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T-DM1既治療のHER2+進行乳がん、T-DXdの3年OS率は?(DESTINY-Breast02)/ESMO BREAST 2024

 トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療歴のあるHER2+の切除不能または転移を有する乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)と治験医師選択の化学療法(TPC)を比較した第III相DESTINY-Breast02試験の全生存期間(OS)を含む最新の解析結果を、韓国・Asan Medical CenterのSung-Bae Kim氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。 DESTINY-Breast02試験の一次解析(データカットオフ:2022年6月30日)において、T-DXd群(3週間間隔で5.4mg/kg、406例)では、TPC群(トラスツズマブ+カペシタビンまたはラパチニブ+カペシタビン、202例)と比較して、無増悪生存期間(PFS)およびOSを統計学的に有意に改善した。今回の発表では、2023年9月29日をデータカットオフ日とする追跡期間中央値26.8ヵ月における最新の有効性と安全性の結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・今回のデータカットオフ時点の追跡期間中央値は、T-DXd群30.2ヵ月(範囲:0.8~60.7)、TPC群20.5ヵ月(0.0~60.6)であった。・OS中央値は、T-DXd群35.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:30.9~40.8)、TPC群25.0ヵ月(20.4~31.5)で、ハザード比(HR)は0.69(0.55~0.88)であった。24ヵ月OS率はそれぞれ64.6%(59.6~69.2)および51.9%(44.4~58.9)、36ヵ月OS率はそれぞれ49.2%(44.0~54.3)および36.6%(29.5~43.8)であった。・治験医師判定によるPFS中央値は、T-DXd群16.7ヵ月(95%CI:14.7~19.6)、TPC群5.5ヵ月(4.4~6.8)で、HRは0.30(0.24~0.37)であった。・治験医師判定による奏効率(ORR)は、T-DXd群74.1%(CRは8.6%)、TPC群27.2%(2.0%)であった。奏効期間中央値はそれぞれ19.1ヵ月(95%CI:15.2~25.1)、6.3ヵ月(5.1~8.1)であった。・治療関連有害事象(TRAE)はT-DXd群99.8%(うちGrade3以上が55.4%)、TPC群94.9%(44.6%)に発現した。T-DXd群の主なTRAEは、悪心(72.5%)、倦怠感(62.4%)、嘔吐(38.1%)であった。・T-DXdによる薬剤性間質性肺疾患/肺臓炎は404例中46例(11.4%)に発現し、一次解析のデータカットオフ以降の発現は4例(Grade1が2例、Grade2が2例)であった。

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早期再発TN乳がんへのアテゾリズマブ上乗せ、予後を改善せず(IMpassion132)/ESMO BREAST 2024

 切除不能な局所進行または転移を有する早期再発トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象に、化学療法に抗PD-L1抗体アテゾリズマブを上乗せした第III相IMpassion132試験の結果、PD-L1陽性患者においても予後が改善しなかったことを、シンガポール・国立がんセンターのRebecca A. Dent氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。 IMpassion130試験において、進行TNBCへの1次治療としてのアテゾリズマブ+nab-パクリタキセル併用療法は、PD-L1陽性患者の全生存期間(OS)を改善した。しかし、早期再発TNBCにおけるデータは限られている。そこで研究グループは、治験医師選択の化学療法にアテゾリズマブまたはプラセボを上乗せして、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで継続した場合の有効性と安全性を評価した。・試験デザイン:第III相二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験・対象:アントラサイクリンおよびタキサンを含む早期TNBCの治療完了後12ヵ月以内に再発した手術不能な局所進行または転移を有するTNBC患者※・試験群(アテゾリズマブ群):治験医師選択の化学療法(カペシタビン1,000mg/m2を21日サイクルの1~14日目に1日2回経口投与、またはカルボプラチンAUC 2+ゲムシタビン1,000mg/m2を21日サイクルの1・8日目に静注)+アテゾリズマブ(1,200mgを21日ごとに静注)・対照群(プラセボ群):上記の治験医師選択の化学療法+プラセボ・評価項目:[主要評価項目]PD-L1陽性集団(SP142によるPD-L1発現状況が1%以上)におけるOS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性・層別化因子:選択された化学療法、内臓転移(肺、肝臓)の有無、PD-L1発現状況※2018年1月からPD-L1が陰性でも陽性でも登録されたが、IMpassion130試験の結果により、2019年8月からはPD-L1陽性患者に限定された。 主な結果は以下のとおり。・合計594例が登録され、うちPD-L1陽性は354例(アテゾリズマブ群177例、プラセボ群177例)であった。・両群の患者特性はバランスがとれていた。アテゾリズマブ群は年齢中央値48歳(範囲:23~77)、無病期間が6ヵ月未満であったのは66%、肺および/または肝転移ありは60%であった。プラセボ群はそれぞれ48歳(範囲:25~83)、69%、62%であった。両群ともに治験医師選択の化学療法としてカルボプラチン+ゲムシタビンが選択されたのは73%であった。・追跡期間中央値9.8ヵ月時点で、アテゾリズマブ上乗せによるPD-L1陽性患者のOSの有意な改善は認められなかった(ハザード比[HR]:0.93[95%信頼区間[CI]:0.73~1.20]、p=0.59)。 -アテゾリズマブ群:OSイベント発生70%、OS中央値12.1ヵ月(95%CI:10.1~15.1) -プラセボ群:OSイベント発生72%、OS中央値11.2ヵ月(95%CI:9.0~13.3)・PFS中央値は、アテゾリズマブ群4.2ヵ月(95%CI:3.7~5.6)、プラセボ群3.6ヵ月(95%CI:3.4~4.2)で有意差は認められなかった(HR:0.84[95%CI:0.67~1.06])。・未確定のORRは、アテゾリズマブ群40%(95%CI:32~48)、プラセボ群28%(95%CI:21~36)であった(群間差11%[95%CI:>0~22])。・奏効期間中央値は、アテゾリズマブ群6.6ヵ月(95%CI:4.6~8.0)、プラセボ群4.1ヵ月(95%CI:3.5~5.8)であった(HR:0.73[95%CI:0.48~1.11])。・これらの結果は、PD-L1陰性集団を含む修正ITT集団でも同様の傾向にあった。・安全性解析集団(587例)における有害事象の発現率は両群でおおむね同等で、新たな安全性シグナルは報告されなかった。

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遺伝性網膜変性症、CRISPR-Cas9遺伝子治療が有望/NEJM

