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1型DMの血糖管理、間歇スキャン式持続血糖測定vs.SMBG/NEJM

 糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が高い1型糖尿病患者において、高血糖/低血糖のアラームを設定できる間歇スキャン式持続血糖測定器(isCGM)の使用は、フィンガースティック(指先穿刺)血糖測定による血糖モニタリングと比較して、HbA1c値の有意な低下に結び付くことを、英国・Manchester Academic Health Science CentreのLalantha Leelarathna氏らが同国で実施した多施設共同無作為化非盲検比較試験「FLASH-UK試験」の結果、報告した。持続血糖モニタリングシステム(間歇スキャン式またはリアルタイム)の開発により、フィンガースティック検査なしでの血糖モニタリングが可能となったが、HbA1c値が高い1型糖尿病患者において、高血糖/低血糖のアラームを設定できるisCGMの有益性は不明であった。NEJM誌オンライン版2022年10月5日号掲載の報告。アラーム機能付きisCGM vs.指先穿刺血糖測定、HbA1c値の改善を比較 研究グループは、16歳以上、罹患期間1年以上で、持続皮下インスリン注入療法またはインスリン頻回注射を行ってもHbA1c値が7.5~11.0%の1型糖尿病患者156例を、isCGM群(78例)とフィンガースティック検査による自己血糖モニタリング(対照)群(78例)に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。isCGMは、FreeStyle Libre 2(Abbott Diabetes Care製)を用いた。 主要評価項目は、無作為化後24週時のHbA1c値とし、intention-to-treat解析を行った。主要な副次評価項目は、センサーデータ、患者報告アウトカム、安全性などである。isCGM使用により、低血糖が減少し安全にHbA1c値が改善 156例の患者背景は、平均(±SD)年齢44±15歳、平均糖尿病罹患期間21±13年、HbA1c値8.6±0.8%、女性44%であった。 HbA1c値は、isCGM群でベースラインの平均8.7±0.9%から24週時7.9±0.8%に、対照群で8.5±0.8%から8.3±0.9%にそれぞれ低下した(補正後平均群間差:-0.5ポイント、95%信頼区間[CI]:-0.7~-0.3、p<0.001)。 血糖値が目標範囲内にある時間(1日当たり)は、対照群と比較してisCGM群において9.0ポイント(95%CI:4.7~13.3)高く、130分(95%CI:68~192)延長した。また、低血糖(血糖値<70mg/dL)の時間(1日当たり)は、対照群と比較してisCGM群で3.0ポイント(95%CI:1.4~4.5)低く、43分(95%CI:20~65)短かった。 重症低血糖エピソードは対照群2例で報告された。また、isCGM群ではセンサーへの皮膚反応が1例に認められた。 なお、著者は研究の限界として、非盲検試験のため対照群のうちisCGMに移行した後に24週時のHbA1c値を測定した患者が5例いたこと、ほとんどの患者が白人で結果の一般化に限りがあること、アラームの設定と使用に関するデータは提供されていないため観察された有益性がセンサーのみによるものか、使用したisCGMのアラームによるものかは確認できないことなどを挙げている。

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手引き改訂で診断基準に変化、テストステロン補充療法/日本メンズヘルス医学会

 『加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き2022』が15年ぶりに改訂されるにあたり、9月17、18日にオンライン開催された第22回日本メンズヘルス医学会において、シンポジウム「LOHセッション」が開催された。本稿では検査値の改訂ポイントについて、伊藤 直樹氏(NTT東日本札幌病院泌尿器科 部長/外科診療部長)の発表内容からお伝えする(共催:株式会社コスミックコーポレーション)。 LOH症候群とは、“加齢あるいはストレスに伴うテストステロン値の低下による症候群”である。加齢に起因すると考えられる症状として大きく3つの項目があり、1)性腺機能症状(早期勃起の低下、性欲[リビドー]の低下、勃起障害など)、2)精神症状(うつ傾向、記憶力、集中力の低下、倦怠感・疲労感など)、3)身体症状(筋力の低下、骨塩量の減少、体脂肪の増加など)が挙げられる。見直された診断基準値、海外と違う理由 本手引きの改訂においてもっとも注目すべきは、主診断に用いる検査値が変わることである。2007年版の診断基準値では遊離テストステロン値(8.5pg/mL未満)のみが採用されていたが、2022年改訂版では総テストステロン値(250ng/dL未満)を主診断に用いることになる。その理由として、伊藤氏は「海外でのgold standardであること、総テストステロン値と臨床症状との関連性も認められること、健康男性のmean-2SD・海外ガイドラインも参考にしたこと」を挙げた。また、遊離テストステロン値は補助診断に用いることとし、LOH症候群が対象となり始める30~40歳代のmean-2SD値である7.5pg/mL未満とするに至った。これについて「RIA法の信頼性が問題視されていること、海外の値(欧州泌尿器学会では63.4pg/mLなど)と測定方法が異なり比較できないため」とコメントした。<LOH症候群の新たな診断基準>―――・総テストステロン値250ng/dL未満または・250ng/dL以上で遊離テストステロン値が7.5pg/mL未満※各測定値にかかわらず総合的に判断することが重要で、テストステロン補充の妥当性を考慮し、「妥当性あり」と判断すれば、LOH症候群と診断する●注意点(1)血中テストステロン分泌は午前9時頃にピークを迎え夜にかけて低下するため、午前7~11時の間に空腹で採血すること。(2)2回採血について、日本では保険適用の問題もあるため、海外で推奨されているも本手引きではコメントなし。――― また、測定時に注意すべきは、総テストステロンの4割強は性ホルモン結合グロブリン(SHBG:sex hormone brinding globulin)と強く結合しているため、SHBGに影響を与える疾患・状態にある患者の場合は値が左右される点である。同氏は「SHBGが増加する疾患として、甲状腺機能亢進症、肝硬変、体重減少などがある。一方で低下する疾患には、肥満、甲状腺機能低下症、インスリン抵抗性・糖尿病などがあるため、症状の原因となるようなリスクファクターの探索も重要であるとし、「メタボリックシンドローム(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)から悪性腫瘍などの消耗性疾患、副腎皮質・甲状腺など内分泌疾患、そしてうつ病などの精神疾患などLOH症候群に疑わしい疾患は多岐にわたるため、すぐに断定することは危険」と強調。「自覚症状、他覚的所見を総合的に判断し、ほかの疾患の存在も常に疑うべき」と指摘した。 さらに、診断基準の“測定値にかかわらず総合的に判断する”という点について、「アンドロゲン受容体の活性効率に影響するN末端のCAGリピートがアジア人は長く、活性効率が低い可能性がある。そのため、テストステロン値が基準値以上でも補充療法が有効の可能性がある」と説明した。 測定値とは別に、症状からLOH症候群か否かを定量的に判定する方法の1つとしてAMS(Aging Males' Symptoms)スコア1)が広く用いられている。これについて、同氏は「感度は高いが特異度は低いため、スクリーニングには推奨されない」と話した。一方でホルモン補充療法による臨床効果の監視には有用という報告もあることから、「全体の合計点だけを見るのではなく、それぞれの症状をピックアップし、患者に合わせて対応することが大切」と説明した。 最後に、診断を確定する前にはLOH症候群が原発性か二次性かの確認も必要なことから、「最終的にはLHおよびFSHを測定し二次性性腺機能低下症の有無を確認するために、その原因疾患を把握し、確認して欲しい」と締めくくった。

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4種類の血糖降下薬、メトホルミン併用時のHbA1c値への効果に差は?/NEJM

