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何はさておき記述統計 その5【「実践的」臨床研究入門】第44回

2群の生存時間曲線を比較する今回は、無料の統計解析ソフトであるEZR(Eazy R)を用いて前回作成したKaplan-Meier曲線と統計解析(Log-rank検定)結果の出力を確認して解説します。まず、Kaplan-Meier曲線(図1)ですが、低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)は赤線で、低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)は黒線で表示されています。図1デフォルトのオプション設定で指定されているとおり(連載第43回参照)、「打ち切り」は「ヒゲ」で表され(連載第42回参照)、また各時点での観察対象となるat risk集団(連載第35回参照)のサンプル数が"Number at risk”として示されています。生存時間解析の結果の要約とLog-rank検定の結果は、EZRのRコマンダー出力ウィンドウの最後に表示されています(図2)。図2低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)、低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)のサンプル数はそれぞれ212例、426例で、右端に表されているのが両群間の生存時間曲線の比較検定(Log-rank検定)のp値です。生存期間中央値と95%信頼区間はそれぞれNA(not available)と表示されています。生存期間中央値は、Kaplan-Meier曲線で生存率(イベント非発生率)が50%となる値(期間)です。Kaplan-Meier曲線(図1)をみてわかるように、両群とも観察期間終了時(5年)に50%以上の対象が生存(イベント非発生)しているので、生存時間中央値およびその95%信頼区間は求めることができません。それでは、ここで簡単に統計学的仮説検定とp値の考え方について解説します。統計学的仮説検定は論理学の背理法に基づいて進めて行きます。ここでのわれわれの仮説、「低たんぱく食厳格遵守と低たんぱく食非厳格遵守で、末期腎不全の発症率に差がある」を検証する場合、次のように考えます。まず、検証したい仮説の否定を考え、「低たんぱく食厳格遵守と低たんぱく食非厳格遵守で、末期腎不全の発症率に差がない」、とします。これを帰無仮説(差なし仮説)と言います。p値のpはprobabilityのpでまさに確率であり、0から1の値をとります。p値とは、帰無仮説が正しいと仮定したときに、実際に標本から得られたデータ以上に帰無仮説から離れたデータが得られる確率を表した値、のことです。p値が非常に小さな場合、帰無仮説が誤っている(帰無仮説を棄却)とし、統計学的有意差がある、と判断します。統計学的に有意であると判断する基準を有意水準と言いますが、一般的には0.05(5%)に設定されます。これは5%未満の誤りであれば許容できる、という一般的な感覚から慣習で決められた数値です。統計学的仮説検定の手法は扱うデータ(変数)の型によって異なります。ここで扱う生存時間、生存時間曲線の比較では一般的にLog-rank検定が用いられることが多いです。さて、低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)と低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)の生存時間曲線の比較検定(Log-rank検定)のp値は0.0657と有意水準0.05を上回っていました。したがって、「低たんぱく食厳格遵守と低たんぱく食非厳格遵守で、末期腎不全の発症率に差がない」という帰無仮説は棄却できません。さらに言うと、統計学的に有意差はないものの、生存時間曲線の見た目からは低たんぱく食厳格遵守群(Treat=1)より低たんぱく食非厳格遵守群(Treat=0)の方が予後が良さそうにも見えます。生存時間曲線の比較検定(Log-rank検定)の結果からは、われわれの仮説に沿った解析結果が得られませんでした。ここで研究は終了(継続断念)でしょうか。次回からは、観察研究においてExposure(曝露要因)とOutcome(アウトカム)の関連や因果関係を歪める「交絡(因子)」について解説します。

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身体活動の指標、時間ではなく歩数でもOK?

 米国における身体活動のガイドラインでは、健康のために中~高強度の身体活動を週150分以上行うことを推奨しているが、歩数に基づく推奨はエビデンスが十分ではないため発表されていない。今回、米国・Brigham and Women's Hospital/Harvard Medical Schoolの浜谷 陸太氏らによる米国の62歳以上の女性を対象としたコホート研究において、中~高強度身体活動時間および歩数と全死亡率および心血管疾患(CVD)の関連が質的に同様であることが示唆された。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年5月20日号に掲載。 このコホート研究は、1992~2004年に米国で実施した無作為化試験であるWomen's Health Studyの参加者の追跡データを解析したもの。参加者はCVDやがんを罹患していない62歳以上の女性で、年1回アンケートに回答し、中~高強度身体活動に費やした時間と歩数を加速度計で連続7日間測定した。交絡因子調整後の中~高強度身体活動の時間および歩数と全死亡およびCVD(心筋梗塞・脳卒中・CVD死亡の複合)との関連を、Cox比例ハザード回帰モデル、制限付き平均生存時間の差、受信者動作特性曲線下面積(AUC)を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・計1万4,399人の女性(平均年齢:71.8歳)が対象となった。・中~高強度身体活動時間の中央値は週62分(四分位範囲:20~149分)、歩数の中央値は1日5,183歩(同:3,691~7,001歩)であった。・追跡期間中央値9.0年で、全死亡の1標準偏差当たりのハザード比は、中~高強度身体活動時間が0.82(95%信頼区間[CI]:0.75~0.90)、歩数が0.74(同:0.69~0.80)であった。・中~高強度身体活動時間および歩数が多い(上位3四分位群vs.最低四分位群)ほど生存期間(period free from death)が長かった。・中~高強度身体活動時間および歩数での全死亡率のAUCは同様で、どちらの指標も0.55(95%CI:0.52~0.57)であった。CVDとの関連についても同様だった。 著者らは「今後のガイドラインにおいては、個々人の好みに対応できるよう、時間に基づく目標と共に歩数に基づく目標が検討されるべき」としている。

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前立腺全摘除術後放射線療法へのADT追加、6ヵ月vs.24ヵ月/Lancet

 前立腺全摘除術後の放射線療法への24ヵ月のアンドロゲン除去療法(ADT)の追加は、6ヵ月のADTを追加した場合と比較して無転移生存期間(MFS)を改善したことが示された。英国・The Institute of Cancer ResearchのChris C. Parker氏らRADICALS investigatorsが、カナダ、デンマーク、アイルランド、英国の138施設で実施した無作為化非盲検試験「RADICALS-HD試験」の結果を報告した。これまで、中間および高リスクの限局性前立腺がんに対しては、初期治療として放射線療法とADTの併用を支持するエビデンスがあるが、前立腺全摘除術後の放射線療法とADTの至適併用期間は不明であった。Lancet誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。主要評価項目はMFS 研究グループは、前立腺全摘除術後の放射線療法の適応があり、前立腺特異抗原(PSA)が5ng/mL未満で転移病変がなく書面による同意が得られた患者を、放射線療法(RT)+6ヵ月間のADT併用(短期ADT併用)群、またはRT+24ヵ月間のADT併用(長期ADT併用)群に1対1の割合で無作為に割り付けた。層別因子は、グリソンスコア、断端陽性、放射線療法の時期、予定された放射線療法のスケジュール、予定されたADTの種類であった。 ADTは、無作為化後2ヵ月以内に開始し、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アナログに加え、GnRHアナログ初回投与の1週間前から経口抗アンドロゲン薬を3週間投与した。GnRHアナログは、短期ADT併用群では月1回、長期ADT併用群では3ヵ月に1回の投与が推奨された。カナダ以外では、ビカルタミド単剤150mg連日経口投与、またはデガレリクス月1回皮下投与も許容された。 主要評価項目はMFSで、前立腺がんの遠隔転移またはあらゆる原因による死亡と定義し、標準的なtime-to-event解析を行った(ITT解析)。 本試験は当初、RT単独群vs.短期ADT併用群vs.24ヵ月のADTを併用する長期ADT併用群の3群割り付け(1対1対1)、または、RT単独群vs.短期ADT併用群(1対1)と短期ADT併用群vs.長期ADT併用群(1対1)の2通りの2群割り付けのいずれかを選択するようになっていたが、ほとんどの患者が後者に割り付けられたことから、途中で2群比較の2試験として実施された(RT単独群vs.短期ADT併用群の結果は別途報告)。最終的に、10年MFS率が75%から81%に増加(ハザード比[HR]:0.72)することに関して、両側α値5%で80%の検出力を有していた。短期ADTに対する長期ADTのハザード比は0.773(p=0.029) 2008年1月30日~2015年7月7日に、計1,523例(年齢中央値65歳、四分位範囲[IQR]:60~69)が短期ADT併用群(761例)または長期ADT併用群(762例)に割り付けられた。1,523例のうち、326例は当初の3群割り付けで無作為化された症例(3群割り付けでのRT単独群の症例は除外)であった。追跡調査は2021年12月31日に終了した。 追跡期間中央値8.9年(IQR:7.0~10.0)において、MFSイベントは計313例報告された(短期ADT併用群174例、長期ADT併用群139例)。HRは0.773(95%信頼区間[CI]:0.612~0.975、p=0.029)であり、短期ADT併用群と比較して長期ADT併用群でMFSが改善した。 10年MFS率は、短期ADT併用群71.9%(95%CI:67.6~75.7)、長期ADT併用群78.1%(74.2~81.5)であった。 Grade3以上の有害事象の発現率は、短期ADT併用群14%(105/753例)、長期ADT併用群19%(142/757例)であり、治療関連死は報告されなかった。

