サイト内検索|page:79

検索結果 合計:11797件 表示位置:1561 - 1580

1561.

過換気症候群の受診が多くなる・少なくなる気温は何℃?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第257回

過換気症候群の受診が多くなる・少なくなる気温は何℃?「今日は過換気症候群がたくさん来るわよ」と研修医の私に言った看護師さんがいました。彼女の予想どおり、その日の救急当直は過換気症候群の患者さんがたくさん受診しました。受診の予想なんてできるんだろうか…と思いながら幾星霜。それに言及してくれた論文が刊行されました。Wang J, et al. Impact of ambient temperature, diurnal temperature range on hyperventilation syndrome emergency admission: a time-series analysis in Beijing, China.BMJ Open. 2024 Feb 22;14(2):e080318.この研究では、北京赤十字救急センターにおいて、過換気症候群の緊急入院における周辺の温度と日内温度範囲の関連を調べることを目的としています。病名はICD-10で定義され、相対湿度、風速、降水量、季節性傾向、曜日を調整した曝露因子として、過換気症候群の搬送と周囲の温度・日内温度範囲との関連を調べました。その結果、驚くべきことに、周囲の温度と過換気症候群受診の間にはU字カーブが確認されたのです(図1)。画像を拡大する図1. 気温と過換気症候群の受診の関係(文献より日本語に翻訳して引用)(CC BY 4.0)過換気症候群のリスクは12℃で最小となりました。この過換気症候群の受診と気温のより強い関連は、女性と44歳以下で観察されました。また、気温の日内変動と過換気症候群受診の関係は逆U字カーブであることが示されました(図2)。とくに、気温変動が極端に小さい場合にはリスクは低くなるという結果でした。画像を拡大する図2. 日内気温変動と過換気症候群の受診の関係(文献より日本語に翻訳して引用)(CC BY 4.0)気温と過換気症候群の発生というのはいろいろな研究グループが調査しているようですが、この研究では12℃が受診頻度が低い、日内変動が小さいほど受診頻度が低いということが示されました。確たる理由はわかっていません。外部環境が落ち着いていると、比較的呼吸がラクなのかもしれません。夏や冬のように急激に気温が変化するタイミングで過換気症候群が起こりやすいのでしょうか。

1562.

マヨネーズをオリーブ油にすると認知症死亡が14%低下

 オリーブ油の摂取と認知症関連死亡との関連はわかっていない。今回、米国・Harvard T.H. Chan School of Public HealthのAnne-Julie Tessier氏らが、9万人超の前向きコホート研究を実施したところ、オリーブ油を1日7g超摂取する人は、まったく/ほとんど摂取しない人と比べて、食事の質によらず認知症関連死亡リスクが3割近く低いことがわかった。また、1日5gのマヨネーズを同量のオリーブ油に置き換えると、認知症関連死亡リスクが14%低下すると推定された。JAMA Network Open誌2024年5月6日号に掲載。 この前向きコホート研究は、Nurses' Health Study(NHS)の女性とHealth Professionals Follow-Up Study(HPFS)の男性を対象とし、ベースライン時に心血管疾患もしくはがんではなかった9万2,383人を28年間(1990~2018年)追跡した。オリーブ油摂取量は食物摂取頻度調査票で4年ごとに調査し、「摂取なし/月1回以下」「0g/日超4.5g/日以下」「4.5g/日超7g/日以下」「7g/日超」の4群に分類した。食事の質はAlternative Healthy Eating IndexとMediterranean Diet scoreに基づいた。認知症関連死亡は死亡記録から確認した。多変量Cox比例ハザード回帰を用いて、遺伝的因子・社会人口統計学的因子・生活習慣因子などの交絡因子で調整したハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・参加者9万2,383人のうち女性は6万582人(65.6%)、平均年齢は56.4歳だった。・28年(218万3,095人年)の追跡期間中、4,751人が認知症関連で死亡した。・アポリポ蛋白Eε4(APOEε4)対立遺伝子がホモ接合体の人は、認知症関連死亡リスクが5〜9倍高かった。・オリーブ油の7g/日超摂取は、摂取なし/月1回以下に比べて、認知症関連死亡リスクが28%低く(調整後統合HR:0.72、95%CI:0.64~0.81、傾向のp<0.001)、さらにAPOEε4で調整後も一貫していた。・食事の質による交互作用は認められなかった。・代替分析において、5g/日のマヨネーズを同量のオリーブ油に置き換えると認知症関連死亡リスクが14%(95%CI:7~20)低下し、5g/日のマーガリンを同量のオリーブ油に置き換えると8%(同:4~12)低下すると推定された。他の植物油やバターをオリーブ油に置き換えた場合は有意ではなかった。 著者らは「この結果は、心臓の健康だけでなく認知関連の健康のために、オリーブ油や他の植物油を選択する現在の推奨を広げるものだ」としている。

1563.

新生児の緊急挿管、ビデオ喉頭鏡vs.直接喉頭鏡/NEJM

 新生児の緊急挿管において、ビデオ喉頭鏡は直接喉頭鏡よりも初回挿管成功率が高いことが示された。アイルランド・National Maternity HospitalのLucy E. Geraghty氏らが、単施設無作為化臨床試験の結果を報告した。新生児に気管挿管を繰り返し試みることは有害事象の増加と関連しているが、臨床医が喉頭鏡で気道を直接観察する場合、初回挿管に成功する割合は半分以下とされている。ビデオ喉頭鏡は、ブレードの先端にカメラが付いており気道の様子が画面に映し出されることから、成人および小児では直接喉頭鏡を使用した場合より初回挿管成功率が高いことが報告されているが、新生児におけるビデオ喉頭鏡の有効性については不明であった。NEJM誌オンライン版2024年5月5日号掲載の報告。在胎週数不問の新生児への挿管、初回成功率を比較 研究グループは、分娩室または新生児集中治療室(NICU)で挿管を受ける新生児(在胎週数は不問)を、在胎週数(32週未満または32週以上)で層別化してビデオ喉頭鏡群または直接喉頭鏡群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、呼気二酸化炭素検出により判定した初回の挿管成功で、結果は割合(%)で示し、カイ二乗検定を用いて比較した。副次アウトカムは、挿管中の最低酸素飽和度、最低心拍数などであった。 2021年9月4日~2023年11月17日に226例の新生児が無作為化され、このうち臨床的改善が認められ挿管がされなかった1例、および最終的に同意が得られなかった11例を除く214例が解析対象となった。 214例のうち、63例(29%)は分娩室で、151例(71%)はNICUで挿管された。初回挿管成功率はビデオ喉頭鏡74%、直接喉頭鏡45% 初回挿管成功率は、ビデオ喉頭鏡群が107例中79例(74%、95%信頼区間[CI]:66~82)、直接喉頭鏡群が107例中48例(45%、35~54)であった(p<0.001)。 挿管成功までの試行回数中央値は、ビデオ喉頭鏡群1回(95%CI:1~1)、直接喉頭鏡群2回(1~2)であった。初回挿管成功までの時間中央値は、それぞれ61秒(95%CI:52~66)、51秒(43~60)。 また、初回挿管中の最低酸素飽和度の中央値は、ビデオ喉頭鏡群74%(95%CI:65~78)、直接喉頭鏡群68%(95%CI:62~74)であり、最低心拍数の中央値は、それぞれ153回/分(95%CI:148~158)、148回/分(140~156)であった。

1564.