 2型糖尿病患者では、糖化ヘモグロビン(HbA1c)の目標値を維持するために、メトホルミンに加えいくつかの種類の血糖降下薬が投与されるが、その相対的有効性は明らかにされていない。米国・マサチューセッツ総合病院のDavid M. Nathan氏らGRADE Study Research Groupは、「GRADE研究」において、4種類の血糖降下薬の効果を比較し、これらの薬剤はいずれもメトホルミンとの併用でHbA1c値を低下させたが、その目標値の達成と維持においては、グラルギンとリラグルチドが他の2剤よりもわずかながら有意に有効性が高いことを確認した。研究の成果は、NEJM誌2022年9月22日号で報告された。米国の無作為化並行群間比較試験 GRADE研究は、2型糖尿病患者の治療における4種類の血糖降下薬の相対的有効性の評価を目的とする無作為化並行群間比較試験であり、2013年7月~2017年8月の期間に、米国の36施設で参加者の登録が行われた(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所[NIDDK]などの助成を受けた)。 対象は、2型糖尿病の診断時の年齢が30歳以上(アメリカインディアンとアラスカ先住民は20歳以上)、糖尿病の罹病期間が10年以内で、500mg/日以上のメトホルミンによる治療を受けており、過去6ヵ月間に他の血糖降下薬を使用しておらず、HbA1c値が6.8~8.5%の患者であった。 被験者は、インスリン グラルギンU-100(以下、グラルギン)、スルホニル尿素薬グリメピリド、GLP-1受容体作動薬リラグルチド、DPP-4阻害薬シタグリプチンを投与する群に無作為に割り付けられた。全例がメトホルミンの投与を継続した。 代謝に関する主要アウトカムは、HbA1c値≧7.0%とされ、年4回の測定が行われた。代謝に関する副次アウトカムは、HbA1c値>7.5%であった。体重減少はリラグルチドで最も大きい 5,047例が登録され、グラルギン群に1,263例、グリメピリド群に1,254例、リラグルチド群に1,262例、シタグリプチン群に1,268例が割り付けられた。ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は57.2±10.0歳、41.5%が60歳以上で、10ヵ所の退役軍人省医療センターの参加を反映して63.6%が男性であり、白人が65.7%、黒人が19.8%、ヒスパニック/ラテン系が18.6%含まれた。 それぞれの平均値は、糖尿病の罹病期間4.2±2.7年、メトホルミンの1日投与量1,994±205mg、BMI 34.3±6.8、HbA1c値7.5±0.5%であった。平均追跡期間は5.0年であり、85.8%が4年以上の追跡を受けた。 HbA1c値≧7.0%の累積発生割合には、4つの治療群で有意な差が認められた(全体的な群間差の検定のp<0.001)。すなわち、100人年当たりグラルギン群が26.5、リラグルチド群は26.1とほぼ同様であり、これらはグリメピリド群の30.4、シタグリプチン群の38.1に比べて低かった。これは、HbA1c値<7.0%の期間が、シタグリプチンに比べグラルギンとリラグルチドで約半年間長くなることを意味する。 また、HbA1c値>7.5%の発生割合に関しては、群間差に主要アウトカムと同様の傾向がみられ、100人年当たりグラルギン群が10.7、リラグルチド群は13.0であり、グリメピリド群の14.8、シタグリプチン群の17.5よりも低かった。 事前に規定された性別、年齢、人種/民族別のサブグループでは、主要アウトカムに関して4つの治療群で実質的な差はみられなかった。一方、ベースラインのHbA1c値が高かった(7.8~8.5%)患者では、HbA1c値<7.0%の維持または達成において、シタグリプチン群は他の3剤と比較して効果が低かった。 重症低血糖はまれだったが、グリメピリド群(2.2%)は、グラルギン群(1.3%、p=0.02)、リラグルチド群(1.0%、p≦0.001)、シタグリプチン群(0.7%、p≦0.001)に比べ有意に高頻度であった。消化器系の副作用の頻度は、リラグルチド群(43.7%)が他の治療群(グラルギン群35.7%、グリメピリド群33.7%、シタグリプチン群34.3%)に比べて高かった。また、4年間の平均体重減少はリラグルチド群(3.5kg減)とシタグリプチン群(2.0kg減)が、グラルギン群(0.61kg減)とグリメピリド群(0.73kg減)よりも大きかった。 著者は、「本試験で得られた重要な示唆は、たとえすべての治療が無料で提供される臨床試験であっても、HbA1cの目標値の維持は困難なことである。このデータは、2型糖尿病患者における長期的な血糖コントロールの、より効果的な介入の必要性を強調するものである」と指摘し、「これらの知見は、メトホルミンへの追加の薬剤を選択する際に、医療者と患者の共有意思決定の基礎となるだろう」としている。

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4種類の血糖降下薬、メトホルミン併用時の効果を比較/NEJM

 米国では、2型糖尿病患者の治療においてメトホルミンとの併用で使用される血糖降下薬の相対的有効性のデータは十分でないという。米国・マサチューセッツ総合病院のDavid M. Nathan氏らGRADE Study Research Groupは、「GRADE研究」において、メトホルミンと4種類の血糖降下薬の併用療法の効果を比較し、微小血管合併症や死亡の発生には4種類の薬剤で実質的な差はないが、心血管疾患の発生には群間差が存在する可能性があることを示した。研究の成果は、NEJM誌2022年9月22日号に掲載された。米国の無作為化並行群間比較試験 GRADE研究は、2型糖尿病患者の治療における4種類の血糖降下薬の相対的有効性の評価を目的とする無作為化並行群間比較試験であり、2013年7月~2017年8月の期間に、米国の36施設で参加者の登録が行われた(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所[NIDDK]などの助成を受けた)。本論では、主に副次アウトカムの結果が報告され、主要アウトカムは別の論文で詳報された。 対象は、2型糖尿病の診断時の年齢が30歳以上(アメリカインディアンとアラスカ先住民は20歳以上)、診断からの経過期間が10年以内で、500mg/日以上のメトホルミンによる治療を受けており、糖化ヘモグロビン値が6.8~8.5%の患者であった。 被験者は、メトホルミンに加え、インスリン グラルギンU-100(以下、グラルギン)、グリメピリド、リラグルチド、シタグリプチンのうち1つの投与を受ける4つの群に無作為に割り付けられた。5,047例が登録され、このうちグラルギン群が1,263例、グリメピリド群が1,254例、リラグルチド群が1,262例、シタグリプチン群は1,268例だった。高血圧、脂質異常症、尿中アルブミン上昇にも、実質的な差はない ベースラインの全体の平均(±SD)年齢は57.2±10.0歳、41.5%が60歳以上で、63.6%が男性だった。糖尿病の平均罹病期間は4.2±2.7年、メトホルミンの平均1日投与量は1,994±205mgであり、平均BMIは34.3±6.8、平均糖化ヘモグロビン値は7.5±0.5%であった。平均追跡期間は5.0年。 目標血糖値の維持(代謝に関する主要アウトカム)については、グラルギン群とリラグルチド群の効果がグリメピリド群、シタグリプチン群よりも優れ、4年時の糖化ヘモグロビン値はグラルギン群とリラグルチド群が7.1%であったのに対し、グリメピリド群は7.3%、シタグリプチン群は7.2%であった。 高血圧、脂質異常症の発生、および微小血管アウトカムに関しては、4つの治療群で実質的な差はなかった。また、全体的な尿中アルブミンの中等度上昇の発生割合の平均値は、100人年当たり2.57、尿中アルブミンの高度上昇は1.08、腎障害は2.91で、いずれも治療群間で差はなく、試験終了時の累積発生率はそれぞれ約15%、8%、20%であった。同様に、糖尿病性末梢神経障害の発生割合は100人年当たり16.7であり、追跡期間の1年目の発生率は約20%、試験終了時には約70%に達した。 試験期間中の全心血管疾患の発生割合は100人年当たり1.79で、試験終了時には4つの治療群の発生率は10~15%に達した。治療群別の発生割合は、100人年当たりグラルギン群が1.87、グリメピリド群が1.92、リラグルチド群が1.36、シタグリプチン群は2.00であり、わずかな差が認められた。 また、全体的な主要有害心血管イベント(MACE)の発生割合は100人年当たり0.98、心不全による入院は0.40、心血管系の原因による死亡は0.27、全死因死亡は0.59であり、治療群間で差はなかった。 一方、1つの治療を、他の3つの治療を統合した結果と比較すると、全心血管疾患のハザード比は、グラルギン群が1.07(95%信頼区間[CI]:0.87~1.33)、グリメピリド群が1.12(0.90~1.39)、リラグルチド群が0.71(0.56~0.90)、シタグリプチン群は1.18(0.96~1.46)であった。 著者は、「2型糖尿病の治療薬を選択する際には、血糖値に対する効果とともに、微小血管合併症、心血管リスク因子、心血管アウトカムに及ぼすこれらの薬剤の異なる効果を考慮する必要があり、この試験の結果は、治療薬の選択において有益な情報をもたらすと考えられる」としている。

