医療一般

がん研有明病院、病床数を削減し、外来機能を拡充

 公益財団法人がん研究会 有明病院(東京都江東区、病床数644床)は、「病院機能・フロア見直しプロジェクト」の第1弾として、5階西病棟の42床を閉鎖し、外来治療センターを移転・拡充した。2025年9月に新センターが稼働を開始し、10月20日には報道向け説明会・見学会が行われた。  説明会では渡邊 雅之副院長が登壇し、プロジェクトの背景を説明した。「診療報酬の伸び悩み、人件費・薬剤費の上昇などにより、2024年度は4分の3の病院が医業利益で赤字となっている。当院においてもコロナ禍から順調に収支を回復してきたものの、ここ数年の人件費、薬剤・材料費の高騰が大きく響き、2025年度は赤字の見込みとなっている」とした。

摂食障害を誘発する9つの薬剤を特定

 摂食障害の誘発因子としての薬剤の影響は、心理社会的影響に比べ、十分に認識されていないのが現状である。中国・南昌大学のLiyun Zheng氏らは、米国食品医薬品局の有害事象報告システム(FAERS)データベースを用いて、摂食障害と関連する可能性のある薬剤を特定するため、本研究を実施した。Eating Behaviors誌オンライン版2025年9月13日号の報告。  2004年1月~2024年12月にFAERSに報告された摂食障害に関連するデータを抽出した。不均衡なシグナルを検出するために報告オッズ比(ROR)を算出し、多重比較の調整にはフィッシャーの正確確率検定とボンフェローニ補正を適用した。

朝食とメタボ各要素の関連~メタ解析

 朝食を食べない人では、食べる人と比べてメタボリックシンドローム(MetS)、腹部肥満、高血圧症、高脂血症、高血糖のリスクが有意に高いことが、中国・Ningxia Medical UniversityのBowen Yang氏らによって報告された。Nutrients誌2025年10月3日号掲載の報告。  これまで多くの研究で特定の食品や食習慣とMetSとの関連が検討されてきたが、朝食など食事頻度に関するエビデンスは一貫していなかった。そこで研究グループは、一般集団を対象に、朝食を食べない人と食べる人との間でMetSおよびその構成要素(腹部肥満、高血圧症、高脂血症、高血糖など)の発生・有病リスクを比較するシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。

緑内障リスクがある患者の特定でAIが人間を上回る

 人工知能(AI)は、医師が緑内障のスクリーニングをより広く実施できるようにする手助けとなるかもしれない。新たな研究で、機械学習のアルゴリズムは、訓練された人間の評価者よりも緑内障のリスクがある患者を正確に特定できることが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン眼科学研究所教授のAnthony Khawaja氏らによるこの研究結果は、米国眼科学会議(AAO 2025、10月18〜20日、米オーランド)で発表された。  緑内障は、視神経の乳頭が障害を受けて視野に欠損(盲点の拡大)が生じ、最終的には失明に至る疾患で、多くの場合、眼圧の上昇が原因となる。緑内障は通常、眼圧を下げる点眼薬で治療されるが、手術が必要になることもある。

隠れ肥満は心筋梗塞や脳卒中リスクを高める

 たとえ健康的な体重であっても、腹部や肝臓の奥深くに脂肪が蓄積すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが静かに高まる可能性があるようだ。内臓脂肪(visceral adipose tissue;VAT)と、VATほどではないが肝脂肪(hepatic fat;HF)は、頸動脈のアテローム性硬化リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。マクマスター大学(カナダ)保健科学部のSonia Anand氏らによるこの研究結果は、「Communications Medicine」に10月17日掲載された。  BMIが正常範囲内の人でも、このような隠れ肥満である可能性はある。Anand氏は、「見た目だけで必ずしもVATまたはHFの有無を判断できるわけではない」とマクマスター大学のニュースリリースの中で述べている。同氏は、「VATやHFは代謝的に活発で危険だ。太り気味でないことが明らかな人でも、この種の脂肪は炎症や動脈損傷と関連している。だからこそ、肥満と心血管リスクの評価方法を見直すことが非常に重要なのだ」と付け加えている。

都市と地方で違う?高齢者の健康に影響する「歩きやすさ」

 「歩きやすい街」は高齢者に優しいのか?今回、日本全国の高齢者を対象にした調査で、都市と地方でその効果に違いがあることが分かった。地域の歩きやすさ(ウォーカビリティ)は都市部では歩行の増加に寄与する一方、地方部ではウォーカビリティが必ずしも健康にプラスの影響を与えないことがあるという。研究は千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門の河口謙二郎氏らによるもので、詳細は9月21日付けで「Health & Place」に掲載された。  高齢化社会では、日常生活空間の環境が高齢者の健康や生活の質に大きな影響を与えることが注目されている。特にウォーカビリティは、歩道や交差点、施設へのアクセスなど複数の要素を含み、身体的活動や心理・社会的健康に関係するとされる。しかし、ウォーカビリティが都市・地方に与える影響の違いや、身体・心理・社会面から総合的に評価した研究は限られる。そうした背景を踏まえ、著者らは、日本の65歳以上の高齢者を対象に、ウォーカビリティと健康・生活関連アウトカムの長期的関連を都市・地方別に分析し、その包括的影響を明らかにすることを目的とした。

