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英語で「追加質問」は?【1分★医療英語】第139回

第139回 英語で「追加質問」は?《例文》医師AThank you for your question. Are there any other questions about my presentation?(ご質問ありがとうございます。ほかに質問はありますか?)医師BYes, I have a follow-up question about this.(はい、これに関する追加質問があります)《解説》医療の場面に限らずとも、会話の中で質問をすることは多いですよね。そんなときに使える便利な表現があります。“follow-up question”で「追加質問」という意味を伝えることができます。たとえば、患者さんへ治療の説明をするとき。患者さんから質問が出てそれに医療者が答えた後にも、患者さんから“May I ask you a follow-up question?”(追加で質問してもいいですか?)と聞かれるかもしれません。ほかにも、医療者間でのプレゼンやカンファレンスで出た質問内容に関連し、自分も追加で質問したいときには、“I have a follow-up question.”(追加質問があります)と言うと自然に話をつなげることができます。日本語でも「フォローアップ」という言葉は使いますが、医療の現場においては「再診」や「検査結果の確認」の意味に限定して使用されることが多いのではないでしょうか。英語でも“follow-up visit”(再診)という使い方はありますが、上述のようにさらに広義の「追加」という意味全般に使うことができます。“follow-up”は1単語の名詞・形容詞として使いますが、“follow up”と間のハイフンが消えると動詞としても使えます。“Please follow up on the test result.”(この検査結果に関してフォローアップ[後日確認]しておいてください)といった感じで使われます。講師紹介

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第223回 マイクロRNA除去でマウスが性転換

マイクロRNA除去でマウスが性転換小ぶりなRNA配列であるマイクロRNA(miRNA)一揃いを省くことで、マウスの生物学的な性をオスからメスにすっかり変えることができました1,2)。それらのmiRNAはmiR-17~92群と呼ばれ、6つのmiRNA遺伝子で構成されます。miRNAはタンパク質のアミノ酸配列を指定するものではなく、遺伝子発現を調節する役割を担います。性染色体がXYのマウスのmiR-17~92群を省いたところ、精巣は作られず、代わりにメスの証である卵巣が生じました。その仕組みを調べるべくmiR-17~92群を備える野生型マウスとmiR-17~92群を欠くマウスの細胞組成を比較したところ、精子発達を支えるセルトリ細胞の分化がmiR-17~92群を欠くマウスでは減少していました。miR-17~92群はセルトリ細胞の分化に携わっているようです。さらに研究を進めたところ、miR-17~92群を省くとセルトリ細胞の発生が妨げられることには、精巣の発達に不可欠なタンパク質である性決定領域Y(SRY)の抑制が寄与していると示唆されました。性染色体がXYの胚ではいつもどおりならSRY遺伝子が発現し、精巣発達に不可欠な転写因子SOX9が活性化されることで生殖腺は精巣になっていきます。一方、SRY遺伝子がない性染色体XXの胚では卵巣が作られます。性染色体がXYの動物での精巣の発達には、ちょうどよい時期でのSRY遺伝子発現を必要とすることが先立つ研究で示されています。しかしmiR-17~92群を省いた胚の精巣ではSRY遺伝子の発現が半日(12時間)ほど後ろ倒しになっており、SRYも減少していました。また、セルトリ細胞の前駆細胞にSOX9が見当たりませんでした。そのようなタンパク質発現の変化が相まって、最終的にマウスの性転換を引き起こしたようです。今回の研究には携わっていないThe Francis Crick Instituteの卵巣発達学者Roberta Migale氏は、miR-17~92群を省いて生じた変化は目を見張るものであり、性の完全転換はまったく驚くべきことだと言っています3)。Migale氏によると、miR-17~92群は進化で振り落とされずよく残っており、今回の研究で示されたような性決定の仕組みはヒトにもありそうです。これまで何十年も性決定研究の的といえばタンパク質の基になる遺伝子であり、タンパク質の基ではないmiRNAのような非コード因子の性決定への寄与はわからないままでした。今回の発見を契機に性発達疾患の臨床研究で非コード因子に目が向けられるようになることをMigale氏は望んでいます。今後の課題としてmiR-17~92群がSRY遺伝子の発現をどう調節しているかを調べる必要があります。SRY遺伝子はmiR-17~92群の標的とみなされておらず、miR-17~92群の欠如は何らかの仲介によってSRY遺伝子発現を遅らせるようです。ちなみにmiR-17~92群を省くと数百もの遺伝子発現が乱れます1)。miR-17~92群の働きの正確な把握はかなりの技術が必要だろう、と今回の研究を率いたスペインのグラナダ大学のFrancisco Barrionuevo氏は言っています3)。参考1)Hurtad A, et al. Nat Commun. 2024;15:3809.2)Scientists made mice with Y chromosomes female by deleting just 6 tiny molecules / Live Science3)Deleting a MicroRNA Cluster Reversed Biological Sex in Mice / The Scientist

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未治療の急性期統合失調症患者におけるビリルビン値と代謝パラメータとの関連

 酸化システムは、統合失調症発症に重要な影響を及ぼす。統合失調症患者のさまざまなエピソードにおいて、高ビリルビン血症と精神病理や糖脂質代謝との間に、一貫性のない関連が認められている。中国・安徽医科大学のYinghan Tian氏らは、急性期エピソードおよび薬物治療未治療の統合失調症患者を対象に、これらの関連性を調査した。BMC Psychiatry誌2024年5月29日号の報告。 安徽医科大学附属巣湖病院の電子カルテシステムより抽出した5年間(2017年5月〜2022年5月)のデータを用いて、レトロスペクティブ研究を実施した。地元の医療スクリーニングセンターより同期間の健康対象者データを抽出した。対象者のビリルビン濃度(総ビリルビン[TB]、抱合ビリルビン[CB]、非抱合ビリルビン[UCB])、糖脂質代謝パラメータ、簡易精神症状評価尺度(BPRS)スコアを収集した。 主な結果は以下のとおり。・特定された1,468件の症例記録をスクリーニング後、急性期エピソードおよび薬物治療未治療の統合失調症患者(AEDF群)89例および対照群100例を対象に、分析を行った。・AEDF群は、対照群と比較し、CBレベルが高く、HDLコレステロール(HDL-C)を除く糖脂質代謝パラメータのレベルが低かった(各々、p<0.001)。・バイナリロジスティック回帰分析により、AEDF群のビリルビンレベルの高さと独立して関連が認められた因子は、次のとおりであった(各々、p<0.05)。●BPRS総スコア、抵抗サブスケールスコアの高さ●HDL-Cレベルの高さ●総コレステロール、トリグリセライドレベルの低さ 著者らは、「急性期エピソードおよび薬物治療未治療の統合失調症患者では、ビリルビンレベルが上昇しており、ビリルビンレベルが高いほど、精神病理がより重篤で、糖脂質代謝が比較的最適化されていることが示唆された。臨床現場では、この患者集団のビリルビン値を定期的にモニタリングすべきである」としている。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、amivantamab+lazertinibがPFS延長/NEJM

 未治療の上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、標準治療であるオシメルチニブ(第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬[TKI])と比較して、amivantamab(EGFRと間葉上皮転換因子[MET]を標的とする二重特異性抗体)+lazertinib(活性化EGFR変異とT790M変異を標的とする第3世代EGFR-TKI)の併用療法は、無増悪生存期間(PFS)が有意に長く、安全性のデータは既報の第I、II相試験と一致することが、韓国・延世大学校医科大学のByoung C. Cho氏らMARIPOSA Investigatorsが実施した「MARIPOSA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月26日号に掲載された。実薬対照の国際的な無作為化第III相試験 MARIPOSA試験は、amivantamab+lazertinib併用療法の有効性と安全性の評価を目的とする日本を含む国際的な無作為化第III相試験であり、2020年11月~2022年5月に参加者の無作為化を行った(Janssen Research and Developmentの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、未治療の局所進行または転移を有するEGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失またはL858R)NSCLC患者1,074例を登録し、amivantamab+lazertinib群(非盲検)に429例(年齢中央値64歳、女性64%)、オシメルチニブ群(盲検)に429例(63歳、59%)、lazertinib群(盲検)に216例を無作為に割り付けた。 主要評価項目は、オシメルチニブ群との比較におけるamivantamab+lazertinib群のPFSとし、盲検下独立中央判定による評価が行われた。中間解析でのOSは評価不能 全体の追跡期間中央値は22.0ヵ月で、投与期間中央値はamivantamab+lazertinib群18.5ヵ月、オシメルチニブ群18.0ヵ月であった。 PFS中央値は、オシメルチニブ群が16.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:14.8~18.5)であったのに対し、amivantamab+lazertinib群は23.7ヵ月(19.1~27.7)と有意に長かった(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.70、95%CI:0.58~0.85、p<0.001)。lazertinib群のPFS中央値は18.5ヵ月(95%CI:14.8~20.1)だった。 また、奏効率は、amivantamab+lazertinib群が86%(95%CI:83~89)、オシメルチニブ群は85%(81~88)であった。奏効期間中央値は、それぞれ25.8ヵ月(95%CI:20.1~評価不能)および16.8ヵ月(14.8~18.5)だった。 一方、予定された中間解析における全生存期間(OS)中央値は両群とも未到達であり、死亡のHRは0.80(95%CI:0.61~1.05)であった。EGFR阻害関連の有害事象が多い 主な有害事象はEGFR阻害関連の毒性作用であり、爪囲炎がamivantamab+lazertinib群の68%、オシメルチニブ群の28%で、皮疹がそれぞれ62%および31%で発現した。注入に伴う反応(infusion-related reaction)は、amivantamab+lazertinib群の63%に認め、その大部分はサイクル1の1日目に発生した。 Grade3以上の有害事象は、amivantamab+lazertinib群が75%、オシメルチニブ群が43%で発現し、重篤な有害事象はそれぞれ49%および33%で発現した。治療関連有害事象によるすべての試験薬の投与中止は、amivantamab+lazertinib群が10%、オシメルチニブ群は3%に認め、死亡の原因となった有害事象はそれぞれ34例(8%)および31例(7%)で発現した。 著者は、「amivantamabをlazertinibと併用する科学的根拠は、オシメルチニブに対する腫瘍の耐性機序への積極的な対処法となることであった。この併用療法には、化学療法を後の治療ラインに温存できるという利点もある」と述べ、また「治療関連有害事象によるすべての試験薬の投与中止の頻度は低く、ほとんどの患者が治療を継続できることが示唆された」としている。

