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MRIで膵臓がんの前駆病変を検出可能か

 膵臓がんは、膵臓自体が体の奥深くに位置しているため、生命を脅かすようになる前の早期段階で検出することは難しいことから、サイレントキラーと呼ばれている。しかし、拡散テンソル画像法(DTI)と呼ばれるMRI画像技術の一種が、膵臓がんのより早期の発見に役立つ可能性のあることが新たな研究で明らかになった。シャンパリモー臨床センター(ポルトガル)の放射線科医であるCarlos Bilreiro氏らによるこの研究結果は、「Investigative Radiology」に12月13日掲載された。研究グループは、これらの結果は膵臓がんリスクがある人の早期診断につながる可能性があると述べている。 膵臓がんは、米国ではがん関連死の第3位の原因である。膵臓がんの5年生存率は、早期に発見できれば44%だが、他臓器に転移すると約3%にまで急落する。残念なことに、膵臓がんの症状は、原因不明の体重減少、糖尿病の発症、黄疸など、他の病気の症状と混同されやすい。 研究グループの説明によると、膵臓がんの約95%は膵管腺がん(PDAC)と呼ばれるものであり、その多くは膵上皮内腫瘍性病変(PanIN)と呼ばれる前駆病変から発生するが、これらの病変は、通常のスキャン方法では検出が容易ではない。しかし、研究グループは、DTIを使えばその検出が可能になるのではないかと考えた。論文の上席著者で、シャンパリモー・リサーチのNoam Shemesh氏は、「DTIは、組織内の水分子の拡散を利用する方法だ。これにより放射線科医は組織の微細構造を観察できる」と説明する。DTIは30年前に開発され、主に脳の画像診断に使用されている。Shemesh氏は、「DTIは新しい方法ではない。ただ、これまで膵臓がんの前駆病変の検出には使われていなかっただけだ」と話している。 この研究では、実験用マウス(PanINモデルマウス4匹、PDACモデルマウス6匹、対照6匹)のDTI画像によりPanINの検出とその特徴を識別できるかが検証された。まず、生体内でDTIを実施した後、膵臓組織を用いて超高磁場のMR顕微鏡でDTIおよびT2強調画像を取得し、組織学的な検証を行った。 その結果、DTIによりPanINとPDACを正確に検出できることが明らかになった。具体的には、拡散異方性の程度を表すFA(fractional anisotropy)、および主軸に垂直な方向への拡散性を表すRD(radial diffusivity)による判別能力を示す曲線下面積(AUC)は0.983(95%信頼区間0.932〜1.000)であった。また、平均拡散能を表すMD(mean diffusivity)および主軸方向への拡散性を表すAD(axial diffusivity)によるAUCは1.000(同1.000〜1.000)であった。さらに、MR顕微鏡と組織学的解析からは、MR画像で観察されるコントラストが、膵臓の微細構造の特徴に由来することが判明した。一方、DTIとT2強調画像との相関の検討では、特にADが病変の広がりや重症度と強い相関を示した。最後に、この結果を人に適応する可能性を検討するために、5人のヒトの膵臓組織を用いて観察を行った。その結果、マウスでの結果と同様に、PanINと正常膵臓との間に顕著なコントラストが確認された。 Shemesh氏は、「われわれは、患者から膵臓組織のサンプルを入手して調査し、マウスで得られた結果が人間にも当てはまることを確認した」と述べている。一方、Bilreiro氏は、「この研究は、膵臓がんの前駆病変の研究における画期的な出来事だと考えている」と話している。 ただし研究グループは、「人間の膵臓がんの検査にこの技術を適用できるようになるまでには、さらなる研究を行い、技術を磨く必要がある」との見方を示している。Shemesh氏は、「これは概念実証研究であり、すでに基本手段として用いられている方法を活用して実際に人間や患者を対象に試験を行うための基礎を提供したに過ぎない」と述べている。

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抗精神病薬誘発性体重増加にGLP-1受容体作動薬セマグルチドが有効

 抗精神病薬誘発性体重増加は、患者および臨床医にとって重要な臨床課題であり、抗精神病薬使用患者の体重増加を予防または回復するための適切な介入が求められる。最近、肥満管理の新たなアプローチとしてGLP-1受容体作動薬が大きな注目を集めている。GLP-1受容体作動薬セマグルチドは、顕著な体重減少をもたらすことが明らかとなっている薬剤である。オランダ・マーストリヒト大学のBea Campforts氏らは、抗精神病薬誘発性体重増加に対してもセマグルチドが同等の体重減少効果を示すかを調査した。BMC Psychiatry誌2024年11月30日号の報告。 日常的な外来診療における抗精神病薬誘発性体重増加の治療に対するセマグルチドの有効性および安全性を評価するため、プロスペクティブ非ランダム化コホート研究を実施した。その後、メトホルミンを使用している抗精神病薬誘発性体重増加患者を対照群として、結果を比較した。 主な結果は以下のとおり。・16週間後の体重減少は、セマグルチド群(10例)で4.5kg(95%信頼区間[CI]:−6.7〜−2.3、p<0.001)、メトホルミン群(26例)で2.9kg(95%CI:−4.5〜−1.4、p<0.001)。・この結果は、平均体重減少率がセマグルチド群で4%、メトホルミン群で2.5%に相当する。・セマグルチド群におけるBMIの減少は−1.7kg/m2(95%CI:−2.4〜−1.0、p<0.001)、ウエスト周囲径の減少は−6.8cm(95%CI:−9.7〜−3.8、p<0.001)。・メトホルミン群におけるBMIの減少は−0.8kg/m2(95%CI:−1.4〜−0.3、p=0.001)、ウエスト周囲径の減少は−3.4cm(95%CI:−5.4〜−1.3、p=0.001)。・両群間で、統計学的に有意な差は認められなかった。・両群ともに副作用は、典型的に軽度、一時的であり、主な副作用は悪心であった。・さらに、精神症状の軽減、QOL向上が認められた。 著者らは「セマグルチドは、精神疾患患者の抗精神病薬誘発性体重増加に対し実行可能で効果的かつ安全な治療オプションであることが示唆された。これらの結果を裏付けるためにも、さらなる調査が求められる」と結論付けている。

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肥満は服薬遵守と独立した負の関連因子―国内CVD患者対象研究

 心血管疾患(CVD)患者を対象に、服薬遵守状況(アドヒアランス)を主観的指標と客観的指標で評価した研究結果が報告された。客観的指標に基づきアドヒアランス良好/不良に分けた2群間で主観的指標には有意差がないこと、および、肥満がアドヒアランス不良に独立した関連のあることなどが明らかにされている。福岡大学筑紫病院薬剤部の宮崎元康氏らの研究によるもので、詳細が「Pharmacy」に10月6日掲載された。 慢性疾患では服薬アドヒアランスが低下しやすく、そのことが予後不良リスクを高めると考えられる。しかし服薬アドヒアランスを評価する標準的な手法は確立されておらず、主観的な手法と客観的な手法がそれぞれ複数提案されている。例えば主観的評価法の一つとして国内では、12項目の質問から成るスケールが提案されている。ただし、そのスケールでの評価結果と、残薬数から客観的に評価した結果との関連性は十分検討されておらず、今回の宮崎氏らの研究は、この点の検証、およびCVD患者の服薬アドヒアランス低下に関連のある因子を明らかにするために実施された。 研究の対象は2022年6~12月に同院循環器科外来へ2回以上受診していて、残薬数に基づき客観的にアドヒアランスの評価が可能な患者のうち、研究参加協力を得られた94人。医師-患者関係の違いによる影響を除外するため、1人の医師の患者のみに限定した。 前述のように主観的な評価には12項目のスケールを採用。これは60点満点でスコアが高いほどアドヒアランスが良好と判断する。一方、客観的な評価に用いた残薬カウント法は、評価期間中の2回目の受診時の残薬数を前回の処方薬数から減算した値が、処方薬数に占める割合を算出して評価するもので、残薬がゼロであれば遵守率100%となる。本研究では100%をアドヒアランス良好、100%未満を不良と定義した。 解析対象者の主な特徴は、年齢中央値74歳(四分位範囲67~81)、男性55.3%、肥満(BMI25以上)36.2%であり、処方薬数は中央値4(同2~7)で、降圧薬(84.0%)、脂質低下薬(59.6%)、抗血栓薬(38.3%)、血糖降下薬(29.8%)などが多く処方されていた。また17.0%の患者への処方は、1包化(1回に服用する薬剤を1袋にすること)されていた。 94人のうち49人が、客観的手法である残薬カウント法により、アドヒアランス良好と判定された。アドヒアランス良好群の主観的評価スコアは中央値51点(四分位範囲44~56)であり、対してアドヒアランス不良群の主観的評価スコアは同50点(45~54)で、有意差が見られなかった(P=0.426)。 次に、残薬カウント法に基づくアドヒアランス良好群と不良群の背景因子を比較すると、単変量解析では肥満(P=0.014)と喫煙歴(P=0.043)に有意差が認められ、いずれもアドヒアランス不良群にそれらの該当者が多かった。この2項目のほかに、非有意ながら大きな群間差(P<0.1)が認められた因子(日常生活動作〔ADL〕、独居、狭心症治療薬の処方)、およびアドヒアランスの主観的評価スコアを独立変数とし、残薬カウント法によるアドヒアランス不良を従属変数として、ロジスティック回帰分析を施行。その結果、肥満のみが有意な関連因子として抽出された(オッズ比3.527〔95%信頼区間1.387~9.423〕)。喫煙歴(P=0.054)と狭心症治療薬の処方(P=0.052)の関連はわずかに有意水準未満であり、主観的評価スコアは関連が認められなかった(P=0.597)。 以上の総括として著者らは、「主観的な手法と客観的な手法による服薬アドヒアランスの評価が矛盾する結果となった。よって臨床においては双方の指標を使用したモニタリングが必要と考えられる。また、肥満は残薬カウント法で判定したアドヒアランス不良に独立した関連のある因子であり、肥満を有するCVD患者には特に入念なモニタリングが求められる」と述べている。