小細胞肺がん2次治療、タルラタマブの安全性(DeLLphi-304)/ESMO2025

 DLL3を標的とするBiTE製剤タルラタマブの小細胞肺がん(SCLC)2次治療DeLLphi-304試験における、有害事象(AE)の追加分析結果が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表された。 ・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験 ・対象:プラチナ製剤を含む化学療法±抗PD-1/PD-L1抗体薬による1次治療を受けたSCLC患者(無症候性の脳転移は治療歴を問わず許容) ・試験群(タルラタマブ群):タルラタマブ(1日目に1mg、8、15日目に10mgを点滴静注し、以降は2週間間隔で10mgを点滴静注) 254例 ・対照群(化学療法群):化学療法(トポテカン、アムルビシン、lurbinectedinのいずれか)※ 255例 ・評価項目: [主要評価項目]OS [主要な副次評価項目]PFS、患者報告アウトカム [副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など ※:日本はアムルビシン

心房細動患者における脳梗塞リスクを示すバイオマーカーを同定

 抗凝固療法を受けている心房細動(AF)患者においても、既知の脳梗塞リスクのバイオマーカーは脳梗塞リスクと正の関連を示し、そのうち2種類のバイオマーカーがAF患者の脳卒中発症の予測精度を改善する可能性があるとする2報の研究結果が、「Journal of Thrombosis and Haemostasis」に8月6日掲載された。  米バーモント大学のSamuel A.P. Short氏らは、抗凝固療法を受けているAF患者におけるバイオマーカーと脳梗塞リスクの関連を検討するために、登録時に45歳以上であった黒人および白人の成人3万239人を対象とし、前向きコホート研究を実施した。ベースライン時に、対象者の9種類のバイオマーカーが測定された。解析の結果、ワルファリンを内服していたAF患者713人のうち67人(9%)が、12年間の追跡期間中に初発の脳梗塞を発症していた。交絡因子を調整した後も、標準偏差1単位の上昇ごとに、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)、血液凝固第VIII因子、D-ダイマー、成長分化因子-15(GDF-15)は、いずれも新規脳卒中発症と正の関連を示した。ハザード比は、NT-proBNPで1.49(95%信頼区間1.11〜2.02)、GDF-15で1.28(同0.92〜1.77)であった。ただし、D-ダイマーとGDF-15の関連は、統計学的に有意とはならなかった。

友人に対する支援は高齢者のポジティブな気分を高める

 高齢者にとって、友情は最高の薬となるかもしれない。親しい友人を車で送ったり手伝ったりするなどの実際的な支援の提供は、高齢者のポジティブな気分を高める可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。一方で、感情的支援の提供の場合には性差が見られ、女性ではポジティブな気分に影響しなかったのに対し、男性ではポジティブな気分が低下する傾向が認められたという。米ミシガン大学調査研究センターのYee To Ng氏らによるこの研究結果は、「Research on Aging」に9月26日掲載された。

帯状疱疹ワクチンは心臓病、認知症、死亡リスクの低減にも有効

 帯状疱疹ワクチンは中年や高齢者を厄介な発疹から守るだけではないようだ。新たな研究で、このワクチンは心臓病、認知症、死亡のリスクも低下させる可能性が示された。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部の内科医であるAli Dehghani氏らによるこの研究結果は、米国感染症学会年次総会(IDWeek 2025、10月19〜22日、米アトランタ)で発表された。  米疾病対策センター(CDC)によると、米国では3人に1人が帯状疱疹に罹患することから、現在、50歳以上の成人には帯状疱疹ワクチンの2回接種が推奨されている。帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)の既往歴がある人に発症するが、CDCは、ワクチン接種に当たり水痘罹患歴を確認する必要はないとしている。1980年以前に生まれた米国人の99%以上は水痘・帯状疱疹ウイルスに感染しているからだ。

新しい肥満の定義で米国人の7割近くが肥満に該当

 肥満の新しい定義により、肥満と見なされる米国人の数が劇的に増加する可能性があるようだ。長期健康調査に参加した30万人以上を対象にした研究で、BMIだけでなく、余分な体脂肪に関する追加の指標も考慮した新たな肥満の定義を適用すると、肥満の有病率が約40%から70%近くに上昇することが示された。米マサチューセッツ総合病院(MGH)の内分泌学者であるLindsay Fourman氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月15日掲載された。  Fourman氏は、「肥満が蔓延しているだろうと考えてはいたが、これほどとは予想していなかった。現在、成人人口の70%が過剰な脂肪を持っている可能性があると考えられるため、どの治療アプローチを優先すべきかについての理解を深める必要がある」とニュースリリースで述べている。

日本における認知症診断、アイトラッキング式認知機能評価の有用性はどの程度か

 認知機能低下および認知症に対する効率的なスクリーニングツールは、多くの臨床医や患者に求められている。大阪大学の鷹見 洋一氏らはこれまで、アイトラッキング技術を用いた新規認知機能評価ツールの認知症スクリーニングにおける有用性について報告している。今回、アイトラッキング式認知機能評価(ETCA)アプリのタブレット版を開発し、プログラミング医療機器(SaMD)としての臨床的有用性を検証するための臨床試験を実施し、その結果を報告した。GeroScience誌オンライン版2025年10月20日号の報告。