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特定の前立腺肥大症治療薬がレビー小体型認知症の予防に有効か

 特定の前立腺肥大症治療薬が、レビー小体型認知症のリスク低下に役立つ可能性のあることが新たな研究で示唆された。米アイオワ大学内科学分野のJacob Simmering氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に6月19日掲載された。Simmering氏は、「レビー小体型認知症は、神経変性により生じる認知症としてはアルツハイマー病に次いで多いが、現時点では予防や治療のための薬剤がないため、今回の結果には心が躍った。既存の薬剤がこの衰弱性疾患の予防に有効であることが確認されれば、その影響を大幅に軽減できる可能性がある」と同大学のニュースリリースで述べている。 米国立老化研究所(NIA)によれば、米国でのレビー小体型認知症の患者数は100万人以上に上るという。レビー小体型認知症は、高度にリン酸化したα-シヌクレインと呼ばれるタンパク質が脳の神経細胞に凝集・沈着して形成されるレビー小体が原因で発症するとされている。レビー小体型認知症では、思考力や記憶力、運動機能が障害されるほか、幻視が生じる可能性もあり、実際に、80%以上の患者では実在しないものが見えるという。 前立腺肥大症の治療では、排尿障害を改善する治療薬として、前立腺と膀胱の筋肉を弛緩させる作用のあるα1受容体遮断薬のテラゾシン、ドキサゾシン、アルフゾシンが用いられている。研究グループによると、これらの薬剤にはまた、脳細胞のエネルギーとなるATP(アデノシン三リン酸)の産生に重要な酵素を活性化する作用もあり、過去の研究では、パーキンソン病においてこれらの薬剤が神経保護作用を有する可能性が示唆されているという。今回の研究では、パーキンソン病と密接に関連するレビー小体型認知症でもα1受容体遮断薬が同様の効果を示すのかが検討された。 Simmering氏らは、Merative Marketscanデータベースから、テラゾシン、ドキサゾシン、アルフゾシンのいずれかを使用している男性12万6,313人と、ATP産生を増大させない別の2種類の前立腺肥大症治療薬、すなわちα1受容体遮断薬のタムスロシンと5α-還元酵素阻害薬(5ARI)を使用している男性を抽出し(タムスロシン:24万2,716人、5ARI:13万872人)、レビー小体型認知症の発症リスクを比較した。 その結果、テラゾシン、ドキサゾシン、アルフゾシンのいずれかを使用している男性でのレビー小体型認知症の発症リスクは、タムスロシンを使用している男性よりも40%(ハザード比0.60、95%信頼区間0.50〜0.71)、5ARIを使用している男性よりも27%(同0.73、0.57〜0.93)低いことが明らかになった。 こうした結果を受けてSimmering氏は、「テラゾシン、ドキサゾシン、アルフゾシンの使用とレビー小体型認知症の発症リスク低下との関連を明らかにするためには、さらなる研究で長期にわたって追跡する必要がある。それでも、これらの薬剤が、高齢化に伴い多くの人が罹患する可能性のあるレビー小体型認知症に対して予防効果を持つことは期待しても良いように思う」と述べている。 研究グループは、本研究には男性しか参加していないことに触れ、「この結果が女性にも当てはまるのかどうかは不明だ」としている。NIAによると、レビー小体型認知症は女性よりも男性の方が罹患率がわずかに高いという。また、レビー小体型認知症は診断が難しいため、本研究では、全てのレビー小体型認知症の発症者が対象に含まれていなかった可能性があることにも言及している。

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自宅の改造が脳卒中患者の自立を助け生存率を高める

 シャワーを浴びる、階段を上るなどの日常的な動作は、脳卒中発症後に後遺症の残った人にとっては危険を伴い得る。しかし、階段に手すりを設置したり、つまずき防止のためにスロープを設置したりといった安全対策を講じることで、多くの人が自立した生活を送れるようになり、早期死亡リスクを低下させられることが新たな研究で確認された。米ワシントン大学公衆衛生研究所のSusan Stark氏らによるこの研究結果は、「Archives of Physical Medicine and Rehabilitation」に5月18日掲載された。 脳卒中患者の8人に1人は退院後1年以内に死亡する。Stark氏は、「脳卒中患者にとって、数週間の入院中のリハビリを経て自宅に戻る移行期は重要だ。自宅の環境は、設備が整った施設とは違って、困難に満ちた場所に見えるだろう」と話す。脳卒中後には筋肉が衰えているため、例えば、洗濯かごからシャツを取り出すなどの簡単な作業にも労力を要する。また、バランス感覚に障害が生じていれば、トイレの使用が困難になり、階段の上り下りは障害物コースのように感じられるかもしれない。このような困難があると、友人や隣人とも疎遠になりがちになり、それが今度は抑うつの原因となる。 Stark氏らは今回の研究で、脳卒中後の患者のコミュニティーへの参加移行プログラム(Community Participation Transition after Stroke;COMPASS)の安全性と有効性を検討した。COMPASSでは、作業療法士が脳卒中患者の自宅を訪問し、高さの低いトイレや手すりのない階段など、自宅の中で患者にとって障害となるものを探し出し、患者の個々のニーズに対応して改造する。また、利用しやすい交通手段を見つけるなど、問題を解決する方法を患者に教えたりもする。 対象者は、入院中にリハビリを受け、退院後は自宅で自立した生活を送ることになっていた50歳以上の脳卒中患者183人。これらの患者は、自宅の改造と作業療法士によりセルフマネジメントの訓練を自宅で4回受ける介入群(85人)と、脳卒中に関する教育を自宅で4回受ける対照群(98人)にランダムに割り付けられた。 その結果、研究期間中に対照群では10人が死亡したのに対し、介入群で死亡した人はいなかったことが明らかになった。また、高度看護施設に入居した対象者の数も、対照群での19人に対し介入群では8人と少なかった。 2021年に脳卒中を発症したDonna Jonesさんは、本研究への参加を通してバランス感覚を取り戻し、自立した生活を送るための新たなスキルを学んだ。また、自宅の改造により、自立した生活を送ることに対する自信を得たという。Jonesさんは、「改造された浴室は、自分の人生が正しい方向に向かっているという希望を与えてくれる。私に授けられた実用的なツールとサービスは、私の新たな人生の基盤になっている。私はこれまでとは違う人生を歩んでいて、それをとても気に入っている」と話す。 Stark氏は、「もっと多くの人を対象にこの介入の効果を検証する必要があり、保険会社を納得させるためには、住宅の改造に関連するコストと改造により節約されるコストを明確にしなければならない。現状では、このコストをカバーできる制度はない」と話す。同氏はさらに、「このプログラムを実施するための最大の障壁は、住宅改造費用を保険会社に払い戻させることだ。500ドル(1ドル160円換算で8万円)の住宅改造で病院や高度看護施設を利用せずに済むのなら、私には何の問題もないように思われる」と付け加えている。

