サイト内検索|page:517

検索結果 合計:11792件 表示位置:10321 - 10340

10321.

退院後30日以内の再受診のうち救急部門受診が約4割/JAMA

 米国・エール大学医学部のAnita A. Vashi氏らは、米国内3州の約1年間の退院データ解析の結果、急性期病院からの退院後30日以内の救急部門再受診が成人患者で一般的にみられ、急性期病院の再受診患者のうち39.8%を占めることを報告した。再入院率は急性期治療後における医療ケアの質の改善の指標とされており、退院後早期の救急部門受診も同様に、退院後における急性期の医療ケアの質の指標とみなされているが、これまで退院後早期の救急部門利用に関する調査はほとんど行われていなかった。JAMA誌2013年1月23・30日号掲載の報告より。米国3州の503万件余の退院データを解析 研究グループは、2008年7月1日~2009年9月31日に、カリフォルニア州、フロリダ州、ネブラスカ州の急性期病院を退院した18歳以上の患者データ(Healthcare Cost and Utilization Project state inpatient and ED databases)を入手し前向きに解析した。解析には、402万8,555人の患者に関する503万2,254件の入院データが組み込まれた。 主要エンドポイントは退院後30日以内の、(1)救急部門を受診(再入院せず)した割合、(2)再入院(理由は問わず)した割合、(3)救急部門を受診し再入院した割合の3つとした。 解析患者の平均年齢は53.4歳であり、65歳以上は29.2%だった。退院後30日以内の急性期病院受診は17.9% 解析の結果、退院後30日間に、17.9%(95%信頼区間:17.9~18.0)が1回以上の急性期病院を受診していた。また、退院後に急性期病院を受診した123万3,402件のうち、救急部門の受診は、39.8%(同:39.7~39.9)だった。 退院1,000件につき、再入院を伴わなかった救急部門受診は、97.5件(同:97.2~97.8)であり、再入院は147.6件(同:147.3~147.9)だった。 再入院を伴わない救急部門受診の頻度は、乳房悪性腫瘍患者が最も低く、退院1,000件当たり22.4件(同:4.6~65.4)である一方、最も頻度が高いのは単純性良性前立腺肥大症患者で、退院1,000件当たり282.5件(同:209.7~372.4)だった。 退院後の救急部門受診の理由はさまざまであったが、入院時に受けた手術や処置、退院時の病状との関連が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)本記事に対するコメント(名郷 直樹 氏)国民皆保険の日本こそこういう解析を!

10322.

抗凝固薬服用PCI患者にはクロピドグレル単独追加が出血リスクを有意に減少/Lancet

 経口抗凝固薬を服用中で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が必要とされる患者には、アスピリンやクロピドグレル(商品名:プラビックス)の抗血小板薬療法が推奨されている。その場合3剤併用療法は深刻な出血リスクを招くが、オランダ・Twee Steden HospitalのWillem J M Dewilde氏らの研究グループは、クロピドグレル単独と、クロピドグレル+アスピリンを併用した場合の有効性および安全性を調べる非盲検無作為化比較対照試験を行った。その結果、クロピドグレル単独追加群では出血性合併症が有意に減少し、血栓性イベントが増加しなかったことを報告した。Lancet誌オンライン版2013年2月13日号より。PCI後1年以内の全出血イベントの発生を評価 研究グループは、ベルギーとオランダの15施設で非盲検多施設無作為化比較対照試験を行った。期間は2008年11月~2011年11月の間で、経口抗凝固薬を服用中でPCIを受けた成人患者(18~80歳)を無作為に、クロピドグレル単独(抗凝固療法と合わせて2剤併用)またはクロピドグレル+アスピリン(3剤併用療法)のいずれかに割り付け追跡した。 主要アウトカムは、PCI後1年以内の全出血イベントとし、intention to treat解析にて評価した。クロピドグレル単独群は出血イベントが有意に減少 573例の患者が登録され、そのうち1年間のデータが得られたのは、2剤併用療法群284例中279例(98.2%)、3剤併用療法群289例中284例(98.3%)だった。平均年齢はそれぞれ70.3(SD 7.0)歳、69.5(同8.0)歳であった。 出血エピソードは、2剤併用療法群が54例(19.4%)、3剤併用療法群は126例(44.4%)で認められた[ハザード比(HR):0.36、95%信頼区間(CI):0.26~0.50、p<0.0001]。 多発性の出血イベントは、3剤併用療法群34例(12.0%)であったのに対し、2剤併用療法群では6例(2.2%)だった。 1単位以上の輸血を必要とした患者は、3剤併用療法群27例(9.5%)であったが、2剤併用療法群では11例(3.9%)だった(Kaplan-Meier解析によるオッズ比:0.39、95%CI:0.17~0.84、p=0.011)。 結果を踏まえて著者は、「経口抗凝固薬服用中でPCIを受けた患者には、クロピドグレル+経口抗凝固薬による治療が出血性合併症の有意に低いリスクと関連していた」と結論。「試験は小規模であったが、アスピリンを控えたことによる血栓イベントリスク増大のエビデンスは見いだすことができなかった」とも述べている。

10323.

皮膚筋炎患者の心筋梗塞リスクは約4倍、脳梗塞リスクは約1.8倍

 皮膚筋炎(DMS)患者では、心血管イベントおよび脳血管イベントのリスクが高いことが、台湾・国立台湾大学病院のY.-T. Lai氏らが行った住民ベースの長期追跡調査の結果、明らかになった。自己免疫疾患に関連する慢性炎症性疾患は心血管リスクを増大することは知られているが、脳血管リスクについてはこれまで不明であった。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年1月21日号の掲載報告。 研究グループは、年齢・性別でマッチさせた住民ベースの追跡調査にて、皮膚筋炎患者における急性心筋梗塞(AMI)と脳梗塞リスクを調べた。 皮膚筋炎患者計907例と、対照群4,535例(年齢、性をマッチさせ無作為に抽出した非皮膚筋炎患者)を比較した。分析にあたりKaplan-Meier法を用いて、AMI無発生生存曲線および脳梗塞無発生生存曲線を作成した。皮膚筋炎関連AMIリスクと脳梗塞リスクはCox比例ハザード回帰分析にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・2年間追跡した結果、AMIが確認されたのは、皮膚筋炎患者群14例(1.5%)、対照群18例(0.4%)であった。・皮膚筋炎患者の対照群と比較したAMI発生の粗ハザード比(HR)は、3.96(95%CI:1.97~7.96、p=0.0001)であった。補正後HR(人口統計学的特性と心血管共存症を考慮)は、3.37(同:1.67~6.80、p=0.0007)であった。・同一期間追跡において、脳梗塞の発生は、皮膚筋炎患者群46例(5.1%)、対照群133例(2.9%)であった。・皮膚筋炎患者の対照群と比較した脳梗塞発生の粗HRは、1.78(95%CI:1.27~2.49、p=0.0007)であった。補正後HRは、1.67(同:1.19~2.34、p=0.0028)であった。

10324.