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モジュール式リードレスペーシング除細動システム、主要エンドポイント達成/NEJM

 皮下植込み型除細動器(S-ICD)と無線通信するリードレスペースメーカーは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカー関連主要合併症非発生率、リードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率、およびパルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合に関して、パフォーマンス目標を超えた。オランダ・アムステルダム大学医療センターのReinoud E. Knops氏らが、国際共同単群試験「Effectiveness of the EMPOWER Modular Pacing System and EMBLEM Subcutaneous ICD to Communicate Antitachycardia Pacing study:MODULAR ATP試験」の結果を報告した。S-ICDは、経静脈ICDよりリード関連合併症が少ないが、抗頻拍および徐脈ペーシングができない。リードレスペースメーカーとS-ICDの無線通信による抗頻拍および徐脈ペーシングを行うモジュール式ペーシング除細動システムの安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2024年5月18日号掲載の報告。心室性不整脈による突然死のリスクがある患者を登録 研究グループは、ICD植込みの適応があり単形性心室頻拍のリスクが高い18歳以上の患者でベースライン時にペーシングを必要とせず、変時性応答不全を有する、または心室同期不全のためにペーシングを必要とする患者を登録し、リードレスペースメーカー(商品名:EMPOWER)とS-ICDシステム(同:EMBLEM)を植え込み、退院前、1ヵ月、6ヵ月、12ヵ月時およびその後は6ヵ月ごとに追跡調査した。 安全性のエンドポイントは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカーに関連する主要合併症非発生率で、86%を目標として評価した。リードレスペースメーカー関連主要合併症は、ペースメーカーや手技または治療に関連した合併症で、システム交換、永久的ペースメーカー機能喪失、入院または死亡と定義した。 パフォーマンスの主要エンドポイントは、植込み後6ヵ月時におけるリードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率(目標88%)、およびパルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合(目標80%)であった。 2021年7月~2024年1月に、38施設において計293例が登録され、そのうち植込み後6ヵ月時の評価対象コホートには162例が含まれた。患者の平均年齢は60歳、女性が16.7%、平均左室駆出率は33.1(SD 12.6)%であった。162例のうち、151例が6ヵ月の追跡調査を完遂した。主要合併症の非発生率97.5% リードレスペースメーカー関連主要合併症非発生率は97.5%、片側98.8%信頼区間(CI)の下限値は94.2%で、事前に規定された目標を上回った。 リードレスペースメーカーとS-ICD間の通信成功率は98.8%、片側97.5%CIの下限値は97.0%で、事前に規定された目標を上回った。 パルス幅0.4msでペーシング閾値2.0V以下の患者の割合は97.4%(147/151例)、片側97.5%CIの下限値は93.4%で、事前に規定された目標を上回った。 抗頻拍ペーシング成功率は61.3%で、デバイスの通信障害により抗頻拍ペーシングが実施されなかったエピソードはなかった。 死亡は8例報告された。うち4例が植込み後6ヵ月以内であったが、死因がデバイスや手技に関連すると判定された死亡例はなかった。

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帝王切開で生まれた児は2回の麻疹ワクチン接種が必要

 帝王切開で生まれた児は、初回の麻疹ワクチン接種だけでは予防効果を得にくいようだ。新たな研究で、経膣分娩で生まれた児に比べて帝王切開で生まれた児では、初回の麻疹ワクチン接種後に免疫を獲得できないワクチン効果不全に陥る可能性が2.6倍も高いことが示された。英ケンブリッジ大学遺伝学分野のHenrik Salje氏らによるこの研究結果は、「Nature Microbiology」に5月13日掲載された。 研究グループは、「麻疹ウイルスは感染力が非常に強く、たとえワクチン効果不全率が低くてもアウトブレイク発生のリスクはかなり高くなる」と説明する。麻疹は、鼻水や発熱などの風邪に似た初期症状が生じた後に特徴的な発疹が現れる。重症化すると失明、発作などの重篤な合併症を引き起こしたり、死に至ることもある。1963年にワクチン接種が導入される以前は、麻疹により毎年推定260万人が死亡していた。 この研究では、中国の母親と新生児から成るコホートと小児コホートの2つのコホートから抽出された0歳から12歳の小児1,505人の血清学的データと実証モデルを用いて、出生後の抗体の推移を調べた。これらの試験対象者は、ベースライン時とその後6回の追跡調査時(新生児コホートでは生後2・4・6・12・24・36カ月時、小児コホートでは2013〜2016年の間にほぼ6カ月おき)に静脈血を採取されていた。 その結果、対象児ごとの差異はあるものの、出生時からワクチン接種後までの麻疹ウイルスに対する抗体レベルの変化を、かなり正確に予測できることが明らかになった。また、経膣分娩で生まれた児と比べて帝王切開で生まれた児では、初回の麻疹ワクチン接種がワクチン効果不全になるオッズが2.56倍であることも示された。初回接種後にワクチン効果不全が確認された児の割合は、帝王切開で生まれた児で12%(16/133人)であったのに対し、経膣分娩で生まれた児では5%(10/217人)であった。しかし、初回接種後にワクチン効果不全が確認された児でも、2回目の接種後には強固な免疫反応が認められた。 Salje氏は、「この研究により、帝王切開か経膣分娩かという分娩法の違いが、成長過程で遭遇する疾患に対する免疫力に長期的な影響を及ぼすことが明らかになった」と述べている。同氏は、「多くの児が麻疹ワクチンを2回接種していないことが分かっている。2022年に麻疹ワクチン接種を1回しか受けていなかった児の数は世界で83%に上り、これは2008年以降で最低の数字だ。そのような状態は、本人のみならず周囲の人にも危険をもたらしかねない」と危惧を示し、「帝王切開で生まれた児は、われわれが確実にフォローアップして、麻疹ワクチンの2回目接種を受けさせるようにするべきだ」と述べている。 帝王切開で生まれた児でワクチン効果不全に陥る可能性が高い理由について、研究グループは、腸内マイクロバイオームの違いによるものではないかと推測している。経膣分娩では、母親からより多様なマイクロバイオームが児に移行する傾向があり、それが免疫系に保護的に働く。Salje氏は、「帝王切開で生まれた児では、経膣分娩で生まれた児のように母親のマイクロバイオームにさらされることはないため、腸内細菌叢の発達に時間がかかる。このことが、ワクチン接種後のプライミング効果を低下させていると考えられる」との考えを示している。

