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脂質低下薬が乳がんの再発・死亡リスクへ及ぼす影響~前向きコホート研究

 脂質低下薬は心血管疾患予防に使用され、なかでもスタチンは最もよく使用される。前臨床および観察研究により、スタチンの乳がん患者における予後改善の可能性が示されている。 ドイツがん研究センターのStefan Nickels氏らは、乳がん患者の大規模コホートにより、再発および死亡リスクにおける脂質低下薬の影響を調査した。その結果、これまでのスタチン使用による予後改善を示す研究報告とは矛盾しないが、脂質低下薬との関連をサポートする明確なエビデンスは示されなかったと報告した。PLoS One誌2013年9月25日号に掲載。 著者らは、2001年~2005年に診断された50歳以上の乳がん患者の大規模な前向きコホートであるドイツのMARIEplus研究のデータを分析した。 全死亡率、乳がんによる死亡率、乳がん以外での死亡率については、ステージI~IVの浸潤性乳がんの3,189例を、また再発リスクについては、ステージI~IIIの乳がん3,024例を採用した。採用時における自己申告での脂質低下薬使用との関連について、Cox比例ハザードモデルを用いて評価した。研究地域、腫瘍グレード、エストロゲン/プロゲステロン受容体の状態で層別化し、年齢、腫瘍の大きさ、リンパ節転移、転移、更年期障害のホルモン補充療法、がんの発見方法、放射線療法、喫煙で調整し分析した。死亡率の解析では心血管疾患、糖尿病、BMIについて追加補正した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値の5.3年の間に、ステージI~IV患者3,189例のうち404例が死亡し、うち286例が乳がんによる死亡であった。・自己申告による脂質低下薬使用は、乳がん以外での死亡率の増加(ハザード比[HR]:1.49、95%信頼区間[CI]:0.88~2.52)と全死亡率の増加(HR:1.21、95%CI:0.87~1.69)に、有意ではないが関連していた。一方、乳がんによる死亡率との関連は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.67~1.60)。・ステージI~IIIの乳がんにおいては、追跡期間中央値の5.4年の間に387例が再発した。・脂質低下薬の使用は、再発(HR:0.83、95%CI:0.54~1.24)と乳がんによる死亡(HR:0.89、95%CI:0.52~1.49)のリスク減少に、有意ではないが関連していた。

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EASD2013

9月23~27日にスペインで、EASD2013(第49回欧州糖尿病学会議)が開催されました。今回はCareNet独自の視点で知っておいて損はない今後の新薬や日本人の先生の発表を中心に厳選しています。今回の発表は、診療にどのような影響を与えるのでしょう?ご覧ください。9月26日発表演題日本人へのトホグリフロジン投与、単剤・併用での長期試験成績が発表演題名:Efficacy and safety of tofogliflozin administered for 52 weeks as monotherapy or COMBOined with other oral hypoglycaemic agents in Japanese patients with type 2 diabetesBG薬併用時の全死亡リスクの差は?DPP-4阻害薬 vs SU薬演題名:Combination therapy with metformin plus sulfonylureas versus metformin plus DPP-4 inhibitors and risk of all-cause mortality9月25日発表演題初の前向き試験 発表!スタチンによる糖尿病新規発症への影響は?演題名:Effect of pitavastatin on the incidence of diabetes in Japanese individuals with impaired glucose tolerance9月24日発表演題GLP-1受容体作動薬「Albiglutide」、BG薬への上乗せ効果演題名:HARMONY 3: 104 week efficacy of albiglutide compared to sitagliptin and glimepiride in patients with type 2 diabetes mellitus on metformin2型糖尿病のCVD予測に、6つのマーカーが有用演題名:Biomarkers for prediction of CVD in type 2 diabetes

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2型糖尿病のCVD予測に、6つのマーカーが有用

2型糖尿病における心血管疾患(CVD)予測因子として、NT-ProBNPを含む6つのバイオマーカーが有用であることが示唆された。関連のあったバイオマーカーは、NT-ProBNP、アポCIII(ApoCIII)、可溶性-RAGE(sRAGE)、高感度トロポニンT、IL-6およびIL-15の6つであった。演者のHelen C. Looker氏は、今回の結果についてIL-15が予測因子となることは新たな発見であり、ApoCIIIとsRAGEにおけるCVD発症との逆相関の関連についても、さらなる研究が必要であると語った。これまでに、2型糖尿病におけるCVD予測因子に有用とされるバイオマーカーは複数報告されている。そこで、CVD予測因子として有用なバイオマーカーを検索するため、5つのコホート研究の調査が実施された。本調査は、SUMMIT(SUrrogate markers for Micro- and Macrovascular hard endpoints for Innovative diabetes Tools)研究の一環である。対象となったコホート研究は、Go-DARTS(n=1,204)、スカニア糖尿病レジストリ(n=666)、MONICA/KORA(n=308)、IMPROVE(n=94)およびストックホルム研究(n=46)である。候補バイオマーカーとしては、糖尿病患者、非糖尿病患者を問わず、これまでの研究でCVDとの関連が報告された42のマーカーが選択された。年齢、性別、糖尿病罹患期間、BMI、血圧、HbA1c、トリグリセリド、LDL-C、HDL-C、eGFR、喫煙、薬物治療(降圧剤、アスピリン、脂質異常症治療薬およびインスリン使用を含む)を共変量として解析が行われた。主な結果は以下のとおり。2型糖尿病におけるCVD予測因子として、6つのバイオマーカー(NT-ProBNP、ApoCIII、sRAGE、高感度トロポニンT、IL-6、IL-15)が強い関連を認めた。●NT-ProBNP(OR = 1.74、95%CI:1.51~2.02)●ApoCIII(OR = 0.81、95%CI:0.73~0.91)●sRAGE(OR = 0.86、95%CI:0.78~0.96)●高感度トロポニンT(OR = 1.28、95%CI:1.12~1.47)●IL-6(OR = 1.19、95%CI:1.07~1.33)●IL-15(OR = 1.16、95%CI:1.05~1.28)NT-proBNPおよび高感度トロポニンTが2型糖尿病におけるCVD発症に関連していることが明らかになった。IL-6は一般的なCVD予測因子としても知られているが、2型糖尿病患者においても同じくCVD予測因子となることが本調査で確認された。IL-15と2型糖尿病におけるCVD発症の関連性が、今回新たに報告された。ApoCIIIとsRAGEにおいてCVD発症と逆相関の関連が示唆された。Looker氏は「2型糖尿病患者におけるCVD予測因子となるマーカーが、今後の研究によって、さらに明確化されることを願っている」と講演を終えた。

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初の前向き試験発表!スタチンによる糖尿病新規発症への影響は?

