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2つの変異を持つインフルエンザウイルス、タミフルが効きにくい可能性も

 米国の保健当局が、米国内で2つの変異を併せ持つH1N1インフルエンザウイルスの感染者が2例、確認されたことを報告した。米疾病対策センター(CDC)の研究グループによると、この変異株は、ウイルス表面のタンパク質であるノイラミニダーゼの2カ所に変異(I223VとS247N)を持ち、代表的な抗インフルエンザウイルス薬であるオセルタミビル(商品名タミフル)の効果を減弱させる可能性があるという。このインフルエンザウイルスの二重変異株に関する研究グループの分析結果は、CDCが発行する「Emerging Infectious Diseases」7月号に掲載された。 この最新の分析結果は、2024年3月に香港の研究グループが「The Lancet」に発表した、これら2つの変異がオセルタミビルへの耐性を高めている可能性があることを示した報告書に続くものだ。CDCの研究グループによる実験では、この二重変異株のオセルタミビルに対する感受性は、これまでのいくつかのインフルエンザウイルスの変異株と比べて最大で16倍低いことが示された。 ただしCDCは、現時点ではパニック状態になる必要はないとの見解を示している。CDCのスポークスパーソンはCBSニュースの取材に対して、「この二重変異株は、より新しい薬であるバロキサビル マルボキシル(商品名ゾフルーザ)などのオセルタミビル以外の抗インフルエンザウイルス薬に対する感受性は保持していた。そのため、直ちに現在の臨床判断を変える必要性はない」と話すとともに、ワクチン接種はこの二重変異株に対しても保護効果があるとしている。 CDCの報告書によれば、「この二重変異株は、複数の大陸の国々に急速に広がっている」ものの、現時点ではまだまれだという。二重変異株は、2023年5月にカナダのブリティッシュコロンビア州の症例で初めて確認されて以降、アフリカ、アジア、欧州、北米、オセアニアから総計101症例が報告されているとCBSニュースは報じている。米国の2症例は、2023年の秋から冬にかけてコネチカット州保健局とミシガン大学の研究室で検出された。 CDCのスポークスパーソンは、「次のシーズンにこの二重変異株がどの程度流行するかは不明だ。同ウイルスの感染拡大と進化の状況について監視を続けることが重要だ」と話している。 CDCによると、オセルタミビルは最も広く使用されている抗インフルエンザウイルス薬である。2023年に「Pediatrics」に発表された研究によると、小児に処方される抗インフルエンザウイルス薬の99.8%をオセルタミビルが占めているという。また、CBSニュースは、2024年に酪農場で発生し、現在も流行が続いている鳥インフルエンザに感染した人の治療にもオセルタミビルが使用されていると報じている。

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第221回 年2回注射でHIV感染知らず

年2回注射でHIV感染知らずHIV感染の治療薬として承認済みのギリアド・サイエンシズのHIVカプシド阻害薬レナカパビルの予防効果を調べた第III相試験で、半年に1回の同剤注射は2千例強の女性のHIV感染を一切許さず、毎日の経口薬服用に比べてより手っ取り早い予防手段の確かな効果が裏付けられました1)。PURPOSE 1という名称の同試験には南アフリカとウガンダの28ヵ所の生まれながらの女性(cisgender women and adolescent)5,300例超が参加しました。HIVに感染していないそれらの若い(16~25歳)女性は半年に1回のレナカパビル注射群、経口薬エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミド(F/TAF)1日1回服用群、経口薬エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシル(F/TDF)1日1回服用群のいずれかに2対2対1の割合で割り振られました。有効なHIV予防法はすでにいくつかあることから、HIV予防の臨床試験でプラセボ群を設けることは非倫理的とおおむねみなされています。ゆえに本試験PURPOSE 1でもプラセボ群はなく、試験に集まった選定前の女性集団(世間の女性)のHIV発生率(background HIV incidence)がプラセボに代わる主たる比較対象とされ、F/TDF投与群の感染率が第2の比較対象とされました。試験の結果レナカパビル注射群の女性2,134例にHIV感染は一切生じず、その感染率(0例/100人年)は世間の女性のHIV感染率(2.41例/100人年)や1,068例中16例が感染したF/TDF投与群のHIV感染率(1.69例/100人年)に比べて有意に低いことが示されました。2,136例中39例が感染したF/TAF服用群のHIV感染率(2.02例/100人年)はF/TDFと似たりよったりで、残念ながら世間の女性に比べて有意に低いことは示せませんでした。感染予防のための経口薬の連日服用はたいてい困難なことが先立つ試験で示されています。今回の試験でのF/TAFやF/TDFの服用遵守がどうだったかは現在解析中です。レナカパビルの予防効果判明によりPURPOSE 1試験は早仕舞いとなり、F/TAFやF/TDFを服用していた被験者もレナカパビルを使えるようになります。HIV感染の恐れが大きい人へのレナカパビル年2回注射の予防効果を調べているもう1つの第III相PURPOSE 2試験の結果が今年遅くか来年早々に判明します。PURPOSE 2は米国、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、ペルー、南アフリカ、タイで実施されており、男性として生まれた連れ合い(partner assigned male at birth)とのコンドームなしの肛門性交を受け入れている生まれながらの男性(cisgender man)、生まれたときは女性だった男性(transgender man)、生まれたときは男性だった女性(transgender woman)、無性(gender non-binary individual)の被験者3千例強(3,295例)が参加しています2)。もし成功裏となればそのPURPOSE 2の結果とPURPOSE 1の結果を使ってレナカパビルのHIV感染予防用途が承認申請されます。今回速報されたPURPOSE 1の結果の詳細は後に学会で発表されます。アナリストの調査によると、まだ感染していないがそうなる恐れが大きい人にレナカパビル年2回皮下注射は広く受け入れられそうです3)。感染予防のレナカパビル皮下注射は市場を大いに拡大し、数年のうちに年間売り上げ17億ドルを超えると同アナリストは予想しています。上述のとおりレナカパビルはHIVの治療薬として先立って承認されており、シュンレンカという製品名で販売されています。参考1)Gilead’s Twice-Yearly Lenacapavir Demonstrated 100% Efficacy and Superiority to Daily Truvada for HIV Prevention/Gilead Sciences2)PURPOSE 2試験(ClinicalTrials.gov)3)Gilead's twice-yearly HIV prevention shot hits bullseye, trial stopped early/FirstWord

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臨床現場で認知症やMCI患者のアドヒアランスは把握可能か

 多くの患者でみられるアドヒアランスの不良は、健康状態の悪化、QOLの低下、医療費の増大の原因となる。スペイン・Instituto CUDECA de Estudios e Investigacion en Cuidados Paliativosの氏Pilar Barnestein-Fonsecaらは、軽度認知障害(MCI)および認知症患者におけるアドヒアランス不良の割合を推定するため、錠剤カウントの参照法(RM)を考慮し、実臨床で有用かつ簡便な2つの自己報告法(SRM)の診断的妥当性を評価した。Frontiers in Pharmacology誌2024年5月22日号の報告。 本コホートは、多施設ランダム化比較試験に組み込まれた。8施設より387例が、非確率的連続サンプリング法を用いて選択された。包括基準は、ミニメンタルステート検査(MMSE)スコア20〜28点、55歳以上、薬物治療中、治療薬剤の自己管理とした。対象患者のフォローアップ調査は、ベースラインから6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月にわたり実施した。治療アドヒアランスに関連する変数は、フォローアップ期間の各ポイントで測定した。変数には、年齢、性別、治療、併存疾患、MMSE testを含めた。アドヒアランスには、錠剤数、SRMとしてのMorisky-Green test(MGT)、Batalla test(BT)を含めた。統計分析には、記述式分析および95%信頼区間(CI)を含めた。診断の妥当性には、SRMとRMのオープン比較統計的関連性、層別比較(アドヒアランス不良を評価するための最良の方法としてRM、κ値、感度、特異度、尤度比)を含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数387例の平均年齢は73.29歳(95%CI:72.54〜74.04)、女性の割合は59.5%であった。・併存疾患は、HTAが54.4%、骨関節病変が35.9%、DMが24.5%であった。・MMSE平均スコアは、25.57(95%CI:25.34〜25.8)であった。・RMによる治療アドヒアランスは、ベースラインの22.5%から6ヵ月26.3%、12ヵ月14.8%、18ヵ月17.9%へ変動がみられた。・SRMによる治療アドヒアランスは、ベースラインの43.5%から6ヵ月32.4%、12ヵ月21.9%、18ヵ月20.3%であった。・κ値は各ポイントで、すべての比較において統計学的に有意であった(スコア:0.16〜0.35)。・診断の妥当性に関する感度、特異度は、次のとおりであった。【MGT】感度:0.4〜0.58、特異度:0.68〜0.87【BT】感度:0.4〜0.7、特異度:0.66〜0.9【MGT+BT併用】感度:0.22〜0.4、特異度:0.85〜0.96 著者らは、「SRMは、アドヒアランス不良患者を正しく分類可能なツールであり、実臨床でも非常に使いやすく、結果もすぐに得られるため、MCIおよび軽度の認知症患者の服薬アドヒアランスの判定に使用可能である」としている。

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心臓植込み電気デバイスの革新的一歩 ーモジュール式リードレスペーシング除細動システムー(解説:高月誠司氏)

 本邦では1968年ペースメーカー、1996年に植込み型除細動器が保険収載された。これらは静脈内にリードを留置するシステムであるが、リードには断線や感染のリスクがあり、植込み遠隔期のリード抜去はリスクを伴う。そのため経静脈リードのないシステムが開発されてきた。2016年に皮下植込み型除細動器(SICD)、2017年にはリードレスペースメーカーが保険収載されたが、どちらも血管内にリードを留置しないシステムである。ただしSICDは、心室頻拍に対する抗頻拍刺激ができない、徐脈性不整脈に対するペーシングができないという限界があった。 SICDとリードレスペースメーカーを組み合わせて植え込み、通信させて使うことにより、SICDの欠点をカバーするのが、モジュラー通信リードレスペーシング・除細動器システムである。MODULAR ATP研究では、本システムのfeasibilityが報告された。151例が6ヵ月のフォローアップ期間を完了し、ワイヤレスデバイスの通信成功率は98.8%であった。151例の患者のうち147例(97.4%)が2.0V以下のペーシング閾値を有しており、抗頻拍ペーシングによる頻拍停止率は61.3%であった。本研究では平均年齢60歳という比較的若い患者群に植え込まれたが、リードレスペースメーカーの電池寿命時の対応など課題もあるが、心臓植込み型電気デバイスにおける画期的な進歩と考える。

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メトホルミンに追加すべき薬剤はSGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬それともSU薬?(解説:住谷哲氏)

 GRADE(Glycemia Reduction Approaches in Diabetes: A Comparative Effectiveness Study)研究1)は、メトホルミン単剤で血糖管理目標を達成できない患者に追加する血糖降下薬としてインスリン(グラルギン)、SU薬(グリメピリド)、GLP-1受容体作動薬(リラグルチド)またはDPP-4阻害薬(シタグリプチン)の有用性を比較検討したランダム化比較試験である。その結果は、HbA1c低下作用はグラルギンとリラグルチドが他の2剤に比べて優れており、体重減少効果はリラグルチドが最も優れていた。 米国が国家予算を投入したGRADE研究であるが、メトホルミンに追加する2剤目として経口血糖降下薬ではなく注射薬(グラルギンまたはリラグルチド)を選択することは実臨床においてそれほど多くない。さらに2剤目の追加薬剤の選択肢にSGLT2阻害薬が含まれていないのが、この研究の結果を実臨床に反映しにくい理由の1つである。 本研究は新しい解析手法であるtarget trial emulation(標的試験模倣と訳すべきか。概要については過去の本連載を参考されたい2])を用いて、メトホルミンに追加する薬剤としてSGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬およびSU薬のいずれが優れているかを英国CPRD(Clinical Practice Research Datalink)のデータを対象にして検討したものである。結果は、HbA1c低下作用、BMI減少作用、収縮期血圧低下作用においてSGLT2阻害薬が他の2剤に比較して優れていた。さらにSGLT2阻害薬は、心不全による入院抑制はDPP-4阻害薬に比較して優れており、腎疾患の進行抑制はSU薬に比較して優れていた。 臓器保護薬としてのSGLT2阻害薬の有用性は、高リスク患者を対象としたランダム化比較試験で明らかにされてきた。したがって多くのガイドラインでは、心不全または慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者への積極的投与が推奨されている。しかし、われわれが通常外来で診察している低リスク患者に対する有用性はこれまで不明であった。本研究の結果は、低リスク患者においても血糖降下作用、BMI減少作用、収縮期血圧低下作用においてSGLT2阻害薬がDPP-4阻害薬、SU薬と比較して優れていることを示した点でインパクトが大きい。ただし本研究はメトホルミン投与患者への追加薬剤としての検討であり、この点には留意する必要がある。