脂肪肝患者では大腸がんの肝転移が少ない!?

 脂肪肝と大腸がんはどちらもメタボリックシンドロームと関連する疾患である。肝臓は大腸がんの遠隔転移が最も多い部位だが、大腸がんの肝転移に脂肪肝が影響するかどうかは明確にされていない。 今回、東京大学腫瘍外科の室野浩司氏らは、大腸がんの肝転移と脂肪肝の有無との関連について検討した結果、脂肪肝患者のほうが肝転移が少なく、脂肪肝が肝転移の形成に不利な微小環境である可能性を報告した。また、肥満ではない脂肪肝患者では肝転移が少なく、肥満患者では有意差がなかったことから、肥満による脂肪肝とは異なり、がん細胞に対する防御反応として脂肪肝になるのかもしれないと考察している。International Journal of Colorectal Disease誌オンライン版2013年2月8日号に掲載。 本研究では、術前に非造影CT検査を実施し根治的切除術を受けた604例の大腸がん患者が登録された。単純CTスライス像から得られた肝臓と脾臓の平均減弱値(ハンスフィールド単位)により、肝/脾減弱比が1.1より低い患者を脂肪肝と定義した。著者らは、これらの患者の臨床病理学的特徴を分析し、大腸がんの臨床的特徴と脂肪肝との関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・604例中63例(10.4%)が脂肪肝と診断された。・無再発生存率(RFS)および肝RFSは、脂肪肝患者群で有意に高かった(p=0.04およびp=0.006)が、肝以外でのRFSには有意差を認めなかった。この効果は肥満患者群(BMI>25.0)では認められなかった。・脂肪肝ではないことが肝RFSにおける独立した危険因子であった(p=0.003)。

10325.

長期療養施設の高齢者の多くは、本当は痛みに耐えている

 The Services and Health for Elderly in Long TERm care(SHELTER)研究において、ヨーロッパの長期療養施設の入所者は国によって差はあるものの疼痛有病率が高く、大部分の入所者は疼痛が適切にコントロールされていると自己評価しているが、実際にはまだ強い痛みを有している入所者が多いことが明らかとなった。ドイツ・ウルム大学Bethesda病院のAlbert Lukas氏らによる報告で、こうした結果の背景にある理由を分析することが、疼痛管理の改善に役立つ可能性があるとまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版1月31日の掲載報告。 今回の研究は、長期療養施設の入所者における疼痛について評価し、国家間で比較することが目的であった。 対象はヨーロッパ7ヵ国およびイスラエルの長期療養施設の入所者計3,926人で、インターライの長期療養施設(Long Term Care Facility:LTCF)版を用い疼痛の有病率、頻度、強さなどを評価した。 患者関連特性と不適切な疼痛管理の相関を二変量および多変量ロジスティック回帰モデルにより解析した。 主な結果は以下のとおり。・疼痛を有していた入所者は1,900人(48.4%)であった。・疼痛有病率は、イスラエルの19.8%からフィンランドの73.0%まで、国によって大きく異なった。・疼痛は、性別(女性)、骨折、転倒、褥瘡、睡眠障害、不安定な健康状態、がん、うつ病および薬剤数と正の相関があり、一方で認知症と負の相関があった。・多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、睡眠障害を除いたすべての因子が有意であることが示された。・疼痛は十分コントロールされていると自己評価した入所者は88.1%に上ったが、痛みがないまたは軽度であると回答したのは56.8%にすぎなかった。【おすすめコンテンツ】~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中! ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート ・「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

10326.

〔CLEAR! ジャーナル四天王(57)〕 重ね着にメリットなし、かえって風邪をひくかも-ACE阻害薬とARB併用に効果増強みられず-

 Renin-angiotensine(RA)系抑制薬として、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)そして直接的レニン阻害薬 アリスキレン(商品名:ラジレス)が実用に供されているが、これらのうち2種類の併用を“dual blockade”と称する。最近このdual blockade 治療を検証したONTARGET試験やALTITUDE試験などで、その有用性が相次いで否定されている。 本試験はこれまで発表されたDual Blockade Therapy(DBT)に関する33のランダム化試験約6万8,000人のメタ解析である。その結果は、DBTは単独治療に比べて全死亡を減らすことはなく、高カリウム血症や低血圧、腎不全などの有害事象を増加させたというものである。本試験は、各トライアルの患者の臨床背景が不一致であるというメタ解析一般にみられるlimitationを差し引いても妥当な結果といえよう。 過剰なRA系の抑制は、かえって生体の代償機転を損ねる可能性が示唆されるが、今後保険上の縛りをいれることで、RA系同士の併用が処方されることのないようにわが国の臨床医に啓蒙していく必要があろう。

10327.

難治性の慢性特発性蕁麻疹患者、ピロリ菌除菌療法で約3割が症状消失

 抗ヒスタミン薬が無効の慢性特発性蕁麻疹(CU)患者について、ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori、以下 ピロリ菌)感染症の除菌療法がベネフィットをもたらす可能性が、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学のE. Magen氏らによる検討の結果、報告された。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年1月21日号の掲載報告。一部のCU患者では抗ヒスタミン薬の常用量投与に耐性を示す。一方、最近の研究報告で、慢性特発性蕁麻疹とピロリ菌感染症との関連が報告されていた。 研究グループは、ピロリ菌感染症の根治がCU患者の抗ヒスタミン薬耐性状況を改善可能かについて調べた。 CU患者の症例を後ろ向きにレビューし、蕁麻疹活性スコア(UAS)の記録と、ピロリ菌感染症について13C-urea breath test(13C-UBT)を行った。 初回投与量の4倍の抗ヒスタミン薬での8週治療にもかかわらずCU改善がみられない患者は難治性CU群とし、反応がみられた患者は反応CU群とした。 難治性CUで13C-UBT陽性の患者に対し、アモキシシリン1g・クラリスロマイシン500mg・オメプラゾール20mgを1日2回、14日間投与した。 CUにおけるピロリ菌除菌の効果は、UASにて評価した(3剤投与開始後のベースライン、8、16、28週時点で評価)。 主な結果は以下のとおり。・難治性CU患者46例のうち、29例(63%)が13C-UBT陽性であった。・29例のうち、18例がピロリ菌感染症の除菌を受けた(サブグループA)。11例は3剤併用療法を辞退した(サブグループB)。なお46例のうち17例は13C-UBT陰性であった(サブグループC)。・サブグループAにおいて、UASはベースラインの5.29±0.94から、8週時点3.62~0.96(p=0.03)、16週時点1.43±0.41(p

10328.

