94.
<先週の動き>1.インフルエンザ感染者、前週比1.48倍に増加、愛媛県で警報発令/厚労省2.2024年度診療報酬改定、人材確保と働き方改革が重点/中医協3.脳死判定者数、累計1,000例を達成、移植待機患者の課題も/JOT4.GLP-1ダイエットの安全性を懸念「禁止すべき」/日本医師会5.2023年度研修医マッチング率、前年度比で0.3ポイント上昇/厚労省6.2021年度の国民医療費、初の45兆円突破、高齢者医療費が6割以上/厚労省1.インフルエンザ感染者、前週比1.48倍に増加、愛媛県で警報発令/厚労省厚生労働省は10月27日、全国の定点医療機関からの報告に基づき、インフルエンザの感染者数が前週比1.48倍の約54万4,000人に増加したと発表した。とくに愛媛県では1医療機関当たりの感染者数が最も多い39.90人となり、「警報」の基準を超えていた。千葉県と埼玉県も警報の基準に迫る感染者数を記録している。全国の教育施設で、休校や学級閉鎖となった施設は合計3751施設にのぼる。2020年の新型コロナウイルスの流行以降、インフルエンザの流行規模は縮小していたが、免疫の低下などの影響で感染が広がっているとみられている。厚労省は、マスクの着用や手洗いなどの基本的な感染対策の徹底を呼びかけている。参考1)インフルエンザの患者数 前週比1.5倍に 増加傾向続く(NHK)2)インフル感染者数、前週比1.48倍 推計54万人 愛媛で「警報」(毎日新聞)2.2024年度診療報酬改定、人材確保と働き方改革が重点/中医協10月に入り、中央社会保険医療協議会(中医協)では、医療従事者の処遇改善を巡る議論が活発化している。物価高に対して賃上げ対応ができないため、医療・介護分野から人材の流出によって、地域医療の存続が危機にさらされている。看護職員に対しては、昨年10月に3%程度(月額平均1万2,000円相当)給与を引き上げる「看護職員処遇改善評価料」を新設したが、薬剤師などは対象外となっていた。一方、厚生労働省は2024年度の診療報酬改定に向けて、人材確保や働き方改革を重点課題として提案。とくに看護師や准看護師の求人倍率が「全職種」を上回る状況が指摘され、地方における医療の確保が重要な課題となっている。参考1)来年度の診療報酬改定 “処遇改善し人材確保など重点” 厚労省(NHK)2)医療従事者の処遇改善の議論始まる、中医協で 人材流出「地域医療の存続に関わる」と日医委員(CB news)3)改定基本方針の重点課題に「人材確保」、厚労省案「他産業の賃上げに追いつかず、状況悪化」(同)4)医療従事者の給与アップ財源を「診療報酬引き上げ」に求めるか、「医療機関内の財源配分」(高給職種→低い給与職種)に求めるか-中医協総会(Gem Med)3.脳死判定者数、累計1,000例を達成、移植待機患者の課題も/JOT日本臓器移植ネットワーク(JOT)は28日、国内の脳死判定が累計1,000例に、臓器移植法施行から26年で達成したと発表した。当初は脳死判定は伸び悩んでいたが、2010年の法改正によって、本人の意思が不明でも家族の承諾で臓器提供が可能になったことが、増加の大きな要因となっている。また、同法改正で15歳未満の子供からの提供も認められるようになった。累計1,000例目は、中国・四国地方の病院に脳出血で入院していた60代男性が、家族の承諾を得て脳死と判定された例である。今年に入り、脳死提供数は過去最多の100件となっている。しかし、欧米諸国との比較では、国内の提供者数は依然として少なく、移植を希望する患者の待機期間が長引く課題が続いている。JOTの公表資料によれば、都道府県別の脳死下の臓器提供件数にはばらつきがあり、提供の意思を積極的に生かす地域が多いと指摘されている。また、移植を希望してJOTに登録している患者数は、9月末時点で約1万5千人以上おり、昨年は待機中の429人が亡くなっている。参考1)脳死判定、累計1,000例に 臓器移植法施行から26年(共同通信)2)脳死臓器提供1,000例目は60代男性…法施行から26年、欧米と比べドナー少なく(読売新聞)3)脳死下の臓器提供、救急医学の専門家「提供の意思を生かせる体制作りを」(同)4.GLP-1ダイエットの安全性を懸念「禁止すべき」/日本医師会日本医師会は10月25日に開いた記者会見で、急増する「GLP-1ダイエット」に関して懸念を明らかにした。