 CEP290遺伝子変異による遺伝性網膜変性症患者において、EDIT-101の単回投与は忍容性が良好で光受容体機能の改善が示された。米国・ハーバード大学医学部のEric A. Pierce氏らが、第I/II相非盲検単回投与漸増試験「BRILLIANCE試験」の結果を報告した。CEP290関連遺伝性網膜変性症は、早期に重度の視力低下を引き起こす。EDIT-101は、CEP290のイントロン26(IVS26バリアント)を標的としたCRISPR-Cas9生体内遺伝子編集治療。今回の結果を受けて著者は、「CEP290のIVS26変異体やその他の遺伝子変異による遺伝性網膜変性症の治療において、CRISPR-Cas9生体内遺伝子編集治療のさらなる研究を支持するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2024年5月6日号掲載の報告。小児を含む遺伝性網膜変性症患者14例が対象 研究グループは、スクリーニング時に3歳以上で、CEP290遺伝子のIVS26変異によるホモ接合体または複合ヘテロ接合体の遺伝性網膜変性症を有する患者を対象とし、prednisone(0.5mg/kg/日)経口投与の3日後に経毛様体扁平部硝子体切除を行い、視力が悪いほうの眼(試験眼)にEDIT-101を300μLまで単回網膜下注射した。術後はprednisoneを4週間投与し、その後15日間で漸減した。 主要アウトカムは、有害事象および用量制限毒性を含む安全性であった。重要な有効性の副次アウトカムは、最高矯正視力のベースラインからの変化、暗順応下全視野刺激試験(FST)で測定した網膜感度、Ora-Visual Navigation Challenge(Ora-VNC)mobility testのスコア、National Eye Institute Visual Function Questionnaire-25(NEI VFQ-25)(成人)またはChildren's Visual Function Questionnaire(CVFQ)(小児)で測定した視覚関連QOLスコアであった。 計14例がEDIT-101の投与を受けた。成人は12例(中央値37歳[範囲17~63]、17歳の1例は最初の同意取得後18歳となり、その後に投与)、小児は2例(9歳、14歳)で、成人には低用量(2例)、中間用量(5例)、高用量(5例)を、小児には中間用量を投与した。ベースラインの試験眼の最良矯正視力(logMAR)の範囲は0.6~3.9であった。用量制限毒性はなし、有効性アウトカム3項目のうち1項目以上改善患者64% 治療または処置に関連した眼の、重篤な有害事象ならびに用量制限毒性は認められなかった。眼以外の重篤な有害事象は4件、治療に関連した眼の有害事象は22件発生した。 14例のうち4例(29%)で、最高矯正視力のベースラインからの変化に関する臨床的に意味のある改善(事前に規定された閾値0.3 logMAR)が認められた。 赤色光を用いたFSTによる網膜感度の評価では、6例(43%)で視覚的に意味のある改善が認められ、うち5例は少なくとも1つの他の重要な副次アウトカムの改善を示した。Ora-VNC mobility testによるベースラインから3点以上の改善は4例(29%)で、視覚関連QOLのベースラインから有意な改善(4ポイント以上上昇)は6例(43%)で認められた。 最高矯正視力、FSTによる赤色光に対する網膜感度、またはOra-VNC mobility testのいずれかがベースラインから意味のある改善を示した患者は、9例(64%)であった。

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尿検査で前立腺がん生検スキップの可否を判定

 前立腺がんが見つかった際の最も重要な疑問は、それが即座に治療が必要な進行性のがんなのか、それとも進行が遅く経過観察で済むがんなのかということだ。その答えを得るために現時点で利用できる唯一の方法は生検である。しかし、新たな研究で、MyProstateScore2.0(MPS2)と呼ばれる尿検査が、侵襲的な生検に代わる新たな検査法になり得る可能性が示された。米ミシガン大学医学部病理学および泌尿器科学分野教授のArul Chinnaiyan氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Oncology」に4月18日掲載された。Chinnaiyan氏は、「この検査で陰性であれば、進行性前立腺がんでないことはほぼ確実だ」と話している。 論文の共著者である同大学泌尿器科学分野のJohn Wei氏は、「前立腺がんに対する治療アプローチは、過去数十年の間に根本的に変化した。20年前には、あらゆる種類の前立腺がんを探し出して治療するのが普通だった。ところが今では、進行の遅いタイプのがんは治療する必要がないとされている」と話す。 過去数十年間、前立腺特異抗原(PSA)検査は、前立腺がんを発見するために日常的に使われていた。しかし、この検査のみでは、進行性のがんと成長の緩徐ながんを区別することは困難であり、そのため、過剰治療が行われることもしばしばであった。こうしたことから、現在でのPSA検査の使用頻度は以前に比べると格段に低くなっている。 ミシガン大学の研究グループが最初のMyProstateScoreテスト(MPSテスト)を開発したのは、10年ほど前に遡る。MPSテストは、前立腺がん抗原3遺伝子(PCA3)とTMPRSS2:ERGの2種類の遺伝子の共発現と血清PSAレベルを組み合わせて、悪性度の高いがんのリスクを推定する。Chinnaiyan氏は、「MPSテストの性能は優れているが、十分と言えるものではなかった」と話す。同氏は、「MPSテストや現在市販されている他のテストには、まだアンメットニーズが残されている。これらのテストは前立腺がんを検出しはするものの、概して、臨床的に重要な悪性度の高い前立腺がんの検出精度についてはそれほど優れているとは言えない。今回のMPS2テストの開発で推進力となったのは、このアンメットニーズに応えることだった」と話す。 前立腺がんの悪性度のレベルは、グリソンスコアで評価される。グリソンスコアがグレード2(GG2)以上の腫瘍は、グレード1(GG1)の腫瘍よりも成長して転移する可能性が高い。今回、Chinnaiyan氏らは、5万8,000以上の遺伝子発現の解析を行い、悪性度の高い前立腺がんの指標となり得る54種類の遺伝子について遺伝子候補パネルを作成して評価した。その上で、最終的に、最初のMPSテストに組み込まれていた2遺伝子を含む18種類の遺伝子をMPS2テストに組み入れた。 743人から成る検証コホートでMPS2テストの性能を確かめたところ、このテストはその他の検査法よりもGG2以上の腫瘍の検出精度が高く、重要なことに、GG1レベルの腫瘍を100%近くの精度で除外できることが示された。さらにMPS2テストは、患者が不必要な生検を回避するのにより効果的であることも示された。不必要な生検が回避される割合は、PSA検査のみに基づくと11%であったのに対し、MPS2テストでは最大で41%に達すると推定された。 Wei氏は、「MPS2テストにより、生検が必要ではないはずの10人に4人が、MPS2テストで低リスクと判定され、自信を持って生検をスキップできる」と話す。同氏はさらに、「過去に生検を受けたことがある患者の場合には、このテストはとりわけ効果を発揮する」と語る。過去の生検で陰性と判定された男性のPSAレベルが上がり始めた場合には、通常なら2度目の生検が示唆される。しかし、MPS2テストにより、そのような男性の半数近くで生検は不要と判定されることになるからだ。 現在、MPS2テストはミシガン大学のスピンオフ企業であるLynxDx社を通じてのみ入手可能である。