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ASCO2024 レポート 老年腫瘍

レポーター紹介昨今、ASCOで老年腫瘍に関する重要な臨床研究の結果が発表されるようになった。高齢がん患者を対象とする臨床研究の枠組みとしては、(1)高齢がん患者を対象とした治療開発(特定の治療の有用性を検証)に関する臨床試験、(2)特定の因子、とくに高齢者機能評価が予後因子になるか否かを評価する臨床研究、(3)「高齢者機能評価+脆弱性に対するサポート」の有用性を評価する臨床試験に大別されるだろう。ASCO2024では、それぞれの枠組みの中で、日常診療の参考になる臨床研究が多数発表されていた。その中から、興味深い研究を紹介する。転移性膵がんを患う「脆弱な」高齢者を対象としたランダム化比較試験(GIANT study: #40031))近年、高齢者という集団は不均一であり、暦年齢だけで治療方針を決めるべきではない、という認識が浸透しつつあるように思う。とくに欧州では、高齢者という集団を全身状態の良いほうから順番に、fit、vulnerable、frailに分類するという考え方が提唱されている。すなわち、“fit”は、積極的ながん治療の恩恵を受けられるような全身状態の良い患者、“frail”はベストサポーティブケアの適応となるような全身状態の悪い患者、“vulnerable”は、その中間に位置することが提唱されている2)。しかし、それぞれの分類の線引きは定まっておらず、がん種ごと、病態ごとに定義が異なっているのが現状である。米国のECOG-ACRINグループが実施したGIANT試験は、“vulnerable”な高齢者を独自に定義し、GEM+nab-PTX vs.5FU/LV+nal-IRIの有用性を比較したランダム化比較第II相試験である。70歳以上、転移性膵管腺がんを有する、ECOG-PS:0~2かつ高齢者機能評価(生活機能、併存症、認知機能、暦年齢、老年症候群[転倒、失禁])の結果で“vulnerable”な高齢者と判断された患者が本試験に登録された(表1)。登録患者は、ゲムシタビン(1,000mg/m2)とナブパクリタキセル(125mg/m2)を14日ごとに投与するA群および5-フルオロウラシル(2,400mg/m2)、ロイコボリン(400mg/m2)、リポソームイリノテカン(50mg/m2)を14日ごとに投与するB群に無作為に割り付けられた。Primary endpointは全生存期間、secondary endpointsは、無増悪生存期間、奏効割合、有害事象などであった。A群の生存期間中央値を7.7ヵ月、B群を10.7ヵ月(HR:0.72)、片側α:0.10、検出力80%とした場合、予定登録患者数は184例であった。本試験は想定よりも予後が悪すぎたため、第1回目の中間解析で無効中止となった。92施設から176例の患者が登録され、年齢中央値は両群とも77歳。登録はしたものの治療を開始できなかった患者はA群で10.2%、B群で14.8%、1~3コースしか治療ができなかった患者はA群で34.2%、B群で42.7%であった。全生存期間は、A群で4.7ヵ月、B群で4.4ヵ月(HR:1.12、0.76~1.66、p=0.72)であり、無増悪生存期間はA群3.0ヵ月、B群2.4ヵ月であった。Grade3以上の有害事象発生割合は、A群45.6%、B群58.7%であった。残念ながら早期中止となってしまったが、“vulnerable”な高齢者を対象として治療開発を試みた意欲的な試験である。高齢者機能評価を用いて高齢者を分類するという手法を用いた臨床試験は過去にも複数存在3)するが、このタイプの臨床試験では試験結果がnegativeになった場合、「試験治療が適切なのか」という問題以外にも、「そもそも高齢者機能評価を用いた分類方法が適切なのか」という問題がつきまとう。本試験の場合、両群で治療強度を弱め過ぎたのかもしれないという問題と、本試験で定義した“vulnerable”という分類方法が適切ではなかったのではないかという問題が生じる。治療が開始できなかった患者や治療期間が極端に短かった患者が多かったことを踏まえると、本試験で定義した“vulnerable”の大部分が本当は“frail”なのではないかという疑問を持ってしまう。患者の大多数は、認知機能障害(46%)、暦年齢が80歳以上(36%)、併存疾患(31.4%)により“vulnerable”と判断されており、これらの患者は、より慎重に化学療法を実施、またはベストサポーティブケアを提案してもよいのかもしれない。一方、サブグループ解析では、75歳以上と75歳未満の集団の生存曲線に大きな違いはなかったため、やはり暦年齢だけで治療方法を決めるのは避けるべきなのだろう。本試験は早期中止となり、また“vulnerable”な高齢者を定義することの難しさを改めて知ることになったが、このような意欲的な試験のデータが蓄積されていくことで、より適切な集団を設定することができ、その集団に適切な治療を提供できるようになると考えている。画像を拡大する日本発の高齢者機能評価+介入のランダム化比較試験の副次的解析(NEJ041/CS-Lung001: #15024))“vulnerable”な高齢者をどう定義するのか、という議論は以前からある。生理的予備能が乏しい高齢者が全身化学療法などで重篤な有害事象が生じると全身状態が悪化することが予想されるため、重篤な有害事象が生じうる集団を“vulnerable”な高齢者とするという考え方もある。化学療法の毒性を予測するツールで有名なものとして、米国の高齢がん研究グループ(Cancer and Aging Research Group:CARG)が作成したChemo Toxicity Calculator(以下、CARGスコア)がある。CARGスコアは簡単な11項目(年齢、がんの種類、予定されている化学療法の投与量、予定されている化学療法の薬剤数、ヘモグロビン、クレアチニンクリアランス、聴力、転倒、服薬管理、身体活動、社会活動)を評価するだけでGrade3以上の有害事象の出現頻度を予測できるとされている5,6)。CARGスコアは米国では妥当性が検証されており、また正式な手順で翻訳されたCARGスコア日本語版があるため日本でも使用しやすいツールである(当該URLのlanguageをJapaneseにすれば日本語になる)7)。しかし、日本人での有用性が評価されていないこと、また分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などは予測式を作成する際の対象集団に含まれていなかったことから、その使用には注意が必要であるとされていた。今回、日本発の高齢者機能評価+介入のランダム化比較試験の副次的解析の中で、日本人におけるCARGスコアの有用性が評価された。NEJ041/CS-Lung001は、非小細胞肺がんを患う75歳以上の患者を対象とした、高齢者機能評価+介入の患者満足度における有用性を評価したクラスターランダム化比較試験であり、主たる解析の結果はASCO2023で報告された。1,021例が登録され、そのうち911例がCARGスコアで評価された。CARGスコアは19点満点であり、0~5点を「低い」、6~9点を「中間」、10~19点を「高い」とした場合、米国のデータでは、それぞれのカテゴリーとGrade3以上の有害事象の発生割合に関連がみられたため、CARGスコアは重篤な有害事象を予測できるという結論に至ったが、今回の日本人データではそれらに関連がみられなかった。また、CARGスコアの対象外とされていた分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬を受けている集団でもCARGスコアの有用性を評価したものの、いずれもCARGスコアのカテゴリーと重篤な有害事象に明らかな関連はみられなかった。欧米のKey opinion leaderが提唱しているツールをそのまま日本に流用することなく、日本人データで妥当性を検証し、日本人でのCARGスコアの有用性をきちんと否定するという重要な研究である。CARGスコアの日本語版はCARGのホームページに掲載してもらっているのだが、日本人でも毒性を予測できるか否かの評価がされていなかったため、研究目的以外でのCARGスコアの使用は推奨してこなかった。今回、副次的解析ではあるものの、日本人ではCARGスコアの有用性が示せなかったことは、臨床上重要である。ただし、欧米でもCARGスコアは絶対的なツールではない。実際、「全がん種」を対象として生まれたCARGスコアでは予測精度が低いという理由で、「乳がん」に特化した予測ツールCARG-BC(Breast Cancer)が作成されている8)。このように、それぞれのがん種、人種に特化した予測ツールが望まれており、今後、日本独自の毒性予測ツールが求められる。『高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療』モデルの費用対効果分析(#15099))欧米の老年腫瘍ガイドラインでは、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)を実施するのは当然であり、「高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療」、いわゆるGeriatric Assessment and Management (GAM)の実施までもが推奨されるようになった。これは、世界中で「高齢者機能評価+脆弱な部分をサポートする診療」の有用性を検証するランダム化比較試験が公表されたためである。ただ、それぞれの試験におけるGAMの診療モデルはまったく異なるため、どの診療モデルが最適なのかはわかっていない。このため今回、GAMの有用性を検証したpivotal study 4試験のデータを基に、費用対効果分析が行われた(表2)。これらの試験のGAMモデルを概説すると、(1)The 5C試験は「老年医学の訓練を受けたチームによる電話を用いてフォローアップするモデル」10)、(2)GAIN試験は「老年医学の訓練を受けたチームによる脆弱な部分をサポートする方法を提示するモデル」11)、(3) GAP70+試験は「老年医学の訓練を受けたチームがいない状態でのGA実施および脆弱な部分をサポートする方法を提示するモデル」12)、(4)INTEGERATE試験は「適宜、老年科医にコンサルトしながら診療を行うモデル」13)である。本試験はカナダの研究者が実施したため、カナダの医療費をベースとして、さまざまなシナリオの下でそれぞれの試験における12ヵ月以内の、がん薬物療法に伴う費用、有害事象に伴う費用、入院/救急外来受診に伴う費用、GAM実施に伴う費用を推定し、質調整生存年(Quality-adjusted life years:QALY)当たりの医療費および増分純金銭便益(incremental monetary benefit、INMB)を計算した(INMB=[λ*ΔQALY]-ΔCosts、閾値は50,000ドル)。患者当たりの平均QALYはGAM群で0.577~0.662、通常診療群(GAMを実施しない通常診療)で0.606~0.665、平均総費用は、GAM群で3万1,234~3万9,432ドル、通常診療群で2万9,261~4万1,756ドルであった。がん薬物療法の費用は総費用の46~66%を占めていた。INTEGERATE試験およびGAP70+試験では、INMBが3,975ドルおよび1,383ドルと正の値だったが、GAIN試験、The 5C試験では、INMBの値がそれぞれ-3,492ドル、-2,125ドルと負の値であった。INTEGERATE試験の診療モデル(適宜、老年科医にコンサルトしながら診療を行うモデル)は最も高価なモデルであったが、入院の減少(GAM群での入院/救急外来受診割合:26.6%、通常診療群:40.2%)により費用対効果が良好になったと考察されている。結果の解釈には慎重になる必要がある研究である。すなわち、12ヵ月のみのデータであること、カナダの医療費を基に計算されたものであること、入院/救急外来受診のしやすさは環境によって変わりうることなど、多くのlimitationがある。しかし、それぞれの診療モデルの一長一短は推察できるため、どの診療モデルが自施設に適していそうかの考察には使えると考えている。欧米の老年腫瘍ガイドラインがGAMを推奨しており、また日本老年医学会が発刊した『高齢者総合機能評価(CGA)に基づく診療・ケアガイドライン2024』でも悪性腫瘍を患う患者に高齢者総合機能評価(ほぼGAMと同じ意味)は推奨しているが、これらガイドラインはGAMを推奨しているにもかかわらず、具体的にどのようなモデルを用いればよいかは提示していない。日本では現状、がん治療に携わる老年科医が少ないため、「老年医学の訓練を受けたチームがいない状態でのGA実施および脆弱な部分をサポートする方法を提示するモデル」、すなわちGAP70+モデルが費用対効果の意味でも適しているのかもしれない。しかし、将来的には老年科医と協働して高齢がん患者の診療を進めてゆける環境がつくられることを祈っている。画像を拡大する参考1)Dotan E, et al. A randomized phase II study of gemcitabine and nab-paclitaxel compared with 5-fluorouracil, leucovorin, and liposomal irinotecan in older patients with treatment-naive metastatic pancreatic cancer (GIANT): ECOG-ACRIN EA2186.J Clin Oncol.2024;42:s4002)Ferrat E, et al. Performance of Four Frailty Classifications in Older Patients With Cancer: Prospective Elderly Cancer Patients Cohort Study. J Clin Oncol. 2017;35:766-777.3)Corre R, et al. Use of a Comprehensive Geriatric Assessment for the Management of Elderly Patients With Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer: The Phase III Randomized ESOGIA-GFPC-GECP 08-02 Study. J Clin Oncol. 2016;34:1476-1483.4)Furuya N, et al. Geriatric assessment in older patients with non-small cell lung cancer: Insights from a cluster-randomized, phase III trial―ENSURE-GA study (NEJ041/CS-Lung001).J Clin Oncol.2024.42:s15025)Hurria A, et al. Predicting chemotherapy toxicity in older adults with cancer: a prospective multicenter study. J Clin Oncol. 2011;29:3457-3465.6)Hurria A, et al. Validation of a Prediction Tool for Chemotherapy Toxicity in Older Adults With Cancer. J Clin Oncol. 2016;34:2366-2371.7)Cancer and Aging Research Group, Chemo-Toxicity Calculator.8)Magnuson A, et al. Development and Valida39tion of a Risk Tool for Predicting Severe Toxicity in Older Adults Receiving Chemotherapy for Early-Stage Breast Cancer. J Clin Oncol. 2021;39:608-618.9)Selai A, et al.Cost-utility of geriatric assessment (GA) in older adults with cancer: A model-based economic evaluation of four randomized controlled trials (RCTs). J Clin Oncol.2024;42.16:s150910)Puts M , et al. Comprehensive geriatric assessment and management for Canadian elders with Cancer: The 5C study. 2021. J Geriatr Oncol. 2021;12:s40.11)Li D, et al. Geriatric Assessment-Driven Intervention (GAIN) on Chemotherapy-Related Toxic Effects in Older Adults With Cancer: A Randomized Clinical Trial. JAMA Oncol.2021;7:e214158.12)Mohile SG, et al. et al. Evaluation of geriatric assessment and management on the toxic effects of cancer treatment (GAP70+): a cluster-randomised study. Lance. 2021;398:1894-904.13)Soo WK, et al. Integrated Geriatric Assessment and Treatment Effectiveness (INTEGERATE) in older people with cancer starting systemic anticancer treatment in Australia: a multicentre, open-label, randomised controlled trial.Lancet Healthy Longev. 2022;3:e617-e627.