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乾癬性関節炎〔PsA:psoriatic arthritis〕

1 疾患概要■ 定義乾癬に関節炎(炎症性関節症)を伴ったもの。「関節症性乾癬」とも呼ばれる。乾癬は尋常性(局面型)乾癬が最も多いが、乾癬性紅皮症や汎発性膿疱性乾癬に関節炎が合併することもある。■ 疫学国内外でいくつもの疫学データがあり、乾癬患者の10%以下から多いものでは40%を超えるとする報告もある1)。日本乾癬学会の疫学データでは、乾癬患者の15.2%が2)、また、リウマチ科主導で行われた多施設共同のデータでは14.3%が乾癬性関節炎を有していた。 したがって、紹介患者を受け入れる基幹病院では、乾癬患者のおおよそ14~15%が乾癬性関節炎と推定される。東アジアにおける疫学をみると、乾癬患者における乾癬性関節炎の占める割合は、韓国は9~14.1% 、中国は5.3~7.1% と報告されている3)。働き盛りの青壮年期に多く、わが国では乾癬、乾癬性関節炎ともに男性が多い。■ 病因関節リウマチが滑膜炎であるのに対し、乾癬性関節炎は付着部炎がprimaryな変化と考えられている。付着部は、筋肉や腱が骨に付着する部位で、微細な外的刺激が繰り返し加わることにより付着部に炎症が惹起される。乾癬性関節炎でも二次的な滑膜炎がみられることもある。■ 症状皮膚症状と関節症状があり、皮膚症状は落屑性紅斑(乾癬)で、好発部位は頭、肘、膝、臍などだが、頭の先から足のつま先までどこにみられても不思議ではない。関節症状は末梢関節が侵される頻度が高いが、大関節(頸椎、腰椎、仙腸関節など)が侵されることもまれではない。末梢関節が侵されると、罹患関節の腫脹や変形がみられることもある。また、乾癬性関節炎の中には、皮膚症状が目立たない(非常に軽度の)場合もある。そのほか、爪乾癬(爪の点状陥凹、肥厚、白濁など)がみられることが多く、爪の変化とその近傍の第一関節の痛みや腫れが一緒にみられることもある。皮膚症状(乾癬)が先行、または皮膚症状と関節症状がほぼ同時期に出現する場合が9割以上を占め、関節炎が先行する頻度は少ない4)。■ 分類関節症状により、以下の5群に分けられている (Moll&Wrightの分類)5)。(1)非対称性関節炎型(Oligo-arthritis type)(2)関節リウマチ類似の対称性関節炎型(Poly-arthritis type)(3)定型的関節炎型(DIP type)(4)ムチランス型(5)強直性脊椎炎型(Ankylosing spondylitis[AS]type)■ 予後乾癬においてはさまざまな併存症がみられる。乾癬性関節炎においても、肥満、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病が多い。さらに、動脈硬化症や心筋梗塞の心血管病変が予後に影響することが多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)CASPAR(Classification criteria for psoriatic arthritis)の分類基準がある。炎症性関節症があるのが前提で、3点以上で乾癬性関節炎と診断するとあるが、そもそも患者は皮膚症状がないと皮膚科を受診しないので、乾癬があれば2点、爪乾癬がある(1点)かリウマトイド因子が陰性(1点)であれば、それだけで3点を超えてしまう。他の項目に、指趾炎と呼ばれる手や足の指の芋虫状の腫れ(1点)と、手足の単純X線所見で関節周囲の骨新生像(1点)があるが、どちらも早期にみられる所見ではない。乾癬性関節炎を診断するいくつかの特徴的な症状に、付着部炎や指趾炎があるが、これらがみられるときはすでに早期ではない。したがって早期診断はきわめて難しい。■ 鑑別診断高齢者は膝や腰を始め関節の痛みを訴えることが多い。変形性関節症や関節リウマチを始め、リウマチ性多発筋痛症、痛風、偽痛風など関節の痛みや変形を来すさまざまな疾患との鑑別を要する。とくに手指の変形性関節症を鑑別する必要がある。変形性関節症は、手指DIP関節の変形だけのものは容易だが、痛みを伴うinflammatory osteoarthritis、 erosive osteoarthritisは、乾癬性関節炎との鑑別が難しい。関節リウマチ患者は女性に多く、罹患関節数が少ないこと、DIP関節が罹患することはまれで、同一レベルの関節が侵されるのに対し(横方向)、乾癬性関節炎では同じ指の異なる関節が縦方向に侵され、“Ray distribution”と呼ばれる。血清リウマチ因子や抗CCP抗体は、乾癬性関節炎の1割程度でも陽性にみられる。関節滑膜の増殖は関節リウマチの方が強く、それを反映し両者の差異を検出しうる関節エコーが有用とされる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)乾癬性関節炎は、皮膚症状が優位な症例、関節症状が優位な症例、どちらも症状が顕著な症例などがある。したがって、皮膚、関節それぞれの重症度をまず評価する。GRAPPAのガイドラインでは、乾癬性関節炎の症状を、末梢関節炎、体軸性関節炎、付着部炎、指趾炎、乾癬、爪病変の6つのドメインに分け、それぞれの症状ごとに、外用薬、非ステロイド系消炎鎮痛薬、理学療法、ステロイド局注などでコントロール不十分な症例に対しての内服薬(synthetic DMARD)や注射薬(biologic DMARD)の治療法を提示している。内服薬は、通常の非ステロイド系消炎鎮痛薬に加え、メトトレキサートとアプレミラスト(商品名:オテズラ錠)が、乾癬性関節炎に使われる代表的な薬剤である。メトトレキサートは、骨髄抑制と肝障害が頻度の高い注意すべき副作用で、間質性肺炎やHBV再活性化なども頻度は少ないが注意しなくてはならない。アプレミラストは、消化器症状、頭痛の頻度の高い副作用ではあるが、重篤な症状は少ないので高齢者にも使いやすい。新規内服薬としてJAK阻害剤が登場したほか、乾癬性関節炎の関節変形の進行を抑制するには生物学的製剤が中心的に使用されている。生物学的製剤は、TNF、IL-17に対する抗体製剤が使われることが多いが、ほかにIL-23の標的薬もある。4 今後の展望乾癬の治療薬の進歩は目覚ましく、生物学的製剤やJAK阻害剤内服薬が、適応拡大も含めて今後も新規に参入してくると思われる。5 主たる診療科皮膚科、リウマチ内科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報日本乾癬患者連合会(患者とその家族および支援者の会)1)山本俊幸. Visual Dermatology. 2017;16:690-693.2)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2017;44:e121.3)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2018;45:273-278.4)Yamamoto T, et al. J Dermatol. 2016;43:1193-1196.5)山本俊幸. 日皮会誌. 2022;132;19-25.公開履歴初回2025年1月8日