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減量の鍵は摂取時間帯の制限ではなく摂取カロリーの減少

 減量のためのダイエット法の一つとして近年「時間制限食」が人気だが、減量にとって重要なのは摂取時間帯を制限することではなく、摂取カロリーの減少であることを示すデータが報告された。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部のNisa Maruthur氏らの研究結果であり、米国内科学会年次総会(ACP2024、4月18~20日、ボストン)で4月19日に発表されるとともに、論文が「Annals of Internal Medicine」に同時掲載された。 時間制限食(time-restricted eating;TRE)が減量に役立つとする報告が増えているが、その効果が、摂取時間帯を制限することに伴う摂取カロリーの減少から独立したものであるのかどうかは依然として明らかになっていない。そこでMaruthur氏らは、摂取カロリーを一定にした上で、TREと通常の食事パターン(usual eating pattern;UEP)の減量効果を比べる無作為化比較試験を行った。なお、研究背景として述べられているところによると、肥満成人が食事摂取の時間帯を1日4~10時間に制限すると、摂取カロリーが自然に約200~550kcal減少して、2~12カ月間にわたって体重低下が続くというエビデンスがあるという。 この研究の参加者は、肥満のある前糖尿病または食事療法を行っている糖尿病の成人41人(平均年齢59歳、女性93%、平均BMI36)。無作為に1:1で2群に分け、TRE群は食事摂取可能な時間帯を10時間以内に限定し、午後1時までに1日の摂取カロリーの80%を摂取することとした。一方のUEP群は食事摂取可能な時間帯を16時間以内として、午後5時以降に1日の摂取カロリーの50%以上を摂取することとした。1日の摂取カロリーと栄養バランスは両群で等しくなるように設定した。介入前の体重は、TRE群95.6kg(95%信頼区間89.6~101.6)、UEP群103.7kg(同95.3~112.0)で、介入期間は12週間だった。 主要評価項目である介入期間中の減量幅は、TRE群が2.3kg(同1.0~3.5)、UEP群は2.6kg(同1.5~3.7)であり、平均差は0.3kg(同-1.2〜1.9)であって、減量効果は同等と考えられた。また、副次的評価項目として設定されていた血糖関連指標の変化も有意差がなかった。この結果を基に研究者らは、「TREが流行しているが、日々の摂取カロリーを減らせば、いつ食べても体重は減少する」と結論付けている。 この論文に対して、米イリノイ大学のKrista Varady氏、Vanessa Oddo氏が付随論評を寄せている。両氏はMaruthur氏らの研究報告を高く評価した上で、「それでも肥満者がTREを試みる価値がある」としている。具体的には、「TREの人気の高まりは、その容易さによるものである可能性が最も高い。つまり、カロリー計算が必要ないということが、支持される理由だ。摂取可能な時間枠を設けることは、それだけで1日の摂取量を減らすのに役立ち、結果として減量に効果的である」と述べている。

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SSRI使用と男性不妊症との関連

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用は、男性の生殖能力に潜在的な影響を及ぼすといわれているが、その正確なメカニズムは十分にわかっているとはいえない。サウジアラビア・King Saud UniversityのJawza F. Alsabhan氏らは、SSRIと男性不妊症との関連を調査した。Journal of Clinical Medicine誌2024年4月7日号の報告。 SSRIによる治療を受け、King Saud Medical Cityの不妊クリニックに通院したサウジアラビア人男性を対象に、カルテレビューをレトロスペクティブに実施した。SSRIを服用している患者の精子パラメータの質をスクリーニングするため、不妊クリニックに通院している男性患者の医療記録を参照した。 主な結果は以下のとおり。・不妊クリニックに通院している男性患者299例を特定した。そのうち、SSRIを使用していた患者は29例(9.6%)であり、SSRIを使用していなかった患者270例(90.4%)を対照群と定義した。・平均年齢を比較すると、対照群(34.2±6.9歳)とSSRI使用患者(41.5±3.2歳)との間に有意な差が確認された(p<0.001)。・精子分析とSSRI使用との関連については、SSRI(エスシタロプラム、fluoxetine、パロキセチン)使用は、精子の液状化(p=0.1)、運動性(p=0.17)、粘度(p=0.16)、精子数(p=0.069)に有意な影響を及ぼしていなかった。 著者らは、「SSRI使用患者と非使用患者の間で、精子分析結果に有意な差は認められなかったが、SSRI使用と精子数との関連については、臨床現場においてさらなる調査および考慮が求められるかもしれない」としている。

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乳がんサバイバー、二次がんの発症リスク増か

 乳がんサバイバーは、その後、再発ではなく新たに別のがん(二次がん)を発症するリスクが高い可能性のあることが、英ケンブリッジ大学公衆衛生学・プライマリケア学部のAntonis Antoniou氏らによる研究で示された。Antoniou氏らは、乳がんサバイバーが実際に二次がんを発症する絶対リスクは低いことを強調しつつも、乳がんの罹患歴がない人と比べた場合の相対リスクは高いことが明らかになったと述べている。詳細は、「The Lancet Regional Health - Europe」に4月24日掲載された。Antoniou氏は、「この研究は、乳がんサバイバーの二次がん発症リスクについて調べた、これまでで最大規模のものだ」と説明している。 Antoniou氏らは今回、英国のがん登録データ(National Cancer Registration Dataset;NCRD)などを用いて、1995年1月1日から2019年12月31日の間に初めて乳がんと診断された女性58万1,403人と男性3,562人の乳がんサバイバーのデータを分析した。 Antoniou氏らはまず、最初に乳がんと診断されたときにはがんがなかった側(対側)の乳房に新たにがんが見つかるリスクを調べた。その結果、乳がんサバイバーでは、乳がんの罹患歴がない人に比べて対側の乳房に乳がんが発生するリスクが、女性では約2倍〔標準化罹患比(SIR)2.02、95%信頼区間(CI)1.99〜2.06〕、男性では約55倍(同55.4、35.5〜82.4)であることが示された。他のがん種に関しては、乳がんサバイバーの女性では乳がんの罹患歴がない女性と比べて子宮体がんの発症リスクが87%、骨髄性白血病の発症リスクが58%、卵巣がんの発症リスクが25%高かった。 さらに、乳がん診断時の年齢も二次がん発症リスクに関係することが明らかになった。乳がん診断時の年齢が50歳以上だった女性では、対側の乳房の乳がんも含めたあらゆる二次がんを発症するリスクは17%(SIR 1.17、95%CI 1.16〜1.18)の上昇にとどまっていたが、診断時の年齢が50歳未満の女性ではそのリスクは86%(同1.86、95%CI 1.82〜1.90)高いことが示された。乳がん診断時の年齢がその後の二次がんリスクに関係する理由についてAntoniou氏らは、若いときに乳がんを発症する女性は、より高年齢で乳がんを発症する女性と比べてBRCA1/2のようながん関連遺伝子の病原性変異体の割合が高く、また、これらの変異体を持つ女性では、対側の乳房の乳がんを始め卵巣がん、膵臓がんなどの発症リスクが高まるとの報告のあることに言及している。 このほか、社会経済的な状況も二次がんの発症リスクに関係している可能性のあることが示唆された。例えば、社会経済的に最も貧しい地域に住む乳がんサバイバーの女性では、最も豊かな地域に住む乳がんサバイバーの女性と比べて二次がんを発症するリスクが35%高いことが示された。 研究論文の筆頭著者であるケンブリッジ大学のIsaac Allen氏は、「この研究結果は、社会経済的に不利な状況に置かれた人が経験する健康格差の存在を裏付けるさらなるエビデンスとなるものだ」と指摘。その上で、「何らかの介入によってこのような二次がんリスクを低下させるため、これらの人で二次がんリスクが高い理由を完全に理解する必要がある」と述べている。