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人間のペニスから初めてマイクロプラスチックを検出

 人間のペニスから7種類のマイクロプラスチックが初めて検出されたことを、米マイアミ大学ミラー医学部のRanjith Ramasamy氏らが、「IJIR: Your Sexual Medicine Journal」に6月19日発表した。この研究では、5点のペニスの組織サンプルのうちの4点でマイクロプラスチックが検出されたという。研究グループは本年5月に人間の精巣から驚くべきレベルのマイクロプラスチックが検出されたことを報告したばかりであった。研究グループは、マイクロプラスチックは主要臓器の細胞や組織に浸潤する可能性があると話している。 Ramasamy氏はCNNの取材に対し、「今回の研究は、人間の心臓の中からマイクロプラスチックが見つかったことを明らかにした先行研究を土台にしている」と述べ、「ペニスは心臓と同様、非常に血管の多い臓器であるため、ペニスからマイクロプラスチックが見つかったことに驚きはなかった」と語っている。 Ramasamy氏らは今回、勃起不全(ED)と診断され、2023年8月から9月の間に陰茎インプラント手術を受けるためにマイアミ大学の病院に入院していた6人の患者から採取したペニスの組織サンプルを用いて、赤外イメージングシステムによる分析を行った。組織サンプルは陰茎体部から採取され、うち5点のサンプルは洗浄済みのガラス器具に保存された。残る1点は、プラスチック容器に保存して対照サンプルとした。 その結果、ガラス器具に保存した5点のサンプルのうちの4点と対照サンプルから7種類のマイクロプラスチックが見つかった。最も多く検出されたのはポリエチレンテレフタレート(PET、47.8%)、次いで多かったのはポリプロピレン(PP、34.7%)であった。また、マイクロプラスチックのサイズは20〜500µmであった。 このような結果を踏まえた上でRamasamy氏は、「今後は、マイクロプラスチックがEDに関係しているのか、病理学的症状を引き起こすレベルはどの程度のものなのか、どのような種類のマイクロプラスチックが病理学的症状を引き起こすのかを明らかにする必要がある」と述べている。 Ramasamy氏は、この研究が「人間の臓器内に異物が存在することについての認識を深め、このテーマをめぐる研究の促進につながる」ことを願っていると付け加えている。同氏はさらに、「われわれは、ペットボトルやプラスチック製の容器から水や食品を摂取することに留意し、今後の研究で病理学的症状を起こし得るレベルが特定されるまでは、そうしたものの使用を制限するよう努めるべきだ」と述べている。 米ニューメキシコ大学薬学部教授のMatthew Campen氏はCNNの取材に対し、「プラスチックが体内の至る所に入り込んでいることを裏付ける興味深い研究だ」と話す。同氏は、「プラスチックは一般的に、人間の体の細胞や化学物質と反応はしないが、勃起や精子の生成に関与する機能を含め、体が正常に機能するためのプロセスに対して物理的に破壊的である可能性はある」と指摘する。 Campen氏は、共著者として参加した人間の精巣に関する研究において、人間の精巣中で検出されたマイクロプラスチックのレベルが、犬の精巣や人間の胎盤で検出されたレベルより3倍高かったことに言及。「われわれは、体内のマイクロプラスチックがもたらし得る脅威にようやく気付き始めたところだ。マイクロプラスチックが不妊症や精巣がん、その他のがんに関与しているのかどうかを明確にするためにも、このテーマに関する研究の急増が必要だ」と述べている。 一方、米国小児科学会(AAP)の食品添加物と子どもの健康に関する政策声明の筆頭著者である、米ニューヨーク大学ランゴンヘルスのLeonardo Trasande氏は、マイクロプラスチックがもたらす脅威が明らかになるまでの間にわれわれがやるべきこととして、「まず、可能な限りステンレスやガラスの容器を使い、プラスチックの使用量を減らすこと。また、乳幼児用の粉ミルクや搾乳した母乳を含め、プラスチック製の容器に入った食品や飲料を電子レンジで温めるのはやめること。さらに、熱により化学物質が溶出する可能性があるので、プラスチックを食器洗浄機に入れないようにすること」とCNNに対して語っている。

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試験紙による簡便な検査でインフルエンザウイルスの種類を判別

 試験紙を用いた簡便で安価な検査によりインフルエンザウイルス感染の有無を調べることができ、さらにその原因となったインフルエンザウイルスの種類まで特定できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。この検査により、A型とB型のインフルエンザウイルスを区別できるほか、A型インフルエンザウイルス亜型のH1N1やH3N2など、より毒性の強い株をも判別できるという。米プリンストン大学のCameron Myhrvold氏らによるこの研究の詳細は、「The Journal of Molecular Diagnostics」7月号に掲載された。 この検査法は、SHINE(Streamlined Highlighting of Infections to Navigate Epidemics)と呼ばれる、CRISPR-Cas技術を用いたウイルス検出法をベースにしたもの。SHINEは、CRISPR-Cas酵素を利用してサンプル中の特定のウイルスのRNA配列を識別する技術である。研究グループはまず、新型コロナウイルスを検出するために、その後、デルタ株とオミクロン株を区別するためにSHINEを利用した。 次いで研究グループは2022年から、時期を問わず環境中に循環している他のウイルス、特にインフルエンザウイルスの検出にこの技術を適用し始めた。その目的は、ウイルス検査を病院や高価な設備を持つ臨床検査室ではなく、臨床現場で行えるようにすることだった。こうして開発された新たな検査法は、異なるインフルエンザ株(A型とB型)、およびその亜型(H1N1とH3N2)を区別することができる。研究グループが、臨床サンプルを用いてこの検査法の性能を確かめたところ、RT-PCR検査による検査結果と100%の一致度を示したという。 論文の共著者の1人である米マサチューセッツ工科大学(MIT)ブロード研究所のJon Arizti-Sanz氏は、「患者に感染しているインフルエンザウイルスの株や亜型を区別できることは、治療だけでなく、公衆衛生政策にも影響を及ぼす」と述べている。 一方、論文の筆頭著者である米ハーバード大学医学大学院のYibin B. Zhang氏は、「高価な蛍光測定装置の代わりに試験紙読み取り装置を使うことは、臨床医療だけでなく、疫学的サーベイランスの目的においても大きな進歩だ」と述べている。 一般的な診断アプローチであるPCR検査は処理に時間を要する上に、訓練を受けた人員、特殊な機器、試薬を−80°Cで保存するための冷凍庫を必要とする。これに対し、SHINEは室温で実施可能であり、所要時間も約90分と短い。現在、この診断方法で必要となるのは、反応を促進するための安価な加熱ブロックのみだ。研究グループは、処理工程を簡素化して15分で結果を出せるようにすることを目指しているという。Myhrvold氏は、「最終的には、この検査が新型コロナウイルス感染症の検査に使われている迅速抗原検査と同じくらい簡便なものにしたいと思っている」と話している。 研究グループは目下、この検査を、ヒトに感染する恐れのある鳥インフルエンザウイルス株や豚インフルエンザウイルス株を追跡できるように改良しているところだと話している。