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HIVと関連するがん【1分間で学べる感染症】第6回

画像を拡大するTake home messageHIVと関連するがんは「AIDS指標悪性腫瘍」と「非AIDS指標悪性腫瘍」の2つがあることを押さえよう。「AIDS指標悪性腫瘍」は、1)非ホジキンリンパ腫、2)カポジ肉腫、3)子宮頸がんの3つを覚える。HIV感染者ではがん罹患の頻度が高いため、積極的なスクリーニングにより早期発見が求められる。HIV感染者では非感染者と比較して、がん罹患の頻度が高いとされています。なかでも、とくに関連があるとされる「AIDS指標悪性腫瘍」は、HIV感染者がこれらのがんを発症した場合、AIDSを発症していることを意味します。「AIDS指標悪性腫瘍」には以下の3つが挙げられます。1)非ホジキンリンパ腫2)カポジ肉腫3)子宮頸がんまた、これらの3つには入らないものの、HIV感染者で非感染者と比較して発生頻度が高いがんを「非AIDS指標悪性腫瘍」と呼びます。「非AIDS指標悪性腫瘍」には以下が挙げられます。1)肺がん2)肛門がん3)ホジキンリンパ腫4)口腔がん・咽頭がん5)肝臓がん6)外陰部がん7)陰茎がん抗レトロウイルス療法(ART)により「AIDS指標悪性腫瘍」の発生頻度は低下しましたが、「非AIDS指標悪性腫瘍」に関しては年々増加してきていることが報告されています。積極的なスクリーニングにより早期発見が求められます。1)Yarchoan R, et al. N Engl J Med. 2018;378:1029-1041.2)Yuan T, et al. EClinicalMedicine. 2022;52:101613.3)Reid E, et al. J Natl Compr Canc Netw. 2018;16:986-1017.4)“アンケート結果 HIVの悪性腫瘍(非AIDS指標疾患)の動向−2022年症例分解析−”. 日本医療研究開発機構 エイズ対策実用化研究事業. 2024-05. , (参照2024-06-05)

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統合失調症に対する2種類の長時間作用型注射剤抗精神病薬の併用療法

 統合失調症患者のうち、複数の治療に対し抵抗性を示す患者の割合は、最大で34%といわれている。継続的かつ適切な治療が行われない場合、再発、再入院、抗精神病薬による薬物治療の効果低減、副作用リスクの上昇を来す可能性が高まる。統合失調症患者のコンプラインアンスを向上させ、臨床アウトカムやQOLの改善に対し、長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬の有用性が示唆されており、治療抵抗性統合失調症患者に対しては、2種類のLAI抗精神病薬を同時に投与することが推奨されている。イタリア・University of Campania Luigi VanvitelliのSalvatore Cipolla氏らは、統合失調症またはその他の精神病スペクトラム障害患者に対する2種類のLAI抗精神病薬併用に関する利用可能なエビデンスのレビューを行った。Brain Sciences誌2024年4月26日号の報告。 PRISMAステートメントに従い、2024年2月9日までに公表された2種類のLAI抗精神病薬のさまざまな組み合わせに関する研究を、PubMed、Scopus、APA PsycInfoより検索した。統合失調症および関連疾患の患者に対する2種類のLAI抗精神病薬の組み合わせとその臨床アウトカムを報告した研究を対象に含めた。 主な結果は以下のとおり。・最終分析には、ケースレポート9件、ケースシリーズ4件、観察的レトロスペクティブ研究2件を含めた。・LAI抗精神病薬の併用療法では、良好な治療反応が報告され、新規または予期せぬ副作用は報告されなかった。・さまざまな薬剤の組み合わせが使用されていた、アリピプラゾール水和物とパリペリドンパルミチン酸月1回(32回)の併用が最も多かった。 著者らは「2種類のLAI抗精神病薬による治療レジメンは、すでに多くの臨床現場で用いられており、統合失調症スペクトラム障害の治療に有用であり、効果的かつ比較的に安全な治療戦略であると認識されている」としている。

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脳梗塞発症後4.5時間以内、reteplase vs.アルテプラーゼ/NEJM

 発症後4.5時間以内の脳梗塞急性期患者において、90日後の良好な機能的アウトカムに関してreteplaseのアルテプラーゼに対する優越性が示された。中国・首都医科大学のShuya Li氏らRAISE Investigatorsが、同国62施設で実施した第III相無作為化非盲検非劣性試験「Reteplase versus Alteplase for Acute Ischemic Stroke trial:RAISE試験」の結果を報告した。アルテプラーゼは脳梗塞急性期再灌流療法の標準的な薬剤であるが、それに代わる血栓溶解薬としてreteplaseをアルテプラーゼと比較した有効性が第II相試験で示されていた。NEJM誌2024年6月27日号掲載の報告。90日後のmRSスコア0または1の割合を比較 研究グループは、年齢18~80歳、発症後4.5時間以内、発症前の機能状態良好(修正Rankinスケール[mRS]1以下、スコア範囲:0[障害なし]~6[死亡])、NIHSSスコア4~25の脳梗塞患者を、reteplase群(18mgを2分間でボーラス投与、30分間隔で2回)またはアルテプラーゼ群(0.9mg/kg、最大90mg、投与量の10%を1分間でボーラス投与、残りを1時間で静脈内投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要アウトカムは、ITT集団における90日後のmRSスコア0または1で定義される良好な機能的アウトカム、副次アウトカムは90日後のmRSスコアが0~2、NIHSSスコアの早期改善(24時間後および7日後に同スコアが4点以上減少または1点以下)などであった。 安全性の主要アウトカムは、36時間以内の症候性頭蓋内出血、副次アウトカムは90日以内の死亡、90日以内の頭蓋内出血、有害事象などとした。有効性は主要アウトカムを達成、ただし90日以内の頭蓋内出血と有害事象の発現率は増加 2022年3月21日~2023年6月22日に、計1,412例が無作為化された(reteplase群707例、アルテプラーゼ群705例、ITT集団)。また、安全性解析には試験薬の投与を受けた1,399例が含まれた。 90日後のmRSが0または1の患者の割合は、全体で97.0%(1,370/1,412例)、reteplase群で79.5%、アルテプラーゼ群で70.4%であり、reteplase群が有意に優れていた(リスク比:1.13、95%信頼区間[CI]:1.05~1.21、非劣性のp<0.001、優越性のp=0.002)。 発症後36時間以内の症候性頭蓋内出血は、reteplase群で700例中17例(2.4%)、アルテプラーゼ群で699例中14例(2.0%)に発生した(リスク比:1.21、95%CI:0.54~2.75)。90日以内の死亡はそれぞれ30例(4.3%)、24例(3.4%)(リスク比:1.25、95%CI:0.66~2.35)に認められた。90日以内の頭蓋内出血の発生率はreteplase群で高かった(7.7% vs.4.9%、リスク比:1.59、95%CI:1.00~2.51)。有害事象の発現率も同様であった(91.6% vs.82.4%、リスク比:1.11、95%CI:1.03~1.20)。

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第217回 バリアフリーはどこにある!?車いす介助から見えた現実