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コロナ禍の行動制限により市民のAED使用が減少

 コロナ禍の行動制限は、市民による自動体外式除細動器(automated external defibrillator;AED)の使用にも影響を及ぼした。2020~2021年の新型コロナウイルス感染症によるパンデミック中、AEDを用いた一般市民による除細動(public access defibrillation;PAD)の実施率が低下し、院外心停止(医療機関外での心肺停止)患者の転帰が悪化していたことが示された。これは新潟医療福祉大学救急救命学科の大松健太郎氏らによる研究であり、「BMJ Open」に4月8日掲載された。 バイスタンダー(救急現場に居合わせた人)が一次救命処置(basic life support;BLS)でAEDを使用することにより、電気ショックの対象となる院外心停止患者の神経学的転帰(心停止蘇生後の脳障害)が改善する。そのため多くの市民が集まる公共の場などではAEDの設置が推奨されている。一方、パンデミック中にPAD実施率が低下したことを示す研究も報告されている。 著者らは今回、パンデミックによる影響を詳細に検討するため、2016年1月~2021年12月の総務省消防庁による院外心停止患者のデータと救急搬送に関するデータを用いて、後ろ向きコホート研究を行った。新生児や住宅での心停止などを除いた計22万6,182人の院外心停止患者を対象として、PAD実施率および神経学的に良好な1カ月生存率を調査した。また、AED設置が推奨されている場所とそれ以外の場所での分析も行った。 院外心停止全体に占める住宅外での院外心停止の割合は、パンデミック前(2016~2019年)は33.7%だったのが、パンデミック中(2020~2021年)はわずかに低下して31.9%だった。パンデミック前、住宅外の院外心停止は冬季に少なく、夏季に多いという季節的傾向が見られた。パンデミックが月ごとの傾向に及ぼした影響を分析した結果、パンデミック中にPAD実施率は低くなり、主として1年目の最初の緊急事態宣言時および2年目を通して低かったことが明らかとなった(交互作用P<0.001)。PAD実施率の低下と相関して、神経学的に良好な1カ月生存率も低下していた(R=0.612、P=0.002)。 また、パンデミックによるPAD実施率の低下への影響は、AEDの設置が推奨されている場所では有意(交互作用P=0.033)である一方、それ以外の場所では有意ではない(交互作用P=0.175)という結果も得られた。さらに、パンデミック中、バイスタンダーによるBLS(心肺蘇生またはPAD実施)の5分以上の遅れが増加していることも示され、この遅れはAEDの設置が推奨されていない場所の方が顕著だった。 以上から著者らは、「長期の度重なる行動制限が行われたパンデミック中、住宅外でPADなどのBLS行動に混乱が生じ、院外心停止患者の転帰が悪化していた」と結論。結果に関連して、感染対策の観点から消防署などが実施するBLS講習の回数や規模が縮小され、地域でBLSを行う人の数が減少していたことなどを説明している。その上で、「BLS訓練の維持、AEDの最適な配置、十分な訓練を受けた市民に心停止の発生場所を伝えるシステムの確立が不可欠だ」と述べている。

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専属英会話講師の登場【Dr. 中島の 新・徒然草】(531)

五百三十一の段 専属英会話講師の登場もうすぐ衣替えの季節。最近は深緑と涼風の良い気候ですね。1年中こうだったらいいのですけど。さて、前回に引き続いて、今回もChatGPTと英語ですよ。「またかよ」という読者がおられたらすみません。でも皆さん、どちらか一方には興味をお持ちではないでしょうか。今回は「音声会話機能を使ったらChatGPTが専属英会話講師になってしまった」というお話です。スマホ版のChatGPTには音声会話機能があります。無料版のGPT-3.5でも、回数制限付きでGPT-4o(オムニ)の音声会話が可能なようです。試しに知り合いのスマホにChatGPTをダウンロードし、そのまま試してみたら、無料版でも音声でやりとりすることができました。ただ、途中で「また後でお試しください」という意味のメッセージが出てきて中断されました。無料版ゆえの使用時間の制限か、通信回線の混雑で接続が不安定になったのかもしれません。というわけで、実際にChatGPTを英会話講師として使う方法を紹介しましょう。まずプロンプトと呼ばれる入力は日本語でOK。ChatGPTの入力画面を開け、右下のヘッドホンマークを押します。そしたら画面中心の模様がグルグル回ってグレーの丸になり、「話し始める」という表示が出ます。そしたら「英会話の練習をしたいのでロールプレイのお相手をしてくれませんか?」と声を掛けましょう。5秒ほどすると「承知しました。どのような状況を考えていますか」みたいな返事があるので、日本語で適当な設定をしてください。たとえば、「私が医者でそちらが患者さん。めまいを主訴に受診したという設定で、一問一答でお願いします」と言っておいてから“What matters to you?”と英語で話し掛けると英会話開始です。ChatGPTのほうは「1週間ほど前からめまいがあります」とか「部屋がグルグル回ります」とかいろいろ訴えてくるので「何かめまいを誘発させたり悪化させたりするようなことはありますか?」などと聞くわけです。すると“When I move my head, it gets worse, but if I keep my head still, the vertigo slowly goes away.”(頭を動かすとめまいがひどくなり、頭を動かさないと徐々にめまいが去っていきます)といった答えが返ってきました。これは完全にBPPV(Benign Paroxysmal Positional Vertigo;良性発作性頭位めまい症)を意識している返答なので、こちらも「大人しくしていたら数日で改善しますよ」などとアドバイスをします。同じように頭痛のことでロールプレイをした時には、“Bright lights and loud noises definitely make my head worse. Sometimes strong smells can trigger them too.”(明るい光や大きな騒音で確かに頭痛が悪化します。時には強い匂いで頭痛が誘発されます)などという答えが返ってきました。典型的な偏頭痛ですね。診察室ではいつもの会話なので、英語でも何とか最後までやり通すことができました。問題があるとすれば、ChatGPTが時々暴走して医師のセリフを横取りしたり、日本語になったりすることです。こういった場合には「それは私のセリフなので、貴女は患者さんの役をしてください。それと英語でお願いします」と日本語で言うと、素直に元の設定に戻ってくれます。いろいろ試した結果、ChatGPTを使った英会話ロールプレイは、もう最強の英会話練習ではないかと思うようになりました。さて、ChatGPTで英会話ロールプレイをする時のいくつかの注意点を挙げておきましょう。若干のタイムラグがあるので、相手が話し始めるまで辛抱強く待つこと。プロンプトは日本語でOK。途中から条件を追加するのも問題なし。相手はAIなので、忖度する必要はまったくなし。先方が逆ギレしたり拗ねたりする場面には出くわしたことがありません。いつ始めてもOK、唐突に終わってもOK、相手が気を悪くする心配なし。10分ほどの隙間時間があれば、いつでもどこでも始めることができますが、周囲に人がいないところのほうがよさそうです。会話の記録はテキストで残っているので、後で復習するのも簡単。というわけで、ついに到達した最強の英会話勉強法。読者の皆さんもぜひお試しください。最後に1句衣替え 熱血勉強 AIと

