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スタチン治療はやはり糖尿病を増やすのか?そのメカニズムは?(解説:興梠 貴英 氏)-272

 スタチンが虚血性心疾患の一次予防においても二次予防においても有効であることについては、これまで多くの一貫したエビデンスがある。 しかし、以前より一部の研究者によって、スタチンが新規糖尿病発症を増やすのではないか、ということが疑われている。とくにJUPITER試験の安全性評価の項目で、プラセボ群と比較してロスバスタチン投与群で有意に新規糖尿病が多かったという報告1)を契機に、やはりスタチンが新規糖尿病発症を増やすのではないか、ということが広く疑われるようになった。その後、観察研究のメタ解析2)のみならず、本論文の著者らが2010年に行ったRCTのメタ解析3)においてもスタチン投与が糖尿病発症を増加させるということが報告された。 こうした後ろ向き解析による因果関係の推論において問題となるのは、スタチンを投与する必要がある患者では元々糖尿病発症リスクも高く、そのため見かけ上の相関(因果)が認められるのではないか、ということである(適応による交絡)。確かに観察研究の場合はそうしたこともありうるが、RCTのメタ解析においては適応とは無関係に割り付けされており、そうした批判は当たらない。 さて、本論文は著者らが2010年に発表した論文にいくつかのRCT試験を加えてメタ解析し直したこと、さらにスタチンが糖尿病新規発症を増加させるメカニズムに迫るために遺伝学的な検討を加えているところが新しい。 まず、今回のメタ解析においては前回の13試験に加えて、さらに7試験を加えた解析を行い、スタチン対プラセボ、強化治療対通常治療を合わせて12%のリスク上昇があることを示している。 さらに、スタチンが阻害するHMG-CoA還元酵素遺伝子近傍のSNPを検討し、その中でrs17238484とrs12916の2つのSNPとLDL-Cを含めた複数のバイオマーカーや身体計測値(身長、体重、BMI、腹囲)等との関係を調べている。その結果、rs17238484の基準遺伝子型(TT)がGT、GGとなるにつれ、LDL-Cが低下すること、またBMIや体重が増加すること、さらに糖尿病リスクも順次増加することが示されている。rs12916においても同様の傾向の結果を示している。 また、メタ解析を行った20のRCTのうち15においては体重の変化に関するデータも取得できており、スタチン対プラセボ、強化治療対通常治療を合わせて比較した場合、前者では0.24kg有意に体重が増加していた。 これらのことより、著者らはスタチンによる体重増加および糖尿病新規発症はHMGCRの機能阻害によるものだと結論付けている。スタチンには以前よりさまざまなpleiotropic effectがあるのではないかと報告されているが、本論文の結論が正しいとすれば、スタチンが糖尿病新規発症を増やしてしまうのはそうしたpleiotropic effectを通じてではなく、スタチンの本来の作用(HMGCR阻害)によるものであるので、将来的にpleiotropic effectがなく、より特異的にHMGCRを阻害する薬物を開発しても問題は解決しないこととなる。 ただ、本論文で取り上げられたSNPが直接体重増加や糖尿病新規発症の原因ではなく他の交絡因子を介している可能性は否定できず、またそもそもなぜHMGCRの機能阻害が体重増加の原因となりうるのか、という点については本論文でも明らかになっていない。したがって、メカニズムとしても今回の解析で完全に明らかになったわけでもない。 とくに、日本で行われたJ-PREDICT試験ではIGT患者に対してピタバスタチンを投与したときの糖尿病発症を前向き介入試験として検証しており、これまで学会等ではピタバスタチン投与によりむしろ糖尿病発症リスクを減少させたことが報告されており、最終的な論文発表および発症抑制のメカニズムについて興味が持たれるところである。 本論文は学術的には興味深い点はいろいろあるものの、心血管イベント発症リスクを考えた場合、スタチンによる糖尿病新規発症がイベント増大リスクに寄与する割合は、スタチンが減らすリスクよりも小さいことが報告されており4)、本論文の結果をもってしても、虚血性心疾患患者もしくはその高リスク者においてスタチンの投与をためらう必要はないと思われる。

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2型糖尿病患者におけるエンパワーメントと治療意思決定支援ツール(decision aids)(解説:住谷 哲 氏)-271

高血糖、高血圧、高コレステロール血症、喫煙のすべてに介入する多因子介入治療(multifactorial approach)が2型糖尿病治療において重要であることは論を俟たない1)。 しかし、この治療が成功するか否かは、患者自身が治療の意義を理解し、多くの治療介入に積極的に参加することに依存している。われわれ医療従事者が患者と向き合うのは診察室におけるごく短時間のみであり、その他の時間はすべて患者の自己管理下にある。この患者の自己管理能力を向上させることで治療を成功に導こうとする考えがエンパワーメント(適切な日本語訳がない)である。 ここでの自己管理能力とは、医療従事者の指示に従うだけではなく、医療従事者との対話を通じて、治療法そのものを自己決定する(shared decision making)ことをも含む広い概念である。本論文は治療意思決定支援ツール(decision aids)が、2型糖尿病患者のエンパワーメントに及ぼす影響を検討したものである。 方法はオランダ北部の18のプライマリケアクリニックに通院中の344例の2型糖尿病患者を通常診療群と治療意思決定支援ツール提供群に無作為に振り分け、1次エンドポイントとしては、治療ゴール達成への意思決定およびゴール達成に対する患者のエンパワーメントの程度をエンパワーメントスコアにより評価した。2次エンドポイントは経過を通じての高血糖、高血圧、高脂血症およびアルブミン尿に対する処方強化および禁煙とした。治療意思決定支援ツールは4つの領域(血糖、血圧、コレステロール、喫煙)から構成されており、それぞれHbA1c<7.0%、収縮期血圧<140mmHg、LDLコレステロール<2.5mmol/L(100mg/dL)、禁煙がゴールに設定されていた。さらに個々の患者のリスクをUKPDS risk engine2)を用いて計算し、たとえば「あなたと同じ年齢、性別の2型糖尿病患者さん100人の中で、16人が今後5年間に心筋梗塞になり、84人は心筋梗塞になりません。しかし、現時点ではあなたが、そのどちらに属しているかはわれわれにはわかりません。」のような説明が提供された。 さらに、4つの領域のいずれがゴール未達成であるか、それに対する治療を受けることによるbenefit およびharm、さらに治療の有効性に関する不確実性についても説明された。探索的検討として、情報提供がパソコンの画面上で提供される群と印刷された紙媒体で提供される群、および詳細情報がすべて提供される群と簡略化された情報が提供される群が2x2要因デザインを用いて比較された。 結果は1次エンドポイントには両群に差を認めなかった。2次エンドポイントについても、紙媒体を用いた治療意思決定支援ツール提供群において高脂血症薬の投与が強化されたのみであった。これらの結果は、2型糖尿病患者に、通常の診療に加えて治療意思決定支援ツールを追加してもエンパワーメントには結びつかないこと示している。しかし、治療意思決定支援ツールによる介入を実際に受けたのが同ツール提供群の46%に過ぎず、結果の解釈には慎重を要する。 世界中で最も多数の患者からの相談を受けている医療従事者はGoogleである、と皮肉まじりにいわれるように医療においてインターネットは必要不可欠になりつつある。もし今回の検討で用いられた治療意思決定支援ツールが有効であったならば、インターネットを通じてすべての2型糖尿病患者に情報が提供され、われわれの日常診療も大きな影響を受けたかもしれない。その点で、今回の結果はわれわれの日常診療の継続に少しの安心感を与えるといえよう。 さらに、論文の主旨とは離れるが、欧米におけるエンパワーメントとわが国のそれとの違いが浮き彫りにされている点も注目してよい。わが国でのエンパワーメントは、「いかにして患者のやる気を引き出すか?」のように情緒的な点に比重が置かれており、具体的な治療目標(HbA1c<7.0%のような数値目標)と、それを達成することによるアウトカム改善のエビデンスとを医療従事者と患者との間で共有したうえでのshared decision makingが行われているとはいい難い状況にある。エンパワーメントもEBMから無縁ではないことを再認識する必要があるだろう。