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オープンソースの自動インスリン伝達システム、1型DM血糖コントロールを改善/NEJM

 7~70歳の1型糖尿病患者において、オープンソースの自動インスリン伝達(AID)システムはセンサー付きインスリンポンプと比較して、24週時に血糖値が目標範囲にある時間の割合が有意に高く、1日のうち血糖値が目標範囲内である時間は3時間21分延長したとの研究結果が、ニュージーランド・オタゴ大学のMercedes J. Burnside氏らが実施した「CREATE試験」で示された。研究結果は、NEJM誌2022年9月8日号で報告された。ニュージーランドの無作為化対照比較試験 CREATE試験は、1型糖尿病患者におけるオープンソースAIDシステムの有効性と安全性のデータの収集を目的とする非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年9月~2021年5月の期間に、ニュージーランドの4施設で参加者の登録が行われた(ニュージーランド保健研究会議[HRC]の支援を受けた)。 対象は、年齢7~70歳、1型糖尿病の診断を受けてから1年以上が経過し、インスリンポンプ療法を6ヵ月以上受け、糖化ヘモグロビンの平均値<10.5%(91mmol/mol)の患者であった。 被験者は、オープンソースAIDシステムまたはセンサー付きインスリンポンプ(対照)を使用する群に無作為に割り付けられた。また、年齢7~15歳が小児、16~70歳は成人と定義された。 AIDシステムは、AndroidAPS 2.8(標準的なOpenAPS 0.7.0アルゴリズムを使用)の修正版で、試作段階のDANA-iインスリンポンプとDexcom G6持続血糖モニター(CGM)を組み合わせて用いた。ユーザーインターフェースは、Androidスマートフォンアプリケーション(AnyDANA-Loop)だった。 主要アウトカムは、155~168日目(試験の最後の2週間[23~24週])に、血糖値が目標範囲(70~180mg/dL[3.9~10.0mmol/L])にある時間の割合とされた。年齢による治療効果に差はない 97例が登録され、AID群に44例(小児21例[年齢中央値14.0歳、女児11例]、成人23例[40.0歳、15例])、対照群に53例(27例[11.0歳、13例]、26例[38.0歳、15例])が割り付けられた。ベースラインの平均糖化ヘモグロビン値は小児が7.5%、成人は7.7%だった。 血糖値が目標範囲にある時間の割合の平均値(±SD)は、AID群がベースラインの61.2±12.3%から24週時には71.2±12.1%へ上昇し、これに対し対照群は57.7±14.3%から54.5±16.0%へと低下しており、有意な差が認められた(補正後平均群間差:14.0ポイント、95%信頼区間[CI]:9.2~18.8、p<0.001)。また、AID群は、1日のうち血糖値が目標範囲内である時間が、対照群よりも3時間21分長かった。 血糖値が目標範囲にある時間の割合が70%以上で、かつ範囲外(<70mg/dL)にある時間の割合が4%未満の患者は、AID群が52.0%であったのに対し、対照群は11.0%であった(補正後平均群間差:36.9ポイント、95%CI:25.9~48.5)。また、年齢による治療効果の差はみられなかった(p=0.56)。 小児では、AID開始から2週間以内には介入効果が認められ、24週の試験期間中も維持された。また、AID群は、夜間(午前0時~午前6時)の血糖値が目標範囲にある時間の割合が76.8±15.8%と、日中(午前6時~午後12時)の64.3±11.7%に比べて高かった。対照群は、それぞれ57.2±21.4%および50.9±17.4%であった。成人のAID群も小児と同様に、夜間が85.2±12.7%と高かったのに対し日中は70.9±12.7%であった。対照群は、それぞれ53.5±20.1%および57.5±14.4%であり、夜間と日中で同程度だった。 重度の低血糖および糖尿病性ケトアシドーシスは両群とも発現せず、インスリン投与のアルゴリズムおよび自動制御に関連した有害事象もみられなかった。また、重篤な有害事象は、AID群で2件(輸液セットの不具合に起因する高血糖による入院と、糖尿病とは無関係の入院)、対照群で5件(インスリンポンプの不具合による高血糖が1件、糖尿病とは無関係のイベントが4件)認められた(いずれも小児)。 著者は、「この試験の参加者は、多くの実臨床研究に比べ、より典型的な1型糖尿病であり、オープンソースAIDの使用経験がなかったことから、さまざまな1型糖尿病患者が、このシステムから利益を得る可能性があることが示唆される」としている。

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1型DMのC-ペプチド分泌能、クローズドループ療法vs.標準療法/NEJM

 新規発症の若年1型糖尿病患者において、診断後24ヵ月間、ハイブリッドクローズドループ(HCL)療法により持続的に血糖コントロールを行っても、標準的なインスリン療法と比較して、残存C-ペプチド分泌能の低下を抑制することはできなかった。英国・ケンブリッジ大学のCharlotte K. Boughton氏らが、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験「Closed Loop from Onset in Type 1 Diabetes trial:CLOuD試験」の結果を報告した。新規発症の1型糖尿病患者において、HCL療法による血糖コントロールの改善が標準的なインスリン療法と比較しC-ペプチド分泌能を維持できるかどうかは不明であった。NEJM誌2022年9月8日号掲載の報告。10歳以上17歳未満の新規発症1型糖尿病患者97例を対象に無作為化 研究グループは、2017年2月6日~2019年7月18日の間に、10歳以上17歳未満で1型糖尿病と診断されてから21日以内の若年者を、HCL療法群(HCL群)または標準的なインスリン療法群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付け(10~13歳、14~16歳で層別化)、24ヵ月間治療した。 主要評価項目は、診断後12ヵ月時点での血漿C-ペプチド濃度(混合食負荷試験後)の曲線下面積(AUC)で、intention-to-treat解析を行った。 計97例(平均年齢[±SD]12±2歳)が、HCL群51例、対照群46例に割り付けられた。12ヵ月、24ヵ月時点でのC-ペプチド分泌能に両群で有意差なし 診断後12ヵ月時点の血漿C-ペプチド濃度のAUC(幾何平均値)は、HCL群で0.35pmoL/mL(四分位範囲[IQR]:0.16~0.49)、対照群で0.46pmoL/mL(0.22~0.69)であり、両群間に有意差は確認されなかった(平均補正後群間差:-0.06pmoL/mL、95%信頼区間[CI]:-0.14~0.03)。 24ヵ月時点の血漿C-ペプチド濃度のAUCも両群で有意差はなかった(HCL群0.18pmoL/mL[IQR:0.06~0.22]、対照群0.24pmoL/mL[0.05~0.30]、平均補正後群間差:-0.04pmoL/mL[95%CI:-0.14~0.06])。糖化ヘモグロビン値(算術平均値)は、HCL群のほうが対照群と比較して12ヵ月時点で4mmoL/mole(0.4ポイント、95%CI:0~8mmoL/mole[0.0~0.7ポイント])、24ヵ月時点で11mmoL/mole(1.0ポイント、95%CI:7~15mmoL/mole[0.5~1.5ポイント])低値であった。 重症低血糖はHCL群で5件(患者3例)、対照群で1例発現し、糖尿病性ケトアシドーシスがHCL群で1例認められた。