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ウイルスと関連するがん【1分間で学べる感染症】第4回

画像を拡大するTake home messageウイルスと関連するがんを理解しよう。HBVとHPVはワクチンにより予防可能である。がんの原因にはさまざまな因子があることが知られていますが、その中でも近年とくに注目を浴びているのが、感染症によるがんです。人間に感染症を引き起こす病原微生物は、一般的には大きく細菌・ウイルス・真菌・寄生虫と分類されますが、その中でもとくにウイルスはがんと関連するものが多く報告されています。具体的には以下の8つです。EBウイルス(EBV)・バーキットリンパ腫 ・ホジキンリンパ腫 ・鼻咽頭がん などB型肝炎ウイルス(HBV)・肝細胞がんC型肝炎ウイルス(HCV)・肝細胞がん ・非ホジキンリンパ腫HIV・カポジ肉腫 ・非ホジキンリンパ腫 ・子宮頸がん ・非AIDS関連がんヒトヘルペス8型ウイルス(HHV-8)・カポジ肉腫 ・原発性胸水性リンパ腫 ・多中心性キャッスルマン病ヒトパピローマウイルス(HPV)・肛門・子宮頸・陰茎・咽頭・膣がんHTLV-1・成人T細胞性白血病/リンパ腫メッケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)・メッケル細胞がんこれらのうち、HBVとHPVに関してはワクチンが普及しており、予防可能であるといわれています。がん全体の約12~20%がウイルスと関連すると推定されており、実に大きな割合を占めています。このことを念頭に置き、必要な患者へのスクリーニングや早期発見に役立てましょう。1)Jennifer Brubaker. “The 7 Viruses That Cause Human Cancers”. American Society for Microbiology. 2019-01-25., (参照2024-05-01)

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第99回 精巣にもすでにナノプラスチックが侵入

頸動脈だけではなかった以前、記事でも紹介したように、プラスチックの細片のうち、大きさが1μm~5mmのものをマイクロプラスチック、より小さくnm(ナノメートル)レベルのものをナノプラスチックと呼び、MNPs(Microplastics and Nanoplastics)と総称します。ペットボトル内にも存在することから、上記の頸動脈プラークへの侵入は衝撃的なニュースでした。私たち人類がどのようにしてプラスチックと向き合っていくのか、議論が必要になります。さて、MNPsはどこにでも存在することから、ヒトの生殖系に影響を与えるのではないかという話も当然出てくるわけです。イヌとヒトの精巣におけるマイクロプラスチックの頻度や組成を調べた研究が報告されました1)。この研究は、熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析計を使って、イヌの精巣47個とヒトの精巣23個に含まれる12種類のマイクロプラスチックを定量化したものです。残念ながら、いずれの精巣にもマイクロプラスチックの存在が明らかになりました。マイクロプラスチックの平均含有量はイヌ122.63μg/g、ヒト328.44μg/gという結果だったのです。ヒトとイヌの両者とも、主要なポリマータイプの割合は類似していて、最も多いのはポリエチレン(PE)でした。さらに、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエチレンテレフタラート(PET)のような特定のポリマーと精巣重量との間には負の相関が観察されました。共存か削減・撤廃かもしかすると、男性の生殖能力にもMNPsはすでに影響を及ぼし始めているのかもしれません。ただ、プラスチックというのは人類にとってすでに長い付き合いになっている物質ですから、実はもううまく共存できていて、そこまで悪影響がないという結論になるかもしれませんし、中長期的には削減・撤廃していかないとまずいという結論になるかもしれません。都市部では、管理がうまくできていないプラスチック廃棄物が多いほどMNPsが多いというデータもあり2)、取り組むことになるなら、人口が多い地域ほど優先的に、ということになります。ただ、利便性を捨てて多大なコストをかけるほどのメリットが人類にあるのかどうかも、まだはっきりしていません。参考文献・参考サイト1)Hu CJ, et al. Microplastic presence in dog and human testis and its potential association with sperm count and weights of testis and epididymis. Toxicol Sci. 2024 May 15:kfae060.2)Talang R, et al. Influencing factors of microplastic generation and microplastic contamination in urban freshwater. Heliyon. 2024 Apr 25;10(9):e30021.

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前立腺全摘除術後放射線療法、ADTなしvs.短期ADT/Lancet

 前立腺全摘除術後の前立腺床に対する放射線療法後に転移がみられることはまれであるが、放射線療法に6ヵ月のアンドロゲン除去療法(ADT)を追加しても、ADTを行わない場合と比較して無転移生存期間(MFS)は改善しないことが示された。英国・The Institute of Cancer ResearchのChris C. Parker氏らRADICALS investigatorsが、カナダ、デンマーク、アイルランド、英国の121施設で実施された無作為化非盲検試験「RADICALS-HD試験」の結果を報告した。これまで、中間および高リスクの限局性前立腺がんに対しては、放射線療法とともに術後補助療法として短期間のADTを行うとMFSが改善することが示されていたが、前立腺全摘除術後の放射線療法とADT併用の有用性は不明であった。Lancet誌オンライン版2024年5月16日号掲載の報告。RT単独とRT+ADT6ヵ月間でMFSを比較 RADICALS-HD試験は、前立腺がんに対する術後放射線療法と併用するADTの有効性を検証する国際第III相ランダム化比較試験である。 研究グループは、前立腺全摘除術後の放射線療法の適応があり、前立腺特異抗原(PSA)が5ng/mL未満で転移病変がなく書面による同意が得られた患者を、放射線療法(RT)単独群、RT+6ヵ月間のADT(短期ADT)併用群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。層別因子は、グリソンスコア、断端陽性、放射線療法の時期、予定された放射線療法のスケジュール、予定されたADTの種類であった。 ADTは、無作為化後2ヵ月以内に開始し、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アナログを、通常は月1回皮下投与が推奨された。加えて、GnRHアナログ初回投与の1週間前から抗アンドロゲン薬を3週間投与した。カナダ以外では、ビカルタミド単剤150mg連日経口投与、またはデガレリクス月1回皮下投与も許容された。 主要評価項目はMFSで、前立腺がんの遠隔転移またはあらゆる原因による死亡と定義し、無作為化の層別因子による層別log-rank検定により群間比較を行った(ITT解析)。 本試験は当初、RT単独群vs.短期ADT併用群vs.24ヵ月のADTを併用する長期ADT併用群の3群割り付け(1対1対1)、または、RT単独群vs.短期ADT併用群(1対1)と短期ADT併用群vs.長期ADT併用群(1対1)の2通りの2群割り付けのいずれかを選択するようになっていた。しかし、3群割り付けを選択した患者は少数であったことから、途中で2群比較の2試験として実施された(短期ADT併用群vs.長期ADT併用群の結果は別途報告)。最終的に、10年MFS率が80%から86%に増加(ハザード比[HR]:0.67)することに関する試験の検出力は80%(両側α値5%)であった。追跡期間中央値9.0年においてMFSに有意差なし 2007年11月22日~2015年6月29日に、計1,480例(年齢中央値66歳、四分位範囲[IQR]:61~69歳)がRT単独群(737例)または短期ADT併用群(743例)に割り付けられた。1,480例のうち、330例は当初の3群割り付けで無作為化された症例であった(3群割り付けでの長期ADT併用群の症例は解析から除外)。追跡調査は2021年12月31日に終了した。 追跡期間中央値9.0年(IQR:7.1~10.1)において、MFSイベントは計268例報告された(RT単独群142例、短期ADT併用群126例)。HRは0.886(95%信頼区間[CI]:0.688~1.140、p=0.35)であり、短期ADT併用によるMFSの改善は認められなかった。 10年MFS率は、RT単独群79.2%(95%CI:75.4~82.5)、短期ADT併用群80.4%(76.6~83.6)であった。 Grade3以上の有害事象の発現率は、RT単独群17%(121/737例)、短期ADT併用群14%(100/743例)であり、治療関連死は報告されなかった。