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ゴルフや水泳がALSリスクを上昇させる?

 ゴルフ、ガーデニングや庭仕事、木工、狩猟などの余暇活動は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症リスク上昇と関連している可能性があるという研究結果が、「Journal of the Neurological Sciences」2月15日号に掲載された。 米ミシガン大学アナーバー校のStephen A. Goutman氏らは、ALS患者400人と健康対照者287人を対象に、趣味、運動、余暇活動に関連するリスクを調査した。 解析の結果、ALS診断の5年前にゴルフ(オッズ比3.48)、レクリエーションダンス(同2.00)、ガーデニングや庭仕事(同1.71)をしていたことが、ALSに関連するリスクであることが分かった。リスクと関連したその他の曝露には、個人または家族での木工活動参加(同1.76、2.21)、個人での狩猟や射撃への参加(同1.89)があった。ALSの生存および発症に関連する曝露はなかった。発症年齢の早さは、診断の5年前の水泳(3.86歳)および重量挙げ(3.83歳)と関連していた。女性では、ALSと有意な関連を示した余暇活動はなかった。 Goutman氏は、「製造業や貿易業に従事しているなどの職業的リスク因子が、ALSのリスク上昇に関連していることはすでに知られているが、余暇活動もこの疾患にとって、重要かつ修正可能なリスク因子である可能性があることを示す文献が増えている」と述べる一方、患者にこれらの活動をやめるよう助言するのは時期尚早である、との注意を促した。

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“ロコトレ”とは?(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者医師患者医師患者“ロコトレ”ってどんな運動ですか?片足立ちとスクワットのことです。片足立ちはバランス能力をつける運動ですが、ポイントがあります。ちょっと立ってもらえますか? 眼を開けてしっかり立ちます。転倒しないようにテーブルに手をついておいてください。(開眼と転倒予防について説明)…こんな感じですか?画 いわみせいじそうです。次に、床につかない程度に左足を上げます。これを1分間。次に、右足を上げて1分間。これで1セットです。(片足立ちの方法について説明)結構簡単にできますね。これを1日に何回やればいいですか?慣れてきたら、1日に3セットをお願いします。毎日、続けるとバランス能力がついて転倒しにくくなることが期待できますよ。なるほど。けど、毎日は続くかなぁ…。(不安そうな声)カレンダーに〇をつけるといいですよ! 1セットしたら1つ〇とかね。なるほど。3セットできたら、三重丸の花丸にします!(うれしそうな表情)ポイント診察室で実践してもらい、自宅でも簡単にできることを説明します。カレンダーの活用など、ロコトレを毎日続けるコツも伝えましょう。Copyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ChatGPTと暮らす日々【Dr. 中島の 新・徒然草】(529)

五百二十九の段 ChatGPTと暮らす日々天気が目まぐるしく変化しています。晴れている日はこれ以上ない青い空。一方、雨の日はなんだか鬱陶しくて気が滅入ってしまいます。さて、今回はChatGPTについて。かなり前に無料の3.5から有料の4.0に変更しました。そうすると何だか使わないと損するみたいな気になります。ということで、今は毎日のように使っています。で、だんだん付き合い方というか距離感がわかってきました。ChatGPTに何を期待していいのか、何を期待してはならないのか。3.5から4.0に変わって、多少は回答の精度が上がったような気がします。前の3.5は、素人でもわかるような間違いが散見されました。それを指摘すると、丁寧な言葉遣いで別の誤答を出してきて疲れてばかり。良いところといえば、何を尋ねても何らかの返事があるところですね。一方、4.0のほうは「松竹梅」で言えば「竹」程度の回答です。診断に困る症例のことを相談しても、通り一遍の答えしか返ってきません。が、自分が知らない分野について尋ねてみると、ほどほどの回答を得ることができます。その中の疑問の部分を「もう少し説明を」というと、さらに詳しく説明してくれます。簡単に言えば、双方向性のウィキペディアみたいなものかもしれません。このような限界を知った上で、ChatGPTの得意分野を活用するのが良さそうです。ChatGPTの良さを実感できる場面の1つは、文章を書いていて、良い表現を思い付かないときですね。たとえば「感染性心内膜炎と細菌性動脈瘤は感染症界の二大ラスボスだ」みたいなことを書いているとき。「二大ラスボス」というのは何と言ったらいいのでしょうか?こういうときに、ChatGPTに「同じような意味の言葉を20個考えてください」というと、瞬時に20個挙げてくれます。実際にやってみるとこんな提案をしてくれました。致死的双璧最凶二病死を招く二大巨頭二大終焉導師致死率の双子星死を司る双頭の鷲……などなど玉石混交というか、そのままでは使いにくい気もします。文脈に合っていそうなのは「恐怖のツートップ」か「二大災厄」あたりでしょうか。ピッタリのものがなかったときは、提案された中の前半と後半をうまくつなげて使うというのもアリですね。エッセイのタイトルを考えてもらうのも良さそうに思います。前々回の「洗脳事件の謎解き」のときも、内容を伝えてタイトルを10個考えてもらいました。同窓会の風景思い出の確認昭和の日の語り故郷の再発見忘れられたクラスメイト洗脳事件の真実……などこれまた出来不出来が激しかったわけですが、ChatGPTとのしばらくのやり取りの後に「洗脳事件の謎解き」とした次第です。当たり前ですが、やはりChatGPTが得意なのは英語です。日本語に相応しい英単語を挙げるなどというのは、類語辞典よりも良いかもしれません。「“That CT scan depicted the lesion.” の “depict” を他の英単語に置き換えるとすると、どのようなものがありますか? 10個挙げてください」というプロンプトを入れると、たちまち10個挙げてくれました。showillustraterevealdisplaydemonstratepresentportrayexhibitvisualizehighlight素晴らしい!結局、ChatGPTにも得意不得意があるので、不得意な分野で期待し過ぎてもガッカリするだけです。一方、得意分野にはこれ以上ないほど頼もしい味方だといっても過言ではありません。実際に使っている方や、これから使ってみようと思っている読者の皆さまの参考になれば幸いです。最後に1句五月雨や 試行錯誤の AIぞ