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認知症と肥満・糖尿病

 米国では、肥満、糖尿病、認知症などの慢性疾患が増加している。これら慢性疾患の予防や適切なマネジメント戦術に関する知見は、疾患予防のうえで重大かつ緊要である。米国・テキサス工科大学のAshley Selman氏らは、認知症と肥満および糖尿病との関連についての理解を深めるため、それぞれの役割を解説し、新たな治療法についての情報を紹介した。International Journal of Molecular Sciences誌2022年8月17日号の報告。 主な内容は以下のとおり。・肥満、糖尿病、認知症の相互関係は、さらに解明されつつある。・肥満、糖尿病、認知症の発症に関連する炎症状態の一因として、加齢、性別、遺伝的要因、後天的要因、うつ病、高脂質の西洋型食生活が挙げられる。・この炎症状態は、食物摂取の調節不全およびインスリン抵抗性につながる可能性がある。・肥満は糖尿病発症につながる基礎疾患であり、後に、2型糖尿病(type 2 diabetes mellitus:T2DM)の場合には“3型(type 3 diabetes mellitus:T3DM)”すなわちアルツハイマー病へ進行する可能性がある。・肥満とうつ病は、糖尿病と密接に関連している。・認知症の発症は、ライフスタイルの改善、植物性食品ベースの食事(地中海式食事など)への変更、身体活動の増加により予防可能である。・予防のために利用可能ないくつかの外科的および薬理学的介入がある。・新たな治療法には、メラノコルチン4受容体(MC4R)アゴニストsetmelanotideやPdia4阻害薬が含まれる。・これらの各分野における現在および今後の研究は保証されており、新たな治療選択肢やそれぞれの病因に関する理解を深めることが重要である。

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4つのステップで糖尿病治療薬を判断/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、9月5日に同学会のホームページで「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」を発表した。 このアルゴリズムは2型糖尿病治療の適正化を目的に、糖尿病の病態に応じて治療薬を選択することを最重要視し、エビデンスとわが国における処方実態を勘案して作成されている。 具体的には、「Step 1」として病態に応じた薬剤選択、「Step 2」として安全性への配慮、「Step 3」としてAdditional benefitsを考慮するべき併存疾患をあげ、「Step 4」では考慮すべき患者背景をあげ、薬剤を選択するアルゴリズムになっている。 同アルゴリズムを作成した日本糖尿病学会コンセンサスステートメント策定に関する委員会では序文で「わが国での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに、新しいエビデンスを加えながら、より良いものに進化し続けていくことを願っている」と今後の活用に期待をにじませている。体形、安全性、併存疾患、そして患者背景で判断 わが国の2型糖尿病の初回処方の実態は欧米とは大きく異なっている。高齢者へのビグアナイド薬(メトホルミン)やSGLT2阻害薬投与に関する注意喚起が広く浸透していること、それに伴い高齢者にはDPP4阻害薬が選択される傾向が認められている。 その一方で、初回処方にビグアナイド薬が一切使われない日本糖尿病学会非認定教育施設が38.2%も存在していたことも明らかになり、2型糖尿病治療の適正化の一助となる薬物療法のアルゴリズムが必要とされた。 そこで、作成のコンセプトとして、糖尿病の病態に応じて治療薬を選択することを最重要視し、エビデンスとわが国における処方実態を勘案して制作された。 最初にインスリンの適応(絶対的/相対的)を判断したうえで、目標HbA1cを決定(目標値は熊本宣言2013などを参照)し、下記のステップへ進むことになる。【Step 1 病態に応じた薬剤選択】・非肥満(インスリン分泌不全を想定)DPP-4阻害薬、ビグアナイト薬、α-グルコシダーゼ阻害薬など・肥満(インスリン抵抗性を想定)ビグアナイト薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬など【Step 2 安全性への配慮】別表*に考慮すべき項目で赤に該当するものは避ける(例:低血糖リスクの高い高齢者にはSU薬、グリニド薬を避ける)【Step 3 Additional benefitsを考慮するべき併存疾患】・慢性腎臓病:SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬・腎不全:SGLT2阻害薬・心血管疾患:SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬【Step 4 考慮すべき患者背景】別表*の服薬継続率およびコストを参照に薬剤を選択(フォロー)・薬物療法開始後、およそ3ヵ月ごとに治療法の再評価と修正を検討する。・目標HbA1cを達成できなかった場合は、病態や合併症に沿った食事療法、運動療法、生活習慣改善を促すと同時に、Step1に立ち返り、薬剤の追加などを検討する。*別表 安全な血糖管理達成のための糖尿病治療薬の血糖降下作用・低血糖リスク・禁忌・服薬継続率・コストのまとめ―本邦における初回処方の頻度順の並びで比較―(本稿では省略)

209.

統合失調症患者のメタボリックシンドロームリスクに対する抗精神病薬の影響

 抗精神病薬が統合失調症患者のメタボリックシンドローム(MetS)発症に影響していることが、多くの研究で示唆されている。セルビア・クラグイェバツ大学のAleksandra Koricanac氏らは、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者におけるMetSの発症リスクおよび発症しやすい患者像を明らかにするため、検討を行った。その結果、リスペリドン治療患者およびクロザピン治療患者は、アリピプラゾール治療患者よりも、MetS発症リスクが高い可能性が示唆された。また、リスペリドン治療患者は、健康対照群と比較し、TNF-αとTGF-βの値に統計学的に有意な差が認められた。Frontiers in Psychiatry誌2022年7月25日号の報告。 安定期統合失調症患者60例を対象に、単剤使用の各抗精神病薬に応じて3群(リスペリドン群、クロザピン群、アリピプラゾール群)に分類した。また、健康な被験者20例を対照群とした。最初に、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価し、その後プロラクチン値、脂質状態、血糖値、インスリン値、サイトカイン値(IL-33、TGF-β、TNF-α)、C反応性タンパク質(CRP)を測定した。BMI、HOMA指数、ウエスト/ヒップ比(WHR)、血圧も併せて測定した。 主な結果は以下のとおり。・リスペリドン群は、対照群およびアリピプラゾール群と比較し、プロラクチン値に有意な差が認められた。・クロザピン群は、対照群と比較し、HDLコレステロールおよびグルコースのレベルに有意な差が認められた。・アリピプラゾール群は、対照群と比較し、BMIの有意な差が認められた。・統計学的に有意な関連は、リスペリドン群ではTNF-αとグルコースおよびHOMA指数(IL-33とグルコース、TGF-βとグルコース)、クロザピン群ではTNF-αとBMI(IL-33とBMI、TGF-βとインスリンおよびHOMA指数)において認められた。・アリピプラゾール群のTGF-βとLDLコレステロールにおいて、統計学的に有意な負の関連が認められた。

210.

1型糖尿病にSGLT2阻害薬を使用する際の注意点/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会(理事長:植木 浩二郎)は、2014年に策定された「SGLT2阻害薬の適正使用に関する Recommendation」を改訂し、2022年7月26日に公開した。改訂は7度目となる。 今回の改訂は、2022年4月よりSGLT2阻害薬服用中の1型糖尿病患者の在宅での血中ケトン体自己測定が可能となったことに鑑み、これらの情報をさらに広く共有することにより、副作用や有害事象が可能な限り防止され、適正使用が推進されることを目的としている。 具体的には、【ケトアシドーシス】の項で「SGLT2阻害薬使用中の1型糖尿病患者には、可能な限り血中ケトン体測定紙を処方し、全身倦怠感・悪心嘔吐・腹痛などの症状からケトアシドーシスが疑われる場合は、在宅で血中ケトン体を測定し、専門医の受診など適正な対応を行うよう指導する」という文言が追加された。1型糖尿病患者のSGLT2阻害薬使用はケトアシドーシスが増加していることに留意1)1型糖尿病患者のSGLT2阻害薬使用には一定のリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、使用する場合は、十分に臨床経験を積んだ専門医の指導のもと、患者自身が適切かつ積極的にインスリン治療に取り組んでおり、それでも血糖コントロールが不十分な場合にのみ使用を検討すべきである。2)インスリンやSU薬などインスリン分泌促進薬と併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。3)75歳以上の高齢者あるいは65歳から74歳で老年症候群(サルコペニア、認知機能低下、ADL低下など)のある場合には慎重に投与する。4)脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬の併用の場合には特に脱水に注意する。5)発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には必ず休薬する。また、手術が予定されている場合には、術前3日前から休薬し、食事が十分摂取できるようになってから再開する。6)全身倦怠・悪心嘔吐・腹痛などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis:正常血糖ケトアシドーシス)の可能性があるので、血中ケトン体(即時にできない場合は尿ケトン体)を確認するとともに専門医にコンサルテーションすること。特に1型糖尿病患者のSGLT2阻害薬使用では、インスリンポンプ使用者やインスリンの中止や過度の減量によりケトアシドーシスが増加していることに留意すべきである。7)本剤投与後、薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認められた場合には速やかに投与を中止し、皮膚科にコンサルテーションすること。また、外陰部と会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)を疑わせる症状にも注意を払うこと。さらに、必ず副作用報告を行うこと。8)尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。発見時には、泌尿器科、婦人科にコンサルテーションすること。

211.