統合失調症の診断・治療に期待!新たなバイオマーカー

 統合失調症リスク遺伝子と関わりを持っていることなどが知られている「NDEL1」。統合失調症の臨床診断および薬物治療のバイオマーカーとして、血中NDEL1酵素活性が期待できることが示された。ブラジル・サンパウロ連邦大学のAry Gadelha氏らが、統合失調症患者と健常対照者の血中NDEL1酵素活性レベルを比較し、臨床プロファイルや治療反応との関連を調べた結果、統合失調症患者では同値が有意に低いことなどが示されたという。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2013年2月3日号の掲載報告。 NDEL1オリゴペプチダーゼは統合失調症リスク遺伝子DISC1と作用し合って、神経突起伸長や神経細胞遊走に関連するいくつかの機能を伝達し、また、統合失調症発症に先立ち神経ペプチドを加水分解すること(ニューロテンシンとブラジキニン)が知られている。研究グループは、こうしたNDEL1の特性を踏まえて、統合失調症患者と健常対照者における同値を測定し比較した。NDEL1酵素活性は、FRETペプチド基質Abz-GFSPFRQ-EDDnp加水分解率の蛍光定量的測定によって判定した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者92例、健常対照者96例について、血中NDEL1酵素活性を測定し比較した。・統合失調症患者は健常対照者と比べて、Ndel1酵素活性が平均31%低かった(Student's t検定=4.36、p<0.001、Cohen's d=0.64)。・NDEL1酵素活性と統合失調症患者/健常対照者のステータスに関するROC曲線下面積(AUC)は、0.70であった。・治療抵抗性(TR)の統合失調症患者では、治療に反応した(NTR)患者と比べて、NDEL1酵素活性がt検定解析の結果、有意に低かった(t=2.25、p=0.027)。・より低いNDEL1酵素活性は、NTR患者(p=0.002、B=1.19、OR:3.29、95%CI:1.57~6.88)、TR患者(p<0.001、B=2.27、OR:9.64、95%CI:4.12~22.54)のいずれとも有意な関連がみられた。・NDEL1酵素活性と、抗精神病薬投与量、ニコチン依存、BMIとには関連は認められなかった。・本検討は、統合失調症患者と健常者との比較でNDEL1酵素活性の差を検討した最初の試験であり、TR患者はNTR患者と比較して同活性が有意に低いことを初めて示した。その知見は、統合失調症の臨床診断および薬物治療において、NDEL1酵素活性は意味があることを支持する。関連医療ニュース ・日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに ・検証!統合失調症患者の体重増加と遺伝子の関連 ・初回エピソード統合失調症患者におけるGABA機能への影響

10329.

〔CLEAR! ジャーナル四天王(55)〕 急性期脳梗塞に対する血管内治療の優位性は示されず

本論文は、SYNTHESIS Expansion Investigatorsによる急性期脳梗塞を対象とした、rt-PA静注療法と血管内治療(rt-PA動注療法、デバイスによる血栓の破砕か回収、あるいは両方の組み合わせ)の無作為化比較研究の結果報告である。 血管内治療はrt-PA静注療法よりも閉塞血管の再開通率が高く、良好な転帰が期待されるため、両治療法の臨床的効果の比較が必要となっていた。本研究では、発症から4.5時間以内の急性期脳梗塞患者362人が無作為に両群に割り付けられ、3ヵ月後の転帰(mRS)が評価された。両群に各181人が割り付けられ、発症から治療開始までの中央時間は、血管内治療で3.75時間、rt-PA静注療法で2.75時間であった。3ヵ月後のmRS 0, 1は、前者30.4%、後者34.8%と有意差がなく、7日以内の致死的及び非致死的症候性頭蓋内出血は両群とも6%に生じ、血管内治療の優位性は示されなかった。 今年のISC2013で報告されたIMS IIIの最終結果でも血管内治療の優位性は示されず、血管内治療での治療開始時間の遅れが、今後の課題となる可能性がある。

10330.

静注ブスルファンと全身放射線照射との造血幹細胞移植後の全生存率の比較の報告が“Best Abstracts”に選出される【2013 BMT Tandem Meetings】

 BMT Tandem Meetings(米国造血細胞移植学会/国際骨髄移植研究センター 合同学術集会)において、造血幹細胞移植前治療としての静注ブスルファンと全身放射線照射(TBI)の骨髄破壊的レジメンを比較した試験の結果が、オタワ大学(カナダ)のChristopher Bredeson氏により報告された。この試験は、本学会の全553演題の中から最も優れた6題を表彰する“Best Abstracts”セッションにおいて、15日に米国ユタ州ソルトレイク市で発表された。 造血幹細胞移植前治療として、経口ブスルファンに代わり静注剤を使用することにより、血中濃度の厳密なコントロールが可能となったが、その臨床効果を、TBIと比較した前向き研究は未施行であった。今回、静注ブスルファンとTBIの骨髄破壊的レジメンを比較した多施設共同前向きコホート試験の結果が報告された。この試験は、CIBMTR(Center for International Blood and Marrow Transplant Research)が中心になって施行した、初めての大規模前向きコホート試験である。 同試験の対象は、すべての病期(early、intermediateおよび advanced phase)における骨髄性血液腫瘍(急性骨髄性白血病AML、骨髄異形成症候群MDS、慢性骨髄性白血病CML)に対して初回同種造血幹細胞移植を施行した60歳以下の患者である。血縁もしくは非血縁をドナーとし、骨髄および末梢血幹細胞を使用した例を含み、臍帯血移植あるいはex vivo T細胞除去を施行した例は除いた。前治療として、静注ブスルファン(BU)群では、BU(>9mg/kg)+シクロホスファミド(Cy)またはフルダラビン(Flu)投与例、TBI群では、≧500 cGyの単回照射または ≧800 cGyの分割照射に加えCyまたはエトポシドを使用した例を対象とした。主目的は、全生存におけるBU群のTBI群に対する非劣性の検証である。 2009年3月から 2011年2月までに、北米を主とした120施設から1,483 例(BU: n=1,025、TBI: n=458)が適格例として登録された。両群間に大きな偏りは見られず、年齢、性別、Karnofsky Performance StatusおよびHCT-CIスコアは同様であった。移植片としては末梢血幹細胞が主に使用された(BU:77%、TBI:76%)。両群ともAMLが多く(BU:68%、TBI:78%)、MDS が続いた(BU:21%、TBI:10 %)。両群間において、原疾患の進行度およびHLA適合血縁ドナーの割合(BU:41%、TBI:39%)に偏りはみられなかった。BU群において、1日1回投与は42%, 1日4回投与は57%であり、Cy併用例、Flu併用例はそれぞれ59%、41%であった。 2年全生存率(95%CI)は、BU群が 56%(53~60%)、TBI群が48%(43~54%)であり、2年全生存率に統計学有意差が認められた[p=0.019]。病期別2年全生存率は、Early phase(BU:64%、TBI:51%[p=0.006])、Intermediate phase(BU:57%、TBI:56%[p=NS])、Advanced phase(BU:43%、TBI:38%[p=NS])であった。 全例1,483 例における移植関連死は、移植後100日において両群ともに7%であった。静脈閉塞症肝疾患(VOD)/ 類洞閉塞症候群(SOS)の出現頻度は、BU群が5%、TBI群が1%であった[p

10331.