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62)消費税率を話題に目標血糖値を覚えてもらうコツ【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者消費税が5%から8%に上がって大変です。そんなに経済的に余裕がないのに・・・医師確かにそうですね。今日の検査を見て頂けますか。患者悪くなっているんですか?医師そうですね。血糖値が8%台になりました。合併症予防のための血糖コントロール(HbA1c)の第一目標は7%になります。ちなみに、糖尿病でない人のHbA1cは5%台です患者普通の人が5%で、私が8%ですか。消費税と同じ数字ですね。医師そうですね。値上がりをきっかけに、食品の購入について考えてみてもいいですね。患者確かに。余分なものは買わないようにしないと・・・(気づきの言葉)。●ポイント身近な話題を取り上げて、検査値について復習できるといいですね

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アリスミアのツボ 第4回

Q10治療の必要のない不整脈について、日常生活のアドバイスや指導はどのようにしていますか?何も証拠となる情報はないので……無難な対応で臨んでいます。アドバイスほど難しいものはない「アドバイス」……という言葉にはよいイメージがあります。日本語では「忠告」と訳されることもあり、これはどちらかというと悪いイメージかもしれません。そして、「エデゥケーション(教育)」、「指導」という言葉もあります。これは、どちらかといえば上から下へというイメージでしょうか。こう考えると、患者に対して医師が話す内容は、このうちどれなのでしょう。エビデンスはない実は、治療の必要のない不整脈について、「~すればよくなる」という確固とした証拠は何もありません。ただ、現場には期外収縮の症状に悩まれている患者も数多くいます。「薬がいらないことはよくわかりましたが、この症状はどうすればよくなるのでしょう」、「毎日の生活で気を付けることはありますか」などの質問を頻繁に受けます。相手の気持ちになってこのような質問に対して、「医学的に証明されている日常生活上の工夫はない」というのが学問的には正しいことです。が、社会的には到底受け入れられる回答ではないでしょう。アドバイス、指導は、相手の立場に立って行うからこそ意味のある行為だと感じます。何を隠そう、私自身が心房期外収縮の症状がひどくてつらい時期がありました。だからどうしたというわけではないのですが、「私も期外収縮があってつらかった」ことを伝えると、なぜか多くの患者さんが少しほっとした表情をみせてくれます。そのうえで、「できることはあまりないんですけど、規則的な生活を守って、睡眠不足やストレスを避けることですね。といっても、いつも守れるわけはありませんよね。そうそう、肥満もよくないんですよ……」というような、日常会話をしています。相手も不整脈を持っているということを知ると、同じ土俵に立っていると感じてもらえるのか、それなりに聞いてもらえます。Q11抗不整脈薬がたくさんありすぎて、どれをどの順番で使えばよいのかわからないのですが……。私の場合は、ここ数年かなりシンプルです。抗不整脈薬の投与対象は「発作性心房細動」昔は、さまざまな不整脈に対して抗不整脈薬を使用していました。対象がさまざまなため、それぞれの不整脈ごとに覚えなければいけないことも多かったという記憶があります。しかし、現在は、期外収縮は治療することがほとんどなくなり、上室頻拍、心房粗動など多くの不整脈がカテーテルアブレーションで治癒できるようになり、抗不整脈薬の出番は激減しました。今、私が抗不整脈薬を用いるといったら、そのほとんどは「発作性心房細動」ということになります。抗不整脈薬の薬効は薬によって異なる?昔の私は、少しは異なるのだろうと思っていました。そこで、心房細動を対象としたJ-RHYTHM研究という医師主導型の臨床研究を行った際、アミオダロン以外の抗不整脈薬が多数用いられていたので、サブ分析として薬物別の効果分析をしてみました。そうすると、驚いたことに洞調律が維持される程度(いわゆる薬効)に大きな差がなかったのです。差がないのなら、これほど日本にたくさんの種類の抗不整脈薬はなくてもいいんじゃないかと思ったぐらいですが、日本での歴史に基づいた結果なのでぼやいても仕方ありません。使い慣れた薬物で十分効果に差がなければ、安全性重視ということになるわけです。確かに、抗不整脈薬間で少しずつ安全性が異なるようです。ただ、すべての用量・副作用を記憶しておくわけにもいきません。というわけで、自分が使い慣れた薬物(ということは副作用をよく知っている)、具体的にはピルジカイニド(サンリズム)とフレカイニド(タンボコール)ばかりを使用しています。前者は腎排泄型、後者は肝代謝の要素があり、多くの場合に対処可能です。安全性重視ですから、使用する用量は少なめで開始し、サンリズムは75~100 mg/day、タンボコールは100mg/dayです。効果不十分で安全性に問題なければ、それぞれ倍の用量(これが通常用いられる用量)に増量します。つまり、半量から開始して、問題がなければ通常用量にしているわけです。Q12経口アミオダロンの使い方を教えていただけますか?循環器専門医に任せたほうが無難ですが、ここでも副作用回避が決定的に重要です。アミオダロンだけは他の薬物と異なる抗不整脈薬すべての薬効が似たようなものであれば悩まなくてよいのですが、唯一例外、アミオダロンだけは、他の抗不整脈薬とまったく異なる存在です。明らかに有効性に優れる一方で、致死的な副作用があり、さらにいったん体に入るとなかなか体から抜けにくい……有効性・安全性・薬物代謝のバランス感覚が取りにくい薬物です。なので、どちらかといえば、一般医家は用いないほうがよい、専門医で処方されアミオダロンを継続しなければならない患者でも、アミオダロンに関してだけは専門医に任せたほうがよいと思います。副作用回避を患者と共有するアミオダロンは、致死的な副作用があったとしても、それより重篤な病態を有する患者に対して用います。副作用をできるだけ少なくすることが、この場合に重要なことになりますが、これは医師だけで行うことは難しい……患者の協力を仰ぐほうが効率的です。そこで私のやり方を紹介します。1)アミオダロンの副作用を説明する(1)肺障害、甲状腺障害、肝機能障害があること、(2)とくに肺障害は10%の患者に生じ、致死率10%であること(初期は単なる感冒症状との違いがわからないので受診すること)、(3)3ヵ月に1度は副作用チェックを行うこと、などを説明します。患者が副作用を理解することが、副作用チェックを万全なものにしてくれます。2)初期投与量は400mg/dayを2週間アミオダロンは、総投与量が5gになるまでその薬効を期待しがたいのが実情です。3)2週間後に200mg/dayの通常量に減量副作用回避のために基本的には、3ヵ月ごとに胸部レントゲン、KL-6、甲状腺機能、肝機能、アミオダロン血中濃度を測定することにしています。ただし、KL-6、アミオダロン血中濃度は参考程度にしかなりません。KL-6が間質性肺炎の診断の契機となることは数%でしかなく(診断の契機はほとんど自覚症状かレントゲンです)、アミオダロン血中濃度は効果や副作用に重要な組織中濃度とは異なります(脂溶性薬物のため)。それでも、KL-6やアミオダロン血中濃度の測定は用量減量の契機となることが重要だと思っています。つまり、副作用回避は「常にできるだけ減量を考慮する」が肝です。100mg/dayを目指します。

