ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:239

3つの新規経口抗凝固薬、術後血栓塞栓症の予防に有効だが出血傾向も

3つの新規経口抗凝固薬リバーロキサバン*1、ダビガトラン*2、アピキサバンは、従来の標準治療であるエノキサパリンに比べ、全般的に術後の静脈血栓塞栓症の予防効果が高いが出血リスクも上昇傾向にあることが、スペイン医薬品・医療機器機構(マドリッド市)のAntonio Gomez-Outes氏らの検討で明らかとなった。欧米では、これら3つの新規薬剤は、人工股関節/膝関節全置換術後の静脈血栓塞栓症の予防治療として承認されているが、主要な臨床試験が標準治療では通常行われない下肢の静脈造影所見で評価され、出血の定義が試験によって異なるなどの理由で、臨床アウトカムや相対的な効果、安全性は明確ではないという。また、3剤を直接比較した最新の試験は行われていない。BMJ誌2012年6月30日号(オンライン版2012年6月14日号)掲載の報告。

新生児パルスオキシメトリー検査、先天性心疾患のスクリーニング法として有用

重度先天性心疾患の検出法として、新生児に対するパルスオキシメトリー法は高い特異度と中等度の感度を有し、普遍的なスクリーニング法の適格基準を満たすことが、英国ロンドン大学クイーン・メアリー校のShakila Thangaratinam氏らの検討で示された。先天性心疾患は他の先天性異常に比べ死亡率が高く、先天性異常による死亡の最大40%、乳児死亡の3~7.5%を占めるとされるが、手術によって予後は大きく改善するため早期発見が重要だという。新生児スクリーニングは早期発見の一助となる可能性があり、パルスオキシメトリー法が有望視されている。Lancet誌2012年6月30日号(オンライン版2012年5月2日号)掲載の報告。

HIV母子感染、抗レトロウイルス薬28週治療が有効:BAN試験

授乳に代わる安全な育児法がない環境においては、HIVに感染した母親あるいは未感染乳児に対する28週の抗レトロウイルス薬予防治療により、乳児へのHIV感染が減少することが、米国疾病対策予防センター(CDC)のDenise J Jamieson氏らの検討で示された。HIVの母子感染は世界的に減少傾向にあるが、医療資源が乏しい地域では解決すべき課題とされる。WHOは、医療資源が限られ、授乳に代わる安全な育児法がない環境では、授乳期間中は母親あるいは乳児のいずれかに対する抗レトロウイルス薬の予防投与を推奨している。Lancet誌2012年6月30日号(オンライン版2012年4月26日号)掲載の報告。

未破裂脳動脈瘤の自然歴が明らかに

未破裂脳動脈瘤の自然歴は動脈瘤の直径、部位、形状により異なることが、UCAS Japan(http://ucas-j.umin.ac.jp/index.html 事務局:東京大学医学部脳神経外科)研究から報告され、NEJM誌2012年6月28日号で発表された(筆頭著者はNTT東日本関東病院脳神経外科部長の森田明夫氏)。UCAS Japan研究は、本邦における未破裂脳動脈瘤のデータを広く収集し、これまで明らかとなっていなかった未破裂脳動脈瘤の自然歴および診療実態の調査を目的とする前向き研究で、日本全国脳神経外科学会認定施設を中心に、脳検診等で新たに脳動脈瘤が発見された治療例または未治療例すべての患者を登録・追跡している。

感染性心内膜炎患者への早期手術介入は全身塞栓症リスク低下に有効

感染性心内膜炎および大きな疣腫を有する患者に対し、早期手術は従来治療と比較して、有効に全身塞栓症リスクを低下し、全死因死亡および塞栓イベントの複合エンドポイントを有意に低下することが、前向き無作為化試験の結果、示された。韓国・蔚山大学校のDuk-Hyun Kang氏らによる報告で、NEJM誌2012年6月28日号で発表された。感染性心内膜炎患者に対する、全身塞栓症予防目的の外科的介入に関しては、その適応および介入時期についてなお議論の的となっている。研究グループは従来治療と早期手術の臨床転帰の比較を目的に試験を行った。

体重減量プログラム、段階的ケアで一人当たりコスト低減

体重過多や肥満の人を対象にした減量介入プログラムについて、減量経過と目標値に合わせてプログラムを調整する段階的ケア減量介入(STEP)は、一貫して同じ内容のプログラムを行う標準的行動減量介入(SBWI)と比べて、減量効果は同等で1人当たりコストが500ドル以上低く抑えることができることが示された。米国・ピッツバーグ大学のJohn M. Jakicic氏らが、300人超を対象に行った無作為化試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年6月27日号で発表した。

ワルファリン服用の急性虚血性脳卒中へのt-PA、症候性頭蓋内出血リスク増大みられず

組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静注療法を行った急性虚血性脳卒中患者の症候性頭蓋内出血リスクについて、ワルファリン服用中の患者のリスクは非服用患者と比べて増大しないことが示された。その他のt-PA合併症や院内死亡率についても、ワルファリン服用による増加は認められなかった。米国・デューク臨床研究所のYing Xian氏らが、約2万4,000人の急性虚血性脳卒中患者について行った観察試験の結果で、JAMA誌2012年6月27日号で発表した。

