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肺炎診療GL改訂~NHCAPとHAPを再び分け、ウイルス性肺炎を追加/日本呼吸器学会

 2024年4月に『成人肺炎診療ガイドライン2024』1)が発刊された。2017年版では、肺炎のカテゴリー分類を「市中肺炎(CAP)」と「院内肺炎(HAP)/医療介護関連肺炎(NHCAP)」の2つに分類したが、今回の改訂では、再び「CAP」「NHCAP」「HAP」の3つに分類された。その背景としては、NHCAPとHAPは耐性菌のリスク因子が異なるため、NHCAPとHAPを1群にすると同じエンピリック治療が推奨され、NHCAPに不要な広域抗菌治療が行われやすくなることが挙げられた。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を経て、ウイルス性肺炎の項目が設定された。第64回日本呼吸器学会学術講演会において、本ガイドライン関するセッションが開催され、進藤 有一郎氏(名古屋大学医学部附属病院 呼吸器内科)がNHCAPとHAPの診断・治療のポイントや薬剤耐性(AMR)対策の取り組みについて解説した。また、ウイルス性肺炎に関して宮下 修行氏(関西医科大学 内科学第一講座 呼吸器感染症・アレルギー科)が解説した。NHCAPとHAPは耐性菌のリスク因子が異なる NHCAPとHAPは「敗血症性ショックの有無の判断」「重症度の判断(NHCAPはA-DROPスコア、HAPはI-ROADスコアで評価)」「耐性菌リスクの判断」を行い、治療薬を決定していくという点は共通している。しかし、耐性菌のリスク因子は異なる。進藤氏は、「この違いをしっかりと認識してほしい」と語った。なお、それぞれの耐性菌リスク因子は以下のとおり。NHCAP:経腸栄養、免疫抑制状態、過去90日以内の抗菌薬使用歴、過去90日以内の入院歴、過去1年以内の耐性菌検出歴、低アルブミン血症、挿管による人工呼吸管理を要する(≒診断時に重度の呼吸不全がある)HAP:活動性の低下や歩行不能、慢性腎臓病(透析を含む)、過去90日以内の抗菌薬使用歴、ICUでの発症、敗血症/敗血症性ショック HAPでは、「重症度が低く、耐性菌リスクが低い(リスク因子が1つ以下)場合」は狭域抗菌治療、「重症度が高い、または耐性菌リスクが高い(リスク因子が2つ以上)場合」には広域抗菌治療を行う。NHCAPでは、外来の場合はCAPに準じた外来治療を行う。また、入院の場合も非重症で耐性菌リスク因子が2つ以下であれば、CAPと類似した狭域抗菌治療を行い、重症で耐性菌リスク因子が1つ以上あるか非重症で耐性菌リスク因子が3つ以上であれば広域抗菌治療を行うという流れとなった(詳細は本ガイドラインp.54図3、p.64図3を参照されたい)。不要な広域抗菌薬の使用は依然として多い 進藤氏は、名古屋大学などの14施設で実施した肺炎患者を対象とした前向き観察研究(J-CAPTAIN study)の結果を紹介した。本研究では、CAP患者をNon-COVID-19肺炎とCOVID-19肺炎に分けて検討した。その結果、Non-COVID-19肺炎患者(1,802例)の10%にCAP抗菌薬耐性菌(β-ラクタム系薬、マクロライド系薬、フルオロキノロン系薬のすべてに低感受性と定義)が検出された。CAP抗菌薬耐性菌のリスク因子としては、過去1年以内の耐性菌検出歴、気管支拡張を来す慢性肺疾患、経腸栄養、ADL不良、呼吸不全(PaO2/FiO2≦200)が挙げられた。これらの項目は本ガイドラインのシステマティックレビューの結果と類似していたと進藤氏は語った。 また、本研究においてNon-COVID-19肺炎患者では、CAP抗菌薬耐性菌の検出がなかった患者の29.2%に広域抗菌薬が使用されていたことを紹介した。AMR対策としては、このような患者における広域抗菌薬の使用を減らしていくことが重要となると進藤氏は指摘する。CAP抗菌薬耐性菌のリスク因子が0個であった患者は、Non-COVID-19肺炎の61.2%を占め、そのうち21.8%で広域抗菌薬が使用されていた結果から、進藤氏は「AMR対策上、耐性菌リスクのない症例では広域抗菌薬の使用を控えることが重要である」と強調した。ウイルス性肺炎は想定以上に多い? 2018~20年に九州の14施設で実施された観察研究では、CAP患者の23.3%にウイルスが検出されており2)、肺炎へのウイルスの関与が注目されている。そこで、宮下氏は本ガイドラインに新たに追加されたウイルス性肺炎について、その位置付けを紹介した。 CAPは、(1)CAPとNHCAPの鑑別→(2)敗血症の有無・重症度の判断(治療場所の決定)→(3)微生物学的検査→(4)マイコプラズマ肺炎・レジオネラ肺炎の推定→(5)抗菌薬の選択といった流れで診療が行われる。この流れに合わせて、ウイルス性肺炎の特徴を考察した。 COVID-19肺炎患者の1年後の身体機能をみると、CAPと比較してNHCAPで予後が不良である3)。したがって、宮下氏は「CAPとNHCAPでは予後がまったく異なるため、治療方針を大きく変えるべきであると考える」と述べた。 本ガイドラインでは、重症度の評価をもとに治療場所を決定するが、CAPで用いられるA-DROPスコアによる評価がCOVID-19肺炎においても有用であった。ただし、COVID-19(デルタ株以前)ではA-DROPスコア1点(中等症、外来治療が可能)であっても、R(呼吸状態)の項目が1点の場合は疾患進行のリスクが高いという研究結果4,5)を紹介し、注意を促した。 前版で細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別に用いられていた鑑別表は、細菌性肺炎とマイコプラズマ肺炎の鑑別表(本ガイドラインp.32表4)に改められた。実際に、この鑑別表を非定型肺炎であるCOVID-19肺炎に当てはめると診断の感度は不十分であり、マイコプラズマ肺炎と細菌性肺炎の鑑別に用いるのが適切と考えられた。また、今回のガイドラインではレジオネラ診断予測スコアが掲載された(本ガイドラインp.33表5)。この診断スコアを用いた場合、COVID-19はいずれの株でもレジオネラ肺炎との鑑別が可能であった。 最後に、宮下氏はオミクロン株の流行後にCOVID-19肺炎において誤嚥性肺炎が増加し、誤嚥性肺炎を発症した患者の退院後の顕著な身体機能低下が認められていることに触れ、「早期診断・早期治療が重要であり、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンに加えて新型コロナワクチンによる予防も重要であると考えている」とまとめた。