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尿検体の採り方と取り扱い【とことん極める!腎盂腎炎】第4回

尿検査でどこまで迫れる?【前編】Teaching point腎盂腎炎を疑う場合の尿検体は、排尿しながら途中の尿を採取する(排尿は途中で止めない)《今回の症例》70代女性が昨日からの悪寒戦慄を伴う発熱を主訴に救急外来を受診した。いままでも腎盂腎炎を繰り返している既往がある。また糖尿病のコントロールは不良である。腎盂腎炎を疑い尿定性検査を提出したが、白血球反応は陰性、亜硝酸塩も陰性であった。今回は腎盂腎炎ではないのだろうか…?はじめに尿検査はさまざまな要因による影響を受けるため解釈が難しく、尿検査のみで尿路感染症を診断することはできない。しかし尿検査の限界を知り、原理を深く理解すれば重要な情報を与えてくれる。そこで、あえて尿検査でどこまで診断に迫れるかにこだわってみる。今回は、「尿検体の採取方法と検体の取り扱い」「細菌尿と膿尿の定義や原因」について取り上げ、次回、迅速に細菌尿を検知するための検査の詳細を紹介する。1.尿検体の採取方法と検体の取り扱い読者の皆さんは自身がオーダーした尿検体がどのように採取されているか述べることができるだろうか。尿検査を電子カルテの画面でオーダー、その結果を確認するだけになっていないだろうか。尿検査の奥深さは尿検体の採取方法から始まる。基本的には排尿時の最初の数mLは採取せず、排尿しながら途中の尿(=中間尿)を採取する。排尿は途中で止めない。従来は排尿前に陰部を洗浄、清拭することが推奨されていた。しかし成人女性では清拭を省いた中間尿でも、同等のコンタミネーション率という報告(表1)1)などもあり、検体の質を改善しないため、現在は推奨されていない。画像を拡大する女性は陰部を広げて、男性は包皮を後方にずらし外尿道口に触れないようにして中間尿を採取する。中間尿が取れないときは、カテーテル(導尿)で採取する1)。例外として、クラミジア(Chlamydia trachomatis)や淋菌(Neisseria gonorrhoeae)などによる尿道炎を疑った場合は初尿を採取する。また、慢性細菌性前立腺炎を疑った際には、2杯分尿法(前立腺マッサージ前後の尿検体を採取)、もしくは、4杯分尿法([1]初尿10mLを捨てた後の尿、[2]中間尿、[3]前立腺液(中間尿採取後に前立腺マッサージを行い採取)、[4]マッサージ後10mL捨てた後の尿の4検体を採取)も報告されている2)。膀胱留置カテーテルが入っている場合は、蓄尿バッグにたまっている尿ではなく、検体採取用ポートから注射器で採取する。カテーテルのバイオフィルムに定着している菌と、真の感染の菌を区別するため、原則としてカテーテルをいったん抜去もしくは交換して採尿する。とくに2週間以上留置されており、まだカテーテルが必要な患者では交換後の採尿が推奨されている3)。長期(>30日)留置カテーテルのサンプリングポートから採取した尿とカテーテル再挿入後の尿を比べた研究では、前者では平均2菌種が検出され、多剤耐性菌は63%、後者では平均1菌種が検出され、多剤耐性菌は18%であった4)。また、カテーテルの先端培養は環境に生息する菌が検出されるだけなので提出しない。尿培養を行う検体は2時間以内に微生物検査室に搬送する。できない場合は4℃で24時間まで保存可能である。嫌気性菌は通常原因とならないので、嫌気培養を行う必要はない。2.細菌尿と膿尿尿路感染症は症候に細菌尿を組み合わせて臨床診断を行う。そのため尿培養は尿路感染症の診断において極めて重要な検査であるが尿路感染症と診断するための細菌尿の定義は論文によりさまざまである。尿中の細菌が105CFU/mL以上であることが細菌尿の一般的な定義だが、尿路感染症であっても105CFU/mL を下回ることも少なくない。尿路症状を呈する女性の下部尿路感染の診断において105CFU/mL以上では感度は51%のみであり、102CFU/mL以上とすると感度95%、特異度85%となる5)。米国感染症学会の尿路感染症の抗菌薬治療についてのガイドラインでは、女性の場合、膀胱炎で102CFU/mL以上、腎盂腎炎で104CFU/mL以上を採用している6)。コンタミネーションが少ない無症候性の男性の場合、1回の培養であっても103CFU/mL以上で感染を疑い、105CFU/mL以上で細菌尿と定義している7)。さらに無症候の場合に導尿で提出された検体ではコンタミネーションの機会がより少ないため、男性も女性も102CFU/mLと定義される7)。カテーテル関連尿路感染症の診断基準では、1種類以上の細菌が103CFU/mL以上の検出と定義されている3)。尿路感染症では、基本的に膿尿を伴う。膿尿とはWBC 10/μL(mm3)以上が一般的なコンセンサスとされる。尿中白血球数は、好中球減少患者や尿路の完全閉塞のある患者では低くなり、乏尿/血尿がある場合は高くなる。しかし、尿路感染症ではなくとも膿尿や細菌尿を認めることが、尿路感染症の診断を難しくする原因の1つである。細菌尿と膿尿の有無のそれぞれの組み合わせによる原因をまとめると表28, 9)のようになる。また、培養を用いた定義では細菌が発育するまで尿路感染症の診断ができない。そこで、迅速に細菌尿を検知するための検査として、尿定性検査(試験紙)や尿沈渣、グラム染色などが有用であり、次回詳細を述べる。画像を拡大する1)Carroll KC. Manual of Clinical Microbiology. ASM press. 2019:p.302-3302)Schaeffer AJ、Nicolle LE. N Engl J Med. 2016;374:562-571.3)Hooton TM, et al. Clin Infect Dis. 2010;50:625-663.4)Shah PS, et al. Am J Health Syst Pharm. 2005;62:74-77.5)Stamm WE, et al. N Engl J Med. 1982;307:463-468.6)Warren JW, et al. Clin Infect Dis. 1999;29:745-758.7)Nicolle LE, et al. Clin Infect Dis. 2005;40:643-654.8)Simerville JA, et al. Am Fam Physician. 2005;71:1153-1162.9)LaRocco MT, et al. Clin Microbiol Rev. 2016;29:105-147.

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診療科別2024年上半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Clarithromycin for early anti-inflammatory responses in community-acquired pneumonia in Greece (ACCESS): a randomised, double-blind, placebo-controlled trialGiamarellos-Bourboulis EJ, et al. Lancet Respir Med. 2024 Apr;12:294-304.<ACCESS試験>:全身性炎症反応を認める市中肺炎においてβラクタム系抗菌薬へのマクロライドの追加は早期臨床反応を改善市中肺炎の治療においてβラクタム系抗菌薬へのマクロライド追加の上乗せ効果については、観察研究で証明されてきました。今回、全身性炎症反応症候群、SOFAスコア2点以上、プロカルシトニン0.25ng/mL以上を有する市中肺炎の入院成人患者を対象として、無作為化比較試験としては初めて、マクロライドの有益性が示されました。Perioperative Nivolumab in Resectable Lung CancerCascone T, et al. N Engl J Med. 2024 May 16;390:1756-1769.<CheckMate 77T試験>:非小細胞肺がんへの術前ニボルマブ併用化学療法+術後ニボルマブ単剤で無イベント生存期間を改善切除可能な非小細胞肺がん患者を対象とした無作為化比較試験で、術前ニボルマブ併用化学療法+術後ニボルマブ単剤投与が、無イベント生存期間を有意に改善することが明らかとなりました。新たな安全性シグナルは認められませんでした。Dupilumab for COPD with Blood Eosinophil Evidence of Type 2 InflammationBhatt SP, et al. N Engl J Med. 2024 May 20.<NOTUS研究>:タイプ2炎症を有するCOPDにおいてデュピルマブで増悪が減少タイプ2炎症を有するCOPD患者に対するヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体デュピルマブの有効性を評価した二重盲検無作為化比較試験です。末梢血好酸球数300/uL以上のCOPD患者において、デュピルマブはプラセボに比べて中等度または重度の増悪の減少と有意に関連していました。Bisoprolol in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease at High Risk of Exacerbation: The BICS Randomized Clinical TrialDevereux G, et al. JAMA. 2024 May 19.<BICS研究>:ハイリスクCOPD患者へのビソプロロールで増悪は減少せずCOPD患者において、β1受容体選択性遮断薬ビソプロロールがCOPD増悪を減少させるかどうかを検証した無作為化比較試験です。増悪リスクの高いCOPD患者において、ビソプロロールによる治療はCOPD増悪を減少させませんでした。しかし、呼吸器系を含む有害事象の増加をビソプロロールで認めることはなく、ビソプロロールの安全性が示されました。Morphine for treatment of cough in idiopathic pulmonary fibrosis (PACIFY COUGH): a prospective, multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, two-way crossover trialWu Z, et al. Lancet Respir Med. 2024 Apr;12:273-280. <PACIFY COUPH試験>:特発性肺線維症患者においてモルヒネで咳嗽が減少特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)患者の咳嗽に対する低用量徐放性モルヒネの効果を検証した無作為化比較試験です。モルヒネはプラセボと比較して、客観的覚醒時咳嗽頻度を39%減少させました。この研究は、IPF患者の咳嗽に対するモルヒネの有用性を報告した初めての研究です。

