ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:237

プライマリ・ケアにおける高リスク色素性皮膚病変の診断、新規診断法の追加は有効か?

プライマリ・ケアにおける色素性皮膚病変の診断では、現行のbest practiceにコンピュータ化された新規診断法を追加しても、専門医への適切な紹介は改善されないことが、英国ケンブリッジ大学のFiona M Walter氏らの検討で示された。皮膚がんは英国における重大な死亡原因であり、発生率は年ごとに増加しており、予後の改善には早期の発見と管理が重要とされる。課題は、メラノーマ(悪性黒色腫)の、他の色素性皮膚病変との鑑別であり、プライマリ・ケアへの新たな診断技術の導入が診断能を改善し、高リスク色素性皮膚病変の専門医への適切な紹介につながる可能性があるという。BMJ誌2012年7月21日号(オンライン版2012年7月4日号)掲載の報告。

妊娠高血圧腎症の診断、スポット尿による尿蛋白/クレアチニン比が有用

妊娠高血圧腎症が疑われる妊婦では、スポット尿を用いた尿蛋白/クレアチニン比の評価が、重度蛋白尿の検査法として有用なことが、英国・バーミンガム大学のR K Morris氏らの検討で示された。妊娠高血圧腎症は多系統的血管内皮障害(multisystem endothelial disease)で、糸球体血管内皮症を来し、重症化すると腎機能障害や腎不全に至る。妊婦および周産期の合併症や死亡の主な原因で、妊婦の2~8%が罹患するという。スポット尿検体を用いた尿蛋白/クレアチニン比は24時間尿蛋白の予測値とよく相関し、妊娠高血圧腎症の診断法として有望視されている。BMJ誌2012年7月21日号(オンライン版2012年7月9日号)掲載の報告。

心房細動に対する抗不整脈薬、長期投与は必要か?

 心房細動(AF)に対する除細動後の抗不整脈薬による短期治療は、長期治療よりも効果が低いが、多くの患者でAFの再発を抑制する可能性があることが、ドイツ・ミュンスター大学病院のPaulus Kirchhof氏らが行ったFlec-SL試験で示された。除細動後の抗不整脈薬治療は、心房の活動電位の持続時間と有効不応期を延長することでAFの再発を予防する。抗不整脈薬治療で洞調律が得られれば、2~4週後には心房の活動電位が正常化するため、それ以上の投与は不要な可能性があるという。Lancet誌2012年7月21日号(オンライン版2012年6月18日号)掲載の報告。

運動不足の解消で寿命が0.68年延長

冠動脈心疾患や糖尿病、がんなどの主な非伝染性疾患の6~10%が運動不足に起因し、運動不足が解消されれば寿命が0.68年(約8ヵ月)延長することが、米国ハーバード大学医学校ブリガム・アンド・ウェイメンズ病院のI-Min Lee氏らLancet Physical Activity Series Working Groupの調査で明らかとなった。運動不足は、冠動脈心疾患、2型糖尿病、乳がん、結腸がんなどの非伝染性疾患のリスクを増大させ、余命を短縮することを示す高度なエビデンスが存在する。多くの国では国民の運動不足が指摘されているため、運動不足と非伝染性疾患の関連は保健医療上の重要な課題となっている。Lancet誌2012年7月21日号(オンライン版2012年7月18日号)掲載の報告。

子どもの卵アレルギー、卵白粉末を用いた経口免疫療法が有望

卵アレルギーの子どもに対し卵白粉末を用いた経口免疫療法を行った結果、高率の脱感作が示され、持続的不応性を誘導できる可能性があることが、二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果、報告された。米国・デューク大学小児科のA. Wesley Burks氏らが5~11歳児55例を対象に行った試験で、22ヵ月時点で75%が脱感作、24ヵ月時点での経口食物負荷試験の合格児は28%で全例がその後30、36ヵ月時点でも卵を食べることができたという。現状では、卵アレルギーには非摂取が唯一の回避策とされている。本結果を踏まえてBurks氏は、「非常に有望な治療的介入を発見した」と結論。推奨治療とするためにリスク定義や、薬物療法との定量化、患者の同定、長期の免疫寛容を助長するためポスト脱感作戦略の開発などが重要だとまとめている。NEJM誌2012年7月19日号掲載報告より。

限局性前立腺がん、手術 vs.経過観察の死亡率、有意差認められず

前立腺特異抗原(PSA)検査で限局性前立腺がんが発見された男性患者について手術群と経過観察群を比較した無作為化試験の結果、最短12年追跡の手術群の全死因死亡率および前立腺がん死亡率が経過観察群よりも有意な低下は認められなかったことが報告された。米国・ミネソタ大学のTimothy J. Wilt氏らが、PSA検査が普及した初期の患者731例(平均年齢67歳)を対象に行った試験結果で、絶対差は3%ポイント未満であったという。初期ステージの前立腺がん、とくにPSA検査で発見された腫瘍に関する治療をめぐっては、手術か経過観察かその有効性が明らかになっておらず議論の的となっていた。NEJM誌2012年7月19日号掲載報告より。