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クラミジアワクチン、初期臨床試験で好成績

 クラミジアワクチンに関する初期の臨床試験において、ワクチン接種者に免疫反応が誘導され、安全性も確認されたことが報告された。研究者の間では、将来、このワクチンが性感染症(STI)の蔓延を抑えるのに役立つことへの期待が高まっている。Statens Serum Institut(国立血清学研究所、デンマーク)のJes Dietrich氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Infectious Diseases」に4月11日掲載された。 米疾病対策センター(CDC)によると、クラミジアは米国で最も一般的な細菌性STIであるが、現時点では、クラミジアに対して有効なワクチンは存在しない。全米性感染症科長連合会(National Coalition of STD Directors;NCSD)の事務局長であるDavid Harvey氏は、NBCニュースに対し、「米国でのSTIの感染率は、1950年代以来、おそらくはそれ以前から、非常に高い」と指摘し、「クラミジアワクチンは切実に必要とされている」と話す。 また、米ワイル・コーネル・メディスン人口健康科学教授であるJay Varma氏は、「クラミジアは、依然として女性の不妊症の最も一般的な原因の一つである」とNBCニュースに語っている。クラミジアを治療しないまま放置すると、骨盤内炎症性疾患が引き起こされ、妊娠しにくくなる可能性がある。さらにクラミジアは眼感染症を引き起こすこともあり、世界中で190万人の失明や視力障害の原因となっている。 今回報告された第1相試験では、健康な男性および妊娠していない女性65人(18〜45歳)を、異なる用量のクラミジアワクチン(CTH522)を2種類のリポソームアジュバント製剤(CAF01、CAF09b)のいずれかと組み合わせて筋肉内投与する5つの群(A〜E群)とプラセボのみを投与する群(F群)にランダムに割り付けた。CTH522の用量は、A〜C群およびE群で85μg、D群で15μgであり、アジュバントとしてA〜D群はCAF01、E群はCAF09bを用いた。これらの6群は、28日目と112日目に筋肉内、皮下、または点眼の投与方法で2回の追加接種を受け、さらに140日目には、免疫応答のリコールのためにワクチンまたはプラセボの点眼投与を受けた。 最終的に60人(平均年齢26.8歳、女性52%、白人71%)が試験を完了した。有害作用は865件報告されたが、重症度がグレード3(重症)だったのは7件(1%)のみで、それ以外は全て軽度から中等度であった。A〜E群では42日目までに全ての参加者で抗体陽転(セロコンバージョン)率が4倍以上に達したのに対し、F群ではセロコンバージョンは確認されなかった。CTH522に対する血清IgG抗体価は、CTH522を85μg投与した群の方が15μgを投与した群よりも高かったが、有意差は認められなかった。また、85μgのCTH522-CAF01を3回投与した群と85μgのCTH522-CAF09bを3回投与した群との間にも、抗体価に有意な差は認められなかった。 以上のような有望な結果が得られたものの、解決すべき疑問はまだ多く残されている。例えば、本研究には関与していない、米ワシントン大学医学部教授のHilary Reno氏はNBCニュースに対し、「このワクチンに、クラミジア感染を食い止める力はあるのだろうか。それとも、感染しても無症候性である可能性が高いということなのか」と疑問を呈した上で、「こうしたことが、次の段階の試験で検討されることになるだろう」と話している。 研究グループは、すでにワクチンの有効性を評価する大規模な第2相試験の開始を予定している。Dietrich氏は、「将来的には、このワクチンにより生殖器と目の両方の感染を予防できるようにしたいものだ」との希望を語っている。

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2016年から2020年にかけてスクーターによる外傷の発生率が上昇

 スクーターによる外傷の発生率は2016年から2020年にかけて上昇し、スクーターによる外傷で小手術を受ける患者が増加したとの研究結果が、「Journal of the American College of Surgeons」に1月9日掲載された。 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイヴィッド・ゲフィン医科大学院のNam Yong Cho氏らは、全米入院患者サンプル(NIS)から2016~2020年のデータを用いて、スクーターまたは自転車による外傷で入院した65歳未満の患者を対象に後ろ向きコホート研究を行い、スクーターによる入院の時間的傾向および転帰を自転車と比較した。 研究対象者は合計9万2,815人であり、6.6%がスクーターによる外傷であった。研究期間中、スクーターによる外傷の発生率は上昇し、スクーターによる外傷の重症度は有意に上昇していた。スクーターによる外傷は自転車による外傷と比べ、18歳未満の患者の割合が高く(26.7%対16.4%)、小手術を受ける患者の割合が高かった(55.8%対48.1%)。また、リスク因子を調整した後、スクーターによる外傷は、長管骨骨折および麻痺のリスク上昇と関連していた(自転車による外傷と比較したオッズ比:それぞれ1.40および2.06)。自転車による外傷とスクーターによる外傷で、入院期間および費用は同程度であった。 著者らは、「スクーターの普及とそれに伴う外傷の発生を考慮すると、スクーター利用者の安全基準を高めることが不可欠である」と述べている。

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腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応【1分間で学べる感染症】第3回

画像を拡大するTake home message髄膜炎を疑った際には頭部CT検査の適応を速やかに判断し、髄液検査を遅らせないようにしよう。腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応は6つの項目「PUNISH」で覚えよう。細菌性髄膜炎の初期対応に関しては、研修医を含め、救急外来や内科外来で働くあらゆる医師にとって必須の項目です。それでは、どのような状況で頭部CT検査を検討すればよいのでしょうか。最も重要なこととしては、頭部CT検査の適応を迅速に判断し、髄液検査を遅らせないことです。ここでは、腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応として、6つの項目を「PUNISH」で覚えましょう。PPapilledema 乳頭浮腫UUnconsciousness/abnormal level of consciousness 意識レベル低下NNeurologic deficit (focal) 局所神経障害IImmunocompromised state HIVや免疫抑制剤、移植後などを中心とした免疫不全の患者SSeizure 1週間以内の新規けいれん発症HHistory of CNS disease 頭蓋内占拠性病変や脳卒中、感染などの中枢神経病変の既往がある場合頭蓋内圧が亢進している場合、腰椎穿刺により脳ヘルニアを引き起こす可能性があるため注意が必要です。しかし、頭部CTで異常所見がないからといって安心するのではなく、不規則な呼吸や乳頭浮腫などの脳幹徴候を認めた場合は腰椎穿刺を避けるようにしましょう。1)Hasbun R, et al. N Engl J Med. 2001;345:1727-1733.2)Gopal AK, et al. Arch Intern Med. 1999;159:2681-2685.3)Tunkel AR, et al. Clin Infect Dis. 2004;39:1267-1284.