「百聞は一見に如かず」とはよく言ったものである。今まさに人生初の経験をしている。車いすの使用である。といっても自分自身が車いすを利用することになったわけではなく、父親の介助者としてだ。以前、本連載でも触れたが、80代後半の両親は今も健在で、父親は軽度認知障害(MCI)持ちで歩行も亀の歩み状態となっている。それでも父親の出掛けたがりな性分は変わらず、それに付き添う母親のイライラが募った結果、私と母親は折り畳み式の軽量車いすの利用を検討し始めていた。ただ、前述の本連載バックナンバーでも触れたように、介助者である母親が納得するものを見つけるという段階で停滞を余儀なくされた。ところが利用しなければならない事態が現実に発生してしまったのだ。父親の容態ちょうどゴールデン・ウイーク(GW)が始まる1週間前のことだった。いつもより早く目が覚めた私は、ジムで小一時間運動し、シャワールームで汗を流して脱衣所に戻ると、スマートフォンに実家近くに住む薬剤師の親戚からLINE通話の着信があったことに気付いた。朝から何だろうと思ってそのまま体を拭いていると、今度は母親から電話の着信。何かあったと直感的に思った。母親には以前から「生死にかかわること以外で日中に音声電話をかけてこないこと」と言い含めていたからだ。急いで電話を受けると、「詳細はLINEに送ってあるから。お父さん、今、病院に救急車で向かっている」と一気にまくしたてられた。母親の声の背後に救急車のサイレン音がかぶさっていた。「わかった。また、連絡頂戴」と言って、一旦電話を切った。そのままLINEを立ち上げてメッセージを確認すると、「しゃべりなくなって救急車で市立病院に向かっている。体は元気(原文ママ)」とのメッセージ。わかるような、わからないような。即座に「脳梗塞か」とだけLINEメッセージを返し、急いで服を着て事務所に戻った。道すがら前述の親戚に折り返し、どうやら「起床後に(父親の)足が浮腫んでいた」と母親が彼に話していたことを知った。事務所に到着した時点で母親から新たなメッセージが着信していた。「一時的に、梗塞したようで(救急)車の中で回復した。病院について診察受けている、大丈夫だと思う」私はこの日、午前10時と午後1時からオンラインでの打ち合わせがあったが、安定した通信状態が必要なので、それが終わるまで事務所は動けない。昼直前に母親から「脳梗塞が見つかり、入院になった」とのLINEメッセージが着信した。午後の打ち合わせを終え、そこから不在に備えた雑務を諸々こなして、仙台駅に到着したのは6時過ぎ。父親と面会できたのは翌日だった。面会時はちょうど理学療法士がついてリハビリ中。横で眺めていると、結構キチンとやり取りし、手足も動いている。理学療法士が去ってから、父親が起き上がってベッドの端に腰掛け、「この姿勢のほうが耳がよく聞こえる。ワハハ」と元気そうだった。主治医からは、アテローム血栓性脳梗塞で搬送時のNational Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)スコアは1。血栓回収療法は行わず、抗血小板薬の内服のみで対応しているが、経過観察や検査のため10日間の入院と説明を受けた。結局、私はそのままGW半ばまで病院にアクセスの良い市内のホテルに滞在し、毎日父親を見舞った。退院日には再び医師の説明を受け、軽度の心房細動が確認されたため、今後は内服薬を抗血小板薬から抗凝固薬へ切替えるとの方針が告げられた。駅構内・ホームで悪戦苦闘!最終的に後遺症もなく退院に漕ぎ着けたのだが、10日間の入院の結果、教科書通りなのかもしれないが、歩行力が低下してしまった。入院前から通所リハビリは利用していたが、母親が利用先の理学療法士から聞いた話によると、退院後は以前よりもふらつくシーンがやや増えたとのこと。このため母親が急遽ケアマネジャーに相談し、遠出をする時のことも考慮して、折り畳み式の軽量車いすをレンタルすることになったのだ。軽量車いすが実家に届いたのは5月末。そのため父親の状態確認と車いす介助を経験するため、私は帰省することにした。父親は自宅内や自宅近傍は自力歩行をしていたが、やや距離があるところに出かける時は車いすを使っていた。そして実家には今回レンタルした軽量車いすのほかに前述の親戚から譲り受けた車いすがあり、母親は仙台市内などの繁華街に出かける時は前者、地元の街中を移動するときは後者と使い分けていた。実際に介助してみると、なかなか大変である。どちらの車いすもまだ50代の私にとって重量面で堪えることはないが、非日常の車いす操作に伴い、さまざまな“ケアレスミス”が生じる。たとえば、父親の車いすを押しながら駅の自動改札を抜けた時のこと。改札の幅に問題はなく、父親は車いすに座ったまま自分の交通系ICカード(以下、ICカード)を自動改札に見事にタッチ(実はMCIだとこの自動改札のタッチを本人が忘れたりする)。ピッと音が鳴りホッとしてそのまま改札を通過した。実はここですでに“ミス”が発生していた。この時は母親も一緒にいたため、「あんた(私のこと)、自分のICカードは?」と言われてハッとした。父親のことに集中するあまり自分のICカードのタッチを忘れてしまっていたのだ。そのままホームに進む。以前は父親とこうして出かける時は、父親本人はシルバーカーを押していたので、改札前の歩行距離が最短で済む乗降口に並んでいた。この時も車いすを押しながらいつものようにその場所に並ぼうとすると、母親から「こっち!」と改札から少し離れた対抗ホームに向かう階段近くにある乗降口へと誘導された。「何でだろう?」とやや不思議に思ったが、電車が到着する2分ほど前にようやく理由がわかった。母親から促されて父親が電車に乗るために車いすから立ち上がる。最寄り路線を走るJRの車両はいまもドアが開いたところに大きな段差があるため、乗降時は車いすのままとはいかず、父親も自力歩行をしなければならない。そのために父親が車いすから立ち上がる際、足腰が弱った父親が不安定な車いす本体以外で支えとして掴まえることができるポールが、この階段脇の乗降口にしかなかったのだ。父親が立ち上がる直前に私は手早く車輪のブレーキをかけ、車いすを折り畳んで2人の後に続いた。この辺の操作を覚えることは何の苦もない。車内に乗り込むと、母親の指示で折り畳んだ車いすをシルバーシート脇の車両連結部付近にある広めのスペースに置いた。そして自分も両親の真向かいの席に座り、ホッと一息ついてから「あれ?」となった。というのも車いす導入後、母親はすでに父親と車いすを電車に乗せ、仙台市内の繁華街まで何度か出かけている。母親と2人がかりですら、気の抜けない作業だと私が思っていた「駅到着~電車に乗り終える」までの一連の作業を、母親はこれまで1人でこなしていたことに気付いたからだ。80代後半の小柄な母親にとってはかなり大変な作業なはずなのに。仙台駅に到着後は、私が軽量車いすを先に抱えて降りて、ホーム上で展開し、母親の介助で降りてきた父親を乗せ、ホーム中ほどにあるエレベーターまで移動。そこで改札階に上がり、3人で改札を抜ける。この時は私も忘れずICカードをタッチした。駅でのバス乗降、何が大変かって…父親のかかりつけ歯科医院の受診日のこと。とりあえず母親が路線バスで行ってみたいというので、仙台駅の有名なあのペデストリアンデッキ上を車いすを押しながら移動した。バスターミナルへはデッキから階段で降りていくことになる。幸いエレベーターはあったが、実はこれも大変。というのも駅舎からバス乗り場までの最短距離にある階段そばにはエレベーターはなく、デッキ上を大回りで移動してエレベーターがある場所まで移動して乗り場に降りることになった。バス乗り場では車いすに乗った父親の姿を見つけた係員が親切に誘導してくれ、事なきを得てバスに乗り込めた。しかし、折り畳んでもそれなりに大きさのある車いすを車内で保持しながらの移動は決して楽ではなく、人目もやや気になってしまう。目的地のバス停到着時は電車と同じく私が先行して降車し、母親に介助されながら降車した父親を車いすに乗せて、歯科医院まで私が歩道上を押して歩いた。何でもない作業に思っていたのだが、実はこれがそうでもない。歩道の所々には沿道から車両用の横断勾配があるのだが、この勾配に片輪でもかかると、かなりバランスが崩れる。自分は両親と比べまだ若いからとやや過信していたが、勾配でのバランス制御は介助者が車いすを押す力の多寡だけで解決するのはやや無理がある。そして目的地の歯科医院に到着すると、入口は道路の縁石からやや上方に傾斜したところにあった。そのまま前輪を浮かすように傾斜に乗り上げて前進しようとするもうまくいかない。結局、母親のアドバイスに従い、180度回転させ、引き上げるようにして傾斜を上ることになった。認知症カフェ参加、役所までヒヤヒヤそしてこの翌日には、実家近くの役所で開かれる認知症カフェに参加するため、役所まで再び父親を車いすに乗せて連れて行くことなった。この時に使用したのは親戚から譲り受けたほうの車いす。実家から役所までは2ルートあるのだが、母親からは歩道が綺麗に整備されたルートではなく、農道を拡張したルートを行くように指示された。曰く、前者はあの横断勾配が多くバランスを崩しやすいのだという。すでに前日にこの件は経験済みだったので、アドバイスに従うことにした。もっとも後者のルートは専用の歩道はなく、すぐ脇をビュンビュン乗用車が通り過ぎる。しかも路面の舗装は排水性アスファルトと呼ばれる粗い舗装のため、車いすに乗る父親には路面からのガタガタとした振動がまともに伝わってしまう。父親は文句ひとつ言わずに黙って乗っていたが。そして目的地の役所建物の目の前で車道から歩道に入ろうとしたところで。またガツンとやってしまった。ちょうど車道から歩道の境目は極めて緩やかなV字状で歩道の縁石も申し訳程度に隆起していた(後に現場まで行って定規で計測したところ2cm弱)のだが、前進ができない。結局、昨日の歯科医院前と同じく180度回転し、歩道側に引き上げるように車いすで乗り込み、再び180度方向転換して進み、無事、役所に到着した。背後からついてきた母親が「バリアフリーって歩行できる人のためのもので、車いすを使う人のものではないんだよね」と漏らした。同感だった。医療機関や介護施設ならば、車いすも想定したバリアフリーになっているだろうが、市中は必ずしもそうとは言えないのだ。明日はわが身、車いす介助者による事故そんなこんなもあって車いすについて調べるうちに行き着いたのが、独立行政法人製品評価技術基盤機構のホームページである。同機構は各種製品の安全関係に関する調査事業も行っており、そこでは報告のあった製品事故に関する情報も検索ができる。私が「車いす」のキーワードで検索すると、2019~22年に6件(電動車いすは除く)の報告があった。これはあくまで機構に報告があったものであり、世で起きた車いすに伴う事故の本当にごく一部だろう。いずれもリコールなどに該当する製品そのものの不具合ではない。どちらか言うと使用(介助)者側のミスなどに起因する。6件中4件は死亡事故だ。そのうちの1件の事故詳細を読んでいて何とも言えない気持ちになった。事故の詳細は施設介護者が入浴後の使用者を車いすに移乗させ、左足をフットサポートに乗せようとしたとき、車いすのバックサポートの後方に頭を倒していた使用者もろとも後方に転倒。そのまま使用者が亡くなったという事例である。使用者の姿勢もあり、左足をフットサポートに乗せようと持ち上げた時に重心が偏って起こった事故だ。不注意と言われればそれまでだが、介護者に悪意はまったくない。施設勤務介護者ですらこの状況なのだから、家族介護者で同様の事故が起こっているであろうことは容易に想像がつく。また、ある1件は介助者が、使用者の乗車した車いすを車いす用体重計に乗せるため前輪を上げる(浮かす)操作後に前進し、車いすが大きく傾き使用者が転落・負傷したという事案。まさに私が路上の縁石前で父親の車いすで行おうとしたこととほぼ同じ操作で事故は起きている。結局、介助者の「このくらい」という悪意のない行動が事故に結び付いているのだが、同時に私の少ない経験ながらも市中にはそうした操作を“強いられてしまう”現場があちこちにある。過去から比べれば世の中は進展しているとはいえ、私たちはまだ真のバリアフリー社会への途上にあるのだと改めて実感させられている。