C型肝炎へのシリマリン投与、ALT値の減少効果は認められず

C型肝炎に対するシリマリン(オオアザミ抽出物)の服用は、血中アラニンアミノ基転移酵素(ALT)値を低下する効果はないことが示された。米国・ノースカロライナ大学のMichael W. Fried氏らが、約150人のC型肝炎患者について行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果で、JAMA誌2012年7月18日号で発表した。シリマリンを服用する慢性肝炎患者は少なくないものの、その効果についてのエビデンスは明確ではなかったという。

急性虚血性脳卒中院内30日死亡リスクモデル、重症度を盛り込むことで予測能改善

急性虚血性脳卒中30日院内死亡リスクモデルは、脳卒中の重症度を示す米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)を盛り込むことで、予測能が有意に改善することが明らかにされた。これまで同スケールの有無によるモデル予測能についてはほとんど検討されていなかったが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のGregg C. Fonarow氏らが、13万人弱の患者について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月18日号で発表した。

出産前からの複数回訪問指導で小児肥満リスクを低下

出産前から2歳時まで、家族にフォーカスした訪問看護師による複数回の早期介入を行うことで、2歳時のBMI値が低下し、小児肥満症リスク因子の改善効果が示されたことが、オーストラリア・シドニー大学のLi Ming Wen氏らによる無作為化試験の結果、報告された。オーストラリアでは2~3歳児の5人に1人が過体重もしくは肥満で、乳幼児栄養(離乳食への切り替え時期や子どもの食習慣、テレビ視聴時間など)についての出産前を含む早期介入が提唱されているという。成人後の食習慣にも影響する乳幼児栄養の早期リスク因子について、低下層地域に多くみられるとのエビデンスが示されており、試験はシドニーの低下層地域で行われた。BMJ誌2012年7月14日号(オンライン版2012年6月21日号)掲載報告より。

遠隔健康管理、慢性疾患患者の緊急入院、死亡を減少

血圧や血糖モニタリングなど遠隔健康管理(telehealth)は慢性疾患患者の、緊急入院および死亡の減少に結びつくことが報告された。英国ヘルスケア指針の独立検証機関であるNuffield TrustのAdam Steventon氏らが、英国保健省による資金提供プロジェクトの無作為化試験「Whole System Demonstrator」を解析した結果による。同試験はtelehealthとtelecareの統合アプローチの有効性について検証することを目的とする、英国保健省プロジェクトの多地域クラスター無作為化試験だった。BMJ誌2012年7月14日号(オンライン版2012年6月21日号)掲載報告より。

皆保険制度、実現にはサービスへのアクセスが課題

医療皆保険制度の実現には、医療サービスへのアクセスにおける物理的、財政的な障壁の解消が重要なことが、ロンドン大学公衆衛生学熱帯医学大学院のAnne Mills氏らがアフリカで行った調査で明らかとなった。医療皆保険制度は世界的に大きな関心事であり、とくに非正規労働者の保護に向けた医療財政制度に関する議論が続いている。最重要課題は、個々の財政制度やサービスの利用パターンの平等性だという。Lancet誌2012年7月14日号(オンライン版2012年5月15日号)掲載の報告。

避妊薬、妊産婦死の抑制に有効

開発途上国ではいまだに望まない妊娠が多く、避妊薬は妊産婦死亡率の低減のための有効な予防戦略であることが、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のSaifuddin Ahmed氏らの調査で示された。避妊薬の使用により毎年ほぼ2億3,000万の出生が回避され、望まない妊娠の主要な予防戦略は家族計画であり、世界的な出生率(1人の女性の平均出産回数)の低下(1970年代初頭の4.7が2000年代末期には2.6へ)は主に避妊薬使用の増加によるという。妊産婦死の99%が開発途上国で発生しており、家族計画は開発途上国における妊産婦死の抑制に取り組む「安全な母性イニシアチブ(Safe Motherhood Initiative; SMI)」の4大目標の1つとされる。Lancet誌2012年7月14日号(オンライン版2012年7月10日号)掲載の報告。

重症敗血症、HES 130/0.42輸液蘇生は死亡リスクが高い

重症敗血症に対するヒドロキシエチルデンプン(HES)130/0.42を用いた輸液蘇生は、酢酸リンゲル液を用いた患者と比較して90日時点の死亡リスクが高く、腎代替療法を必要とする割合が高いことが、多施設共同無作為化試験の結果、明らかにされた。HES 130/0.42は、ICUでの輸液蘇生に広く使われているが、安全性と有効性は立証されていなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のAnders Perner氏らによる報告で、NEJM誌2012年7月12日号(オンライン版2012年6月27日号)で発表された。