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医師の学会発表と急性心筋梗塞の院内死亡率が関連~日本の後ろ向き研究

 臨床医が日本循環器病学会で発表している病院で治療された心筋梗塞患者は、発表していない病院で治療された患者より院内死亡率が低く、また、エビデンスに基づく薬剤処方が多かったことが京都大学の高田 大輔氏らによる後ろ向き研究でわかった。PLoS One誌2024年12月9日号に掲載。 本研究では、QIP(Quality Indicator/Improvement Project)に参加している日本の急性期病院の管理データベースを解析した。2014年4月1日~2018年12月31日に急性心筋梗塞で入院した患者を、入院した病院の医師がその年の日本循環器学会年次学術集会で発表があった患者(学会発表群)と、学会発表のなかった病院に入院した患者(対照群)に分け比較した。5つのモデル(未調整モデル、モデル1:性別・年齢・Killip分類・喫煙・救急車の使用・高血圧・心房細動・陳旧性心筋梗塞・糖尿病・腎臓病・慢性閉塞性肺疾患で調整、モデル2:モデル1に加え、入院年と各病院の年間入院数で調整、モデル3:病院コードでクラスター化し、モデル1と同じ変数で調整したマルチレベル分析、モデル4:モデル1に加え、因果媒介分析によりEvidence-based Practiceで調整)における院内全死亡リスクを、多変量ロジスティック回帰分析を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・Killip分類または救急車の使用に関するデータがなかった3,544例を除外し、384の急性期病院における5万6,923例のデータを解析した。・エビデンスに基づく薬剤の処方は、学会発表群が対照群より有意に多かった。・モデル4を除いて、学会発表が低い院内死亡率と有意に関連していた。各モデルのオッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。 未調整モデル:0.68(0.65~0.72) モデル1: 0.73(0.68~0.79) モデル2:0.76(0.70~0.82) モデル3:0.84(0.76~0.92) モデル4:1.00(0.92~1.09) 著者らは「学会発表は院内死亡率の低下と関連しており、医師が学会発表を行う病院では患者がより多くのエビデンスに基づく診療の恩恵を受ける傾向がある」と結論した。一方、本研究の限界として、学会発表を日本循環器学会学術集会のみとしていること、今回調整していない組織文化や循環器医師のモチベーションなど、病院および個人の交絡因子があることを挙げている。

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炭水化物制限で糖尿病患者のβ細胞機能が改善

 2型糖尿病患者を対象に、炭水化物制限食と高炭水化物食で介入した結果、前者において膵β細胞機能が改善したとする論文が、「The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に10月22日掲載された。米アラバマ大学バーミンガム校のBarbara A. Gower氏らが行った、12週間にわたるランダム化比較試験の結果として報告された。 この研究は、エネルギー量が等しい炭水化物制限(carbohydrate-restricted;CR〔炭水化物由来のエネルギーが約9%、脂質由来が約65%〕)食と、高炭水化物(higher carbohydrate;HC〔炭水化物由来が約55%、脂質由来が約20%〕)食が、2型糖尿病患者のβ細胞機能に与える影響を比較するために実施された。対象は、糖尿病診断からの経過が10年以内でHbA1cが8%以下のインスリン療法を行っていない、アフリカ系米国人(African American;AA)および欧州系米国人(European American;EA)の成人2型糖尿病患者57人。なお、AAは人種的にβ細胞の脆弱性がEAより高いと考えられている。 介入前後のデータが欠落しておらず解析対象とされたのは51人(CR群25人、HC群26人)だった。ベースライン時において、年齢、性別の分布、BMI、HbA1c、およびβ細胞機能(disposition index;DI)に有意差はなかった。HbA1cは、CR群が6.9±0.72%、HC群が6.7±0.47%であり、糖代謝異常の程度は比較的軽度の患者群だった。 血糖降下薬は介入前に中止され、介入中に3日連続で空腹時血糖が200mg/dLを超えた場合には投薬が再開された。食事は全てを支給し、宅配サービスによって参加者の自宅に届けられた。ベースライン時点と介入12週間後に、75g経口ブドウ糖負荷試験およびアルギニンを用いたグルコースクランプ法にて、糖代謝と膵β細胞機能を評価した。 12週後、急性C-ペプチド反応(アルギニン投与開始30分以内の上昇)は、CR群ではHC群に比べて約2倍に増加し有意な群間差が認められたが、人種別に見た場合、EAでは有意差がなかった。最大C-ペプチド反応はCR群では22%有意に増加し、HC群との間に有意差が認められたが、人種別に見た場合、AAでは有意差がなかった。DIはCR群では32%有意に上昇したが、これを人種別に見た場合、EAでは有意差がなかった。 著者らは、「われわれの研究は、エネルギー量が等しいCR食が、HC食に比べて急性および最大C-ペプチド反応の双方を含む、β細胞機能の指標に有益な影響をもたらすことを示唆しており、臨床的に重要な結果と言える。CRの継続が困難な患者が存在する可能性がある点は否めないが、CR食によって、軽度の2型糖尿病患者は投薬を中止し食事を楽しみながら、β細胞機能を改善できるのではないか」と総括している。なお、AAとEAで反応に差が見られた点について、「この反応の差の一部は人種固有のβ細胞機能の違いに起因するものと考えられる」と説明している。

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2型糖尿病発症予防のためにダークチョコレートを毎日食べますか?(解説:住谷哲氏)

 チョコレートの主成分であるカカオには抗酸化物質の一種であるフラバノール(flavan-3-ol)が豊富に含まれている。抗酸化物質を含む食品を摂取することの健康ベネフィットはこれまでに多く報告されているが、本論文はダークチョコレートの摂取が2型糖尿病発症予防に関連することを大規模前向きコホート研究の結果を用いて明らかにした。 解析に用いたのは米国の医療従事者を対象としたNHS、NHSII、HPFSの3つの大規模前向きコホートであり、これまでにも多くの食品と健康ベネフィットとの関連を研究する目的で使用されてきている。解釈する際の注意点としては、対象がすべて医療従事者であり、さらにNHS、NHSIIは対象が看護師なので、全体として健康意識の高い女性を中心とした対象から得られた結果であることである。 結果は、ダークチョコレートを1 serving週5回以上摂取する群はそうでない群に比べて2型糖尿病の発症が21%減少していた。これは1 serving/週の摂取によって2型糖尿病の発症が3%減少することに相当する。一方でミルクチョコレートには、そのような関連は認められなかった。 筆者もチョコレートは好きなので朗報であるが、そもそもダークチョコレート(dark chocolate、ビターチョコレートbitter chocolateともいわれる)はどのようなチョコレートを指すのだろうか? またservingは日本ではなじみがないが欧米でよく使用される摂取量単位であり、チョコレート1 serving=約30gとされている。日本でのチョコレート販売量トップクラスの「明治」のホームページを見ると、「ダークチョコレートはカカオマス、ココアバター、砂糖、レシチン、香料などで作られたチョコレートです。カカオマスが40〜60%以上あり乳製品が入っていないため、カカオ独特の苦味と渋味、香りがあるのが特徴です。スイートチョコレートやビターチョコレートと呼ばれることもあります。さまざまな健康効果があることで注目されている高カカオチョコレートもダークチョコレートの一つで、一般的にカカオ分が70%以上のものを指します。」とある1)。カカオマスを40%以上含むチョコレート(理想的には70%以上)が一般にダークチョコレートと考えてよいようだ。昔からある明治ブラックチョコレート1枚50g(カカオ分35~40%含有)であれば2日に1枚食べる計算になる。 筆者の外来に通院している2型糖尿病患者さんが、ある時の外来で血糖コントロールが著明に悪化していることがあった。よくよく話を聞いてみるとテレビで脂肪肝の改善にはチョコレートが良い、と言っていたのでそれから毎日食べていたとのことであった。本論文の結果から、ダークチョコレートを毎日摂取することと2型糖尿病発症予防とに関連があることは明らかにされたが、因果関係は不明である。筆者としては、たまにチョコレートを食べるならミルクチョコレートではなく苦みのあるダークチョコレートにするくらいがちょうど良いように思われる。

