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妊娠糖尿病への早期メトホルミンvs.プラセボ/JAMA

 妊娠糖尿病に対する早期のメトホルミン投与は、プラセボ投与との比較において、インスリン投与開始または32/38週時空腹時血糖値5.1mmol/L以上の複合アウトカム発生について、優位性を示さなかった。アイルランド・ゴールウェイ大学のFidelma Dunne氏らが、プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果を報告した。ただし、副次アウトカムのデータ(母親のインスリン開始までの時間、自己報告の毛細血管血糖コントロール、妊娠中の体重増加の3点)は、大規模試験でさらなるメトホルミンの研究を支持するものであったという。妊娠糖尿病は、妊娠期に多い合併症の1つだが、至適な治療は明らかになっていない。JAMA誌オンライン版2023年10月3日号掲載の報告。妊娠28週までの妊娠糖尿病の妊婦を対象に試験 研究グループは、アイルランドの2ヵ所の医療機関で試験を行った。2017年6月~2022年9月に、世界保健機関(WHO)基準2013で妊娠糖尿病の診断を受けた妊娠28週以前の被験者510人(妊娠535件)を登録し、産後12週間まで追跡した。 被験者は2群に割り付けられ、通常ケアに加え、一方にはメトホルミン(最大用量2,500mg)を、もう一方にはプラセボを投与した。 主要アウトカムは、出産前のインスリン投与開始もしくは妊娠32週または38週時の空腹時血糖値が5.1mmol/L以上だった。メトホルミン群の新生児は小さい傾向 被験者510人(平均年齢34.3歳)における妊娠535件を無作為化した。 主要複合アウトカムの発生率は、メトホルミン群が56.8%(妊娠150件)、プラセボ群が63.7%(妊娠167件)だった(群間差:-6.9%、95%信頼区間[CI]:-15.1~1.4、相対リスク:0.89、95%CI:0.78~1.02、p=0.13)。 事前に規定した母親に関する6つの副次アウトカムのうち、メトホルミン群で優位だったのは、インスリン開始までの時間、自己報告の毛細血管血糖コントロール、妊娠中の体重増加の3つだった。 新生児に関する副次アウトカムは、メトホルミン群で新生児が小さい傾向(平均出生体重が低い、出生体重4kg以上の割合が低い、在胎週数による大きさ分布で90パーセンタイル超の割合が低い、頂踵長が小さい)がみられた。一方で、新生児集中治療を要する割合、呼吸補助を要する呼吸困難、光線療法を要する黄疸、重大な先天奇形、新生児低血糖、5分間Apgarスコア7未満の割合については、両群で有意差はなかった。

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CKDの腎と心血管疾患への悪影響はさらに広い範囲(解説:浦信行氏)

 JAMA誌において、2,750万人余りを対象としたメタ解析の結果、CKDの悪影響は従来報告されている全死因死亡、心血管死、腎代替療法を要する腎不全、脳卒中、心筋梗塞、心不全、急性腎障害にとどまらず、あらゆる入院、心房細動、末梢動脈疾患にまで及ぶことが報告された。結果の詳細はジャーナル四天王のニュース記事をご覧いただきたいが、本研究はそれ以外にもいくつかの重要な成績が示されている。 尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)とeGFRをクレアチニンのみで評価したものと、クレアチニンとシスタチンCで評価したものの各々の有害事象のリスクを対比すると、全体の傾向はヒートマップ上では同様であるが、クレアチニンのみで評価したeGFRでの結果は少し感度が悪い印象を受ける。eGFR各階層での有害事象のハザード比を表した図3においても、確かにクレアチニンのみで評価したeGFRでのハザード比の変化の傾きは緩徐であり、各有害事象に対する感度が対比上は低いと考えられる。かつ、各有害事象のハザード比は、クレアチニンでのeGFRは90~105を底値としてU字型を描いている。シスタチンCを加えたものではこのような結果を示していない。これはおそらく高齢者主体のサルコペニア・フレイル症例のリスク上昇を表すものと考えられる。したがって、症例によってはシスタチンCによるeGFRの評価を加えることが必須である。 UACRは30未満が正常範囲であるが、10未満の正常と10~29の正常高値で比較すると、正常高値ですでにリスクが高くなっている。すなわち、正常と考えられる範囲でもすでに有害事象に対する認識を持つ必要があるのかもしれない。わが国では保険診療上、尿アルブミンの評価は糖尿病症例に限られ、それ以外は尿蛋白で評価しなければならない。尿蛋白は尿細管由来のものも含むので同様の評価が可能かは不明であるが、注目すべき結果と考える。

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筋肉量の多寡にかかわらずタンパク質摂取量が高齢者の全死亡リスクに関連

 日本人高齢者を対象とする研究から、タンパク質の摂取量が多いほど全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが低いという関連が示された。この関連は、筋肉量や血清アルブミンなどの影響を統計学的に調整してもなお有意であり、独立したものだという。東京都済生会中央病院糖尿病・内分泌内科の倉田英明氏(研究時点の所属は慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科)らの研究によるもので、詳細は「BMC geriatrics」に8月9日掲載された。 タンパク質摂取量と健康リスクとの関連については、動脈硬化や腎機能、またはサルコペニア(筋肉量・筋力の低下)、フレイル(要介護予備群)などの観点から研究されてきている。しかし、食文化の違いによるタンパク源の相違などの影響のため、それらの研究結果は一貫性が見られない。また、国内発の知見はいまだ少なく、かつサルコペニアやフレイルリスクを有する高齢者の筋肉量とタンパク質摂取量との関連を検討した研究が主体であって、地域在住一般高齢者の死亡リスクとの関連は明らかになっていない。 以上を背景として倉田氏らは、慶應義塾大学と川崎市が共同で行っている「川崎元気高齢者研究(Kawasaki Aging and Wellbeing Project;KAWP)」のデータを用いて、この関連を縦断的に解析した。KAWPは、日常生活動作(ADL)が自立した身体障害のない85~89歳の地域住民対象前向きコホート研究として2017年にスタート。今回の研究ではKAWP参加者のうち、簡易型自記式食事歴質問票(BDHQ)を正しく回答でき、認知機能の低下(MMSE24点未満)がなく、解析に必要なデータに欠落のない833人を対象とした。主な特徴は、平均年齢86.5±1.36歳、女性50.6%、BMI23.1±3.16で、骨格筋量指数(SMI)は7.33kg/m2、血清アルブミンは4.16±0.28mg/dL。BDHQにより把握された摂取エネルギー量は2,038±606kcal/日であり、その17.0±3.18%をタンパク質から摂取していた。 摂取エネルギー量に占めるタンパク質の割合の四分位で全体を4群に分類して比較すると、その割合が高い群ほど高齢(傾向性P=0.042)で女性が多い(同0.002)という有意な関連が認められた。一方、BMI、腎機能(eGFR)やそのマーカー(BUN、尿アルブミン)、心血管疾患(CVD)既往者の割合には有意差がなかった。血清アルブミンは傾向性P値が0.056と非有意ながら、タンパク質エネルギー比が高い群で高値となる傾向にあった。SMIについては全体解析では、タンパク質エネルギー比が高い群ほどSMIが低いという負の有意な関連があったが(傾向性P=0.018)、性別に解析すると、男性、女性ともに非有意となった。 タンパク質の摂取源に着目すると、タンパク質エネルギー比が最も低い(平均13.1%)第1四分位群は、魚の摂取量が20.3g/1,000kcalであるのに対して第4四分位群(同21.2%)は68.6g/1,000kcalと、約3.5倍であった。タンパク質以外の主要栄養素については、タンパク質エネルギー比が高い群ほど炭水化物摂取量が少なく、脂質の摂取量が多かった(いずれも傾向性P<0.001)。 平均1,218日(約3.5年)の観察で、89人の死亡が記録されていた。タンパク質エネルギー比の第1四分位群を基準として、共変量(年齢、性別、SMI、血清アルブミン、教育歴、がん・CVDの既往)を調整したCox回帰モデルにより、タンパク質摂取量が多いほど全死亡リスクが低いという有意な関連が明らかになった。具体的には第4四分位群ではハザード比(HR)0.44(95%信頼区間0.22~0.90)と56%低リスクであり、全体の傾向性P値が0.010だった。共変量のSMIをBMIに置き換えた場合も結果は同様だった。 魚の摂取量の多寡の影響に着目して、その四分位数で4群に群分けして検討すると、第4四分位群で有意なリスク低下が認められたが〔HR0.48(95%信頼区間0.23~0.97)〕、全体の傾向性は非有意だった(傾向性P=0.13)。その他、肉類、卵、乳製品に分けて行った解析からは、全死亡リスクとの有意な関連は示されなかった。 著者らは、本研究が観察研究であるために解釈に限界があるとした上で、「ADLが自立している85歳以上の高齢者では、タンパク質摂取量が多いことが全死亡リスクの低下と関連しており、この関連は筋肉量にかかわらず認められた」と結論付けている。また、タンパク質エネルギー比が高い群ほど魚の摂取量が多かったことから、「魚には抗炎症作用や発がん抑制作用が報告されているn-3系多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、健康に対して多面的なプラス効果を期待できる。高齢アジア人の健康アウトカム改善には、魚を中心とするタンパク質の摂取量を増やすことも重要なポイントではないか」と述べている。