活性型ビタミンD3は耐糖能異常患者の2型糖尿病発症を予防しない(解説:住谷哲氏)

 後ろ向きの観察研究で有効性が示唆されたが、前向きのランダム化比較試験で有効性が否定されることは少なくない。ビタミンD3物語もその1つだろう。がん、心血管病、認知症などの発症を予防できるのではないかと期待されたが、残念ながら現時点でビタミンD3がこれらの疾患の発症を予防するエビデンスは存在しない。今回、新たにその物語に追加されたのが2型糖尿病発症予防効果である。 わが国で多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を実施することはかなりの困難があると思われる。2型糖尿病発症予防における活性型ビタミンD3エルデカルシトールの有効性を検証した本試験は、結果は否定的であったが、その点で貴重な報告と思われる。 ビタミンD3の2型糖尿病発症予防効果を検証した試験としては、既にD2d試験の結果が報告されている1)。天然型ビタミンD3を用いたこの試験においても、ビタミンD3の2型糖尿病発症予防効果は認められなかった。この研究におけるサブグループ解析では、ビタミンD3欠乏症のグループ(血清ビタミンD3<12ng/mL)では、2型糖尿病発症のハザード比[HR]は0.38(95%信頼区間[CI]:0.18~0.80)であり有効である可能性が示唆されていた。したがって次のステップとしては、ビタミンD3欠乏症を有する耐糖能異常患者を対象としたRCTを実施したほうがよかったかもしれない。しかし本試験とD2d試験はほぼ同時進行で実施されており、本試験で患者の組み込み基準に血清ビタミンD3が入っていないのは無理からぬことと思われる。しかし本試験で、多変量分数多項式Cox回帰分析を用いた事後解析で有効性が示唆されたのは、組み込み時の血清ビタミンD3低値ではなく、基礎インスリン分泌量低値であった。したがってこの結果が正しいとすると、インスリン分泌能の低下した耐糖能異常患者においてはビタミンD3が2型糖尿病発症予防効果を有する可能性もある。しかし、これもそのような患者を対象としたRCTの結果が出るまでは仮説にとどままるだろう。 本試験においてもエルデカルシトールの投与により腰椎と大腿骨頸部の骨密度および血清オステオカルシン濃度が有意に上昇した。現時点ではビタミンD3には骨密度増加作用のみを期待するのが妥当と思われる。

212.

10~18歳2型DMにデュラグルチド週1回投与は有効か/NEJM

 10~18歳の2型糖尿病において、GLP-1受容体作動薬デュラグルチドの週1回投与(0.75mgまたは1.5mg)は、メトホルミン服用や基礎インスリンの使用を問わず、26週にわたる血糖コントロールの改善においてプラセボよりも優れることが、米国・ピッツバーグ大学のSilva A. Arslanian氏らによる検討で示された。BMIへの影響は認められなかった。NEJM誌オンライン版2022年6月4日号掲載の報告。デュラグルチド0.75mg、1.5mgを週1回投与 研究グループは、10歳以上18歳未満の2型糖尿病で、BMIが85パーセンタイル超、生活習慣の改善のみ、もしくはメトホルミン治療(基礎インスリン併用または非併用)を受ける154例を対象に、26週にわたる二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。 被験者を無作為に1対1対1の割合で3群に割り付け、それぞれプラセボ、デュラグルチド0.75mg、デュラグルチド1.5mgを週1回皮下注射で投与した。被験者はその後26週の非盲検の延長試験に組み込まれ、プラセボ群だった被験者に対し、デュラグルチド(0.75mg、週1回)を26週間皮下注射で投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから26週までの糖化ヘモグロビン値の変化だった。副次エンドポイントは、糖化ヘモグロビン値7.0%未満達成、および空腹時血糖値とBMIのベースラインからの変化など。安全性についても評価が行われた。糖化ヘモグロビン値7.0%未満、プラセボ群14%に対しデュラグルチド群51% 計154例が無作為化を受けた。26週時点の平均糖化ヘモグロビン値は、プラセボ群が0.6ポイント上昇したのに対し、デュラグルチド群では、0.75mg群で0.6ポイント、1.5mg群で0.9ポイント、いずれも低下した(対プラセボ群のp<0.001)。  また26週時点で、糖化ヘモグロビン値7.0%未満を達成した患者の割合は、プラセボ群14%に対しデュラグルチド群では51%と有意に高率だった(p<0.001)。 空腹時血糖値も、プラセボ群で上昇(17.1mg/dL)したのに対し、デュラグルチド群では低下が認められた(-18.9mg/dL、p<0.001)。一方でBMIについては、両群間で差は認められなかった(プラセボ群0.0、デュラグルチド統合群-0.1、p=0.55)。 有害事象は、胃腸有害イベントの発生頻度が最も多く、26週にわたってデュラグルチド群でプラセボ群よりも高率に認められた。 デュラグルチドに関する安全性プロファイルは、成人で報告されたものと一致していた。

213.

高齢者糖尿病患者の低血糖対策と治療/日本糖尿病学会

 5月12~14日に神戸市で「第65回 日本糖尿病学会年次学術集会」(会長:小川 渉氏/神戸大学大学院医学研究科 糖尿病・内分泌内科学 教授)が「知の輝きち技の高みへ」をテーマに開催された。 本稿では「シンポジウム 加齢を踏まえた糖尿病管理の最前線」より「高齢者糖尿病患者における低血糖の課題」(演者:松久 宗英氏/徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター 教授)の概要をお届けする。高齢者は低血糖になりやすい 超高齢化が進むわが国では、高齢の糖尿病患者は適切な自己管理行動をなかなかとることができず、糖尿病治療のハードルは高い。とくにわが国では世界的にみて糖尿病関連死亡について、重症低血糖の割合が高いことが指摘されている。 過去に日本糖尿病学会の糖尿病治療による重症低血糖調査委員会が行った調査(193施設、798症例)によれば、重症低血糖の発生率は年間2万件と推計され、低血糖による死亡や重篤な合併症(認知症など)が約5%に合併することが報告されている。とくに前駆症状が6割の患者に発生しているのに低血糖が発生していることが問題となっている。 また、2型糖尿病で重症低血糖を発症した患者の臨床的特徴では、70歳以上、HbA1c7.5%を下回ることが示唆され、約6割以上の患者にインスリンが、約3割の患者にSU薬の使用が報告されている1)。 実際、リアルワールドでは、80歳以上の患者に対し約2割の患者にSU薬が使用され、リスクの高い治療がされているという報告がある。 低血糖状態になるとインスリン分泌が抑制され、アドレナリン/ノルアドレナリン分泌が亢進し、グルカゴン分泌も亢進され、高齢者では一気に自律神経症状(心悸亢進、発汗、蒼白など)、中枢神経症状(頭痛、眠気、痙攣・昏睡など)へと進展する。また、高齢者にインスリンを投与すると、低血糖応答の閾値が低下していることにより、容易に意識障害になりやすく、SU薬の服用では夜間低血糖の発生へとこれに伴う心機能の悪化も懸念されている。低血糖がもたらす併存症を悪化させるスパイラル 次に高齢者に多い認知症や心不全など併存症との関係について、糖尿病があることで低血糖などが併存症に影響を及ぼし、負のスパイラルに陥りやすく、健康寿命への影響を与えることが知られている。 海外のARIC研究などでは、ADLの悪化が高まるほど、重症低血糖の頻度が高まることが報告され、重症低血糖を起こした患者では腎機能の低下や心機能の低下も多いことが報告されている。 認知機能との関係を研究したACCORD-MINDでは、認知機能検査で指標とされるdigit symbol substituion test(DSST)が低い人ほど、重症低血糖を起こしやすいことが示唆されている。その他、重症低血糖では大腿骨骨折が増加することを示す研究もあり、加齢によるリスクの拡大が健康寿命や生命予後の短縮となることが知られている2)。低血糖対策はCGMで行い、治療ではさらなる適正化を 高齢者の低血糖対策としては、日本糖尿病学会で示している「高齢者糖尿病の血糖コントロール値(HbA1c値)」をもとに目標数値を目指し治療を行い、リスクが高い患者には持続グルコースモニタリング(CGM)を活用して治療を行うことが期待される。 CGMを利用すればTime in range(TIR)で日内・夜間の血糖動態の把握に有用であり、血糖変動を可視化して理解することができる。とくにTime below range(TBR)を可視化することで、低血糖の値や頻度を示すことは患者さんにとって日常生活で有用な指標となる。一方で、CGMの使用がインスリンやSU薬の使用を減少させるかという課題では、まだ到達できていないのが現状であり、インスリンの使用量は減少しなかったとされている。また、CGMは2022年の診療報酬改定で使いやすくなったとはいえ、アラート機能ある機器の使用には保険適応上の制約があることもあり、今後の課題である。 高齢者における糖尿病治療では、低血糖のリスク軽減、高血糖の抑制、インスリン減量、シンプル化をすることが重要である。同時に血糖自己測定(SMBG)からCGMへの変更を行い、基礎インスリンと経口血糖薬(DPP-4阻害薬/SGLT2阻害薬)、頻回インスリン療法を実施することで、治療の適正化を行っていきたい。