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第248回 GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連

GLP-1薬とてんかん発作を生じにくくなることが関連セマグルチドなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)とてんかん発作を生じにくくなることの関連が新たなメタ解析で示されました1)。たいてい60~65歳過ぎに発症する晩発性てんかん(late-onset epilepsy)を生じやすいことと糖尿病やその他いくつかのリスク要因との関連が、米国の4地域から募った45~64歳の中高年の長期観察試験で示されています2)。近年になって使われるようになったGLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬を含む新しい血糖降下薬は多才で、糖尿病の治療効果に加えて神経保護や抗炎症作用も担うようです。たとえば血糖降下薬とパーキンソン病を生じ難くなることの関連が無作為化試験のメタ解析で示されており3)、血糖降下薬には神経変性を食い止める効果があるのかもしれません。米国FDAの有害事象データベースの解析では、血糖降下薬と多発性硬化症が生じ難くなることが関連しており4)、神経炎症を防ぐ作用も示唆されています。晩発性てんかんは神経変性と血管損傷の複合で生じると考えられています。ゆえに、神経変性を食い止めうるらしい血糖降下薬は発作やてんかんの発生に影響を及ぼしそうです。そこでインドのKasturba Medical CollegeのUdeept Sindhu氏らはこれまでの無作為化試験一揃いをメタ解析し、近ごろの血糖降下薬に発作やてんかんを防ぐ効果があるかどうかを調べました。GLP-1 RA、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬の27の無作為化試験に参加した成人20万例弱(19万7,910例)の記録が解析されました。血糖降下薬に割り振られた患者は半数強の10万2,939例で、残り半数弱(9万4,971例)はプラセボ投与群でした。有害事象として報告された発作やてんかんの発生率を比較したところ、血糖降下薬全体はプラセボに比べて24%低くて済んでいました。血糖降下薬の種類別で解析したところ、GLP-1 RAのみ有益で、GLP-1 RAは発作やてんかんの発生率がプラセボに比べて33%低いことが示されました(相対リスク:0.67、95%信頼区間:0.46~0.98、p=0.034)。発作とてんかんを区別して解析したところ、GLP-1 RAと発作の発生率の有意な低下は維持されました。しかし、てんかん発生率の比較では残念ながらGLP-1 RAとプラセボの差は有意ではありませんでした。試験の平均追跡期間は2.5年ほど(29.2ヵ月)であり、てんかんの比較で差がつかなかったことには試験期間が比較的短かったことが関与しているかもしれません。また、試験で報告されたてんかんがInternational League Against Epilepsy(ILAE)の基準に合致するかどうかも不明で、そのことも有意差に至らなかった理由の一端かもしれません。そのような不備はあったもの、新しい血糖降下薬が発作やてんかんを防ぎうることを今回の結果は示唆しており、さまざまな手法やより多様で大人数のデータベースを使ってのさらなる検討を促すだろうと著者は言っています1)。とくに、脳卒中患者などのてんかんが生じる恐れが大きい高齢者集団での検討を後押しするでしょう。参考1)Sindhu U, et al. Epilepsia Open. 2024;9:2528-2536.2)Johnson EL, et al. JAMA Neurol. 2018;75:1375-1382.3)Tang H, et al. Mov Disord Clin Pract. 2023;10:1659-1665.4)Shirani A, et al. Ther Adv Neurol Disord. 2024;17:17562864241276848.

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Ca拮抗薬・NSAID・テオフィリンと逆流性食道炎リスク/国立国際医療研究センター

 逆流性食道炎の有病率と薬剤などの危険因子について調査した結果、カルシウム拮抗薬、テオフィリン、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用が逆流性食道炎の独立した予測因子であることが示唆された。国立国際医療研究センターの植田 錬氏らが、BMJ Open Gastroenterology誌2024年12月16日号で報告した。 この後ろ向き横断研究は、2015年10月~2021年12月に国立国際医療研究センターで食道・胃・十二指腸内視鏡検査を受けた患者を対象とし、質問票を用いて患者の特徴、病歴、喫煙・飲酒歴、内視鏡検査時に服用していた薬剤に関するデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者1万3,993例中、逆流性食道炎の有病率は11.8%であった。・多変量ロジスティック回帰分析により、以下の因子が逆流性食道炎の独立した予測因子であることが示された。それぞれのオッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。- 男性:1.52(1.35〜1.72)、p<0.001- 肥満(BMI≧25):1.57(1.40〜1.77)、p<0.001- 喫煙:1.19(1. 02~1.38)、p=0.026- 飲酒:1.20(1.07~1.35)、p=0.002- 糖尿病:1.19(1.02~1.39)、p=0.029- 食道裂孔ヘルニア:3.10(2.78~3.46)、p<0.001- 重症萎縮性胃炎なし:2.14(1.77~2.58)、p<0.001- カルシウム拮抗薬の使用:1.22(1.06~1.40)、p=0.007- テオフィリンの使用:2.13(1.27~3.56)、p=0.004- NSAIDの使用:1.29(1.03~1.61)、p=0.026

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健康な高齢者では高用量ビタミンDで糖尿病リスクは低下しない

 たとえ高用量のビタミンDサプリメントを摂取したとしても、糖代謝異常がない高齢者の場合、2型糖尿病の発症リスク低下にはつながらないとする研究結果が発表された。東フィンランド大学のJyrki K. Virtanen氏らが行ったプラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験によるもので、詳細は「Diabetologia」に12月2日掲載された。 過去の観察研究からは、血中ビタミンD濃度が低い場合に2型糖尿病の発症リスクが高いという関連が示されている。しかし、観察研究の結果のみでは、ビタミンDサプリの摂取が糖尿病リスク抑制につながるかどうかは不明。他方、既に血糖値がやや高い前糖尿病の人を対象に行われた研究では、ビタミンDサプリ摂取が糖尿病への移行リスクをわずかに抑制する可能性も示唆されているが、健康な集団での有用性のエビデンスはない。これを背景としてVirtanen氏らは、フィンランドの一般住民を対象にビタミンDサプリ摂取の影響を検討した大規模研究(FIND)のデータを用いた解析を行った。 FINDの参加者は60歳以上の男性と65歳以上の女性で、心血管疾患やがん、腎障害などの既往がなく、摂取している全てのサプリに含まれているビタミンDが合計20μg/日以下などの条件を満たす2,495人。一次評価項目として心血管疾患、二次評価項目としてがん、三次評価項目として2型糖尿病の発症が設定されていた。ビタミンDの中用量(40μg/日)群、高用量(80μg/日)群、およびプラセボ群の3群に、1対1対1でランダムに割り付け、平均4.2年間介入した。 全参加者のうちベースライン時点で血糖降下薬が処方されていた224人を除外した2,271人が、三次評価項目の解析対象とされた。この対象者の平均年齢は68.2±4.5歳、女性が43.9%、BMIは26.8±4.0であり、食事からのビタミンD摂取量は10.7±7.9μg/日で、66.0%はビタミンDサプリを摂取していなかった。解析対象者のうち504人は血中ビタミンD濃度(25〔OH〕D3)が測定されていて、その平均は29.8±7.2ng/mLだった。 追跡期間中に105人が2型糖尿病を発症。各群の発症者数は、ビタミンD中用量群が31人、高用量群36人、プラセボ群38人であり、100人年当たりの罹患率は同順に0.97、1.11、1.19だった。年齢と性別を調整後、プラセボ群を基準とする発症ハザード比は、中用量群が0.81(95%信頼区間0.50~1.30)、高用量群が0.92(同0.58~1.45)であり、ビタミンDの用量にかかわらず有意なリスク低下は観察されなかった。 追跡開始2年目までに2型糖尿病を発症した人を除外した解析や、性別、年齢層別、BMI別に層別化したサブグループ解析でも、ビタミンDサプリ摂取が2型糖尿病リスク低下につながる集団は特定されなかった。また、血糖値、血中インスリン値、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、BMI、ウエスト周囲長の変化も検討されたが、いずれもビタミンD摂取による有意な影響は観察されなかった。 これらの結果から著者らは、「健康な高齢者を対象としたわれわれの研究では、中用量または高用量のビタミンDサプリの長期摂取による2型糖尿病の発症抑止効果は示されなかった」と結論付けている。

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GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドは、駆出率の保たれた心不全肥満患者に有効(解説:佐田政隆氏)