超加工食品、摂取量が多いと死亡リスク増大~30年超の調査/BMJ

 超加工食品の摂取量が多いほど、がんおよび心血管疾患以外の原因による死亡率がわずかに高く、その関連性は超加工食品のサブグループで異なり、肉/鶏肉/魚介類をベースとした調理済みインスタント食品のサブグループでとくに強い死亡率との関連性が認められたという。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のZhe Fang氏らによる、追跡期間30年超のコホート研究で示された。超加工食品は健康に悪影響を及ぼすことが示唆されているが、長期間にわたり食事評価を繰り返し行う大規模コホートでの超加工食品摂取による死亡率への影響に関するエビデンスは限られていた。BMJ誌2024年5月8日号掲載の報告。米国の女性看護師と男性医療従事者、合計約11万4,000例を追跡 研究グループは、米国11州の女性正看護師が対象のNurses' Health Study(1984~2018年)、全50州の男性医療従事者が対象のHealth Professionals Follow-Up Study(1986~2018年)を基に、ベースラインでがん、心血管疾患、糖尿病の既往がない女性7万4,563例および男性3万9,501例を対象として、超加工食品の摂取と死亡との関連を調べた。 超加工食品の摂取量は、4年ごとに実施される食物摂取頻度調査で評価した。 主要アウトカムは全死因死亡、副次アウトカムはがん、心血管疾患、その他の原因(呼吸器疾患、神経変性疾患を含む)による死亡で、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて超加工食品摂取量との関連について、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定し評価した。がん、心血管疾患による死亡とは関連なし 追跡期間中央値34年間において、計4万8,193例(女性3万188例、男性1万8,005例)の死亡が記録された。死因別では、がん1万3,557例、心血管疾患1万1,416例、呼吸器疾患3,926例、神経変性疾患6,343例であった。 超加工食品摂取量の最低四分位範囲(中央値3.0サービング/日)群と比較して、最高四分位範囲(中央値7.4サービング/日)群では、全死因死亡リスクが4%高かった(HR:1.04、95%CI:1.01~1.07、傾向のp=0.005)。一方で、がん(0.95、0.91~1.00)ならびに心血管疾患(1.05、0.99~1.11)による死亡との関連は認められなかった。その他の原因による死亡リスクは9%有意に高かった(1.09、1.05~1.13、傾向のp<0.001)。 超加工食品摂取量の最低四分位範囲群および最高四分位範囲群の全死因死亡率は、それぞれ10万人年当たり1,472例および1,536例であった。 超加工食品のサブグループ別では、肉/鶏肉/魚介類をベースとした調理済みインスタント食品(加工肉など)が最も全死因死亡リスクとの関連が強く(HR:1.13、95%CI:1.10~1.16)、砂糖または人工甘味料入り飲料(1.09、1.07~1.12)、乳製品ベースのデザート(1.07、1.04~1.10)、全粒穀物を除く超加工パン・朝食用食品(1.04、1.02~1.07)も、全死因死亡リスクの増大と関連していた。 Alternative Healthy Eating Index-2010(AHEI-2010)スコアで評価した食事の質と超加工食品摂取量については、AHEIスコアの各四分位範囲内では超加工食品の摂取量と死亡率との間に一貫した関連は観察されなかったが、超加工食品摂取量の各四分位範囲内では、食事の質と死亡率との間に逆相関が認められた。

1565.

乳がんサバイバー、二次がんの発症リスク増か

 乳がんサバイバーは、その後、再発ではなく新たに別のがん(二次がん)を発症するリスクが高い可能性のあることが、英ケンブリッジ大学公衆衛生学・プライマリケア学部のAntonis Antoniou氏らによる研究で示された。Antoniou氏らは、乳がんサバイバーが実際に二次がんを発症する絶対リスクは低いことを強調しつつも、乳がんの罹患歴がない人と比べた場合の相対リスクは高いことが明らかになったと述べている。詳細は、「The Lancet Regional Health - Europe」に4月24日掲載された。Antoniou氏は、「この研究は、乳がんサバイバーの二次がん発症リスクについて調べた、これまでで最大規模のものだ」と説明している。 Antoniou氏らは今回、英国のがん登録データ(National Cancer Registration Dataset;NCRD)などを用いて、1995年1月1日から2019年12月31日の間に初めて乳がんと診断された女性58万1,403人と男性3,562人の乳がんサバイバーのデータを分析した。 Antoniou氏らはまず、最初に乳がんと診断されたときにはがんがなかった側(対側)の乳房に新たにがんが見つかるリスクを調べた。その結果、乳がんサバイバーでは、乳がんの罹患歴がない人に比べて対側の乳房に乳がんが発生するリスクが、女性では約2倍〔標準化罹患比(SIR)2.02、95%信頼区間(CI)1.99〜2.06〕、男性では約55倍(同55.4、35.5〜82.4)であることが示された。他のがん種に関しては、乳がんサバイバーの女性では乳がんの罹患歴がない女性と比べて子宮体がんの発症リスクが87%、骨髄性白血病の発症リスクが58%、卵巣がんの発症リスクが25%高かった。 さらに、乳がん診断時の年齢も二次がん発症リスクに関係することが明らかになった。乳がん診断時の年齢が50歳以上だった女性では、対側の乳房の乳がんも含めたあらゆる二次がんを発症するリスクは17%(SIR 1.17、95%CI 1.16〜1.18)の上昇にとどまっていたが、診断時の年齢が50歳未満の女性ではそのリスクは86%(同1.86、95%CI 1.82〜1.90)高いことが示された。乳がん診断時の年齢がその後の二次がんリスクに関係する理由についてAntoniou氏らは、若いときに乳がんを発症する女性は、より高年齢で乳がんを発症する女性と比べてBRCA1/2のようながん関連遺伝子の病原性変異体の割合が高く、また、これらの変異体を持つ女性では、対側の乳房の乳がんを始め卵巣がん、膵臓がんなどの発症リスクが高まるとの報告のあることに言及している。 このほか、社会経済的な状況も二次がんの発症リスクに関係している可能性のあることが示唆された。例えば、社会経済的に最も貧しい地域に住む乳がんサバイバーの女性では、最も豊かな地域に住む乳がんサバイバーの女性と比べて二次がんを発症するリスクが35%高いことが示された。 研究論文の筆頭著者であるケンブリッジ大学のIsaac Allen氏は、「この研究結果は、社会経済的に不利な状況に置かれた人が経験する健康格差の存在を裏付けるさらなるエビデンスとなるものだ」と指摘。その上で、「何らかの介入によってこのような二次がんリスクを低下させるため、これらの人で二次がんリスクが高い理由を完全に理解する必要がある」と述べている。

1566.

ChatGPTと暮らす日々【Dr. 中島の 新・徒然草】(529)