214.

メトホルミン、非糖尿病の浸潤性乳がんに無効-MA.32試験/JAMA

 糖尿病のない高リスクの切除可能な乳がん患者の術後補助療法において、ビグアナイド系経口血糖降下薬メトホルミンはプラセボと比較して、無浸潤疾患生存率を改善せず、全生存や遠隔無再発生存、乳がん無再発期間にも差はなく、Grade3以上の非血液毒性の頻度が高いことが、カナダ・トロント大学のPamela J. Goodwin氏らが実施した「MA.32試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年5月24・31日号に掲載された。4ヵ国の医師主導型無作為化第III相試験 MA.32試験は、非糖尿病の浸潤性乳がん患者における術後補助療法へのメトホルミン追加の有効性の評価を目的とする、医師主導の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2010年8月~2013年3月の期間に、4ヵ国(カナダ、スイス、米国、英国)の施設で参加者の登録が行われた(Canadian Cancer Society Research Institute[CCSRI]などの助成を受けた)。 対象は、年齢18~74歳、過去1年以内に診断されたT1~T3/N0~N3/M0(T1aN0とT1bN0を除く)の乳がんで、切除術後に標準的な術後補助療法を受けており、空腹時血糖値≦126mg/dLの患者であった。被験者は、メトホルミン(850mg、1日2回)またはプラセボを5年間経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、ホルモン受容体陽性(エストロゲン受容体[ER]またはプロゲステロン受容体[PgR]、あるいはこれら双方が陽性)例における無浸潤疾患生存とされた。無浸潤疾患生存は、無作為化の時点から、局所、領域、遠隔での浸潤性病変の再発、新規の原発性浸潤性病変(乳房または乳房以外)、死亡(乳がん、乳がん以外のがん、不明な原因)のうち、最も早く発現したイベントまでの期間と定義された。 また、8つの副次アウトカムのうち、3つ(全生存、遠隔無再発生存、乳がん無再発期間)の評価が行われた。中間解析で、ER/PgR陰性例での無益性を確認 3,649例(平均年齢52.4歳、女性3,643例[99.8%])が登録され、全例が解析に含まれた。2回目の中間解析で、ER/PgR陰性例における無益性が示されたため、主解析はER/PgR陽性例(2,533例)で行われた。ER/PgR陽性例の追跡期間中央値は96.2ヵ月(範囲:0.2~121)であった。 無浸潤疾患生存のイベントは、ER/PgR陽性例のうち465例で発現した。イベント発生率は、100人年当たりメトホルミン群が2.78と、プラセボ群の2.74と比較して有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%信頼区間[CI]:0.84~1.21、p=0.93)。また、死亡の発生率は、100人年当たりメトホルミン群が1.46、プラセボ群は1.32であり、全生存率にも両群間に差はなかった(1.10、0.86~1.41、p=0.47)。 一方、ER/PgR陰性例の追跡期間中央値94.1ヵ月の時点における無浸潤疾患生存イベントの発生率は、100人年当たりメトホルミン群が3.58、プラセボ群は3.60であった(HR:1.01、95%CI:0.79~1.30、p=0.92)。全生存率にも差はなかった(0.89、0.64~1.23、p=0.46)。 また、ER/PgR陽性例における遠隔無再発生存率(HR:0.99、95%CI:0.80~1.23、p=0.94)、乳がん無再発期間(0.98、0.80~1.20、p=0.87)にも統計学的に有意な差はみられなかった。 なお、探索的解析では、ERBB2(以前はHER2またはHER2/neuと呼ばれた)陽性例で、無浸潤疾患生存率(HR:0.64、95%CI:0.43~0.95、p=0.03)および全生存率(0.54、0.30~0.98、p=0.04)が、メトホルミン群で有意に良好であった。 Grade3以上の非血液毒性が、メトホルミン群で高頻度に認められた(21.5% vs.17.5%、p=0.003)。最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、高血圧(2.4% vs.1.9%)、月経不順(1.5% vs.1.4%)、下痢(1.9% vs.0.8%)であった。 著者は、「これらの知見を糖尿病患者へ外挿する際は、糖尿病と非糖尿病で代謝状態(たとえば、血糖コントロール、インスリン抵抗性、肥満)が異なるため注意を要する。また、メトホルミンは2型糖尿病に有効であるため、今回の結果は、乳がん患者における糖尿病治療薬としてのメトホルミンの使用には影響を与えないと考えられる」としている。

215.