スタチン治療は心血管系リスクを減らすとされているが、メタ解析の結果から糖尿病新規発症リスクを増加させる可能性が示唆されている。しかしながら、それらの試験データは後ろ向き解析によるものであり、糖尿病の診断基準も異なっていた。東京医科大学の小田原 雅人氏らは、J-PREDICT研究により耐糖能異常(IGT)患者におけるピタバスタチンの糖尿病新規発症率への影響を調査した。本研究は多施設前向き無作為化オープンラベル比較試験。耐糖能異常(IGT)患者1,269人がエントリーされ、ピタバスタチン群(ライフスタイル改善+ピタバスタチン[1~2mg/日])、あるいは対照群(ライフスタイル改善のみ)のいずれかに無作為に割り付けた。6ヵ月ごとに75gOGTTを測定し、プライマリ・エンドポイントを糖尿病新規発症率とした。結果は以下のとおり。ピタバスタチン群と対照群の糖尿病罹患率はそれぞれ1,000人年当たり163例および186例だった。ピタバスタチン群では、IGTから糖尿病新規発症のHRは0.82(95%CI:0.68~0.99、p=0.041)と、新規発症を18%抑制する結果だった。ピタバスタチン群は過去のスタチンによる報告とは異なり、糖尿病新規発症率を増加させることはなかった。高感度CRP(HsCRP)はピタバスタチン群で有意な低下がみられた。血管内皮機能の指標とされるADMAは両群とも有意に低下し、ピタバスタチン群のほうが低下傾向であった。アディポネクチン、酸化ストレスマーカーの尿中8-OHdGに有意な変化はなかった。有害事象は対照群と比較して有意差はなかったものの、軽度の筋肉痛の発症においてのみ有意差がみられた。スタチン自体は心血管リスクを軽減することから、糖尿病の新規発症を増加させるリスクよりも重要であるという見解で処方されている。しかしながら、今回の結果から、すべてのスタチンが糖尿病発症率を増加させるわけはないことが示唆され、今後のさらなる研究結果が期待される。

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日本人へのトホグリフロジン投与、単剤・併用での長期試験成績が発表

高選択的SGLT2阻害薬※トホグリフロジン(承認申請中)について、日本人における長期安全性と有効性を検討した成績が、山口大学の谷澤 幸生氏らにより報告され、トホグリフロジンの単独および併用における忍容性と有効性が確認された。演題では、食事療法・運動療法のみで血糖管理不十分な2型糖尿病患者に本剤を単独投与したMONO試験(安全性解析対象191例)、および既存の経口糖尿病治療薬(OAD)6種類のうちいずれかと併用したCOMBO試験(同593例)の結果が発表された。いずれもトホグリフロジン20mg群または40mg群にランダム化され、投与52週時の安全性と有効性が検討されている。主要評価項目は安全性、副次評価項目は52週時における、ベースラインからのHbA1c変化量、体重変化量を含むさまざまな代謝関連指標の変化量である。トホグリフロジンは、最も高選択的にSGLT2を阻害するとされる新しい経口血糖降下薬であり、現在国内で2型糖尿病を適応症として承認申請段階にある。結果は以下のとおり。総有害事象の頻度は単独・併用の両試験の合計で664例(84.7%)観察されたものの、重篤な有害事象は54例(6.9%)、投薬中止に至った有害事象は35例(4.5%)であった。5.0%以上の有害事象として、口渇、頻尿、低血糖、血中ケトン体増加などがあったが、臨床症状を伴うケトン体増加やケトアシドーシスはみられなかった。SU薬との併用時に他の経口薬との併用時と比べて低血糖頻度がわずかに高くなっていること、およびSU薬併用時のみで中等度の事象が3例起きていることに留意する必要があるものの、単剤・併用で重度の低血糖の報告はなかった。膀胱炎・尿路感染症の頻度は0.5%~4.7%、性器感染症の頻度は0.0%~3.4%であり、ほとんどが軽度かつ一過性なものであった。52週時のHbA1c変化量は、MONO試験で-0.67%、-0.66%(20mg、40mg)、COMBO試験で-0.77%、-0.87%(同)であり、COMBO試験ではいずれの経口薬と併用した場合においても同等の低下作用が確認された。体重変化量は、MONO試験で-3.06g、-3.44kg(同)、COMBO試験で-2.51kg、-2.98kg(同)で、体重低下は併用薬ごとに違いがあり、とくに40mg群ではαGIやメトホルミンとの併用時にわずかに強かった。その他、ウエスト周囲径の減少やアディポネクチンの増加、収縮期血圧の低下、HDL-C上昇などのメタボリックシンドローム関連因子やインスリン抵抗性指標であるHOMA‐IRが有意に改善していた。以上の結果より、トホグリフロジンの忍容性が確認され、トホグリフロジンは単独および既存の経口血糖降下薬との併用において2型糖尿病の新たな治療オプションとなることが示唆された。※高選択的SGLT2阻害薬は、腎尿細管において糖の再吸収に関与するトランスポーターのナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)を阻害し、血糖値依存的に尿糖排泄を促すことで血糖低下作用を発揮する。低血糖のリスクは低く、体重減少作用を有すると注目されている。

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BG薬併用時の全死亡リスクの差は?DPP-4阻害薬vs SU薬

SU薬+メトホルミンは最も一般的な併用の組み合わせであり、推奨されてきた。しかし、近年ではSU薬の安全性について懸念点があげられている。英国・カーディフ大学のC.J. Currie氏らは、メトホルミン処方中の患者における併用薬(DPP-4阻害薬、またSU薬)による全死亡リスクを評価した。本試験は、英国の臨床診療研究データリンク(CPRD)から抽出した2007年~2013年の間のSU薬あるいはDPP-4阻害薬のいずれかを併用したメトホルミン処方患者を対象とした。主要評価項目は全死亡であり、Cox比例ハザード・モデルを使用して比較した。結果は以下のとおり。主分析では、SU薬併用患者は3万3,983例、DPP-4阻害薬併用患者は7,864例であった。全死亡に関して、SU薬併用患者の調整ハザード比(aHR)は 1.36(95%CI:1.076~1.710、p=0.010)とDPP-4阻害薬併用患者に比較して増加した。現在、NICE(The National Institute for Health and Clinical Excellence)では、メトホルミンで効果不十分な場合にSU薬併用が推奨されている。Currie氏は、「メトホルミン服用患者において併用療法を始める場合は、これらのデータが考慮されるべきであり、さらに長期のコホート研究を実施したうえで、とくに総死亡に関しては治療選択による差を明らかにしていく必要がある」と述べた。

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GLP-1受容体作動薬「Albiglutide」、BG薬への上乗せ効果