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61)インスリンの大切さを説明するコツ【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者甘いものが大好きで、なかなか止められなくて・・・医師なるほど。ちょっとイメージしてもらえますか?患者全然、想像ができません。医師それでは、選択肢を出しますね。(1) 5g、(2) 50g、(3) 500gさて、どれでしょう?患者500gだと多そうだから、50gですか?医師残念! 正解は(1) 5gでした。患者えっ、それだけしか血液の中には糖分はないんですか。医師そうなんです。インスリンというホルモンが、この血糖を微妙に調節してくれているんです。患者インスリンって大切なんですね。私はインスリンの出が悪いみたいなので、食べるものにもっと気をつけないといけませんね(気づきの言葉)。●ポイント血液の中の糖分の量をイメージしてもらうことで、インスリンや食事療法の大切さを理解してもらえます●解説人間の血液量は体重の13分の1。65kgの人なら、5L(=65÷13)になります。空腹時の血糖が100mg/dLだとすると、5Lの血液の中には5gのブドウ糖が含まれている計算になります

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GLP-1受容体作動薬と基礎インスリンの併用療法のポジショニング(解説:吉岡 成人 氏)-265

2型糖尿病の基本的な病態として、膵β細胞機能が経年的に低下することに対するコンセンサスがこの10年ほどの間で形成され1)、膵β細胞の機能を温存する可能性を持つホルモンとしてGLP-1が脚光を浴び、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬が市場に登場した。確かに、マウスやラットではGLP-1の膵β細胞保護作用が示されているが、ヒトではいまだ確認されていない。 臨床的には発症早期の2型糖尿病患者にGLP-1受容体作動薬を投与すると、持続血糖モニター(CGM)ではわずか2~3日で血糖変動は平坦となることが確認される。しかし、生理的にわずか数分の半減期しか持たないホルモンを、長時間にわたって高く維持することの長期的な安全性や有効性については何の保証もない。 しかも、毎日の外来診療の場でわかることは、GLP-1受容体作動薬を使用している患者の半数以上で、体重減少効果や血糖降下作用が半年から1年で消失してしまうという事実である。治療開始のタイミングや併用薬、さらには、日本人では肥満が少なく、欧米人との2型糖尿病の病態が異なっていることも関係があるのかもしれない。 そのような中で、3~4年前から基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬との併用が話題となり、多くの臨床試験が積み重ねられ、日本でも、GLP-1受容体作動薬であるリキシセナチド(商品名:リキスミア)とリラグルチド(同:ビクトーザ)の基礎インスリンとの併用が保険適適用となっている。 このような背景のもとに、Conrad EngらはGLP-1受容体作動薬と基礎インスリンを併用することの有用性を、無作為化対照比較試験の論文をメタアナリシスすることによって検討している。 検討の対象となった論文には、日本人を対象とした臨床試験も含まれている。基礎インスリン(±SU薬)にリキシセナチドないしはプラセボを併用した試験(対象患者331例)と、基礎インスリンないしは混合インスリン、強化インスリン療法にリラグルチドないしはプラセボを併用した試験(対象患者257例)である。 主要評価項目は血糖コントロール、低血糖、体重の変化の3項目であり、解析の対象となった4,348例のベースラインにおけるHbA1c値(平均)は8.13%、BMI(平均)は32.9、糖尿病の罹病期間(平均)は12.2年であった。 GLP-1受容体作動薬と基礎インスリンの併用療法群では、HbA1c値が平均で0.44%(95%信頼区間[CI]:-0.60~-0.29%)低下し、HbA1c値7.0%以下の達成率も多く(相対リスク[RR]:1.92、95%CI:1.43~2.56)、統計学的に有意差が確認されている。また、低血糖の頻度については差がなく(RR:0.99、95%CI:0.76~1.29)、体重は併用療法群で3.22kg(95%CI:-4.90~-1.54kg)、有意差をもって減少したと報告されている。 観察期間は12週から36週、多くは24週前後であり、半年前後の検討ではGLP-1受容体作動薬と基礎インスリンの併用による、血糖管理状況の改善、体重減少効果が確認されたこととなる。 しかし、年余にわたる効果については未知数であり、GLP-1受容体作動薬は、製剤間で差はあるものの1本当たりの薬価は7,171円から10,245円であり、1年間使用すると薬価のみで12~18万円にも及ぶ。欧米人ほど肥満患者が多くなく、期待したほどは有用な臨床効果が得られていない日本で、基礎インスリンとGLP-1受容体作動薬を併用することの有用性、またそのポジショニングについては今後のさらなる検討が必要である。