新たな冠動脈疾患の予測モデル、有病率が低い集団でも優れた予測能

オランダ・エラスムス大学医療センターのTessa S S Genders氏らが新たに開発した冠動脈疾患の予測モデルは、有病率が低い集団においても優れた予測能を示すことが、同氏らが実施した検証試験で確認された。検査前確率は、患者にとって最も有益な検査法を決めるのに有用とされる。ACC/AHAやESCの現行ガイドラインでは、安定胸痛がみられる患者における冠動脈疾患の検査前確率の評価には、Diamond and ForresterモデルやDuke臨床スコアが推奨されているが、いずれの方法にもいくつか欠点があるという。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年6月12日号)掲載の報告。

ピオグリタゾンと膀胱がんリスクとの関連

 カナダ・ユダヤ総合病院(モントリオール市)のLaurent Azoulay氏らの検討で、2型糖尿病患者では膀胱がんのリスクがピオグリタゾン(商品名:アクトスほか)の使用により増大することが示された。チアゾリジン系経口血糖降下薬であるピオグリタゾンと膀胱がんについてはその関連が指摘される一方で否定的な見解もみられる。この問題解決のために地域住民ベースの観察試験がいくつか実施されたが、相反する結果が得られており、さらなる検討が求められている。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年5月31日号)掲載の報告。

脳卒中のrt-PA血栓溶解療法、早期開始で予後が改善:IST-3試験を含むメタ解析

脳卒中の治療では、早期の遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)による静脈内血栓溶解療法が、良好なアウトカムの達成率および自立した生存率の改善をもたらすことが、英国エジンバラ大学のJoanna M Wardlaw氏らの検討で示された。rt-PAは、急性虚血性脳卒中患者の身体機能アウトカムを改善することが欧米の無作為化試験で示されているが、適応は発症後3時間以内に限定され、欧州では80歳以上は適応外とされる。2000年に開始されたIST-3試験(http://www.dcn.ed.ac.uk/ist3/)は、80歳以上の患者が半数以上を占め、発症後6時間まで適応を拡大して実施された。Lancet誌2012年6月23日号(オンライン版2012年5月23日号)掲載の報告。

脳卒中のrt-PA血栓溶解療法、発症後6時間でも身体機能を改善: IST-3試験

脳卒中患者に対する遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)による静脈内血栓溶解療法は、発症から6時間まで適応を拡大しても、6ヵ月後の身体機能アウトカムを改善することが、英国オックスフォード大学のColin Baigent氏らIST-3 collaborative groupが進めるIST-3試験(http://www.dcn.ed.ac.uk/ist3/)で示された。rt-PAによる血栓溶解療法は、欧州では発症後3時間以内、80歳未満の急性虚血性脳卒中患者に対し承認されている。一方、11試験(3,977例)に関するコクランレビューでは、rt-PAは早期の致死的脳出血を3%増加させるものの身体機能障害のない生存を有意に改善することが示され、発症後6時間まで有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2012年6月23日号(オンライン版2012年5月23日号)掲載の報告。

膣脱修復術後の失禁予防のための中部尿道スリング術

骨盤臓器脱の経膣的手術後に、尿失禁リスクに対して予防的に行う中部尿道スリング術のベネフィットとリスクについて検証した多施設共同無作為化試験の結果、3ヵ月と12ヵ月時点の尿失禁は低率となる一方、有害事象が高率でみられることが、米国・ミシガン大学のJohn T. Wei氏らにより明らかにされた。文献的には膣脱修復術を受ける女性は5人に1人に上り、欧州女性に関する報告では手術を受けた女性の4人に1人に尿失禁が出現することが示されている。これらに対して近年施術されるようになったのがスリング術だが、この予防的処置の相対的なベネフィットとリスクについては、これまで明らかにされていなかったという。NEJM誌2012年6月21日号より。

大腸がんに対する軟性S状結腸鏡スクリーニングのベネフィットは?

軟性S状結腸鏡を用いたスクリーニングの効果について、その実施は大腸がんの発生率(遠位・近位大腸がんとも)および死亡率(遠位大腸がんのみ)を有意に低下することが示された。米国・ピッツバーグ大学のRobert E. Schoen氏らが米国内多施設共同による無作為化試験で約15万5,000例のスクリーニング受診者を追跡し報告した。大腸がん検診のための内視鏡スクリーニングの利点は定まっていない。これまで軟性S状結腸鏡スクリーニングのベネフィットを検討する無作為化試験は欧州(英国、イタリア、ノルウェー)で3試験が行われているが、結果は相反する報告が寄せられている。NEJM誌2012年6月21日号(オンライン版2012年5月21日号)掲載報告より。