近年、糖尿病の治療にGLP-1受容体作動薬が承認され、臨床で用いられるようになったが、食欲抑制の副作用を用いてダイエット療法を行うため、個人輸入を行ったり、自由診療を行う医療機関を受診する患者が増えている。医師会は、臨床試験で示されている一部の副作用、とくに吐き気や下痢などがある上、GLP-1ダイエットの長期的な効果や安全性に関するデータがまだ不十分であることを指摘し、「GLP-1ダイエットを試みる際には、専門家のアドバイスや監督のもとで行うことが非常に重要である」と強調した。さらに、GLP-1ダイエットが一般の人々の間で流行する前に、適切なガイドラインや教育の提供が必要であるとの考えを示した。医師会の声明には、健康や美容目的で新しいダイエット方法を追求する中で、安全性と効果についての十分な情報を持って選択することが重要であり、不適正な処方によって出荷調整するメーカーが出現するなど、糖尿病治療に影響が出ているため、「禁止すべき」と見解を明らかにした。参考1)糖尿病治療薬等の適応外使用について(日本医師会)2)GLP-1ダイエット「禁止すべき」-日医会見で見解(日本医事新報)3)ダイエットのために糖尿病治療薬、日医が懸念「入手困難」な医療機関も(CB news)4)「糖尿病治療薬でダイエット」が横行か 品薄で薬が必要な人に届かない…専門家が「罪深い」と語る理由(東京新聞)5)日医・宮川常任理事 GLP-1ダイエット「処方ではない」 適応外使用で顕在化しない副作用に警鐘(ミクスオンライン)5.2023年度研修医マッチング率、前年度比で0.3ポイント上昇/厚労省厚生労働省は、10月26日に2023年度の研修医マッチングの結果を公表した。全国の研修医受け入れ能力の拡大に伴い、受験者全体の約98.5%が希望する施設とマッチングした。これは前年度に比べて0.3ポイントの上昇で、マッチング率の向上が続いている。とくに注目されるのは、地方都市や過疎地域でのマッチング率の上昇であり、これまでは地方都市や過疎地では研修医の確保が難しく、医師不足が深刻な問題となっていた。しかし、今年度は都市部と地方都市でのマッチング率の差が縮小。過疎地域では、地域医療の充実を目指す取り組みやインセンティブの提供などが奏功したと分析されている。一方、都市部では引き続き高いマッチング率が維持されているが、一部の大学病院や指定都市での競争率が高まる傾向がみられ、研修の質や研修施設の評価、将来のキャリアパスなどが受験者の選択に影響しているとの声もある。マッチング結果を受け、医学教育の関係者や自治体は、今後の研修医制度のさらなる充実や地域医療への取り組みを強化する方針を示している。参考1)令和5年度の医師臨床研修マッチング結果をお知らせします(厚労省)2)医師臨床研修マッチングの内定者数が減少 厚労省が23年度の結果を公表(CB news)3)市中病院にマッチした医学生は64.2% マッチング最終結果、フルマッチは21校(日経メディカル)6.2021年度の国民医療費、初の45兆円突破、高齢者医療費が6割以上/厚労省厚生労働省は、2021年度の国民医療費が前年度比4.8%増の45兆359億円となり、初めて45兆円を突破したことを発表した。医療費の増大の要因としては、新型コロナウイルス関連の医療費や、医療技術の進展、高齢化の進行が主な要因とみられる。1人当たりの医療費も前年度比で5.3%増の35万8,800円となり、とくに0~14歳の年齢層での増加が顕著だった。年齢別の医療費では、65歳以上が全体の約60.6%を占めるなど、高齢者の医療費が大きなシェアを占めていた。また、傷病別では、循環器系の疾患の医療費が全体の約19%と最も多かった。20年度は新型コロナウイルスの感染拡大による受診控えや、感染症の流行減少などで医療費が減少したが、21年度には再び増加に転じた。医療費の財源については、保険料が全体の半数、国費などの公費が全体の38%を占めていた。参考1)令和3(2021)年度 国民医療費の概況(厚労省)2)令和3年度の国民医療費は45兆359億円で過去最高(社会保険研究所)3)国民医療費は45兆円超 21年度確定値、コロナ対応で増-厚労省(時事通信)4)国民医療費、21年度4.8%増の45兆円 過去最高を更新(日経新聞)5)国民医療費が初の45兆円超え、1人あたり5.3%増の35万8,800円…21年度(読売新聞)