妊娠糖尿病、インスリン使用で周産期合併症が増加/BMJ

 妊娠糖尿病の妊婦は正常血糖値妊婦と比較して、インスリンを使用していない場合は、帝王切開による分娩や早産児・巨大児が多く、インスリンを使用している場合は、母親のアウトカムに差はないものの、新生児の在胎不当過大や黄疸、呼吸窮迫症候群などの周産期合併症の割合が有意に高いことが、中国・中南大学のWenrui Ye氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年5月25日号で報告された。妊娠糖尿病と妊娠有害アウトカムの関連をメタ解析で評価 研究グループは、妊娠糖尿病と妊娠有害アウトカムとの関連を、最小限の交絡因子を調整したうえで評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。 1990年1月1日~2021年11月1日の期間に、医学データベース(Web of Science、PubMed、Medline、Cochrane Database of Systematic Reviews)に登録された文献が検索された。 対象は、非妊娠糖尿病(対照群)と妊娠糖尿病(曝露群)が厳格に定義され、妊娠糖尿病と妊娠のさまざまな有害アウトカムの明確な診断基準を有するコホート研究および臨床試験の対照群とした。 これらの基準を満たした研究が、インスリンの使用状況に基づき次の3つのサブグループに分けられた。(1)インスリン非使用(疾患の経過中にインスリンを使用したことがない)、(2)インスリン使用(個別の割合で、妊婦がインスリン治療を受けている)、(3)インスリン使用の報告がない。 妊娠糖尿病や妊娠有害アウトカムに影響を及ぼす可能性のある因子(国の発展状況[先進国、開発途上国]、バイアスのリスク[低、中、高]、診断基準[WHO〔1999年版〕、Carpenter-Coustan基準、国際糖尿病・妊娠学会〔IADPSG〕、その他]、スクリーニング法[universal one step、universal glucose challenge test、リスク因子に基づく選択的スクリーニング])について、事前に計画されたサブグループ解析が行われた。 インスリンの投与を受けた患者の割合に基づきメタ回帰モデルが適用された。器械分娩や肩甲難産などには差がない 156件(インスリン非使用35件[22.4%]、インスリン使用63件[40.4%]、報告なし58件[37.2%])の研究に参加した750万6,061例の妊婦が解析に含まれた。133件(85.3%)が母親のアウトカムを、151件(96.8%)は新生児のアウトカムを報告していた。 アジアの研究が39.5%、欧州が25.5%、北米は15.4%で、84件(53.8%)が先進国で行われた研究であった。Newcastle-Ottawa尺度によるバイアスのリスクは、50件(32.1%)が低または中、106件(67.9%)は高だった。 インスリン非使用研究では、交絡因子を調整すると、非妊娠糖尿病妊婦に比べ妊娠糖尿病の妊婦で有意にオッズ比(OR)が高かったのは、次の5つの項目であった。母親のアウトカムでは、帝王切開による分娩(OR:1.16、95%信頼区間[CI]:1.03~1.32)、新生児のアウトカムでは、早産児(在胎期間<37週)(1.51、1.26~1.80)、分娩から1分後のApgarスコア低値(<7点)(1.43、1.01~2.03)、巨大児(出生時体重≧4,000g)(1.70、1.23~2.36)、在胎不当過大児(出生時体重が在胎期間の標準の90パーセンタイル以上)(1.57、1.25~1.97)。 また、インスリン使用研究では、交絡因子を調整すると、妊娠糖尿病の女性で有意にORが高かったのは次の4項目で、いずれも新生児のアウトカムであった。在胎不当過大児(OR:1.61、95%CI:1.09~2.37)、呼吸窮迫症候群(1.57、1.19~2.08)、黄疸(1.28、1.02~1.62)、新生児集中治療室入室(2.29、1.59~3.31)。 一方、器械分娩、肩甲難産、分娩後出血、死産、新生児死亡、分娩から5分後のApgarスコア低値、低出生時体重、在胎不当過小児については、交絡因子を調整しても、妊娠糖尿病の有無で明確な差は認められなかった。 サブグループ解析では、先進国よりも開発途上国において、妊娠糖尿病妊婦で巨大児が多く(インスリン使用研究のp<0.001、インスリン非使用研究のp=0.001)、インスリン使用研究ではBMIで調整すると巨大児(p=0.02)と在胎不当過大児(p<0.001)が有意に多かった。また、インスリン使用の報告がなかった研究では、選択的スクリーニングを受けた妊婦において、妊娠糖尿病妊婦で帝王切開による分娩(p<0.001)と新生児集中治療室入室(p<0.001)が有意に多くみられた。 著者は、「これらの知見は、妊娠糖尿病に関連する妊娠有害アウトカムの、より包括的な理解に寄与すると考えられる。今後の研究では、より完全な予後因子で調整することを常に心がける必要がある」としている。

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活性型ビタミンD3、2型DMの発症予防に無効か/BMJ

 活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールは、前糖尿病から2型糖尿病への発症予防効果は認められなかったものの、インスリン分泌が不十分な人に対する有益性を示唆する結果が得られた。産業医科大学病院の河原哲也氏らが、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Diabetes Prevention with active Vitamin D study:DPVD試験」の結果を報告した。観察研究では、ビタミンD欠乏がインスリン抵抗性および将来的な糖尿病のリスク増加と関連することが示されている。一方、ビタミンD補充については、2型糖尿病予防を目的とした無作為化比較試験では一貫した結果は認められていないが、先行研究でビタミンD欠乏症を伴う前糖尿病者に対して有益であることが示唆されていた。BMJ誌2022年5月25日号掲載の報告。耐糖能異常からの2型糖尿病発症をエルデカルシトール群vs.プラセボ群で検討 研究グループは、2013年6月1日~2015年8月31日の期間に、国内32施設において30歳以上の耐糖能異常(75g経口ブドウ糖負荷試験で空腹時血糖値<126mg/dLおよび負荷後2時間値が140~199mg/dL、かつ糖化ヘモグロビン[HbA1c]<6.5%)患者1,256例を登録し、エルデカルシトール(0.75μgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、3年以上投与した。 主要評価項目は、2型糖尿病の発症で、事前に定めた基準(HbA1c≧6.5%、空腹時血糖値≧126mg/dL、負荷2時間後血糖値≧200mg/dL(11.1mmol/L)または随時血糖値≧200mg/dL)のうち少なくとも2つを満たす場合と定義した。 副次評価項目は、耐糖能異常から正常型への移行、およびベースラインの交絡因子(年齢、性別、高血圧の有無、BMI、糖尿病家族歴、HbA1c、空腹時血糖値、2時間血糖値、25(OH)D、HOMA-IR、およびインスリン分泌指数)で補正後の2型糖尿病発症に関するエルデカルシトール群のプラセボ群に対するハザード比(HR)であった。さらに骨密度、骨代謝/糖代謝マーカーについても評価した。2型糖尿病発症率、エルデカルシトール群12.5%、プラセボ群14.2%で有意差なし 1,256例の患者背景は、571例(45.5%)が女性、2型糖尿病家族歴ありが742例(59.1%)、平均年齢61.3歳、ベースラインの血清25(OH)D濃度は平均20.9ng/mL(52.2nmol/L)で、548例(43.6%)は20ng/mL(50nmol/L)未満であった。 追跡期間中央値2.9年において、2型糖尿病発症率はエルデカルシトール群で12.5%(79/630例)、プラセボ群で14.2%(89/626例)であった(HR:0.87、95%信頼区間[CI]:0.67~1.17、p=0.39)。 耐糖能異常から正常型への移行は、エルデカルシトール群で23.0%(145/630例)、プラセボ群で20.1%(126/626例)に認められた(HR:1.15、95%CI:0.93~1.41、p=0.21)。多変量分数多項式Cox回帰分析による交絡因子補正後の2型糖尿病発症に関するHRは0.69(95%CI:0.51~0.95、p=0.020)で、エルデカルシトールは2型糖尿病発症を抑制し、とくに基礎インスリン分泌量が少ない患者において有益であることが示唆された(HR:0.41、95%CI:0.23~0.71、p=0.001)。 また、追跡期間中、エルデカルシトール群ではプラセボ群と比較して、腰椎と大腿骨頸部の骨密度および血清オステオカルシン濃度が有意に上昇した(すべてのp<0.001)。 重篤な有害事象は、両群で有意差は認められなかった。

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オゼンピック皮下注の複数回使用製剤、新発売/ノボ ノルディスク ファーマ

 ノボ ノルディスク ファーマは、2022年5月25日、2型糖尿病を効能・効果とする週1回投与のGLP-1アナログ製剤「オゼンピック皮下注2mg」の販売を開始した。オゼンピック皮下注2mgは、従来からインスリン製剤等に使用されているペン型注入器「フレックスタッチ」と同様の構造であり、投与に際してはA型専用注射針(30~34G)を使用する。オゼンピック皮下注2mgは用量調節・複数回使用が可能 オゼンピック皮下注については、2020年6月29日に単回投与デバイスを用いた同0.25mg SD、同0.5mg SDおよび同1.0mg SDが発売されている。しかし、2022年3月中旬頃から日本において出荷停止となっていた。オゼンピック皮下注 SDが出荷停止となったことに伴い、医療機関では代替薬への切り替えが行われていた。このような中、用量調節が可能な複数回使用製剤であるオゼンピック皮下注2mgが発売されることとなった。 なお、同社はオゼンピック皮下注 SDについて「当面は出荷停止が続く見込みだが、日本での供給再開を目指している」と述べている。オゼンピック皮下注2mg製品概要・製品名:オゼンピック皮下注2mg・一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)・効能・効果:2型糖尿病・用法・用量:通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として週1回0.5mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回0.25mgから開始し、4週間投与した後、週1回0.5mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、週1回1.0mgまで増量することができる。・適用上の注意:本剤はJIS T 3226-2に準拠したA型専用注射針を用いて使用すること・包装 1筒1.5mL:1本・承認年月日:2018年3月23日・薬価基準収載日:2022年5月25日・薬価:オゼンピック皮下注2mg:11,008円・発売日:2022年5月25日・製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ株式会社