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人間の「脳内コンパス」の場所を特定か

 人間には、「脳内コンパス」ともいうべき、迷子にならないようにするための脳活動パターンがあることを突き止めたと、英バーミンガム大学心理学分野のBenjamin Griffiths氏らが報告した。Griffiths氏らは、空間の中での自分の位置を把握してナビゲートするために使用する体内のコンパスを人間の脳内で初めて特定したと話している。詳細は、「Nature Human Behaviour」に5月6日掲載された。この発見をきっかけに、アルツハイマー病やパーキンソン病といったナビゲーション機能や見当識がしばしば損なわれる疾患について解明が進む可能性がある。 Griffiths氏は、「自分が向かっている方向を把握することは非常に重要だ。自分がいる場所や向かっている方向に少しでも誤差があると悲惨なことになり得る」と言う。さらに同氏は、「鳥、ネズミ、コウモリなどの動物には、正しい方向に進むための神経回路があることが知られている。しかし、人間の脳が実世界でどのように対処しているのかについて分かっていることは驚くほど少ない」と話す。 人間の脳活動を追跡するためには、通常、被験者ができるだけ静止していることが求められる。しかし今回の研究では、52人の参加者を対象に、脳波(EEG)を測定する携帯型のデバイスとモーションキャプチャを使って、動き回る人々の脳波と頭部の動きを分析した。研究参加者は、頭部に携帯型EEGデバイスを装着した状態で、複数のコンピューターのモニターからの指示に応じて頭や目を動かし、その間の脳活動がEEGデバイスにより測定された。また、てんかんなどの脳の疾患のモニタリング目的で脳に電極を埋め込んだ別の10人の参加者にも同様の実験を実施した。 その結果、脳後部の中心領域できめ細かく調整された頭の方向に関する信号が確認された。また、その信号は、対象者が別の方角に頭を向ける直前に検出され、頭の向きの変化を予測できる特有のパターンを持っていることも明らかになった。Griffiths氏は、「これらの信号を読み取ることで、脳がどのようにナビゲーション情報を処理するのか、また、これらの信号が視覚的な目印など他の手がかりとどのように連動するのかに焦点を合わせることができる」と説明する。 また、Griffiths氏は、「われわれのアプローチは、これらの機能についての研究に新たな道を開くものであり、神経変性疾患の研究や、ロボット工学および人工知能(AI)におけるナビゲーション技術の改善にもつながる可能性がある」と付け加えている。 今後の研究についてGriffiths氏は、「今回の研究で得られた知見からさらに一歩進め、脳が時間をどのようにナビゲートしているのか、また、そのような脳の活動が記憶に関連しているのかどうかを解明することになるだろう」と話している。

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カリウム吸着薬の必要性を検討して薬剤性便秘を解消【うまくいく!処方提案プラクティス】第60回

 今回は、治療評価がなされずに長期服用していたカリウム吸着薬の副作用と思われる便秘に着目し、中止することで解消した症例を紹介します。患者さんや施設スタッフの負担となっていることを聴取し、服薬契機や治療評価の時期などに注目してみると、現在の治療の必要性を考えやすくなります。薬剤師の視点で考えたことを整理して、医師と意見共有してみましょう。患者情報88歳、男性(施設入居)基礎疾患認知症、脳梗塞、糖尿病、胸部大動脈瘤、大腸がん術後介護度要介護4服薬管理施設職員が管理処方内容1.アスピリン・ランソプラゾール配合錠 1錠 分1 朝食後2.ビソプロロール錠0.625mg 2錠 分1 朝食後3.ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20% 25g 分1 朝食後4.トラゾドン錠25mg 1錠 分1 朝食後5.シタグリプチンリン錠50mg 1錠 分1 朝食後6.酪酸菌配合錠 3錠 分3 毎食後7.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後8.ピコスルファートNa内用液0.75% 10mL 便秘時5〜15滴で調整本症例のポイントこの患者さんは、施設入居から間もなく硬便(ブリストル便形状スケール[BSFS]1〜2)と便秘症状が強くなり、酸化マグネシウムと頓用のピコスルファートを開始して2週間が経過しました。BSFS 2および排便頻度が2〜3日のため、ピコスルファート15滴で調整を続けていましたが、便秘解消がいまひとつで不穏症状も出現していました。介護スタッフから、服薬錠数が増えると介護抵抗なども強くなるので何かよい手立てはないか、と相談がありました。現状の服用薬剤から何か減らすことで工夫はできないかという点から、薬剤性便秘の可能性を探りました。そこで着目したのが、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーでした。ポリスチレンスルホン酸Caは、腸内のカリウムイオンと本剤のカルシウムイオンを交換することで、カリウムを体外に排泄する薬剤(陽イオン交換樹脂)1)ですが、便秘の副作用が多く、重大な副作用として腸管穿孔の報告2)もあります。導入の経緯を診療情報提供書にさかのぼって調査すると、カリウム値が5.6mEq/Lと高カリウム血症を発症した際に、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー50g 分2 朝夕食後の処方が開始となっていました。その3週間後の採血で3.5mEq/Lに低下したことから現在の量に減量となっていました。大腸がん術後でイレウスのリスクもあることと、認知症があることから便秘増悪でせん妄リスクもあることから排便コントロールは重要です。カリウム値をモニタリングしながらポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーを中止することで、服薬数も減らすことができ、排便コントロールも少なからずポジティブな効果になるのではないだろうかと考えました。医師への相談と経過医師に電話で、下剤調整後の現況を情報共有し、ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーによる弊害の可能性について相談しました。医師も、用量は少ないものの副作用報告として多いことを認識しており、中止しようと返答がありました。また、カリウム値については次回の診療で採血をしてフォローすることとなりました。指示を受けた翌日からポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリーが中止となりました。患者さんは、中止して2日後には排便があり(BSFS 3、中等量)、その後も安定して0〜1日の排便(BSFS 2〜3、中等量)で安定して経過しています。さらに、その後のカリウム値の検査結果も4.0mEq/Lと基準値内で推移していました。便秘増悪には環境変化などさまざま要因がありますが、薬剤性のアプローチは薬剤師にとって大事なアクションの1つだと実感した事例です。1)ポリスチレンスルホン酸Ca経口ゼリー20% インタビューフォーム2)「消化器内視鏡」編集委員会編. 大腸疾患アトラスupdate. 東京医学社;2020. p232.