長時間作用型GLP-1受容体作動薬であるAlbiglutideの長期有効性と安全性を検討した試験HARMONY3について、グラクソ・スミスクラインのM.Stewart氏らにより報告された。本試験は、メトホルミン単剤で血糖管理不十分な2型糖尿病患者にAlbiglutideを3年間投与する第III相二重盲検ランダム化比較試験。米国と欧州で実施されており、今回は2年間までの中間報告である。プラセボ群(104例、週1回)、シタグリプチン群(313例、100mg/日)、グリメピリド群(317例、2mg/日~4mg/日まで漸増)、Albiglutide群(315例、30mg/週~50mg/週まで漸増)の約1,000例が対象となっている。結果は以下のとおり。各群のベースラインから104週後のHbA1c変化量は、プラセボ群に比較していずれの実薬3群においても、低下が認められたが、Albiglutide群での低下作用が最も大きかった。プラセボ群(n=100):2.95(95%CI:0.55~5.47)シタグリプチン群(n=300):-3.06(同:-4.48~-1.64)グリメピリド群(n=302):-3.94(同:-5.36~-2.62)Albiglutide群(n=297):-6.89(同:-8.31~-5.57)また、体重ではAlbiglutide群は、プラセボ群より-0.2kg[95%CI:-1.1~0.7]、およびシタグリプチン群より-0.4kg[同:-1.0~0.3]と同等の体重減少が確認され、グリメピリド群との比較において-2.4kg[同:-3.0~-1.7]と有意な減少が示された。要救助高血糖状態の発生率は、プラセボ群59%、シタグリプチン群36%、グリメピリド群33%、Albiglutide群26%と、Albiglutide群において最も低頻度であった。その他、Albiglutide群での主な有害事象は、上気道感染症、下痢、吐き気などGLP-1受容体作動薬として既知の内容であった。以上のことから、Albiglutideの週1回投与は、シタグリプチンおよびグリメピリドよりもHbA1c低下効果に優れており、また同剤の高い忍容性も示唆された。

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食後血糖値と全身性掻痒症の関連が明らかに

 食後血糖値と全身性掻痒症には正の関連性があり、糖尿病患者では良好な食後の血糖コントロールが、全身性掻痒症を軽減することに有益性をもたらす可能性があることが、台湾国立大学病院のMei-Ju Ko氏らによる検討の結果、明らかになった。これまで、糖尿病患者において掻痒は頻度の高い症状にもかかわらず、血糖コントロールとの関連についてはほとんど明らかにされていなかったという。European Journal of Dermatology誌オンライン版2013年9月3日号の掲載報告。 本検討において研究グループは、2型糖尿病患者における全身性掻痒症と血糖コントロールとの関連を明らかにすることを目的とした。被験者は、糖尿病ケアシステムに登録されており、台湾の教育病院の皮膚科で検査を受けた385例であった。 被験者に対し、視覚アナログスケールなどを用いて詳細な面談調査を行い、さまざまなかゆみの特徴や強度を調べ、多変量ロジスティック回帰分析にて、全身性掻痒症と食後血糖、食前血糖、HbA1cとの関連を評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者385例のうち、全身性掻痒症を訴える患者は27.5%であった。・かゆみにより、24.5%が入眠困難を、15.1%は睡眠妨害を訴え、9.5%は睡眠薬を要した。・2型糖尿病患者において、食後血糖値が高い人ほど、全身性掻痒症を有する患者の割合が高率であった(OR:1.41、95%CI:1.05~1.90、p=0.002)。

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高血圧・糖尿病患者のアドヒアランスは退職後に低下する

 日常生活の変化が、服薬アドヒアランスにどの程度影響するのかは不明である。ロンドン大学のMika Kivimaki氏らは、高血圧や2型糖尿病患者における服薬アドヒアランスの変化に退職が関連しているかどうかを調査した。その結果、高血圧では男女とも、2型糖尿病では男性において退職後の服薬アドヒアランスの低下が認められた。Canadian Medical Association Journal誌オンライン版2013年9月30日版に掲載。 著者らは、フィンランドにおけるFinnish Public Sector studyの参加者のデータを1994年~2011年の国内処方箋データと結び付け、高血圧患者3,468人と2型糖尿病患者412人について、退職前3年間と退職後4年間追跡した(平均追跡期間6.8年)。主要アウトカムは、服薬アドヒアランスの低い(治療日数の40%未満)患者の割合で、処方箋データを用いて調査した。 主な結果は以下のとおり。・退職前の低アドヒアランスの患者の割合は、高血圧の男性および女性で6%、2型糖尿病の男性で2%、2型糖尿病の女性で4%であった。・男性において、退職は、降圧薬(オッズ比[OR]:1.32、95%信頼区間[CI]:1.03~1.68)と糖尿病治療薬(OR:2.40、95%CI:1.37~4.20)の低アドヒアランスのリスク増加に関連していた。・女性では、低アドヒアランスのリスク増加は、降圧薬(OR:1.25、95%CI:1.07~1.46)のみでみられた。・この結果は、年齢層、社会経済的地位または合併症を問わず、差は認められなかった。・今回の知見が確証された場合、退職後のアドヒアランス低下を減じるための介入により、高血圧や糖尿病治療の臨床的アウトカムを改善するかどうかを検証する無作為化比較試験が必要である。

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疫学研究は交絡との戦い(コメンテーター:景山 茂 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(134)より-

疫学研究に交絡因子はつきもので、結果の解釈は困難なことが多い。本研究では、考えられる交絡因子は調整しているが、それでもなお補正できない因子が存在するかもしれないことには留意が必要である。 そもそも、2型糖尿病の発症を抑制するとされたブルーベリーを好んで食べる人と、抑制効果のないとされたプルーン、メロン、オレンジ、イチゴを好む人との間に、2型糖尿病発症に影響し得る要因があるかもしれないことは否定しえない。ブルーベリー含有成分の何が効果を発揮しているのか さて、3つのコホート研究すべてに共通して2型糖尿病発症を抑制したのはブルーベリーのみである。これが交絡によるものでなく真実を物語っているのであれば、その原因を考える必要がある。ブルーベリーに多く含まれる物質に何らかの作用があるのかもしれない。 食品は医薬品と異なり、作用はあってもmildである。このため、期間の限られた介入試験によって2型糖尿病の発症を抑制するとされた果物の作用を検討することは困難である。本研究は果物の選択に影響を与える程のものではないであろう。果物はビタミンCやカリウムを含有することが多い。また、本論文でも論じられているように、アントシアニン、レスベラトロールなど、さまざまな物質を含んでいる。しかし、果物は基本的には美味しいから食べるのであって、薬理作用を期待するものではないであろう。果物とジュースは同一には論じられない 果物の一部には2型糖尿病の発症抑制効果が認められたが、ジュースにはその効果がみられなかった。ジュースには甘味料が添加されていることがあり、ジュースでは食物繊維が少ないのではないだろうか。どのようなジュースかを限定しなければ、果物との比較は困難である。

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ペイフォーパフォーマンス、小規模診療所でも効果/JAMA