五百二十九の段 ChatGPTと暮らす日々天気が目まぐるしく変化しています。晴れている日はこれ以上ない青い空。一方、雨の日はなんだか鬱陶しくて気が滅入ってしまいます。さて、今回はChatGPTについて。かなり前に無料の3.5から有料の4.0に変更しました。そうすると何だか使わないと損するみたいな気になります。ということで、今は毎日のように使っています。で、だんだん付き合い方というか距離感がわかってきました。ChatGPTに何を期待していいのか、何を期待してはならないのか。3.5から4.0に変わって、多少は回答の精度が上がったような気がします。前の3.5は、素人でもわかるような間違いが散見されました。それを指摘すると、丁寧な言葉遣いで別の誤答を出してきて疲れてばかり。良いところといえば、何を尋ねても何らかの返事があるところですね。一方、4.0のほうは「松竹梅」で言えば「竹」程度の回答です。診断に困る症例のことを相談しても、通り一遍の答えしか返ってきません。が、自分が知らない分野について尋ねてみると、ほどほどの回答を得ることができます。その中の疑問の部分を「もう少し説明を」というと、さらに詳しく説明してくれます。簡単に言えば、双方向性のウィキペディアみたいなものかもしれません。このような限界を知った上で、ChatGPTの得意分野を活用するのが良さそうです。ChatGPTの良さを実感できる場面の1つは、文章を書いていて、良い表現を思い付かないときですね。たとえば「感染性心内膜炎と細菌性動脈瘤は感染症界の二大ラスボスだ」みたいなことを書いているとき。「二大ラスボス」というのは何と言ったらいいのでしょうか?こういうときに、ChatGPTに「同じような意味の言葉を20個考えてください」というと、瞬時に20個挙げてくれます。実際にやってみるとこんな提案をしてくれました。致死的双璧最凶二病死を招く二大巨頭二大終焉導師致死率の双子星死を司る双頭の鷲……などなど玉石混交というか、そのままでは使いにくい気もします。文脈に合っていそうなのは「恐怖のツートップ」か「二大災厄」あたりでしょうか。ピッタリのものがなかったときは、提案された中の前半と後半をうまくつなげて使うというのもアリですね。エッセイのタイトルを考えてもらうのも良さそうに思います。前々回の「洗脳事件の謎解き」のときも、内容を伝えてタイトルを10個考えてもらいました。同窓会の風景思い出の確認昭和の日の語り故郷の再発見忘れられたクラスメイト洗脳事件の真実……などこれまた出来不出来が激しかったわけですが、ChatGPTとのしばらくのやり取りの後に「洗脳事件の謎解き」とした次第です。当たり前ですが、やはりChatGPTが得意なのは英語です。日本語に相応しい英単語を挙げるなどというのは、類語辞典よりも良いかもしれません。「“That CT scan depicted the lesion.” の “depict” を他の英単語に置き換えるとすると、どのようなものがありますか? 10個挙げてください」というプロンプトを入れると、たちまち10個挙げてくれました。showillustraterevealdisplaydemonstratepresentportrayexhibitvisualizehighlight素晴らしい!結局、ChatGPTにも得意不得意があるので、不得意な分野で期待し過ぎてもガッカリするだけです。一方、得意分野にはこれ以上ないほど頼もしい味方だといっても過言ではありません。実際に使っている方や、これから使ってみようと思っている読者の皆さまの参考になれば幸いです。最後に1句五月雨や 試行錯誤の AIぞ

1567.

第97回 生成AIを使う医師が急増

シンギュラリティ到来かすでに医師の多くは生成AIを日常的に使っているようで、自分より若い医師と話をすると「こんな使い方もあるのか」と感心することが増えています。私は、時短で生活することを目標としていて、そのために毎日時短が可能な方法を夜遅くまで模索しているという、矛盾した状況にあります。…私への「働き方改革」の到来はまだか!生成AIは、この負の螺旋に対して福音となる存在で、「これで仕事がラクになるぜ!」と期待している医師たちが多いと思います。実際に活用できている医師はまだそう多くない印象ですが、これは業務内容があまりに専門的過ぎるからです。ストーリーテラーのようなレビューを紡ぎ出す人から、ゲノムシークエンスしている人まで、対象者の振れ幅が大き過ぎるので、「医師にも超オススメ!」と断言しにくい背景もあります。とはいえ、医学の世界においてもAIの登場は割とシンギュラリティ(技術的特異点)に近い時期に来ていると思っていて、トップジャーナルにおいてもAIに関する論文のアクセプトが増えてきました。生成AIについては1年前までは「まーこんなもんかな」と思いながら使っていましたが、サブスクリプションが当たり前になっている現代、将来的に医師生活を一変させるツールであることは確信しています。現状、月1万円くらいは生成AIに支払っています。「インターネット」が登場したときと同じ生成AIといっても、いろいろなものがあります。ChatGPTが有名ですが、この中で使える言語モデルが日々進化を遂げています。現在GPT-4oというモデルが使用できます。GPTの対抗馬としてAnthropic社のClaude3があります。1つの会社が新しい特色を打ち出してくると、別の会社がそれに対抗して…ということで、令和AI合戦になっています。どれと契約してよいかわからないということで、複数の言語モデルをまとめて使えるPerplexityが人気です。何かの作業をさせるというよりも、「対話型検索エンジン」という位置付けを目指しているサービスと理解してください。簡単に言うと、Google検索の座を奪おうとしているわけです。使いやすさもあってか、最近、Perplexityを使っている医師がめちゃ多いです。誰か宣伝しているのかな…。各AIの有料版は、だいたい月20ドル必要になりますが、80ドルも100ドルも払うのはしんどいという人は、現状Perplexityの契約のみで様子をみてもよいかもしれません。インターネットが登場したとき、「なんだそれ」ということでなかなか中高年には受け入れられませんでした。その後、パソコンが使えない人たちが、窓際に追いやられていきました。あと数年で医師を引退するならば不要かもしれませんが、まだまだ医師を続ける予定ならば、少しAIを触っておいたほうがよいかもしれません。「AIすら触れない医師」のような立ち位置に将来ならないためにも…。実際の使い方については、またどこかでお話できたらと思います。

1568.

ASPECTS 0~5の広範囲脳梗塞にも血管内治療は有効か?/NEJM

 ベースラインでの梗塞サイズの上限を設けずに試験登録した急性期広範囲脳梗塞患者において、血栓除去術+内科的治療は内科的治療単独と比べて、良好な機能的アウトカムをもたらし、死亡率も低下したことが示された。ただし症候性脳出血の発生率は高かった。フランス・Hopital Gui de ChauliacのVincent Costalat氏らLASTE Trial Investigatorsが、多施設共同前向き非盲検無作為化試験「LASTE試験」の結果を報告した。梗塞サイズの上限を設けない急性期広範囲脳梗塞患者における血栓除去術の使用については、これまで十分に検証されていなかった。NEJM誌2024年5月9日号掲載の報告。ASPECTS≦5の急性期脳梗塞患者、血栓除去術併用vs.内科的治療単独を評価 研究グループは、発症後6.5時間以内に、MRIまたはCTで前方循環の近位主幹動脈閉塞による広範囲脳梗塞が認められた18歳以上の患者を対象とした。広範囲脳梗塞の定義は、Alberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score(ASPECTS、スコア範囲:0~10、低スコアほど梗塞が広範囲であることを示す)5以下とした。 適格患者を1対1の割合で、血栓除去術+内科的治療を受ける群(血栓除去群)または内科的治療のみを受ける群(対照群)に割り付け追跡評価した。 有効性の主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケールスコアとした(スコア範囲:0~6、高スコアほど障害が大きいことを示す)。安全性の主要アウトカムは、90日時点の全死因死亡とし、安全性の副次アウトカムは、無作為化後24時間以内の症候性脳出血などとした。90日時点の修正Rankinスケールスコア、4 vs.6で有意差あり 2019年4月~2022年3月に、フランスの24病院とスペインの6病院で、計333例が無作為化された(血栓除去群166例、対照群167例)。このうち9例は同意撤回または法的理由により除外され、324例を対象に解析が行われた(血栓除去群159例、対照群165例)。 両群のベースライン特性は類似しており、年齢中央値74歳、女性47.5%、ASPECTS中央値2(四分位範囲[IQR]:1~3)、ベースラインでの梗塞容積中央値135mL(IQR:106~185)であった。 本試験は、同様の試験で血栓除去群が優れているとの結果が示されため、早期に中止された。なお、本試験では患者の34.9%が血栓溶解療法を受けた。 90日時点の修正Rankinスケールスコア中央値は、血栓除去群4、対照群6であった(一般化オッズ比:1.63、95%信頼区間[CI]:1.29~2.06、p<0.001)。 90日時点の全死因死亡率は、血栓除去群36.1%、対照群55.5%であった(補正後相対リスク:0.65、95%CI:0.50~0.84、p<0.001)。一方で症候性脳出血の発生が、それぞれ9.6%、5.7%報告された(補正後相対リスク:1.73、95%CI:0.78~4.68)。血栓除去群において、手術に関連した合併症が11例報告された。

1569.