〔CLEAR! ジャーナル四天王(54)〕 がん検診の正しい情報とは?

EBM(Evidence-Based Medicine)の領域では、医療介入がどれだけのベネフィットをもたらすかということを、NNT(Number Needed to Treat)という指標が使われる。NNTとは、患者さん1人がメリットを得るために、同様の患者さん何人に治療(介入)を行わなくてはならないのかを示す指数である。医学論文などでは、効果の指標として、相対リスクやハザード比などがよく使われ、◯%の患者に効果が認められたなどと示されるが、相対リスク減少率などは過大評価されやすく、またわかりにくい指標であるので、EBMの世界では、NNTがよく使用される。 今回のBMJに報告された研究は、NNTに時間の概念を加えて、1人のがん死亡を防ぐために何名の検診が必要で、そのベネフィットが確認されるまでどれくらいの期間が必要であるかを計算した結果である。結論は、乳がん検診や大腸がん検診では、受診者1,000人当たり1例の死亡を予防するのに(つまり、NNTが1,000)、約10年を要するというものであった。 近年、検診の意義を問う研究報告がいくつかなされている。乳がんマンモグラフィー検診で相当数の過剰診断がある(Jørgensen KJ et al. BMJ. 2009; 339: b2587.)という報告、米国予防医療サービス専門作業部会(the U.S. Preventive Services Task Force)による、乳がん検診の推奨年齢を従来の40~74歳(毎年)から50~74歳(2年に1度)に変更し、過剰診断というリスクに関して十分に認識すべき(US Preventive Services Task Force. Ann Intern Med. 2009; 151: 716-726.)という報告などがある。また、NEJM誌2012年11月22日号では、乳がん検診によって、早期乳がんが増えたのに対して、進行がんが減っていないことのアンバランスから、過剰診断がなされているのではないか、検診のベネフィットは少ないのではないか、ということを指摘している(Bleyer A et al. N Engl J Med. 2012; 367:1998-2005.)。 NNT1,000を妥当と判断したのは、1,000人に1人は過剰診断がなされているという報告(Nelson HD et al. Agency for Healthcare Research and Quality. 2009:1-89.)からであるが、言い換えると、乳がん・大腸がん検診を受けると、1/1,000の確率、0.001%の確率で10年後に乳がん・大腸がんで死亡することを防げるというものである。またその場合、1/1,000の確率で誤診もされてしまうということである。また、色々な合併症があり10年以上の予後が見込めない場合には、検診を受ける必要はないということになる。 日本はがん検診後進国であり、先進国の中では最低の検診率である。検診の啓蒙は大切なことであるが、全てのがんに検診が有効というわけではなく、限られたがんにしか有効ではない、しかもその利益を受ける者は、一部の者だけであるという正しい情報も伝えられる必要があると思われる。勝俣 範之先生のブログはこちら

10332.

前立腺全摘除術vs. 放射線療法、15年後の機能的アウトカムは有意差なし/NEJM

 限局性前立腺がんで前立腺全摘除術を受けた患者と放射線療法を受けた患者の機能的アウトカムについて、15年の長期にわたる追跡の結果、両群で有意な差はみられなかったことが示された。米国・ヴァンダービルト大学のMatthew J. Resnick氏らが、Prostate Cancer Outcomes Study(PCOS)の被験者データを解析した結果で、NEJM誌2013年1月31日号で発表した。限局性前立腺がん患者1,655人を15年間追跡、排尿・排便・性機能について比較 PCOSは、1994年~1995年に全米6州で限局性前立腺がんと診断され登録した被験者を、6、12ヵ月時点で評価したサーベイ研究で、3,533人がサーベイを完了した。Resnick氏らは同データを用いて、診断時年齢55~74歳で2、5年時の追跡評価を完了しており、診断後1年以内でプライマリ治療として根治的前立腺摘除術あるいは体外照射療法(アンドロゲン除去療法有無問わず)を受けた1,655人を対象とし、両群の長期の排尿・排便・性機能について比較した。 機能状態の比較は、診断後2、5、15年時点について行い、多変量傾向スコアを用いて治療別の機能アウトカムを比較した。 解析対象の1,655人のうち、前立腺全摘除術群は1,164人、放射線療法群は491人であった。2、5年時点は有意差がみられたが、15年時点では認められず 尿失禁について、2年時点、5年時点のいずれにおいても全摘除群が放射線療法群よりも多い傾向が認められた。オッズ比は、2年時点6.22[95%信頼区間(CI):1.92~20.29]、5年時点5.10(同:2.29~11.36)だった。 しかし15年時点では、尿失禁に関する両群のオッズ比に有意な差はみられなかった(オッズ比:2.34、95%CI:0.88~6.23)。 同様に、勃起障害についても、2年時点(同:3.46、1.93~6.17)、5年時点(同:1.96、1.05~3.63)では全摘除群が多い傾向がみられたが、15時点では両群間の有意差は認められなかった(同:0.38、0.12~1.22)。 排便機能については、便意切迫が全摘除群で低い傾向が、2年時点(同:0.39、0.22~0.68)、5年時点(同:0.47、0.26~0.84)でみられたが、15年時点では有意差は認められなくなっていた(同:0.98、0.45~2.14)。 以上を踏まえて著者は、「前立腺全摘除術または放射線療法を受けた患者間に、15年時点では疾患特異的な機能アウトカムの相対的な有意差はみられなかった。ただし15年の追跡期間中、概して限局性前立腺がんの治療を受けた男性はすべての機能が低下していた」と結論し、「前立腺がんは治療後、多くの場合が長期生存する。そのことを考慮して、本データは限局性前立腺がんの治療を検討している男性患者への助言として役立つであろう」とまとめている。

10333.

抗精神病薬や気分安定薬を服薬中の女性、妊娠・出産のリスクはどの程度?