 効率的で質の高い医療に対して高い報酬を支払うというペイフォーパフォーマンス(P4P)プログラムについて、電子カルテ(electronic health records)を導入する小規模診療所(大半が医師1、2人のいわゆる一人医師診療所)でも適度に効果があることが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNaomi S.Bardach氏らによる無作為化試験の結果で、通常ケアと比較してP4Pを導入した診療所のほうが心血管疾患治療のプロセスとアウトカムについて、わずかだが改善が認められたという。これまでP4Pの効果に関する評価は、大部分が大規模なグループ診療所を対象としたもので、米国人の大半が治療を受けている小規模診療所については明らかでなかった。また、慢性疾患の管理に関して電子カルテとP4Pを導入した同診療所をサポートするかも検証されていなかった。JAMA誌2013年9月11日号掲載の報告より。特別報酬とベンチマークテストを課す施設と四半期報告のみの施設に無作為化し検証 試験は2009年4月~2010年3月の間、ニューヨークの小規模診療所(医師10人未満)を対象としたクラスター無作為化試験であった。参加施設には、市のプログラムと、同一の電子カルテソフト(診療方針の決定、患者レジストリ機能を有する)、および技術的アシストを行う質改善スペシャリストが提供された。 研究グループは、参加施設を介入群(特別報酬と四半期報告に基づくベンチマークテストを受ける)と対照群(四半期ごとの報告のみ)に無作為化した。 報酬は、パフォーマンスの適格基準に達した患者ごとに支払われたが、共存症を有するメディケイド被保険者、または無保険者にはより高額の報酬が支払われた(最大200ドル/患者、10万ドル/診療所)。 主要評価項目は、パフォーマンス改善の違いの比較で、試験開始時と終了時の比較、また対照群と介入群の比較をアスピリンまたは抗血栓薬の処方、血圧コントロール、脂質コントロール、禁煙介入について行った。P4Pにより抗血栓薬処方、血圧コントロール、禁煙介入が改善 参加施設(各群42施設)のベースラインでの特性は類似していた。介入群の平均患者数は4,592人(中央値2,500人)、対照群は3,042人(同2,000人)であった。 介入群は、抗血栓薬処方率の補正後絶対的改善が認められた(12.0%対6.1%、格差:6.0%、95%信頼区間[CI]:2.2~9.7%、相互作用p=0.001)。 また、血圧コントロールについても改善がみられた。共存症なし例で9.7%対4.3%(格差:5.5%、95%CI:1.6~9.3%、相互作用p=0.01)、糖尿病あり例9.0%対1.2%(同:7.8%、3.2~12.4%、p=0.007)、糖尿病または虚血性疾患あり例9.5%対1.7%(同:7.8%、3.0~12.6%、p=0.01)であった。また禁煙介入でも改善がみられた(12.4%対7.7%、同:4.7%、-0.3~9.6%、p=0.02)。 介入群は、メディケイド被保険者または無保険者に関する指標についても、脂質コントロールを除いて、パフォーマンスが、統計的有意差はなかったが良好であった。 結果を踏まえて著者は、「電子カルテ導入の小規模診療所において、P4Pプログラムは通常ケアと比較して、心血管疾患治療のプロセスとアウトカムをわずかであるが改善した。大半のP4Pプログラムは1年以上続けることを目的とするものなので、今回明らかになった効果が時間とともに増減するかについて、さらなる研究が必要である」とまとめている。

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PCIを病院到着から90分以内に施行することで院内死亡率は改善したか?/NEJM

 米国では2005年~2009年の4年間で、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者の、病院到着から経皮的冠動脈インターベンション(PCI)開始までの時間(door-to-balloon time)が16分短縮し、90分以内PCI開始率は23.4ポイント上昇した。しかし、院内死亡率は0.1ポイントの低下でほとんど変化していないことが、ミシガン大学のDaniel S. Menees氏らの調査で判明した。現行のACC/AHAガイドラインでは、STEMI患者に対し病院到着から90分以内のプライマリPCI施行開始を強く推奨(Class I)している。door-to-balloon timeは医療施設の評価指標とされ、地域および国による医療の質向上戦略の中心に位置づけられるが、実際にdoor-to-balloon timeの改善が死亡率の低下に結びついているかは、これまで検証されていなかったという。NEJM誌2013年9月5日号掲載の報告。約9万7,000人の患者データを解析 研究グループは、プライマリPCI施行STEMI患者におけるdoor-to-balloon timeの短縮と院内死亡率の変化の関連を明らかにするために、米国のレジストリ・データに基づく解析を行った。 2005年7月~2009年6月までに、515のCathPCIレジストリ参加施設から登録された、プライマリPCI施行STEMI患者9万6,738例のデータを用い、4年間の各年度別解析を行った。 全体の平均年齢は60.8歳、女性が28.0%であった。高血圧が61.0%、糖尿病が18.8%、脂質異常症が59.2%、喫煙が43.3%、慢性肺疾患が11.4%、心筋梗塞の既往が18.5%に認められた。また、PCI歴ありが20.5%、CABG歴ありが5.6%で、平均入院期間は4.3日であった。 血栓除去術が20.5%、ステント留置術が89.3%で行われ、アプローチは大腿動脈が98.5%、橈骨動脈は0.8%であった。標的冠動脈は左主幹動脈が3.0%、左前下行枝が55.4%、左回旋枝が33.0%、右冠動脈は59.7%だった。高リスク群の予後も改善せず 解析の結果、door-to-balloon time中央値は、初年度(2005年7月~2006年6月)の83分から、最終年度(2008年7月~2009年6月)には67分へと有意に低下した(p<0.001)。同様に、door-to-balloon time90分以内の患者の割合は、初年度の59.7%から最終年度には81.3%まで有意に増加した(p<0.001)。 しかし、このようなdoor-to-balloon timeの改善にもかかわらず、全体的な未補正院内死亡率には有意な変化は認めず(初年度:4.8%、最終年度:4.7%、傾向検定p=0.43)、リスク補正院内死亡率(同:5.0%、4.7%、p=0.34)および未補正30日死亡率(同:9.7%、9.8%、p=0.64)にも有意な変化はなかった。 高リスクのサブグループである75歳以上(1万5,121例)、前壁梗塞(1万8,709例)、心原性ショック合併(9,535例)の患者においても、同様にdoor-to-balloon timeは有意に短縮したが、全体の院内死亡率に変化はみられなかった(75歳以上:初年度12.5%、最終年度11.1%、p=0.19/前壁梗塞:7.2%、6.9%、p=0.79/心原性ショック合併:27.4%、27.2%、p=0.60)。 著者は、「STEMI患者の院内死亡率を改善するには、door-to-balloon time以外の戦略が必要である」とし、「医療施設の評価指標や一般向けの報告にdoor-to-balloon timeを使用することには疑問が生じる」と指摘している。

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さすがに4剤を1つの配合剤にすると服薬継続率も良くなるだろう/JAMA