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抗精神病薬誘発性体重増加に対する薬理学的介入〜ネットワークメタ解析

 抗精神病薬誘発性体重増加は、第1世代および第2世代抗精神病薬による治療において重要な問題となるが、しばしば軽視されて、心血管疾患を引き起こす可能性につながる。インド・全インド医科大学のNaveen Chandrashekar Hegde氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対する利用可能な治療オプションの有効性を評価および比較するため、ネットワークメタ解析を実施した。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2024年6月11日号の報告。 MEDLINE/PubMed、Embase、Scopus、Cochraneデータベース、臨床試験レジストリより関連する臨床試験を抽出した。ベースラインからの体重変化に対する介入の全体的な効果をプールするため、ランダム効果ベイジアンネットワークメタ解析を実施した。ネットワークグラフ作成、一貫性モデルの実行、ノード分割分析の実施、SUCRAスコアに従った治療のランク付けを行った。治療期間、ベースライン時の体重、治療戦略を予測変数とし、メタ回帰を行った。エビデンスの確実性に基づき結果を分類した。 主な結果は以下のとおり。・関連する臨床試験は、68件抽出された。・有意な体重減少を示した薬剤および用量は、エフェクトサイズ順に次のとおりであった。●sibutramine 10mg:−8.0kg(−16.0〜−0.21)●メトホルミン 750mg+生活習慣の改善:−7.5kg(−12.0〜−2.8)●トピラマート 200mg:−7.0kg(−10.0〜−3.4)●メトホルミン 750mg:−5.7kg(−9.3〜−2.1)●トピラマート 100mg:−5.7kg(−8.8〜−2.5)●トピラマート 50mg:−5.2kg(−10.0〜−0.57)●リラグルチド 1.8mg:−5.2kg(−10.0〜−0.080)●sibutramine 15mg:−4.5kg(−8.9〜−0.59)●ニザチジン 300mg:−3.0kg(−5.9〜−0.23)●メトホルミン 1,000mg:−2.3kg(−4.6〜−0.0046)・抗精神病薬誘発性体重増加の体重減少に対し、治療期間、ベースライン時の体重、予防と治療戦略の影響は認められなかった。 著者らは、「抗精神病薬誘発性体重増加に対する治療法として、メトホルミン750mg+生活習慣の改善が最も効果的であり、トピラマート200mg、メトホルミン750mg、トピラマート100mgによる治療が中程度の確実性でこれに続くことが確認された」としている。

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高リスク高血圧患者の降圧目標、140mmHg未満vs.120mmHg未満/Lancet

 心血管リスクの高い高血圧患者では、糖尿病や脳卒中の既往によらず、収縮期血圧(SBP)の目標を120mmHg未満とする厳格降圧治療は、140mmHg未満とする標準降圧治療と比較して、主要心血管イベントのリスクが低下したことが示された。中国・Fuwai HospitalのJiamin Liu氏らESPRIT Collaborative Groupが無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Effects of Intensive Systolic Blood Pressure Lowering Treatment in Reducing Risk of Vascular Events trial:ESPRIT試験」の結果を報告した。SBPを120mmHg未満に低下させることが140mmHg未満に低下させることより優れているかどうかは、とくに糖尿病患者や脳卒中の既往患者でははっきりしていなかった。Lancet誌オンライン版2024年6月27日号掲載の報告。主要アウトカムは、心筋梗塞、血行再建術、心不全入院、脳卒中、心血管疾患死の複合 研究グループは、中国の病院または地域医療機関116施設において、50歳以上の心血管高リスク患者(心血管疾患既往、または主要な心血管リスク因子を2つ以上有し、SBPが130~180mmHg)を、診察室SBPが120mmHg未満を目標とする厳格降圧治療群、または140mmHg未満を目標とする標準降圧治療群に、最小化法を用いて無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、主要心血管イベント(心筋梗塞、血行再建術、心不全による入院、脳卒中、心血管疾患死の複合)で、ITT解析を実施した。 2019年9月17日~2020年7月13日に、1万1,255例(糖尿病患者4,359例、脳卒中既往3,022例)が厳格降圧治療群(5,624例)または標準降圧治療群(5,631例)に割り付けられた。平均年齢は64.6歳(SD 7.1)であった。主要イベントの発生率は9.7% vs.11.1% 追跡期間中の平均SBP(最初の用量漸増期間3ヵ月を除く)は、厳格降圧治療群119.1mmHg(SD 11.1)、標準降圧治療群134.8mmHg(SD 10.5)であった。 追跡期間中央値3.4年において、主要心血管イベントは厳格降圧治療群で547例(9.7%)、標準降圧治療群で623例(11.1%)に認められた(ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.78~0.99、p=0.028)。糖尿病の有無、糖尿病の罹病期間、あるいは脳卒中の既往歴による有効性の異質性は認められなかった。 重篤な有害事象の発現率は、失神については厳格降圧治療群0.4%(24/5,624例)、標準降圧治療群0.1%(8/5,631例)であり、厳格降圧治療群で高率であったが(HR:3.00、95%CI:1.35~6.68)、低血圧、電解質異常、転倒による傷害、急性腎障害については両群間で有意差は認められなかった。

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ウォーキングに腰痛の再発防止効果

 腰痛がようやく治ったという人は、再発防止のためにウォーキングをすると良いようだ。オーストラリアの新たな研究で、ウォーキングを始めた人は、ウォーキングをしない人に比べて腰痛が再発するまでの期間がはるかに長かったことが示された。マッコーリー大学(オーストラリア)理学療法学教授のMark Hancock氏らによるこの研究結果は、「The Lancet」に6月19日掲載された。 本研究の背景情報によると、腰痛に悩まされている人は全世界で8億人以上に上る。腰痛患者の10人中7人は腰の痛みが和らぐものの、後に再発を経験する。本研究では、最近、特定の疾患を原因としない、24時間以上続く腰痛を経験している18歳以上の成人701人(平均年齢54歳、女性81%)を対象にランダム化比較試験を実施し、6カ月間にわたる個別化された段階的なウォーキングプログラムと理学療法士による教育セッションから成る介入が腰痛の再発予防に有効であるかどうかが検討された。対象者は、351人が介入群、350人が介入を提供されない対照群に割り付けられ、12カ月以上(最長36カ月間)追跡された。 その結果、介入群での腰痛再発までの期間中央値は208日であり、対照群での112日を大きく上回ることが明らかになった。 Hancock氏は、「なぜウォーキングが腰痛予防に効果的なのか、正確な理由は不明だ。おそらくは、全身にもたらされる緩やかな振動、脊椎構造と筋肉への負荷とそれらの強化、リラクゼーションとストレス解消効果、幸せホルモンのエンドルフィンの放出など、さまざまな要因の組み合わせが効果的に作用しているのだろう」と述べている。同氏はまた、マッコーリー大学のニュースリリースの中で、「ウォーキングは低コストで、地理的な場所や年齢、社会経済的な状況に関係なくほぼ全ての人が広く取り組める簡単な運動だ」と述べている。 論文の筆頭著者である同大学のNatasha Pocovi氏は、「これまで検討されてきた腰痛予防のための運動ベースの介入は、概してグループベースで行われる上に、綿密な臨床監督と高価な器具を必要とするため、大多数の患者には利用しにくいものだった」と説明する。それに対し、ウォーキングはシンプルな上に必要コストも低い。またHancock氏は、「その上、ウォーキングには、心血管の健康、骨密度、健康的な体重、メンタルヘルスの改善など、多くの健康上の利点があることも分かっている」と付け加えている。

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【GET!ザ・トレンド】重症COPDの新治療「気管支バルブ治療」病診連携で普及を