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ヘテロ型家族性高Chol血症、PCSK9阻害薬追加で改善/Lancet

 ヘテロ型家族性高コレステロール血症(FH)の治療において、PCSK9阻害薬エボロクマブ(AMG 145)の追加により、LDLコレステロール(LDL-C)が迅速かつ大幅に低減することが、南アフリカ共和国・Witwatersrand大学のFrederick J Raal氏らが行ったRUTHERFORD-2試験で示された。本症はLDL-Cの代謝に関与する主要蛋白をコードする遺伝子の変異に起因し、細胞内へのLDL-C取り込み低下、血漿LDL-C濃度上昇、若年性心血管疾患の発症を特徴とする。強化スタチン治療、エゼチミブ併用の有無にかかわらず、多くの患者がLDL-Cの推奨目標値に到達しないという。エボロクマブを含むPCSK9阻害薬の第I/II相試験では、既存のコレステロール低下薬との併用でさらに55~60%の低下効果が確認されていた。Lancet誌オンライン版2014年10月2日号掲載の報告。2種類の用量を4群の無作為化試験で評価 RUTHERFORD-2試験は、ヘテロ型FH患者に対するエボロクマブ治療のLDL-C低下効果を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験。対象は、年齢18~80歳、Simon Broome基準で本症と診断され、4週以上のスタチン継続投与を受け、空腹時LDL-Cが2.6mmol/L(100mg/dL)以上の患者であった。エゼチミブ、レジン、スタノール、ナイアシンの併用が許容された。 被験者は、エボロクマブ140mgを2週ごとに皮下投与する群、同420mgを1ヵ月ごとに皮下投与する群、プラセボを2週ごとおよび1ヵ月ごとに皮下投与する群に、2対2対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 投与頻度が同じ治療群内(2つの2週投与群、2つの1ヵ月投与群)では、患者、試験関係者、担当医、試験資金を拠出したアムジェン社の担当者には治療割り付け情報がマスクされた。主要評価項目は、LDL-Cのベースラインから12週までの変化率および10週と12週における平均値の変化率の複合エンドポイントとした。 2013年2月7日~12月19日までに、オーストラリア、アジア、ヨーロッパ、ニュージーランド、北米、南アフリカの39施設から331例が登録され、エボロクマブ140mg/2週群に111例、プラセボ/2週群に55例、420mg/月群に110例、プラセボ/月群には55例が割り付けられた。治療開始前に脱落した2例(2週投与群の1例ずつ)を除く329例が解析の対象となった。1.8mmol/L(70mg/dL)未満を達成した患者が60%以上に ベースラインの全体の平均年齢は51歳、女性が42%、白人が89%で、冠動脈疾患患者が31%含まれ、LDL-Cの平均値は4.0mmol/L(154mg/dL)であった。全例がスタチン治療を受け、そのうち強化スタチン治療が87%で実施され、エゼチミブの併用は62%で行われていた。 エボロクマブの両用量群ともに、12週時のLDL-Cがプラセボ群に比べ有意に低下した(2週投与群が59.2%の低下、1ヵ月投与群は61.3%の低下、いずれもp<0.0001)。10週と12週時のLDL-Cの平均値にも、同様の有意な改善効果が認められた(それぞれ60.2%、65.6%の低下、いずれもp<0.0001)。 2つの用量のエボロクマブ群はいずれも忍容性が良好で、有害事象の発現率はプラセボ群と同等であった。プラセボ群よりもエボロクマブ群で頻度の高い有害事象のうち、最も高頻度にみられたのは鼻咽頭炎(9%[19例]vs. 5%[5例])であり、次いで筋肉関連有害事象(5%[10例]vs. 1%[1例])であった。 著者は、「エボロクマブの低用量2週投与、高用量1ヵ月投与は、ともに良好な忍容性を示し、いずれも3ヵ月でプラセボに比べLDLコレステロールの約60%の低下をもたらした。また、低用量群の68%、高用量群の63%が1.8mmol/L(70mg/dL)未満を達成した」とまとめ、「これは、治療によってLDLコレステロールが健常者と同程度にまで改善したことを意味する。エボロクマブの効果は、本症の遺伝子変異とは関連しないことが示唆される」と指摘している。

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60)できてますか?体力維持に8千歩以上【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話患者(高齢で)最近、体力の低下を感じて・・・医師そうですか。ここに歩数と健康指標の関連を示した表があります。デスクワークや家に閉じこもり気味だと2,000~4,000歩くらいしか歩いていないかもしれません。加齢に伴う筋肉の減少を食い止めるためには7,000歩以上、体力を維持するためには8,000歩以上が必要だそうです。。患者なるほど。私は全然足りませんね。医師ところで、歩数計は持っておられますか?患者はい。けど、電池切れで・・・医師それはよかったです。気持ちと電池を入れ替えれば、検査値もよくなると思いますよ。患者はい。歩数計をつけて、頑張って歩いてみます。●ポイント歩数計の携帯を促し、歩数計を用いた運動指導を行う●資料 歩数と健康指標の関係10,000歩 メタボの予防9,000歩 体力低下の予防8,000歩 サルコペニア(筋肉量減少症)の予防7,000歩 骨粗鬆症の予防6,000歩 動脈硬化の予防5,000歩 生活の質(QOL)低下の予防4,000歩 閉じこもり・うつ病の予防(青柳幸利.高齢者の身体活動と健康に関する研究.より改変)

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ビタミンD欠乏患者への高用量VD3、効果みられず/JAMA