 左室駆出率が40%未満の心不全を「左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)」、左室駆出率が50%以上の心不全を「左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)」、左室駆出率が40%以上50%未満の心不全は「左室駆出率が軽度低下した心不全(HFmrEF)」と定義されている。 HFrEFに対する薬物療法では、この30年ほどの間に著明な進歩があった。β遮断薬、ACE阻害薬/ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)もしくはARNI (アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)、そして最近はSGLT2阻害薬の上乗せが予後をさらに改善することが証明された。現在、β遮断薬、ARNI、MRA、SGLT2阻害薬はfantastic fourと呼ばれ、HFrEF患者の予後改善のために1ヵ月以内に早期に導入することが強く推奨されている。 一方、HFpEFに対しては、β遮断薬、ACE阻害薬、ARB、ARNI、MRAを用いて各種大規模臨床研究が行われてきたが、いずれも予後を改善することは証明できなかった。近年、HFrEFよりHFpEFが増加しているという報告もあり、今後予想される心不全パンデミックに備えて、HFpEFに対する有効な治療法の開発が望まれていた。 この数年、SGLT2阻害薬がHFrEFのみでなくHFpEFに対しても有効性があることが証明され、ダパグリフロジンとエンパグリフロジンは糖尿病がなくても心不全治療薬として承認されている。しかし、HFpEF患者の予後改善のためには、さらなる追加の治療法が求められていた。 2023年、肥満を有するHFpEF患者において、セマグルチド2.4mgによる治療によって、プラセボと比較して、症状と身体的制限が軽減し、運動機能が改善し、体重が減少することがSTEP-HFpEF試験で報告された。 小腸から分泌されて膵臓に作用するインクレチン製剤としては長年GLP-1受容体作動薬が用いられてきたが、昨今、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドが糖尿病治療薬として開発され、その強力な血糖降下作用と体重減少効果から、本邦でも急速に普及している。 本論文では、BMI 30以上の肥満をもったHFpEF患者(2型糖尿病患者はおよそ48%)に対するチルゼパチドの効果を検討した。主要評価項目である104週間での「心血管死と心不全増悪」を、チルゼパチドでプラセボと比較して有意に減少させた。また、カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:スコア範囲は0~100で、数値が高いほど症状と身体的制限が少ないことを示す)と6分間歩行距離を改善した。体重減少は、チルゼパチド群で-13.9%、プラセボ群で-2.2%であった。注目すべきことには、高感度CRPがチルゼパチド群でなんと-38.8%低下し、プラセボ群では-5.9%であった。この抗炎症効果は、体重減少だけでは説明がつかないと思われ、膵臓以外の臓器へのチルゼパチドの多面的な作用の関与が大きいと思われる。 米国ではチルゼパチドは肥満症治療薬として2023年11月にすでに承認されているが、日本においてもセマグルチドに続いて2024年12月27日に承認された。肥満を有するHFpEF患者に対するチルゼパチドの効果のメカニズム、GLP-1受容体作動薬とGIP/GLP-1受容体作動薬でHFpEFに対してどちらがより効果的なのか、肥満のないHFpEFにも有効なのかと疑問は尽きないが、今後の臨床研究、基礎研究で解明されていくことが期待される。

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体脂肪率が片頭痛の重症度と関連、とくに女性で顕著

 片頭痛は、悪心、光恐怖症、音恐怖症を頻繁に伴う反復性頭痛を特徴する疾患であり、その有病理は非常に高く、社会経済的負担の増大と関連している。近年、一般人口における肥満の割合は増加しているが、体脂肪率と重度の頭痛や片頭痛の発症率との関連は、あまり研究されていなかった。中国・重慶医科大学のRongjiang Xu氏らは、この課題を明らかにするため、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛の発生率との関連を調査した。Cureus誌2024年10月26日号の報告。 対象は、1999〜2004年の米国国民健康栄養調査(NHANES)より抽出した5,060例。性別、貧困所得比(PIR)、学歴、喫煙状況、中程度の身体活動、高血圧で調整した後、制限付き3次スプライン(RCS)曲線およびロジスティック回帰を用いて、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛の発生率との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち、重度の頭痛または片頭痛が認められた患者は1,289例(25.5%)。・重度の頭痛または片頭痛を有する患者は、そうでない患者と比較し、女性の割合が高く、学歴、世帯収入、喫煙、アルコール摂取、糖尿病、高血圧が低い傾向であった。・とくに女性では、モデルにおいて体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛との間に有意な関連が認められたが、男性では認められなかった。・体脂肪率の四分位を用いた多変量ロジスティック回帰分析でも、同様の結果であった。 著者らは「関連変数で調整した後、体脂肪率と重度の頭痛または片頭痛との間に正の相関が認められた。この関連は、とくに女性で強かった」としたうえで「肥満と片頭痛との関連は複雑であり、体脂肪率が片頭痛の悪化に及ぼす影響を明らかにするためにも、さらなる研究が求められることが浮き彫りとなった」とまとめている。

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不規則な睡眠は肥満に関連する肝疾患の特徴?

 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、夜中の頻回な覚醒や、入眠後の覚醒時間の延長など、睡眠の断片化に関連していることが、新たな研究で明らかになった。バーゼル大学消化器・肝疾患センター(スイス)のSofia Schaeffer氏らによるこの研究の詳細は、「Frontiers in Network Physiology」に12月4日掲載された。Schaeffer氏は、「MASLD患者は、頻回な覚醒や覚醒時間の延長により、夜間の睡眠が著しく断片化していることが明らかになった」と話している。 MASLDは、肝臓に脂肪が過剰に蓄積する病態をいう。通常は、肥満や2型糖尿病と関連して生じ、肝臓に炎症や瘢痕化をもたらし、重症化すると肝不全に至る可能性がある。MASLDの世界的な有病率は25%程度と推定されている。マウスモデルを用いた過去の研究では、概日リズムの乱れが肝臓を含む複数の臓器の代謝に影響を与え、MASLDの発症に関与する可能性が示唆されている。また、睡眠に関する質問票を用いた研究では、MASLD患者における睡眠覚醒リズムの乱れも確認されている。 今回の研究でSchaeffer氏らは、手首に装着するタイプの加速度センサー(アクチグラフ)により、24時間連続で4週間にわたって記録された活動と休息に関する客観的なデータを分析して、MASLD患者と健常者の睡眠パターンを比較した。対象は、生検でMASLDが確認された35人(年齢中央値58歳)と健康な対照16人(同61歳)だった。睡眠リズムを整えるために、2週目に標準化された睡眠衛生教育セッションが1回実施された。 その結果、MASLD群は対照群に比べて、一晩当たりの覚醒回数が多く(8.5回対5.5回、P=0.0036)、入眠後の覚醒時間が長く(45.4分対21.3分、P=0.0004)、睡眠効率が低い(86.5%対92.8%)ことが明らかになった。客観的な睡眠時間に差は認められなかったが、MASLD群の自己報告による睡眠時間は対照群よりも短く(6時間対6時間45分、P=0.01)、睡眠潜時が長く、睡眠の質が低下していることが示唆された。標準化された睡眠衛生教育セッション後も、これらの睡眠パラメーターに変化は認められなかった。このほか、睡眠障害が心理的ストレスと関連していることを報告したのは、対照群ではわずか6%程度であったのに対して、MASLD群では32%に達していた。 Schaeffer氏は、MASLD患者の睡眠の質が低下する理由について、「根本的なメカニズムには、遺伝、環境要因、および免疫反応の活性化が関与していると考えられるが、最終的には肥満とメタボリックシンドロームが原因となっている」とジャーナルの発行元であるFrontiers社のニュースリリースで述べている。 また、論文の上席著者であるバーゼル大学消化器・肝疾患センターのChristine Bernsmeier氏は、「今後の研究では、MASLD患者の睡眠覚醒リズムを改善するために、継続的な睡眠カウンセリングセッションや光療法などの介入を他のライフスタイルの変化と組み合わせて検討する必要がある」と話している。

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疾患の検出や発症予測、血液検査が一助に?