腎不全の未治療率、年齢が高いほど高率

腎不全の未治療率は、年齢が高齢になるほど、より若い人に比べて高いことが、カナダ・カルガリー大学のBrenda R. Hemmelgarn氏らによる当地の住民約182万人について行った一般住民対象コホート試験の結果、明らかにされた。eGFR値が15~29mL/min/1.73m2のグループでは、腎不全未治療率は85歳以上が18~44歳の5倍以上だったという。Hemmelgarn氏らは、高齢者の腎不全研究は透析開始に焦点が集まっており、未治療高齢者の疾患負荷について軽視されているのではないかとして、年齢と腎不全治療との関連について検討した。JAMA誌2012年6月20日号掲載より。

新たな脂質マーカーによる心血管疾患リスクの予測能改善はわずか

心血管疾患発症の予測因子として、総コレステロール、HDLコレステロール、年齢や性別、喫煙の有無など従来リスク因子に、アポリポ蛋白B/A-Iといった脂質マーカーの情報を加味しても、同発症リスクの予測能はごくわずかな改善であったことが示された。英国・ケンブリッジ大学のJohn Danesh氏らが、約17万人を対象にした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年6月20日号で発表した。初回心血管疾患イベント発生予測に、様々な脂質マーカーの測定がどれほど役立つかという点については議論が分かれていた。

研究論文は多数の医学ジャーナルに分散、最新知識を得るための支援システムが必要

各専門分野の無作為化試験の論文は多数の医学ジャーナルに広範に分散して掲載され、個々の医師が個人購読で最新の知識を得るには限界があることが、オーストラリアBond大学のTammy Hoffmann氏らの調査で示された。研究論文やそれを掲載する医学ジャーナルの数は急激に増えており、医師が常に最新の研究論文を熟読することは困難で、多くは選定された論文や電子ジャーナルにざっと目を通すだけだという。このようなやり方が効果的とは考えられないが、各専門分野の研究論文がどの程度ジャーナル間に分散しているかは明らかでない。BMJ誌2012年6月16日号(オンライン版5月17日号)掲載の報告。

重症敗血症、症例数の多さと良好なアウトカムは関連しない

英国の成人重症敗血症患者の一般集中治療室への入院症例数と患者アウトカムの間に関連はないことが、カナダ・McGill大学のJason Shahin氏らの検討で示された。過去30年以上にわたり、種々の外科的、内科的疾患において、治療例数と患者アウトカムの関連の評価が行われている。腹部大動脈瘤の修復や特定のがん種、小児の心疾患の手術など複雑な手技では、症例数とアウトカムの間に強い関連を認め、AIDSや心筋梗塞などの内科的疾患でも症例数の多い施設での治療はアウトカムの改善が確認されている。症例数と人工呼吸器の使用や重症敗血症との関連や、重症敗血症における症例数-アウトカム関連を示唆する研究結果もあるという。BMJ誌2012年6月16日号(オンライン版2012年5月29日号)掲載の報告。

糖尿病管理への質改善戦略の導入、治療効果の向上に寄与

糖尿病管理への質改善(quality improvement:QI)戦略の導入によって治療効果が向上することが、カナダSt Michael病院Li Ka Shing Knowledge InstituteのAndrea C Tricco氏らの検討で示された。糖尿病の管理は複雑なため、プライマリ・ケア医と他の医療従事者の連携が必要であり、患者の行動変容や健康的な生活習慣の奨励なども重要な課題とされる。糖尿病治療におけるQI戦略の効果に関する以前の系統的レビューでは、HbA1c以外の要素は検討されていないという。Lancet誌2012年6月16日号(オンライン版6月9日号)掲載の報告。

前糖尿病、一過性でも血糖値が正常化すれば糖尿病リスクが低減

前糖尿病は糖尿病の高リスク状態であり、たとえ一過性にでも血糖値が正常値に回復すれば、前治療とは無関係に将来の糖尿病リスクが有意に低下することが、米国コロラド大学のLeigh Perreault氏らが進めるDPPOS試験で示された。疾病対策予防センター(CDC)の試算によれば、米国ではおよそ7,900万人が空腹時高血糖または耐糖能異常もしくはその両方の病態を呈する前糖尿病だという。糖尿病やその合併症の予防には、前糖尿病の解消および正常血糖値への回復が重要とされる。Lancet誌2012年6月16日号(オンライン版2012年6月9日号)掲載の報告。

ホルモン避妊法の血栓性脳卒中と心筋梗塞のリスク

デンマーク・コペンハーゲン大学のOjvind Lidegaard氏らは、経口避妊薬やパッチ、膣リングを含む新しい各種ホルモン剤による避妊法に伴う血栓性脳卒中と心筋梗塞の発生について調べた結果、絶対リスクは小さかったが、エチニルエストラジオール20μg含有薬で0.9~1.7倍、同30~40μg含有薬では1.3~2.3倍のリスク増大が明らかになったと報告した。プロゲスチン種類別リスクの差異は比較的小さいことも示された。新しいホルモン避妊法の血栓塞栓合併症のリスクは重大な問題だが、これまで静脈血栓塞栓症リスクについて評価した研究はあるものの、動脈性合併症について検討した研究は少なく、相反する結果が示されていた。NEJM誌2012年6月14日号より。