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食事からのメラトニン摂取、肝がんのリスク低下と関連

 食事からのメラトニン摂取と肝がん罹患との関連を評価する研究が、3万人以上の日本人を対象に行われた。その結果、メラトニンの摂取量が多いほど肝がんのリスクが低下することが明らかとなった。岐阜大学大学院医学系研究科疫学・予防医学分野の和田恵子氏らによる研究結果であり、「Cancer Science」に2月14日掲載された。 メラトニンは、概日リズムを調整し、睡眠を促す内因性ホルモンである。主に脳の松果体で生成されるが、体内組織に広く分布し、抗酸化、抗炎症、免疫調節などにも関与している。メラトニンは肝臓でも合成・代謝され、細胞保護や発がん予防などの作用があることも示されている。 一方、メラトニンは体外からも摂取される。医療上の用途は主に睡眠の調節に限られるが、肝がんなどの他疾患への臨床応用も期待されている。また、食品中にも含まれることが知られており、含有量が比較的多い食品として、野菜、植物の種子、卵が挙げられる。医薬品やサプリメントと比べると、食品中のメラトニン含有量はかなり少ないが、メラトニンが豊富な食品の摂取により血中メラトニン濃度が上昇することが報告されている。著者らは過去の研究で食事からのメラトニン摂取量が多いほど死亡リスクが低下することを示したが、メラトニン摂取量とがん罹患の関連についてはこれまでに研究されていない。 そこで著者らは、岐阜県高山市の住民対象コホート研究「高山スタディ」のデータを用いて、食事からのメラトニン摂取量と肝がん罹患との関連を検討した。研究対象は、1992年9月時点で35歳以上だった人のうち、がんの既往歴がある人を除いた3万824人(男性1万4,240人、女性1万6,584人)。食事に関する情報を食物摂取頻度調査票(FFQ)から入手し、食品中のメラトニン含有量の測定には液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法を用いた。 その結果、対象者のメラトニンの主な摂取源は、野菜(49%)、穀類(34%)、卵(5%)、コーヒー(4%)だった。エネルギー調整済みのメラトニン摂取量の三分位で3群に分けて比較したところ、メラトニン摂取量の多い群は、女性が多い、糖尿病の既往歴がある、睡眠時間が短い、喫煙歴がない、コーヒーを1日1杯以上飲むなどの傾向が見られた。メラトニン摂取量の少ない群はアルコール摂取量が多かった。 平均13.6年の追跡期間中、189人が肝がんを罹患し、その内訳はメラトニン摂取量の多い群が49人、中間の群が50人、少ない群が90人だった。COX比例ハザードモデルを用いて、患者背景の差(性別、年齢、BMI、教育年数、糖尿病歴、身体活動、喫煙状況、アルコール摂取量、総エネルギー摂取量、コーヒー摂取量、閉経の有無、睡眠時間)を調整して解析した結果、メラトニンの摂取量が少ない群と比べて、中間の群と多い群では、肝がんのリスクが有意に低下する傾向が認められた(ハザード比はそれぞれ0.64と0.65、傾向性P=0.023)。性別による交互作用は見られなかった(交互作用P=0.54)。一方、メラトニンの前駆体であるトリプトファンの摂取量は、肝がんのリスクとは関連していなかった。 以上の結果について著者らは、さらなる研究で確認される必要があるものの、結論として「食事からのメラトニンの摂取により、肝がんのリスクが低下する可能性が示唆された」と述べている。

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英語で「ワクチン接種はしていますか」は?【1分★医療英語】第127回

第127回 英語で「ワクチン接種はしていますか」は?《例文》医師Are you vaccinated? It looks like your new office requires it for all employees.(ワクチン接種はしていますか? あなたの新しい職場ではすべての従業員に対して求められているようですが)患者Yes, I have completed the vaccination series. I'll bring my vaccination card tomorrow.(はい、すべてのワクチン接種を[追加接種を含め]済ませてあります。明日、接種証明書を持ってきます)《解説》今回は“Are you vaccinated?”という表現の解説です。ここ数年間はコロナワクチンの登場によって「ワクチン」という言葉を聞かない日はなかったくらいでした。“vaccinate”は動詞で「ワクチンを(医療者が)打つ」という意味になります。そして、“Be vaccinated?”と受動態を使うことによって、「あなたはワクチン接種をしていますか?」という意味になります。意味は「ワクチンを打ちましたか?」ですが、あまり過去形は使われず、“Are you vaccinated?”という現在形の受け身の文で表現することが一般的です。医療現場でもこの表現はとてもよく使われています。会話例・例文に出てきた、“fully vaccinated”は「(推奨される)ワクチンをすべて接種している」という意味になり、“completed the vaccination series”は「数回接種が必要なワクチンをすべて完了している」という意味になります。“vaccination card”は「接種証明書」です。ぜひこれらも併せて覚えておきましょう。講師紹介

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第211回 承認薬一つひとつの検討を含む個別化がん治療の試験成績が有望

血液や腫瘍から集めたがん細胞で多ければ125の承認薬一つひとつを新たな手法で検討し、ゲノム解析結果も加味して患者ごとに割り出した薬の組み合わせによる個別化がん治療が、米国のフロリダ国際大学(FIU)の研究者らによる試験で有望な成績を収めています1)。個別化治療で最も多く使われている手段は患者のがんのDNA解析です。昔ながらの方法で数千もの遺伝子を解析するには何週間もかかります。辛抱強く待ってその結果をようやく手にしたところで、治療手段が結局わからず仕舞いということもありえます。ゲノム解析結果のみをよりどころとして治療方針が決まったところでそれが有益であることは少ないようで、最近の報告によると成人患者のわずか10例に1例ほどに限られるようです2)。小児患者でのその割合はもっと低いでしょう。FIUのDiana Azzam氏らのチームが手掛ける個別化治療でもゲノム解析が実施されます。しかしそれだけではなく、患者の血液や腫瘍検体から集めた生きたがん細胞を使って承認薬の効果のほどを検討する薬剤感受性検査(drug sensitivity testing:DST)も含みます。Azzam氏らによる試験には再発/治療抵抗性の難儀な固形がんや血液がんの小児患者25例が組み入れられ、それらのうち21例がDSTでの薬のふるい分けを受け、20例はゲノム解析も行いました。DSTの結果判明までの日数の中央値は血液がんで9日、固形がんで10日でした。ゲノム解析の結果判明までの中央値は約27日です。最終的に6例がDSTとゲノム解析の両方に基づく治療を受け、それら6例中5例は奏効し、無増悪生存期間(PFS)は前治療を1.3倍上回りました。また、DSTとゲノム解析に基づかない治療を受けた8例にも勝りました。それら8例で奏効したのはわずか1例のみでした。とくに有効だった「患者番号13」FIUのニュースでは同試験の被験者の1人であるLogan Jenner君の経過が紹介されています。試験でLogan君は患者番号13(EV013)という扱いでした。しかし、Azzam氏は後にEV013がLogan君であることを知ることになります。そのきっかけはAzzam氏が出席した会(Live Like Bella Pediatric Cancer Research Symposium)でのことです。同会にたまたま居合わせたLogan君の母親がAzzam氏に「息子がどうやら試験に参加していたと思う」と話しかけ、その後の短い会話でAzzam氏はEV013がLogan君であることを悟りました。どの試験もそうであるように、患者の個人情報は厳重に保護されており、Azzam氏にとってほかの被験者はおそらく今後も匿名のままです。その出来事があった後にLogan君はFIUのAzzam氏の研究室を訪問し、いまやAzzam氏の研究室にいつでも出入りできる身となっています。Logan君、すなわちEV013はDSTとゲノム解析に基づく治療がとりわけ奏効した例として論文中でも特記されています。Logan君は3歳のときに急性骨髄性白血病(AML)と診断され、化学療法と骨髄移植を受けて、ひとまずは150日間の寛解期間を過ごしました。しかし運命は残酷で、それから14ヵ月が過ぎた5歳のときに再発に見舞われます。Logan君の担当医のMaggie Fader氏はほかでもないAzzam氏とともに試験を率いた1人で、より最適な治療を求めてLogan君を試験に招きました。Logan君には手の打ちようがある(clinically actionable)FLT3-ITD変異がありました。そこでどのFLT3阻害薬を使うべきかがDSTで検討され、ソラフェニブやポナチニブに比べてmidostaurinがより効果的と判明しました。また、midostaurinと併用する化学療法はフルダラビンとシタラビンで事足り、心毒性が知られるイダルビシンは不要と示唆されました。さらに、ステロイドによる急な細胞増殖が認められたことからその使用が省かれました。DSTとゲノム解析なしでは成し得なかったそのような治療方針の甲斐あって、Logan君は2年を超えてがんなしの生活を過ごせています。ゲノム解析に加えてDSTも行ってそれぞれの患者ごとに治療をあつらえることの力の程をLogan君の経過は見せつけました1)。Azzam氏らによる個別化医療の取り組みは歩みを進めており、小児に加えて成人も参加しているより大規模な臨床試験が進行中です。Logan君が笑って遊んでいるのを見るにつけ、がん治療の革新に向けてわれわれは正しい道を進んでいることを知る、とAzzam氏は言っています3)。参考1)Acanda AM, et al. Nat Med. 2024;30:990-1000. 2)O'Dwyer PJ, et al. Nat Med. 2023;29:1349-1357.3)New approach helped Patient 13 reach remission - could it revolutionize how cancer is treated? / Florida International University