 定期健診で一般的に行われている血液検査の検体には、検査を受けた人の健康状態について現在医師が得ている情報よりも多くの情報が隠されているようだ。全血球計算(complete blood count;CBC)と呼ばれるルーチンで行われている血液検査が、心疾患や2型糖尿病、骨粗鬆症、腎疾患など数多くの疾患の検出や発症の予測に役立つ可能性のあることが新たな研究で示された。米マサチューセッツ総合病院の病理医であるJohn Higgins氏らによるこの研究は、「Nature」に12月11日掲載された。 CBCでは、全身を循環している血液中の赤血球、白血球、血小板数を測定する。Higgins氏は、「CBCは一般的な検査だ。われわれの研究では、CBCは完全に健康な人であっても個人差が大きく、より個別化されたプレシジョンメディシン(精密医療)のアプローチによって、その人の健康状態や疾患の実態をより詳細に把握できる可能性のあることが示された」と説明する。 Higgins氏らは今回、1万2,407人の健常者から採取された血液を用いて、CBCによって測定される10種類の血液成分について調査し、患者ごとのばらつきを計算した。調査した成分は、赤血球数(RBC)、白血球数(WBC)、血小板数(PLT)、ヘマトクリット値(HCT)、ヘモグロビン濃度(HGB)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)、平均血小板容積(MPV)、赤血球分布幅(RDW)である。その結果、性別や人種/民族、年齢の影響を受けることのない、それぞれの患者に固有の「セットポイント(基準値)」が存在することが明らかになった。研究グループは、これらのセットポイントを活用することで、医師は一見健康そうに見える人でも早期の段階で疾患を診断できる可能性があると話す。 次に、セットポイントが推定されてから15年間の追跡データがそろう1万4,371人のデータを用いて、セットポイントと全死亡リスクや主要疾患の発症リスクとの関連を検討した。その結果、多くの指標において、セットポイントの値が高くなるか低くなるにつれ10年間の死亡リスクが上昇することが明らかになった。ただし、HCTとHGBに関しては、セットポイントの値が中間で最もリスクが低く、両極端の値(高過ぎる、低過ぎる)でリスクが上昇することが示された。また、MCHCのセットポイントが低いことは心筋梗塞や脳卒中、心不全(主要心血管イベント〔MACE〕)のリスク上昇と関連し、WBCの高いセットポイントは2型糖尿病、MCVの高いセットポイントは骨粗鬆症、HCTの低いセットポイントは慢性腎臓病、RDWの高いセットポイントは心房細動、RBCの低いセットポイントは骨髄異形成症候群のリスク増加と関連していた。 Higgins氏らは、「セットポイントを調べることで、本研究で対象となった健康な成人の20%以上が、その値の逸脱により、10年間での全死亡や心血管疾患や糖尿病などの早期介入が有効な主要疾患の診断の絶対リスクが2〜5%以上増加することが示唆された」と述べている。 なお、今回の研究の結果は先行研究の結果とも一致しているという。例えば、HGBの低下は心筋梗塞のアウトカムに関連し、MCVは大腿骨近位部骨折に、またWBCは糖尿病に関連していることが示されている。 Higgins氏らは、「これらの関連が生じるメカニズムの解明にはさらなる研究が必要だが、今回の研究では、セットポイントが複数の疾患において、2〜4倍の相対リスクの層別化を可能にすることが示された。これは、家族歴や一部の遺伝子変異を含む一般的な疾患のスクリーニング因子による相対リスクの層別化に匹敵する」と結論付けている。

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多発血管炎性肉芽腫症〔GPA:granulomatosis with polyangiitis〕

1 疾患概要■ 概念多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)は抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)の主要疾患の1つで、血清中に出現するANCAと小型血管(臓器内動静脈、細動静脈、毛細血管)の肉芽腫性炎を特徴とする。罹患血管には免疫複合体の沈着はほとんどみられない(pauci-immune)。■ 疫学GPAは国が定める指定難病で、2022年度末の指定難病受給者証所持者数は3,437人であり、登録患者数は徐々に増加している。世界的には100万人当たり96.8人の患者数が報告されている。GPAは、日本を含むアジアよりも欧州、とくに緯度が高い地域で多くみられる傾向がある。■ 病因GPAは他の自己免疫性リウマチ性疾患と同様に、遺伝的要因と環境要因が相まって発症すると考えられている。ヨーロッパおよび北米におけるヨーロッパ系集団を対象としたゲノムワイド関連解析では、HLA-DPA1、DPB1遺伝子領域との関連が報告されており、臨床分類よりもPR3-ANCAとの関連がより強くみられる。日本人集団においてもDPB1*04:01の増加傾向が認められている。非HLA領域では、SERPINA1、PRTN3がヨーロッパ系集団で、ETS1の発現低下に関連する単塩基バリアントが日本人集団で関連することが報告されている。■ 症状GPAは発熱・倦怠感、体重減少、筋痛、関節痛などの全身症状と多彩な臓器症状を呈する疾患である。臓器病変は、眼(34~61%)、耳・鼻・咽喉頭(83~99%)、肺(66~85%)、心臓(8~25%)、消化管(6~13%)、腎臓(66~77%)、皮膚(33~46%)、中枢神経(8~11%)、末梢神経(15~40%)に出現する。眼病変、上・下気道病変、腎病変がとくに重要である。眼病変として、結膜炎、上強膜炎、強膜炎、眼球突出、鼻病変として鼻閉・膿性鼻汁・鼻出血、鼻粘膜の痂疲・潰瘍、鞍鼻、耳病変として滲出性または肉芽腫性中耳炎、咽喉頭病変として口腔内潰瘍、声門下狭窄による嗄声・呼吸困難がみられる。肺では肺肉芽腫性結節、肺胞出血、間質性肺炎がみられ、咳・息切れ・喀血などを呈する。腎では壊死性半月体形成性糸球体腎炎が典型的であり、しばしば急速進行性糸球体腎炎として発症する。■ 予後国内の前向きコホート研究では、治療開始後6ヵ月までの死亡率は1.9%で、治療開始後6ヵ月までに末期腎不全に至ったのは3.7%あった。中長期的には、治療に関連した副作用・合併症が問題となる。欧州における検討では、AAV患者を平均7.3年追跡すると65.6%の患者で治療に関連した副作用・合併症(高血圧、骨粗鬆症、糖尿病、心血管イベント、白内障など)がみられ、グルココルチコイドの早期減量・中止が重要と考えられる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)国内における診断には指定難病の診断基準が広く用いられている。国際的には、米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会が共同で開発した分類基準(表1)を参考に診断することが多い。疾患特異的自己抗体として抗プロテイナーゼ3(抗PR3)抗体(PR3-ANCA)が知られている。活動期にはCRPが陽性となることが多い。GPAでみられる臓器病変を想定した問診と身体診察に血液検査と画像検査を組み合わせて診断および罹患臓器を検索し、活動性を評価する。表1 GPAの分類基準分類基準を使用する前に以下を考慮する。小・中型血管炎と診断された患者を多発血管炎性肉芽腫症に分類するために、本分類基準を適用すべきである。本分類基準を適用する前に、血管炎類似疾患の除外をすべきである。画像を拡大する10項目の中から該当項目のスコアを合計し、5点以上であれば多発血管炎性肉芽腫症に分類する。(難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班.多発血管炎性肉芽腫症の分類基準[2024年9月20日アクセス]より引用)3 治療 (治験中・研究中のものも含む)ANCA関連血管炎の中でGPAと顕微鏡的多発血管炎(MPA)の標準治療は同一であり、難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究班が作成した診療ガイドラインに示されている。標準治療は、寛解導入治療と寛解維持治療で構成される。さらに、長期予後を改善するために、合併症リスクを最小限に抑える必要がある。寛解導入治療ではリツキシマブまたはシクロホスファミドのいずれかを、グルココルチコイドまたはアバコパン(商品名:タブネオス)またはその両者と併用する。リツキシマブはキメラ型抗CD20抗体で、375mg/体表面積1m2を週に1回、4週連続で投与する。シクロホスファミドは15mg/kgを0、2、4、7、10、13週に点滴静注で投与するパターンが標準だが、投与量は年齢と血清クレアチニン濃度で調整し(表2)、投与回数と投与間隔は原疾患の重症度と安全性のバランスで調整する。シクロホスファミドは経口投与(1~2mg/kg/日)も可能だが、副作用の観点から点滴静注が望ましい。表2 年齢および腎機能によるシクロホスファミド投与量の調節画像を拡大する(Ntatsaki E, et al. Rheumatology. 2014;53:2306-2309.より引用)アバコパンは経口の補体C5受容体阻害薬で、1回30mgを1日2回朝・夕に内服する。アバコパンは原則的にグルココルチコイドと併用する。アバコパンは腎機能改善に有用である可能性が示されている。アバコパンの副作用として重症肝機能障害(胆道消失症候群を含む)が報告されているので、血管炎の治療に精通した施設での使用が望ましい。標準的な寛解導入療法で使用するグルココルチコイドの投与量は2つの臨床試験結果から、以前よりも大幅に減量された(表3)。表3 寛解導入治療におけるグルココルチコイド減療法画像を拡大する(Walsh M, et al. N Engl J Med. 2020;382:622-631.およびFuruta S, et al. JAMA. 2021;325:2178-2187.より引用)血清クレアチニン濃度が5.7mg/dLを超える最重症の腎障害を伴うGPAでは、グルココルチコイドとシクロホスファミドに血漿交換が併用される場合がある。MPAおよびGPAに対する血漿交換のメタ解析から、欧州リウマチ学会の推奨では血清クレアチニン濃度が3.4mg/dLを超える腎障害で血漿交換を考慮する場合があるとされている。リツキシマブにより寛解導入した場合には、治療開始後6ヵ月から寛解維持治療に移行し、シクロホスファミド点滴静注の場合には、最終投与後3~4週間で寛解維持治療に移行する。寛解維持治療はリツキシマブまたはアザチオプリンを用いる。寛解維持療法におけるリツキシマブ投与方法は、375mg/体表面積1m2を6ヵ月ごと、500mg/回を6ヵ月ごと、1,000mg/回を4ヵ月または6ヵ月ごとなどがある。アザチオプリンは1~2mg/kg/日を使用し、開始前にNUDT15遺伝子多型検査を実施する。寛解維持治療における有効性はアザチオプリンよりもリツキシマブが有意に優れている。GPAはMPAよりも再発しやすい。寛解維持治療中は症状および検査をモニタリングし、早期に再発の兆候を把握する。腎病変は症状なく再発することがあるため、尿検査を定期的に実施する。寛解維持治療期間は、リツキシマブでは1年6ヵ月よりも4年、アザチオプリンでは1年よりも2年6ヵ月以上が有意に再発を防ぐことが示されている。個々の患者における寛解維持治療期間は、治療開始前の疾患活動性、治療経過、再発歴、合併症を参考に検討する。4 今後の展望GPAの分類基準が改訂され、診断に関する検討は一段落したと考えられる。治療に関する課題として、アバコパンを寛解導入に使用する際に適切なグルココルチコイドの使用方法、リツキシマブの寛解維持療法の標準化、アバコパンの安全性、新規の抗B細胞治療などが挙げられる。5 主たる診療科膠原病リウマチ内科、腎臓内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)難治性血管炎の医療水準・患者QOL向上に資する研究(医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 多発血管炎性肉芽腫症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報全国膠原病友の会(患者とその家族および支援者の会)膠原病サポートネットワーク(患者とその家族および支援者の会)1)針谷正祥 責任編集. Evidence Base Medicineを活かす膠原病・リウマチ診療. メジカルビュー社.2020.2)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業 針谷正祥ほか編集. ANCA関連血管炎診療ガイドライン2023. 診断と治療社.2023.3)Hellmich B, et al. Ann Rheum Dis. 20242;83:30-47.4)Ntatsaki E, et al. Rheumatology. 2014;53:2306-2309.5)Walsh M, et al. N Engl J Med. 2020;382:622-631.6)Furuta S, et al. JAMA. 2021;325:2178-2187.公開履歴初回2024年12月31日

