自閉スペクトラム症に対するパルミトイルエタノールアミド補助療法のランダム化比較試験

提供元:ケアネット

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公開日:2018/08/31

 

 自閉スペクトラム症には、炎症やグルタミン酸興奮毒性が関連しているといわれている。パルミトイルエタノールアミドは、グルタミン酸による毒性を予防し、同時に炎症反応を阻害することが証明されている内因性カンナビノイドである。イラン・Iran University of Medical SciencesのMona Khalaj氏らは、小児自閉スペクトラム症に対する10週間のリスペリドンとパルミトイルエタノールアミドの併用療法の有効性を検証するため、初めてのランダム化並行群間二重盲検プラセボ対照試験を実施した。Journal of Psychiatric Research誌2018年8月号の報告。

パルミトイルエタノールアミドがリスペリドンの治療効果を増大させる可能性

 自閉スペクトラム症と中等度~高度な過敏症状を有する4~12歳の小児70例を対象に、2つの治療レジメン(リスペリドン+パルミトイルエタノールアミド[PEA群]またはリスペリドン+プラセボ[プラセボ群])にランダムに割り付けを行った。治療アウトカムは、異常行動チェックリスト-コミュニティ版(ABC-C)を用いて測定した。

 小児自閉スペクトラム症に対するリスペリドンとパルミトイルエタノールアミドの併用療法の有効性を検証した主な結果は以下のとおり。

・試験終了時(10週目)において、PEA群はプラセボ群と比較し、ABCの過敏性および多動性/ノンコンプライアンス症状の改善において、優れた有効性が示唆された(Cohen's d=0.94、95%CI:0.41~1.46、p=0.001)。
・PEA群の多動性症状に対する改善効果は、5週目においても観察されていたが、そのエフェクトサイズ(d=0.53、p=0.04)は、10週目(d=0.94、p=0.001)よりも小さかった。
・試験終了時において、PEA群の不適切な発言に対する効果は、プラセボ群を上回り、優れている傾向が認められた(d=0.51、p=0.051)。
・ABC-Cサブスケールの他の2項目(無気力/引きこもり、常動行動)については、両群間に有意な差は認められなかった。

 著者らは「本知見では、PEAが、自閉スペクトラム症に関連した過敏性や多動性に対するリスペリドンの治療効果を、増大させる可能性があることを示唆している。今後の研究において、自閉症治療に対するPEA単独療法の有用性についての調査が望まれる」としている。

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(鷹野 敦夫)