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歯科医院で定期的な口腔メンテナンスを受けている人は歯を失いにくい

 一般歯科医院で歯科衛生士による口腔メンテナンスを受けている人を20年以上追跡した研究から、決められたスケジュール通りに受診している人ほど歯を失いにくいという有意な関連のあることが明らかになった。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔疾患予防学分野の安達奈穂子氏らの研究によるもので、詳細は「International Journal of Dental Hygiene」に8月27日掲載された。 口腔メンテナンス受診率が高いほど歯の喪失が少ないことを示唆する研究結果は、既に複数報告されている。ただし、それらの研究は主として大学病院や歯周病専門歯科という限られた環境で行われた研究の結果であり、大半の地域住民が受診する一般歯科における長期的な歯科受療行動と、歯の喪失との関連については知見が少ない。これを背景として安達氏らは、一般歯科医院の患者データを用いて、以下の遡及的な解析を行った。 この研究の対象は、山形県酒田市にある歯科医院に20年以上継続して受診しており、初診時に16~64歳だった395人(男性29.9%)。より高度な治療が必要とされ専門施設へ紹介された患者や、う蝕(むし歯)が進行しやすいエナメル質形成不全の患者は除外されている。 解析対象全員に対して、むし歯や歯周病などに対する初期治療が行われ、一定の基準(歯肉出血の箇所が10%未満、深さ4mm以上の歯周ポケットが10%未満、プラークスコアが15%未満など)に到達した以降は、歯科衛生士による定期的なメンテナンスが行われた。メンテナンスの頻度は、深さ4mm以上の歯周ポケットがある場合は3カ月ごと、それ以外は半年ごとに行われた。メンテナンスの内容は、口腔衛生指導、歯石除去、歯面清掃、フッ化物歯面塗布などの一般的なものだった。 ベースライン時点の主な特徴は、平均年齢41.4±11.2歳、残存歯数25.4±3.7本、むし歯の経験歯数〔未処置のむし歯、詰め物などの処置済み歯、喪失歯の合計本数(DMFT)〕16.4±6.4本、深さ4mm以上の歯周ポケットを有する割合8.2±12.4%、歯肉出血の割合13.4±13.1%で、喫煙者が11.1%、糖尿病患者が3.0%含まれていた。前記のメンテナンススケジュールに対して通院遵守率が75%以上の患者を「高遵守」、75%未満を「低遵守」として二分すると、前者が36.2%、後者が63.8%を占めた。両群のベースラインデータを比較すると、喫煙者率が高遵守群で有意に低いことを除いて(7.0対13.5%、P=0.048)、上記の全ての指標および歯槽骨吸収率に、群間の有意差は認められなかった。なお、各群の通院遵守率の平均は、高遵守群が85.8±7.0%、低遵守群は54.9±13.5%だった。 平均23.2±2.1年の観察期間中に、高遵守群の37.8%、低遵守群の72.2%が歯を1本以上失っていた。また、DMFTの増加は同順に17.5%、39.7%だった。1年当たりの変化で比較すると、歯の喪失は0.05、0.11本/年、DMFTの増加は0.02、0.05本/年であり、いずれも低遵守群の方が有意に多かった(ともにP<0.001)。 次に、多重ロジスティック回帰分析にて、歯の喪失に独立して関連のある因子を検討。その結果、ベースライン時点での喫煙〔オッズ比(OR)2.67(95%信頼区間1.01~7.05)〕、DMFT〔1本多いごとにOR1.09(同1.04~1.14)〕、歯槽骨吸収率〔軽微を基準として中等度以上でOR4.11(2.09~8.09)〕とともに、通院遵守率〔高遵守群を基準として低遵守群はOR6.50(3.73~11.32)〕が抽出された。年齢や性別、糖尿病、観察期間、ベースライン時の4mm以上の歯周ポケットの割合および歯肉出血の割合は、有意な関連がなかった。 続いて、通院遵守率を75%以上、50~75%未満、50%未満の3群に分けて、多重ロジスティック回帰分析を施行すると、歯の喪失リスクは、遵守率75%以上の群(患者割合は36.2%)を基準として、50~75%未満の群(同43.0%)はOR5.43(3.02~9.74)、50%未満の群(20.8%)はOR10.55(4.87~22.85)となり、通院遵守率が下がるにつれて歯の喪失リスクが上昇することが確認された。 著者らは本研究の限界点として、20年以上の観察が不可能だった患者の転帰が評価されていないこと、観察期間中に他院で治療を受けていた場合の影響が考慮されていないことなどを挙げた上で、「地域の一般歯科医院での長期にわたるメンテナンススケジュールが遵守された場合、歯の喪失リスクが抑制される可能性が示された」と結論付けている。 なお、過去の同様の研究の中には、通院遵守率が高いほど歯を失う確率が高いという、本研究とは反対のデータがあるが、調整因子にベースライン時のDMFTが含まれていない、観察期間が本研究より短いなどの差異があり、それらが結果の違いとなって現れた可能性があるとの考察が述べられている。

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英語で「任せます」は?【1分★医療英語】第101回

第101回 英語で「任せます」は?《例文1》Please leave it to me.(私に任せてください)《例文2》I’ll leave it to you whether you start the medication today or not.(この薬を今日から飲み始めるかどうかは、あなたにお任せします)《解説》“leave”には「離れる」や「置いておく」といった意味がありますが、これに関連して「任せる」という意味もあります。同じく“leave”の動詞を使って「仕事を託す」といったイメージで、”I'll leave it to you.” または“I’ll leave it in your hands.”(あなたにお任せします)といったように使います。また、何か仕事を進めてもらうような状況では、“Please go ahead.”(どうぞ進めてください)という表現もよく使われます。また、「仕事を引き継いでもらう」といった状況では、“Over to you.”(よろしく)という表現もよく使われますが、目上の人にはやや失礼に当たるので注意しましょう。「任せる」という意味の表現には、“It’s up to you”というものもあります。これは「あなた次第です」と訳されることが多いですが、言い方によっては突き放した表現にも聞こえてしまうため、使う際には注意が必要です。上の表現にも出てきた“hand”を使って「仕事を託す」というイメージで、“It’s in your hands now.”(今からお任せします)という言い方も可能です。講師紹介

