境界性パーソナリティ障害でみられる幻覚の正体は

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 境界性パーソナリティ障害(BPD)の約3分の1の患者で認められると報告されている幻覚症状について、フランス・リール第2大学のA. Gras氏らは、研究状況などをまとめるためレビューを行った。その結果、現状において同症状への理解は不十分であり、病態生理を明らかにする研究が必要であることを指摘した。Encephale誌オンライン版2014年7月22日号の掲載報告。

 本検討は、BPD患者における幻覚症状への対処を模索することを目的に行われた。2013年3月時点でMedline、Scopus、Google Scholarデータベースを、「境界性パーソナリティ障害」「幻覚」「精神病症状」のキーワードを用いて論文を検索した。英語またはフランス語の査読を受けたジャーナルに発表されたレビュー論文で、DSM基準で診断されたBPD患者が試験登録されているものを適格とした。

 主な報告は以下のとおり。

・1985~2012年に発表された15試験、被験者計635例のデータがレビューに組み込まれた。
・BPDで観察された幻覚は現象学的経験で、統合失調症スペクトラムにおいて述べられる幻覚と同様に、鮮明で、持続的で、3次元的であり、悪意または万能性に関する信念が認められるものであった。その一方で、幻覚の内容はよりネガティブで苦痛に満ちたものであった。
・こうした症状は長い間、「偽性幻覚(または幻覚様症状)」とみなされてきたことも本レビューによって判明した。
・またそうした捉え方が、科学的な検証作業を阻害し、BPD患者に対して本当にそのような経験を有しているのかという疑問や、患者が感じている苦痛を認めないというスティグマを引き起こしていた。著者は「これらの状況が、BPDの幻覚症状の解明に焦点を当てた研究の必要性を指摘するものであった」としている。
・一方で興味深いことに、最近の併存症研究において、40年来議論されてきたBPDと精神病との潜在的な関連性についての」議論が再燃していることが明らかになった。
・当初、前精神病性障害とみなされたBPDは、Otto F. Kernberg氏により独立したカテゴリーに分類され、DSM-III定義に至り、精神病症状から除外された。
・しかしながら、幻覚は、気分障害のみでなく薬物の過剰摂取によっても生じ、幻覚それ自体をもって統合失調症と診断するには依然として不十分であり、BPDにおけるすべての幻覚を説明することもできなかった。
・著者らは、BPDの幻覚は視床下部-脳下垂体-副腎系およびストレス下のドパミンシステムの機能亢進に関わるとして、「ストレスに対する精神病性反応」とのフレームワークで理解することを試みた。そのようなモデルは、小児期の心的外傷では中心的な役割を有する可能性があった。
・結果、小児期の心的外傷について、BPDにおける有病率が高いこと、また非臨床集団における幻覚の強い関連因子でもあることが示された。
・BPDで起きている幻覚と、外傷後ストレス障害およびその他の頻度の高い併存障害で観察された幻覚との比較検討は、最後に行われていた。

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