 心血管疾患(CVD)またはその高リスクを有する患者への降圧・脂質低下・抗血小板薬の固定用量配合剤投与(fixed-dose combinations:FDC)治療戦略は通常ケアと比較して、アドヒアランスを有意に改善すること、血圧と脂質の臨床値の改善は有意だがわずかであったことが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのSimon Thom氏らによる無作為化試験「UMPIRE」の結果、示された。CVD患者の大半は、推奨薬物療法が長続きしない。FDCによるアドヒアランス改善効果はその他領域で報告されており、心血管系FDCについてはこれまで、プラセボあるいは未治療と比較した短期効果の検討は行われていた。JAMA誌2013年9月4日号掲載の報告より。FDC治療と通常ケアを比較、アドヒアランスと重大リスク因子の改善を評価 UMPIRE試験は、インドおよび欧州で2010年7月~2011年7月にCVD既往またはそのリスクを有する患者2,004例を登録して行われた非盲検無作為化エンドポイント盲検化試験であった。 試験は、長期アドヒアランスの改善についてFDC(アスピリン、スタチン、降圧薬2剤)と通常ケアを比較することを目的とし、治療の改善および2つの重大なCVDリスク因子(収縮期血圧[SBP]、LDLコレステロール[LDL-C])について評価した。 被験者は、無作為に1,002例が(1)アスピリン75mg+シンバスタチン40mg+リシノプリル10mg+アテノロール50mg、または(2)アスピリン75mg+シンバスタチン40mg+リシノプリル10mg+ヒドロクロロチアジド12.5mgのいずれかのFDC群に割り付けられ、残る1,002例は通常ケア群に割り付けられた。 主要評価項目は、自己申告に基づく治療アドヒアランスと、SBPとLDL-Cのベースラインからの変化とした。アドヒアランスは有意に改善、SBPとLDL-Cは有意だがわずかな改善 被験者2,004例のベースライン時の平均血圧値は137/78mmHg、LDL-C値91.5mg/dLで、抗血小板薬、スタチン薬、2剤以上の降圧薬を服用していたのは1,233例(61.5%)だった。 追跡調査は、2012年7月に終了し、平均追跡期間は15ヵ月(範囲:12~18ヵ月)であった。 結果、FDC群は通常ケア群と比較して有意にアドヒアランスが改善した(86%対65%、相対リスク[RR]:1.33、95%信頼区間[CI]:1.26~1.41、p<0.001)。また、試験終了時のSBPの低下(-2.6mmHg、95%CI:-4.0~-1.1mmHg、p<0.001)、LDL-Cの低下(-4.2mg/dL、95%CI:-6.6~-1.9mg/dL、p<0.001)も、わずかだが有意にFDC群のほうが低下していた。 事前に定義したサブグループ(アドヒアランス、性、糖尿病、喫煙の有無別など)でも効果は一致しており、ベースラインでのアドヒアランスが低い患者ほどベネフィットが大きいというエビデンスが得られた。このベースラインでアドヒアランスが低かった患者727例(36%)の試験終了時のアドヒアランスの改善は、FDC群77%対通常ケア群23%で(RR:3.35、95%CI:2.74~4.09、相互作用のp<0.001)、SBPの低下は-4.9mmHg(95%CI:-7.3~-2.6mmHg、相互作用のp=0.01)、LDL-Cの低下は-6.7mg/dL(95%CI:-10.5~-2.8mg/dL、相互作用のp=0.11)だった。 重大有害イベントまたは心血管イベントの発生に有意差はみられなかった。FDC群50例(5%)、通常ケア群35例(3.5%)、RR:1.45(95%CI:0.94~2.24、p=0.09)。 以上を踏まえて著者は、「CVDまたはその高リスクを有する患者において、血圧、コレステロール、血小板コントロールのためのFDC治療戦略は通常ケアと比較して、15ヵ月時点のアドヒアランスを有意に改善した。SBPとLDL-Cは有意だがわずかな改善であった」と結論している。

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若年発症統合失調症への第二世代抗精神病薬治療で留意すべき点

 統合失調症患者は一般集団と比較して寿命が短く、その主な死亡原因として心血管疾患が関与している。一方で、第二世代抗精神病薬(SGA)の使用は、有意な体重増加と代謝性副作用と関係していることが知られるが、特定の診断群、とくに若年発症統合失調症における情報は限定的であった。オーストラリア・Orygen Youth HealthのBrian O'Donoghue氏らによる検討の結果、若年発症統合失調症へのSGA治療では、代謝性の副作用に関する定期スクリーニングの必要性が強調されるとともに、肥満症やメタボリック症候群に対する予防および治療の介入が必要であることが報告された。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2013年8月22日号の掲載報告。 研究グループは、若年発症統合失調症の初発エピソードを有した未治療の小児および若者コホートについて、SGA(とくにオランザピン、リスペリドン、クエチアピン)の代謝性副作用について調査した。BMI、血清コレステロール値、同トリグリセリド値を、ベースラインと追跡中央値7ヵ月時点で測定し検討した。 主な結果は以下のとおり。・コホート被験者は合計49例であった。そのうち追跡調査が完了したのは36例(74%)であった。・SGA治療開始後、任意に抽出したコホートにおいて、BMI、トリグリセリド、コレステロールの有意な上昇がみられた。・小児と若者の3人に1人は、トリグリセリドとコレステロールの値が異常値であった。用量依存反応はみられなかった。・オランザピンとクエチアピンは、トリグリセリドの上昇がより大きかった。・以上を踏まえて著者は、「若年発症統合失調症では、代謝性副作用について定期スクリーニングの必要性が強調されるとともに、肥満症やメタボリック症候群に対する予防および治療の介入が必要である」と結論した。関連医療ニュース 若年者への抗精神病薬投与、2型糖尿病リスクが3倍に 統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査 抗精神病薬治療中の若者、3割がADHD

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女性にも薬剤溶出ステントは有効か?/Lancet

 冠動脈疾患の男性患者だけでなく女性患者においても、薬剤溶出ステント(DES)はベアメタルステント(BMS)に比べ有効性と安全性が優れることが、スイス・ベルン大学病院のGiulio G Stefanini氏らの検討で確認された。冠動脈疾患の治療におけるDESの安全性と有効性はさまざまな無作為化試験で検討されているが、登録患者に占める女性の割合が約25%と低いため、女性におけるDESの有用性を評価する十分なパワーを有する単一の試験はないという。Lancet誌オンライン版2013年9月2日号掲載の報告。日本人女性患者を含む26試験の統合解析 研究グループは、女性におけるDESの有用性を評価するために、2000~2013年に実施された26件のDESに関する無作為化試験に参加した女性のデータを収集し、統合解析を行った。解析には、日本のRESET試験(3,197例、女性23%、2012年)が含まれた。 BMS、旧世代DES[シロリムス溶出ステント(Cypher)、パクリタキセル溶出ステント(Taxus)]、新世代DES[エベロリムス溶出ステント(Xience、Promus)、ゾタロリムス溶出ステント(Endeavor、Resolute)、バイオリムス溶出ステント(Biomatrix、Nobori)、シロリムス溶出ステント(Yukon)]の3群に分けてアウトカムを解析した。 安全性の主要評価項目は、死亡と心筋梗塞の複合エンドポイントとし、副次評価項目は、ステント血栓症(疑い例を含む)であった。有効性の主要評価項目は標的病変再血行再建術の施行とした。死亡/心筋梗塞:12.8 vs 10.9 vs 9.2%、ステント血栓症:1.3 vs 2.1 vs 1.1% 26試験に参加した4万3,904例のうち女性は1万1,557例(26.3%)で、BMS留置例が1,108例(9.6%)、旧世代DES留置例が4,171例(36.1%)、新世代DES留置例は6,278例(54.3%)であった。 全体の平均年齢は67.1歳で、BMI 28.1、糖尿病31.2%、高血圧75.6%、高コレステロール血症67.6%、喫煙者26.7%、冠動脈疾患家族歴39.5%、心筋梗塞の既往19.0%、PCI施行歴20.6%、CABG施行歴5.0%、多枝病変28.8%であった。平均フォローアップ期間は2.9年だった。 留置後3年時の安全性の複合エンドポイントの累積発生率は、BMS留置例が12.8%(132例)、旧世代DES留置例が10.9%(421例)、新世代DES群は9.2%(496例)であった(全体:p=0.001、旧世代と新世代DESの比較:p=0.01)。ステント血栓症の発症率は、BMS留置例が1.3%(13例)、旧世代DES留置例が2.1%(79例)、新世代DES群は1.1%(66例)だった(同:p=0.01、p=0.002)。 3年時の標的病変再血行再建術の施行率は、BMS留置例が18.6%(197例)、旧世代DES留置例が7.8%(294例)、新世代DES群は6.3%(330例)であり、DESの使用により有意に低下した(全体:p<0.0001、旧世代と新世代DESの比較:p=0.005)。これらの結果は、多変量解析にてベースラインの患者背景で調整しても変わらなかった。 著者は、「女性患者では、BMS留置例に比べDES留置例で長期的な有効性と安全性が優れ、新世代DESは旧世代DESに比べ良好な安全性を示した」と結論し、「新世代DESは女性患者における経皮的冠動脈再建術の標準治療とみなされる」と指摘している。