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糖尿病患者の下肢切断に関連する因子を特定

 糖尿病と新規診断された患者では、喫煙や身体活動量の少なさに加えて、高齢、男性、離婚などが下肢切断(lower-limb amputation;LLA)の潜在的リスク因子である可能性が明らかになった。オレブロ大学(スウェーデン)のStefan Jansson氏らが行った研究の結果であり、詳細は欧州糖尿病学会年次総会(EASD2023、10月2~6日、ドイツ・ハンブルク)で発表される予定。 糖尿病患者はLLAリスクが高いことが知られているが、そのリスク因子は十分に明らかになっているとは言えない。これには、LLAが糖尿病の主徴である高血糖だけでなく、合併症である血管障害、神経障害、易感染や、年齢、罹病期間、喫煙習慣、居住環境(同居者の有無)、医療環境など、さまざまな因子が関与して発症・進行することが一因として挙げられる。これを背景としてJansson氏らは、検討対象を糖尿病と新たに診断された集団に絞り込み、人口統計学的因子、社会経済的因子、生活習慣関連因子、および医療介入時の臨床評価指標を考慮して、LLAリスクを検討した。 研究には、スウェーデン全体の医療情報が登録されている国家レジストリが利用された。2007~2016年に同国内で新たに糖尿病と診断され、LLA既往のない18歳以上の患者を、LLA施行、移住、死亡、または2017年の最終追跡日のいずれかの最も早い日まで観察を継続。欠損データが40%を超える症例を除外し、6万6,569人を解析対象とした。 中央値4年の追跡で133人にLLAが施行されていた。全ての交絡因子を調整後、高齢〔ハザード比(HR)1.08(95%信頼区間1.05~1.10)〕、男性〔HR1.57(同1.06~2.34)〕、離婚〔HR1.67(1.07~2.60)〕は、LLA施行と有意な正の関連が認められた。ベースライン時のLLAリスクに関与する病態の存在も、有意な正の関連が確認された。例えば、神経障害または血管障害がある場合はHR4.12(2.84~5.98)、創傷の既往はHR8.26(3.29~20.74)、進行性の重篤な下肢疾患はHR11.24(4.82~26.23)だった。また、食事療法のみで血糖管理されている群を基準として、インスリン治療が行われていた群はHR2.03(1.10~3.74)だった。 生活習慣関連因子の中では、喫煙〔HR1.99(1.28~3.09)〕や身体活動の頻度が週1回未満〔毎日の群を基準としてHR2.05(1.30~3.23)〕が、LLA施行と有意な正の関連のある因子だった。その一方で、肥満は負の関連因子だった〔普通体重を基準としてHR0.46(0.29~0.75)〕。HbA1cや高血圧は、LLA施行と有意な関連がなかった。 以上を基に著者らは、「生活習慣関連因子はLLA施行と強い関連があり、身体活動量の増加や低体重を回避すること、および禁煙などが、LLAリスク軽減のための効果的な介入となる可能性がある」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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減量目的のGLP-1作動薬、膵炎・腸閉塞・胃不全麻痺のリスク増加か/JAMA

 GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として用いられるが、体重減少の目的にも用いられている。糖尿病患者において消化器有害事象のリスクが増加していることが報告されており、2023年9月22日に米国食品医薬品局(FDA)よりセマグルチド(商品名:オゼンピック)について、腸閉塞の注意喚起が追加された1)。しかし、GLP-1受容体作動薬の体重減少効果を検討した臨床試験はサンプル数が少なく、追跡期間が短いため、これらの有害事象を収集する試験デザインにはなっていない。そこで、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMohit Sodhi氏らの研究グループは、米国の大規模保険請求データベースを用いて、実臨床における体重減少目的でのGLP-1受容体作動薬の使用と消化器有害事象の関連を検討した。その結果、体重減少目的でのGLP-1受容体作動薬の使用は、bupropion・naltrexone配合剤と比較して、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺のリスクを増加させた。本研究結果は、JAMA誌オンライン版2023年10月5日号にResearch Letterとして掲載された。GLP-1作動薬群は膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺のリスクが有意に増加 本研究では、米国のPharMetrics Plusデータベースを使用して、GLP-1受容体作動薬(セマグルチド、リラグルチド)使用者(GLP-1群)、bupropion・naltrexone配合剤使用者(対照群)を抽出し、消化器有害事象(胆道系疾患、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺)の発現を検討した。なお、コホートへの登録前90日間または登録後30日間に肥満を有していた患者を対象とし、糖尿病の診断または糖尿病治療薬の使用があった患者を除外した。 体重減少目的でのGLP-1受容体作動薬の使用と膵炎など消化器有害事象の関連を検討した主な結果は以下のとおり。・本研究のコホートにおいて、リラグルチド使用患者は4,144例、セマグルチド使用患者は613例、bupropion・naltrexone配合剤使用患者は654例であった。・GLP-1群は対照群と比較して、胆道系疾患の有意なリスク増加は認められなかったが、膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺のリスクが有意に増加した。GLP-1群の対照群に対する調整ハザード比(aHR)、95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 -胆道系疾患:1.50、0.89~2.53 -膵炎:9.09、1.25~66.00 -腸閉塞:4.22、1.02~17.40 -胃不全麻痺:3.67、1.15~11.90・感度分析において、解析に非肥満患者のGLP-1受容体作動薬使用例を含めても、結果は同様であった。aHR、95%CIは以下のとおり。 -胆道系疾患:1.20、0.85~1.69 -膵炎:5.94、1.90~18.60 -腸閉塞:2.44、1.00~5.95 -胃不全麻痺:2.35、1.20~4.58・感度分析において、BMIは上記の結果に影響を及ぼさないことが示唆された。  本研究結果について、著者らは「膵炎、腸閉塞、胃不全麻痺はまれな有害事象ではあるが、GLP-1受容体作動薬が広く用いられていることを考えると、体重減少を目的としてGLP-1受容体作動薬を使用する患者は、注意深く観察する必要がある」と考察した。

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高血圧治療補助アプリで8mmHgも降圧、治療効果のある患者とは