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肺炎診療GL改訂~市中肺炎の改訂点は?/日本呼吸器学会

 2024年4月に『成人肺炎診療ガイドライン2024』1)が発刊された。2017年版からの約7年ぶりの改訂となる。第64回日本呼吸器学会学術講演会において、本ガイドライン関するセッションが開催され、岩永 直樹氏(長崎大学病院 呼吸器内科)が市中肺炎(CAP)に関する改訂のポイントを解説した。非定型肺炎の鑑別を大切にすることに変わりはない CAPへの初期の広域抗菌薬投与や抗MRSA薬のエンピリックな使用は予後を改善せず、むしろ有害であるという報告がある。そのため、エンピリックな耐性菌カバーは予後を改善しない可能性がある。そこで、今回のガイドラインでは、非定型肺炎の鑑別を大切にするという方針を前版から継承し、CAPのエンピリック治療薬の考え方を示している。そこでは、外来患者や一般病棟入院患者では抗緑膿菌薬や抗MRSA薬は使用せず、これらの薬剤は重症例や免疫不全例に検討することとしている(詳細は本ガイドラインp.34図4を参照されたい)。 近年、CAPではウイルスが検出されることが多いことも報告されている2)。そのような背景から、今後は同時多項目遺伝子検査の活用が重要となってくることが考えられる。そこで、今回のガイドラインでは、多項目遺伝子検査に関するクリニカルクエスチョン(CQ)が設定された。多項目遺伝子検査は従来法と比較して原因微生物の同定率が高く(67.5% vs.42.7%)、「行うことを弱く推奨する(エビデンスの確実性:C[弱い])」とされた(CQ19)。なお、多項目遺伝子検査の対象について、岩永氏は「主にCAPがターゲットとなると考えている。とくに免疫不全例では典型的な病像を呈さないことも多いため、これらの症例に有用性があるのではないか」と意見を述べた。CAPのCQとポイント CAPに関するCQとポイントは以下のとおり。・CAPの重症度評価の方法(CQ1) A-DROPスコアはCURB-65スコアやPSIスコアと同等の予測能を示した。A-DROPスコアによる評価は本邦でよく用いられており、簡便であることから「A-DROPスコアによる重症度評価を弱く推奨する(エビデンスの確実性:C[弱い])」となった。・注射用抗菌薬から経口抗菌薬への変更(スイッチ療法)(CQ2) CAPに対するスイッチ療法は注射用抗菌薬の継続と比較して、同等の肺炎治癒率を示し、副作用発現頻度は有意差がないが減少傾向で、入院期間を有意に短縮した。また、医療費についてはシステマティックレビュー(SR)を実施していないが、3件の無作為化比較試験(RCT)においていずれも低下させる傾向にあった。以上から「スイッチ療法を行うことを強く推奨する(エビデンスの確実性:B[中程度])」となった。・短期抗菌薬治療(CQ3) CAPのアジスロマイシンによる治療とアジスロマイシンを含まない治療のいずれにおいても、短期治療(1週間以内)は標準治療(1週間超)と比較して、死亡率と肺炎治癒率に差がなかった。また、肺炎再燃率や副作用発現率も同等であった。医療費についても、SRは実施していないが、3件のRCTではいずれも低下させる傾向にあった。以上から「初期治療が有効な場合には短期治療を弱く推奨する(エビデンスの確実性:B[中程度])」となった。ただし多くのRCTが軽症〜中等症を対象としており、重症例、集中治療を要する症例、高齢者などは注意が必要である。・β-ラクタム系薬へのマクロライド系薬の併用(CQ4) 重症例では、β-ラクタム系薬にマクロライド系薬を併用することで死亡率と肺炎治癒率の改善が認められた。1件の観察研究でコストは増加する傾向にあったが、耐性菌発生率は変化しなかった。非重症例では、併用療法により死亡率や肺炎治癒率、入院期間、耐性菌発生率のいずれも変化しなかった。また、1件の観察研究でコストは増加する傾向にあった。以上から、「重症例では併用することを弱く推奨する、非重症例では併用しないことを弱く推奨する(エビデンスの確実性:C[弱い])」となった。・抗菌薬へのステロイドの併用(CQ5) 全身性ステロイド薬投与は重症例では死亡率を低下させ、非重症例では死亡率を低下させなかった。CAP全体では、併用により肺炎治癒率は変化せず、入院期間が短縮した。以上から、「重症例では併用することを弱く推奨する、非重症例では併用しないことを弱く推奨する(エビデンスの確実性:C[弱い])」となった。

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インスリン以外の血糖降下薬も先天奇形のリスクでない

 インスリン以外の血糖降下薬を妊娠中に使用しても、先天奇形リスクの有意な上昇は生じない可能性を示唆するデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のCarolyn E. Cesta氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Internal Medicine」に12月11日掲載された。 世界的に晩婚化が進み、妊娠時に2型糖尿病を発症している女性が増加している。2型糖尿病の血糖管理には一般的にまず非インスリン製剤が選択されるが、妊娠中は胎児の奇形リスクの懸念などのため、通常、催奇形性のないインスリン製剤が用いられる。しかし、計画妊娠によらずに妊娠が成立した場合には、妊娠に気付くまでの妊娠初期に、非インスリン製剤に曝露されることになる。このような場合に胎児の先天奇形リスクがどのように変化するのかは、これまで明らかにされていない。以上を背景としてCesta氏らは、妊娠成立時から妊娠初期の非インスリン製剤の使用が、先天性の大奇形(major congenital malformations;MCM)のリスク上昇と関連しているかどうかを検討した。 研究には、2009~2020年の北欧4カ国の医療データ、2012~2021年の米国の医療データ、2009~2020年のイスラエルの医療データが用いられた。それらのデータベースから2型糖尿病妊婦を抽出し、児の生後1年までの医療記録を追跡調査した。リスクを評価した薬剤は、スルホニル尿素(SU)薬、DPP-4阻害薬(DPP-4i)、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)、SGLT2阻害薬(SGLT2i)の4種。それらの薬剤が、妊娠の90日前から妊娠第1三半期に1回以上処方されていたケースを、曝露された症例とした。比較対照はインスリンのみによって治療されていたケースとした(アクティブコンパレータ)。主要評価項目は、MCMの相対リスクであり、年齢、併存疾患(肥満、高血圧、心血管疾患、糖尿病合併症、多嚢胞性卵巣症候群)、他の処方薬(降圧薬、脂質低下薬)などの交絡因子の影響は調整した。 MCMの標準化有病率は全体で3.7%であった。それに対して2型糖尿病妊婦の児では5.3%であり、SU薬に曝露された児では9.7%、DPP-4i曝露では6.1%、GLP-1RA曝露で8.3%、SGLT2i曝露で7.0%であって、インスリンのみで治療されていた群は7.8%だった。インスリンのみで治療されていた群を基準とした交絡因子調整後のMCM相対リスクは、SU薬曝露で1.18(95%信頼区間0.94~1.48)、DPP-4i曝露0.83(同0.64~1.06)、GLP-1RA曝露0.95(0.72~1.26)、SGLT2i曝露0.98(0.65~1.46)であり、いずれも非有意だった。 著者らは、「インスリン製剤によらない糖尿病治療の普及とともに、妊娠初期の非インスリン製剤への曝露が急速に増加している。われわれの研究結果は、そのような非インスリン製剤への曝露によるMCMリスクの有意な上昇を示しておらず、安心につながるデータが得られた。ただし、より正確なデータが必要であり、他の研究での検証が求められる」と述べている。 なお、数人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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心筋細胞障害により心筋梗塞を4つの病期に分類