重症COPDに気管支鏡的肺容量減量術(Bronchoscopic Lung Volume Reduction、BLVR)という新たな治療法が2023年12月に保険適用になった。重症COPD患者に希望をもたらす治療として注目される。市販後調査として実際にBLVRを施行しているNHO近畿中央呼吸器センターの田宮朗裕氏に聞いた。水面下に潜んでいる「症状緩和・機能改善が行えない重症COPD患者」COPDは世界の死因の第3位で年間323万人が死亡する1)。日本では40歳以上の8.6%、530万人以上がCOPDと推定されている2)。そのうち、きわめて高度な気流閉塞を有する患者(GOLD IV期)は11%、自覚症状が多く急性増悪のリスクが高い患者(GroupD)は10%との報告がある3)。重症COPDに対しては薬物療法、呼吸リハビリテーション、必要に応じた在宅酸素療法(HOT)、さらに肺容量減量手術、肺移植が治療選択肢となる。ただし、肺容量減量手術、肺移植については現在、日本ではほとんど行われていない。つまり、HOTなどの対症療法をしているものの、十分な症状緩和・機能改善が行えない重症COPD(根治的治療がCOPDにほぼないため)が水面下に潜んでいることになる。重症COPDの新治療BLVRとは?田宮氏によれば、重症COPDでは「家での軽い労作でも動けず買い物にも出られない方、ある程度呼吸機能はあっても非常に強い息切れによる生活への支障を訴える方」も少なくないという。さらに「肺機能が悪いとCOPDの急性増悪が非常に厳しくなる」と付け加える。そのような中、2023年12月に重症COPDに対する初のBLVRとして、Zephyr気管支バルブシステムが国内承認された。気管支バルブ治療は、気管支鏡を用いて一方弁の気管支バルブを治療対象の肺葉につながる気管支に留置して、肺葉を無気肺にさせ、肺の過膨張が原因で平坦化していた横隔膜運動を適正化させ呼吸機能を改善させる治療法だ。内科的治療では症状改善がみられない重症COPDに症状の改善をもたらす初の気管支内視鏡治療として注目されている。「体に傷を入れることなく、綺麗な部位を残すことで重症COPDの呼吸機能が改善している。非常に小さなサイズの中にシンプルな一方弁機能を実現した技術は素晴らしい」と田宮氏は評価する。Zephyr気管支バルブは25ヵ国以上で発売され、4万人超の治療患者に留置された実績を持つ。欧州では2003年に、米国ではブレークスルーデバイスに指定され2018年に発売されている。長年の海外での使用実績をもとに的確な患者選択や側副換気の評価によって、より効果を示す可能性のある患者を抽出できるようになった。また、気胸の発生に注意が置かれるようになり、発生時に迅速に対応できるよう準備が変わった。「全世界の開発者と医療者がさまざまな工夫を重ねた中の最終形で日本に来ている。美味しいところ取りしているようだ」と田宮氏は言う。多数のエビデンスが証明するZephyr気管支バルブの有効性Zephyr気管支バルブは重症COPDに対する複数の無作為化比較試験で標準治療単独と比べ、呼吸機能(FEV1)、運動機能(6分間歩行)、症状、QOL(St.George's Respiratory Questionnaire, SGRQ)、慢性COPDの生存期間予測指標であるBODE指数*について有意な改善を認めている。代表的な試験は不均一な肺気腫患者を対象としたLIBERATE試験4)と均一な肺気腫患者を対象としたIMPACT試験5)であり、両試験とも主要評価項目を有意に改善した。いずれも高度な気流閉塞(%FEV1 15~45%)を有するCOPD患者が対象である。「不均一な肺気腫でも均一な肺気腫でもしっかり結果が出た。これらの結果から肺容量を減量して残された肺がしっかり伸縮できるようになると、呼吸機能もQOLも改善することが確信できた。動いたあと“はあはあ”しているのに、息が吐けずに空気が溜まっていく一方という状態は非常に辛いもの。それが緩和されることはすばらしい」、さらに「片肺の過膨張を改善することで、もう一方の肺にも余裕ができる可能性もある」と評価する。また、LIBERATE試験の主要評価項目である「ベースラインからFEV1(L)が15%以上改善した患者」がZephyr気管支バルブ群で有意に多かった(群間差31%)という結果について「全体集団の差が30%を超えるのは素晴らしい。しかし、全ての患者に効くというわけではない。逆に考えれば、効く人には非常に高い効果が期待できるということ。患者の選定は重要なポイント」と述べた。Zephyr気管支バルブは日本での市販後調査による140例の症例収集が課せられている。現在は15施設だが、将来的には20施設まで増やす予定である。* BODE指数:Body mass index(BMI)、airflow Obstruction(気道閉塞度)、Dyspnea(呼吸困難)、Exercise capacity(運動能力)により算出され、慢性COPDの生存期間予測に用いられる指数。事前準備から術後フォローまで入念に設計された手技工程Zephyr気管支バルブによるBLVRを実施するには、外科治療を除く全ての治療法が実施されていることを確認し、術前にボディボックス、スパイロメーターによる呼吸機能精査を行い、6分間歩行距離、呼吸困難を評価する。さらに、CT解析システムによる気腫病変、肺葉間裂の確認、治療対象となる肺葉の選定を行う6)。施術当日も専用のChartis肺機能評価システムで留置部位の側副換気(肺葉間裂の完全性確認)を再確認する。そして、全身麻酔またはセデーション下で(NHO近畿中央呼吸器センターはセデーション)、専用のローディングシステムとデリバリーカテーテルで気管支鏡を用いてターゲットとなる気管支にバルブを留置する。「デバイスが精巧にできているので手技自体はシンプルだが、気管支の位置によって難易度が高くなる。研修による技術習得は欠かせない」と田宮氏は言う。合併症として気胸、COPDの増悪、感染症などのリスクがあるので、気管支バルブ留置後も呼吸器内科、呼吸器外科が協力して診療にあたる。気胸の8割が術後4日以内に起こることもあり、術後は手術日を含め4日入院し、術直後と24時間毎に退院まで検査する。退院後も45日、3、6、12ヵ月後の定期検査が設定されている。なお、Zephyr気管支バルブは抜去・交換が可能で、術後の位置ずれが起きた場合も修正できる。画像を拡大するZephyr気管支バルブの径は4.0mmと5.5mmの2種類。それぞれレギュラーとショートタイプがあり、計4種類のバルブで異なる気管支形状に対応画像提供:パルモニクスジャパン(株)画像を拡大する専用デリバリーカテーテルで気管支鏡を用いてターゲットとなる気管支にバルブを留置する画像提供:パルモニクスジャパン(株)画像を拡大する画像を拡大する病診連携で重症COPD患者をレスキュー薬物療法、呼吸リハビリテーション、HOTを行いながらも手の施しようがない重症COPDは相当数いるのではないかと田宮氏は言う。高度な呼吸機能検査ができない施設では、mMRC質問票のGrade2以上、スパイロメーターで1秒率45%以下がBLVR適用の目安である。「BLVRは酸素を吸ってもどうにもならないという状態になる前にレスキューできる治療法。この治療に適用があるかはスクリーニングしてみないとわからない。(mMRC2以上の)症状があってこの治療に興味を示す患者さんがいれば、どんどん紹介していただきたい。ボディボックスなど精密な検査、治療、術後定期検査は当方で行った上で、吸入薬、HOTの管理などはかかりつけの先生にお任せしたい」と田宮氏はいう。治療方法が見つからない重症COPD患者に希望をもたらす新たな治療BLVRが普及していくには、専門施設とかかりつけ医の協同が欠かせないようだ。参考1)日本WHO協会2)NICE study3)Oishi K et, al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018:13:3901-3907.4)Criner GA et,al.Am J Respir Crit Care Med.2018;198:1151-1164.5)Valipour A et, al.Am J Respir Crit Care Med.2016;194:1073-1082.6)呼吸器学会 重症COPDに使用する気管支バルブの適正使用指針気管支バルブ治療情報サイト(pulmonx社)Zephyr気管支バルブ製品ページ(pulmonx社)(ケアネット 細田 雅之)

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診療科別2024年上半期注目論文5選(循環器内科編)

Microaxial flow pump or standard care in infarct-related cardiogenic shockMøller JE, et al. N Engl J Med 2024;390:1382-1393.<DanGer Shock>:心原性ショックのSTEMI患者で、Impellaは死亡を減らすが合併症を増やす経皮的左室補助装置であるImpellaにより、標準治療に比して全死亡を18%減らすことが示されました。心原性ショックのSTEMI患者は、虚血性心疾患治療に残された課題であっただけに、この肯定的なデータは意義深いと思われます。一方で、重度の出血、四肢虚血、溶血、機器故障、または大動脈弁逆流の悪化などの安全性評価のイベントは4倍に増加しており、この合併症低減がいっそうの普及の鍵となるでしょう。RNA Interference With Zilebesiran for Mild to Moderate Hypertension: The KARDIA-1 Randomized Clinical TrialBakris GL, et al. JAMA. 2024;331:740-749.<KARDIA-1>:zilebesiranをシランと!高血圧治療のゲームチェンジャーとなるか血圧調節の重要な経路であるレニン-アンジオテンシン系の最上流の前駆体であるアンジオテンシノーゲンの肝臓での合成を標的とするRNA干渉治療薬がzilebesiranです。RNA干渉治療薬は「~シラン」と呼称され各領域で開発が進展しており、2023年以降zilebesiranの有効性と安全性が実証する試験結果が続いています。降圧治療のゲームチェンジャーとして心臓病や腎臓病の治療に役立つ可能性が示されました。Long-term outcomes of resynchronization-defibrillation for heart failureSapp JL, et al. N Engl J Med. 2024;390:212-220.<RAFT Long-Term>:心不全患者に対するCRT-DはICDのみに比して心不全患者予後を長期的に改善するNYHAクラスIIまたはIIIのEF<30%でQRS幅広の心不全患者で、CRT-Dによる心臓再同期療法はICD単独よりも中央期間14年にわたる長期追跡においても予後改善を持続することが報告されました。一方で、デバイスまたは手技に関連した合併症発生率が高いことや、CRT-DはICDに対する費用対効果などの課題もあります。Intravascular imaging-guided coronary drug-eluting stent implantation: an updated network meta-analysisStone GW, et al. Lancet. 2024;403:824-837.<Intravascular imaging-guided PCI, メタ解析>:血管内イメージングを用いたPCIの有効性がメタ解析で示されたIVUSやOCTなどの血管内イメージングをガイドにすることで、血管造影のみをガイドにするよりもPCIの安全性と有効性を改善することが報告されました。このメタ解析の素材の各研究は、日本に加えて中国や韓国などアジア諸国からのデータも多く含まれています。血管内イメージングガイド下のPCIは日常臨床で定着し、日本のお家芸ともいえるものです。その領域のエビデンス構築においては日本のイニシアチブを期待します。Randomized Trial for Evaluation in Secondary Prevention Efficacy of Combination Therapy-Statin and Eicosapentaenoic Acid (RESPECT-EPA)Miyauchi K, et al. Circulation. 2024 Jun 14. [Epub ahead of print]<RESPECT-EPA>:日本発のエビデンス、スタチン上乗せのEPA製剤は心血管イベントを減少させるも有意差なし慢性冠動脈疾患でEPA/AA比の低い日本人患者で、スタチンに追加投与の高純度EPAによる心血管イベント再発予防の可能性を検討した試験です。心血管イベントは減少したものの、統計学的に有意に至る差異はありませんでした(HR:0.79、95%CI:0.62~1.00、p=0.055)。冠動脈イベントの複合は、EPA群で有意に少なかったものの、心房細動の新規発症は有意に増加していました。今後の詳細なサブ解析に注目したいところです。