 女性に対する抗精神病薬や気分安定薬の処方は、妊娠や出産へのリスクを十分に考慮する必要がある。イタリア・ヴェローナ大学のC Barbui氏らは、抗精神病薬服薬中の妊娠可能年齢女性における、妊娠転帰に関するデータをまとめ、発表した。Epidemiology and psychiatric sciences誌オンライン版2013年2月1日号の報告。 イタリア・ロンバルディア州(人口1,000万人、妊娠可能年齢女性175万2,285人)で、抗精神病薬を投与されている統合失調症および双極性障害を有する妊娠可能年齢の女性の割合を算出し、妊娠転帰に関するデータを調査した。精神科医療、薬物療法、妊娠転帰に関するデータは、12ヵ月の国勢調査によるローカル管理データベースから取得した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬または気分安定薬を投与されていた妊娠可能年齢女性は、統合失調症を有する2,893例(すべての統合失調症を有する女性の74.8%)、双極性障害を有する918例(すべての双極性障害を有する女性の80.1%)であった。・有病率は1,000人の女性あたり、統合失調症で1.65(95%CI:1.59~1.71)、双極性障害で0.52(95%CI:0.49~0.55)であった。・催奇形性のある薬剤の継続的投与を受けていたのは、妊娠可能年齢女性1,000人あたり1人であった。・統合失調症女性における妊娠は57例、そのうち正常分娩は23例(40%)であった。双極性障害女性における妊娠は26例、そのうち正常分娩は10例(38%)であった。関連医療ニュース ・抗うつ薬を使いこなす! 種類、性、年齢を考慮 ・双極性障害とADHDは密接に関連 ・妊娠中のSSRI服用と死産、新生児・0歳時死亡には有意な関連みられず

10334.

双極性障害、再入院を減らすには専門外来での治療が必要

 デンマーク・コペンハーゲン大学病院のLars Vedel Kessing氏らは、双極性障害のため精神病院に入院し、退院した患者の予後について、退院後に気分障害クリニック専門外来での治療を受けた場合と地域病院で標準治療を受けた場合を比較検討した。その結果、気分障害クリニック専門外来での治療は精神病院への再入院を減らし、治療満足度も高いことを報告した。British Journal of Psychiatry誌オンライン版2013年1月24日号の掲載報告。 本研究は、双極性障害のため精神病院に入院し、退院した患者について、気分障害クリニック専門外来での治療を受けた場合と地域病院で標準治療を受けた場合の予後を比較検討することを目的とした。単一躁病エピソードまたは双極性障害により入院した精神病院(1件目、2件目または3件目)から退院した患者を、気分障害クリニック専門外来で治療を受ける群または地域病院で標準治療を受ける群に無作為化した。主要評価項目は、デンマークPsychiatric Central Registerに基づく再入院とした。 主な結果は以下のとおり。・単一躁病エピソードまたは双極性障害患者158 例が試験に登録された。・気分障害クリニック専門外来での治療を受けた群は、地域病院で標準治療を受けた群と比べ有意に再入院率が低かった(未調整ハザード比:0.60、95%CI:0.37~0.97、p=0.034)。・気分障害クリニック専門外来での治療を受けた群では、気分安定薬または抗精神病薬がより多く使用されており、治療満足度がより高かった。・以上の結果から、双極性障害の早期に気分障害クリニック専門外来で治療を受けることにより精神病院への再入院が大きく減り、ケア満足度も高まることが示された。関連医療ニュース ・バイポーラの躁症状に対するアリピプラゾールの位置付けは? ・認知症ケアでプライマリケア・リエゾンに求められる3つのポイント ・うつ病の治療転帰を予測するには、臨床的要因 < 社会経済的要因

10335.

〔CLEAR! ジャーナル四天王(52)〕 NoboriステントはCypherステントより優れているとは言えない?

Biolimus-eluting biodegradable polymer-coated stent(Nobori、1,229症例)とdurable polymer-coated sirolimus-eluting stent(Cypher、1,239症例)の無作為化比較試験であるSORT OUT Vの結果が、Lancetに報告された。 心臓死、急性心筋梗塞、ステント血栓症、再血行再建術を合わせた主要エンドポイントにおいて、9ヵ月(4.1% vs. 3.1%)と12ヵ月(5.4% vs. 4.4%)のいずれの時点においても、有意差を認めなかった。 しかし、30日以内のステント血栓症が、Nobori群で有意に高頻度であった(0.7% vs. 0.2%、 p=0.034)ことが、結果に大きく影響している。さらに、無作為化しているにもかかわらず、有意にNobori群で冠動脈バイパス術(CABG)の既往症例が多く、ステント留置時の拡張圧が低い。より進行した病変により低い圧で留置されたために、Nobori群でステント拡張不良の症例が多くなり、早期のイベントにつながったのではないかと疑いたくなる。また、新生内膜による被覆遅延、動脈硬化の進行促進といった点で、NoboriはCypherよりも優れていると考えられているが、その効果は1年以後の遅発性のイベントに影響すると考えられる。 よって、1年で評価した今回の試験は、論文の著者も述べているように、あまりにフォローアップ期間が短すぎる。しかも、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)手技の影響が大きいと考えられる早期のイベントの差が結果に影響しており、背景因子も必ずしも同じでないことを考えると、これでも症例数が少なすぎるのではないだろうか? あるいは、血管内超音波法(IVUS)を使用する等によって手技のばらつきを小さくする努力も必要ではないだろうか? いずれにしても、このまま鵜呑みにできない結果であることは多くの専門家が認めるだろうが、結果だけが一人歩きして社会的影響力を持たないように、各人が大規模臨床試験の結果を公正に評価できる能力を持つ必要がある。

10336.

ダーモスコピー、皮膚のエイジング予防・治療に役立つ可能性

 肉眼では検出できない皮膚の老化(skin aging)について、ダーモスコピーで簡便に評価できないか、トルコ・Ordu University Research and Education HospitalのBurcu Isik氏らは測定評価の可能性について検討した。その結果、光老化皮膚を定量的に評価可能であることが示されたことを報告した。Skin Research and Technology誌オンライン版2013年1月20日号の掲載報告。 検討は、3次医療機能センターであるIstanbul Training and Research Hospitalで行われた。 441例の被験者について、年齢(10歳ごと)で6グループに分け、顔の太陽光に曝露された部位をダーモスコピーで、毛細血管拡張症、血管の変化、色素沈着の変化、脂漏性角化症、光線角化症、眼窩周囲の面皰と嚢胞、光老化のサインとしてのしわ(表面-深部-縦横)について調べ、ダーモスコピー光老化スケール(dermoscopic photoaging scale:DPAS)で評価した。スケールの妥当性は、腋窩と殿部で評価したDPASにて検証した。 主な結果は以下のとおり。・DPASスケールは信頼性が非常に高いことが明らかになった(Cronbach's α係数0.756)。・各グループ被験者の皮膚の老化について、Glogou photoaging scaleと、Monheit-Fulton photoaging indexで臨床的な比較を行った。その結果、それぞれ有意な相関(0.773、0.774)が確認された。・光老化スコアは、若年齢群ほど低く、年齢が高くなるほど増大した。平均値の区間値差は同程度であった。・著者は、「DPASは信頼性の高い有効な診断ツールである。光老化皮膚を客観的な基準で評価することができ、皮膚の老化に関する効果的な予防や適用すべき治療の評価に役立つ可能性がある」と結論している。

10337.