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マジックマッシュルーム成分の抗うつ効果は?~メタ解析/BMJ

 数種類のキノコに含まれるセロトニン作動性の幻覚成分であるpsilocybinの抗うつ治療効果を検証するため、英国・オックスフォード大学のAthina-Marina Metaxa氏らは、これまで発表された研究論文についてシステマティック・レビューとメタ解析を行った。うつ症状の測定に自己報告尺度を用いており、以前に幻覚剤を使用したことがある二次性うつ病患者において、psilocybinの治療効果は有意に大きかったという。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、抗うつ薬としてのpsilocybinの治療可能性を最大化する因子を明らかにする必要がある」と述べている。近年、うつ病治療の研究は、古典的な抗うつ薬の欠点がなく強力な抗うつ作用を示す幻覚剤に焦点が当てられており、psilocybinもその1つに含まれる。直近の10年間に、複数の臨床試験、メタ解析、システマティック・レビューが行われ、そのほとんどにおいてpsilocybinに抗うつ効果がある可能性が示されたが、うつ病のタイプ、幻覚剤の使用歴、投与量、アウトカム尺度、出版バイアスなど、psilocybinの効果に作用する可能性がある因子については調査されていなかった。BMJ誌2024年5月1日号掲載の報告。メタ解析で、psilocybinの有効性をプラセボまたは非向精神薬と比較 研究グループは、psilocybinの抗うつ薬としての有効性をプラセボまたは非向精神薬と比較し明らかにするため、システマティック・レビューとメタ解析で検証した。 5つの出版文献データベース(Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embase、Science Citation Index、Conference Proceedings Citation Index、PsycInfo)、4つの非出版・国際的文献データベース(ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform、ProQuest Dissertations and Theses Global、PsycEXTRA)、手動検索による参考文献リスト、カンファレンス議事録および要約をデータソースとした。 適格としたのは、臨床的に重大なうつ症状を有する成人に対し単独治療としてpsilocybinが投与され、症状の変化を臨床医による検証済み評価尺度または患者の自己報告尺度を用いて評価した無作為化試験。指示的心理療法を有する試験は、介入条件と対照条件の両方に心理療法の要素が認められた場合に包含した。参加者は、併存疾患(がんなど)に関係なく、うつ病を有する場合に適格とした。 治療効果に作用する可能性のある因子として、うつ病のタイプ(原発性または二次性)、幻覚剤の使用歴、psilocybin投与量、アウトカム尺度のタイプ(臨床医による評価または患者の自己報告)、個人の特性(年齢、性別など)を抽出。データはランダム効果メタ解析モデルを用いて統合し、観察された不均一性および共変量の効果をサブグループ分析とメタ回帰法で調べた。小さなサンプル効果、包含した試験間のサンプルサイズの実質的な差を示すため、Hedges' gを用いて治療効果サイズを評価した。psilocybinに有意な有益性あり、エビデンスの確実性は低い 包含した9試験のうち7試験の被験者436例(女性228例、平均年齢36~60歳)を対象としたメタ解析で、対照治療群と比較したうつ病スコアの変化において、psilocybinの有益性が有意であることが示された(Hedges' g=1.64、95%信頼区間[CI]:0.55~2.73、p<0.001)。 サブグループ解析およびメタ回帰法により、二次性うつ病であること(Hedges' g=3.25、95%CI:0.97~5.53)、Beck depression inventoryのような自己報告うつ病スケールで評価されていること(3.25、0.97~5.53)、高齢で幻覚剤使用歴があること(それぞれのメタ回帰係数:0.16[95%CI:0.08~0.24]、4.2[1.5~6.9])が、症状の大幅な改善と関連していた。 すべての試験は、バイアスリスクが低かったが、ベースライン測定値からの変化は高い不均一性と小規模試験のバイアスリスクと統計学的に有意に関連しており、エビデンスの確実性は低かった。

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CABGで女性の死亡率が男性よりも高い理由とは?

 男性よりも女性の方が冠動脈バイパス術(CABG)の生存率が低いことは以前から知られていたが、その理由は不明だった。こうした中、米ワイル・コーネル・メディスン心臓胸部外科分野教授のMario Gaudino氏らが、その説明となり得る研究結果を報告した。その研究によると、女性は男性よりも手術中に貧血に陥りやすく、それが死亡リスクの上昇につながっている可能性が示されたという。この研究結果の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」に3月5日掲載された。研究グループは、「この結果を受け、CABGを受ける女性患者の生存率を高める安全策に拍車がかかるはずだ」と述べている。 この研究は、米国胸部外科学会がまとめたデータベース(The Society of Thoracic Surgeons Adult Cardiac Surgery Database)から抽出した、2011年から2022年の間に初めてCABGを受けた成人患者143万4,225人(女性34万4,357人)を対象に、手術(CABG)中の貧血、死亡、および性別の関係を調べたもの。主要アウトカムとした手術死亡率に対する女性の性別の影響を寄与リスク(AR)として算出し、さらに、手術中の貧血がこの関係をどの程度媒介しているかも検討した。 その結果、女性は男性よりも手術中の最低ヘマトクリット値(中央値)が低く(22.0%対27.0%)、手術死亡率が高いことが明らかになった(2.8%対1.7%、P<0.001、調整オッズ比1.36、95%信頼区間1.30〜1.41)。女性の性別のARは1.21(95%信頼区間1.17〜1.24)であったが、手術中の最低ヘマトクリット値で調整すると、1.12(同1.09〜1.16)まで43%低下した。媒介分析からは、手術中の貧血が、女性の性別と関連する手術死亡リスクの38.5%を媒介していることが示された。 こうした結果を受けて研究グループは、出血を最小限に抑えることが、「CABGを受ける女性の手術死亡率を改善し、性差を縮小するための実行可能な目標だ」と主張している。 研究グループによると、CABG中の患者の生命を維持する人工心肺装置では、血液を希釈して体外循環させるため、ある程度の貧血はつきものだと説明する。しかし、女性は概して男性よりも体格が小さく、また、CABG前の赤血球数も男性より少ない傾向があるため、手術中に貧血を起こしやすいのだという。 ただし、この研究は、手術中の貧血が女性の生存率を低下させる主因であることを決定的に証明するために実施されたものではない。それでも研究グループは、女性患者の生存率を向上させるためにもっと多くのことができるはずだと考えている。その例として、「例えば、回路の短い人工心肺装置を使用すれば、ポンプを作動させるのに必要な血液希釈液の量を制限することができる」と研究グループは話している。Gaudino氏は、このような介入の有効性を証明するための臨床試験が「喫緊に必要だ」と述べている。