2型DM、メトホルミンに追加するなら?/BMJ

 日常診療における2型糖尿病患者の2次治療として、メトホルミンに追加する3種の一般的な経口血糖降下薬(SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬)の有効性を比較する検討が、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のPatrick Bidulka氏らにより行われた。SGLT2阻害薬は、SU薬およびDPP-4阻害薬と比較してHbA1c、BMI、収縮期血圧を低下させ、心不全による入院(対DPP-4阻害薬)および腎臓病の進行による入院(対SU薬)のリスクを抑制した。なお、その他の臨床エンドポイントでは差があるとのエビデンスは示されなかった。BMJ誌2024年5月8日号掲載の報告。SGLT2阻害薬vs.SU薬vs.DPP-4阻害薬、1年時点のHbA1c変化の絶対値を評価 研究グループは、有効性比較試験を模倣したコホート研究(target trial emulation)で、メトホルミンに追加する3種の一般的な経口血糖降下薬(SU薬、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬)の有効性を比較した。 2015~21年のイングランドにおけるプライマリケア、病院、死亡のデータを結び付け、メトホルミンにSU薬、DPP-4阻害薬またはSGLT2阻害薬を追加して経口血糖降下薬による2次治療を開始した、2型糖尿病の成人患者7万5,739例を対象とした。 主要アウトカムは、ベースラインからフォローアップ1年時点までのHbA1c変化の絶対値であった。副次アウトカムは、1年時点および2年時点のBMI、収縮期血圧、eGFRの変化、2年時点のHbA1cの変化、eGFRが40%以上低下するまでの期間、主要有害腎イベント、心不全による入院、主要有害心血管イベント(MACE)、全死因死亡などであった。操作変数法を用いて、ベースラインの欠測による交絡リスクを軽減して評価した。SGLT2阻害薬併用が、他の2種併用よりも優れる 7万5,739例が経口血糖降下薬による2次治療を開始した。SU薬追加は2万5,693例(33.9%、SU薬群)、DPP-4阻害薬追加は3万4,464例(45.5%、DPP-4阻害薬群)、SGLT2阻害薬追加は1万5,582例(20.6%、SGLT2阻害薬群)であった。 ベースラインからフォローアップ1年時点までのHbA1c低下の平均値は、SGLT2阻害薬群がDPP-4阻害薬群やSU薬群よりも大きく、SGLT2阻害薬がより有効であることが示された。操作変数解析後、HbA1c変化の平均群間差は、SGLT2阻害薬群vs.SU薬群が-2.5mmol/mol(95%信頼区間[CI]:-3.7~-1.3)、SGLT2阻害薬群vs.DPP-4阻害薬群は-3.2mmol/mol(-4.6~-1.8)であった。 BMIおよび収縮期血圧の低下においても、SGLT2阻害薬がSU薬またはDPP-4阻害薬よりも有効であることが示された。ただし、いくつかの副次エンドポイントで、SGLT2阻害薬がより有効であるとのエビデンスは示されなかった。たとえば、MACEに関するハザード比(HR)は、対SU薬で0.99(95%CI:0.61~1.62)、対DPP-4阻害薬で0.91(0.51~1.63)であった。 SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬(HR:0.32、95%CI:0.12~0.90)やSU薬(0.46、0.20~1.05)と比較して、心不全による入院のリスクを低下させた。 eGFR 40%以上低下について、SGLT2阻害薬がSU薬よりも保護効果があることが示された(HR:0.42、95%CI:0.22~0.82)。DPP-4阻害薬との比較では、推定HR(0.64、0.29~1.43)に高い不確実性が認められた。

1570.

クラミジアワクチン、初期臨床試験で好成績

 クラミジアワクチンに関する初期の臨床試験において、ワクチン接種者に免疫反応が誘導され、安全性も確認されたことが報告された。研究者の間では、将来、このワクチンが性感染症(STI)の蔓延を抑えるのに役立つことへの期待が高まっている。Statens Serum Institut(国立血清学研究所、デンマーク)のJes Dietrich氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Infectious Diseases」に4月11日掲載された。 米疾病対策センター(CDC)によると、クラミジアは米国で最も一般的な細菌性STIであるが、現時点では、クラミジアに対して有効なワクチンは存在しない。全米性感染症科長連合会(National Coalition of STD Directors;NCSD)の事務局長であるDavid Harvey氏は、NBCニュースに対し、「米国でのSTIの感染率は、1950年代以来、おそらくはそれ以前から、非常に高い」と指摘し、「クラミジアワクチンは切実に必要とされている」と話す。 また、米ワイル・コーネル・メディスン人口健康科学教授であるJay Varma氏は、「クラミジアは、依然として女性の不妊症の最も一般的な原因の一つである」とNBCニュースに語っている。クラミジアを治療しないまま放置すると、骨盤内炎症性疾患が引き起こされ、妊娠しにくくなる可能性がある。さらにクラミジアは眼感染症を引き起こすこともあり、世界中で190万人の失明や視力障害の原因となっている。 今回報告された第1相試験では、健康な男性および妊娠していない女性65人(18〜45歳)を、異なる用量のクラミジアワクチン(CTH522)を2種類のリポソームアジュバント製剤(CAF01、CAF09b)のいずれかと組み合わせて筋肉内投与する5つの群(A〜E群)とプラセボのみを投与する群(F群)にランダムに割り付けた。CTH522の用量は、A〜C群およびE群で85μg、D群で15μgであり、アジュバントとしてA〜D群はCAF01、E群はCAF09bを用いた。これらの6群は、28日目と112日目に筋肉内、皮下、または点眼の投与方法で2回の追加接種を受け、さらに140日目には、免疫応答のリコールのためにワクチンまたはプラセボの点眼投与を受けた。 最終的に60人(平均年齢26.8歳、女性52%、白人71%)が試験を完了した。有害作用は865件報告されたが、重症度がグレード3(重症)だったのは7件(1%)のみで、それ以外は全て軽度から中等度であった。A〜E群では42日目までに全ての参加者で抗体陽転(セロコンバージョン)率が4倍以上に達したのに対し、F群ではセロコンバージョンは確認されなかった。CTH522に対する血清IgG抗体価は、CTH522を85μg投与した群の方が15μgを投与した群よりも高かったが、有意差は認められなかった。また、85μgのCTH522-CAF01を3回投与した群と85μgのCTH522-CAF09bを3回投与した群との間にも、抗体価に有意な差は認められなかった。 以上のような有望な結果が得られたものの、解決すべき疑問はまだ多く残されている。例えば、本研究には関与していない、米ワシントン大学医学部教授のHilary Reno氏はNBCニュースに対し、「このワクチンに、クラミジア感染を食い止める力はあるのだろうか。それとも、感染しても無症候性である可能性が高いということなのか」と疑問を呈した上で、「こうしたことが、次の段階の試験で検討されることになるだろう」と話している。 研究グループは、すでにワクチンの有効性を評価する大規模な第2相試験の開始を予定している。Dietrich氏は、「将来的には、このワクチンにより生殖器と目の両方の感染を予防できるようにしたいものだ」との希望を語っている。

1571.