どのタイミングで使用するのが効果的?統合失調症患者への持効性注射剤投与

 統合失調症患者に対し、長時間作用型リスペリドンのような薬学的介入は、とくに直近に診断を受けた患者において意義があることが明らかにされた。ベルギー・Cliniques Universitaires St LucのVincent Dubois氏らが、2つの観察試験(e-STAR、TIMORES)データの解析を行い報告した。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2013年1月24日号の掲載報告。 本研究は統合失調症を、最近診断された患者と診断から長期間経っている患者について、長時間作用型リスペリドンによる治療開始前後の、精神医学的臨床アウトカムおよび入院率の格差について検討することを目的とした。2つの観察研究「electronic Schizophrenia Treatment Adherence Registry(e-STAR)」「Trial for the Initiation and Maintenance Of REmission in Schizophrenia with risperidone(TIMORES)」のデータについて、診断時期について階層化し、事後解析にて比較した。評価項目は、臨床全般印象・重症度スコア(Clinical Global Impression of illness Severity :CGI-S)、機能の全般的評価スコア(Global Assessment of Functioning:GAF)、および臨床症状の増悪(入院など)で、ベースライン、12ヵ月時点(TIMORESとe-STAR)、24ヵ月時点(e-STAR)で解析した。その他、投与中止の割合、就業状況、寛解達成などのアウトカムも評価した。 主な結果は以下のとおり。・追跡12ヵ月および24ヵ月時点で、最近診断群と診断後長期群では、統計的有意差が、CGI-Sスコア(p<0.01、p≦0.001)、GAFスコア(p<0.05)について認められた。・また1年時点での、臨床症状の増悪、就業状況、完全な症候性の寛解達成についても両群間の格差が認められた。・入院指標については最近診断群と診断後長期群で一貫した差はみられなかったが、e-STAR試験の'Early'群と'Late'群で入院期間の統計的な有意差が、12、24ヵ月の両エンドポイントでみられた。ベースラインからの変化の平均値は、12ヵ月時点では'Early'群が有意に大きかった。しかし24ヵ月時点では'Late'群が有意に大きかった。関連医療ニュース 長時間作用型注射製剤は、統合失調症患者の入院減少と入院期間短縮に寄与 統合失調症患者における持効性注射剤:80文献レビュー 第一世代 vs 第二世代抗精神病薬、初回エピソード統合失調症患者に対するメタ解析

10338.