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ASCO2024 レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、1964年の創立以来「がんが予防または治癒されすべてのサバイバーが健康である世界」というビジョンを掲げ活動してきた、がん治療研究のための学会であり、世界各国に5万人近くの会員を有する。年1回の総会は、世界のがん研究者が注目する研究成果が発表される機会であり、2024年は5月31日から6月4日まで米国イリノイ州のシカゴで行われた。COVID-19のまん延があった2020~22年にかけてon-line参加のシステムが整い、現地参加と何ら変わりなく学会参加が可能となったため、今年はon-lineでの参加を選択した。泌尿器科腫瘍の演題は、Oral Abstract Session 18(前立腺9、腎5、膀胱4)、Rapid Oral Abstract Session 18(前立腺8、腎4、膀胱4、陰茎1、副腎1)、Poster Session 112で構成されていた。ASCOはPractice Changingな重要演題をPlenary Sessionとして5演題選出するが、今年は泌尿器カテゴリーからは選出されなかった。Practice Changingな演題ではなかったが、新しい見地を与えてくれる演題が多数あり、ディスカッションは盛り上がっていた。今回はその中から4演題を取り上げ報告する。Oral Abstract Session 腎/膀胱4508 淡明細胞腎がん1次治療のアベルマブ+アキシチニブ、PFSを延長(JAVELIN Renal 101試験)Avelumab + axitinib vs sunitinib in patients (pts) with advanced renal cell carcinoma (aRCC): Final overall survival (OS) analysis from the JAVELIN Renal 101 phase 3 trial.Robert J. Motzer, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, New York, NYJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 16; abstr 4508)JAVELIN Renal 101試験は、転移性淡明細胞腎がんにおける1次治療としてアベルマブ+アキシチニブ(AVE+AXI)をスニチニブ(SUN)と比較するランダム化第III相試験であり、無増悪生存期間(PFS)の延長が示され、すでに報告されている。この転移性腎細胞がんにおける1次治療の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)とチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の組み合わせは、そのほかにもペムブロリズマブ+レンバチニブ、ニボルマブ+カボザンチニブ、ペムブロリズマブ+アキシチニブがあり、いずれも全生存期間(OS)の延長が報告されているだけに、このAVE+AXIのOS結果も注目されていた。この報告は、フォローアップ期間最小値68ヵ月における最終解析である。プライマリ・エンドポイントは2つ設定され、PD-L1陽性の転移性腎細胞がんにおける中央判定によるPFSとOSである。全体集団における解析はセカンダリ・エンドポイントに設定されていた。PD-L1陽性集団のOS中央値は、SUN 36.2ヵ月、AVE+AXI 43.2ヵ月、ハザード比 (HR):0.86(95%信頼区間[CI]:0.701~1.057、p=0.0755)であり、ネガティブな結果であった。全体集団でのOS中央値は、SUN 38.9ヵ月、AVE+AXI 44.8ヵ月、HR:0.88(95%CI:0.749~1.039、p=0.0669)であり、こちらも有意差なしの結果となった。全体集団のOSのサブグループ解析では、とくに効果不良を示唆する群はないが、IMDCリスク分類のPoorリスクにおいてはSUNとの差は開く傾向(HR:0.63、95%CI:0.43~0.92)があった。有害事象(AE)に関し、Grade3以上の重篤なAEはSUN群61.5%とAVE+AXI群66.8%であったが、AVE+AXIにおける免疫関連有害事象(irAE)は全体で50.7%、重篤なものは14.7%であった。この結果により、ICI+TKI療法のすべての治療成績がそろったことになる。ICI単剤においては、抗Programmed death(PD)-1抗体か抗PD-ligand(L)1かの違いによる影響があるかどうか確かな証拠はないが、抗PD-1抗体のみがOS延長を証明できたことになる。またTKI単剤の比較において、VEGFR(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor)を強く阻害しつつ耐性化にも対応できる新世代のTKIであるカボザンチニブとレンバチニブのレジメンがより良い治療成績を示した。試験間における患者背景の差はあるものの、薬効の違いもICI+TKI療法の効果に影響しているのではないかと感じる。とはいえ、目の前の患者にICI+ICI療法かICI+TKI療法か、いずれを選択するのがベストかの問いに答えられる臨床試験は行われておらず、PFSやOSだけでなく奏効割合や病勢増悪割合、合併症、治療環境なども加味し、患者との話し合いの下で決定していく現状は今後も変わらないだろう。Oral Abstract Session 前立腺/陰茎/精巣LBA5000 去勢抵抗性前立腺がんのカバジタキセル+アビラテロン併用療法はPFSを延長(CHAARTED2試験)Cabazitaxel with abiraterone versus abiraterone alone randomized trial for extensive disease following docetaxel: The CHAARTED2 trial of the ECOG-ACRIN Cancer Research Group (EA8153). Christos Kyriakopoulos, University of Wisconsin Carbone Cancer Center, Madison, WIJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 17; abstr LBA5000)CHAARTED試験は、転移性去勢感受性前立腺がん(mCSPC)におけるアンドロゲン除去療法(ADT)に加えUpfrontにドセタキセル(DTX)を6サイクル行うことでOS延長が証明された重要な試験であった。これにより、DTXがアンドロゲン耐性クローンも含め初期に量を減らすことに寄与する、という仮説が立証されたと考えられている。CHAARTED2試験は、初回にDTXが行われた患者に対し、アンドロゲン受容体(AR)阻害薬に加えカバジタキセル(CBZ)をさらに加えることで、AR阻害薬の効果が延長するかを検討するランダム化比較第II相試験であった。3サイクル以上のDTX治療歴があるmCRPC患者を、アビラテロン(ABI)1,000mg+プレドニゾロン(PSL)10mg群とABI+PSLに加えCBZ 25mg/m2 3週ごとを6サイクルまで行う群に1:1でランダム化した。プライマリ・エンドポイントはPFS延長(HR:0.67、α=0.10、β=0.10)と設定された。患者背景は、Gleason score 8~10が83%、High-volumeが76%含まれる集団であり、両群にバランスよく割り付けられていた。PFS中央値は、ABI+PSL群で9.9ヵ月、ABI+PSL+CBZ群で14.9ヵ月、HR:0.73(80%CI:0.59~0.90、p=0.049)と有意差を認めた。セカンダリ・エンドポイントのOSは、HR0.93であり、今回の検討ではアンダーパワーではあるが有意差を認めなかった。AEでは、重篤なものは26.7%と42.2%であり、ABI+PSL+CBZ群で多く報告された。Kyriakopoulos氏は、CBZ追加によるOS延長は認められなかったものの、PFSやPSA(Prostate Specific Antigen)増悪までの期間の延長は認められたことから仮説は証明できたことを報告した。とはいえ、現在のmCSPCの初期治療は3剤併用療法(AR阻害薬+DTX+ADT)であることから、日常診療に与える影響は限られると結んだ。Rapid Oral Abstract Session 前立腺/陰茎/精巣5009 陰茎がん1次治療のペムブロリズマブ併用化学療法(HERCULES試験)A phase II trial of pembrolizumab plus platinum-based chemotherapy as first-line systemic therapy in advanced penile cancer: HERCULES (LACOG 0218) trial.Fernando Cotait Maluf, Hospital Beneficencia Portuguesa de Sao Paulo and Hospital Israelita Albert Einstein; LACOG (Latin American Cooperative Oncology Group), Sao Paulo, BrazilJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 16; abstr 5009)希少がんである進行陰茎がんにおける1次治療の免疫療法追加のエビデンスが報告された。陰茎がんの発生は、アフリカやアジア、中南米などの低所得国に多いことが知られているが、ブラジルで行われた単群第II相試験の結果である。陰茎がんの標準治療として無治療と比較したランダム化試験はないが、プラチナ併用レジメンを基本としている。NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドラインによると、preferred regimenとして3剤併用のTIP療法(パクリタキセル+イホスファミド+シスプラチン)、other recommended regimenとしてFP療法(5FU+シスプラチン)が提示されている。TIP療法はFP療法と比べると、奏効割合が40%程度と高いが、AEの割合も高く忍容性は問題となることが多い。Maluf氏らは、初発の転移性陰茎がん患者に対し、シスプラチン70mg/m2あるいはカルボプラチンAUC 5 day1と5FU 1,000mg/m2 day1~4に加えペムブロリズマブ200mgを3週間ごとに6サイクル実施後、ペムブロリズマブのみを維持療法として34サイクル実施するレジメンの治療成績を報告した。プライマリ・エンドポイントは奏効割合であり、統計設定は奏効割合期待値40%、閾値20%、両側α=0.1、β=0.215として33症例が必要であると計画された。患者37例が登録され、年齢中央値56歳、白人40.5%が含まれていた。奏効割合は39.4%(95%CI:22.9~57.9%)でありポジティブな結果であった。PFS中央値は5.4ヵ月(95%CI:2.7~7.2)、OS中央値は9.6ヵ月(95%CI:6.4~13.2)であった。サブグループ解析では、TMB(Tumor Mutational Burden)高値(≧10)と低値(<10)の奏効割合は75%と36.4%、HPV-16陽性と陰性では55.6%と35%であり、PD-L1陽性、陰性による一定の傾向はなかった。AEは全Gradeで91.9%、Grade3以上で51.4%であり、治療関連死はなかった。このHERCULES試験により、ペムブロリズマブ+FP療法は転移性陰茎がんの新たな治療オプションとなった、と報告された。日本においてこのレジメンは保険承認が得られず適用は困難だが、陰茎がんが希少がんであることを考慮すると、診断時より遺伝子パネル検査を行うことでICI使用の機会を逃さないよう注意を払う必要がある。Rapid Oral Abstract Session 腎/膀胱4510 尿膜管がん1次治療のmFOLFINOX療法(ULTMA試験)A multicenter phase II study of modified FOLFIRINOX for first-line treatment for advanced urachal cancer (ULTMA; KCSG GU20-03).Jae-Lyun Lee, Asan Medical Center, University of Ulsan College of Medicine, Seoul, South KoreaJ Clin Oncol 42, 2024 (suppl 16; abstr 4510)希少がんの重要なエビデンスとして、膀胱尿膜管がんの単群第II相試験の結果も注目すべき演題の1つである。尿膜管がんは膀胱がんのうち1%未満の発生割合で、標準治療が確立していないがんであるが、病理組織の特徴は消化器がんに類似することから、5FU系、プラチナ系薬剤での治療が適用されることが多く、その有効性が報告されている。Lee氏らは、modified FOLFIRINOXレジメン(オキサリプラチン85mg/m2 day1、イリノテカン150mg/m2 day1、ロイコボリン400mg/m2 day1、5FU 2,400mg day1をそれぞれ2時間、1.5時間、2時間、46時間かけて静注)に、支持療法としてペグフィルグラスチム6mg皮下注を3日目、予防的抗菌薬として少なくとも最初の2サイクルはレボフロキサシン750mgを4~7日目に内服し、2週間を1サイクルとして最大12サイクルまで継続する治療プロトコールを開発し、その治療成績を報告した。プライマリ・エンドポイントは奏効割合であり、期待値35%、閾値17%、α=0.05、β=0.2に設定された。2021年4月~2023年11月の2年7ヵ月間に韓国の5施設で実施した試験であった。患者背景は、年齢中央値50歳(28~68)、PSは0/1がそれぞれ3/18例であった。奏効割合は61.9%(95%CI:41.1~82.7)であり、病勢増悪例は0例であった。PFS中央値は9.3ヵ月(95%CI:6.7~11.9)、OS中央値は19.7ヵ月(95%CI:14.3~25.1)であった。安全性では、Grade 3以上の重篤なものは、貧血2例、好中球減少1例、血小板減少1例、嘔気1例、下痢1例であったが、Grade2の発生は、血小板減少3例、嘔気8例、嘔吐2例、下痢1例、口内炎3例、倦怠感6例、末梢神経障害5例であった。発熱性好中球減少症や治療関連死は認めなかった。演者らは、mFOLFIRINOX療法は膀胱尿膜管がんの新たな治療選択肢として考慮されるべきであると締めくくった。尿膜管がんでも大腸がんと同様に、triplet therapyがdoublet therapyより数値上高い奏効割合を示すことができた試験であったのは、生物学的特性が類似していることを反映すると思われる。また、毒性の強いレジメンに安全性を高める工夫が最大限盛り込まれたプロトコールになっていることで、今回の良い結果を生んだと思われた。この試験の患者背景で特徴的なのは、患者の年齢が若いことと、PS不良例は含まれていないことも重要なポイントである。