難治てんかんの治療、新たな標的を発見か

 難治てんかん患者に対し、海馬のfasciola cinereumと呼ばれる部位をほぼ全て摘出することで、てんかん発作が83%減少したとする研究結果を、米スタンフォード大学医学部脳神経外科・神経科学教授のIvan Soltesz氏らが、「Nature Medicine」に4月17日発表した。 この結果は、1カ月に1〜2回てんかん発作を起こしていた患者の発作回数が3カ月に1回程度に減ったことを意味する。研究グループは、「われわれの結果は、難治てんかん患者に対しては、一般的な脳の標的部位とともにfasciola cinereumも治療ターゲットにする必要性があることを示唆するものだ」との見方を示している。Soltesz氏は、「海馬は、脳の中では非常によく研究されている部位ではあるが、fasciola cinereumについて知られていることは驚くほど少ない」と話す。 薬が効かない難治てんかんに対しては、一般的に手術が行われる。内側側頭葉てんかんと呼ばれる一般的なタイプのてんかんでは、感情の処理に関与する扁桃体と、記憶の形成に必要な部位である海馬から発作が生じる。海馬は脳の各半球の耳の高さあたりの深部に位置し、その名が示す通り、タツノオトシゴに似た形状をしている。脳の構造は左右対称であるため扁桃体と海馬は左右両方にあるが、発作は片側の脳から起こることが多い。そのため、難治てんかんでは、脳に深部電極を埋め込んで脳波を計測する手術である定位的頭蓋内脳波(sEEG)により発作の原因部位を特定し、その部位を手術で摘出するか、レーザーで焼き切る(レーザーアブレーション)治療を行う。前述のように、扁桃体と海馬は脳の両側にあるため、片側の手術後も記憶を形成する能力は保たれ、通常、副作用が生じることもほとんどないと研究グループは説明する。 しかし、このような治療を施しても3分の1の確率で治療が奏効しない。その理由を解明するため、研究グループはまず、マウスを用いてsEEGによる脳の発作活動の詳細なマッピングを行った。その結果、海馬の先端(タツノオトシゴの尻尾に当たる部分)にあるfasciola cinereumでのニューロンの活動が、てんかん発作時に高まることが示された。そこで、発作が生じているときに光遺伝学の技術を使用してfasciola cinereumでのニューロンの活動を停止させると、発作の持続時間が短くなることが確認された。この結果について、論文の筆頭著者であるスタンフォード大学脳神経外科分野のRyan Jamiolkowski氏は、「この部位の発作を引き起こす活動が、治療がうまくいかない原因なのかもしれない」と話す。 次に研究グループは、6人のヒトてんかん患者に電極を埋め込み、脳内の発作活動のマッピングを行った。その結果、fasciola cinereumは、海馬の他の部分の活動が比較的低いときでも、全ての患者において発作に関与していることが明らかになった。対象患者の1人は、すでに左脳の扁桃体と海馬のレーザーアブレーションを受けていたが、それでも発作は続いていた。sEEGの結果、海馬の唯一残った部分であったfasciola cinereumが発作に関与していることが示された。そこで、レーザーアブレーションでこの部分を焼き切ったところ、発作が83%減少したという。 研究グループによると、海馬の形は湾曲しているが、レーザーアブレーションで使われる光ファイバーは形状が真っすぐであるため、fasciola cinereumが発作に関与している患者では、2回に分けて手術を受ける必要があるかもしれないという。Jamiolkowski氏は、構造全体を焼き切るには、「異なる経路によるアプローチが必要であり、1回の処置で終わらせることは現時点では不可能だ」と説明している。 また、両側の扁桃体と海馬から発作が生じる患者に対しても、fasciola cinereumを標的にできる可能性があるという。記憶を形成する能力を維持するために、このような患者に対しては、海馬に電気ショックを与える装置を埋め込み、発作が生じる前に抑え込む手法が考えられるのだという。Jamiolkowski氏は、「患者にfasciola cinereumが関与する発作があるのかどうかを調べることで、レーザーアブレーションや神経刺激療法でこの部位を標的にすることが可能になるため、治療も画一的なアプローチよりも優れたものとなり得る」と話している。

1572.

食物アレルギーに対するオマリズマブ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 食物アレルギーは食べ物に含まれるタンパク質がアレルゲンとなり、抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象と定義されている。食物アレルギーに関わるアレルゲンは、食べ物以外のこともあり、その侵入経路もさまざまであることが知られている。免疫学的機序によりIgE依存性と、非IgE依存性に分けられるが、IgE依存性食物アレルギーの多くは即時型反応を呈することが多い。IgE依存性食物アレルギーはいくつかの病型に分けられており、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎、即時型症状、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)に分類される(『食物アレルギー診療ガイドライン2021』)。 食物アレルギーによって皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器など、さまざまな臓器に症状が現れる。それらの症状は臓器ごとに重症度分類を用いて評価し、重症度に基づいた治療が推奨されている。IgE依存性食物アレルギーのうち、FDEIAは複数臓器・全身性にアレルギー症状が出現し、いわゆるアナフィラキシーショックを引き起こす可能性が比較的高いことが知られている。食物アレルギーの原因食物は鶏卵・牛乳・小麦とされていたが、最新の調査「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」の報告書では第3位にナッツ類が含まれる結果であった。一般的にナッツ類は種子が硬い殻で覆われたアーモンド・クルミ・カシューナッツ・マカダミアナッツなどが含まれ、マメ科のピーナッツは含まれない。この報告書では食物アレルギーの85%に皮膚症状、36%に呼吸器症状、31%に消化器症状を認めたとし、ショック症状は11%であった。 食物アレルギーは特定の食べ物を摂取することによりアレルギー症状が誘発され、特異的IgE抗体などの免疫学的機序を介することが確認できれば診断される。とくにアレルゲンの摂取と誘発される症状の関連を細かく問診することが重要であり、採血による特異的IgE抗体や皮膚プリックテストだけで食物除去を安易に指導しないことと『食物アレルギー診療ガイドライン2021』上は指摘している。 今回紹介する「OUtMATCH試験」は、複数の食物アレルギーに対するヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体であるオマリズマブの有効性や安全性を見た報告である。複数の食物アレルギーを持つ1~55歳の180例を対象に、オマリズマブを16週投与してアレルゲンに対する反応閾値の改善効果が示された。本邦でオマリズマブは2024年4月現在、気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹の3つの適応疾患がある。いずれも既存治療によるコントロールが難しい難治例や重症例に限るとされている。オマリズマブは血中遊離IgEのCε3に結合し、マスト細胞などに発現する高親和性IgE受容体とIgEの結合を阻害することにより効果を発揮する生物学的製剤である。IgEとの結合を抑えることにより、一連のI型アレルギー反応を抑制し、気管支喘息では気道粘膜内のIgE陽性細胞や高親和性IgE受容体陽性細胞の減少、末梢血中の好塩基球に存在する高親和性IgE受容体の発現も低下するとされている。気管支喘息に対する効果は8つのプラセボ比較試験のメタアナリシスで、増悪頻度を43%減少させることが報告されている(Rodrigo GJ, et al. Chest. 2011;139:28-35.)。別の報告では、1秒量、QOL、症状スコアやステロイドの減量、入院頻度の減少なども示されている(Alhossan A, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2017;5:1362-1370.)。オマリズマブは長期使用例ほどQOL改善効果が得られ、5年以上の使用で経口ステロイドの減量や治療ステップダウンを達成できる症例が増えるとされている(Sposato B, et al. Pulm Pharmacol Ther. 2017;44:38-45.)。 本研究でのオマリズマブは体重と被検者のIgE値によって投与量が決められている。ピーナッツタンパクを1回600mg以上の摂取でアレルギー症状がない症例がオマリズマブ群で67%、プラセボ群で7%であった。副次評価項目でもカシューナッツ、牛乳、卵で評価されたが、同様のオマリズマブ群でアレルギー反応が出ない症例が有意に増加した。このピーナッツタンパク600mgはピーナッツ約2.5個分に相当するが、これは誤ってナッツ類を1~2個摂取してもアレルギー反応に耐えうることを示唆している。もちろん本研究が報告された後も、オマリズマブが投与されたとはいえ、自身に害を及ぼすアレルゲンは避ける必要があり、自己注射用アドレナリンは手放せない。また筆者らも指摘しているが、本研究は白人が60%以上含まれており、すべての人種での検討ではない。今回の「OUtMATCH試験」の結果を受け、米国FDAでは2024年2月にIgEに関連する食物アレルギーに対するオマリズマブを承認した。実臨床で幅広く多様な年齢や人種に対してこのオマリズマブを活用し、その結果を検討することが肝要である。

1573.

腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応【1分間で学べる感染症】第3回

画像を拡大するTake home message髄膜炎を疑った際には頭部CT検査の適応を速やかに判断し、髄液検査を遅らせないようにしよう。腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応は6つの項目「PUNISH」で覚えよう。細菌性髄膜炎の初期対応に関しては、研修医を含め、救急外来や内科外来で働くあらゆる医師にとって必須の項目です。それでは、どのような状況で頭部CT検査を検討すればよいのでしょうか。最も重要なこととしては、頭部CT検査の適応を迅速に判断し、髄液検査を遅らせないことです。ここでは、腰椎穿刺前の頭部CT検査の適応として、6つの項目を「PUNISH」で覚えましょう。PPapilledema 乳頭浮腫UUnconsciousness/abnormal level of consciousness 意識レベル低下NNeurologic deficit (focal) 局所神経障害IImmunocompromised state HIVや免疫抑制剤、移植後などを中心とした免疫不全の患者SSeizure 1週間以内の新規けいれん発症HHistory of CNS disease 頭蓋内占拠性病変や脳卒中、感染などの中枢神経病変の既往がある場合頭蓋内圧が亢進している場合、腰椎穿刺により脳ヘルニアを引き起こす可能性があるため注意が必要です。しかし、頭部CTで異常所見がないからといって安心するのではなく、不規則な呼吸や乳頭浮腫などの脳幹徴候を認めた場合は腰椎穿刺を避けるようにしましょう。1)Hasbun R, et al. N Engl J Med. 2001;345:1727-1733.2)Gopal AK, et al. Arch Intern Med. 1999;159:2681-2685.3)Tunkel AR, et al. Clin Infect Dis. 2004;39:1267-1284.

1574.

AGA治療薬ミノキシジル、経口vs.外用

 男性型脱毛症(AGA)治療薬ミノキシジルについて、経口ミノキシジル5mg(1日1回)は外用ミノキシジル5%(1日2回)と比較し、24週間の治療において優越性を示さなかったことが、無作為化比較試験で示された。低用量経口ミノキシジルへの関心が高まっているが、これまでその有効性は比較試験で検証されていなかった。本研究結果は、ブラジル・サンパウロ大学のMariana Alvares Penha氏らによってJAMA Dermatology誌オンライン版2024年4月10日号で報告された。 研究グループは、ブラジルの専門クリニック単施設において、経口ミノキシジル5mg(1日1回)の有効性および安全性を外用ミノキシジル5%(1日2回)との比較で検証する二重盲検無作為化比較試験を行った。 対象は、Norwood-Hamiltonスケールに基づき3V、4V、5Vのいずれかに分類された18~55歳のAGA患者とした。対象患者を経口群または外用群に1対1の割合で無作為に割り付け、24週間投与した。主要評価項目は、頭皮の前頭部および頭頂部の硬毛密度の変化、副次評価項目は、総毛髪密度の変化および写真評価とした。 主な結果は以下のとおり。・90例が登録され、68例(経口群33例、外用群35例)が試験を完了した。対象患者の平均年齢(標準偏差)は36.6(7.8)歳であり、両群の人口統計学的特性およびAGA重症度は同様であった。・前頭部について、ベースラインから24週時までの平均変化量の群間差は、硬毛密度が3.1本/cm2(95%信頼区間[CI]:-18.2~21.5、p=0.27)、総毛髪密度が2.6本/cm2(同:-10.3~15.8、p=0.32)であった。・頭頂部について、ベースラインから24週時までの平均変化量の群間差は、硬毛密度が23.4本/cm2(95%CI:-0.3~43.0、p=0.09)であり、総毛髪密度が5.5本/cm2(同:-12.5~23.5、p=0.32)であった。・写真評価による解析において、頭頂部では経口群が外用群よりも有意に改善したが(24%、95%CI:0~48、p=0.04)、前頭部では有意な群間差はみられなかった(12%、-12~36、p=0.24)。・経口群に多く発現した有害事象は、多毛症(22/45例[49%])、頭痛(6/45例[14%])であった。

1575.

変形性肩関節症の人工肩関節置換、リバース型vs.解剖学的/BMJ

 変形性肩関節症を有する60歳以上の患者において、リバース型人工肩関節全置換術(RTSR)は解剖学的人工肩関節全置換術(TSR)の許容可能な代替術であることが、英国・オックスフォード大学のEpaminondas Markos Valsamis氏らによる住民ベースのコホート研究で示された。経時的な再置換術のリスクプロファイルに有意差は認められたが(最初の3年間はRTSRが良好)、一方で長期的な再置換術、重篤な有害事象、再手術、入院期間の長期化、生涯医療コストについて、統計学的な有意差および臨床的に重要な差は認められなかった。RTSRの施術は、直近20年間で世界的に急増しているが、高い質的エビデンスのないまま、本来の病理学的対象患者にとどまらず、手術適応の症例に幅広く施術されている現状がある。そうした治療の不確実性は英国の研究機関において重要な優先事項と認識されており、完了までに数年がかかる国際的な試験に対して資金提供がされているという。BMJ誌2024年4月30日号掲載の報告。RTSR vs.TSRの再置換術の発生を評価 研究グループは国の研究の優先事項に応えるために、イングランドのNational Joint Registry and Hospital Episode Statisticsのデータを用いた住民ベースコホート研究を行った。変形性肩関節症に対する待機的初回肩関節全置換術を受けた患者における、RTSRとリスクベネフィットおよびコストとの関連を、TSRとのそれと比較した。 2012~20年にイングランドの公立病院と私立病院で公的資金により行われた手術例から、腱板断裂のない変形性肩関節症に対するRTSRまたはTSRを受けた60歳以上の患者を研究対象とした。患者はNational Joint RegistryとNHS Hospital Episode Statisticsおよび住民登録死亡データを結び付け、傾向スコアマッチングと逆確率重み付け(IPTW)を用いて試験コホートを均一化した。 主要アウトカムは、再置換術の発生。副次アウトカムは、術後90日間の重篤な有害事象、術後12ヵ月間の再手術、入院の長期化(3泊超)、Oxford Shoulder Scoreの変化(術前から術後6ヵ月時点)、医療サービスの生涯コストなどであった。RTSRのTSRに対する再置換術の最小ハザード比は0.33 試験コホートは、患者1万1,961例における選択的初回肩関節置換術1万2,986件から構成された。このうち傾向スコアマッチドコホートは7,124件(RTSR例、TSR例それぞれ3,562例)で構成された。同コホートの再置換術例は126件(1.8%、RTSR例41件、TSR例85件])であった。 IPTWコホートは手術例1万2,968件(RTSR例3,576件、TSR例9,410例)で構成された。最長追跡期間8.75年において、再置換術例は294件(2.3%、RTSR例41件、TSR例253件])であった。 RTSRの再置換術リスクは、最初の3年間で大幅に低下した(最小ハザード比:0.33、95%信頼区間[CI]:0.18~0.59)。再手術のない制限付き平均生存期間(RMST)に臨床的に重要な差はみられなかった。 傾向スコアマッチドコホートにおいて、12ヵ月時点でRTSRの再手術の相対リスクは低下し(オッズ比:0.45、95%CI:0.25~0.83)、絶対リスク差は-0.51%(95%CI:-0.89~-0.13)であったが、IPTWコホートでは相対リスクに有意差はなかった(0.58、0.31~1.08)。 重篤な有害事象、長期入院のリスク、Oxford Shoulder Scoreの変化、モデル化した平均生涯コストのアウトカムは、傾向スコアマッチドコホートにおいて類似しており、IPTWコホートでも一貫していた。

1576.