 心筋梗塞(MI)は心筋細胞障害に基づいて4つの病期に分類され、最終的には心筋細胞死と微小血管死に至るとした専門家の共同声明が、「Canadian Journal of Cardiology(CJC)」に10月28日掲載された。 Northern Ontario School of Medicine University(カナダ)のAndreas Kumar氏らは、再灌流療法を伴うアテローム性MIに関する数十年にわたるデータに基づいた、カナダ心臓血管協会の急性MI分類について概説した。 同分類において、段階的に悪化する心筋細胞障害の4つの病期が特定された。すなわち、(1)心筋細胞壊死がないまたは最小限である防がれた心筋梗塞(aborted MI)、(2)明らかな心筋細胞壊死があるが微小血管障害はないMI、(3)心筋細胞壊死と微小血管機能障害に起因する微小血管閉塞(no-reflow)、(4)心筋細胞と微小血管の壊死による再灌流出血である。障害が進行すると、リモデリングが悪化し、臨床上の有害転帰が増加することが、臨床研究で認められている。微小血管障害は特に重要であり、出血性MIは梗塞の拡大と機械的合併症のリスクにつながる。 Kumar氏は、「新しい分類は、組織損傷の段階によって心筋梗塞を区別するのに役立ち、医療提供者は不整脈、心不全、死亡に対する患者のリスクをより正確に推定できるようになる。カナダ心臓血管協会の急性心筋梗塞分類は、最終的に心筋梗塞患者のより良い治療、より良い回復、より良い生存率につながると期待されている」と述べている。 なお複数人の著者が、産業界との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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第191回 医師の地域偏在解消へ、財務省の提案に日医が反発/財政制度分科会

<先週の動き>1.医師の地域偏在解消へ、財務省の提案に日医が反発/財政制度分科会2.急増する医療機関の倒産・休廃業、背景に後継者問題/帝国データバンク3.退院前の指導不足で市民病院が逆転敗訴、約7,500万円の賠償命令/名古屋高裁4.患者受診せずがん告知が1年以上遅れ、大腸がんステージ進行/神戸市立医療センター5.医療機器メーカーとの癒着疑惑、整形外科医逮捕/東京労災病院6.元理事長への不正な麻薬処方、元副学長が医師法違反の疑い/日本大学1.医師の地域偏在解消へ、財務省の提案に日医が反発/財政制度分科会財務省は、4月16日に財政制度分科会を開き、この中で少子化対策のほか医師の偏在問題について議論を行った。2020年の医学部定員を前提とした厚生労働省の将来推計では、2029年ごろにマクロでは医師需給が均衡し、医師の供給過剰が見込まれ、今後は医学部の定員の適正化が必要と指摘された。現状のままでは大都市部において、医師や診療所数が過剰となり、地方はそれらが過小のまま続くとして、診療所の偏在是正のために都市部での新規開業を規制し、診療所が不足している地域での診療報酬の単価を引き上げることを提案した。これは地域や診療科ごとに医師の定員があるヨーロッパのシステムを参考にしている。武見 敬三厚労大臣は、今後の医師の偏在対策を「骨太の方針」に組み込み、具体的な方向性を年末までに示すと述べた。日本医師会は財務省提案に強く反対しており、医師の偏在は人口分布に起因する問題であり、診療報酬での調整は不適切であると主張している。さらに医師会は、地域枠など既存の対策を強化することが先決であるとしている。また、厚労省も地域医療の将来の姿や偏りの見直しを議論するために「新たな地域医療構想等に関する検討会」(座長:遠藤 久夫氏[学習院大学長])を立ち上げて議論を開始している。文部科学省も、医学部の特別枠を通じて医師を地方に派遣する新たなプログラムを提案し、これにより地域医療に貢献する医師の養成を目指している。これにより大学病院から地域への医師派遣を容易にし、地域医療の充実を図りたいとしている。これらの提案と議論は、わが国の医療システムの将来に重大な影響を与える可能性があり、医師の偏在解消を目指す一連の施策が、どのように進展するかが注目されている。参考1)こども・高齢化 財政制度分科会(財務省)2)第2回新たな地域医療構想等に関する検討会 資料(厚労省)3)医師の都市集中、解消探る 過剰地域の報酬下げ/開業規制 財制審提言(日経新聞)4)過剰地域の診療報酬下げ「受け入れられない」 医師会長(同)5)医師偏在問題、「都市部で開業規制を」と財務省提言 医師会は反発(朝日新聞)6)医師の偏在解消で「大学特別枠」、文科省が試案 大学病院から地域への派遣強化(CB news)2.急増する医療機関の倒産・休廃業、背景に後継者問題/帝国データバンクわが国の医療機関の休廃業・解散件数が2023年度(2023年4月~2024年3月)に過去最多の709件に達し、過去10年で2.3倍となった。そのうち診療所が23年度は580件と全体の8割超を占めていることが帝国データバンクの調査で明らかになった。医療機関の倒産・休廃業数は前年の517件から大幅に増加していた。同様に、歯科医院も110件と過去最多を記録。同社によれば、経営者の高齢化と後継者不在が主な原因であり、今後もこの傾向は続くと予測されている。また、2023年度には医療機関の倒産件数も過去最多を更新し、55件が報告された。これは2009年度の45件を上回る数であり、診療所と歯科医院がそれぞれ28件と24件で過去最多を更新している。これらの倒産は法的な手続きを経て確認されたもので、高齢経営者の健康問題などが倒産につながるケースもみられている。日本医師会の「医業承継実態調査」では、診療所の約半数が後継者不在と答えており、帝国データバンクの企業概要ファイルによると、2024年には診療所経営者のボリュームゾーンが65~77歳となっている。この高齢化が顕著な中で、診療所はコンビニの約2倍の数が存在し、狭い市場での競争が熾烈を極めている。こうした状況は、医療機関の持続可能性に深刻な影響を及ぼしており、とくに地域医療にも影響が出ている可能性がある。今後、後継者問題の解決や高齢経営者の支援策を強化することが急務となる。参考1)医療機関の「休廃業・解散」 動向調査(2023年度)(帝国データバンク)2)医療機関の休廃業・解散が過去最多、昨年度 計709件、診療所が8割超(CB news)3.退院前の指導不足で市民病院が逆転敗訴、約7,500万円の賠償命令/名古屋高裁気道確保のため「カニューレ」を装着していた6ヵ月の女児が、退院後に低酸素脳症を発症し、3歳で亡くなった事件について、名古屋高等裁判所は1審の判決を覆し、一宮市に約7,500万円の賠償支払いを命じた。裁判では、一宮市立市民病院が退院時の必要な救命処置の指導を怠ったことが問題視された。女児は、喉頭の組織が軟弱で、気管が塞がりやすく呼吸がしづらい「喉頭軟化症」であり、気管カニューレを必要としていた。入院中には装着器具が外れる事故が3回発生していたが、これについて病院側から十分な説明や指導が行われていなかったとされている。両親は当初、原因を自分たちに求めていたが、裁判を通じて同病院の責任が明らかになり、「娘の無念を晴らせた」と安堵の声を上げた。同病院は「判決文が届いていないので、現時点ではコメントを差し控える」と述べている。この判決は、医師の指導義務違反を問題視した点で重要な意義を持つ。代理人弁護士の森下 泰幸氏は、「気管カニューレが外れる事故は全国で相次いでおり、今回の判決を受け、退院時には必ず救命方法などの指導を全国の病院で徹底してもらいたい」と訴えている。この判決により、今後の医療機関における指導・教育のあり方に影響を与えると考えられる。参考1)“医師は指導義務怠る” 1審と逆 市に賠償命令 名古屋高裁(NHK)2)愛知・一宮市に7,400万円賠償命令 呼吸用器具の事故後に女児死亡(朝日新聞)3)気道確保の重要性など説明せず、3歳女児死亡 遺族が逆転勝訴(毎日新聞)4.患者受診せずがん告知が1年以上遅れ、大腸がんステージ進行/神戸市立医療センター神戸市立医療センター中央市民病院は、60代の男性患者が大腸がんと診断されたにもかかわらず、診断結果の告知が1年2ヵ月遅れるという重大なミスを病院側が公表した。2022年8月に内視鏡検査を受けた男性は、翌月に大腸がんと診断されたが、結果を説明するために予定していた受診日に来院しなかったため告知が行われなかった。その後も男性は、別の科で定期的に通院していたが、告知されなかったため治療開始が遅れ、男性のがんはステージ1からステージ3bまで進行していた。この事実が明らかになったのは、男性が2023年11月に別の疾患で入院し、脳神経内科の医師がカルテを確認したときであった。同病院では、未受診患者を管理するリストがあり、通常は診療終了後にリストから外されるが、今回の重大案件では、男性がリストから誤って外されていた可能性が指摘されている。この案件を受け、同病院では未受診の患者の管理方法を見直し、ルールの明文化を進めている。この重大案件は、病院内の情報管理システムの改善の必要性を浮き彫りにした。同病院は男性と補償についての協議を行っており、病院側は公式に謝罪している。参考1)大腸がんと診断された患者に1年2ヵ月告知忘れる…その間にステージ「1」から「3b」に進行(読売新聞)2)がん告知日に患者来院せず…そのまま1年超、ステージ3に 病院謝罪(朝日新聞)5.医療機器メーカーとの癒着疑惑、整形外科医逮捕/東京労災病院東京労災病院の整形外科副部長の医師(41歳)が、特定の医療機器メーカーの製品を使用することで現金約50万円の賄賂を受け取ったとして逮捕された。この事件では、逮捕された医師が同僚にも同じメーカーの製品の使用を勧め、それにより得たポイントを自身の利益に変換していたことが判明している。また、医師は医療機器の選定に影響を与えたとされ、医師が受け取ったポイントは現金に交換可能で、飲食代などの領収書を提出することで換金されていたと報じられている。警視庁は、このほかにも余罪があるか捜査を進めており、このスキームがどれほど広範に及んでいたのか、また、その影響についても調べている。贈収賄に関与したHOYA Technosurgical社および親会社HOYA社は、捜査に協力する姿勢を示している。同病院は再発防止策を講じ、職員の倫理教育を強化すると公表している。参考1)東京労災病院 医師を収賄容疑で逮捕 製品巡り50万円受け取りか(NHK)2)他の医師使用分も見返り収受 部下に贈賄側企業製品を推奨か 東京労災病院の汚職事件・警視庁(時事通信)3)東京労災病院副部長を収賄容疑で逮捕 「ポイント制」で業者から現金(朝日新聞)4)当院職員の逮捕について(東京労災病院)6.元理事長への不正な麻薬処方、元副学長が医師法違反の疑い/日本大学日本大学の「不正事案洗い出しのための特別調査委員会」は、元理事長の田中 英寿氏(故人)への医療用麻薬モルヒネを含む痛み止めの不正処方について報告した。田中氏は2021年8月~2022年4月にかけて、元副学長だった主治医により、医師3人を介して7回にわたり痛み止めが処方された。しかし、これらの処方はいずれも診療記録がなく、実際の診察は行われていなかった。調査委員会によれば、田中氏に処方された薬の診療記録は電子カルテシステムに一切残されておらず、元副学長は診療の有無について守秘義務を理由に説明を拒否。また、元副学長や関連医師は、田中氏の自宅で診療行為を行っていたが、これに関する記録も存在しなかった。医師法では、診療行為を行った場合、病名や治療内容をカルテに記載することが義務付けられており、違反した場合には罰則が科されている。調査委は元副学長の医師法違反の可能性が高いと結論付け、「厳格に管理すべき医療用麻薬が不適切に処方されていた悪質性は高い」と指摘している。同大学は監督官庁との協議を待っている状態で、元副学長からの回答は得られていない。参考1)日大の田中英寿・元理事長にモルヒネ処方、診察記録なし…主治医の元副学長は守秘義務理由に説明せず(読売新聞)