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診療科別2024年上半期注目論文5選(消化器内科編)

Durvalumab plus gemcitabine and cisplatin in advanced biliary tract cancer (TOPAZ-1): patient-reported outcomes from a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trialBurris HA 3rd, et al. Lancet Oncol. 2024 May;25:626-635.<進行胆道がんGCD療法のQOL>:進行胆道がんにおける1次治療としてGCD療法は忍容される進行胆道がんに対する GCD療法は、良好な治療効果に加え、 QOLに有害な影響を及ぼさないことが示されました。進行胆道がんにおいて、GCD療法が1次治療における第一選択薬として支持される結果となっています。Factors Affecting Nonfunctioning Small Pancreatic Neuroendocrine Neoplasms and Proposed New Treatment StrategiesHijioka S, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2024;22:1416-1426.<非機能性PNENに対する治療戦略>:PNENは悪性度、サイズによっては経過観察が推奨されるPNENは従来外科的治療が画一的に推奨されてきましたが、その侵襲性の大きさから手術の絶対的な必要性は明らかではありませんでした。本結果により腫瘍の悪性度、サイズによっては経過観察が適切な可能性が示唆されました。Neoadjuvant Immunotherapy in Locally Advanced Mismatch Repair-Deficient Colon CancerChalabi M, et al. N Engl J Med. 2024;390:1949-1958. <NICHE-2 試験>:局所進行dMMR結腸がん腫瘍に対してニボルマブ+イピリムマブによる術前補助療法の有効性が報告されたミスマッチ修復機構欠損(dMMR)腫瘍は、転移のない結腸がん患者の 10~15%に認められます。ニボルマブ+イピリムマブによる術前補助療法により病理学的著効が95%に、病理学的完全奏功が68%に確認されました。dMMR結腸がんに対する術前補助療法は今後の標準治療になる可能性が示唆された結果です。Aspirin for Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease Without Cirrhosis: A Randomized Clinical TrialSimon TG, et al. JAMA. 2024;331:920-929.<MASLDに対するアスピリンの有用性>:MASLDへの低用量アスピリンで肝脂肪量が減少基礎研究や観察研究からアスピリンはMASLDの治療薬として有望視されていましたが、この第II相試験により低用量アスピリンが肝脂肪量を有意に減少することが証明されました。臨床的アウトカムの結果も出れば、すぐに臨床に活用できる結果です。Tirzepatide for Metabolic Dysfunction-Associated Steatohepatitis with Liver Fibrosis Loomba R, et al. N Engl J Med. 2024 Jun 8. [Epub ahead of print]<SYNERGY-NASH trial>:線維化F2/F3を伴うMASH患者に対するチルゼパチドの安全性と有効性が証明された第II相試験でGIP/GLP-1のデュアルアゴニストであるチルゼパチドは、すべての容量においてMASH消失効果(15mg群62% vs.プラセボ群10%)、1ステージ以上の線維化改善効果を認めました。すでに市場にある薬での卓越した奏効率であり、今後の第III相試験結果が期待されます。a

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VEXAS症候群、83%に皮膚病変

 VEXAS(Vacuoles, E1 enzyme, X-linked, Autoinflammatory, Somatic)症候群は、近年定義された後天性自己炎症性疾患で、主に50歳以上の男性に発症する。全身性の炎症症状、進行性骨髄不全症、炎症性皮膚症状がみられるのが特徴である。米国・ラトガース大学のIsabella J. Tan氏らは、観察コホート研究においてVEXAS症候群では皮膚症状が一般的かつ早期からみられる症状であることを明らかにした。そのうえで「皮膚血管炎、好中球性皮膚症、または軟骨炎を患う高齢の男性患者では、VEXAS症候群についての遺伝的評価を検討する必要がある。早期診断を促進するために、皮膚科医の間でVEXAS症候群の認識を高めることが重要である」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年6月12日号掲載の報告。 研究グループは、VEXAS症候群における特徴的な皮膚症状を検討し、それらが疾患の臨床的、遺伝学的、組織学的側面とどのように関連しているのかを調べることを目的として、観察コホート研究を行った。 対象患者は2019~23年に、UBA1遺伝子変異が確認されVEXAS症候群と診断された112例。医療記録レビューから、あるいは米国・メリーランド州ベセスダの国立衛生研究所(NIH)で直接評価したVEXAS患者から収集したデータを用いて解析した。 主要アウトカムは、遺伝学的、組織学的およびその他の臨床的所見と関連するVEXAS症候群における皮膚症状の範囲。副次アウトカムは、VEXAS症候群に対する治療への反応とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者112例の年齢中央値は69歳(範囲:39~79)、男性は111例(99%)であった。・皮膚病変は一般的な症状であり(93例[83%])、VEXAS症候群に特徴的な症状のなかで最もよくみられた症状であった(68例[61%])。・患者60例から得られた64件の組織学的報告のうち、主な皮膚の組織病理学的所見は、白血球破砕性血管炎(23件[36%])、好中球性皮膚症(22件[34%])、血管周囲性皮膚炎(19件[30%])であった。・病原性遺伝子変異と皮膚症状には関連がみられた。p.M41L変異と関連が最も大きかったのは、好中球の皮膚浸潤(14/17例[82%])であった(Histiocytoid Sweet Syndromeと類似することが多い)。・一方、p.M41V変異と関連していたのは、血管損傷(11/20例[55%])、混合白血球の浸潤(17/20例[85%])であった。・経口prednisoneにより、67/73例(92%)の患者において皮膚症状の改善がみられた。・anakinraによるVEXAS症候群の治療を受けた患者において、潰瘍(2/12例[17%])や膿瘍(1/12例[8%])などを含む重度の注射部位反応(12/16例[75%])の発現頻度が高かった。

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英語で「コロナ陽性です」は?【1分★医療英語】第138回

第138回 英語で「コロナ陽性です」は?《例文1》I tested positive for COVID.(コロナの検査が陽性でした)《例文2》If you test positive for COVID, you must be quarantined for 5 days.(コロナの検査が陽性の場合、5日間の隔離が必要です)《解説》新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以降、日本では「新型コロナ」という呼び方が定着しましたが、英語圏では「COVID(コヴィット)」と呼ぶことがほとんどです。「コロナの検査」は“COVID test”、「検査を行うための綿棒」は“COVID swab”と呼ばれます。また、“test”という動詞には「自動詞」と「他動詞」があり、自動詞では、「検査の結果~を示す」という意味になります。“(誰=主語)test positive/negative for(○○=検査内容)”という構文で、「“誰”が“○○”の検査を受けて陽性/陰性だった」という表現となり、医療者同士はもちろん、患者さんとの会話でも頻出します。なお、コロナに関連する単語でよく使われるものに“quarantine”(隔離)という単語があります。「クアランティーン」と発音し、“self-quarantine”(自主隔離)という用語もしばしば使われます。講師紹介

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第222回 結核薬ベダキリンを米国と欧州が本承認

結核薬ベダキリンを米国と欧州が本承認欧米で10年以上前にひとまず許可されたJohnson & Johnsonの結核薬ベダキリン(商品名:サチュロ錠)がそれら地域で本承認にこぎ着けました1,2)。第II相試験で良い結果が得られたことを受けて、米国FDAは10年以上前の2012年に同剤を取り急ぎ承認(accelerated approval)しました。欧州はその2年後の2014年にやはり第II相試験結果に基づいてFDAと同様に同剤を条件付き承認(conditional approval)しています。米国での2012年の承認の際の同剤使用は成人に限られていました。2019年になって12歳以上の小児への使用も許可され、その翌年2020年には5歳以上の小児への使用も認められました。そして今回第III相STREAM Stage 2試験でベダキリンを含む経口薬治療の臨床的有用性(clinical benefit)が示されたことを受けて、米国と欧州の両方で本承認に至りました。2022年にLancet誌に結果が報告されたSTREAM Stage 2試験は7ヵ国の13の病院で実施され、15歳以上のリファンピシン耐性結核患者588例が参加しました3)。76週時点で結核菌が見当たらず(培養検査陰性)、それまでを死なずに無事に過ごした経過良好患者の割合の比較で、ベダキリンを含む経口薬治療群が対照の注射薬治療群に勝りました。経過良好の患者割合は、ベダキリンを含む経口薬治療群では83%、同剤を含まない対照群では71%でした。米国と欧州のどちらも、少なくともリファンピシンとイソニアジドに耐性のある結核菌が原因の肺結核の併用療法(combination therapy)の一環としてベダキリンを使うことを認めています。日本では2018年1月に承認され、同年5月に発売されました4)。いまやベダキリンは世界保健機関(WHO)が推奨する薬剤耐性結核治療の要となっており、ベダキリンを含む経口薬のみの投与が多剤耐性結核患者4例に3例の治療を担っています。昨年Johnson & Johnsonは結核治療普及の取り組みであるStop TB Partnershipがベダキリンの後発医薬品を世界のほとんどの低~中所得国(LMIC)に提供するのを許可しました。また、134のLMICでベダキリンの特許を行使しないとの意向も同社は示しています。参考1)Johnson & Johnson Receives Approval from U.S. FDA and European Commission for SIRTURO? (bedaquiline) / J&J2)FDA Roundup: June 25, 2024 / PRNewswire3)Goodall RL, et al. Lancet. 2022;400:1858-1868.4)新規抗結核薬「サチュロ錠100mg」新発売のお知らせ/ヤンセン

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