マジックマッシュルーム成分の抗うつ効果は?~メタ解析/BMJ

 数種類のキノコに含まれるセロトニン作動性の幻覚成分であるpsilocybinの抗うつ治療効果を検証するため、英国・オックスフォード大学のAthina-Marina Metaxa氏らは、これまで発表された研究論文についてシステマティック・レビューとメタ解析を行った。うつ症状の測定に自己報告尺度を用いており、以前に幻覚剤を使用したことがある二次性うつ病患者において、psilocybinの治療効果は有意に大きかったという。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、抗うつ薬としてのpsilocybinの治療可能性を最大化する因子を明らかにする必要がある」と述べている。近年、うつ病治療の研究は、古典的な抗うつ薬の欠点がなく強力な抗うつ作用を示す幻覚剤に焦点が当てられており、psilocybinもその1つに含まれる。直近の10年間に、複数の臨床試験、メタ解析、システマティック・レビューが行われ、そのほとんどにおいてpsilocybinに抗うつ効果がある可能性が示されたが、うつ病のタイプ、幻覚剤の使用歴、投与量、アウトカム尺度、出版バイアスなど、psilocybinの効果に作用する可能性がある因子については調査されていなかった。BMJ誌2024年5月1日号掲載の報告。メタ解析で、psilocybinの有効性をプラセボまたは非向精神薬と比較 研究グループは、psilocybinの抗うつ薬としての有効性をプラセボまたは非向精神薬と比較し明らかにするため、システマティック・レビューとメタ解析で検証した。 5つの出版文献データベース(Cochrane Central Register of Controlled Trials、Medline、Embase、Science Citation Index、Conference Proceedings Citation Index、PsycInfo)、4つの非出版・国際的文献データベース(ClinicalTrials.gov、WHO International Clinical Trials Registry Platform、ProQuest Dissertations and Theses Global、PsycEXTRA)、手動検索による参考文献リスト、カンファレンス議事録および要約をデータソースとした。 適格としたのは、臨床的に重大なうつ症状を有する成人に対し単独治療としてpsilocybinが投与され、症状の変化を臨床医による検証済み評価尺度または患者の自己報告尺度を用いて評価した無作為化試験。指示的心理療法を有する試験は、介入条件と対照条件の両方に心理療法の要素が認められた場合に包含した。参加者は、併存疾患(がんなど)に関係なく、うつ病を有する場合に適格とした。 治療効果に作用する可能性のある因子として、うつ病のタイプ(原発性または二次性)、幻覚剤の使用歴、psilocybin投与量、アウトカム尺度のタイプ(臨床医による評価または患者の自己報告)、個人の特性(年齢、性別など)を抽出。データはランダム効果メタ解析モデルを用いて統合し、観察された不均一性および共変量の効果をサブグループ分析とメタ回帰法で調べた。小さなサンプル効果、包含した試験間のサンプルサイズの実質的な差を示すため、Hedges' gを用いて治療効果サイズを評価した。psilocybinに有意な有益性あり、エビデンスの確実性は低い 包含した9試験のうち7試験の被験者436例(女性228例、平均年齢36~60歳)を対象としたメタ解析で、対照治療群と比較したうつ病スコアの変化において、psilocybinの有益性が有意であることが示された(Hedges' g=1.64、95%信頼区間[CI]:0.55~2.73、p<0.001)。 サブグループ解析およびメタ回帰法により、二次性うつ病であること(Hedges' g=3.25、95%CI:0.97~5.53)、Beck depression inventoryのような自己報告うつ病スケールで評価されていること(3.25、0.97~5.53)、高齢で幻覚剤使用歴があること(それぞれのメタ回帰係数:0.16[95%CI:0.08~0.24]、4.2[1.5~6.9])が、症状の大幅な改善と関連していた。 すべての試験は、バイアスリスクが低かったが、ベースライン測定値からの変化は高い不均一性と小規模試験のバイアスリスクと統計学的に有意に関連しており、エビデンスの確実性は低かった。

1577.

CABGで女性の死亡率が男性よりも高い理由とは?

 男性よりも女性の方が冠動脈バイパス術(CABG)の生存率が低いことは以前から知られていたが、その理由は不明だった。こうした中、米ワイル・コーネル・メディスン心臓胸部外科分野教授のMario Gaudino氏らが、その説明となり得る研究結果を報告した。その研究によると、女性は男性よりも手術中に貧血に陥りやすく、それが死亡リスクの上昇につながっている可能性が示されたという。この研究結果の詳細は、「Journal of the American College of Cardiology」に3月5日掲載された。研究グループは、「この結果を受け、CABGを受ける女性患者の生存率を高める安全策に拍車がかかるはずだ」と述べている。 この研究は、米国胸部外科学会がまとめたデータベース(The Society of Thoracic Surgeons Adult Cardiac Surgery Database)から抽出した、2011年から2022年の間に初めてCABGを受けた成人患者143万4,225人(女性34万4,357人)を対象に、手術(CABG)中の貧血、死亡、および性別の関係を調べたもの。主要アウトカムとした手術死亡率に対する女性の性別の影響を寄与リスク(AR)として算出し、さらに、手術中の貧血がこの関係をどの程度媒介しているかも検討した。 その結果、女性は男性よりも手術中の最低ヘマトクリット値(中央値)が低く(22.0%対27.0%)、手術死亡率が高いことが明らかになった(2.8%対1.7%、P<0.001、調整オッズ比1.36、95%信頼区間1.30〜1.41)。女性の性別のARは1.21(95%信頼区間1.17〜1.24)であったが、手術中の最低ヘマトクリット値で調整すると、1.12(同1.09〜1.16)まで43%低下した。媒介分析からは、手術中の貧血が、女性の性別と関連する手術死亡リスクの38.5%を媒介していることが示された。 こうした結果を受けて研究グループは、出血を最小限に抑えることが、「CABGを受ける女性の手術死亡率を改善し、性差を縮小するための実行可能な目標だ」と主張している。 研究グループによると、CABG中の患者の生命を維持する人工心肺装置では、血液を希釈して体外循環させるため、ある程度の貧血はつきものだと説明する。しかし、女性は概して男性よりも体格が小さく、また、CABG前の赤血球数も男性より少ない傾向があるため、手術中に貧血を起こしやすいのだという。 ただし、この研究は、手術中の貧血が女性の生存率を低下させる主因であることを決定的に証明するために実施されたものではない。それでも研究グループは、女性患者の生存率を向上させるためにもっと多くのことができるはずだと考えている。その例として、「例えば、回路の短い人工心肺装置を使用すれば、ポンプを作動させるのに必要な血液希釈液の量を制限することができる」と研究グループは話している。Gaudino氏は、このような介入の有効性を証明するための臨床試験が「喫緊に必要だ」と述べている。

1578.

IBSの治療、食事法の効果が薬を上回る?