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緩和ケアでも身体疾患を考える重要性【非専門医のための緩和ケアTips】第74回

第74回 緩和ケアでも身体疾患を考える重要性緩和ケアって「コミュニケーション」や「スピリチュアルペイン」など、ほかの診療領域には、あまりない分野が注目されがちです。診療領域の特徴の1つなので当然のことではあるのですが、そうした面ばかりに目を向けると危険もあります。今回の質問在宅療養している患者の訪問診療に行った際のこと。高齢の認知症患者なのですが、いつもよりも元気がないように感じました。「もう生きているのがつらい」と話すので、スピリチュアルペインかと思い、いろいろ話を聞きました。時間をかけて話を聞いた後にバイタル測定をすると38℃の発熱があり、尿路感染症が生じていました。今回は発熱があったため気付いたものの、つらさの原因を気持ちやスピリチュアルにばかり向けていたら、疾患を見逃していたかもしれません…。こうしたことはありますか?はい、めちゃくちゃあります。心理的なつらさだと思ったら根底には身体疾患があった、というケースはよくありますし、私自身も身体疾患を見逃して反省したことがあります。緩和ケアを受けるがん患者が発熱した場合、その原因の多くが感染症だとされています。そうした意味では、「腫瘍熱」という診断に飛びつくのも危険です。がん患者の発熱で、腫瘍熱の頻度は5~10%ともいわれています1)。こうした「何となく」が原因と思いがちな病名には、注意が必要です。私自身が心掛けていることを紹介します。それは「それって本当?」と自問自答する、というやり方です。「うーん、がん患者だし、腫瘍熱かなぁ」と思った時に、「それって本当?」と別の私が問い掛けるという感じです。「気持ちのつらさが原因だろうなあ。しっかり傾聴しよう…」と思った時にも、一度立ち止まって「それって本当?」という思考を挟むようにしていると、身体疾患を疑うクセが身に付きました。実はこの技、救急でも活用できます。「軽症だから入院は必要ないな。帰宅させて経過観察で大丈夫」と思った時、「それって本当?」と「もう1人の自分」がささやきます。もちろん、たいていは元の判断で問題ないのですが、いったん立ち止まって慎重に検討できます。何度かこの作業に助けられたこともあります。この手法の注意点は、あくまでも「自分に対して行う」ことです。他者に「それって本当?」とやっては単なる「嫌なヤツ」ですからね。まして研修医など、若手指導の際は控えたほうがよいでしょう。ぜひ、自問自答で見逃しを防ぎましょう。今回のTips今回のTips患者のつらさは精神的なものとは限らない。身体疾患を見逃さないよう「それって本当?」と自問自答しよう。1)Toussaint E, et al. Support Care Cancer. 2006;14:763-9.

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乳がん患者のQOLと死亡リスクの関係

 乳がん患者は生活の質(QOL)に悪影響を及ぼすさまざまな問題を抱えているが、乳がん患者のQOLと死亡リスクとの関連については議論の余地がある。静岡県立静岡がんセンターの鈴木 克喜氏らは、QOLが乳がん患者の予後に与える影響についてシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、結果をBreast Cancer誌オンライン版2024年4月9日号で報告した。 本研究では、CINAHL、Scopus、PubMedのデータベースを用いて、2022年12月までに発表された乳がん患者のQOLと死亡リスクを評価した観察研究が検索された。 主な結果は以下のとおり。・11万9,061件の論文が検索され、6件の観察研究がメタ解析に含まれた。・身体機能QOL(ハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:1.01~1.07、p=0.003)、情緒機能QOL(HR:1.01、95%CI:1.00~1.03、p=0.05)、および役割機能QOL(HR:1.01、95%CI:1.00~1.01、p=0.007)は、死亡リスクとの有意な関連が示された。・一方で、全般的QOL、認知機能QOL、および社会機能QOLは、死亡リスクとの関連が示されなかった。・治療時点に従い行われたサブグループ解析によると、治療後の身体機能QOLが死亡リスクと関連していた。 著者らは、身体機能QOL、情緒機能QOL、および役割機能QOLが乳がん患者の死亡リスクと関連したとし、治療後の身体機能QOLは、治療前の身体機能QOLよりも生存期間延長とより有意な関連を示したとまとめている。

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大腸がん患者の死亡リスクが高くなる超加工食品は?