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英語で「アレルギーはありますか」は?【1分★医療英語】第130回

第130回 英語で「アレルギーはありますか」は?《例文1》Are you allergic to any medication?(薬に対するアレルギーはありますか?)《例文2》What kind of reaction did you have?(どのような反応がありましたか?)《解説》医師でも看護師でも、患者さんにアレルギーを確認することが多いでしょう。聞き方はシンプルで、“Do you have any allergies?”というフレーズがよく使われますが、ポイントは発音です。日本語的に「アレルギー」と発音してしまうと、まず伝わりません。“allergy”は、カタカナにすると「アァレジー」というような発音になります。複数形では「アァレジーズ」です。最初の「ア」にアクセントがあることに注意しましょう。また、「○○にアレルギーがある」と言うときには、“allergic”という形容詞を使って、“be allergic to ○○”という表現を使うと便利です。ただし、形容詞になった際は「ア」ではなく「レ」にアクセントが来るのでその点も気を付けます。アレルギーがあると言われた場合には、“What kind of reaction did you have?”(どのような反応がありましたか?)や“When did that happen?”(それはいつ起こりましたか?)というような追加質問をして、詳細な情報を得ましょう。なお、日本で毎年春に問題になる花粉症は、英語で“pollen allergy”もしくは“hay fever”といいます。一緒に覚えておくと便利です。講師紹介

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ChatGPTは高齢患者のポリファーマシー対策に有用

 人工知能(AI)は、高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)対策に役立つ可能性のあることが、新たな研究で示唆された。OpenAI社の大規模言語モデル(LLM)であるChatGPTに高齢者の架空の投薬リストを評価させたところ、一貫して不必要な可能性のある薬の使用の中止を推奨したという。米ハーバード大学医学大学院のArya Rao氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Medical Systems」に4月18日掲載された。 Rao氏らによると、高齢者の40%以上が5種類以上の薬を処方されており、それが薬物相互作用のリスクを高めているという。このリスクは、不要な薬の処方をやめることで軽減されるが、そのための意思決定プロセスは複雑であり、時間もかかる。そのため、特に人手不足に直面していることの多いプライマリケア従事者をサポートする、効果的なポリファーマシー管理ツールが必要とされている。 今回の研究でRao氏らは、多剤を併用している同一の高齢患者に関する複数の臨床シナリオを作成し、ChatGPTの薬物削減を通じたポリファーマシー管理の性能についての評価を行った。それぞれのシナリオでは、心血管疾患の既往歴や日常生活動作(ADL)の障害の程度が異なっていた。薬の削減については、ChatGPTにイエス/ノーで回答させた。 その結果、患者に心血管疾患の既往歴がない場合には、ChatGPTは一貫して薬の削減を推奨することが明らかになった。一方、心血管疾患の既往歴がある場合には、ChatGPTはより慎重な姿勢を示し、患者の薬物療法の変更はしないと判断する傾向が認められた。いずれのケースでも、ADLの障害の重症度はChatGPTの意思決定に影響を与えていなかった。また、ChatGPTは、痛みについては考慮しない傾向や、スタチンや降圧薬などの種類の薬を削減するよりも痛み止めを削減することを推奨する傾向があることも示された。 このほか、同じシナリオを新しいチャットセッションで提示すると、ChatGPTの応答が異なることもあったという。研究グループはこの結果について、「モデルのトレーニングに使用された研究報告の中で、臨床上の減薬傾向が一貫していないことを反映している可能性がある」との見方を示している。 こうした結果を受けてRao氏は、「本研究結果は、高齢者に対する薬剤処方の安全性を確実なものにする上でAIベースのツールが重要な役割を果たし得ることを示唆している。ただし、医療上の意思決定の複雑さに対応できるよう、これらのツールを改良し続けることが不可欠だ」と述べている。 研究グループは、医師が患者の処方箋を管理するのはますます難しくなっていると指摘する。さまざまな専門医を受診するメディケア加入の高齢患者が増えている一方で、それらの患者の服薬管理はプライマリケア医に一任されているからだ。 論文の上席著者で、米Mass General Brigham放射線学部門のMarc Succi氏は、「このようなモデルの精度を高める上では注意が必要だが、AIによる服薬管理は、一般開業医の負担増を軽減するのに役立つ可能性がある」と話す。その上で同氏は、「服薬管理のために特別に訓練されたAIツールを使ってさらに研究を進めれば、高齢患者のケアを大幅に改善できるだろう」との見方を示している。

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看護師主導の多職種連携により高齢心不全患者の死亡率が低下