 腹痛などの過敏性腸症候群(IBS)の症状を軽減する最善の治療法は適切な食事法であることを示唆する結果が、ヨーテボリ大学サールグレンスカアカデミー(スウェーデン)のSanna Nybacka氏らが実施した臨床試験で示された。同試験では、IBSの症状に対する治療法として2種類の食事法の方が標準的な薬物治療よりも優れていることが示された。詳細は、「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に4月18日掲載された。 IBSは、消化器疾患の中で最も高頻度に生じる上に、治りにくい疾患の一つだ。米国人のIBSの有病率は約6%で、患者数は男性よりも女性の方が多い。IBSの症状は、腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘などの無視しがたいもので、死に至る場合もある。IBSに対しては、食事の改善のほか、便秘薬や下痢止め薬、特定の抗うつ薬、腸管内の水分の分泌を促し腸の動きを活発にする作用があるリナクロチドやルビプロストンなどの薬物による治療が行われる。 この試験で標準的な薬物治療と比較された食事法の一つは、FODMAPと呼ばれる糖質の摂取を制限する低FODMAP食だ。FODMAPは特定の乳製品や小麦、果物、野菜に含まれている、小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖類のことである。もう一つの食事法は、食物繊維を多く摂取しつつ炭水化物の摂取は抑える糖質制限食だった。Nybacka氏は、「時間をかけて食べる、1回の食事の量を減らし食事の回数を増やす、コーヒーや紅茶、炭酸飲料、アルコール、脂肪分や香辛料の多い食品を制限するなど、食生活をよりシンプルなものに変えることを支持する研究もある。また、糖質制限食によってIBSの症状が軽減した患者がいるとの報告もあることから、いくつかの治療選択肢を比較する臨床試験を計画することにした」と説明している。 この臨床試験は、サールグレンスカアカデミーの外来クリニックで、中等度から重度のIBSに罹患している18歳以上の294人(女性241人、男性53人、平均年齢38歳)を対象に実施された。試験参加者は4週間にわたって、1)主な症状に応じて8種類のIBS治療薬のうちの1種類を投与する群(薬物治療群、101人)、2)米、ジャガイモ、キヌア、小麦を含まないパン、乳糖を含まない乳製品、魚、卵、鶏肉、牛肉、さまざまな果物や野菜などの食品から成る低FODMAP食を摂取し、IBS患者向けに伝統的に推奨されている食事法のアドバイスを受ける群(低FODMAP食群、96人)、3)牛肉、豚肉、鶏肉、魚、卵、チーズ、ヨーグルト、野菜、ナッツ類、ベリー類などの食品を中心とした低糖質かつ高脂質の食事を摂取する群(低糖質食群、97人)の3群のいずれかにランダムに割り付けられた。 その結果、介入から4週間後、低FODMAP食群の76%(73/96人)と、低糖質食群の71%(69/97人)で症状の有意な改善が認められたのに対し、薬物治療群で改善が認められたのは58%(59/101人)にとどまっていた。また、症状が改善した患者のうち低FODMAP食群と低糖質食群に割り付けられた患者では、薬物治療群に割り付けられた患者と比べて症状の改善度が大きかったという。 本研究には関与していない、米ミシガン大学医学部の消化器専門医であるWilliam Chey氏は、「この研究では、低FODMAP食がほとんどの患者のIBS症状を軽減することが示された。ただ、低FODMAP食は極めて厳しい制限を伴うことに加え、自分に合わない食品を見極めるために慎重にFODMAPが含まれる食品を一つずつ試す必要があるため、この食事法を続けるのは容易ではない」とニューヨーク・タイムズ紙に語っている。 Chey氏は、この試験によって「薬物治療と比較して食事法の効果は少なくとも同等であり、より優れている可能性もある」という臨床で多くの医師が経験していることを裏付ける「リアルデータ」が得られたと話す。その上で、今回の試験は、スウェーデンの単施設で比較的小規模な集団を対象に実施されたものであることを指摘し、「今後、より大規模かつより多様な集団で結果を検証する必要がある」と付け加えている。

1579.

英語で「アレルギーはありますか」は?【1分★医療英語】第130回

第130回 英語で「アレルギーはありますか」は?《例文1》Are you allergic to any medication?(薬に対するアレルギーはありますか?)《例文2》What kind of reaction did you have?(どのような反応がありましたか?)《解説》医師でも看護師でも、患者さんにアレルギーを確認することが多いでしょう。聞き方はシンプルで、“Do you have any allergies?”というフレーズがよく使われますが、ポイントは発音です。日本語的に「アレルギー」と発音してしまうと、まず伝わりません。“allergy”は、カタカナにすると「アァレジー」というような発音になります。複数形では「アァレジーズ」です。最初の「ア」にアクセントがあることに注意しましょう。また、「○○にアレルギーがある」と言うときには、“allergic”という形容詞を使って、“be allergic to ○○”という表現を使うと便利です。ただし、形容詞になった際は「ア」ではなく「レ」にアクセントが来るのでその点も気を付けます。アレルギーがあると言われた場合には、“What kind of reaction did you have?”(どのような反応がありましたか?)や“When did that happen?”(それはいつ起こりましたか?)というような追加質問をして、詳細な情報を得ましょう。なお、日本で毎年春に問題になる花粉症は、英語で“pollen allergy”もしくは“hay fever”といいます。一緒に覚えておくと便利です。講師紹介

1580.

経口ワクチンが抗菌薬に代わる尿路感染症の治療法に?

 新たに開発された経口投与型のワクチンが、尿路感染症(UTI)を繰り返す「再発性UTI」の患者にとって抗菌薬に代わる治療法となる可能性のあることが、英ロイヤル・バークシャーNHS財団トラストの泌尿器科専門医であるBob Yang氏らの研究で示唆された。同氏らによると、スプレーを使って舌の下にワクチンを投与した再発性UTI患者の半数以上(54%)は、その後9年にわたってUTIを再発することがなく、また目立った副作用も認められなかったという。この研究結果は、欧州泌尿器科学会(EAU 2024、4月5~8日、フランス・パリ)で発表された。 UTIは最も一般的な細菌感染症で、女性の半数、男性の5人に1人が生涯に一度は経験するとされる。UTI症例の20~30%では、抗菌薬による治療を必要とするUTIが再発する。 Yang氏は、「ワクチン接種前は、全参加者が再発性UTIに苦しんでいた。また、多くの女性患者で再発性UTIは治療困難となり得る」とニュースリリースの中で述べている。そして、「この新たなUTIワクチンを初めて接種してから9年後の時点まで、参加者のほぼ半数は感染することはなかった」と説明。また、「全体として、このワクチンは長期にわたって安全であり、参加者はUTIの再発が減少したこと、再発した場合でも重症度が低く、多くは水をたくさん飲むだけで治ったと話していた」と振り返っている。 このMV140と呼ばれるワクチンは、4種類の細菌種を含んだパイナップル風味の懸濁液で、スペインの製薬会社であるImmunotek社によって開発された。ワクチンには、感染と闘う抗体の産生を促す細菌が含まれている。ワクチンは3カ月間、毎日舌の下に2回吹きかけて投与する。 今回の研究は、英国のロイヤルバークシャー病院でUTIの治療を受けた18歳以上の女性72人と男性17人を対象としたもの。これらの患者は、MV140の臨床試験への当初からの参加者で、ワクチン投与後1年間の追跡調査の結果は2017年に報告されていた。今回の報告は、その後の9年に及ぶ追跡調査の結果である。Yang氏らは、89人の医療記録データを分析するとともに聞き取り調査を実施した。 その結果、48人の参加者が、9年間の追跡期間中にUTIを再発しなかったことが明らかになった。再発が認められなかった期間は、女性で平均54.7カ月(4年半)、男性で平均44.3カ月(3年半)だった。なお、参加者の約40%は、1年後または2年後にMV140の再接種を受けたことを報告していた。 今回の研究には関与していない専門家であるアルタ・ウロ泌尿器医療センター(スイス)教授のGernot Bonkat氏は、「これらは有望な結果だ。再発性UTIによってもたらされる経済的な負担は大きく、また、抗菌薬の過剰使用は抗菌薬耐性感染症の要因にもなり得る」と研究結果に期待を寄せる。 Bonkat氏は、「今後は、より複雑なUTIについての研究や、異なる患者のグループを対象とした研究の実施が必要だ。そこから得られる研究成果を通じて、このワクチンの使用方法を最適化できる」と話す。また同氏は、「現実的な視点を持つ必要はあるが、このワクチンはUTI予防において画期的な手段となる可能性や、従来の治療法に代わる安全で有効な治療法となる可能性を秘めている」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

検索結果 合計:11797件 表示位置:1561 - 1580