 大腸がんと診断された後の超加工食品摂取量と死亡率を調査した前向きコホート研究によって、アイスクリーム/シャーベットの摂取量が多いほど大腸がんによる死亡リスクが高く、超加工食品全体および油脂/調味料/ソースの摂取量が多いほど心血管疾患(CVD)による死亡リスクが高いことを、中国・南京医科大学のDong Hang氏らが明らかにした。eClinicalMedicine誌2024年3月号掲載の報告。 これまでの研究により、超加工食品の摂取が多い男性では大腸がんの発症リスクが約30%高いことが報告されている1)。しかし、大腸がんと診断された後の超加工食品摂取が大腸がんの予後にどのような影響を与えるかはまだ解明されていない。そこで研究グループは、米国のNurses’ Health Study(NHS)に参加した35~55歳の女性看護師と、Health Professionals Follow-Up Study(HPFS)に参加した40~75歳の男性医療者のデータを用いた前向きコホート研究を行った。 解析対象は、1980~2016年にStageI~IIIの大腸がんと診断された2,498例(NHS:1,764例、HPFS:734例)であった。約130品目の食物や飲料の摂取頻度の調査票から、診断後6ヵ月以上(積極的な治療期間を除外するため)4年未満における超加工食品の全体およびサブグループの摂取量(1食分として食べる量:サービング)を推定した。追跡調査は隔年に行われた。交絡因子で調整した逆確率重み付け法によるCoxモデルを用いて、超加工食品摂取に関連する全死因死亡率、大腸がんによる死亡率、CVDによる死亡率のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・大腸がん診断時の患者の平均年齢は68.5(SD 9.4)歳であった。追跡調査期間中央値11.0年で1,661例が死亡し、そのうち大腸がんによる死亡は321例(19.3%)、CVDによる死亡は335例(20.2%)であった。・診断後の超加工食品全体の摂取量の中央値は6.0(四分位範囲:4.6~7.8)サービング/日であった。摂取量の多かったサブグループは、超加工パン/朝食用食品(27%)、油脂/調味料/ソース(24%)、スナック菓子/デザート(17%)であった。・超加工食品の総摂取量が最も少ない五分位(中央値:3.6サービング/日)と比較して、最も多い五分位(中央値:10サービング/日)では、CVDによる死亡リスクが高かった(HR:1.65、95%CI:1.13~2.40、p for trend=0.01)。大腸がんによる死亡と全死因死亡では有意な関連はみられなかった。・超加工食品のサブグループ間では、アイスクリーム/シャーベットの摂取量が最も多い五分位では、大腸がんによる死亡リスクが高かった(HR:1.86、95%CI:1.33~2.61、p for trend=0.02)。・油脂/調味料/ソースの摂取量が最も多い五分位では、CVDによる死亡リスクが高かった(HR:1.96、95%CI:1.41~2.73、p for trend=0.001)。・超加工食品のサブグループと全死因死亡との間に有意な関連性はみられなかった。

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カルシウムとビタミンDの摂取は閉経後女性の全死亡リスクに影響せず

 慢性疾患の予防効果を目的にカルシウムとビタミンDを摂取している更年期の女性をがっかりさせる研究結果が報告された。閉経後女性の慢性疾患の予防戦略に焦点を当てた「女性の健康イニシアチブ(Women's Health Initiative;WHI)」のデータを事後解析した結果、カルシウムとビタミンDの摂取により、閉経後女性のがんによる死亡リスクは7%低下するものの、心血管疾患による死亡リスクは6%上昇するため、全死亡に対する正味の効果はないことが明らかになった。米アリゾナ大学健康推進科学分野教授のCynthia Thomson氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に3月12日に掲載された。 骨の健康を守るために、長年にわたってカルシウムとビタミンDを摂取している閉経後女性は少なくない。しかし、致死的な心疾患やがんなどの慢性疾患に対するこれらの栄養素の予防効果については明確になっていない。 1991年に米国立衛生研究所(NIH)により開始されたWHIは、数十年にわたって閉経後女性の健康を追跡してきた大規模研究で、数万人の女性が登録されている。今回の研究テーマである、閉経後女性でのカルシウムとビタミンDの摂取効果については、2006年に初めて、7年間の追跡データの解析結果が報告されていた。研究グループによると、その結果は「ほとんど効果なし」というものだった。 今回の研究では、長期追跡データを解析することでこの結果に変化が認められるのかどうかが調査された。対象は、3万6,283人の閉経後女性で、乳がんや大腸がんの既往がある者は含まれていなかった。女性は、1日1,000mgの炭酸カルシウム(カルシウム含有量としては400mg)と400IUのビタミンD3を摂取する群(CaD群)とプラセボを摂取する群(プラセボ群)に1対1の割合でランダムに割り付けられていた。 その結果、累積追跡期間中央値22.3年の経過後にCaD群で1,817人、プラセボ群で1,943人ががんにより死亡しており、前者では後者に比べてがんによる死亡リスクが7%低下することが示された(ハザード比0.93、95%信頼区間0.87〜0.99)。一方、心血管疾患による死亡については、CaD群では7,834人、プラセボ群では7,748人が確認されており、前者では後者に比べて死亡リスクが6%高いことが示された(同1.06、1.01〜1.12)。それゆえ、死亡リスクという点でカルシウムとビタミンD摂取の有益性は確認されなかった。 Thomson氏は、「カルシウムサプリメントの摂取が冠動脈の石灰化を促し、心血管疾患による死亡リスクを増加させる可能性は考えられる」との見方を示している。 研究グループはこの研究の結論として、「閉経後女性を20年以上追跡した調査の解析結果に基づくと、カルシウムとビタミンDの摂取は、がんによる死亡リスクを低減する一方で心血管疾患による死亡リスクを増大させ、結果的に全死亡リスクには影響を及ぼさないことが明らかになった」と述べている。

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特殊なMRIが治療抵抗性統合失調症の予測に有用か

 特殊な脳スキャンによって、精神病患者が治療に反応しない(治療抵抗性)統合失調症に移行するかどうかを正確に予測できる可能性があるとする研究結果を、アムステルダム大学(オランダ)のMarieke van der Pluijm氏らが、「The American Journal of Psychiatry」に3月13日報告した。 この脳スキャンは、中枢神経系のニューロメラニンと呼ばれる色素を測定するもので、ニューロメラニン感受性(neuromelanin-sensitive)MRI(NM-MRI)と呼ばれる。この色素を視覚的に示すことで、ドーパミンの機能レベルを知ることができる。ドーパミンは脳の報酬系から分泌される神経伝達物質の一つで、やる気や幸福感、運動調節に関わっている。そのため、ドーパミンの分泌過多は精神病に付随する攻撃性や衝動制御の低下をもたらす可能性がある。 研究グループは、「治療抵抗性の統合失調症患者を早期に見つけ出し、そうした患者に対する有効性が証明されている唯一の抗精神病薬であるクロザピンによる治療のタイムリーな開始を促すためのマーカーが喫緊に必要とされている」と述べている。治療に反応しない統合失調症患者では、治療してもドーパミン機能が増強しない。研究グループは、「このことは、NM-MRIによるニューロメラニンの評価(ドーパミン機能の指標)が、治療抵抗性の患者を早期に発見するためのマーカーとなる可能性のあることを示唆している」と述べている。 今回の研究では、初回精神病(統合失調症)エピソードを有する患者79人と、これらの患者とマッチさせた健康な対照20人にNM-MRIスキャンを実施した。また、その6カ月後の追跡調査時に治療応答性の評価を行った。抗精神病薬を2回使用後も、妄想、幻覚、異常な姿勢、異常な思考の五つの領域のいずれかに中等度または高度の症状が認められた場合、一種類の抗精神病薬で効果が認められなかったか重篤な副作用が生じた場合、あるいは追跡調査中にクロザピンに変更された場合は、「非応答」と見なされた。 その結果、ベースラインのNM-MRIでは、15人の非応答者で、ドーパミンニューロンが豊富な脳領域(黒質)の信号が有意に低いことが明らかになった。また、ニューロメラニンの評価に基づくことで、どの患者が治療に反応するかを最大68%の精度で予測できると推定された。追跡調査を受けた治療応答者28人と非応答者9人では、6カ月間の間にNM-MRIの信号強度に変化は認められなかった。 研究グループは、「本研究により、NM-MRIが統合失調症患者における治療抵抗性の非侵襲的マーカーとして早期から有用であることが示唆された」と結論付けている。その上で、「最終的には、適切な予測モデルによって統合失調症における治療抵抗性を早期に同定することが可能となり、それによって効果的な治療が遅れる患者の数を大幅に減らし、転帰を改善することができるようになるだろう」との見通しを示している。

