認知症予防の新たな標的、グルコースピーク

提供元:ケアネット

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公開日:2017/07/03

 

 平均血糖値の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)は、認知症および認知障害のリスクと関連している。しかし、この関連における血糖変動やグルコース変動の役割は不明である。米国・ジョンズホプキンス大学公衆衛生学大学院のAndreea M. Rawlings氏らは、1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG)レベルの測定により、中年期におけるグルコースピークと認知症および20年の認知機能低下リスクとの関連を調査した。Diabetes care誌7月号の報告。

 コミュニティにおけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究の約1万3,000例を対象に調査を行った。認知症は、動向調査、神経心理学的テスト、対象者またはその代理人との電話、認知症による死亡より確認した。認知機能は、3回の神経心理学的テストを20年間にわたり3回実施し、zスコアで示した。Coxモデル、線形混合効果モデルを使用した。1,5-AGレベルの10μg/mLで二分し、HbA1cの臨床的カテゴリ内で調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・21年間の中央期間において、認知症は1,105例で発症した。
・糖尿病患者では、1,5-AGの5μg/mL減少ごとに、推定認知症リスクが16%増加した(ハザード比:1.16、p=0.032)。
・糖尿病およびHbA1c7%(53mmol/mol)未満の対象者の認知機能低下については、グルコースピークを有する患者は、ピークのない患者と比較し、20年間で0.19のzスコア上昇を示した(p=0.162)。
・糖尿病およびHbA1c7%(53mmol/mol)以上の対象者の中で、グルコースピークを有する患者は、ピークのない患者と比較し、0.38のzスコア上昇を示した(p<0.001)。
・糖尿病のない患者では、有意な関連が認められなかった。

 著者らは「糖尿病患者では、グルコースピークが認知機能低下や認知症の危険因子となることが示唆された。平均血糖に加え、グルコースピークを標的とすることは、予防のための重要な手段となりうる」としている。

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(鷹野 敦夫)