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『基礎インスリン+GLP-1アナログ』 で 広がる選択肢

2013年9月17日、2型糖尿病治療薬のリキシセナチド(商品名:リキスミア皮下注300μg)が発売された。リキシセナチドは、基礎インスリンとの併用が保険適応となった初のGLP-1受容体作動薬であり、エキセナチド(商品名:バイエッタ、ビデュリオン)、リラグルチド(同:ビクトーザ)に次ぐ3成分目の薬剤である。今回、この新薬についてサノフィ株式会社本社担当者に話を聞いた。リキシセナチドの特徴は、大きく3つリキシセナチドが従来製剤と大きく異なるのは、GLP-1受容体作動薬で初めて「基礎インスリンとの併用」について適応取得した点である。さらに、食後血糖降下作用のほか、胃内容排出遅延作用も認められている。この「基礎インスリンと併用可能」「食後血糖コントロール」「胃内容排出遅延作用」の3点がリキシセナチドの特徴といえる。基礎インスリン+GLP-1受容体作動薬 のメリットとくに「基礎インスリンと併用可能」という特徴は新規性が高い。これまでGLP-1受容体作動薬の投与患者に対しインスリン投与を考える場合は、一度GLP-1受容体作動薬を中止したうえでインスリンへ切り替える必要があった。その点、リキシセナチドは中断の必要がなく汎用性が高い。また、基礎インスリンでは補いきれない食後高血糖についてのコントロールが期待できる。投与対象はBOTで血糖管理不十分な患者さんしかし、GLP-1受容体作動薬すべてに該当することだが、リキシセナチドも経口薬との併用に縛りがある。開発当初、SU薬が糖尿病治療薬の中心であった背景から、リキシセナチドと併用できる経口薬は「SU薬単独、またはSU薬とビグアナイド薬の併用」に限定されている。サノフィ株式会社の本社担当者は、「汎用性のある経口薬との適応拡大も視野に入れているが現実的には先の話になる」と断ったうえで、「発売時点では、『BOTで血糖改善が認められない患者さん』にお使いいただき、徐々にご評価いただきたい」と述べた。アジア人を対象としたリキシセナチドの効果リキシセナチドの血糖降下作用を示すデータとして、日本人を含むアジア人を対象としたGetGoal-L-Asia試験がある。これは基礎インスリン療法(±SU薬)で血糖コントロール不十分(HbA1c:7.0~10%)な2型糖尿病患者311例を対象にした追跡試験である。24週後のHbA1c値および朝食後2時間血糖値の変化は、リキシセナチド群で-0.88%、-141mg/dL、とプラセボに比べて有意な低下が認められている1)。従来と同程度の安全性。ただし、継続評価が大切安全性については、第III相試験において、HbA1c低下効果についてエキセナチドに対する非劣性が示されたうえで、嘔気・嘔吐を含む消化器系副作用や低血糖症の発現率が少ないとの報告がある。ただし、嘔気・嘔吐はGLP-1受容体作動薬に共通の副作用であることから、発売後の症例集積に伴う慎重な評価が求められるだろう。リキシセナチドにより、併用の選択肢が広がったリキシセナチドの投与法は、1日1回、朝食前1時間以内の皮下注射である。前出の担当者は「リキスミアと基礎インスリンの投与タイミングを朝に集中させることで、患者さんの負担軽減にもつながるのではないか」と期待を語った。リキシセナチドの登場により、併用療法に「基礎インスリン+GLP-1受容体作動薬」という新たな選択肢が加わったといえるのではないだろうか。(ケアネット 佐藤寿美)1) Seino Y,et al.Diabetes Obes Metab. 2012;14:910-917.