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新型コロナ感染者、糖尿病リスクが高まる

 COVID-19罹患後にさまざまな疾患にかかりやすくなる可能性が示唆されているが、それに糖尿病が加わる可能性がある。米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究の結果が、The Lancet Diabetes & Endocrinology誌2022年5月号に掲載された。 本研究では、米国退役軍人省の全国データベースを用いて、2020年3月1日~2021年9月30日にCOVID-19検査で陽性となり、その後30日間生存した群(COVID-19群)18万1,280例、同じ期間に登録した対照群(411万8,441例)、2018年3月1日~2019年9月30日に登録した過去対照群(428万6,911例)からコホートを構成した。どちらの対照群も、SARS-CoV-2感染は認められなかった。 全登録例は、試験参加前に糖尿病を発症しておらず、中央値352日(IQR:245~406)のフォローアップが行われた。事前に定義された逆確率重み付けを用いて、糖尿病の発症、血糖降下薬の使用、およびこの2つの転帰の複合を用いてリスクを推定した。リスクの指標として、12ヵ月後のハザード比(HR)と1,000人あたりの疾病負荷の2つを報告した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19群は対照群と比較して、糖尿病発症リスク(HR 1.40、 95% CI :1.36~1.44)および疾病負荷(13.46、 95% CI:12.11~14.84、12ヵ月の1,000人あたり)、および血糖降下薬使用のリスク(1.85、1.78~1.92 )および疾病負荷(12.35、11.36~13.38 )が増加した。・糖尿病発症または血糖降下薬使用の複合エンドポイントのリスクを推定する解析では、12ヵ月時点で1,000人あたり1.46(95%CI:1.43~1.50)のHRと18.03(95%CI:16.59~19.51)の疾病負荷だった。・急性期以降の転帰のリスクと負担は、COVID-19の急性期の重症度(患者が非入院か、入院か、集中治療室に入院したか)に応じて、段階的に増加した。・すべての結果は、過去対照群との比較においても一貫していた。 著者らは「COVID-19と糖尿病リスクとの関連を支えるメカニズムは完全には明らかにされていないが、SARS-CoV-2が膵臓でインスリンを産生する細胞に感染し複製することで、インスリンの産生および分泌が損なわれることが示唆されている。糖尿病は多面的なlong COVIDの構成要素として考慮されるべきで、COVID-19患者の急性期後のケア戦略と糖尿病のスクリーニングと管理を統合する必要がある」としている。

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時間限定カロリー制限食は単純カロリー制限食の体重減少効果を越える効果を持つか否かはなはだ疑問である!―(解説:島田俊夫氏)

 現代社会は食生活に関して利便性を重視し、食事の内容(質・量)に関しては無関心になっているのでは? このため外食産業が繁栄し、私たちは食事の質よりも利便性をますます重視する傾向が強くなっている。本質に立ち返り、私たちが生きていくためにはエネルギーが必要でそのソースを食物に依存していることを忘れてはいけない。 NEJM誌2022年4月21日号掲載の中国の南方医科大学のDeying Liu氏等の論文は139人中118人(84.9%)が受診ノルマを達成した肥満者をランダムに2群に分け、単純カロリー制限食群と(食事時間限定+カロリー制限)食群の2群に分類し、12ヵ月の経過から腹囲、BMI、体脂肪、除脂肪体重、血圧、代謝危険因子等についてベースラインデータと12ヵ月後の各データとの群内差および群間差を比較した結果を報告した。研究の狙いは単純食事カロリー制限食群と(食事時間限定+カロリー制限)食群との間で介入方法に基づく差があるか否かを標的とした研究である。結果は概ね同等で両群間に有意差を認めなかった。もちろん食事制限による減量効果は両群でほぼ同等に認められた。また、副作用についても両群間に差は認められなかった。 この研究の狙いがいまひとつ私にはピンとこない。時間限定カロリー制限食に関してカロリー制限による効果以外の意義を見いだせず、結果については両群で大差のないとの結果であった。これまでの短期間の小規模研究では、時間限定カロリー制限食は体重減少効果が単純カロリー制限食より大きいとの報告が多いようだが、議論の多いところでもあり1)2)、真相は藪の中である。この研究の仮説の狙いがいまひとつ私には理解しがたく、時間限定カロリー制限食の間欠的空腹期間の関与への期待は過大かもしれない。治療の主効果は両群のベースラインからの体重減少の差の群間比較であり、副次効果はウエスト周囲径、BMI、体脂肪および代謝リスク因子(血漿グルコース濃度、インスリン感受性、血清脂質、および血圧)等の測定値の変化差の群内比較としたが主効果に差がなく、群内比較は両群で同等に有意差を認めた。 著者も述べているが中国人の食習慣を配慮した研究プロトコルのために異なる習慣の国々には一般化できない可能性もある。肥満の多い欧米とは事情がわが国とは多少異なるが糖質制限食が肥満治療に用いられており、この問題も含めて食事カロリー制限の影響を3大栄養素摂取の質・量を含め検討する必要に迫られているのではないかと考える3)。この論文の結論は(食事時間限定+カロリー制限)食群の単純カロリー制限を越えてのメリットを肯定する情報を見つけ出すことはできなかった。

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カロリー制限ダイエット、摂食時間制限ありvs.なし/NEJM

 肥満患者において、摂食時間を午前8時~午後4時の8時間に制限する時間制限食をカロリー制限に追加しても、1日の摂取カロリー制限と比較し、1年間の体重、体脂肪および代謝リスク因子の減少に関して効果は認められないことが示された。中国・南方医科大学のDeying Liu氏らが無作為化臨床試験の結果を報告した。これまで、体重減少における時間制限食の長期的な有効性および安全性は明らかにされていなかった。NEJM誌2022年4月21日号掲載の報告。摂取カロリー約75%+摂食時間午前8時~午後4時に制限 研究グループは、肥満患者139例を、1日の摂取カロリー制限に加えて摂食時間を午前8時~午後4時の間のみに制限する群(時間制限併用群)と、1日の摂取カロリー制限のみを行う群(カロリー制限群)に、無作為に割り付け、12ヵ月間観察した。 摂取カロリーは、参加者全員、男性で1日1,500~1,800kcal、女性で1日1,200~1,500kcalに制限した。いずれも摂取カロリーの40~55%が炭水化物、15~20%がタンパク質、20~30%が脂質とし、この食事療法はベースラインの参加者の1日摂取カロリーの約75%に相当した。 主要評価項目は、体重のベースラインからの変化における群間差、副次評価項目はウエスト、BMI、体脂肪および代謝リスク因子(血漿グルコース濃度、インスリン感受性、血清脂質、および血圧)等の測定値の変化とした。1年後の体重減少に差はなし 無作為化された139例中118例(84.9%)が12ヵ月間の介入を完遂した。 12ヵ月時の体重のベースラインからの平均変化量は、時間制限併用群で-8.0kg(95%信頼区間[CI]:-9.6~-6.4)、カロリー制限群で-6.3kg(-7.8~-4.7)であり、体重の変化量に両群で有意差はなかった(群間差:-1.8kg、95%CI:-4.0~0.4、p=0.11)。 ウエスト、BMI、体脂肪、除脂肪体重、血圧および代謝リスク因子の解析結果も、主要評価項目の結果と一致した。 主な有害事象は、疲労、めまい、頭痛、食欲減退、上腹部痛などで、発現頻度は両群で同程度であった。

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