 ICU入室のビタミンD欠乏(20ng/mL以下)重病患者に対し、高用量ビタミンD3の投与はプラセボと比較して、入院期間、院内死亡率または6ヵ月死亡率を低減しなかったことが明らかにされた。オーストリア・グラーツ医科大学のKarin Amrein氏らが無作為化試験「VITdAL-ICU」の結果、報告した。12ng/mL以下の重度ビタミンD欠乏患者では、院内死亡率の低下がみられたが、この所見については、さらなる検討を要するものではないと著者は結論している。重病患者のビタミンD値低下は死亡率、罹患率増大に結び付くが、因果関係があるのかについては明らかにされていなかった。JAMA誌2014年10月15日号掲載の報告より。ビタミンD欠乏重症例へ、ビタミンD3vs. プラセボ VITdAL-ICUは無作為化二重盲検プラセボ対照の単施設試験で、ICU入室患者に対する、ビタミンD値の回復と正常値維持を目的としたビタミンD3投与レジメンがベネフィットをもたらすのかについて、6ヵ月間にわたって検討された。2010年5月~2012年9月に5施設のICUで行われ、被験者は、白人成人でビタミンD欠乏(20ng/mL以下)の重病患者492例であった。 249例がビタミンD3投与群に、243例がプラセボ投与群に割り付けられ、経口または鼻腔栄養チューブで、54万IU1回投与を受けた後、月に1回9万IUの投与を5ヵ月間にわたって受けた。 主要アウトカムは、入院期間であった。副次アウトカムは、ICU入室期間、7日時点でビタミンD値が30ng/mL超となった患者の割合、院内死亡率、6ヵ月死亡率などであった。なお、重度ビタミンD欠乏(12ng/mL以下)群についてのサブグループ解析が事前規定されていた。入院期間、院内死亡率、6ヵ月死亡率、有意差なし 最終解析には475例が組み込まれた(ビタミンD3群237例、プラセボ群238例)。 結果、入院期間の中央値(IQR)について両群で有意差はみられなかった(20.1日vs. 19.3日、p=0.98)。また、院内死亡率(28.3%vs. 35.3%、ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間:0.58~1.11、p=0.18)、6ヵ月死亡率(35.0%vs. 42.9%、HR:0.78、同:0.58~1.04、p=0.09)についても、有意差はみられなかった。 重度ビタミンD欠乏群のサブグループ解析(200例)では、入院期間の両群間の有意差はみられなかった(20.1日vs. 19.0日)が、院内死亡率は、ビタミンD3群のほうが有意な低下がみられた(28/98例[28.6%]vs. 47/102例[46.1%]、HR:0.56、95%CI:0.35~0.90、相互作用p=0.04)。しかし、6ヵ月死亡率の有意差は認められなかった(34.7%vs. 50.0%、HR:0.60、95%CI:0.39~0.93、相互作用p=0.12)。

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1型糖尿病へのインスリン、長時間型 vs. 中時間型/BMJ

 成人1型糖尿病向けには、長時間作用型(持効型溶解)インスリンが中時間作用型(中間型)インスリンに比べ、血糖コントロール効果が高く、重度低血糖症といった有害事象も少なく、有効性、安全性に優れることが示された。ただし、HbA1c値の差はわずかであった。カナダのセント・マイケルズ病院Andrea C. Tricco氏らが、39件の試験について行ったシステマティック・レビューとネットワーク・メタ解析の結果、報告した。結果を踏まえて著者は「患者および担当医は、インスリン製剤の選択を、好み、コストそして入手のしやすさで見直すべきであろう」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年10月1日号掲載の報告より。2013年1月までの無作為化試験やコホート試験などを再調査 研究グループは、Medline、Cochrane Central Register of Controlled Trialsなどを基に、2013年1月までに発表された成人1型糖尿病向けの持効型溶解インスリン(グラルギン、デテミル)と、中間型インスリン(NPH、レンテ)に関する無作為化試験やコホート試験、費用対効果を検討した試験について、システマチック・レビューとネットワーク・メタ解析を行った。 両者の安全性、有効性、費用対効果について比較した。持効型はNPH 1日1回と比べてHbA1c値を有意に低下 6,501件の試験タイトルや抄録、190試験の論文全文をスクリーニングにかけ、39試験について分析を行った。そのうち、無作為化試験は27件(被験者総数:7,496例)だった。 ネットワーク・メタ解析の結果、グラルギン(1日1回)、デテミル(1日1回)、デテミル(1日1~2回)の投与は、NPH(1日1回)の投与に比べてHbA1c値を有意に低下した。無作為化試験26件を含んだ同解析における平均差はそれぞれ-0.39%、-0.26%、-0.36%だった。 重度低血糖症については、無作為化試験16件を含む同解析の結果、デテミル(1日1~2回)がNPH(1日1~2回)に比べ、発症リスクが有意に低かった(オッズ比:0.62、95%信頼区間:0.42~0.91)。 体重増については、無作為化試験13件を含む同解析の結果、デテミル(1日1回)はNPH(1日1~2回)に比べ増加幅が大きかった(平均差:4.04kg)。一方で、デテミル(1日1~2回)vs. NPH(1日1回)、またグラルギン(1日1回)vs. NPH(1日1回)では、いずれもNPH群の体重増加幅が大きかった(それぞれの平均差:-5.51kg、-5.14kg)。 費用対効果については、14件のデテミルvs. NPH試験のうち3件でデテミルが、8件のグラルギンvs. NPH試験のうち2件でグラルギンが、費用対効果が高いという結果であった。費用対効果の解析からは、デテミルとグラルギンはNPHよりも費用が高く、効果も優れるというものだった。またグラルギンvs. デテミルの費用対効果は検討した2試験ともグラルギンのほうが優れないというものだった。