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第247回 プラスチックの化学物質のたった1年間の影響で世界的に約60万例が死亡

プラスチックの化学物質のたった1年間の影響で世界的に約60万例が死亡世界の38ヵ国を調べたところ、プラスチックにたいてい含まれる3つの化学物質と関連する2015年のたった1年間の健康の害が1.5兆ドルの負担を強いました1,2)。言い換えると、それらの化学物質を使っていなければ1.5兆ドル分を浮かせられたことになります。メリーランド大学の経済学者Maureen Cropper氏らによる研究です。プラスチックは色付け、柔軟性、耐久性のために1万6,000を超える化学物質を使って製造されます。プラスチックから漏れ出した化学物質はそれらの普段使いによって多くの人に行き及んでいます。食品包装によく使われているプラスチック成分・ビスフェノールA(BPA)は内分泌を撹乱することで知られ、心血管疾患、糖尿病、生殖機能障害と関連します。食品加工、家庭用品、電気製品で使われるフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)は心血管が原因の死亡や発育不調との関連が知られます。繊維、家具、その他家庭用品に添加される難燃剤・ポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)は神経に差し障るようであり、妊娠中にPBDEを被った母親の子は認知発達を損ないます。プラスチックに含まれる化学物質の中で最もよく調べられているそれら3つと関連する健康の害に的を絞り、できるだけ多くの国におけるそれらの害の蔓延を調べることをCropper氏らは目指しました。Cropper氏らは情報がそろっていて最も万全な検討ができた2015年のデータを使って、38ヵ国でのBPA、DEHP、PBDEの健康や経済への影響を推定しました。その結果、BPAは540万例の虚血性心疾患、35万例弱の脳卒中と関連し、43万例強の死亡を引き起こしていました。それら死亡の経済的損失は1兆ドル弱です。DEHPは55~64歳の中高齢者の16万例強の死亡と関連し、4千億ドル弱の経済的損失をもたらしました。PBDEは2015年生まれの子の知能指数(IQ)1,170万点の損失をもたらし、800億ドルを超える生産性損失と関連しました。それらを総ずると、38ヵ国でBPAとDEHPを排除していたら約60万例が死なずに済みました。また、PBDEも含めて3つとも排除していたら1.5兆ドルを捻出できたことになります。米国、カナダ、欧州連合(EU)加盟国はすでにBPA、DEHP、PBDEを減らす手立てを始めており、成果も示唆されています。たとえば米国では製造業界の規制や自主的な制限のかいがあって、BPAに起因する心血管死が2003年から2015年に60%減じています。そのような前向きな取り組みの一方で、プラスチックに使われている7割超の化学物質は毒性が検査されないままです。プラスチックの化学物質の害から健康を守るには化学物質を扱う法律を根本から変える必要があると著者は言っており2)、それら化学物質の健康への影響を減らす国際的な合意が国連条約(United Nations Global Plastics Treaty)に基づいて確立されることを望んでいます3)。参考1)Cropper M, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2024;121:e2412714121. 2)Health, Economic Costs of Exposure to 3 Chemicals in Plastic: $1.5T in a Year, Study Shows / University of Maryland3)These 3 plastic additives are lowering our IQ and killing us sooner, new study finds / MassLive.com