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ASCO2024 レポート 肺がん

レポーター紹介2024年のASCOはほぼ現地開催となり、同時にWebでのライブ配信等も充実した、ポストコロナを完全に印象付ける形で実施された。ASCO Lung、Lung ASCOと呼ばれるほど肺がんに関しては当たり年であり、早期緩和ケアをVirtualで実施するか対面で実施するか比較したREACH PC、EGFR遺伝子変異陽性III期非小細胞肺がんに対する化学放射線療法後のオシメルチニブの意義を検証したLAURA、限局型小細胞肺がんにおいて化学放射線療法後のデュルバルマブの意義を検証したADRIATICの3試験がPlenaryで採択される等、注目演題がめじろ押しであった。本稿では、その中から重要な知見について解説したい。REACH PC試験2010年のASCOでTemelらが、肺がん患者に対する早期緩和ケア介入が、QOLのみならず生存期間を延長したという驚きの発表を行って以来、早期緩和ケアは肺がん治療のスタンダードとして認識されてきた。ただし、その実施に際しては、医療アクセスの問題、さらに近年はCOVID-19が障壁となっている現状が存在する。そこで、同じグループが実施したのが、進行非小細胞肺がん患者1,250例を対象として、従来の対面の早期緩和ケアを毎月実施することと、VirtualのVideo Visitsによる早期緩和ケアを毎月実施することの、patient-reported measuresへの影響を検証したREACH PC試験をである。米国を中心に実施された本試験は、FACT-Lと呼ばれるQOL指標を主要評価項目として、対面とVideo Visitsが同等であることを検証した。両群で対人、Video Visitsはおおむね遵守されており、双方が併用されていないことも確認されている。結果は明快であり、24週時点で両群のFACT-L指標は同等であることが示され、Video Visitsも早期緩和ケアにおける選択枝の1つであると位置付けられた。今回はまだ初回報告であることから、今後さらなる追加解析の結果が公表される見込みではあるものの、すべての早期緩和ケアをVideo Visitsにすることが妥当ということではなく、どういった場合にVideo Visitsがより有用かについて検討することが必要と、演者も結論付けていた。さらに、米国を中心に実施されたことから、医療環境、医療アクセス、地理的な条件等が大きく異なるわが国ならびに世界各地で同様の結論が得られるのか、解決すべき課題は少なくない。ただ、virtualとrealを併用したコミュニケーションの在り方が今後減少する可能性は乏しく、むしろvirtualをいかに実臨床に活用していくかを検討しよう、というASCOの意図をplenaryセッションでの採択という結果から読み取ることができる。LAURA試験EGFR遺伝子変異陽性の切除不能III期非小細胞肺がんに対して、根治的化学放射線療法後にオシメルチニブを増悪もしくは許容できない毒性が出現するまで続けることで、プラセボ群に対して無増悪生存期間(PFS)における優越性を検証した第III相試験がLAURA試験である。割付調整因子として、根治的放射線治療の同時vs.逐次、IIIA 期vs.IIIB/C期、中国vs.中国以外、が設定されている。216例の患者が2:1でオシメルチニブ群により多く割り付けられた。副次的評価項目として全生存期間(OS)、脳転移無増悪生存期間、安全性等が設定されている。PFSはハザード比0.16、95%信頼区間0.10~0.24で、オシメルチニブを追加することでPFSが有意に延長(39.1ヵ月vs.5.6ヵ月)するという結果であった。24ヵ月時点のPFSの点推定値はオシメルチニブ群で65%、プラセボ群で13%であり、50%以上の上乗せを認めている。とくに、プラセボ群のPFSはEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんと同様の状況であることが強調されていた。プラセボ群では68%に新規病変(増悪)を認めており、29%が脳転移であり、オシメルチニブ群の8%と明白な違いを示していた。同時に発表されたOSは、36ヵ月以降でややオシメルチニブ群が良好な傾向を示しているものの、ハザード比0.81で大きな違いはなかった。プラセボ群で81%がオシメルチニブにクロスオーバーしていることも同時に報告されている。両群でOSイベントが20%程度であることから、まだ未成熟なデータとはいえ、今後追加報告が行われる見込みである。NEJM誌に同時掲載され、会場では大きな拍手が沸き起こった。ADAURA試験よりも、一段階進行しているが、同様に根治を目指すことができる病態において、チロシンキナーゼ阻害薬であるオシメルチニブの有効性が示されるという、既視感のあるデータであった。ADAURAとの最も大きな違いは、Post-ADAURAともいえる状況で、チロシンキナーゼ阻害薬による地固め療法に対する意見が(現時点では)それほど強く沸き起こっていないところである。確かに、オシメルチニブを増悪もしくは許容できない毒性を認めるまで継続するという治療法は、ディスカッサントもその課題を指摘していた。(1)ADAURA(オシメルチニブ3年)においても、より長いほうがよいのでは、との議論がすでにある状況、(2)ADAURAよりも進行した病状であること、(3)プラセボ群のPFSが進行肺がんを思わせる状況であり進行期同様の治療(増悪まで)が許容されうる!?等の諸点が、ADAURAの結果を初めて見た際とは大きく異なる。ただ、このプラセボ群の成績は、これまでEGFR遺伝子変異陽性III期非小細胞肺がんに対して根治的化学放射線療法を実施した研究結果と比べても悪い印象であり、その点は検証の必要性がありそうである。本試験結果から同対象にオシメルチニブが適応拡大される可能性は高く、実臨床で使用可能となった段階で、最適な対象患者選定、さらには至適使用期間等についてわれわれが検討していく必要があると考えている。ADRIATIC試験臨床病期I~III期、限局型小細胞肺がんを対象として、根治的化学放射線療法後のデュルバルマブ(1,500mg固定用量、4週おき、最大24ヵ月)による地固め療法を、プラセボと比較する第III相試験がADRIATIC試験である。730例が登録され、デュルバルマブ群に264例、プラセボ群に266例、デュルバルマブ+トレメリムマブ群に200例が割り付けられた。今回はデュルバルマブ群とプラセボ群に関する解析が実施され、デュルバルマブ+トレメリムマブ群については次回以降に解析が行われる。割付調整因子は、臨床病期I/II vs.III期、PCIの有無が設定されている。主要評価項目はデュルバルマブとプラセボの比較におけるOSとPFSのCo-primaryとされ、デュルバルマブ+トレメリムマブにおけるOS、PFSはKey secondary endpointと位置付けられている。統計学的設定としては、5%のα(両側検定)を、OSに4.5%、PFSに0.5%使用し、それぞれで優越性が示されればαをリサイクルする予定が設定されている。PFS、OSともに優越性が示され、非の打ちどころのない結果が示された。PFSのハザード比は0.76、95%信頼区間0.61~0.95と有意に試験治療群が良好であり、24ヵ月時点のPFS点推定値は試験治療群で46.2%、プラセボ群で43.2%であった。OSのハザード比は0.73、95%信頼区間0.57~0.93と有意に試験治療群が良好であり、36ヵ月時点のOS点推定値は試験治療群で56.5%、プラセボ群で47.6%であった。IMpower133、CASPIANの両試験により、進展型小細胞肺がんの初回治療に導入された免疫チェックポイント阻害薬が、いよいよ限局型小細胞肺がんの標準治療にも導入され、その有効性は進展型よりも限局型においてより大きい結果であった。同様の傾向は、非小細胞肺がんや、それ以外のがん腫においても繰り返し示されており、Late lineよりもFirst line、進行期よりも早期において免疫チェックポイント阻害薬の意義が大きいことに再現性がある。切除可能小細胞肺がんにおける周術期治療への免疫チェックポイント阻害薬の展開が期待されるところではあるものの、これまで同集団に対して第III相試験を実施し完遂できたのはJCOG1205/1206試験のほかはほぼ存在せず、わが国で小細胞肺がんに対する周術期免疫チェックポイント阻害薬の治療開発が何かしらの形で行われることに期待したい。EVOKE-01試験sacituzumab govitecanは、TROP2を標的とし、ペイロードとしてSN-38をDAR 7.6で搭載した抗体薬物複合体(ADC)である。近年大きな話題となっているADCにおいて、非小細胞肺がんにおいてはTROP2を標的としたDato-DXdが先行しており、昨年のESMOで発表されたTROPION-Lung 01試験においてドセタキセルに対して、とくに非扁平上皮非小細胞肺がんにおいてPFSの優越性を示している。今回、ほぼ同様のセッティングである、進行非小細胞肺がんの2次治療において、sacituzumab govitecanとドセタキセルを比較した第III相試験がEVOKE-01試験である。603例が1:1で登録され、割付調整因子は、扁平上皮がんvs.非扁平上皮がん、前治療での免疫チェックポイント阻害薬がCR/PR vs.SD/PD、ドライバー遺伝子変異(AGA)の有無、が設定された。主要評価項目としてはOSが設定され、PFSが副次評価項目とされた。PFSのハザード比は0.92、95%信頼区間0.71~1.11でドセタキセルに対する優越性は示せなかった。さらに、OSにおいてもハザード比は0.84、95%信頼区間0.68~1.04とsacituzumab govitecanが良い傾向にはあるものの、統計学的な優越性は示せなかった。同じTROP2を標的としたADCによる、ドセタキセルをコントロールとした第III相試験において、TROPION-Lung 01試験とは異なる結果となったことは意外ではあるものの、両試験ともにOSにおいて明白な優越性が示せなかった点は共通している。TROP2は、肺がんを含め多くのがん腫で高頻度に発現していることが報告されていることからADCの良い標的と考えられてきたが、実際の臨床試験で示される有効性はその発現割合とは異なっており、前治療等による蛋白発現への影響が示唆されている。Dato-DXdを用いて、TROP2蛋白発現だけでなくマルチオミックス解析を付加した臨床試験の結果がGustave Roussyでも報告されており、ADCにおいても治療前の標的蛋白の評価の重要性が示唆されている。周術期治療アップデート・追加解析周術期治療に関してもいくつかのアップデート、追加解析の報告が行われている。日本においても1年ほど前に承認された、術前ニボルマブ+化学療法の有効性を評価したCheckMate 816試験の4年アップデート解析が報告された。無イベント生存期間(EFS)は3年時点で53%、4年時点で49%の点推定値が報告され、48ヵ月以降はプラトーに達しているかのような生存曲線であり、引き続き良好な成績であった。OSについても同時にアップデートが報告され、3年時点で77%、4年時点で71%と、コントロール群に比べ明確に良好であるものの、もともとの統計設定でOSの優越性を評価する基準が厳しく、統計学的には優越性を示すことができていない。術前のみのCheckMate 816試験は周術期免疫チェックポイント阻害薬の試験ではむしろマイノリティであり、同じ企業が実施したCheckMate 77T試験を含め、他の試験はほぼ術後免疫チェックポイント阻害薬も実施する試験治療を採用している。CheckMate 77T試験からは、N2リンパ節転移のSingle vs.Multipleで、周術期免疫チェックポイント阻害薬の意義が異なるかを検討したサブグループ解析が報告され、結果としてはMultiple N2であっても周術期ニボルマブの意義は十分に存在するというものであった。N2リンパ節のSingle/Multipleに関する解析が企業治験で実施されることの意義は大きい。Multiple N2でも周術期免疫チェックポイント阻害薬の意義は明白であり、R0切除を目指すことができると判断されている状況であれば、Multiple N2であっても切除を前提とした周術期免疫チェックポイント阻害薬が選択肢となりうることが示された。ADAURA試験からは、ctDNAを用いたMRD解析の結果が報告されている。RaDaRと呼ばれるTissue-InformedのMRD解析が用いられており、MRD解析の意義が示されている。ただ、MRD解析においてポイントとなるランドマーク時点(術後アジュバント前)の解析結果というよりは、モニタリング相におけるMRD陽性から画像診断上の再発までの解析に主眼が置かれており、今後の追加解析に期待したい。抗体医薬品の進歩近年の抗体医薬品の進歩は目を見張るものがある。現時点でその中心はADCだが、今後はBispecific抗体、BiTE等がそこに加わり、より多様な展開を示すことが期待されている。抗体製剤に比較的共通する特徴としてInfusion-related reaction(IRR)があり、その対処を目指した試験がPALOMA-3試験である。amivantamabは開発当初からIRRが課題とされており、IV投与よりも皮下注射のほうがIRRの頻度を低減させられることはすでに知られていた。PALOMA-3試験は、amivantamabとlazertinibの併用療法において、amivantamabのIVと皮下注射の有効性と安全性、薬物動態を評価した第III相試験である。主要評価項目は薬物動態における同等性とされ、副次評価項目に奏効割合、PFS等が設定されている。主要評価項目である薬物動態では同等の結果が得られ、IRRの頻度において、IVが66%に対して皮下注射では13%であり、明らかにIRRの頻度を抑制することが可能となった。皮膚毒性等については同等であった。さらに、PFSのハザード比が0.84、95%信頼区間0.64~1.10であり、OSのハザード比は0.62、95%信頼区間0.42~0.92と、いずれも皮下注射で良好という結果であり、安全性、有効性ともに皮下注射を支持する結果であった。また、血管内皮増殖因子(VEGF)と、抗PD-1抗体のBispecific抗体であるivonescimabを用いたHARMONi-A試験の結果も報告された。EGFR-TKI後に増悪したEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がんを対象に、プラチナ併用化学療法とivonescimabもしくはプラセボを併用する第III相試験である。PFSのハザード比は0.46、95%信頼区間0.34~0.62、OSのハザード比は0.72、95%信頼区間0.48~1.09と、PFSでは統計学的に有意に、OSにおいても併用療法がより予後を改善させる傾向が示された。前出のamivantamabだけでなく、血管新生阻害薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法もすでに検討されている領域に、新たな選択肢が投入される形となった。今後も複数の選択肢が開発されていく見込みであり、EGFR-TKI耐性化後の治療選択は引き続き注目を集めることになりそうである。さいごに冒頭で紹介したように、肺がんの注目演題が多数報告されたASCOは、近年の治療開発の状況を縮図のように示した学会であった。周術期や根治的な病態における免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の役割、ADC、Bispecific抗体、BiTE等抗体医薬品の治療開発等が注目を集めている。さらに、EGFR-TKI耐性化後、EGFR遺伝子変異陽性初回治療、ALK初回治療、周術期治療等、同一の領域にさまざまな選択肢が展開される状況となることも明白であり、続々と実臨床に投入される治療法から、患者ごとに最適な選択肢をどのように検討し、提案し、相談するかが問われる時代が訪れようとしている。

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「糖尿病医療者のための災害時糖尿病診療マニュアル2024」発行/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の年次学術集会(会長:植木 浩二郎氏[国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長])が、5月17~19日に東京国際フォーラムなどで開催された。 2024年1月1日に石川県をはじめとする北陸地方を襲った「能登半島地震」は記憶に新しい。災害時に糖尿病患者やその家族へのサポートなどはどのようにあるべきであろう。 本稿では「災害時の糖尿病診療支援と糖尿病対策推進会議の活動」より「災害時糖尿病診療マニュアル2024の概要 総論」(講演者:荒木 栄一氏[熊本大学名誉教授/菊池郡市医師会立病院/熊本保健科学大学健康・スポーツ教育研究センター 特任教授])をお届けする。災害で糖尿病患者は簡単に弱者になる 地震、洪水などわが国は災害が多く、1,000人以上の犠牲者が発生した災害が多数ある。現在では南海トラフ地震や首都直下型地震、線状降水帯による水害などへの備えがなされている。しかし、それでもこうした災害時には、糖尿病患者は容易に代謝失調やインスリンの不足などにより災害弱者となりうる。 とくに食事療法での栄養の偏りや治療薬の確保が懸念されている。そこで、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会の2つの学会は『糖尿病医療者のための災害時糖尿病診療マニュアル2024』を制作し、発行した。これは2014年に日本糖尿病学会「東日本大震災から見た災害時の糖尿病医療体制構築のための調査研究」委員会が作成した災害時の診療マニュアルを10年ぶりに改訂したもので、熊本地震での知見の追加のほか、新規糖尿病治療薬など最新の診療状況にも対応し、「糖尿病医療支援チーム(DiaMAT)」についても触れたもので、今回日本糖尿病協会も参画し、広く知見が記述されている。4章立てで災害時の糖尿病診療、平時の準備を説明 本マニュアルは大きく4章立てで構成され、荒木氏が説明した総論部分は下記のとおりである。〔I 総論 災害に対する備え〕「1 ライフラインと情報の整備」では、ライフラインの確保、災害時の連絡体制、バックアップを記載している。「2 食量や医薬品の備蓄」では、平時からの備蓄食料のローテーション消費や主治医と医薬品の備蓄や調達方法の相談を記載している。「3 医療機関の災害対応マニュアル、訓練」では、マニュアル整備とその見直し、災害時の人材の確保、院内の備品や食品の管理、地域との連携や訓練などを記載している。「4 地域の医療連携」では、連携の問題点と課題、災害時の医療連携を記載している。「5 災害時糖尿病医療従事者の教育」では、医療者への教育、平時の備えの指導(とくにシックデイ)、薬の調整や防災教育を記載している。「6 糖尿病患者への啓発」では、平時からの備えの啓発としてリーフレットの活用や正しい情報を得るための教育が記載されている。 また、総論以降の内容は次のとおりである。〔II 害時の糖尿病医療者の役割〕 災害派遣医療チーム(DMAT)、糖尿病医療支援チーム(DiaMAT)や医師やそのほかの医療従事者の役割などが記されている。〔III 個々の糖尿病病態への対応〕 全体的な注意事項、各治療(インスリン、経口薬、食事・運動療法のみ)での注意事項、合併症のある患者での対応、特別な配慮が必要な患者(妊婦、高齢者など)へのサポートが記されている。〔IV 患者の備え〕 避難所の確認や薬剤の備蓄、妊婦・高齢者などの特殊な患者への対応などが記されている。 その他コラムでは「シックデイ対策/インスリンポンプ使用者/COVID-19」などが記されている。 将来発生が危惧される大災害に対応するためにも、一読し、今できることから備えておきたい。