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週どのくらい身体を動かすと良い?[高齢者編]

週どのくらい身体を動かすことが推奨されている?[高齢者]⚫ 歩行またはそれと同等以上(3メッツ以上の強度)の身体活動を1日40分以上(=1日約6,000歩以上)⚫ 有酸素運動・筋力トレーニング・バランス運動・柔軟運動など多要素な運動を週3日以上⚫ 週2~3日の筋力トレーニング(上記の多要素な運動に含めてもよい)座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように注意+3メッツ以上の強度の身体活動の例[3]家財道具の片付け、大工仕事、梱包 [3.3]掃き掃除、掃除機がけ[3.5]楽に自転車に乗る、階段を下りる、 軽い荷物運び、モップがけ、風呂掃除、庭の草むしり、車椅子を押す [4]自転車に乗る(通勤など)、階段を上る(ゆっくり)、動物と遊ぶ(歩く/走る、中強度)[5.8]子供と遊ぶ(歩く/走る、活発に)多要素な運動の例サーキットトレーニングのような有酸素運動、筋力トレーニング、バランス運動などを組み合わせて実施する運動や、体操やダンス、ラジオ体操、ヨガ筋力トレーニングの例腕立て伏せやスクワット、マシンやダンベルを使用して行うウエイトトレーニング上記を参考に可能なものから取り組み、今より少しでも多く身体を動かすようにしましょう!出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法の有用性

 うつ病患者は不安症状が高頻度でみられ、そのような患者では抗うつ薬に対する治療反応が低下し、機能的な悪影響につながる恐れがある。カナダ・トロント大学のRoger S. McIntyre氏らは、不安症状を伴ううつ病患者における補助的ブレクスピプラゾール治療の抑うつ症状および機能に対する有効性を評価するため、ランダム化二重盲検プラセボ対照試験(RCT)の事後分析を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2024年3・4月号の報告。 うつ病患者および抗うつ薬治療で効果不十分な患者を対象に、補助的ブレクスピプラゾール治療6週間RCT3件よりデータを抽出した。患者は、DSM-Vの不安による苦痛(anxious distress)に準じて層別化した。ベースライン時から6週目までのMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)の項目スコアおよびシーハン障害尺度(SDS)の平均スコアの変化について、補助的ブレクスピプラゾール治療群(2mg、2~3mg)とプラセボ群で比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に不安による苦痛を感じていた患者は、746例中450例(2mg分析:60.3%)および1,162例中670例(2~3mg分析:57.7%)であった。・不安による苦痛を伴ううつ病患者において、補助的ブレクスピプラゾール治療群は、プラセボ群と比較し、MADRSの項目スコア(悲しみ)の改善が認められた(p<0.05)。悲しみ、内面的緊張、睡眠の減少、食欲低下、倦怠感、無感情、悲観的思考の改善が報告された(Cohen d エフェクトサイズ:0.18~0.44)。・同様に、SDS平均スコアの改善も認められた(エフェクトサイズ:0.21~0.23)。 著者らは「補助的ブレクスピプラゾール治療は、抗うつ薬治療で効果不十分なうつ病患者および不安による苦痛を伴う患者において、中核症状である抑うつ症状や睡眠、食欲、機能の改善に有効であることが示唆された」としている。

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がん関連DVTに対するエドキサバン長期投与のネットクリニカルベネフィット、サブグループ解析(ONCO DVT)/日本循環器学会

 昨年8月欧州心臓学会(ESC)のHot Line SessionでONCO DVT Study1)“の試験結果(がん関連下腿限局型静脈血栓症[DVT]におけるエドキサバンの長期投与の有効性を示唆)が報告されて話題を呼んだ。今回、その続報として西本 裕二氏(大阪急性期・総合医療センター心臓内科)らが、サブグループ解析(事後解析)結果について、第88回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials 2で報告した。 ONCO DVT Studyは日本国内60施設で行われた医師主導型の多施設共同非盲検化無作為化第IV相試験である。下腿限局型DVTと新規に診断されたがん患者を、エドキサバン治療12ヵ月(Long DOAC)群または3ヵ月(Short DOAC)群に1:1に割り付け、主要評価項目として症候性のVTE再発またはVTE関連死を評価した。主要評価項目は12ヵ月群では1.2%、3ヵ月群では8.5%に発生した(オッズ比[OR]:0.13、95%信頼区間[CI]:0.03~0.44)。一方、主な副次評価項目である12ヵ月時点での大出血(国際血栓止血学会の基準による)は12ヵ月群では10.2%、3ヵ月群では7.6%で発生した(OR:1.34、95%CI:0.75~2.41)。 この結果を基に、今回はエドキサバンの長期投与による出血リスク増加の懸念を検証することを目的として、12ヵ月の血栓性イベント(症候性VTE再発またはVTE関連死)と大出血イベントを複合した全臨床的有害事象(NACE:net adverse clinical events)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月群296例、3ヵ月群305例の計601例のITT解析対象集団を事後解析した。・NACEの発生率は、12ヵ月群では296例中30例(10.1%)、3ヵ月群では305例中42例(13.8%)であった(OR:0.71、95%CI:0.43~1.16)。・12ヵ月群のネットクリニカルベネフィットを算出すると3.6%(95%CI:-1.5〜8.8%)で、有意差がないことが示された。・事前に規定したサブグループでは、血小板減少患者では3ヵ月群で、がん転移を有する患者では12ヵ月群でNACEの発生率が低かった。・それぞれのイベントの重みを考慮し、探索的に大出血イベントに重みを加えて12ヵ月群のネットクリニカルベネフィットを算出すると、0.5の重みで4.8%、2.0の重みで0.7%であった。・また、NACEに血栓性イベントとして無症状VTE再発を加え、出血性イベントして臨床的に意義のある非大出血を加えて検証したところ、12ヵ月群のNACEの発生率が有意に低く(OR:0.67、95%CI:0.47~0.97)、ネットクリニカルベネフィットは7.8%(95%CI:0.8~14.9)であった。また出血イベントに0.5の重みを加えるとネットクリニカルベネフィットは10.1%、2.0の重みでは3.1%であった。 西本氏は「DVTを有するがん患者において12ヵ月群のほうがNACEの発生率が数値的に低かったが、ネットクリニカルベネフィットは12ヵ月群と3ヵ月群で有意差がなかった。サブグループ解析からは、血小板減少患者とがん転移を有する患者でNACEに対する異なる影響が認められた」とコメントした。 なお、本研究の限界として、非盲検であること、対象患者の多くが無症候性の下腿限局型DVTであること、本研究における治療アドヒアランスが高くないこと、そして最も重要な点として、12ヵ月のエドキサバン治療における大出血増加の懸念を検証することを目的として事後解析した点が示された。

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「魚と酒」は「肉中心」より高血圧になりやすい!?~日本人男性