MEK阻害薬トラメチニブ、進行期メラノーマ患者の生存改善

米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのKeith T. Flaherty氏らによる第3相無作為化オープンラベル試験の結果、新規の経口選択的MEK阻害薬トラメチニブ(本邦未承認)は従来の化学療法と比べて、BRAF変異のある進行期メラノーマ患者の無増悪生存期間と全生存期間を改善することが報告された。進行期メラノーマ患者ではBRAF変異が50%でみられ、同集団への選択的BRAF阻害薬による治療は、化学療法と比較し生存を改善するが、たいていは短期間であった。一方でMEK阻害薬については、BRAF変異のある患者を対象とした第1相、第2相試験で、腫瘍退縮と病勢安定のエビデンスが示され新規の治療薬として有望視されているという。NEJM誌2012年7月12日号(オンライン版2012年6月4日号)掲載報告より。

新型インフルエンザワクチン接種によるギラン・バレー症候群発症リスクは?

新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種によるギラン・バレー症候群発症リスクは、小さいながら有意にあることが報告された。カナダ・Laval大学のPhilippe De Wals氏らが、ケベック州で地域住民対象のコホート試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月11日号で発表した。ケベック州では2009年秋に新型インフルエンザのパンデミックを受けてワクチン接種キャンペーンを展開した。その際多くの人がAS03アジュバントワクチン(Arepanrix)の接種を受け、年度末までに住民780万人のうち57%が同ワクチン接種を受けたという。

妊婦への新型インフルエンザワクチン接種、出生児のリスク増大認められず

妊娠中へのアジュバント新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種は、重大な先天異常や早産、胎児発育遅リスクを、非接種と比べて増大しないことが報告された。デンマーク・Statens Serum InstitutのBjo rn Pasternak氏らが、新生児5万例超の国内登録コホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月11日号で発表した。

医学専門誌の別刷部数、医薬品企業からの資金提供と関連

英国・オックスフォード大学のAdam E Handel氏らは、資金提供と研究デザインが医学専門誌の別刷の大量注文とどれだけ関連するかを評価するケースコントロール研究を行った。その結果、医薬品企業による資金提供と大量の別刷注文との関連が認められたという。BMJ誌2012年7月2日号(オンライン版2012年6月28日号)掲載報告より。

5大医学専門誌の情報提供の質は改善したか?

論文アブストラクトのミスリードを解消することを目的に、2008年1月にCONSORT(consolidated standards of reporting trials)ステートメントによって発表されたガイドラインの影響について、英国・オックスフォード大学のSally Hopewell氏らが5大医学専門誌(AIM、BMJ、Lancet、JAMA、NEJM)を対象に検討した。結果、媒体によって異なる傾向がみられたという。BMJ誌2012年7月2日号(オンライン版2012年6月22日号)掲載報告より。

硫酸マグネシウム、動脈瘤性クモ膜下出血の予後を改善せず:MASH-2試験

 動脈瘤性クモ膜下出血に対する硫酸マグネシウムの静脈内投与は臨床予後を改善しないことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのSanne M Dorhout Mees氏らが実施したMASH-2試験で示された。動脈瘤性クモ膜下出血は予後不良であり、1ヵ月後の死亡率は27~44%、過去10年で死亡率は低下傾向にあるものの生存者の20%は介助なしでは生活ができない。動脈瘤性クモ膜下出血では、発症後4~10日にみられる遅発性脳虚血が不良な予後の重要な原因であり、神経保護薬である硫酸マグネシウムは遅発性脳虚血を抑制したり、その予後を改善することで、クモ膜下出血そのものの予後を改善する可能性があるという。Lancet誌2012年7月7日号(オンライン版2012年5月25日号)掲載の報告。

多疾患罹患、もはや例外ではない

患者の約4分の1が多疾患に罹患しており、その頻度は加齢とともに上昇し、とくに貧困地区では発症時期が10年以上早く、精神疾患の併発頻度が高いことが、英国Dundee大学のKaren Barnett氏らの調査で明らかとなった。長期間にわたる疾患の管理は医療が直面する重要な課題だが、医療システムは複数の疾患の併存状態よりも個々の単一疾患を想定して構成されている。これまでに行われた多疾患罹患の調査は、疾患数が少なく、患者の自己申告に基づくものや高齢者、入院患者を対象としたものが多いという。Lancet誌2012年7月7日号(オンライン版2012年5月10日号)掲載の報告。