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糖尿病患者への意思決定支援ツールの効果/BMJ

 患者指向の治療意思決定支援(デシジョンエイド)の有用性について、相当量を投じても同ツールの使用で期待される患者のエンパワメント改善には結び付かないことが、オランダ・フローニンゲン大学医療センターのPetra Denig氏らによる、プラグマティック無作為化試験の結果、明らかにされた。原因として、大半の患者が、同ツールを完全には使いこなしていないことが判明したという。デシジョンエイドは、治療管理における患者と医師の意思疎通を助け、患者指向型の治療ゴール設定を促進することが可能とされる。本検討では複数の疾患を抱える糖尿病患者についての有用性を検討した。BMJ誌オンライン版2014年9月25日号掲載の報告より。デシジョンエイドの提供が患者のエンパワメントに与える影響を試験 検討は、オランダ北部の18人の一般医(GP)を介して行われた。2型糖尿病を有し、診断時の年齢は65歳以上で、プライマリケアで治療管理を受けている344例を対象とした。 試験期間は2011年4月~2012年8月で、225例を介入群に、119例を通常ケア群に割り付けた。 介入群には、糖尿病患者のためのデシジョンエイドを提供。デシジョンエイドは、臨床領域間の優先順位決定について患者をエンパワーし、治療意思決定の支援をすることが目的である。介入に用いられたデシジョンエイドは、それぞれ各人用に修正されたリスク情報と複数のリスク因子に対する治療選択肢が盛り込まれた。 同ツールを定期受診前に提供し、また診療中に担当医から提供してもらった。 検討では、4つの異なるフォーマットのデシジョンエイドを含んだ探索的分析も行われた。 主要アウトカムは、治療目標の設定および達成のエンパワメントに与えた影響だった。副次アウトカムは、血糖、血圧、脂質、蛋白尿を調整するための処方薬の変化とした。 データは、構造化質問票からと、介入前後6ヵ月間自動収集した電子ヘルスレコードを通じて収集した。脂質低下治療について変化、ただし有意な変化をもたらしたのは紙媒体 介入群で、介入の基本エレメントを受けていたのは103例(46%)だった。主要アウトカムの解析に十分なベースライン時とフォローアップデータを組み込めたのは、介入群199例、対照群107例だった。 分析の結果、介入群のエンパワメントスコアの増大は、5ポイント制において0.1で、対照群との有意差はみられなかった。ベースライン変数を補正後の平均差は0.039(95%信頼区間[CI]:-0.056~0.134)だった。 コレステロール値が高い被験者における脂質低下薬の投与について、介入群では25%が強化され、対照群では12%であった。しかし、有意差は認められなかった(オッズ比:2.54、95%CI:0.89~7.23)。事前規定の探索的分析により、介入群の処方強化の影響は、プリントされたデシジョンエイドによるものであることが示された(同:3.90、1.29~11.80)。 そのほかの治療について、重要または有意な変化は認められなかった。

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アリスミアのツボ 第3回

Q7症状のない上室・心室期外収縮は、どの程度まで経過観察すべきでしょうか。心機能が正常ならば経過観察しない、という考え方ではどうでしょうか。私は基本的に心機能が正常である限り、期外収縮の経過観察をしていません。これには異論や反論があるかもしれません。心房期外収縮の場合「心房期外収縮の頻発は、放置するとやがて無症状の心房細動に発展してしまうのではないか?」という不安。これはそのとおりだと思います。しかし、問題はその発生確率だと思うのです。一見健康者で、心房期外収縮頻発が見られた例での心房細動の発生確率は、年間約1.5%とされています。これをどう見るか……人によって異なるかもしれません。心房期外収縮例をすべて経過観察しようとするのは、間違いではないのですが効率性に劣る気がします。これを行うための外来診療の時間があれば、もっと有意義な(もっと重篤な疾患をもつ患者のケアに)使えばよいのではないでしょうか。もちろん例外があります。心原性脳梗塞のようだけれども心房細動が見つかっていない患者、心房細動がひとたびもし生じてしまえば脳梗塞のリスクがきわめて高いという患者では、心房期外収縮の頻発を経過観察する価値が高まるでしょう。ただし、これらの患者の経過観察としての適切な方法はまだ誰も知りません。心室期外収縮の場合「心室期外収縮の頻発は、やがて心機能低下を引き起こしてしまうのではないか?」という不安。これもその可能性はあると思います。ただし、どのような発生確率が見込めるのかという確かな数字がない以上、そして基本的に予後はよいという情報がある以上、効率性という意味で経過観察の価値が低いと感じてしまうのです。脳梗塞とは異なり、心機能低下はirreversibleではありません。健康診断をきちんと受けることを指導する、というような経過観察でもよいのではないでしょうか。Q8発作性心房細動に対する抗不整脈薬の用い方について教えてください。安全性重視という考え方で、患者の意向次第で減量や中止も随時可能専門家の現場での用い方「抗不整脈薬の使い方がわからない。ガイドラインや教科書と、循環器内科医の実臨床での使い方がかなり違う気がする」というご意見もありました。抗不整脈薬は諸刃の剣と言われることから、どうしても経験則が幅を利かせているのが実情です。ESCの心房細動ガイドラインで書かれていることESCの心房細動ガイドラインにはこの抗不整脈薬の使い方の原則が書かれているので、それを引用しておきましょう。1)抗不整脈薬治療は症状を軽減する目的で行うものである2)抗不整脈薬で洞調律を維持する効果は“modest”である3)抗不整脈薬治療は心房細動の再発をなくすものでなく、減らすことで臨床的には成功と考えるべきだろう4)1つの抗不整脈薬が効果のない場合、他の抗不整脈薬が効果を示すことがあるかもしれない5)抗不整脈薬による新たな不整脈の出現、心外性副作用はしばしば生じる6)抗不整脈薬の選別は効果よりもまず安全性を指針とすべきである私の使い方私の臨床現場での用い方はこれを基本にしています。たとえば、抗不整脈薬をいつ始めて、いつ中止するのかについての一定の見解はないのですが、患者が心房細動の症状で困っている時に開始し(1参照)、その際あらかじめ発作が完全に消失するものではないことを伝え(2、3参照)、症状が軽くなればいつでも薬物の減量をトライし、症状に困らなくなればいつでも中止をトライする(6参照)、ということを基本にしています。もちろん、減量や中止によって患者が困るようになれば、また再開することはたびたびです(むしろ、そのほうが多いかもしれません)。ただ、これを行うことで患者が薬物の効果を実感してくれることもアドヒアランスを高めると思っています。Q9NOACをどのように開始すべきでしょうか?ワルファリン時代とまったく異なる抗凝固療法のやり方を会得する必要がありますワルファリン時代に染みついた慣習心房細動の脳卒中予防には抗凝固療法が必要です。抗凝固療法の仕方…これについては、あまりにもワルファリンを使用してきた歴史が長く、ワルファリン時代のやり方が身に染みついてしまっていることを私自身が痛感しました。そこで、ワルファリン時代とは異なるNOACによる抗凝固療法の私のやり方をまとめておきます。1)心房細動初診患者では(脳卒中の一次予防ならば)その日のうちに抗凝固療法を始めない。ワルファリン時代は初診患者で脳卒中予防の説明をして、ワルファリン1.5~2mg/dayをその日から開始していました。しかし、NOACでは危なっかしくてできないですね。初診日は、脳卒中に関する啓蒙、年齢、体重の把握、血清Cr、Hbの採血をするだけにしています。クリアチニンクリアランスを把握してから抗凝固療法はするものと考え、次の外来から(つまりクレアチニンクリアランスが手に入ってから)NOACを処方します。次回の外来までに脳卒中になってしまうのでは……と不安に思う方がおられるかもしれませんが、所詮ワルファリン時代も初診時に処方する少量のワルファリン量ではそもそも効いていませんでした。NOACを初診日に処方すると禁忌症例に処方してしまう可能性があり、こちらのほうが危険でしょう。また、貧血のある患者にNOACを処方するのも危険です。今まさに、じわじわとどこからか出血しているのかもしれないからです。2)2週間以内の出血に関する問診とHbのチェックを忘れないワルファリン時代はゆっくりと抗凝固がなされ、しかもPT-INRによる処方量決定のためたびたび外来受診が行われるので、出血のケアは自然になされやすい環境にありました。しかし、長期処方が可能なNOACは大出血直前の気付きの機会を減らしています。そこで、私は、NOAC処方時には必ず2週間以内に受診してもらい、皮下出血、タール便の有無を聞き、必ずHbをチェックすることにしています。2週間でHbが明らかに減少していれば、どこからか出血していることになるからです。逆にHb値に変化がなければ安心できます。3)バイオマーカーはどうする?ワルファリン時代のPT-INRというモニタリングはなくなりました。では何もチェックしていないかというと、私は、ダビガトランではaPTT、リバーロキサバンとアピキサバンではPTをチェックしています。固定用量の薬物では必ず効きすぎの患者が、わずかといえども存在しているからです。ただし、これはモニタリングではありません。処方後2週間以内の外来で、Hbと一緒にバイオマーカーを一度採血するのです。バイオマーカーについては「あまり見かけないほど高い値である」ことがなければ、それで良しとしています。その後の採血ですが、クレアチニンクリアランスを高齢者では年に4回程度、若年者では年に1、2回チェックしますが、それと同時にこれらのバイオマーカーもチェックしています。NOACのバイオマーカーはモニタリングではなく、あくまでもチェックにすぎないのです。

