的な中止に至ったのはセマグルチド群6.7%、プラセボ群3.0%であり、最も多くみられた理由は胃腸障害であった。

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GLP-1受容体作動薬、内視鏡検査の誤嚥リスクに影響するか/BMJ

 2型糖尿病患者に上部消化管内視鏡検査を行う際、検査前のSGLT-2阻害薬と比較してGLP-1受容体作動薬の使用では、肺吸引のリスクは上昇しないものの、内視鏡検査中止のリスクが高いことが、米国・ハーバード大学医学大学院のWajd Alkabbani氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年10月22日号に掲載された。米国のコホート研究 研究グループは、2型糖尿病患者の上部消化管内視鏡検査において、検査前のGLP-1受容体作動薬投与は、SGLT-2阻害薬投与に比べ肺吸引や検査中止のリスクを上昇させるかを評価する目的で、コホート研究を行った(ハーバード大学医学大学院薬剤疫学・薬剤経済学科などの助成を受けた)。 米国の2つの商用医療データベースを用いて、2016年1月1日~2023年8月31日に、上部消化管内視鏡検査前の30日以内にGLP-1受容体作動薬またはSGLT-2阻害薬を使用した18歳以上の2型糖尿病患者を特定した。 4万3,354例を解析の対象とした。内視鏡検査前に2万4,817例(平均年齢59.9歳、女性63.6%)がGLP-1受容体作動薬を、1万8,537例(59.8歳、63.7%)がSGLT-2阻害薬を使用していた。サブグループ解析でも全般に肺吸引リスクに差はない 主要アウトカムである内視鏡検査当日または翌日の肺吸引の1,000人当たりの重み付けリスクは、GLP-1受容体作動薬群が4.15、SGLT-2阻害薬群は4.26であり、両群で同程度であった(統合リスク比:0.98、95%信頼区間[CI]:0.73~1.31)。 内視鏡検査に使用した麻酔の種類や肥満度に基づくサブグループ解析でも、両群間に肺吸引リスクの差を認めなかった。また、個々のGLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬の比較でも、全般に肺吸引リスクに差はなく、エキセナチド-リキシセナチドのみリスクが高かった(統合リスク比:2.49、95%CI:1.36~4.59)が、症例数が少なく精度は低かった。BMI値≧30で検査中止リスクが高かった 副次アウトカムである内視鏡検査中止の1,000人当たりの重み付けリスクは、SGLT-2阻害薬群が4.91であったのに対し、GLP-1受容体作動薬群は9.79と増加していた(統合リスク比:1.99、95%CI:1.56~2.53)。 サブグループ解析では、BMI値≧30の患者でGLP-1受容体作動薬群の検査中止リスクが高かった(統合リスク比:2.60、95%CI:1.65~4.06)が、BMI値<30の患者では差を認めなかった(0.99、0.51~1.94)。また、SGLT-2阻害薬群と比較して、セマグルチド皮下注、デュラグルチド、エキセナチド-リキシセナチド、チルゼパチドは検査中止リスクが高かった。 著者は、「これらの知見は、無作為化試験によるエビデンスがない現在、内視鏡検査を必要とする患者に対する検査前のプロトコールの作成に役立つ可能性がある」としている。

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