 CureApp HT高血圧治療補助アプリ(以下、治療アプリ)が保険収載、処方が開始してから1年が経過した。現在までの治療効果について、株式会社CureAppが「スマート降圧療法RWD発表記者会見」において、全国の医療機関で処方された治療アプリに入力された血圧データの解析結果を説明した。 本データ解析によると、全体集団における12週後の収縮期血圧の変化は起床時では8.8mmHg、就寝前では8.5mmHgの低下がみられた。これについて同社取締役の谷川 朋幸氏は「治験で検証されていなかった65歳以上の患者を含む、幅広い患者集団において薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによるスマート降圧療法の効果が示された」とコメント。薬事承認・保険適用を受けた治療アプリによる実臨床での降圧データの公開は世界初である。 本試験の概要ならびに結果は以下のとおり。<試験概要> 高血圧症向け治療アプリへの入力データを用いた後ろ向き研究で、以下の条件で実施された。対象者:2022年9月~2023年4月にアプリを処方された患者家庭血圧を少なくとも1回入力した患者情報の研究利用を拒否する旨の意思表示を行っていない患者主要評価項目:高血圧症向け治療アプリ使用開始(ベースライン)後12週間での降圧量(ベースラインの週およびアプリ使用開始12週後の週においてそれぞれ5日以上血圧を入力した患者が対象)解析方法:年齢、アプリ使用開始時点での服薬の有無、塩分チェックシートスコア、BMIでの層別解析結果:・解析対象者は554例で女性は263例(55.1%)だった。・アプリ使用者の平均年齢は55.1歳(範囲:22~87歳)で、そのうち65歳以上は115例(21%)だった。・薬物治療を行っていたのは248例(45%)であったが、その薬剤の種類や用量は不明であった。・アプリ使用開始後12週間での全体集団における収縮期血圧の降圧変化は、起床時は-8.8mmHg、就寝前は-8.5mmHgだった。・65歳以上での12週後の収縮期血圧変化は、起床時で-11.8mmHg、就寝前で-10.1mmHgだった。・ベースラインでの平均収縮期血圧は起床時が133.6mmHg、就寝前が129.7mmHgで、治験1)時(起床時:149.3mmHg、就寝前:143.3mmHg)より低い傾向にあった。・2023年8月時点で報告対象となる健康被害はみられなかった。―――医師に向き合ってもらえている、この感覚が患者のやる気に 実際に本治療アプリによるスマート降圧療法を行っている野村 和至氏(野村医院)は処方が推奨される患者の特徴や処方経験からみえたことについて語った。同氏は患者13例に処方を行い11例がプログラムを終了(1例中断、1例は導入後一度も使用せず)、そのうち8例が改善を示した。この患者変化について、「医師は患者の入力データをネット接続したPCで確認するわけだが、患者の生活習慣の問題点、配慮すべき心理面などを把握することができる。本治療アプリを通して患者の全体像がみえてくるため、患者の良い所をみつけて褒めることもできた。過去に薬物療法を自己中断していた方でも行動変容に合わせた声かけにより継続することができ、スマート降圧療法で血圧も改善した」と述べ、別の症例では「毎年冬に血圧上昇がみられ降圧薬を増量する患者に対しスマート降圧療法を勧めた結果、2剤服用していた降圧薬のうちCa拮抗薬を中止するに至った。また、それに伴いHbA1cなどの数値にも改善がみられた」といった、驚くべき改善が得られたことを報告した。 一方、治療アプリを処方する際に困った点として、予想以上に血圧低下するケース、スマート降圧療法を求め別の施設から同氏の元へ来院するケースがあったそうで、前者については、「血圧低下時の対処方法を決めておく必要がある」と説明。後者については、かかりつけの医療機関で治療ができないか相談してもらい、難しいようであれば半年間だけスマート降圧療法留学をお願いする」などの工夫を紹介した。 なお、同氏が考える“スマート降圧療法が推奨される”患者像は以下のとおり。 ■推奨される患者像 健康志向の強い人、高血圧症の早期、内服薬に抵抗のある人 ■推奨される併存疾患 メタボリックシンドローム、心不全、腎疾患(運動のみ注意) このほか、減塩、減量、運動が推奨される疾患を有するなど成功モデル・離脱モデルのデータ蓄積に期待 さらに、プログラム終了間近の患者が “終わってしまうのが寂しい”“まだ続けていたい”という感想を漏らしたことに同氏は驚いたそうで、「プログラム上で自身の話を受け止め、病気についてアドバイスしてくれる点が行動変容に効果があるのではないか」と見解を示した。 最後に同氏は、スマート降圧療法は治療効果や治療中断の防止もさることながら、「“やったらできる!”という自己効力感の向上に重要」と強調し、「行動変容モデルを意識した適切なアプローチ、マンネリ化の防止のために、データ蓄積と本治療アプリのアップデートに期待したい」と締めくくった。

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カロリー制限と断続的断食の腸内細菌叢への影響は同等?

 減量を試みる人の腸内細菌叢への影響を、カロリー制限と断続的断食とで比較した研究結果が報告された。3カ月の介入では、どちらも同程度に、腸内細菌叢の多様性を高めたという。米コロラド大学のMaggie Stanislawski氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に8月16日掲載された。 肥満は腸内細菌叢の組成と関連のあることが知られているが、肥満に対する治療介入によって腸内細菌叢がどのように変化するのかや、介入方法が異なると腸内細菌叢の変化のパターンも異なるのかといった点は明らかになっていない。Stanislawski氏らはこれらの点を検討するため、過体重または肥満の成人47人を対象とする介入試験を行った。 研究参加者は年齢が40.9±9.7歳、女性が77%で、BMIは33.5±4.5だった。介入に用いたのは、カロリー制限(daily caloric restriction;DCR)または断続的断食(intermittent fasting;IMF)の2種類で、無作為にいずれかを割り当てた。DCR群では1週間の総摂取エネルギー量を最大34%減らすように指示。一方、IMF群では、1週間のうち非連続の3日は摂取エネルギー量を25%として、他の4日は自由に摂取して良いこととした。計算上は、IMF群も1週間の摂取エネルギー量がほぼ-34%となると予測された。 この研究の介入期間は1年間で、現在も進行中。今回の報告は、介入3カ月時点の変化をまとめたもので、十分なデータのそろっている40人を解析対象とした。 介入により、摂取エネルギー量は1,764±338kcal/日から1,284±380kcal/日に減少し、摂取エネルギー量に占める脂質の割合は39±7%から35±5%に低下、タンパク質は17±3%から21±4%に増加し、いずれも有意に変化していた(全てP<0.001)。また、食事の質を表すスコア(healthy eating index;HEI)は、57±12から62±12に有意に改善していた(P=0.022)。なお、食物繊維摂取量は介入前が16±5g/日、3カ月後には14±6g/日であり、有意に減少していた。炭水化物エネルギー比は同順に42±8%、42±7%であり有意な変化がなかった。 腸内細菌叢の多様性は、3カ月の介入で両群ともに有意に改善していた。Stanislawski氏は、「どちらか一方の群の多様性が、別の一群に比べてより大きく改善したということではなく、評価した全ての指標が同等に変化していた」と述べている。 同氏は腸内細菌叢について、「われわれが口にする物は、腸内細菌叢の助けがなければ十分に消化することができない。また腸内細菌叢は、食品に含まれている成分を重要な物質に変化させたり、炎症の抑制や亢進、満腹感の誘発など、体のさまざまな生体プロセスに関与している」と解説。その上で今回の研究結果を基に、「腸内細菌叢への影響という点では、検討した2種類の減量方法に違いはなく、その方法が自分に適していると感じる人にとってはどちらも良い選択肢となり得る」とまとめている。 この報告に対して米国の栄養と食事のアカデミーの元会長であるConnie Diekman氏は、介入期間が短期間に限られていること、かつ因果関係は不明であるという解釈上の留意点を指摘した上で、「両群が腸内細菌叢に与えた影響の多くは、脂質の摂取量が減ったことによるものではないか」との考え方を述べている。また、「腸内細菌叢に関してはいまだ不明点が多く残されており、当面は米連邦政府による『米国人のための食事ガイドライン』を遵守することが優先され、それが腸の健康のメリットにもつながるだろう」と話している。

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有病率の高い欧州で小児1型糖尿病発症とコロナ感染の関連を調査(解説:栗原宏氏)