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不定愁訴を改善する介入法をRCTで検証/Lancet

 持続性身体症状(persistent physical symptoms:PPS)を有する成人に対して、自己管理の支援に重点を置き、症状に関する説明を強化した臨床的介入(symptom-clinic intervention)は、複数のPPSの改善をもたらすことが、英国・シェフィールド大学のChristopher Burton氏らが実施したプラグマティックな多施設共同無作為化並行群間比較試験「Multiple Symptoms Study 3:MSS3試験」で示された。先行研究で、複数のPPSを抱える人々は生活の質が低下し、医療を受ける機会も不足していることが示されているが、地域の総合診療医(GP)によるコミュニケーションの強化に重点を置いた介入が、PPSを改善するかは検討されていなかった。Lancet誌2024年6月15日号掲載の報告。GPによるコミュニケーションを強化した臨床的介入と通常ケア単独を比較 研究グループは2018年12月6日~2023年6月30日の期間に、イングランドの4つの地域にある英国国民保健サービスの一般診療所108施設において、複数のPPSを有する(患者健康質問票[Patient Health Questionnaire-15:PHQ-15]スコアが10~20)18~69歳の成人を登録し、介入群または通常ケア群に1対1の割合で無作為に割り付けた。介入の性質上、被験者を盲検化することはできなかった。 介入群では、通常ケアに加えて、詳細な病歴や患者の経験に関する十分な聴取、症状についての合理的な説明を行い、患者が症状を管理できるよう最大4回の医療相談を実施した。 主要アウトカムは、無作為化後52週時点でのPHQ-15スコアとし、ITT解析で評価した。52週時点のPHQ-15スコア、介入群12.2 vs.通常ケア群14.1、介入群で有意に改善 計354例が無作為化され、178例(50%)が介入群、176例(50%)が通常ケア群に割り付けられた。 52週時のPHQ-15スコア(平均±SD)は、介入群12.2±4.5、通常ケア群14.1±3.7であった。補正後スコアの群間差は-1.82(95%信頼区間[CI]:-2.67~-0.97)であり、介入群の統計学的に有意な改善が示された(p<0.0001)。 有害事象は、介入群36件、通常ケア群39件が報告された。非重篤な有害事象の発現率(群間差:-0.03[95%CI:-0.11~0.05])ならびに重篤な有害事象の発現率(群間差:0.02[95%CI:-0.02~0.07])に、統計学的な有意差は認められなかった。介入に関連する重篤な有害事象も認められなかった。

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社会・環境的な逆境的曝露が心臓病、脳卒中のリスクを上昇

 社会的および環境的に逆境的地域に住む人々は、心臓病や脳卒中の発症リスクが高いという研究結果が、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に3月27日掲載された。 米Lahey Hospital & Medical CenterのSumanth Khadke氏らは、社会的および環境的曝露が、心血管リスクに及ぼす複合的な影響について検討した。分析には、2022年のEnvironmental Justice Index(EJI)、socio-environmental justice index(SE-EJI)、米国の国勢統計区の環境負荷モジュールランクが用いられた。 解析の結果、EJIの最高四分位群は、最低四分位群と比較して、冠動脈疾患(率比1.684)と脳卒中(同2.112)の発症率が高いことが分かった。さらに環境負荷モジュールランクの、最高四分位群は最低四分位群と比べて、冠動脈疾患(同1.143)と脳卒中(同1.118)の発症率が、有意に高かった。同様の結果は、慢性腎臓病、高血圧、糖尿病、肥満、高コレステロール、健康保険未加入、睡眠時間が1日7時間未満、余暇の身体活動なし、過去1カ月間に14日以上の心身の健康障害、でも見られた。 著者らは、「心血管疾患とそのリスク因子の有病率は、社会的および環境的な逆境的曝露の増大と大きく関連しており、逆境的環境曝露は社会的因子とは独立して、重要な役割を果たしている」と述べている。 なお1人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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子どものスクリーンタイム削減に親がすべきこととは?

 常にスマートフォン(以下、スマホ)を手にしている子どもに対してフラストレーションを抱えている親にとって心強い研究結果が明らかになった。子どもをスマホやダブレット、テレビなどのスクリーンベースのデバイス(以下、デバイス)から引き離すことは可能なことが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のグループによる研究で示されたのだ。同研究では、食事中や就寝時にデバイスの使用を禁止すること、親自身が適切にデバイスを使用する姿を子どもに見せることの2つの実践が最も効果的であることが示されたという。この研究の詳細は、「Pediatric Research」に6月5日掲載された。 論文の筆頭著者である、UCSFベニオフ小児病院の小児科医であるJason Nagata氏は、「この研究結果は、親がトゥイーン(8〜12歳の子ども)やティーンに使える具体的な戦略を示しているという点で心強い。その戦略とは、スクリーンタイムに制限を設けること、子どものデバイスの使用状況の把握に努め、寝室にいる間や食事の時間にはデバイスの使用を禁じることだ」と話す。さらに「子どもに説教している親自身も、これらのことを実践するよう心がけるべきだ」と付け加えている。 Nagata氏らは、米国の思春期の脳の発達に関する研究(ABCD研究)の参加者のうち約1万人の12~13歳の子どものデータを分析した。ABCD研究では、親が「わが子はデバイスを使いながら眠りにつく」などの項目についてどの程度当てはまるのかを、1(全く当てはまらない)から4(強く当てはまる)までの4段階で回答していた。その後、親の評価により子どもの1日のスクリーンタイムをどの程度予測できるのかを調べた。なお、この年代の子どもを対象に選んだ理由についてNagata氏は、「スマホやソーシャルメディアを利用する機会が増える時期であり、その後の習慣を形作る時期でもあるため、思春期が始まったばかりの頃の子どもを対象に調べたいと考えた」とUCSFのニュースリリースの中で説明している。 その結果、子どもの就寝時のデバイスの使用は、1日当たりのスクリーンタイムの1.60時間の増加と関連することが明らかになった。同様に、食事中のデバイスの使用と、親が子どもと一緒にいるときにもデバイスを使用する「悪い手本」である場合も、スクリーンタイムはそれぞれ1.24時間と0.66時間の増加に関連していた。 一方で、食卓や寝室でのデバイスの使用を禁止するルールを設けることは、子どもの1日当たりのスクリーンタイムの1.29時間の減少につながっていた。また、食事中や就寝時の子どものデバイスの使用状況を監視することも効果的で、1日当たりのスクリーンタイムは平均で0.83時間減っていた。このほか、効果がない対策があることも分かった。デバイスの使用を「ご褒美」や「罰」として用いている親の子どもでは、1日当たりのスクリーンタイムが平均で0.36時間長かった。 Nagata氏は、「子どものデバイスの使用時間を減らすために親にできることの中で最も重要なのは、寝室でのデバイスの使用を禁止することかもしれない。就寝時のスクリーンタイムによって思春期早期の健康や発達に不可欠な睡眠時間が減ってしまう。親は、子どもの寝室にはデバイスを置かないこと、夜間にはデバイスの電源や通知をオフにすることを検討するのが良いだろう」と話している。

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初回禁煙治療をバレニクリンまたは併用ニコチン代替療法で行い失敗した場合の有効な次の手だて(初期治療薬剤の用量アップ?)(解説:島田俊夫氏)

 タバコは「百害あって一利なし」といわれています。この言葉は耳にたこができるほど聞いているけれど禁煙成功率は相変わらず低い1,2)。喫煙は自分のみならず他人をも巻き込む悪習です。元気で長生きしたければ病気になるリスクを減らすことが最善の策です。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaul M. Cinciripini氏らが、二重盲検ランダム割り付けによる6週間の禁煙初期治療に失敗した対象者を継続/増量/切り替えの3群にランダムに再割り付けを行った治療継続6週後の研究成果を、JAMA誌オンライン版2024年5月2日号に報告しました。これまで初期治療失敗者を継続し、再治療目的の割り付けにより治療効果を検証した研究はごく少なくコメントします。研究概略参加者(Paticipants) 2015年6月〜2019年10月にテキサス州ヒューストン地域の禁煙志願者490例(適用基準:18~75歳、1日5本以上喫煙、呼気CO濃度6ppm以上)をメディア広告により募集し、ランダムにバレニクリン群(V群)、併用ニコチン置換療法群(CN群)に割り付けた。介入および研究デザイン初期治療 V群(バレニクリン2mg/日+Placebo CNRT)かCN群(CNRT[21mg-Patch+2mg-lozenges]+Placeboバレニクリン)のいずれかにランダム割り付けした(1相)。初期治療禁煙成功群はV群、CN群ともにそのまま継続、禁煙失敗例は6週後に再ランダム割り付けした(2相)。初期治療失敗群は両群ともそれぞれ増量V群(3mgバレニクリン+Placebo CNRT)、継続V群(2mgバレニクリン+Placebo CNRT)、切り替えV群(V→CN)(CNRT[21mg pactch+2mg lozenges]+Placeboバレニクリン)、CN群:継続CN群(CNRT[21mg pactch+2mg lozenges]+Placeboバレニクリン)、増量CN群(CNRT[two 21mg patches+2mg lozenges]+Placeboバレニクリン)、切り替えCN群(CN→V)(2mgバレニクリン+Placebo CNRT)に割り付けた。再評価V群 現状継続群、増量群、切り替え群(CN群)CN群 現状継続群、増量群、切り替え群(V群)とくに初回禁煙治療失敗後の治療による禁煙率の改善評価 12週の治療終了時の7日禁煙率:自己申告による7日禁煙と生化学的に検証した呼気CO濃度6ppm未満で評価。その結果、V群の失敗例では用量増加群で現状継続群との比較で禁煙率の改善を認め、CN群の失敗例では用量増加群と切り替え群で禁煙率の改善を認めた。コメント 代表的な現行のV療法、CN療法によるRCTデザインによる1相の6週間での治療効果を評価後、禁煙失敗例(2相)に対してランダムに再割り付け後に、治療法を現行継続、増量、切り替えに変更して禁煙成功率の改善状況を分析しました。両群いずれにおいても用量を増加すれば改善することが判明しましたが、CN群ではV群への切り替えで効果が確認されたが逆は真ならずで、V群をCN群に切り替えても効果はありませんでした。 今回の研究から、副作用の心配も多少ありますが、治療開始時の用量設定をもう少し高用量にすることが禁煙率アップにつながることを示唆しています。 初回治療が失敗でも諦めず、用量増加により禁煙率の改善が期待できることを確認した意義は大きく、禁煙を望む者に勇気を与える結果ではないでしょうか。