脳梗塞既往患者のLDL-C目標値、より厳格にすべき?/Circulation

 虚血性脳卒中の既往歴を持つ患者は、脳卒中再発およびその他の主要心血管イベント(MACE)リスクが高い。米国・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のVictorien Monguillon氏らが、FOURIER試験のデータを用いて行った2次分析の結果、LDL-C値が40mg/dL未満まで低下すると、出血性脳卒中リスクを明らかに増加させることなく、脳卒中再発を含むMACEのリスクが低下することが示された。Circulation誌オンライン版2025年11月3日号掲載の報告より。

骨粗鬆症、予防には若年からの対策が重要/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーは、10月20日の世界骨粗鬆症デーに関連し、疾患啓発イベント「親子で話す骨のこと」を開催した。慶應義塾大学 整形外科 教授の中村 雅也氏、歌手の早見 優氏が登壇し、若年期からの骨粗鬆症予防の重要性を伝えた。  骨粗鬆症の患者数は毎年増加傾向にあり、2023年のデータで受診者数は138万人、うち9割以上を女性が占める1)。中村氏は「女性は閉経後から骨密度が急速に低下し、70代以降では骨折リスクが大幅に上昇する。患者数増加は高齢化に加え、疾患への意識向上による受診増加も要因だと考えられる」と解説した。さらに中村氏は、「骨粗鬆症は進行するまで自覚症状が乏しいため、注意を払われにくい。高齢になって転倒や骨折を経験してから骨の健康を考えるのでは遅い。閉経期を迎える40~50代から骨密度変化に関心を持ち、早期に介入することが重要」と強調した。

FLT3遺伝子変異陽性AMLに対する治療戦略/日本血液学会

 2025年10月10~12日に第87回日本血液学会学術集会が兵庫県にて開催された。10月10日、清井 仁氏(名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)を座長に行われた会長シンポジウムでは、「FLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病(AML)に対する治療戦略」と題して、FLT3変異陽性AMLの管理についてMark James Levis氏(米国・Johns Hopkins University)、AMLにおけるFLT3阻害薬耐性に関する理解の進展についてはCatherine Smith氏(米国・University of California, San Francisco)から講演が行われた。

短時間の運動“エクササイズ・スナック”で健康増進

 1回5分以内というごく短時間の運動を日常的に随時行うことで、健康状態が改善することが報告された。そのような短時間運動の繰り返しは、生活習慣として取り入れる際のハードルが低く、かつ継続率も高いことが示されたという。オビエド大学(スペイン)のHugo Olmedillas氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、詳細は「British Journal of Sports Medicine」に10月7日掲載された。  運動に関するガイドラインでは一般的に、1週間に300分の中強度の運動、または75~150分の高強度運動を行うことが推奨されている。しかし、著者らが研究背景として記している情報によると、成人では約3分の1、10代の若年者では5人中4人が、その推奨を満たしていないという。

肝疾患患者の「フレイル」、独立した予後因子としての意義

 慢性肝疾患(CLD)は、肝炎ウイルス感染や脂肪肝、アルコール性肝障害などが原因で肝機能が徐々に低下する疾患で、進行すると肝硬変や肝不全に至るリスクがある。今回、こうした患者におけるフレイルの臨床的意義を検討した日本の多機関共同後ろ向き観察研究で、フレイルが独立した予後不良因子であることが示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は9月20日付けで「Hepatology Reseach」に掲載された。

CLL治療のアンメットニーズを埋めるピルトブルチニブ

 慢性リンパ性白血病(CLL)の治療において、初回治療の共有結合型BTK阻害薬に無効になった場合、これまでBCL2阻害薬ベネトクラクスとリツキシマブの併用療法が唯一の選択肢であり、この併用療法が無効の場合の対応が課題であった。そのような中、2025年9月に非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブ(商品名:ジャイパーカ)が再発/難治性のCLLに承認され、3次治療はもちろん、2次治療で本剤とベネトクラクス+リツキシマブのどちらかを選択することが可能になった。今回の承認に際し、10月30日に日本新薬によるメディアセミナーが開催され、新潟薬科大学医療技術学部長の青木 定夫氏がCLL治療における最新知見とアンメットニーズ、新たな選択肢であるピルトブルチニブについて講演した。

抗うつ薬治療で効果不十分なうつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法の有用性

 うつ病患者の多くは、抗うつ薬治療による症状が50%未満しか軽減せず、症状改善には非定型抗精神病薬の補助療法が有益となる可能性がある。米国・大塚ファーマシューティカルD&CのShivani Kapadia氏らは、抗うつ薬治療に対する最小限(0%超~25%未満)および部分的な(25%~50%未満)治療反応を示したうつ病患者におけるブレクスピプラゾールの補助療法の有効性と安全性を検討するため、3つのランダム化比較試験のデータを統合し、事後解析を実施した。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌2025年10月1日号の報告。