特徴・新規に出現したウイルスと自己抗体の関連を示した・追跡期間が長く、感染と自己抗体の発現の前後関係を区分できている・SARS-CoV-2抗体以外に、その他の呼吸器感染代表としてインフルエンザ抗体も調査・インフルエンザは著減しており、SARS-CoV-2の影響がメインと考えられる限界・対象は遺伝的ハイリスク群。かなり特殊で結果が一般化しづらい・日本国内での発症率は調査地域である欧州よりも格段に低い・因果関係が逆である可能性:自己抗体が発現する子供がコロナに感染しやすい? 本研究で対象となっている小児1型糖尿病は、発症率に人種差があり白人に非常に多い。欧州全般に発症者は多く、とくに多い北欧諸国、カナダ、イタリアのサルディニアでは年間約30/10万人と日本(1.4~2.2/10万人)に比して10倍以上の違いがある。1歳ごろに膵島細胞への自己抗体が発生するピークがあり、10年以内に臨床的な糖尿病を発症する。自己抗体の発生原因は不明ながら、呼吸器系ウイルス感染が関与している可能性があるとされている。 本研究はPrimary Oral Insulin Trial(POINT)のデータが使用されている。2018年2月~2021年3月のCOVID-19拡大前からパンデミック期にかけて、欧州5ヵ国の複数施設で、遺伝的に1型糖尿病リスクが高い乳児(4~7ヵ月)1,050人を対象として、SARS-CoV-2感染と膵島自己抗体の発現の時間的関係を明らかにするために実施されたコホート研究である。このうち、実際に対象となったのは885人である。 本研究は、SARS-CoV-2という新規に出現した疾患と自己抗体の出現との関連を自己抗体発現の可能性が高い乳児を対象として調査した点が特徴である。性別、年齢、国に調整後のSARS-CoV-2抗体陽性例における膵島自己抗体陽性のハザード比は3.5(95%信頼区間[CI]:1.6~7.7、P=0.002)となっており、遺伝子的ハイリスク群ではSARS-CoV-2感染はリスク因子であることが示されたことは意義が大きいと思われる。 SARS-CoV-2抗体出現後に自己抗体が発現する割合が有意に高いことが示された。一方、他のウイルス感染評価目的に実施されたインフルエンザA(H1N1)抗体では自己抗体発現はなかった。少なくともこの対象群においては、呼吸器系ウイルス全般で自己抗体が出現するわけではないことが示唆された。 自己抗体の出現がすぐさま臨床的1型糖尿病発症を意味するわけではない点には留意が必要である。SARS-CoV-2感染と膵島自己抗体出現には関連があるが、感染後の短期間での急激な糖尿病発症率の増加には影響しない可能性が高い。将来的な1型糖尿病発症率については当該地域でフォローが必要である。 前述のとおり、小児1型糖尿病は遺伝子的な問題で人種差が大きい。本研究はその中でもさらに遺伝子的なハイリスク群を対象としており、その結果は広く一般化できるものではない。日本国内では比較的まれな疾患であり、SARS-CoV-2感染の影響は非常に小さいと推測されるが、否定しうるものでもない。今後の本邦での小児1型糖尿病の発症率の推移をみていく必要がある。

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肥満を合併したEFの保たれた心不全に対するGLP-1受容体作動薬の効果―STEP-HFpEF試験(解説:加藤貴雄氏)

 週1回、2.4mgのセマグルチド皮下注射(GLP-1受容体作動薬)は、長期体重管理薬として承認されており、過体重または肥満の患者において大幅な体重減少をもたらし、心代謝リスク因子に良好な影響を及ぼすことがこれまでに示されている(Wilding JPH, et al. N Engl J Med. 2021;384:989-1002., Kosiborod MN, et al. Diabetes Obes Metab. 2023;25:468-478.)。 今回、ESC2023で発表され、NEJM誌に掲載されたSTEP-HFpEF試験は、BMI≧30.0kg/m2で心不全症状(NYHA class II-IV)があり、かつ、左室駆出率(LVEF)≧45%で、糖尿病の既往がない患者を対象に、週1回のセマグルチド(2.4mg)またはプラセボを52週間投与した二重盲検無作為割り付け試験である。主要評価項目は、心不全患者のQOLを評価する指標であるカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)の点数のベースラインからの変化と体重のベースラインからの変化。副次評価項目に、複合心血管イベント、6分間歩行距離やCRPの変化が設定されていた。 結果は、セマグルチド投与群でKCCQの点数の改善を認め、体重はセマグルチド投与群 -13.3%、プラセボ群-2.6%と有意な低下、6分間歩行距離は21.5m改善と1.2m改善、CRPの低下も-43.5%と-7.3%であり、また、探索的に設定されたNT-proBNPも-20.9%と-5.3%(ぞれぞれ、セマグルチド投与群・プラセボ群)であった。以上の結果から、心不全のサロゲートマーカーの改善を伴って、体重減少・自覚症状の改善・6分間歩行距離の延長が得られており、CRPの減少など内臓脂肪の減少を示唆する機序も推測される結果であった。 多彩な表現型を持つHFpEFであるが、1つの表現型(肥満+HFpEF)の患者群に有用性が示唆される結果である。今後の、アウトカム研究の結果が待たれるところである。本研究の平均BMIは37kg/m2であった。WHOの肥満の基準が組み入れ基準のBMI≧30.0kg/m2であるが、日本人の肥満の基準が25kg/m2であり、本試験を日本の臨床に当てはめた場合、どのくらいの肥満のHFpEF患者に有効な可能性があるかについても、研究が待たれるところである。

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早期静脈栄養なしのICU患者、厳格な血糖コントロールは有用か?/NEJM

 集中治療室(ICU)に入室した早期静脈栄養を受けていない重症患者では、非制限的で寛容な血糖コントロールと比較して厳格な血糖コントロールは、ICUでの治療を要した期間や死亡率に影響を及ぼさないことが、ベルギー・ルーベン・カトリック大学病院のJan Gunst氏らが実施した「TGC-Fast試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2023年9月28日号に掲載された。ベルギーの医師主導型の無作為化対照比較試験 TGC-Fast試験は、ベルギーの2つの大学病院と1つの地区病院の11のICUで実施された医師主導型の無作為化対照比較試験であり、2018年9月~2022年8月に参加者のスクリーニングを行った(Research Foundation-Flandersなどの助成を受けた)。 早期静脈栄養を受けていないICU入室患者を、非制限的血糖コントロール群または厳格血糖コントロール群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。非制限的血糖コントロール群では、血糖値が215mg/dL(11.9mmol/L)を超えた場合にのみインスリンの投与を行い、厳格血糖コントロール群では、LOGICインスリンアルゴリズムを用い、目標血糖値を80~110mg/dL(4.4~6.1 mmol/L)に設定した。静脈栄養は両群とも、1週間実施しなかった。 主要アウトカムは、ICUでの治療を要した期間とし、ICUから生存退室するまでの期間に基づいて算出した。安全性アウトカムは90日死亡率であった。 9,230例を登録し、4,622例を非制限的血糖コントロール群(年齢中央値67歳[四分位範囲[IQR]:56~75]、男性62.8%)、4,608例を厳格血糖コントロール群(67歳[57~75]、63.6%)に割り付けた。ベースラインの血糖値中央値は、非制限的血糖コントロール群が143 mg/dL(IQR:120~170)、厳格血糖コントロール群は142mg/dL(121~168)であった。朝の血糖値が低く、1日インスリン用量が多い 非制限的血糖コントロール群に比べ厳格血糖コントロール群は、ICU入室中の朝の血糖値中央値が低く(140mg/dL[IQR:122~161]vs.107mg/dL[98~117]、群間差:-32mg/dL[95%信頼区間[CI]:-33~-32])、インスリンの用量中央値が高かった(0.0単位/日[IQR:0.0~5.6]vs.24.8単位/日[14.8~39.9]、群間差:21.0単位/日[95%CI:20.5~21.5])。 重症低血糖(<40mg/dL[<2.2mmol/L])の発生は、非制限的コントロール群のほうが少なかった(31例[0.7%]vs.47例[1.0%]、相対リスク:1.52[95%CI:0.97~2.39])。 ICUでの治療を要した期間(主要アウトカム)は、両群間に差を認めなかった(厳格血糖コントロールで生存退室が早くなるハザード比[HR]:1.00、95%CI:0.96~1.04、p=0.94)。また、90日死亡率にも差はなかった(非制限的血糖コントロール群468例[10.1%]vs.厳格血糖コントロール群486例[10.5%]、HR:1.04、95%CI:0.92~1.17、p=0.51)。 事前に規定された8項目の副次アウトカムの解析では、新規感染症の発生率、呼吸補助の時間、血行動態補助の時間、生存退院までの期間、ICU内死亡、院内死亡は、いずれも両群間に差はなかったのに対し、重症急性腎障害および胆汁うっ滞性肝機能障害は、厳格血糖コントロール群で少ないことが示唆された。 著者は、「本研究でICUに入室した早期静脈栄養を受けていない重症患者では、先行研究で静脈栄養を受けた重症患者に比べ、低血糖の重症度が軽度であった。また、コンピュータアルゴリズムによって空腹時血糖値を正常範囲に低下させることで、ICUでの治療を要した期間や死亡率に影響を及ぼさずに、医原性低血糖を回避できた」としている。