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ASCO2024 レポート 血液腫瘍

レポーター紹介はじめにASCO2024の年次総会(5月31日~6月4日)は、今年も現地参加に加えWEBでの参加(視聴)も可能であり、私は昨年までと同様に現地参加はパスして(円安と米国のインフレ問題があり、現地参加は費用的に無理があります)、オンデマンドで注目演題を聴講したり発表スライドを閲覧したりしました。それらの演題の中から、今年は14演題を選んで、発表内容をレポートしたいと思います。以下に、悪性リンパ腫関連4演題、多発性骨髄腫関連6演題、白血病/骨髄増殖性腫瘍(MPN)関連4演題を紹介します。悪性リンパ腫関連Upfront allo-HSCT after intensive chemotherapy for untreated aggressive ATL: JCOG0907, a single-arm, phase 3 trial. (Abstract #7001)本演題は日本のJCOGからの発表で、ATLに対するアップフロントの同種移植の前向き試験の成績をまとめたものである。研究開始当初は、55歳以下で骨髄破壊的前処置(MAST)を行う患者のみをエントリー基準としたが、2014年9月以降は56~65歳の患者に対し骨髄非破壊的前処置(RIST)も許容された。2010年9月~2020年6月に110例の患者(72例:急性型、27例:リンパ腫型、10例:予後不良慢性型、1例:その他)がエントリーされ、92例が移植を受けた。41例がプロトコルどおりの治療を受け、51例はプロトコル治療外での移植であった(アップフロント同種移植は76例となった)。主要評価項目の3年OS(110例)は44.0%(90%CI:36.0~51.6)であり、仮説にメットした。プロトコル治療を受けた41例のうち、治療関連死(TRD)は血縁ドナー16.7%、非血縁ドナー20.7%であった。また、死亡した70例の死亡原因は、ATL 34例、TRD 30例、その他6例であった。結論として、ATLに対するアップフロント同種移植はアグレッシブATLに対し1つの治療オプションとなりうるが、生存期間の延長に関しては不明とされた。以下の3題はマントル細胞リンパ腫(MCL)に関する演題です。MCLは、悪性リンパ腫の中では比較的まれな疾患で、中悪性度に分類されますが、インドレントな経過を示す症例もあります。また、従来の免疫化学療法だけでは治癒が難しく、最近では、分子標的薬のBTK阻害薬やBCL-2阻害薬の有用性が示されています。Benefit of rituximab maintenance after first-line bendamustine-rituximab in mantle cell lymphoma. (Abstract #7006)初発MCLに対し、BR(ベンダムスチン-リツキシマブ)療法の後のR維持療法(RM)の意義については、PFS・OSを延長しない(Rummel, et al. ASCO 2016)、PFS・OSを延長する(Martin, et al. JCO 2023)という異なるデータが示されてきた。本研究では、米国で大規模な観察研究が実施され、RMの意義が検証された。BR療法(自家移植なし)後3ヵ月時点でPRあるいはCRの患者がエントリーされ、RM実施の有無で、無イベント(再発、次治療開始、死亡)率(EFS)が比較された。さらに、次治療開始例の無イベント率(EFS2)も比較された。613例がエントリーされ、318例がRMを受け、295例がRMを受けなかった。RM群では年齢が若く(69歳vs.71歳)、男性の割合が高く(78% vs.69%)、進展期の割合が高かった(95.2% vs.89.0%)が、リスク因子(MIPI)、組織型、Ki-67、TP53変異、複雑型染色体異常、BR療法の実施年代、BR療法の効果には差を認めなかった。追跡期間中央値が61.3ヵ月の時点で、RM群で有意にEFS(47.1ヵ月vs.29.7ヵ月)、EFS2(89.1ヵ月vs.48.3ヵ月)、OS(136.1ヵ月vs.74.3ヵ月)の延長を認めた。BR療法によりCRが得られた患者においても、RMにより有意にEFS、EFS2、OSの延長が示された。以上より、初発MCLに対するBR療法後のRMの有用性が明らかとなった。Efficacy and safety of ibrutinib plus venetoclax in patients with mantle cell lymphoma (MCL) and TP53 mutations in the SYMPATICO study. (Abstract #7007)SYMPATICO試験はMCL患者に対するイブルチニブ+ベネトクラクス(I-V)の効果を検証した試験であり、再発・難治(R/R)MCLに対しイブルチニブ+プラセボと比較した第III相試験では、有意にI-VのPFSがI単剤よりも延長することが報告されている(Wang M, et al. ASH 2023)。本発表では、R/R MCLに対するI-V療法の第I相試験、上記の第III相試験、また、初発MCLに対する第II相試験にエントリーされたTP53変異を有するMCL患者に対するI-V療法の効果が報告された。合計74例の患者(初発:29例、R/R:45例)が解析対象となり、年齢中央値67歳、HighリスクMIPI 43%、bulky 36%、骨髄浸潤64%、脾腫39%であった。治療期間中央値が40.1ヵ月時点で、PFS中央値20.9ヵ月、全奏効率84%、CR率57%、OS中央値47.1ヵ月であった。PFSは初発とR/Rにて差を認めなかった。I-V併用療法は、TP53変異陽性のHighリスクMCL患者にも有用であることが示された。Glofitamab monotherapy in patients with heavily pretreated relapsed/refractory (R/R) mantle cell lymphoma (MCL): Updated analysis from a phase I/II study. (Abstract #7008)CD20XCD3の二重特異性抗体であるglofitamab(Glof)単剤でのR/R MCLに対する臨床試験のフォローアップ(中央値:19.6ヵ月)のデータが報告された。Glofは固定期間(約8.5ヵ月間)の治療である。Glof治療を受けた60例のR/R MCL患者が解析された。前治療のライン数は2(1~5)、73.3%が最終治療に抵抗性、前治療にBTK阻害薬の投与を受けた31例中29例がBTK阻害薬に抵抗性であった。Glofは、中央値12サイクル投与され、全奏効率85.0%、CR率78.3%であり、CRが得られた患者の治療奏効期間(DOCR)の中央値は15.4ヵ月であった。とくに、BTK阻害薬の前治療歴のある患者の全奏効率は74.2%、CR率71.0%であり、DOCRは12.6ヵ月であった。R/R MCLの治療、とくにBTK阻害薬に抵抗性の患者に対し、Glofは有望な治療薬であることが示された。多発性骨髄腫関連今年の多発性骨髄腫(MM)の演題は、初発MMに対する4剤併用の試験の3演題とR/R MMに対するCAR-T細胞治療の3演題を紹介します。Phase 3 study results of isatuximab, bortezomib, lenalidomide, and dexamethasone (Isa-VRd) versus VRd for transplant-ineligible patients with newly diagnosed multiple myeloma (IMROZ). (Abstract #7500)移植非適応初発MM患者に対するVRd-Rd療法とIsaVRd-IsaRd療法を比較した第III相試験(IMROZ試験)の結果が報告された。80歳以上は除外され、VRd-Rd療法に181例、IsaVRd-IsaRd療法に265例が割り当てられた。主要評価項目はPFS、主な副次評価項目はCR率、MRD陰性率、VGPR以上率、OSであった。追跡期間中央値59.7ヵ月時点でのPFSは、54.3ヵ月vs.未達(HR:0.596)、CR率は64.1% vs.74.7%、MRD陰性CR率は40.9% vs.55.5%と、いずれもIsaVRd-IsaRd療法の有効性が優れた。Isa併用によりVRdのRDIの低下は認めず、安全性も問題とはならなかった。Phase 3 randomized study of isatuximab (Isa) plus lenalidomide and dexamethasone (Rd) with bortezomib versus IsaRd in patients with newly diagnosed transplant ineligible multiple myeloma (NDMM TI). (Abstract #7501)移植非適応初発MM患者に対するIsaRd(12サイクル)-IsaR療法とIsaVRd(12サイクル)-IsaVR(6サイクル)-IsaR療法を比較した第III相試験(BENEFIT/IFM2020-05試験)の結果が報告された。対象患者は65~79歳のnon-frail患者であった。両群135例ずつの患者が割り当てられた。主要評価項目は18ヵ月時点のMRD陰性率(NGS:10-5)であった。結果、MRD陰性率は26% vs.53%と、有意にボルテゾミブを追加した治療の効果が優れた。ただし、24ヵ月時点のPFS、OSは差を認めなかった。また、治療継続率には差を認めず安全性には問題がなかった。本研究では、主要評価項目でIsaVRd-IsaVR-IsaR療法が優れたため、対象の患者には本治療法が新たな標準療法となる可能性が示された。Daratumumab (DARA) + bortezomib/lenalidomide/dexamethasone (VRd) in transplant-eligible (TE) patients (pts) with newly diagnosed multiple myeloma (NDMM): Analysis of minimal residual disease (MRD) in the PERSEUS trial. (Abstract #7502)移植適応初発MM患者に対するDVRd療法とVRd療法、その後、DRとRによる維持療法を比較したPERSEUS試験の維持療法期のMRD陰性率についての結果が報告された。DVRd-DR群に355例、VRd-R群に354例が割り付けられた。治療開始後、12ヵ月、24ヵ月、36ヵ月時点のMRD陰性率(10-5)は、それぞれ65.1% vs.38.7%、72.1% vs.44.9%、74.6% vs.46.9%とDara併用群で有意に高い割合であり、また、経時的に陰性率の上昇を認めた。移植適応MM患者に対するDRによる維持療法の意義が示された。MRD陰性を持続できた患者のPFS、OSがどうなるか本試験の長期フォローアップの結果が注目される。Efficacy and safety of ciltacabtagene autoleucel±lenalidomide maintenance in newly diagnosed multiple myeloma with suboptimal response to frontline autologous stem cell transplant: CARTITUDE-2 cohort D. (Abstract #7505)自家移植治療(±地固め)を受けた後CRに到達しなかったMM患者を対象に、Cilta-Cel治療単独(最初の5例)とCilta-Cel治療21日以降から最長2年間レナリドミドを併用した12例の安全性、有効性が検証された。主要評価項目はMRD陰性率(10-5)であった。MRD評価が行えた15例中12例(80%)でMRD陰性が達成され、MRD陰性達成までの期間の中央値は1ヵ月であった。追跡期間の中央値が22ヵ月時点で、奏効期間の中央値は未到達、18ヵ月時点のPFSは94%(17例中16例)であった。CRSは14例でみられたが、すべてG1/2であった。ICANSは1例(G1)でみられた。また、レナリドミド併用による遷延する血球減少の有害事象の増加はみられていない。自家移植後にCRが得られない患者へのCilta-Celの投与は深い奏効が望める治療法である。Ciltacabtagene autoleucel vs standard of care in patients with functional high-risk multiple myeloma: CARTITUDE-4 subgroup analysis. (Abstract #7504)1~3ラインの前治療歴のあるR/R MM患者に対するCilta-Celと標準治療を比較したCARTITUDE-4試験に参加した患者(初期治療開始後18ヵ月以内に再発を認めたFunctional Highリスク患者を含む)の中で、セカンドラインでの治療効果を post hoc解析し、PFS、CR率、MRD陰性率を比較している。全体では、未到達vs.17ヵ月、71% vs.35%、63% vs.19%であり、Functional Highリスク患者では、未到達vs.12ヵ月、68% vs.39%、65% vs.10%であった。標準治療と比較し、Cilta-Celの有意な有効性が示された。R/R MM患者(とくにFunctional Highリスク患者)に対する早いラインでのCilta-Celの有用性が認められた。Impact of extramedullary multiple myeloma on outcomes with idecabtagene vicleucel. (Abstract #7508)髄外腫瘤(EMD)を有するMM患者に対するIde-Celの効果は不明である。Ide-Cel治療を受けた351例のR/R MM患者のうち、84例(24%)にEMDを認めた。EMD患者とEMDを有さない(Non-EMD)患者での患者背景で差を認めた因子は、年齢(62歳 vs.66歳)、PS 0-1(78% vs.89%)、ペンタドラッグ抵抗性(46% vs.32%)、リンパ球除去前の血清フェリチン値(591 vs.242)、CRP(2.1 vs.1.0)であった。治療効果は、全奏効率(@Day30)58% vs.69%(p=0.1)、全奏効率(@Day90)52% vs.82%(p<0.001)、PFS 5.3ヵ月vs.11.1ヵ月(p<0.0001)、OS 14.8ヵ月 vs.26.9ヵ月(p=0.0064)であった。また、EMD患者では、血球減少が多く認められた。EMDはIde-Cel治療の効果がNon-EMD患者と比較し、明らかに不良であることが示された。白血病/MPN関連Ponatinib (PON) in patients (pts) with chronic-phase chronic myeloid leukemia (CP-CML) and the T315I mutation (mut): 4-year results from OPTIC. (Abstract #6501)OPTIC試験の4年のフォローアップが報告された。OPTIC試験は、2剤以上のTKI治療抵抗性を有するか、T315I変異を有するCP-CML患者をポナチニブ45/30/15mgで開始し、IS-PCRが1%以下で45/30mg開始群は15mgに減量する治療法の有効性、安全性を検討した試験である。23.8%の患者がT315I変異を有していた。4年時点でのIS-PCRが1%以下率、PFS、OSを比較した。45mg→15mgの投与法で、T315I変異を有する患者で最も、IS-PCRの低下、PFSの延長がみられた。動脈閉塞の合併症率は同等であり、本試験の対象となった患者(とくにT315I変異を有する患者)に対しては、有効性、安全性の面から45mg→15mgのポナチニブの投与法が推奨される。A retrospective comparison of abbreviated course “7+7” vs standard hypomethylating agent plus venetoclax doublets in older/unfit patients with newly diagnosed acute myeloid leukemia. (Abstract #6507)メチル化阻害薬+ベネトクラクス(VEN)の併用治療は、通常の化学療法の実施が難しいfrail AML患者の標準療法となっている。VENの投与期間を28日/サイクルから短縮することで骨髄抑制は軽減されるが、有効性が失われないかどうかは不明である。VENの投与期間を7日間に短縮した7+7を実施したフランスの患者82例と通常の21~28日で投与したMDACC(USA)の患者166例をレトロスペクティブに比較した。CR+CRi率、CR率は両治療法で差を認めなかったが、CRに到達するためのサイクル数は7+7治療で、1サイクル多かった(2 vs.1サイクル)。OS中央値は11.2ヵ月 vs.10.3ヵ月、2年OSは28% vs.34%で差を認めなかった。8週時点での死亡率は6%と16%で有意に7+7で少なく、また、血小板輸血も少なかった。以上より、7+7の投与期間は、有効性、安全性の面でも十分に許容されると思われた。Updated safety and efficacy data from the phase 3 MANIFEST-2 study of pelabresib in combination with ruxolitinib for JAK inhibitor treatment-naive patients with myelofibrosis. (Abstract #6502)pelabresib(PELA)は新規のBET阻害薬であり、骨髄線維症(MF)の遺伝子発現を抑制する。MANIFEST-2試験はJAK阻害薬治療を受けたことがないMF患者に対するルキソリチニブ(Rux)+PELA(214例)とRux+プラセボ(216例)を比較した第III相比較試験である。DIPSSスコアがInt-1以上のMF患者が対象であり、主要評価項目は24週時点での脾臓体積の35%減少(SVR35)率であり、副次評価項目として症状スコア(TSS)の改善を検討している。結果、Rux+PELA群でSVR35率が65.9%(vs.35.2%)と、有意に多くの患者で脾腫の縮小が認められた。また、Rux+PELA群で、脾腫の縮小は早くみられ、その効果は長く維持された。TSSの改善も、Rux+PELA群で良い傾向が示された。また、貧血、骨髄線維化の改善がRux+PELA群で有意に多くみられた。有害事象としては、血小板減少と下痢がやや多かったが、総じてRux単独と変わりなかった。MFに対し、Rux単独と比較し、Rux+PELA併用が有効であることが示されている。ASC4FIRST, a pivotal phase 3 study of asciminib (ASC) vs investigator-selected tyrosine kinase inhibitors (IS TKIs) in newly diagnosed patients (pts) with chronic myeloid leukemia (CML): Primary results. (Abstract #LBA6500)初発CML患者に対し、既存のTKIとアシミニブ(ASC)を比較した第III相試験(ASC4FIRST試験)の最初の解析結果がLBAにて報告された。TKIの種類はランダム化前に主治医と患者の判断で選択された(IS-TKI)。また、ランダム化前に2週間以内であれば、TKIの服用が許容された。本試験の目的は、48週時点でのASC群のMMR達成率がIS-TKI群と比較して優れていることを示すことであった。ASC群に201例、IS-TKI群に204例(IM:102、第2世代[2G]:102[NI:48%、DA:41%、BO:11%])がエントリーされた。結果、48週時点のMMR達成率はASC群67.7%、IS-TKI群49.0%であり、有意にASC群で優れた。データカットオフ時点での治療薬の継続率は、ASC群86%、IM群62%、2G群75%であり、中止理由として、効果不十分が6%、21%、10%、有害事象が5%、11%、10%であった。以上の結果より、ASCは既存のTKIと比較し、初発CML患者に対する有効性、安全性に優れていることが示された。おわりに以上、ASCO2024で発表された血液腫瘍領域の演題の中から14演題を紹介しました。過去3年間のASCO2021、2022、2023では10演題ずつを紹介しましたが、今年発表された演題もこれまでと同様に、今後の治療を変えていくような結果であるように思いました。来年以降も現地開催に加えてWEB開催を継続してもらえるならば、ASCO2025にオンライン参加をしたいと考えています(1年前にも書きましたが、もう少しWEBでの参加費を安くしてほしい、さらに円安が続く今日この頃[笑])。