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日本人脳卒中患者では低体重ほど転帰不良/国立循環器病研究センター

 ボディマス指数(BMI)の高い人は、そうでない人に比べ、生活習慣病や心血管病の発症リスクが高い一方で、心血管病発症後の機能回復はむしろ良好であることが報告されている。脳卒中でも、肥満は発症リスク因子となるが、脳卒中発症後の転帰に関する研究結果は一貫していないことから、国立循環器病研究センターの三輪 佳織氏らの研究グループは、BMIが脳卒中後の転帰に影響があるか検証を行った。その結果、BMIが脳卒中病型ごとの転帰に影響を及ぼすことが判明し、とくにBMIが低い人では不良となることがわかった。この研究結果はInternational Journal of Stroke誌オンライン版2024年4月23日号に掲載された。高齢者の健康管理に役立つBMIの数値は 研究グループは、2006年1月~22年12月まで日本脳卒中データバンク(JSDB)に登録された急性期脳卒中例のうち入院時BMIが入力された症例を対象とした。BMIはWHO推奨のアジア人における定義に基づき、18.5未満を低体重、18.5~23.0未満を正常体重、23.0~25.0未満を過体重、25.0~30.0未満をI度肥満、30以上をII度肥満と分類した。脳卒中は、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血に分類し、さらに脳梗塞病型はTOAST分類を用いて、心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、その他の脳梗塞、原因不明脳梗塞に分類した。 評価項目である退院時の転帰(患者自立度)は、国際標準尺度である修正ランキンスケール(0[後遺障害なし]~6[死亡]の7段階の評価法)を用い、同尺度の5~6を転帰不良、0~2を転帰良好と定義した。これらを共変量で調整した後、混合効果ロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・急性期の脳卒中5万6,230例のうち、脳梗塞(4万3,668例、平均年齢74±12歳、男性61%)、脳出血(9,741例、平均年齢69±14歳、男性56%)、クモ膜下出血(2,821例、平均年齢63±15歳、男性33%)が今回の研究対象。・BMI18.5未満(低体重)は、脳梗塞と各病型(心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞)や脳出血における転帰不良のリスクを約1.4~2.3倍に高めた。・アテローム血栓性脳梗塞では、BMIと転帰不良にU字型の関連を認め、低体重と肥満はいずれも、転帰不良のリスクを高めた。・低体重は、とくに重症の脳梗塞や再灌流療法後における転帰不良と関連した。・BMI23.0~25.0(過体重)や80歳以上の高齢者におけるBMI25.0~30.0(I度肥満)のグループは、脳梗塞後の転帰不良リスクが9~17%低下し、“obesity paradox”を認めた。 研究グループは、今回の研究結果から「高齢者の体重管理の目標値としてBMI25を基準にすることが適切であり、BMIに基づく体重管理は脳卒中の発症予防および重症化予防の実現可能な対策といえる」と考察を行っている。

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日本人結節性痒疹、ステロイド外用薬使用下のネモリズマブの有用性は?

 日本人の結節性痒疹患者におけるネモリズマブの長期投与の最適用量、有効性、安全性を評価した国内第II/III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験の結果が報告された。本試験では、試験開始前のステロイド外用薬の継続下においてネモリズマブ30mg、60mgの有用性をプラセボと比較した。その結果、ネモリズマブ群で結節性痒疹のそう痒や皮膚症状の改善が認められた。東京医科歯科大学皮膚科の横関 博雄氏らNemolizumab-JP11 Study GroupがBritish Journal of Dermatology誌オンライン版2024年4月17日号で報告した。 本試験は、高用量ステロイド外用薬による治療を実施したにもかかわらず、中等度以上のそう痒(かゆみスコア3以上かつPeak Pruritus Numerical Rating Scale[PP-NRS]7以上)を有する13歳以上の日本人結節性痒疹患者を対象とした。対象患者を、ネモリズマブ30mg群(初回投与のみ60mg)、同60mg群(本邦承認外用量)またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、4週間ごとに16週間投与した。対象患者はいずれもステロイド外用薬を併用した。 有効性の主要評価項目は、投与開始16週後のPP-NRS週平均の変化率。有効性の副次評価項目は、そう痒、結節性痒疹の重症度、睡眠、QOLなどであった。なお、本試験は2020年12月に開始され、データ解析は2022年5月に行われた。16週の治療完了後、適格患者は52週の長期試験に組み込まれ追跡された。 主な結果は以下のとおり。・230例が対象となり、ネモリズマブ30mg群に77例、同60mg群に76例、プラセボ群に77例が割り付けられた。・投与開始16週後のベースラインからのPP-NRS週平均の変化率(最小二乗平均値)は、ネモリズマブ30mg群-61.1%、同60mg群-56.0%、プラセボ群-18.6%であった。・ネモリズマブ群とプラセボ群のPP-NRS週平均の変化率の群間差は、30mg併用群が-42.5%(95%信頼区間[CI]:-51.9~-33.1、p<0.0001)、60mg併用群が-37.4%(-46.7~-28.1、p<0.0001)であり、いずれも統計学的に有意な差が認められた。・ネモリズマブ群は、プラセボ群と比較して、結節性痒疹の重症度、睡眠、QOLの改善が大きかった。・ネモリズマブの忍容性は、両用量群とも良好であった。

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喫煙歴があっても食習慣次第で肺気腫リスクが低下

 現喫煙者や元喫煙者など、肺気腫のリスクが高い人であっても、植物性食品中心の食習慣によって、その罹患リスクが抑制される可能性を示唆するデータが報告された。米ネブラスカ大学医療センターのMariah Jackson氏らの研究によるもので、詳細は「Chronic Obstructive Pulmonary Diseases : Journal of the COPD Foundation」3月発行号に掲載された。 肺気腫は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一種で、血液中の二酸化炭素と酸素の交換が行われる肺胞の構造が破壊されて、呼吸機能が不可逆的に低下する病気。原因は主に喫煙であり、肺気腫の進行抑制には禁煙が必須だが、禁煙治療の成功率は高いとは言えない。一方で、植物性食品中心の食習慣が、呼吸器疾患の病状に対して潜在的な保護効果をもたらす可能性が報告されている。Jackson氏らはこのような背景の下、食習慣と肺気腫リスクの関連の有無を検討した。 この研究は、若年成人の冠動脈疾患リスクを探索する目的で実施された、米国での多施設共同前向きコホート研究(CARDIA研究)のデータを用いた二次分析として行われた。CARDIA研究の参加者は18~30歳で、30年間追跡されている。研究参加者5,515人から、追跡開始後20年目までに、自己申告に基づく喫煙習慣(現喫煙または元喫煙)が確認されなかった人や、食習慣に関する調査に回答していなかった人などを除外し、1,351人(平均年齢25.5±3.5歳、女性58.4%)を解析対象とした。 追跡開始25年目に行ったCT検査で、175人(13.0%)に肺気腫が確認された。食習慣の質を評価するスコア(APDQS)の五分位に基づき、植物性食品中心の食習慣らしさで全体を5群に分類して肺気腫の罹患者率を比較すると、スコアの第5五分位群(最も植物性食品中心の食習慣である上位20%)は4.5%であるのに対して、第1五分位群(最も植物性食品中心の食習慣でない下位20%)は25.4%だった。 肺気腫の罹患リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、BMI、累積喫煙量、摂取エネルギー量、教育歴など)を調整後、第5五分位群は第1五分位群に比べて肺気腫罹患のオッズ比(OR)が56%低かった〔OR0.44(95%信頼区間0.19~0.99)、傾向性P=0.008〕。また、APDQSスコアが1標準偏差高いごとにオッズ比は34%低下していた。つまり、食事に占める野菜や果物の割合が高いほど、肺気腫のリスクは低かった。 Jackson氏は、「われわれの研究結果は、食習慣と喘息の罹患リスクとの関連を示した先行研究の結果と一致している。喫煙歴のある人の慢性肺疾患リスクを抑制しようとする場合、食事などの修正可能な因子が極めて重要なポイントとなる」と話している。また同氏は、「食習慣を健康的なものに改善することが、慢性肺疾患に罹患しながらも禁煙が困難な状況にある人の一助となるのではないか。さらなる研究が必要ではあるが、将来的には公衆衛生関連のガイドラインなどで、特に子どもや若年者に対する食事の推奨事項として、これらの情報を提供できる可能性がある」と付け加えている。

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英語で「膿の切開と排膿」は?【1分★医療英語】第132回