 食事パターンと高血圧発症の関連を検討した日本人男性における前向きコホート研究で、「魚介類とアルコール」より「肉類中心」や「乳製品/野菜中心」のほうが高血圧リスクが低かったことを、東北大学/中国・Heze UniversityのLongfei Li氏らが報告した。本研究では食事パターンの特定に、食物摂取頻度・食事行動・調理方法を考慮した「教師なし機械学習法」を用いている。European Journal of Nutrition誌オンライン版2024年2月25日号に掲載。 本研究は、2008年8月~2010年8月に仙台卸商研究に登録された仙台卸商センターに勤務する日本人男性のうち447人の最終データセットを解析に使用した。UMAP(一様多様体近似と投影)による次元の削減とK平均法によるクラスタリングを用いて、食事パターンを導出した。さらに、多変量ロジスティック回帰を用いて、食事パターンと高血圧発症率の関連を評価した。高血圧は、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、自己申告による高血圧歴、高血圧治療薬の使用のいずれかに当てはまる場合とした。 主な結果は以下のとおり。・食事パターンは「低タンパク質・低食物繊維・高糖類」「乳製品/野菜中心」「肉類中心」「魚介類とアルコール」の4パターンが特定された。・年齢・BMI・喫煙・学歴・身体活動・脂質異常症・糖尿病などの潜在的交絡因子を調整後、基準とした「魚介類とアルコール」と比較して、「乳製品/野菜中心」(オッズ比[OR]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.19~0.80、p=0.013)と「肉類中心」(OR:0.37、95%CI:0.16~0.86、p=0.022)で高血圧リスクが低かった。・年齢を一致させたグループ解析でも同様の結果だった。 著者らは「本研究の方法は、食物摂取頻度・食事行動・調理方法を考慮した複雑な食事パターンに対する知見を提供できることから、従来の統計学的方法や主成分分析法(PCA)では見過ごされがちな隠れたパターンを明らかにするのに有用」としている。

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小児期の弱視が成人後の肥満、糖尿病リスクなどと関連

 子ども時代に弱視であった人は成人後の視力も良くないことが多いだけでなく、心血管代謝疾患のリスクが高いことを示すデータが報告された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)眼科学研究所のSiegfried Wagner氏らの研究によるもので、詳細は、「eClinicalMedicine」に3月7日掲載された。論文の筆頭著者である同氏は、「視覚は健康全般の番人としての役割があり、視機能はほかの器官の働きと密接な関係がある」と話している。 視力は出生後に物を見ることで、網膜から脳へつながる神経が刺激されて成長する。視力が急速に成長する幼少期に何かしらの理由で網膜が刺激されない状態では、視力の成長が滞る。また、左右の見え方に少し差がある場合には、脳は良く見えない方の目の情報を無視するような処理をするため、見えにくかった方の目の視力はより育ちにくくなる。子どもに多い斜視も、このような理由で弱視につながりやすい。 Wagner氏らはこの研究のため、英国で現在も進行中の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」の参加者12万6,399人のデータを用いた。このうち3,221人が小児期に弱視の治療を受けており、その82.2%(2,647人)は成人後にもどちらか一方の目の視力が十分でない状態だった。データ解析の結果、以下のように、成人後にも視力の低下が持続している人とそうでない人の双方で、健康上の問題との関連が認められた。 まず、横断的な解析では、小児期に弱視で成人後にも視力が低い人は、小児期に弱視でなかった人に比べて、心血管代謝疾患を有している人が多いことが明らかになった。具体的には、肥満〔オッズ比(OR)1.16(95%信頼区間1.05~1.28)〕、高血圧〔OR1.25(同1.13~1.38)〕、糖尿病〔OR1.29(1.04~1.59)〕の有意なオッズ比上昇が観察された。小児期に弱視で成人後には視力の問題がない人では、これら三つの状態の有意なオッズ比上昇は認められなかった。 続いて、受療行動データを用いた縦断的な解析を施行。その結果、小児期に弱視で成人後にも視力が低い人は、小児期に弱視でなかった人に比べて、心筋梗塞〔ハザード比(HR)1.36(1.07~1.72)〕や全死亡〔HR1.45(1.21~1.72)〕のリスクが高いことが明らかになった。さらにこの解析では、小児期に弱視で成人後には視力の問題がない人でも、心筋梗塞のリスク上昇が認められた〔HR1.56(1.03~2.36)〕。 これらの結果の解釈上の注意点としてWagner氏は、「子どもの頃の弱視が成人後の健康問題を引き起こす直接的な原因だと決めつけることはできない」とし、正しい理解を求めている。その一方、視力検査について、「成人後の重篤な疾患のリスクマーカーが、子ども時代から異常値を示すということはあまりないが、視力はそのようなリスクマーカーとして使えるのではないか。さらに、全ての子どもの視力がごく一般的に測定されている」と、その特徴と可能性を指摘。「視力検査を経て弱視と診断された子どもやその保護者には、われわれの研究結果を、小児期から健康的なライフスタイルを保つための動機付けとしてもらいたい」と述べている。

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アプリを通じて蓄尿量が分かる膀胱デバイスを開発

 疾患に関連した尿失禁に悩まされている人の中には、帰宅するまでトイレに行くのを我慢できるのか、それとも今すぐトイレに行くべきなのかの判断が難しい人もいる。そのような人に役立つデバイスとスマートフォン(以下、スマホ)のアプリの開発に関する研究成果が報告された。膀胱用のインプラントデバイスとスマホのアプリにより、膀胱内の蓄尿量をリアルタイムで追跡できるのだという。米ノースウェスタン大学生体医工学分野のGuillermo Ameer氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に3月28日掲載された。Ameer氏は、「このアプリとデバイスは、疾患などが原因で膀胱の機能が低下し、トイレに行きたいのかどうかが判然としない患者にとって、画期的な解決策になるだろう」と述べている。 Ameer氏は、「手術や二分脊椎などの疾患により膀胱の神経がダメージを受けると、膀胱が満杯であることを感知できないことがよくある。このような患者に対しては、しばしばカテーテルを使って膀胱から尿を排出させるが、この処置は患者に不快感をもたらすだけでなく、痛みを伴う感染症に罹患するリスクも高める。われわれは、病院や臨床の場で行う必要がある、このような侵襲性が高く、非常に不快な現行の膀胱機能モニタリング手順を回避したいと考えた」と研究背景を説明している。 研究グループが開発した、膀胱の外壁に取り付けて使用するインプラントデバイスは、柔らかくて柔軟性があり、電池も必要としない。膀胱の中に尿がたまるにつれ膀胱壁は引き伸ばされ、それとともにこのゴムのようなデバイスも引っ張られる。すると、デバイスに搭載された複数のセンサーがその「ひずみ」を検出し、それにより膀胱内の尿量をモニタリングする。蓄尿量の情報は、ワイヤレスでスマホのアプリに送信され、これにより、デバイス装着者はリアルタイムで膀胱の状態を追跡することができるという仕組みだ。 論文の共著者で、ノースウェスタン大学生体医工学分野のJohn Rogers氏は、「今回は、とても柔らかくて極薄な上に、伸縮可能なひずみゲージの開発に成功したことが重要な進歩だ。このひずみゲージは、膀胱の外面を優しく包み込み、自然な蓄尿とその排泄動作に機械的な制約を加えることがない」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 小動物を用いた実験では、このデバイスを用いて、膀胱の充満と排泄を30日間リアルタイムで追跡することができたという。さらに、ヒト以外の霊長類を使った追跡調査では、このデバイスを使って8週間にわたり膀胱の蓄尿量を追跡することに成功し、ごく少量の尿でもひずみを検出できることが確認できた。 Ameer氏は、「この研究では、本デバイスを人間用にスケールアップして初めて検証した。そして、この技術が長期的に機能し得ることを示した。使用状況に応じてこのデバイスを恒久的に体内に留置し、患者が完全回復した後に無害な形で溶解させることも可能だ」と話す。 研究グループは、このデバイスを、膀胱の再建や必要に応じて排尿を誘発するために使用できる他の新技術と組み合わせたいとの考えを示している。Ameer氏は、「このアプリは、蓄尿量をモニタリングするだけでなく、デバイス使用者に警告を送り、最寄りのトイレの場所を指示することができるようになる。また、将来的には患者がアプリを通じて、オンデマンドで排尿することができるようになるだろう」と述べている。

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