新たな脂質マーカーによる心血管疾患リスクの予測能改善はわずか

提供元:ケアネット

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公開日:2012/07/03

 



心血管疾患発症の予測因子として、総コレステロール、HDLコレステロール、年齢や性別、喫煙の有無など従来リスク因子に、アポリポ蛋白B/A-Iといった脂質マーカーの情報を加味しても、同発症リスクの予測能はごくわずかな改善であったことが示された。英国・ケンブリッジ大学のJohn Danesh氏らが、約17万人を対象にした試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年6月20日号で発表した。初回心血管疾患イベント発生予測に、様々な脂質マーカーの測定がどれほど役立つかという点については議論が分かれていた。

中央値10年追跡、その間の心血管疾患イベントは約1万5,000件




研究グループは、1968~2007年に行われた37の前向きコホート試験のデータを用い、試験開始時点で心血管疾患のない16万5,544人について、従来のリスク因子に脂質マーカーを加えることによる、心血管疾患リスク予測の改善について分析した。追跡期間の中央値は10.4年(四分位範囲:7.6~14)、その間に発生した心血管疾患イベントは1万5,126件(冠動脈性心疾患1万132件、脳卒中4,994件)だった。

主要アウトカムは、心血管疾患イベント発生の判定と、10年発生リスクについて低リスク群(10%未満)、中間リスク群(10~20%)、高リスク群(20%以上)の3群への再分類改善率だった。

新たな脂質マーカー追加、ネット再分類改善率は1%未満




結果、新たな各脂質マーカーの追加による判別モデルの改善はわずかで、アポリポ蛋白B/A-Iの追加によるC統計量の変化は0.0006(95%信頼区間:0.0002~0.0009)、リポ蛋白(a)は0.0016(同:0.0009~0.0023)、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2は0.0018(同:0.0010~0.0026)だった。

新たな各脂質マーカーの追加による、心血管疾患発生リスクのネット再分類改善率についても、いずれも1%未満に留まった。

従来リスク因子のみで分類した結果、40歳以上成人10万につき1万5,436人が、10%未満および10~20%のリスク階層群に分類されると推定された。そのうち、米国高脂血症治療ガイドライン(Adult Treatment Panel III)に基づきスタチン治療が推奨される人を除外して残った1万3,622人について、アポリポ蛋白B/A-Iの検査値を加えた場合に20%以上の高リスク群へと再分類された割合は1.1%だった。リポ蛋白(a)を加えた場合は4.1%、リポ蛋白関連ホスホリパーゼA2を加えた場合は2.7%だった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)