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仕事のストレスは男性の心疾患リスクを高める

 過酷なのにやりがいの感じられない仕事は、男性の心臓の健康に大きな打撃を与える可能性のあることが、6,400人以上を対象にした大規模研究で示唆された。仕事にストレスを感じている男性の心疾患発症リスクは、仕事への満足度がより高い同世代の男性の最大で2倍に達することが明らかになったという。CHU de Quebec-Universite Laval Research Center(カナダ)のMathilde Lavigne-Robichaud氏らによるこの研究の詳細は、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に9月19日掲載された。 この研究は、心疾患のない6,465人(男性3,118人、女性3,347人)のホワイトカラー(平均年齢45.3±6.7歳)を2000年から2018年まで追跡して、職場ストレイン(仕事の要求度は高いが裁量権や支援が不足している状態)や、努力報酬不均衡(effort-reward imbalance;ERI、努力が適切な報酬や昇進に結び付いていないと感じている状態)と心疾患発症との関連を検討したもの。職場ストレインとERIはそれぞれ信頼性と妥当性が示されている質問票により評価された。 中央値18.7年の追跡期間中に男性571人と女性265人に冠動脈疾患(CHD)が生じた。解析の結果、職場ストレインまたはERIのいずれかを感じている男性では、仕事のストレスに曝露していない(軽度の職場ストレインはあるが報酬は低くない)男性に比べて、CHDの発症リスクが49%(ハザード比1.49、95%信頼区間1.07〜2.09)、職場ストレインとERIの両方を感じている男性では103%(同2.03、1.38〜2.97)、有意に高かった。これらの結果は、教育レベルや婚姻状態、喫煙や飲酒の習慣、糖尿病や高血圧などの健康状態を考慮しても変わらなかった。これに対して、女性では、職場ストレインやERIとCHD発症との間に有意な関連は認められなかった。 研究グループは、これらの結果は、仕事のストレスが男性の心臓には打撃を与えるが、女性の心臓には影響を及ぼさないことを証明するものではないと話す。それでも、成人が1日の大半の時間を費やす職場でのストレスが心疾患の原因になり得る理由はあるという。その一つとしてLavigne-Robichaud氏は、慢性的なストレスが心血管系に直接的に影響を及ぼし得ることを指摘する。「職場ストレインとERIは、心拍数の増加、血圧の上昇、心血管の狭窄を含む身体的反応を引き起こす。これらが直接的に心臓に負荷をかけ、血流や心拍リズムに問題が生じ、最終的に心疾患の発症リスクが高まる」と説明する。 仕事のストレスが、それほど直接的でない方法で心臓に害を与えることもあるという。Lavigne-Robichaud氏は、「仕事でストレスを抱えていると、健全な食生活を送り、定期的に運動を行い、リラックスする時間を見つける能力が妨げられる可能性がある」と指摘し、「健康的なライフスタイルを送ることが困難な状況下では、ストレスが心血管系に及ぼす直接的な影響がいっそう顕著になる可能性がある」と付け加えている。同氏は、この研究結果は、職場は従業員の心臓の健康を促進することができ、また促進すべきであるとする、すでに山と積み上げられたエビデンスに加わるものだと述べている。 なお、本研究で、女性では仕事のストレスとCHDとの間に関連が認められなかった点についてLavigne-Robichaud氏は、「この研究での女性のCHD症例が男性の半分程度だったように、女性は、人生の後半に心疾患を発症する人が男性よりも多い。そのため、仕事のストレスと心疾患との間に明確な関連性を見出しにくくなっている可能性がある」と説明している。 Lavigne-Robichaud氏によると、米国心臓協会(AHA)などの団体は、すでに雇用主に対して、健康診断の実施や栄養価の高い食事選択肢の提供などを含む「包括的なウェルネスプログラム」を推奨しているとのことだ。「われわれの研究は、これらのプログラムに仕事のストレス軽減を目的とした介入を取り入れることが、心疾患の予防に役立つ可能性を示唆するものだ」と述べている。

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体重維持には朝に運動するのがベスト

 スリムな体型を保つには、タイミングこそが全てかもしれない。日常的に早朝に中等度から高強度の身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を行う成人は、遅い時間帯にMVPAを行う成人に比べて太り過ぎや肥満になる可能性の低いことが、新たな研究で示された。米フランクリン・ピアス大学運動生理学分野のTongyu Ma氏らによるこの研究の詳細は、「Obesity」に9月4日掲載された。 Ma氏らはこの研究で、2003〜2004年と2005〜2006年の米国国民健康栄養調査(NHANES)参加者から抽出した5,285人のデータを用いて、MVPAを行う時間帯(早朝、昼間、夕方)と肥満(BMI、腹囲)との関連を検討した。参加者は7日連続で、起きている時間帯に腰部加速度計を装着するよう指示されており、週末を1日以上含む4日間(1日の装着時間が10時間以上)のデータがそろった場合を有効データとして用いた。このデータを基に参加者の身体活動(PA)のパターンを「朝」(642人)、「昼」(2,456人)、「夕方」(2,187人)の3群に分類した。 その結果、運動パターンが「朝」の参加者では、「昼」と「夕方」の参加者と比べて、BMIと腹囲の値が低いことが明らかになった。調整済みの平均BMIは、「朝」の参加者で27.4、「昼」の参加者で28.4、「夕方」の参加者で28.2であり、腹囲は同順で、95.9cm、97.9cm、97.3cmであった。また、PAに関するガイドラインで推奨されている週に150分以上のMVPAを行っていた参加者における調整済みの平均BMIは、「朝」の参加者で25.9、「昼」の参加者で27.6、「夕方」の参加者で27.2であり、腹囲は同順で、91.5cm、95.8cm、95.0cmであった。 このような結果についてMa氏は、「定期的に運動を行っている場合、朝に運動を行っている人の方が昼や夕方に運動を行っている人よりも、BMIが2単位低く、腹囲が1.5インチ(約3.8cm)小さかった」と述べ、「朝のワークアウトは、体重管理において有望な手段である」と主張している。ただしMa氏は、この研究により朝の運動が体重と関連することが示されたに過ぎず、両者の因果関係が明らかになったわけではないことも強調している。 Ma氏はまた、予想外の結果として、運動パターンが「朝」の参加者は、3群の中で座位時間が最も長かったことに言及。この点について同氏は、朝に運動をする人は、ソファーで過ごす時間が長いとしても、昼間や夕方に運動する人の活動量をしのぐ、「しっかりとした朝のワークアウトセッション」を行っている可能性が高いとの見方を示している。さらに、運動パターンが「朝」の参加者は、食生活が全体的に健康的であり、運動パターンが「昼」や「夕方」の参加者よりも摂取カロリーが少なかったという。 では、朝の運動が体型維持に有利となる理由は何なのだろうか。Ma氏は、「一晩の絶食を経た後の早朝には、われわれの体は低エネルギー状態にある。そのため、脂肪を使って運動に必要なエネルギーを作り出すことが多くなる。おそらくはこれが、朝の運動が体重管理に適している理由なのだろう」と述べている。 米国の栄養と食事のアカデミーの元会長であるConnie Diekman氏は、今回の結果についてはさらなる研究で検討する必要があるとしながらも、「結果に驚きはなかった」と話す。同氏は、「われわれは以前より、朝一番の運動がより効果的であるとして推奨してきた。現時点で得られたエビデンスは、朝の運動が代謝を高めるというベネフィットに焦点を当てているが、そのエビデンスの強さは、『朝に運動をしなければならない』と言い切れるほど強いものではない」と説明する。 Diekman氏は、自分の都合に合わせて運動を行うことを勧めており、「健康な体を維持するためには、PAを日課にする必要がある。これが、管理栄養士である私からの最も重要なアドバイスだ。週に150分以上のPAを、自分の毎日/毎週のルーチンに最も適した方法で行うように努力してみてほしい」と話している。