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ホモ型家族性高Chol血症、PCSK9阻害薬で改善/Lancet

 新規開発中のコレステロール低下薬エボロクマブ(AMG 145)について、ホモ接合型家族性高コレステロール血症でスタチン療法などの継続的な脂質低下療法を受けている患者に投与することで、LDLコレステロール(LDL-C)値が約3割低下することが示された。南アフリカ共和国・Witwatersrand大学のFrederick J Raal氏らが第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、報告した。エボロクマブは、LDL-Cの能力を低下する前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害する。Lancet誌オンライン版2014年10月2日号掲載の報告。エボロクマブを4週間ごと12週投与 試験は、北米、欧州、中東、南アフリカの10ヵ国17ヵ所の医療機関を通じて行われ、12歳以上のホモ接合型家族性高コレステロール血症の患者を対象とした。被験者は、スタチン療法(全患者が受けていた)などの脂質低下療法を4週間以上受けており、LDL吸着療法を受けていた患者は登録時に除外された。 被験者を無作為に2対1の割合で2群に分け、エボロクマブ 420mgまたはプラセボを、それぞれ4週間ごと12週にわたり皮下注で投与した。無作為化は、LDL-C値11mmol/L未満または以上で分類して行った。 主要エンドポイントは、12週時点におけるLDL-C値のベースラインからの変化だった。12週時点のLDL-C、エボロクマブ群でプラセボ群より30.9%減少 試験適格患者は50例、そのうち49例が試験を終了した(そのうちエボロクマブ群は33例)。 12週間時点のエボロクマブ群のLDL-C値は、プラセボ群に比べ30.9%減少した(95%信頼区間:-43.9~-18.0%、p<0.0001)。 治療下で発生した有害事象は、プラセボ群10例(63%)、エボロクマブ群12例(36%)だった。また、重大有害事象の発生や抗エボロクマブ抗体の発現は認められなかった。

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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の内科的治療の選択について(解説:小林 英夫 氏)-261

まず、掲載された本論文の概略にお目通しいただきたい。本論文から読み取るべき点は、どのような薬剤が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療薬として優れているかについてランダム化試験を実施すべきである、という記述に尽きるというのが筆者の印象である。 Gershon氏らが指摘するように、COPDの内科的治療法には複数の選択肢が存在し、いずれも有効性を支持する報告に裏付けられているものの、最適な治療法がどれなのかについては不明なままである。 本報告では長時間作用性β2刺激薬と吸入ステロイド薬(LABA+ICS)併用群とLABA単独群間で、死亡と入院の発生をアウトカムとして検討を行った。約2年半の追跡によりLABA+ICS併用群において軽度良好な結果が示されたが、この記述をそのまま受け入れるには少なからぬ問題点がある。 本論文は約1万2,000例という多数例を基にした解析であり、それなりの意義があることは間違いない。また、本邦で2薬剤の有効性比較試験を多数例で実行することの困難性を想定すれば、本研究から得られる示唆は重要であろう。しかし、本報告を根拠として今後のCOPD治療を変更することは早計に思う。本報告は薬剤効果を比較する試験デザインではないことを意識していただきたい。 以下、本論文の特徴を列記すると、まず、本研究は後ろ向き観察研究であり、2群の優劣を判定するためのランダム化比較試験ではない。次に、症例はadministrative databasesからの抽出であり、COPDの診断の妥当性や精度について検討できていない。その点について、同著者の既報(1 を引用し、診断精度はsensitivity、specificityともに80%以上としている。しかし、1秒量、1秒率、画像所見など検討されていないのである。さらに25%の症例は呼吸機能検査が実施されていない。 同著者は気管支喘息でも同登録データに基づく診断精度を報告し(2、そちらもsensitivity、specificityがそれぞれ約80%としている。この論文でもピークフロー値などの臨床検査は記述されていない。臨床で重要視する項目と疫学的観察における視点には少なからぬ差異が存在するようである。 上記2点に加え、対象COPD群には糖尿病が25%以上、気管支喘息が約30%、高血圧が70%以上に合併していた点は、本邦症例と比すると近似した集団なのであろうか。 4点目として、集計母集団がLABA単独群3,258例、併用群3万4,289例であり、propensity score matchingを導入した後でもLABA+ICS併用群8,712例、LABA単独群3,160例となっており、対等な2群とは評価しがたい大きな開きが存在している。当初から治療選択にバイアスが存在していることが想定される。 5点目として、サブグループとしての気管支喘息+COPD群はLABA+ICS併用により良好なアウトカムが得られたと報告している。そもそも、気管支喘息合併群をLABA単独で治療するという症例が含まれていることが、行政登録データに基づく症例選択の限界であろう。治療法の優劣を判定する目的では、本研究のような後ろ向き解析には限界があることを前提に、本論文を評価していただきたい。 しかし、疾患歴、入院歴、救急受診歴などの医療情報登録システムが構築され、疫学研究に活用できるカナダの体制を知らされると、本邦でも早急にこのような観察研究が可能となる日を願ってやまない。