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レニン阻害薬、動脈硬化進展を抑制せず/JAMA

 冠動脈疾患を有する高血圧前症患者へのレニン阻害薬アリスキレン(商品名:ラジレス)投与はプラセボと比較して、アテローム性動脈硬化の進展を抑制しないことが、南オーストラリア健康・医療研究所(SAHMRI)のStephen J. Nicholls氏らによる無作為化試験AQUARIUSの結果、示された。著者は、「今回の結果は、アテローム性動脈硬化症の退縮または予防についてアリスキレン使用を支持しないものであった」と結論している。JAMA誌オンライン版2013年9月3日号掲載の報告より。アリスキレン300mg/日またはプラセボを104週間投与 アテローム性動脈硬化症では、血圧降下とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)阻害が治療目標となる。一方、動脈硬化の進展に対するレニン阻害の効果はこれまで検討されていなかったことから、アリスキレンとプラセボを比較検討する本試験が行われた。 AQUARIUS(Aliskiren Quantitative Atherosclerosis Regression Intravascular Ultrasound Study)は前向き多施設共同二重盲検法にて2009年3月~2011年2月に、ヨーロッパ、オーストラリア、南北アメリカの103施設で被験者を募って行われた。 被験者は、冠動脈疾患、高血圧前症(収縮期血圧125~139mmHg)、2つ以上の心血管リスク因子(心筋梗塞等の既往歴あり、尿中アルブミン/クレアチニン比30~300mg/g、2型糖尿病など9因子のうち)を有する613例であった。冠動脈血管内超音波法(IVUS)検査による画像診断を受け、305例がアリスキレン300mg/日の経口投与を、308例がプラセボをそれぞれ104週間投与された。 治療72週以降にIVUS検査を行い、疾患進行について評価を行った。主要有効性指標は、アテローム容積率(PAV)のベースラインから試験終了までの変化とし、副次有効性指標は、標準化総アテローム容積(TAV)の変化およびアテロームが退縮した患者の割合などが含まれた。安全性および忍容性も評価された。主要有効性指標PAV、副次有効性指標TAVともに有意差がみられず ベースラインと追跡調査時の画像診断データが入手できたのは、458例(74.7%、アリスキレン群は225例)であった。 主要有効性指標のPAVは、両群間で有意差はみられなかった。アリスキレン群-0.33%(95%信頼区間[CI]:-0.68~0.02%)、プラセボ群0.11%(同:-0.24~0.45%)で群間差は-0.43%(同:-0.92~0.05%、p=0.08)だった。 副次有効性指標のTAVも差がみられなかった。アリスキレン群-4.1m3(95%CI:-6.27~-1.94m3)、プラセボ群-2.1m3(同:-4.21~0.07m3)で群間差は-2.04m3(同:-5.03~0.95m3、p=0.18)だった。 PAV、TAVの改善を示した患者の割合も両群間で有意差はなかった。PAV(アリスキレン群56.9%対プラセボ群48.9%、p=0.08)、TAV(同:64.4%対57.5%、p=0.13)だった。 有害事象については、低血圧症(同:7.2%対3.9%、p=0.04)、腎および尿路障害(6.9%対4.9%、p=0.38)の発生(試験担当者が報告)が、プラセボ群よりもアリスキレン群のほうがより多くみられる傾向があった。高カリウム血症(≧5.5mEq/L)の発生は、両群で同程度だった(アリスキレン群10.7%対プラセボ群9.8%、p=0.76)。なお有害事象による試験中断はアリスキレン群のほうが多かった(同:8.2%対4.5%)。

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エキスパートQ&A

プライマリ・ケア医はどの範囲まで、がん患者さんを診るべきなのでしょうか?プライマリ・ケア医の定義がなかなか難しいところですが、地域の開業医の先生方であれ病院勤務の一般内科の先生方であれ、がん患者さんを診るべきだと思います。サブスペシャリティががんとは無関係の領域(循環器、神経、内分泌、腎臓、膠原病、感染症など)であったとしても同じことです。理由は単純です。患者さんは多いのに診る医者が少ないからです。がんは日本人の2人に1人が罹患し、3人に1人が亡くなるという非常にコモンな病気です。がん患者の診療において、専門医数(全国でがん薬物療法専門医<1000人、緩和医療専門医<100人)が少ないなどインフラの問題もありますが、一番大きい問題は患者さん側と医師側が日本のがん医療や一般診療に対してそれぞれが持つ固定観念だと思います。患者さん側は「大きな病院で専門医の先生にずっと診てもらわないと心配だ」、医師側は「がん診療は高度に専門化していて難しい。患者や家族の対応にもストレスを感じることが多い。治らずに亡くなっていく患者を診るのもつらいし、しんどい」といった気持ちがお互いにあるのではないでしょうか。これを少しずつでも変えていかないことには、がん対策基本法の理念である「すべてのがん患者さんに等しく適切な医療を提供する」を実現することは困難だと思います。がん診療はやりがいがあります。患者さんにとって一度は死を意識せざるを得ない疾患ですから、その患者さんや家族との対応の中で自分なりのさまざまな思索を巡らすことになります。また、自分や家族も将来罹患する可能性が高い疾患を目の前の患者さんを通じて経験し、人間の永遠のテーマである「生と死」について深く考えることができるのです。プライマリ・ケア医にできる身体的なケアにはどのようなものがあるでしょうか?がん患者さんの何を診るかについては議論のあるところですが、患者さんのQOL維持・向上のため少なくとも支持療法(緩和医療)についてはカバーすべきと考えています。支持療法の範囲は広く、緊急事態(オンコロジック・エマージェンシー)への対応、疼痛を含む症状コントロール、がん治療による有害事象対策、栄養療法、リハビリ、無再発患者の定期的フォロー(再発の有無、二次がんのチェック、骨粗鬆症、不妊、一般内科的マネジメント)などプライマリ・ケア医であればある程度対応可能な分野と考えています。抗がん薬治療はご自身のサブスペシャリティと、置かれている環境(開業医か病院勤務医か、地方か都市部か)で異なると思いますが、開業医の先生方が抗がん薬治療を扱うのは現状ではなかなか難しいかもしれません。基幹病院への紹介の仕方や、うまく機能しているシステムがあれば教えていただけますか?具体的に機能しているシステムはわかりませんが、病病連携や病診連携において大切なのはやはり「顔の見える関係」です。紙だけのやり取りでは関係が希薄になりがちですので、研究会等で基幹病院の先生と会って良い関係を築くことが重要ですし、いろいろな情報や知識も得られると思います。また紹介患者さんが基幹病院に入院したら、その病院に会いに行くことも重要だと思います。患者さんが喜ぶのはもちろん、基幹病院の医療スタッフも信頼を寄せますので、患者さんを逆紹介していただきやすくなると思います。可能であれば、基幹病院、地域の開業医、訪問看護ステーション、ケアマネージャーなどで症例を通じた多職種カンファレンスを開くのもよいと思います。日常診療でがんを早期発見するためには、どこに気を付ければよいですか?有症状か無症状かで考え方が異なります。有症状の場合、そのがんはすでに早期がんである確率は低いので、ご質問そのものに対する回答にはなっていませんが、個人的には以下のような症状があった場合には、がんを疑うことにしています。すなわち、体重減少、リンパ節腫脹、原因不明で夜間に増悪する腰痛・背部痛、不明熱、嚥下困難、下血・血便・タール便、黄疸、血痰、血尿などです。また過去のがんの既往があれば、より検査閾値を下げて精密検査を進めることになると思います。無症状のがんを診断するためには、基本的にはがん検診を定期的に受けていただくことだと思います。私はがん以外で診ている患者さんに「がんについては検診を受けてください。残念ながら、あなたががんになっていないかどうかについてまでは診られていないのです」と説明しています。高血圧や糖尿病で診ている患者さんでも、患者さん側からすればがんも含めて診てもらっていると思っている方がいらっしゃいます。しかし、がんでない患者さん全員にがんが無いかどうかを診ていくのは大変だと思います。ただ、がん検診については注意すべき点があります。がん検診は早期発見のみを目的にしているのではなく、早期発見を通じてがんによる死亡を減らすことを目標としていますし、その点についてある程度コンセンサスがあるがん種についてがん検診が行われているのです。したがって、がん検診の内容に満足できない患者さんには、賛否両論あるにせよ、人間ドックを受けていただく以外にないと考えています。また、がんをスクリーニングする方法としての腫瘍マーカー測定は勧められません。スクリーニングには高い感度が求められますが、腫瘍マーカーで感度の高い検査はないからです(PSAは前立腺がんのスクリーニングには適していますが、早期診断することで死亡割合を低下させるかどうかが専門家の間で見解が異なるため現時点でがん検診に用いられてはいません)。症状もないのに患者さんの希望のみで、安易に腫瘍マーカーを測定し少しでも異常があった場合には、患者側も医師側も必要以上にがんを心配することになってしまいます。健診受診を促していますが、嫌がる人が多いです。どうすべきでしょうか?どうして嫌がるのかその理由によると思います。がんが見つかるのが怖いのか、それともがんになっても構わないし、早期発見が重要と考えていないなど、いろいろ理由があると思います。まずは患者さんの考え方を十分に把握することから始めてみてはいかがでしょう。CKDにおける抗がん治療の注意点を教えてください。腎障害の程度や、抗がん薬が腎排泄か肝代謝・肝排泄かなどによって、投与量は変わってきますので一般化できません。また、透析患者さんの場合はまた別の因子(透析性、分布容積、蛋白結合率、投与するタイミングなど)を考慮する必要が出てきます。詳しくは各抗がん薬の添付文書をご覧ください。高齢患者さんの治療に関する注意点を教えてください。一般的に抗がん治療の治療目標は二つあります。すなわち、生存期間の延長とQOLの改善・維持です。高齢患者さんの場合、抗がん治療により得られるメリットは非高齢患者さんのそれに比して小さくなります。つまり、生存期間の延長も小さくなるでしょうし、QOLも低下する可能性が十分あります。大切なことは、何を治療目標にして個々の患者さんを治療しているのかについて主治医と患者さん・家族が十分話し合い、認識を共有しておくことだと思います。個々の抗がん治療(手術、抗がん薬、放射線)の注意点については紙面の関係でここでは割愛します。食欲不振に対する対処法を教えてください。食欲不振の原因によります。原疾患によるものか、抗がん薬治療によるものか、あるいはうつ病などの内因性精神疾患によるものか、など多岐にわたります。認知症患者におけるがん治療について教えてください。がん治療に関して、その患者さんに自己意思決定能力があるかどうかが最大の問題になります。認知症のために本人に意思決定ができない場合は、家族や友人などに代理意思決定をしていただく必要があります。その際に大切なのは、代理者の意向ではなく、患者さん本人の意思を代弁する(または推定する)ことです。あくまでも患者さんが主体です。また、認知症患者の抗がん治療自体も難しいものになります。認知症の患者さんは脳の脆弱性のため、せん妄を起こしやすく、脳以外の身体の脆弱性も伴っていることが多いことから、その他の合併症(肺炎など)も起こしやすいのです。前立腺がんにおける高濃度ビタミンCの有用性について教えてくださいマルチビタミン(ビタミンCを含む)とミネラル補充療法の前立腺がん発症や進行予防との関連についてはメタ解析により現時点では否定されています(Stratton J,et al. Family Practice. 2011; 28:243–252)。上部消化管検診においてペプシノゲンがBaや内視鏡に代行できるという考え方はもう一般的になっているのでしょうか?日本のガイドラインでは現時点においても胃透視を推奨しており、ペプシノゲンはピロリ抗体や胃内視鏡と共に胃透視に比べてエビデンスレベルは下位に位置づけられています(Hamashima C, et al. Jpn J Clin Oncol 2008;38(4)259–267)。したがって、一般的にペプシノゲン測定はほかの検査の代用にはならないと考えられます。ただ、ABC検診と言って、血液検査でH. pylori感染とペプシノゲン値を調べ、胃がんのリスク評価を行う検診があり、リスクに応じて胃内視鏡検査による胃がんのスクリーニングを推奨する動きもあります。