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連載100回記念!執筆陣が選んだ「とっておきのフレーズ」【1分★医療英語】特別回

2021年から連載をスタートした「1分★医療英語」。原則毎週火曜日に公開しており、今月に連載100回を迎えました。100回記念として、執筆陣が選んだ100回の中の「とっておき回」を紹介。ぜひ復習にお役立てください。執筆陣が選んだ「とっておきのフレーズ」 ( )氏

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抗コリン負荷の増大が、心血管イベントのリスクと関連/BMJ

 急性心血管イベントで入院した65歳以上の患者においては、抗コリン薬による抗コリン作用の総負荷(抗コリン負荷)が、最近増加した集団で急性心血管イベントのリスクが高く、負荷の増加の程度が大きいほどリスクがより高いことが、台湾・国立成功大学のWei-Ching Huang氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年9月27日号に掲載された。心血管イベントで入院した高齢患者の症例-症例-時間-対照研究 本研究は、台湾の全国的な健康保険研究データベースを用いた症例-症例-時間-対照研究(case-case-time-control[CCTC]study)であり、2011~18年に急性心血管イベントで入院した65歳以上の患者31万7,446例を対象とした(台湾・国家科学技術委員会などの助成を受けた)。 CCTCは、適応症による交絡および潜在的なprotopathic bias(因果の逆転)の克服を目指した研究デザインであり、2つの自己対照分析(症例クロスオーバー分析と、将来の症例からなる対照クロスオーバー分析)で構成される。急性心血管イベントには、心筋梗塞、脳卒中、不整脈、伝導障害、心血管死を含めた。 主要アウトカムは、抗コリン負荷(Anticholinergic Cognitive Burden Scaleによる個々の薬剤の抗コリン作用スコアの合計)とし、3つの段階(0点[抗コリン作用なし]、1[軽度抗コリン作用]~2点[高度抗コリン作用]、3点[高度抗コリン作用]以上)に分類した。 ハザード期(心血管イベント発生前の-1~-30日)の抗コリン負荷のレベルを、レファレンス期(-61~-180日)から無作為に選択した30日間(-61~-90日、-91~-120日、-121~-150日、-151~-180日の4つから1つを選択)と比較し、急性心血管イベントと抗コリン負荷の最近の増加との関連を評価した。感度分析でも主解析と同様の結果 クロスオーバー分析には24万8,579例を含めた。イベント発生の時点(指標日)での平均年齢は78.4(SD 0.01)歳、53.4%が男性だった。最も頻度の高い併存疾患は、高血圧症(62.2%)、糖尿病(32.3%)、脂質異常症(24.0%)であった。抗コリン作用を有する薬剤として最も多く処方されていたのは、抗ヒスタミン薬(68.9%)、胃腸鎮痙薬(40.9%)、利尿薬(33.8%)であった。 ハザード期とレファレンス期で抗コリン負荷のレベルが異なっていた患者では、レファレンス期よりもハザード期で、負荷レベルが高い患者が多かった。たとえば、抗コリン負荷がハザード期は1~2点、レファレンス期は0点の患者は1万7,603例であったのに対し、ハザード期は0点、レファレンス期は1~2点の患者は8,507例だった。 現状の抗コリン負荷が1~2点の場合の0点の場合と比較した(1~2点vs.0点)心血管イベント発生のオッズ比(OR)は、症例クロスオーバー分析では1.86(95%信頼区間[CI]:1.83~1.90)、対照クロスオーバー分析では1.35(95%CI:1.33~1.38)であり、CCTCのORは1.38(1.34~1.42)だった。 同様に、3点vs.0点のCCTCのORは2.03(95%CI:1.98~2.09)、3点vs.1~2点のCCTCのORは1.48(1.44~1.52)であり、現状の抗コリン負荷が大きいほど心血管イベントのリスクが高い傾向を認めた。 感度分析として、抗コリン負荷カテゴリーのカットオフ値の再定義をしたり、抗コリン負荷の測定に別のスケールを使用した評価を行ったが、一貫して主解析と同様の結果が得られた。 著者は、「これらの知見は、観察研究の結果を解釈する際には、protopathic biasを考慮する必要があることを強調するものである」としている。

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胸が大きい女性は運動意欲が低下しやすい?

 乳房サイズの大きい女性は、運動をあまり行っていないことを示すデータが報告された。フリンダース医療センター(オーストラリア)で乳房再建手術を行っているClaire Baxter氏らの研究結果であり、詳細は「JPRAS Open」9月号に掲載された。同氏らは、胸の大きい女性の運動不足が乳房縮小手術によって改善する可能性があるとしている。 この研究は、一般市民が自由参加可能なウォーキングやランニングなどの大会を世界各地で開催している団体「parkrun」を通じて募集された、乳がんの既往のない18歳以上の女性に対するアンケート調査として実施された。解析対象は1,987人で、居住地は英国が43.1%、オーストラリアが41.5%、南アフリカが14.3%を占めていた。平均年齢は46.5±12.2歳であり、BMIは26.0±5.5で、56人(2.8%)が乳房縮小手術を受け、26人(1.3%)が豊胸手術を受けていた。 4割以上の人が、1回30分以上の運動を週に4回以上行っていた。自己申告によるブラジャーのカップサイズとの関連を検討した結果、カップサイズが小さい女性ほど、そのような運動を行っている割合が高かった。また、カップサイズが小さいほど、5kmランニングの走行スピードが速いという関連が認められた。 「胸が小さい方が運動頻度は増加すると思うか」という質問や「胸が小さい方が運動パフォーマンスは向上すると思うか」という質問に対して、カップサイズの大きい女性ほど、「そう思う」とする回答が多い傾向が見られた。実際に乳房縮小手術を受けていた56人に対して運動頻度の変化を問うと、「大幅に増加した」が35.1%、「増加した」が40.4%、「不変」が24.6%であり、「減少した」や「大幅に減少した」は0%だった。高強度運動の頻度や1回当たりのトレーニング時間についても、「大幅に増加した」または「増加した」との回答が多くを占めていた。 これらの結果を基に著者らは、「女性の胸の大きさが運動習慣に影響を及ぼし、乳房縮小手術によって運動を行う意欲が上昇することが明らかになった」と述べるとともに、乳房縮小手術に対するオーストラリアでの位置付けに関する問題点を指摘している。論文の共著者であるフリンダース大学(オーストラリア)のNicola Dean氏は、「乳房縮小手術の積極的な施行には患者が肩や首の痛みを訴えていることが前提とされ、それだけでなく州ごとに細かい要件が多数定められている」と話す。 Dean氏によると、例えば同国のビクトリア州やタスマニア州などには、乳房縮小手術の適応基準の中にBMIの規定があり、また「手術まで1年以上待たなければいけないケースもある」とのことだ。英国も同様で、「保険が適用される乳房縮小手術の条件は地域によって異なるが、一般的に乳房縮小手術は優先順位が低い手術と捉えられていて、手術を受ける順番を抽選によって決めている地域もある」という。 今回の研究では、ブラジャーのカップサイズと生活の満足度や幸福度との関連も調査された。その結果、カップサイズが大きい場合は、満足度や幸福度のスコアが低いことも明らかになった。Baxter氏は、「乳房縮小手術のメリットに関する社会的な認識の向上と、学術的な研究の推進が必要とされる」と述べている。