第132回 英語で「膿の切開と排膿」は?《例文》医師To treat the abscess, the best course of action will be the I&D procedure, which stands for Incision and Drainage.(膿瘍を治療するために、最適な処置としてはI&Dです。これは切開排膿という意味です)患者Does the procedure hurt?(その処置は痛いですか?)《解説》今回は“I&D”という略語についての解説です。これは“abscess”(膿瘍)の切開排膿の処置を示す表現です。“Incision(切開)and Drainage(排膿)”という表現を略して、“I&D”と表現します。発音としては「アインディー」という感じです。“and”が文の間に入る際、英語だと「ン」のみしか発音しないので注意です。医療者間であれば、当たり前のように“I&D”という表現が使われます。口語のみでなく、カルテにも“I&D”と記載されることが多くあります。“I&D”のみでも“I&D procedure”でも構いません。ただし、医療に詳しい人でない限り患者さんはこの用語を知りませんので、使う際には《例文》のように、“Incision and drainage procedure”といった補足説明が必要でしょう。私が現場で働いている際にも「Please prepare the stuff forアインディー」といった感じで言われて「???」となった経験があるため、今回紹介させていただきました。この文は「切開排膿に必要なものを準備しておいて」という意味ですね。講師紹介

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高齢者診療の困ったを解決するヒントは「老年医学」にあり!【こんなときどうする?高齢者診療】第1回

今回のテーマは、「なぜ今、老年医学が必要なのか?」です。このような症例に出会ったことはありませんか?85歳女性。自宅独居。糖尿病、高血圧、冠動脈疾患の既往有。呼吸苦を主訴に救急外来を受診。肺炎と診断し入院にて抗菌薬加療。肺炎の治療は適切に行われ呼吸苦症状も改善したが、自力歩行・経口摂取が困難になり自宅への帰宅不可能に。適切な診断と治療をして疾患は治ったにもかかわらず状況が悪化してしまう-高齢者診療でよく遭遇する場面かもしれません。老年医学はこうしたジレンマに向かい合うきっかけを提供し、すべての高齢者に対してQOLの維持・向上を図ること、また同時に心や体のさまざまな症状をコントロールするために体系化された学問です。老年医学の原則とアプローチ(「型」)を実践することで、困難事例に解決の糸口をみつけることができるようになります。老年医学の原則:コモンなことはコモンに起きる-老年症候群と多疾患併存日本における平均寿命と健康寿命はいずれも延伸していますが、平均寿命と健康寿命のギャップは医療の進歩にも関わらず顕著には短縮しておらず、女性で約12年、男性で約7~8年あります。1)この期間に多くの高齢者が抱える問題が2つあります。ひとつは老年症候群。たとえば記憶力の低下や抑うつ、転倒や失禁などの認知・身体機能の低下など、高齢者にコモンに起きる症状・兆候を「老年症候群」と総称します。もうひとつは、多疾患併存(multimorbidity)です。年齢に比例して併存疾患の数が多くなり、60歳以降では約20%が3つ以上の疾患を有しているという調査があります。2)高齢者の治療やケアをする場合、老年症候群と多疾患併存があるという前提で診察やケアにあたることが大切です。老年医学の型:5つのM老年症候群があり、多疾患併存状態にある高齢者の診療は、疾患の診断-治療という線形思考で解決しないことがほとんどです。そこで、複雑な状況を俯瞰するために「5つのM」というフレームを使います。要素は、大切なこと(Matters most)、薬(Medicine)、認知機能・こころ(Mind)、身体機能(Mobility)、複雑性・落としどころ(Multi-complexity)の5つです。今回のケースを5つのMを使って考えてみましょう。ポイントはMatters mostから考え始めること。「生きがい」・「大切なこと」といったことでもよいのですが、「今、患者/家族にとって一番の困りごとは何か、肺炎を治療した先の日々の生活に期待することは何か?」を入院加療の時点で考えられると、行うべき介入がさまざまな角度から検討できるようになります。今回のケースでは、肺炎治療後に自宅に帰り、自立した生活をできる限り続けることがゴールだったと考えてみましょう。そうすると、肺炎治療に加えて1人で歩行するための筋力維持が必要だと気付くでしょう。また筋力を維持するためには栄養状態にも気を配らなければなりません。それに気付けば理学療法士や管理栄養士など、その分野の専門職に相談するという選択肢もあります。また、肺炎治療中の絶対安静や絶食は、筋力や栄養状態の維持を同時に叶えるために適切な選択だろうか?本当に必要なのだろうか?と立ち止まって考えることもできます。しかし命に係わるかもしれない肺炎の治療は優先事項のひとつですから、落としどころとして、安静期間をできる限り短くできないか検討する、あるいはリハビリテーションの開始を早める、誤嚥のリスクを見極めて経口摂取を早期から進めていく、といった選択肢が出てくるかもしれません。100%正しい選択肢はありません。ですが5つのMで全体像を俯瞰すると、目の前の患者に対して、提供できる医療やケアの条件の中で、患者のゴールに近づく落としどころや優先順位を考えることができます。高齢者にかかわるすべての医療者で情報収集し共有する今回のケースでは、例として理学療法士や管理栄養士を出しましたが、その他にもさまざまな専門職が高齢者の医療に携わっています。医師は診断・治療といった医学的介入を職業の専門性として持つ一方で、患者とコミュニケーションできる時間が少ないために十分な「患者―医師関係」が構築しにくく、患者・家族が本当に大切にしていることが届きにくい場合があります。そのため、協働できる多職種の方とともに患者の情報を得る、そして彼らの専門性を活かして介入の方法やその分量のバランスをとること、落としどころを見つけることが医師に求められるスキルのひとつです。参考1)内閣府.令和5年度版高齢社会白書(全体版).第1章第2節高齢期の暮らしの動向.2)Miguel J. Divo,et al. Eur Respir J. 2014; 44(4): 1055–1068.

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第216回 オセルタミビルの新たな才能、難聴予防効果を発掘