 高齢化により心不全の有病率は上昇し、マルチモビディティ(多疾患併存)の状態にある患者が増えている。このような患者を対象に、看護師が主導し多職種介入を行ったところ、死亡率が有意に低下したという結果が示された。これは大阪大学大学院医学系研究科老年看護学教室の竹屋泰氏、齊前裕一郎氏らによる研究結果であり、「American Heart Journal Plus: Cardiology Research and Practice」に1月20日掲載された。 異なる専門分野を有する医療従事者が関与する多職種連携は、患者に関わる職種の数が多い(multidisciplinary intervention)だけでは不十分で、多職種が互いに連携して協働する(interprofessional work)必要がある。看護師は、患者の疾患と生活の両方に携わり、24時間体制でケアを提供し、他の職種との関わりも多いことから、看護師主導による多職種連携の有効性についてはこれまでにも研究されている。しかし、複数の併存疾患を有し、複雑な管理を要する患者に対する効果は明らかになっていなかった。 そこで著者らは、急性期病院に入院し、チャールソン併存疾患指数(CCI)が2点以上の心不全患者を対象に、看護師主導による多職種連携の導入前後で患者の死亡率や緊急入院率を比較する後方視的症例対照研究を行った。導入後の2017年4月~2020年3月に入院した患者351人を多職種連携群、2014年4月~2016年3月の患者412人を通常ケア群とし、各群から年齢・性別・NYHA心機能分類でマッチングさせた200人ずつ(平均年齢80歳、男性62%)を評価対象とした。 導入された多職種連携は3ステップからなる。ステップ1では入院3日以内に看護師がスクリーニングを実施し、日常生活動作(ADL)低下リスク、在宅医療や福祉制度の必要性など、退院後の問題を評価。ステップ2はスクリーニング基準を満たす患者への標準的支援であり、入院7日以内に看護師が情報を収集。看護師がファシリテーターとなり多職種カンファレンスを行い、退院支援の必要性などを検討。退院目標を策定し、患者と家族の同意を得て、目標達成に向けて介入した。ステップ3は、標準的支援では不十分と看護師が判断した場合に実施し、看護師が必要と判断した多職種が関与。再入院のリスクが高い場合や在宅医療が必要な場合には、在宅医や訪問看護師と協働した。 対象患者のNYHA心機能分類の内訳は、クラスIが32.5%、クラスIIが46.5%、クラスIIIが20.5%、クラスIVが0.5%であり、CCIは平均6点だった。多職種連携群では通常ケア群と比べて、ポリファーマシー(6種類以上の薬剤を使用)および医療ソーシャルワーカーの関与の割合が有意に低く、訪問看護や在宅医への移行の割合が有意に高かった。要介護度や入院期間については両群間で有意差はなかった。 また、全ての死因による死亡リスクは、多職種連携群の方が通常ケア群よりも有意に低いことが明らかとなり(ハザード比0.45、95%信頼区間0.29~0.69)、退院後1年時点での死亡率には7%の有意差が認められた(9%対16%)。退院後6週間以内の緊急入院のリスクも、多職種連携群の方が有意に低かった(ハザード比0.16、95%信頼区間0.08~0.30)。 今研究における多職種介入の特長として著者らは、疾患に加え患者の生活機能に精通した看護師がファシリテーターとなり、適時適切な専門職と連携する、入院初期から退院まで、1人の入退院支援看護師が継続的に関与する、必要に応じ、患者の同意を得て地域の専門職と情報を共有・連携するといった、看護師主導の包括的な多職種連携を挙げている。研究の結論として、「看護師主導の多職種連携により、心不全と複数の併存疾患を有する患者の死亡率が低下する可能性がある」と述べている。

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マイナ保険証が患者を救う!?使ってもらうための実例紹介/日本健康会議

 昨年の7月にCareNet.comではマイナンバーカードの健康保険証利用の普及に先駆け、医師のマイナ保険証の取得率や自施設のカードリーダー設置率を調査した。その結果、「マイナンバーカードと保険証の連携手続きが済んでいる」と回答した医師は約6割にのぼり、カードリーダー設置率も6割を超えていた。ところが、国民のマイナ保険証利用率を直近の令和6年3月時点のデータで見ると、病院12.59%、歯科診療所10.27%、医科診療所5.22%、薬局4.17%と、今年12月に紙の保険証が廃止される状況下としてはなんとも心もとない。 そこで、医療機関、保険者、経済界の代表が集う日本健康会議がマイナ保険証の利用促進のため、4月26日に医療DX推進フォーラム『使ってイイナ!マイナ保険証』を開催。武見 敬三氏(厚生労働大臣)、齋藤 健氏(経済産業大臣) 、河野 太郎氏(デジタル大臣)らが「マイナ保険証利用促進宣言」を行い、これを皮切りに5~7月をマイナ保険証利用の集中取り組み月間として総力を挙げるという。 以下では病院、歯科診療所、薬局での具体的な取り組み事例を紹介する。病院の事例(島貫 隆夫氏:日本海総合病院 統括医療監) 床に案内レーンを設けることで、患者の身体状況やマイナンバーカードの所有状況に応じた受付ルートを案内。また、マイナンバーカードと診察券を一体化する取り組みを行っている。このほか、デジタルサイネージによるマイナンバーカードの利便性の紹介、マイナ保険証を持参していない人へのスタッフの声かけ、次回受診時に持参を促すチラシを配布し、利用率の向上に努めている。患者側のメリットとして、マイナンバーカードと診察券を一体化することで携行しているマイナンバーカード1枚で受付を済ませられる、などの声が寄せられた。一方、医療スタッフ側のメリットとして、▽マイナ保険証を利用してもらうことで常に正確な保険資格情報を得ることができる▽医事会計システムに取得情報を取り込むことで入力業務、確認業務が効率的になった▽高額療養費制度の限度額認定証の情報が常にアップデートされるため、口頭同意が不要となり入院時の手続きがスムーズになった、などが挙げられた。歯科診療所の事例(山上 博史氏:やまがみ歯科) 患者の医療情報を患者自身の治療に役立ててもらいたいという思いを持ち、カードリーダーを目立たせる位置に設置し、マイナ保険証持参のポスター掲示、スタッフによる声掛けなどを実施している。マイナ保険証利用によって▽アドレナリン禁忌患者への歯科麻酔薬の選択問題が解決できる▽抜歯時の出血を考慮した抗凝固療薬の服用状況の確認ができる▽鎮痛薬の重複処方を回避できる、といった処置に関わる問題が解消され、さらに受付業務上のメリットとして、▽保険証情報の入力時間の削減▽レセプト返戻数の減少▽保険証返却忘れの解消などを挙げた。薬局の事例(渡邊 大記氏:日本薬剤師会副会長) 主な取り組みとして、マイナンバーカードによる受付を明示、カードリーダー設置場所や投薬台に啓発用ポスターを掲示、待合でデジタルサイネージを活用など、患者の動線に応じた啓発を実践し、持参していない患者には薬剤交付時に啓発用チラシを交付している。薬局での大きなメリットは、患者の負担になりやすい聞き取り時間の短縮である。さらに、マイナンバーカード経由でこれまで見えなかった情報(入院中や院内投薬を含む使用薬剤の情報、特定健診の情報、医師からの診療情報)を把握することで、▽医療機関での院内処方の薬剤情報を確認することで、相互作用を回避できる▽特定健診情報を活用することで、薬剤服用によって期待される治療効果について、より適切な説明・指導を実施できる▽歯科の受診状況(麻酔使用の有無)が確認できる点を挙げた。 最後に、渡辺 俊介氏(日本健康会議 事務局長)は「質の高い医療を確保し、医療の適正化を図るためには医療DXに取り込むことが重要。今回の事例以外にも、東京慈恵会医科大学附属病院ではマイナンバーカード専用の会計レーンを設置し、待ち時間短縮の取り組みを行っている。利用推進と共に高齢者の不安を取り除きながらマイナ保険証が使いやすい環境を整えていきたい」と主催者代表として締めくくった。

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