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脳梗塞急性期の尿酸値低下が転帰不良に関連―福岡脳卒中データベース研究

 脳梗塞急性期に尿酸値が大きく低下するほど、短期転帰が不良であることを表すデータが報告された。九州大学大学院医学研究院病態機能内科学の中村晋之氏、松尾龍氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に6月29日掲載された。この関連は交絡因子調整後にも有意であり、かつ年齢や性別、入院時の尿酸値、脳梗塞の重症度にかかわらず、一貫して認められるという。 高尿酸血症は脳梗塞を含む心血管疾患発症のリスクマーカーであることは明らかになっており、独立したリスクファクターである可能性も示唆されている。その一方で尿酸には強力な抗酸化作用があり、尿酸値高値と健康関連指標の一部が良好であることとの関連を示した報告も散見される。ただし、脳梗塞急性期の尿酸値の変動と予後との関連は、ほとんど研究されていない。中村氏、松尾氏らはこの点について、福岡県内の急性期病院7施設が参加している「福岡脳卒中データベース研究(Fukuoka Stroke Registry:FSR)」(研究代表者:北園孝成氏)のデータを解析して検討した。 2007年6月~2019年9月に脳梗塞発症後1週間以内に入院した患者1万5,569人から、発症以前に生活機能障害のあった患者、追跡期間が発症後3カ月未満の患者、入院中に尿酸値が入院初日を含め2回以上測定されていなかった患者などを除外し、4,621人(平均年齢70.1±12.2歳、男性64.4%)を解析対象とした。主要評価項目は、脳梗塞発症3カ月時点の転帰不良〔修正ランキンスケール(mRS)が3~6点〕と、機能的依存〔mRSが3~5点(転帰不良から死亡を除外)〕とし、副次的に入院中の神経学的改善〔米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)が4点以上低下または退院時に0点〕、神経学的悪化(NIHSSが1点以上上昇)などを評価した。 入院時の尿酸値は、男性が平均6.01±1.61mg/dL、女性は5.11±1.65mg/dLであり、男性・女性ともに入院1~3日目、4~6日目、7~10日目に測定されていた値は、入院初日より有意に低値だった。入院中の尿酸値の低下幅(入院初日と入院期間中に記録された最低値)の四分位で4群に分けて比較すると、低下幅の大きい群ほど高齢で女性の割合が高く、BMIが低値であり腎機能(eGFR)が低く、再灌流量療法施行率が高くNIHSSスコアが高値であり、入院期間が長いという有意な傾向が認められた。 解析結果に影響を及ぼし得る因子〔年齢、性別、BMI、eGFR、発症前mRSスコア、入院時尿酸値、NIHSSスコア、入院期間、喫煙・飲酒習慣、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動の既往、脳梗塞病型(心原性/非心原性)、再灌流療法の施行など〕を統計学的に調整後、入院中の尿酸値の低下幅と主要評価項目との間に有意な関連が見られた。具体的には、尿酸値低下幅の第1四分位群を基準として第3四分位群は転帰不良のオッズ比(OR)が1.51(95%信頼区間1.16~1.96)、第4四分位群はOR2.66(2.05~3.44)であり、機能的依存については同順にOR1.48(1.13~1.95)、OR2.61(2.00~3.42)だった(ともに傾向性P<0.001)。 副次的評価項目の神経学的改善は入院中の尿酸値の低下幅が大きいほどオッズ比が低く、反対に神経学的悪化は尿酸値の低下幅が大きいほどオッズ比が高かった(ともに傾向性P<0.001)。 続いて、年齢(75歳未満/以上)、性別、脳梗塞病型、神経学的重症度(NIHSSスコア5点未満/以上)、慢性腎臓病の有無、入院時の尿酸値(男性は5.9mg/dL、女性は4.9mg/dLで二分)で層別化したサブグループ解析を実施。その結果、いずれの群においても、入院中の尿酸値の低下幅が大きいほど、転帰不良のオッズ比が高いという有意な傾向性が示された。 以上を基に著者らは、「脳梗塞急性期の尿酸値の低下は好ましくない短期転帰と独立して関連していることが明らかになった」と結論付けている。なお、「本研究が観察研究であるため因果関係は不明」と述べた上で、脳梗塞急性期に尿酸値が変化するメカニズムとしては、輸液などによる体液量の変化や栄養素摂取量の低下などの影響を考察として記している。また、尿酸値低下と転帰不良との関連のメカニズムに関しては、尿酸が酸化ストレス抑制を介して脳神経細胞や血管内皮細胞に対して保護的に働く可能性があり、その作用の減弱によるものではないかとしている。

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肥満の指標で死亡率と相関するのはBMIでも体脂肪率でもなく…

 BMIとは、ご存じのとおり肥満度を表す指標として国際的に用いられている体格指数1)である。しかし、同じBMIを持っていても体組成と脂肪分布によって個人間でばらつきがあるため、“死亡リスクが最も低いBMI”については議論の余地がある。そこで、カナダ・Vascular and Stroke Research InstituteのIrfan Khan氏らが死亡率に最も強く相関する肥満に関する指数を検証するため、全死因死亡および原因別(がん、心血管疾患[CVD]、呼吸器疾患、またはその他原因)の死亡率とBMI、FMI(脂肪量指数)、WHR(ウエスト/ヒップ比、体型を「洋なし型」「リンゴ型」と判断する際に用いられる)2)の関連性を調査した。その結果、WHRはBMIに関係なく、死亡率と最も一貫性を示した。ただし、研究者らは「臨床上の推奨としては、質量と比較した脂肪分布に焦点を当てることを考慮する必要がある」としている。JAMA Network Open誌2023年9月5日号掲載の報告。肥満に関する指標で死亡率に最も強く相関したのはWHR 本研究は、英国全土の臨床評価センター22施設のデータを含む、英国バイオバンク(UKB)に登録された2006~22年における死亡者データ(38万7,672例)を発見コホート(33万7,078例)と検証コホート(5万594例:死亡2万5,297例と対照2万5,297例)にわけて調査が行われた。発見コホートは遺伝的に決定付けられた肥満度を導出するために使用され、観察分析およびメンデルランダム化(MR)解析が行われた。 死亡率に最も強く相関する肥満に関する指標を検証した主な結果は以下のとおり。・観察分析の対象者は平均年齢[±SD]56.9±8.0歳、男性17万7,340例(45.9%)、女性21万332例(54.2%)、MR解析の対象者は平均年齢[±SD]61.6±6.2歳、男性3万31例(59.3%)、女性2万563例(40.6%)だった。・BMIおよびFMIと全死因死亡との関係はJ字型であった一方で、WHRと全死因死亡との関係は直線的だった(WHRのSD増加あたりのHR:1.41、95%信頼区間[CI]:1.38~1.43)。・遺伝的に決定付けられていたWHRは、BMIよりも全死因死亡と強い関連を示した(WHRのSD増加あたりのオッズ比[OR]:1.51[95%CI:1.32~1.72]、BMIのSD増加あたりのOR:1.29[95%CI:1.20~1.38]、異質性のp=0.02)。・この関連は女性よりも男性のほうが強く(OR:1.89[95%CI:1.54~2.32]、異質性のp=0.01)、BMIやFMIとは異なり、遺伝的に決定付けられていたWHRと全死因死亡の関連はBMIに関係なく一貫していた。

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