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糖尿病性腎症、コーヒーによるリスク減は摂取時間が重要

 糖尿病患者の食事内容、摂取タイミングに関する研究は多数あるが、コーヒー摂取量と摂取タイミングが糖尿病患者の慢性腎疾患(CKD)リスクと関連するかを検討した研究結果が報告された。中国・ハルビン医科大学のYiwei Tang氏らによる本研究は、Food Functon誌オンライン版2024年10月14日号に掲載された。 研究者らは、2003~18年のNHANES(全米国民健康栄養調査)から糖尿病患者8,564例を解析対象とした。24時間の食事調査を用いてコーヒーの摂取状況を評価し、摂取時間、または摂取の多い時間を4つの時間帯(1. 早朝から午前中[5:00~8:00]、2. 午前中から正午[8:00~12:00]、3. 正午から夕方[12:00~18:00]、4. 夕方から早朝[18:00~5:00])の4群に分類した。さらにコーヒー摂取量の多寡で3つに層別化した。CKDの定義は、eGFRが60mL/min/1.73m2未満、または尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が30mg/g以上とした。年齢、性別、BMI、生活習慣などの交絡因子を調整したロジスティック回帰モデルを用いて、コーヒー摂取量、摂取時間とCKDリスクの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・8,564例の糖尿病患者の平均年齢は61.9歳、男性4,480例(52.9%)だった。1人当たりのコーヒー摂取量の平均は2.83g/kgであり、CKD有病率は41.6%であった。・参加者のうちコーヒーを摂取しない人が3,331例(38.9%)、摂取者のうち1. 早朝から午前中に摂取する人が17.6%、2. 午前中から正午が27.6%、3. 正午から夕方が8.3%、4. 夕方から早朝が7.5%だった。・コーヒー摂取群は、非摂取群と比較してCKDの有病率が11%低かった(オッズ比[OR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.80~0.99)。・摂取のタイミングについては、1. 早朝から午前中に摂取する群は摂取しない群と比較してCKDのリスクが有意に低下した(OR:0.87、95%CI:0.77~0.98)。また、その中でもコーヒー摂取量が最も多い層のリスク低下が最も大きかった(OR:0.83、95%CI:0.70~0.98)。・一方で、3. 正午から夕方の摂取群では、コーヒー摂取量が最も多い層は最も少ない層と比較してCKDのリスクが上昇した(OR:1.35、95%CI:1.07~1.71)。4. 夕方から早朝の摂取群でも同様だった(OR:1.28、95%CI:1.01~1.64)。この結果はさまざまなサブタイプにおいても共通していた。 著者らは「研究結果から、コーヒー摂取のタイミングがCKDの予防に重要な役割を果たす可能性が示唆された。とくに、早朝から午前中に摂取することでリスクが低下する一方で、午後以降の大量摂取はリスクを増加させるという結果が得られた。この時間依存性の効果は、コーヒーに含まれるカフェインやその他の生理活性物質が代謝リズムやインスリン感受性に与える影響に関連している可能性がある。糖尿病患者の栄養指導においてコーヒー摂取のタイミングに関する知見を組み込むことで、CKD発症リスクを軽減する新たなアプローチが提案できる可能性がある」とした。

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糖尿病予備群が大動脈弁狭窄症を引き起こす

 糖尿病予備群の主要な原因であるインスリン抵抗性が、大動脈弁狭窄症のリスクを高めることを示唆するデータが発表された。クオピオ大学病院(フィンランド)のJohanna Kuusisto氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Medicine」に11月26日掲載された。 大動脈弁狭窄症(AS)は高齢者に多い心臓弁の病気の一つであり、心不全や死亡のリスクを高める。Kuusisto氏は、ジャーナル発のリリースの中で、「この新たな発見は、インスリン抵抗性がASの重大かつ修正可能なリスク因子である可能性を浮き彫りにしている。インスリンに対する感受性を高めることを意図した健康管理は、ASのリスクを減らし、高齢者の心血管アウトカムを改善するための新たなアプローチとなり得る」と語っている。 ASの発症後には、時間がたつにつれて大動脈弁が厚く硬くなっていき、心臓が血液を送り出す際の負担が大きくなる。しかし、胸痛や息切れ、動悸、疲労などが現れるまでに何年ものタイムラグがあり、それらの自覚症状が現れた時には既に重症化していることが少なくない。米国心臓協会(AHA)は、75歳以上の米国人の13%以上がASに罹患しているとしている。 一方、インスリン抵抗性は、血糖を細胞に取り込む時に必要なホルモンであるインスリンの作用が低下している状態のことで、2型糖尿病が発症する何年も前に起こり始めていることが多い。インスリン抵抗性がより進行すると、徐々に血糖値が高くなり、やがて糖尿病の診断基準を超える高血糖となる。 この研究では、ASのない45~73歳(平均年齢62歳)のフィンランド人男性1万144人を対象とする、メタボリックシンドロームの疫学調査のデータが解析に用いられた。平均10.8±1.4年の追跡期間中に、1.1%に当たる116人が新たにASと診断された。Cox回帰分析の結果、インスリン抵抗性を表す複数の指標が、ASの発症と関連していることが明らかになった。 例えば、血清Cペプチドが高い場合は、ASの発症ハザード比(HR)が1.47(95%信頼区間1.22~1.77)であった。血清Cペプチドが高いことはインスリン分泌が増加していることを示しており、インスリン抵抗性による血糖上昇の負荷が高まっていることを表している。また、Matsudaインデックスという指標が高い場合はHR0.68(0.56~0.82)だった。Matsudaインデックスは値が低いほどインスリン抵抗性がより強いことを意味する。これらの関連性は、ASの既知のリスク因子を調整した解析、および、糖尿病患者を除外した解析でも有意だった。 Kuusisto氏は、「体重管理や運動の励行などによってインスリン感受性を高めることが、ASの発症抑止につながるのかを確認するため、今後のさらなる研究が求められる」と述べている。

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スポーツの「観戦」にも有意な健康効果―日本人対象の縦断的研究

 スポーツを「する」のではなく、「見る(観戦する)」ことも、健康増進につながることを示した、国内での縦断的研究の結果が報告された。観戦頻度の高い人は1年後のメンタルヘルスや生活習慣の指標が良好だったという。ただし、テレビなどのメディアでの観戦では、一部の身体疾患のリスクが上昇する可能性も示唆されたとのことだ。公益財団法人明治安田厚生事業団体力医学研究所の川上諒子氏らの研究によるもので、詳細は「Preventive Medicine」12月号に掲載された。 スポーツを含む身体活動を実践することの健康効果については、膨大なエビデンスの裏付けがある。しかし、スポーツを観戦することが健康に与える影響については、因果関係の証明にはならない横断研究の報告があるものの、因果関係を検討可能な長期間の縦断研究は過去に行われていない。これを背景として川上氏らは、健診受診者対象の前向きコホート研究「明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ)」のデータを用いた縦断的解析を行った。 この研究の解析対象は、2017~2019年度にMYLSスタディに参加した6,327人。主な特徴は、平均年齢50.7歳、女性48.9%、既婚者71.8%、大学卒以上81.7%であり、27.8%が週に1日以上、メディアでスポーツの試合を観戦し、21.7%は年に2日以上、現地で直接観戦していた。 ベースライン時点から1年後、身体的な健康や生活習慣、幸福感などに関する20項目のアウトカムを評価。結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、教育歴、就労状況、婚姻状況、独居/同居、暮らし向き、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・睡眠障害に対する処方薬数)を調整後、以下のような関連が明らかになった。 まず、現地でのスポーツ観戦が過去1年間に1日もなかった群(65.5%)に比較して、2日以上観戦していた群(21.7%)は、中等度の心理的ストレスを抱えるリスクが17%低く(リスク比〔RR〕0.83〔95%信頼区間0.72~0.95〕)、重度の心理的ストレスの該当者も有意に少なかった(オッズ比0.43〔同0.23~0.79〕)。 また、現地での観戦頻度が高いほど心理的ストレスを抱えるリスクが低下するという関連が認められた(傾向性P値が中等度ストレスについては0.011、重度ストレスは0.016)。同様に、現地で観戦した人は脂質異常症のリスクが低く(1年間に2日以上観戦でRR0.89〔0.79~1.00〕、傾向性P=0.049)、さらに生活習慣の改善に前向きであった(行動変容ステージが前熟考期であることのRRが0.77〔0.64~0.93〕、傾向性P=0.005)。 次に、メディアでの観戦が過去1カ月間に1日もなかった群(41.6%)に比較して、週に1日以上観戦していた群(27.8%)は、身体活動不足であることが少なく(RR0.94〔0.88~1.00〕、傾向性P=0.038)、朝食欠食が少なく(RR0.85〔0.75~0.96〕、傾向性P=0.008)、幸福感が高かった(RR1.08〔1.00~1.17〕、傾向性P=0.048)。 ただし、メディアでの観戦は、BMIの上昇(β=0.03〔0.00~0.05〕、傾向性P=0.025)のほか、高血圧(RR1.09〔1.01~1.19〕、傾向性P=0.026)や糖尿病(RR1.16〔1.02~1.31〕、傾向性P=0.018)のリスク上昇と関連していた。 著者らは本研究を「スポーツ観戦の頻度と健康状態などとの関連を、大規模かつ縦断的に解析した初めての研究」と位置づけ、「現地観戦でもメディアでの観戦でも、スポーツを見ることでメンタルヘルスや生活習慣が良好になる可能性が示された。一方で、メディアでの観戦には肥満や生活習慣病のリスクが潜んでいることも示唆された」と総括している。なお、メディア観戦がいくつかのアウトカムに負の影響を及ぼし得る点については、「座ったままで飲食をしながら観戦するという、いわゆる“カウチポテト”になりやすいことの影響も考えられる」と考察している。

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