石巻地域COPDネットワーク(ICON)の取り組み

喫煙に甘い地域特性とその対策石巻はCOPD、間質性肺炎、塵肺など重症の呼吸器疾患が多い地区です。タバコの購買量も多く、全国平均の1.5倍(2006年のデータ)でした。地域産業の影響もあります。石巻は漁業の街でもありますが、同時に喫煙に甘い地域でもありました。未成年の喫煙は大きな問題で、小学生高学年から中学生の時に吸い出し、高校生で常習喫煙となっている子どもも少なくありませんでした。さらに、公共施設での喫煙対策も立ち遅れており、2006年度のデータでは施設内完全禁煙率は55.4 %(宮城県平均73.9%)でした。このような問題の重大性を鑑み、地域の基幹病院として、2007年12月に石巻市や東松島市などの関係機関へ喫煙対策推進の要望書を提出しました。マスコミも巻き込み新聞などでアピールすることで要望は実現し、2008年4月から石巻市、東松島市の市立学校の敷地内禁煙と公共施設内禁煙などが始まりました。このほか、行政とともに市民医学講座などのイベント、小中学校、高校、大学での防煙教育を行いました。とくに、学校での防煙教室は今では年間20校程度に定着し、小中学生で有意な教育効果が認められるなど、子供たちの意識も確実に変わってきたといえます。学校での防煙教室の様子COPD dayの開催取り組みの一環として、一般市民に対するCOPD啓発イベント「石巻COPD day」を、宮城県、石巻市、石巻市医師会、GOLD、世界COPD Day日本委員会の後援を得て2006年より開始しました。このイベントは、震災のあった2011年を除き、本年まで最低年1回開催しています。お祭り会場、ショッピングセンター、病院などを会場とし、多い年には800名以上の参加者があります。この活動は、疾患啓発とともにCOPDの地域疫学調査の役割を担っています。COPD dayでは、参加市民全員に、質問票によるCOPDチェック(喫煙状態、COPD症状など)、COPDの認知調査、スパイロメトリー、COPD・禁煙のミニレクチャー、COPD疑いのある方には医師による医療相談などを行っています。COPD dayの疫学調査の結果、驚きの事実が明らかになりました。まず、喫煙率は男性41%、女性17%と高いものでした。なかでも20、30、40歳代の若い女性の喫煙率はそれぞれ32%、33%、39%と非常に高く、憂慮すべき事態でした。また、COPDの罹患も多く、スパイロメトリー検査による閉塞性障害は40歳代以上で13.4%(男性20%、女性6%)ということが明らかになりました。NICE study結果では40歳以上の8.6%ですので、タバコ購買量と同様これも全国の1.5倍という高いものでした。COPDの頻度画像を拡大する喫煙状況(2006年石巻COPD Dayでの調査)画像を拡大するICON立ち上げCOPDの罹患状態をそのままにしておくと、当地域での重症COPDは確実に増えてしまうと考えられました。しかし、石巻医療圏(石巻市、東松島市、女川町)は、呼吸器科医師が少ない地域で、人口22万人に対し、呼吸器内科医は当院(石巻赤十字病院)で4名、地域全体でも7名しかいません(2007年当時)。そこで、石巻COPDネットワーク「ICON(Ishinomaki COPD Network)」を2年間の準備を経て2009年10月に立ち上げました。これは石巻とその周辺においてCOPDの患者さんを、医師、看護師、リハビリ専門職、薬剤師、栄養士などが連携して支えるシステムで、ICONに登録したCOPD患者さんは登録医療機関で共通の治療を受けることができるというものです。COPDは糖尿病と同じように患者の自己管理が必須の疾患であり、医師だけでなく多くの医療従事者で診療・ケアにあたることが必要です。また、COPDは予防、早期発見、患者発掘が必要であるため、診療所との連携は不可欠だといえます。現在、基幹病院(石巻赤十字病院)、かかりつけ医、リハビリ病院、在宅医療、訪問看護、薬剤師会などの連携を始めています。医療機関の登録は60施設、うち診療所が49施設、病院が11施設です。東日本大震災で10施設ほど減りましたが(消失2件、廃業7件、脱退1件)、その後新たに7施設がICONに参加しています。登録患者数は299名です。ICONは、医療圏をはみ出し宮城県東北部の広い地域でCOPD連携し、医療資源の少なさをカバーしています。早期から在宅酸素療法も含め最重症の患者さんまでみており、基幹病院での定期的な教育と検査、増悪時の確実な入院も実現しています。さらに、吸入指導・禁煙指導での病薬連携も行っています。石巻赤十字病院ICONの活動COPD治療は、医師だけでは困難です。そのため、医師、看護師、薬剤師、療法士、栄養士という多職種でワーキンググループを作り、定期的に集まってアクションプランの作成、連携パス、教育プログラムなどを共同で作っています。ICON参加スタッフの教育も盛んで、定期的に講師を招いて講演会を実施しています。スタッフは非常に熱心で、講演会には多職種の医療従事者が100名前後集まります。テーマは広く、COPDの疾患理解、吸入指導、リハビリ、呼吸法、在宅酸素など医師以外の医療者も役立つ内容になっています。とくに吸入指導・禁煙指導については地域の保険薬局も積極的に参加していただけるようになり、効果も上がっています。ICON地域連携パスの作成ICON活動のひとつとして「ICON地域連携パス」を作成しました。専門医、プライマリケア医に加え看護師、薬剤師、療法士も加わって作っており、リハビリ、栄養・食事指導、訪問介護など広い範囲をカバーしたパスとなっています。ICON登録診療所の医師は、COPDが疑われる患者さんがいたら、基幹病院に紹介します。基幹病院に紹介された患者さんは検査を受け、COPDと診断された方はICONに登録され、治療導入や教育を受けます。その後、診療所に戻っていただきますが、診療所はICONパスに従って安定期治療を行います。その間、重症度や症状に応じて半年から1年ごとに基幹病院にて教育、COPDの状態チェック、併存症チェックが行われます。増悪時もICONパスに従い、診療所で初期診療を行い、必要と判断されれば基幹病院に紹介されます。入院が必要な場合は、必ず基幹病院(満床の場合はICON加盟の急性期病院)に入院させることを担保しています。増悪回復後は、診療所で引き続き外来治療を行う、必要ならばリハビリ病院で通院リハも行うという流れです。震災後はとくに、訪問看護ステーション、訪問診療医との連携が重要課題となっています。仮設住宅に移った後、身体活動性が低下したり、かかりつけ医が遠くなるなどの理由で医療機関の受診が減少した患者さんが多くなりました。COPDでは活動量の低下により増悪や死亡のリスクが増大することが知られており、継続的な治療や指導は重要なのです。この連携よって、病院は外来患者が減少し、増悪の入院治療や患者教育に専念できるようになり、看護師・薬剤師などメディカルスタッフ外来もできるようになりました。診療所は安定期治療と早期発見に専念でき、要入院の増悪患者さんをスムーズに基幹病院に送れるという安心感が得られるようになりました。患者さんは病・診連携により自分の病態に沿った適切な治療が受けられることとなり、お互いにメリットが共有されました。画像を拡大するICON COPDの地域連携パスICON外来前項で述べた定期的なICON登録患者さんのCOPDとその併存症の検査、ならびに自己管理項目の評価と再教育のために、「ICON外来」を行っています。石巻赤十字病院の健診センターで、患者さんの状態に応じて半年から1年ごとに予約診療されています。ここでは、低線量CTによる肺がんのスクリーニングと肺気腫病変の進行評価、肺機能、ADL(千住式)、 QOL(CAT)、6分間歩行などのCOPD関連のチェックだけでなく、心機能、糖尿病(HbA1c)、骨密度、うつ評価(HAD) 、認知機能(MMSE)など併存症の評価も行います。また、看護師による患者さんの疾患理解度の調査(LINQ*)とそれに基づく患者教育、薬剤師による吸入指導、療法士による呼吸リハビリテーション、栄養士による栄養指導も行っています。*LINQ : Lung Information Needs QuestionnaireCOPD患者が自身で管理・治療していくために必要としている情報量を測定する自己記入式質問票。疾患、自己管理、薬、禁煙、運動、栄養の6項目について、現在どの情報が不足しているのかを確認する画像を拡大するICON外来のプログラムICON手帳患者さん向けの「ICON手帳」も作成しました。これは患者さんが症状、運動量(万歩計歩数)、アクションプランなどを毎日記載していくものです。これにより患者さんは、客観的に症状の経過や運動量を確認することができます。また、ICON登録診療所を受診した際、この手帳をかかりつけ医に見せます。かかりつけ医は手帳の内容を確認し、治療介入することとなっています。医師が内容をチェックすることで、COPDの状態把握とともに増悪リスクも早期発見できる訳です。ICON手帳常に改良を続け、近々に改訂版がでる予定これらICON活動の結果はどのようなものでしょうか。当院に入院した増悪期患者さんの治療内容や転帰をみてみると、COPDの診断確定はICON登録施設からの紹介患者さんに多く、適切な治療の実施率もICON登録施設の方が高かったという結果が出ており、ICON活動が効果を現していることがわかりました。画像を拡大する禁煙を含む適切な安定期治療COPDの連携のノウハウCOPDには、GOLDや日本呼吸器学会COPDガイドラインなどの明確な指針があります。加えて、かかりつけ医、基幹病院、リハビリ病院などさまざまなスペシャリストが関与する循環型連携ですので、連携はやりやすいといえます。また、スタッフのモチベーションが上がります。教育は看護士、吸入指導は薬剤師、リハビリは療法士というように、それぞれの役割が必須かつ重要であるため張り合いがでるようです。また、潜在患者が多く、早期発見が容易で早期治療が効果的、診療所で定期的な治療されている疾患がCOPD併存症として多く存在するなど、連携は診療所にもメリットがあります。とはいえ、連携に対していくつかのコツはあると思います。私たちもICONの立ち上げにあたっては、先行してCOPD連携で成功していた前橋赤十字病院や草加市立病院の医師、看護師から連携立ち上げや運用のコツを学び、「石巻COPD Day」の結果報告会やわが国第一人者による複数回のCOPD講演会を開催するなど石巻地域におけるCOPD診療とその連携の重要性について医師の啓発を行いました。また、世話人の選出にあたっては、専門医・非専門医に加えて、看護師、療法士、薬剤師にその間口を広げています。さらに、さまざまな施策については、プレ運用を重ね時間をかけて作っていきました。COPDの連携では、地域特性に合わせた展開が重要だと思われます。石巻は呼吸器の医療資源が少ないため全面的な連携を行っていますが、増悪にポイントを絞った前橋の連携のように、東京や仙台などの都会でもそれぞれの連携方法があると思います。さらに、メディカルスタッフの役割が大きな疾患ですので、メディカルスタッフを信頼し、頼み、任せるという姿勢が重要だと思います。今後の課題60施設登録はあるものの、施設間の温度差はあります。ICON手帳のチェックなど診療所の介入が少ない患者さんは理解度が低く、再教育が必要になることも多く、医師の介入は重要です。いかにしてお忙しい診療所の先生方に介入していただくか、講演会参加の呼びかけ、かかりつけ医での待ち時間を利用した事務員、看護師による患者指導なども検討しています。なかなか進まない早期発見の対策も必要です。スパイロメトリー検査は医師だけでなく看護師への教育が重要であることから、希望する施設にはメーカーに教育に出向いてもらうなどの介入も検討しています。また、6秒量が測れる携帯型スパイロメトリーの活用も検討しています。この機器は診療点数がとれない反面、患者さんの金銭負担がなく医師も勧めやすいので、COPDが疑われる方にベッドサイドで手軽に使える呼吸機能検査にならないかと考えています。そして、現在IPAG質問表を用いていますが、もっと簡単な質問票を検討中です。看護師の指導に診療報酬がつかなかったり、COPD連携の診療報酬のメリットが多くないなど課題も多くあります。しかし、ICONではCOPDが疑われたら間違いを恐れず送っていただくようお願いしています。COPDでなくとも、間質性肺炎など重大な疾患や心臓疾患などが見つかることもあります。これからも、COPDの早期発見、早期介入が実現するよう間口を広げていきたいと思います。6秒量が測れる簡易スパイロメトリー写真は「ハイ・チェッカー」提供:宝通商株式会社