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DPP-4阻害薬、糖尿病の虚血性イベント増減せず/NEJM

 DPP-4阻害薬サキサグリプチン(商品名:オングリザ)は、心血管イベント既往またはリスクを有する2型糖尿病患者の治療において、心不全入院率は上昇するが虚血性イベントは増大も減少もしなかったことが、米国・ハーバードメディカルスクールのBenjamin M. Scirica氏らによるSAVOR-TIMI 53試験の結果、示された。著者は「サキサグリプチンは糖尿病患者において、血糖コントロールを改善するが、心血管リスクを低下させるにはその他のアプローチが必要である」と結論している。本研究は、2013年9月2日、オランダ・アムステルダム市で開催された欧州心臓病学会(ESC)で報告され、同日付けのNEJM誌オンライン版に掲載された。1万6,492例を対象にサキサグリプチンの有効性と安全性を評価 SAVOR-TIMI 53試験は、心血管イベントリスクを有する患者の心血管アウトカムについてサキサグリプチンの有効性と安全性を評価する第4相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験。対象は、HbA1c 6.5~12.0%で心血管イベントの既往またはリスクを有する2型糖尿病患者であった。 26ヵ国788施設において1万6,492例の被験者が1対1の割合で、サキサグリプチン(5mg/日、eGFR≦50mL/分の患者は2.5g/日)を投与される群(8,280例、平均年齢65.1歳、女性33.4%、2型糖尿病罹病期間中央値10.3年、HbA1c 8.0%、BMI平均値31.1)またはプラセボを投与される群(8,212例、65.0歳、32.7%、10.3年、8.0%、31.2)に割り付けられ、中央値2.1年間(最長2.9年間)追跡を受けた。なお担当医は、血糖降下薬を含むその他の薬物を調整することが許されていた。 主要エンドポイントは、心血管死・心筋梗塞・脳梗塞の複合であった。心不全による入院は増大するが、その他の虚血性イベントは増減せず 主要エンドポイントの発生は、サキサグリプチン群613例、プラセボ群609例であった。発生率は2年時Kaplan-Meier推定値で7.3%対7.2%、サキサグリプチンのハザード比は1.00(95%信頼区間[CI]:0.89~1.12)だった(優越性p=0.99、非劣性p<0.001)。この結果は、治療継続(投与を中止しなかった)患者における解析でも同様であった(ハザード比:1.03、95%CI:0.91~1.17、p=0.60)。 主要副次複合エンドポイント(心血管死・心筋梗塞・脳卒中・不安定狭心症入院・冠動脈再建術・心不全)の発生は、サキサグリプチン群1,059例、プラセボ群1,034例だった。発生率は2年時Kaplan-Meier推定値で12.8%、12.4%で、サキサグリプチンのハザード比は1.02(95%CI:0.94~1.11)だった(p=0.66)。 個別にみた副次エンドポイントでは、心不全による入院について有意差がみられ、プラセボ群よりもサキサグリプチン群のほうがより発生が多かった(3.5%対2.8%、ハザード比:1.27、95%CI:1.07~1.51、p=0.007)。 急性膵炎(サキサグリプチン群0.3%、プラセボ群0.2%)および慢性膵炎(両群とも0.1%)と診断された割合は、両群で同程度であった。 以上の結果から著者は、「DDP-4阻害薬サキサグリプチンは、心不全による入院を増大したが、虚血性イベントは増大も減少もしなかった。サキサグリプチンは血糖コントロールを改善するが、2型糖尿病の患者において心血管リスクを低下させるには、その他のアプローチが必要である」と結論している。

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