オセルタミビルの新たな才能、難聴予防効果を発掘タミフルの製品名でよく知られるインフルエンザ治療薬オセルタミビルの新たな才能が米国のクレイトン大学(Creighton University)のチームの新たな研究で判明しました。その才能とは難聴予防効果です。抗がん剤や騒音による難聴を防ぐオセルタミビルの効果が、細胞やマウスの実験で裏付けられました1,2)。騒音による難聴(騒音性難聴)は老化関連難聴に次いで多く、世界のおよそ5%を苛んでいます。予防法といえば騒音を避けることぐらいで、治療法は補聴器の装用や人工内耳の移植に限られます。抗がん剤シスプラチンによる難聴と騒音性難聴に共通する分子経路が先立つ研究で示されています。ということはその共通経路を狙うことでシスプラチンによる難聴と騒音性難聴のどちらも防げるかもしれません。クレイトン大学のTal Teitz氏が率いるチームはまずシスプラチンによる細胞死を防ぐ効果がある薬を見つけることを目指しました。同大学は米国のネブラスカ州オマハ市にあるイエズス会系の私立大学です。Teitz氏らは内耳細胞培養で1,300を数える米国FDA承認薬を検討し、シスプラチンによる細胞死を防ぐ効果が図抜けて高いものを発見しました。それこそオセルタミビルです。マウスから摘出した内耳蝸牛でもオセルタミビルの細胞死予防効果が認められました。内耳蝸牛にシスプラチンを与えると外有毛細胞が減りましたが、オセルタミビルも与えたところ外有毛細胞は減らずに済みました。また、オセルタミビルのみの投与で外有毛細胞が減ることはなく、試した用量のどれも毒性は幸いにもありませんでした。同様の効果はマウスでも認められ、シスプラチン投与マウスの難聴や外有毛細胞の減少をオセルタミビルは防ぎました。またオセルタミビルはマウスの騒音による難聴を防ぐ効果も示しました。オセルタミビルはインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼ活性を阻害するようにできており、哺乳動物の体内での同剤の標的は知られていません。薬の標的を予想してくれるウェブサイトSuperPREDにオセルタミビルの構造を入力したところ、リン酸化によって活性化するERK2やNF-κBが最も有力と判定されました。ERK1/2とNF-κBはどちらもシスプラチンや騒音による難聴と関連します。先立ついくつかの研究によると、ERKのリン酸化の亢進、それに免疫細胞動員をもたらすNF-κB活性化がシスプラチンや騒音に伴って生じます。そこでオセルタミビルがリン酸化ERK(pERK)を減らす働きがあるかどうかがマウスの内耳蝸牛を使って調べられました。マウス内耳蝸牛のpERKはシスプラチンのみの投与では有意に増え、オセルタミビルも投与するとシスプラチン投与のみに比べてより少なくて済みました。オセルタミビルはSuperPREDが予想したようにERK活性化を抑制する働きがあるようです。ERK1/2は炎症と関連することが知られ、騒音やシスプラチンは免疫細胞の集合を伴う炎症促進を招きます。それに、難聴とは異なる分野での先立つ細胞実験でオセルタミビルの抗炎症作用が示されています。どうやらオセルタミビルは騒音に伴う炎症も鎮めるようです。マウスの蝸牛の炎症促進(CD45)免疫細胞は騒音を聞かすと増え、オセルタミビルを投与すると有意に減少しました。その結果はオセルタミビルの抗炎症作用を示唆しています。オセルタミビルは1999年に米国で承認されてからインフルエンザ治療に長く使われており、世界中で広く利用されています。今回の結果を受けて著者は、シスプラチンや騒音による難聴を防ぐ聴覚保護薬としてのオセルタミビルの使い道は有望だと結論しています。参考1)Sailor-Longsworth E, et al. bioRxiv. 2024 May 8. [Epub ahead of print]2)New Study Highlights Tamiflu as a Promising Otoprotective Drug / Hearing Health & Technology Matters.

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日本のプライマリケアにおける危険な飲酒やアルコール依存症患者のまん延状況

 岡山県精神科医療センターの宋 龍平氏らは、日本のプライマリケア患者における危険な飲酒と潜在的なアルコール依存症との関係を調査し、患者の変化への準備状況や他者の懸念に対する患者の意識を評価した。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2024年4月4日号の報告。 2023年7〜8月、クラスターランダム化比較試験の参加者を対象としたスクリーニング調査として、多施設横断的研究を実施した。対象は、20〜74歳のプライマリケア診療所の外来患者。危険な飲酒とアルコール依存症疑いの有病率、患者の変化への準備状況、他者の懸念に対する患者の意識を評価するため、アルコール依存症チェックシート(AUDIT)および自己記入式アンケートを用いた。 主な結果は以下のとおり。・診療所18施設から参加した1,388例のうち危険な飲酒またはアルコール依存症の疑いと特定された人は、22%(95%信頼区間[CI]:20〜24)であった。・AUDITスコアが増加すればするほど、変化への対応が増加した。・AUDITスコアが8〜14の人のうち、医師を含む他者が過去1年間の飲酒について懸念を指摘したと報告した人の割合は、わずか22%(95%CI:16〜28)であった。AUDITスコアが15以上の人では、74%であった。 著者らは、「本調査より、日本のプライマリケア現場における普遍的または高リスクのアルコールスクリーニングおよび短期的介入の必要性が示唆された」としている。

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トリプル療法で効果不十分のCOPD、テゼペルマブの有用性は?/ATS2024

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、吸入ステロイド薬(ICS)・長時間作用性β2刺激薬(LABA)・長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の3剤を1つの吸入器で吸入可能なトリプル製剤が使用可能となっているが、トリプル療法を用いてもCOPD増悪や入院に至る患者が存在する。COPD増悪はQOLを低下させるだけでなく、呼吸機能の低下や死亡リスクの上昇とも関連することが知られており、新たな治療法が求められている。 そこで、さまざまな分子に対する分子標的薬の開発が進められている。その候補分子の1つにTSLPがある。TSLPは、感染や汚染物質・アレルギー物質への曝露などにより気道上皮細胞から分泌され、炎症を惹起する。TSLPはタイプ2炎症と非タイプ2炎症の双方に関与しているとされており、TSLPの阻害はCOPDの幅広い病態に対してベネフィットをもたらす可能性がある。そのような背景から、すでに重症喘息に用いられているヒト抗TSLPモノクローナル抗体テゼペルマブのCOPDに対する有用性が検討されている。米国胸部学会国際会議(ATS2024 International Conference)において、英国・マンチェスター大学のDave Singh氏が海外第IIa相試験「COURSE試験」の結果を発表した。試験デザイン:海外第IIa相無作為化比較試験対象:トリプル療法を用いているにもかかわらず、過去12ヵ月以内に中等度または重度のCOPD増悪が2回以上発現した40~80歳のCOPD患者333例(喘息患者および喘息の既往歴のある患者は除外)試験群(テゼペルマブ群):テゼペルマブ(420mg、4週ごと皮下注射)+トリプル療法を52週間(165例)対照群(プラセボ群):プラセボ+トリプル療法を52週間(168例)評価項目:[主要評価項目]中等度または重度のCOPD増悪の年間発現回数[副次評価項目]気管支拡張薬吸入前の1秒量(FEV1)、QOL、安全性など 主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち、過去12ヵ月以内に中等度または重度のCOPD増悪が3回以上発現した患者が41.1%(137例)を占め、血中好酸球数300cells/μL以上の患者は16.8%(56例)にとどまっていた。・主要評価項目の中等度または重度のCOPD増悪の年間発現回数は、テゼペルマブ群がプラセボ群と比較して数値的に17%低下したが、統計学的有意差は認められなかった(90%信頼区間[CI]:-6~36、片側p=0.1042)。・サブグループ解析において、血中好酸球数が多い集団でテゼペルマブ群の中等度または重度のCOPD増悪の年間発現回数が少ない傾向にあった。血中好酸球数(cells/μL)別のレート比および95%CIは以下のとおり。 150未満:1.19、0.75~1.90 150以上:0.63、0.43~0.93(post hoc解析) 150以上300未満:0.66、0.42~1.04 300以上:0.54、0.25~1.15・52週時における気管支拡張薬吸入前のFEV1のベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、テゼペルマブ群26mL、プラセボ群-29mLであり、テゼペルマブ群が改善する傾向にあった(群間差:55mL、95%CI:14~96)。・52週時におけるSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコアのベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、テゼペルマブ群-4.80、プラセボ群-1.86であり、テゼペルマブ群が改善する傾向にあった(群間差:-2.93、95%CI:-6.23~0.36)。・52週時におけるCOPDアセスメントテスト(CAT)スコアのベースラインからの変化量(最小二乗平均値)は、テゼペルマブ群-3.04、プラセボ群-1.18であり、テゼペルマブ群が改善する傾向にあった(群間差:-1.86、95%CI:-3.31~-0.40)。・有害事象はテゼペルマブ群80.6%、プラセボ群75.0%に発現したが、新たな安全性シグナルはみられなかった。 Singh氏は、全体集団では主要評価項目を達成できなかったものの、血中好酸球数が多い集団でテゼペルマブの有効性が高かったことを指摘し、血中好酸球数150cells/μL以上の集団がテゼペルマブによるベネフィットを得られる集団となる可能性があると考察した。

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