10339.

第3世代バイオリムス溶出性ステントの有効性・安全性/Lancet

 第3世代の生分解性ポリマーを使用したバイオリムス溶出性ステントは、第1世代のシロリムス溶出性ステントと比較して、1年フォローアップ時点の臨床アウトカムを改善しなかったことが、デンマーク・Aarhus大学病院のEvald Hoj Christiansen氏らによる非劣性試験SORT OUT Vの結果、報告された。第3世代の生分解性ポリマー薬剤溶出性ステントは、第1世代の永続性ポリマーを使用した薬剤溶出性ステントと比べてステント血栓症のリスクを低下する可能性が示されていた。Lancet誌オンライン版2013年1月30日号掲載報告より。 第1世代シロリムス溶出性ステントと安全性・有効性を比較 研究グループは住民ベースにおいて、生分解性ポリマー・バイオリムス溶出性ステントの効果を永続性ポリマー被覆のシロリムス溶出性ステントと比較することを目的とした。 SORT OUT V試験は、多施設共同全来院者による無作為化非劣性試験で、デンマーク西部の3施設で行われた。適格患者は、慢性安定性冠動脈疾患または急性冠症候群を有し、1つ以上の冠動脈病変(径狭窄率>50%)がある18歳以上の者とした。 被験者はコンピュータにより無作為化され、生分解性ポリマー・バイオリムス溶出性ステント(ノボリ、テルモ製)または永続性ポリマー・シロリムス溶出性ステント(Cypher Select Plus, Cordis, Johnson & Johnson,Warren製)を受ける群に割り付けられた。 主要エンドポイントは9ヵ月時点の安全性(心臓死、心筋梗塞、確認されたステント血栓症)と有効性(血行再建)の複合アウトカムとし、intention to treat解析にて評価した(非劣性マージン0.02)。 1年時点での臨床アウトカムの改善認められず 2009年7月~2011年1月に、バイオリムス溶出性ステント群に1,229例(病変数1,532)が、シロリムス溶出性ステント群に1,239例(病変数1,555)が無作為化され追跡された。患者1例は移住のため追跡不能であった。 intention to treat解析の結果、主要エンドポイントを達成したのは、バイオリムス溶出性ステント群50例(4.1%)、シロリムス溶出性ステント群39例(3.1%)だった。リスク差は0.9%(95%CI上限値:2.1%)であった。 安全性について、12ヵ月時点のステント血栓症の発生が、バイオリムス溶出性ステント群(9例・0.7%)のほうがシロリムス溶出性ステント群(2例・0.2%)よりも有意に高率だった(リスク差:0.6%、95%CI:0.0~1.1、p=0.034)。 またper-protocol解析の結果、主要エンドポイントを達成したのは、バイオリムス溶出性ステント群は1,193例のうち45例(3.8%)であり、シロリムス溶出性ステント群は1,208例のうち39例(3.2%)であった。リスク差は0.5%(95%CI上限値:1.8%)だった(非劣性のp=0.03)。 以上を踏まえて著者は、「1年時点で、バイオリムス溶出性“ノボリ”ステントは、第1世代のシロリムス溶出性ステントと比べて臨床アウトカムを改善しなかった。バイオリムス溶出性ステントを日常診療に用いることを推奨するには、長期データを入手する必要があるだろう」と結論している。

10340.

プライマリ・ケアにおける脊椎MRI検査、その意義に疑問符

 プライマリ・ケアで脊椎MRI検査の利用が増加しているが、MRI所見とその後の診療との関連についてはほとんど知られていない。カナダ・マックマスター大学/Institute for Clinical Evaluative SciencesのJohn J. You氏らは、プライマリ・ケアで脊椎MRI検査を受けた患者のうち半数近くが手術評価のため整形外科または神経外科に紹介されるが、その大半は手術を受けていないことを、後ろ向き研究により明らかにした。「プライマリ・ケアにおけるMRI検査はその後の手術の要否を判別できておらず、脊椎の愁訴を有する患者を評価する代替法を検討すべきであることが示唆される」とまとめている。Spine誌2013年1月1日号の掲載報告。 本研究の目的は、プライマリ・ケア医の指示による腰仙椎または頸椎MRI検査後の診療について調査することである。 カナダ・オンタリオ州において脊椎MRI検査を受けた外来患者の医療記録と保険データベースを分析した。 主な結果は以下のとおり。・プライマリ・ケア医の指示で腰仙椎のMRI検査を受けた647例のうち、整形外科医もしくは神経外科医の診察を受けた患者は288例(44.5%)で、その後3年以内に手術を受けた患者は42例(6.5%)であった。・同様に頸椎のMRI検査を受けた373例のうち、164例(44.0%)は整形外科医もしくは神経外科医の診察を受けたが、3年以内に手術を受けた患者はいなかった。・腰仙椎のMRI検査で重度の椎間板ヘルニアまたは脊柱管狭窄症を認めた患者は、その後手術を受ける可能性が高かった[それぞれ尤度比は5.62(95%CI:2.64~12.00)および2.34(同:1.13~4.85)]。・MRI検査で異常所見が認められた患者の多くは、手術を受けていなかった。一方で、MRI検査で異常所見がなければ、その後の手術の可能性が有意に低いということも示されなかった。【おすすめコンテンツ】~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケースレポート「不適切なオピオイド処方例(肩腱板断裂手術後難治性疼痛)」ケース解説

検索結果 合計:11792件 表示位置:10321 - 10340