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未来を担う医療系学生(06)

今 華恵さん東北薬科大学薬学部 薬学科 6年 調剤以上に一芸ある薬剤師になりたいです。コメント宮城県の出身なんですが、東北地方で医歯薬が学べる大学は本当に少ないです。その中で、地元で、理系で、臨床につながる勉強ができるところを探した結果、東北薬科大学だったわけです。薬の勉強は楽しいですね。市販薬でも飲んでいる薬の作用や成分がよくわかるようになりました。今は、糖尿病予防の観点から学ぶ栄養学がとても面白い。将来は海外にも出てみたいと考えていて、この夏はさまざまな情報収集をしました。北欧とか、憧れますね。撮影:江上嘉郁

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ADVANCE-ON試験:一定期間の降圧治療の有無でも、長期的な心血管イベント発症に影響(解説:桑島 巌 氏)-260

2型糖尿病合併高血圧患者で、大血管障害を予防するためには、血糖管理に加えて、厳格な血圧管理が非常に重要であることは、UKPDS38という有名な臨床試験で証明されていた。しかし、厳格血圧コントロールといっても平均144/82mmHg、通常血圧管理群154/87mmHgという高いレベルでの比較だった。  2007年に発表されているADVANCE試験は、2型糖尿病合併高リスクの症例で平均145/81mmHg、41%が140/90mmHg未満の正常血圧症例を含む症例でのACE阻害薬+利尿薬の心血管合併症(macro, micro)予防効果をプラセボ治療群と比較した試験である。その平均4.4年間の結果では、厳格なACE阻害薬+利尿薬による血圧管理が、プラセボに比べて大血管および細小血管障害を有意に抑制したことが報告されている1)。また、血糖管理に関しても、HbA1c6.5%未満の厳格管理が、標準管理群よりも心血管イベント抑制に有用であることも示されていた。 今回発表のADVANCE-ON試験は、試験終了後ランダム化を終了したあと、さらに血圧管理試験では平均5.9年間、血糖管理試験では5.4年間延長して観察された結果である。延長期間中にはすでに厳格血圧管理群と通常管理群における血圧値の差は消失しており、血糖値もHbA1c6.5%未満の厳格血糖管理群と通常管理群の間でも差は消失していたという。 このことは糖尿病合併高血圧患者における4.4年間における降圧薬治療の違いが、試験終了後5~6年間までも全死亡や心血管死に強く影響することを示した試験として興味深い。 一方、血糖コントロールに関しての厳格管理群と通常管理群との間には、全死亡、心血管死、大血管イベント発症に差はみられず、長期的なメリットは保証されなかった。すなわち血糖管理の遺産効果(legacy effect)について否定的な結果となった。 これら一連の臨床試験結果は、糖尿病患者においては厳格な血圧管理こそ重要であることをあらためて教えてくれる。

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59)自分の適正なお寿司の皿数、わかりますか?【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話医師外食では、どんなものを食べられることが多いですか?患者子どもやおばあちゃんもいるので、回転寿司にいくことが多いです。医師回転寿司はいいですね。子どもからお年寄りまで、楽しめますね。患者そうなんです。けど、つい食べ過ぎてしまって・・・医師何皿くらい食べられますか?患者そうですね。7~8皿、多いときは10皿くらい食べるかもしれません。医師なるほど。普段、食べているご飯の量はどのくらいですか?患者ご飯の量ですか。200gくらいです。医師それだと、だいたい5皿分くらいになりますね。患者それなら、私、食べ過ぎですね。これからは気をつけます。●ポイント普段食べているご飯の量と皿数を比較することで、理解が深まります

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喫煙が低EPA/AA比と関連:日本の2型糖尿病患者

 喫煙は、50歳以上の日本人2型糖尿病患者において、EPA/AA比(エイコサペンタエン酸/アラキドン酸比)に影響を与える可能性があることが、自治医科大学の岡田 健太氏らによる研究で明らかになった。2型糖尿病患者に禁煙を促すことが、心血管疾患発症の抑制につながるかもしれない。Diabetology & metabolic syndrome誌2014年8月13日号の報告。 低EPA/AA比は、心血管疾患のリスク因子であると考えられている。また、喫煙は、高齢者においてもなお心血管疾患のリスク因子となる。そのため、本研究では、高齢の2型糖尿病患者において、EPA/AA比と喫煙状況との関連を調査した。 対象は、EPAやAAを含有する薬物治療を行っていない50歳以上の2型糖尿病188例(男性114例、女性74例/ 平均65.0±7.5歳)。喫煙状況、糖尿病の状態、EPAおよびAAを含む血液データの観点から検討した。 主な結果は以下のとおり。・喫煙者は49例(男性43例、女性6例/ 平均62.4±7.3歳)、非喫煙者は139例(男性71例、女性68例/平均65.9±7.4歳)であった。・喫煙者は、高血圧、神経障害、HbA1c高値、HDLコレステロール低値の割合が、非喫煙者と比較して有意に高かった。・AA値、DHA値、EPA値は、喫煙者と非喫煙者で有意差は認められなかった。・喫煙者は非喫煙者と比較して、EPA/AA比が有意に低かった(平均0.29 vs 0.39、p<0.01)。この関連は多変数(年齢、性別、BMI、高血圧、HbA1c値、インスリン療法、合併症、脂質、スタチン治療)で調整後も有意なままであった。

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患者さんの誤解を解く説明法

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 先生、ブルーベリーは目にいいんですか?医師 ブルーベリーね。(興味を示す)患者 そうなんです。血糖値が高いと眼が悪くなると聞いて、何かないかと思っています。医師 じつは、もう飲み始めているとか?患者 そうなんです。試供品を買って飲んでみたんですけど・・・医師 そうだったんですか。ブルーベリーは、アントシアニンをたくさん含んでいるので、抗酸化作用が期待されているのですが・・・。画 いわみせいじ患者 どうなんですか?医師 残念ながら、疲れ目程度はとれるかもしれませんが、糖尿病からくる眼の合併症を防ぐまでの効果はないそうです。患者 なんだ。そうなんですか。医師 これからは試してみる前に相談してみてくださいね。患者 はい。わかりました。ポイント患者さんの話に興味を示し、エビデンスをわかりやすく説明することで患者さんの満足度が高まりますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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