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第102回 医学論文を「食わせる」ことが可能なAIが爆誕

AIの進歩が著しいほんの1年前、「ChatGPTって知っている?」と聞くだけで「生成AIに詳しいんだね!」という反応が返ってきました。しかし今では、生成AIの進歩がまるで新幹線のように加速しています。当初、カメの速度だったものが、今や新幹線並みの速さです。生成AIの最終目的地は、論文の執筆やシステマティックレビュー、メタ解析など高度な作業を代行することですが、現段階ではまだそのレベルには達していません。しかし、論文を読み込む能力は飛躍的に向上し、「複数の論文PDFをアップロードして解析する」ことが現実的になってきています。複数のPDFをアップロード多くの人が使っているChatGPTのGPT-4oも、添付ファイルとして複数のPDFをアップロードすることは可能です。ただし、解釈にはウェブ検索が含まれることがあり、アップロードされた文章のみを統合して解釈する柔軟性には限界があります。これはPerplexityなどの他のAIツールでも同様です(図1)。画像を拡大する図1. GPT-4oとPerplexity:複数のPDFを併せて解釈することは困難NotebookLMとClaude 3.5 Sonnetが登場最近、GoogleのNotebookLMという「複数ファイルを読み込めるツール」が一般ユーザーにも提供されるようになりました。NotebookLMは、複数の論文を同時に分析し、それらの内容を正確に要約してアウトプットすることができます(図2)。簡単に書くと、「医学論文を食う」AIです。画像を拡大する図2. NotebookLMGoogleは現在Geminiというオープンモデルを公開していますが、複数のPDFをアップロードしても、それぞれの内容を順番に解説することはできても、「まとめて煮込む」ことはできません。NotebookLMは、アップロードされたファイルのみを参照するため、偽情報を食わせない限り、情報の正確性は高いです。また、インターネットを参照しないため、ネット上の誤情報を引っ張ってくるハルシネーションも起こりません。NotebookLMは、一度のタスクで最大49件の論文PDFを解析できます。システマティックレビューが瞬時に行える可能性を秘めているわけです。自身の研究テーマの最新論文をすべて「食わせる」ことも可能ですし、診療している疾患のガイドラインをすべて投入することも可能です。ただし、大きなPDFは一度に読み込めないため、PDF分割アプリで分割する必要があります。さらに、解析した内容をメモとして保存することもできます。私も現在20個近いメモを作成し、調べ物をする際に活用しています。これまで「論文読み込み」の分野ではClaude 3が高精度な回答を提供してくれました。論文PDFをアップロードして「要約してください」と依頼すると、詳細な要約が得られる時代でしたが、今や「全訳してください」と入力すると、すべての文章を日本語で返してくれるようになりました。最近、そのClaude 3の上位モデルである、Claude 3.5 Sonnetが爆誕しました。Claude 3 Opusを上回りながら、デプロイのコストが低く、回答時間が倍速になりました。また、Artifactsというアウトプットを視覚化するツールも導入されました。たとえば、論文PDFを読み込ませて、ウェブサイトやスライドに使えそうなデザインにアウトプットすることが可能です(図3)。まだ新しい機能であり、思いどおりのデザインに仕上がるとは限りませんが、可能性は広がっています。画像を拡大する図3. Claude 3.5 SonnetのArtifacts:クロファジミンの副作用の論文を複数アップロードしてアウトプット

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統合失調症とうつ病の治療ガイドライン普及が睡眠薬処方に及ぼす影響

 信州大学の中村 敏範氏らは、「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」が、日本における統合失調症およびうつ病に対する、精神科医による睡眠薬の処方や処方する睡眠薬の種類に及ぼす影響を調査した。これは、精神疾患の治療ガイドラインによる教育が、精神科医の睡眠薬処方に及ぼす影響を評価した、初めての研究である。BMC Psychiatry誌2024年5月29日号の報告。 EGUIDEプロジェクトは、日本における統合失調症とうつ病のエビデンスに基づく臨床ガイドラインに関する、全国的なプロスペクティブ研究である。2016〜21年にEGUIDEプロジェクト参加施設から退院した患者を対象に、臨床データと処方データを用いて、睡眠薬の処方状況を調査した。EGUIDEプロジェクトに参加している精神科医から処方された患者と参加していない精神科医から処方された患者における、睡眠薬の処方率および各タイプの睡眠薬の処方率を比較した。睡眠薬のタイプは、ベンゾジアゼピン受容体作動薬、非ベンゾジアゼピン受容体作動薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬に分類した。EGUIDEプロジェクトが睡眠薬処方に及ぼす影響を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象は、統合失調症患者1万2,161例、うつ病患者6,167例。・EGUIDEプロジェクトに参加した精神科医は、統合失調症患者およびうつ病患者に対し、睡眠薬、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方率が有意に低かった(各々、p<0.001)。 著者らは「EGUIDEプロジェクトは、睡眠薬の処方、とくにベンゾジアゼピン受容体作動薬の処方率削減に、重要な役割を果たしていると考えられる。本結果は、EGUIDEプロジェクトが治療行動の改善に寄与する可能性を示唆している」としている。

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慢性硬膜下血腫の穿頭ドレナージ術、洗浄なしvs.あり/Lancet

 慢性硬膜下血腫に対する穿頭ドレナージ術について、硬膜下洗浄を行わない場合(洗浄なし群)の6ヵ月以内の再手術率は、行った場合(洗浄あり群)より6.0%ポイント高率であり、洗浄なし群の洗浄あり群に対する非劣性は示されなかったことを、フィンランド・ヘルシンキ大学のRahul Raj氏らFinnish study of intraoperative irrigation versus drain alone after evacuation of CSDH(FINISH)試験グループが報告した。慢性硬膜下血腫に対する穿頭ドレナージ術には、アクセス用穿頭孔の作成、硬膜下腔の洗浄、硬膜下ドレーンの挿入という3つの要素が含まれる。硬膜下ドレーンの有益性は確立されているが、硬膜下洗浄の治療効果は検討されていなかった。結果を踏まえて著者は、「機能的アウトカムや死亡率について群間差がなかったことを考慮すると、硬膜下洗浄を行うことを支持するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年6月6日号掲載の報告。術後6ヵ月以内の再手術率を評価、非劣性マージン7.5% FINISH試験はフィンランドの5つの脳神経外科ユニットで実施された、研究者主導の実践的多施設共同無作為化並行群間非劣性試験であり、穿頭ドレナージを要する慢性硬膜下血腫を有する18歳以上の成人を登録して行われた。 被験者は、硬膜下洗浄を行う穿頭ドレナージ群(洗浄あり群)または硬膜下洗浄を行わない穿頭ドレナージ群(洗浄なし群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。コンピュータ生成ブロック無作為化法(4、6、8ブロックサイズ)が用いられ、試験地による層別化も行われた。 脳神経外科医および手術室スタッフを除き、すべての患者およびスタッフは治療割り付けが盲検化された。 両群ともに、穿頭孔は血腫厚が最大の部位に開けられ、硬膜下腔を洗浄せずに硬膜下ドレーンを挿入、または硬膜下腔を洗浄したうえで硬膜下ドレーンを挿入。ドレーンは48時間留置された。 再手術、機能的アウトカム、死亡および有害事象を、手術後6ヵ月間記録し評価した。主要アウトカムは、6ヵ月以内の再手術とし、非劣性マージンは7.5%で設定した。非劣性を結論付けるためには重要な副次アウトカムの達成も求められた。重要な副次アウトカムは、6ヵ月時点の機能的アウトカムが不良(すなわち修正Rankinスケールスコア4~6、スコア範囲:0[症状なし]~6[死亡])であった被験者の割合および死亡率であった。主要アウトカムおよび重要な副次アウトカムの解析評価はいずれもITT集団およびper-protocol集団で行われた。群間差6.0%ポイントで洗浄なし群の非劣性は示されず 2020年1月1日~2022年8月17日に1,644例が適格性の評価を受け、589例(36%)が無作為化され、割り付けられた治療を受けた(洗浄なし群295例、洗浄あり群294例、女性165例[28%]、男性424例[72%])。6ヵ月フォローアップは、2023年2月14日まで延長された。 ITT解析では、再手術が必要となった被験者は洗浄なし群54/295例(18.3%)、洗浄あり群37/294例(12.6%)であった(群間差:6.0%ポイント、95%信頼区間:0.2~11.7、p=0.30、試験地補正済み)。 修正Rankinスケールスコア4~6の被験者の割合(洗浄なし群37/283例[13.1%]vs. 洗浄あり群36/285例[12.6%]、p=0.89)、死亡率(18/295例[6.1%]vs.21/294例[7.1%]、p=0.58)のいずれも両群間で有意差は認められなかった。 主要ITT解析の結果は、per-protocol解析でも実質的に変わらなかった。 有害事象の発現件数は両群間で有意差はなく、最も多くみられた重篤な有害事象は全身性感染(洗浄なし群26/295例[8.8%]vs.洗浄あり群22/294例[7.5%])、頭蓋内出血(13/295例[4.4%]vs.7/294例[2.4%])、てんかん発作(5/295例[1.7%]vs.9/294例[3.1%])であった。

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