OAの痛みは「炎症性の痛み」+「痛みのブレーキ機能の減弱」

提供元:
ケアネット

OAの痛みは「炎症性の痛み」+「痛みのブレーキ機能の減弱」のイメージ

 2017年1月26日(木)、塩野義製薬株式会社/日本イーライリリー株式会社主催のプレスセミナー「変形性関節症に伴う痛みの治療戦略―今までとこれから―」が開催された。まず、島根大学医学部整形外科学教室 教授の内尾 祐司氏より、変形性関節症(OA)に伴う痛みが患者の日常生活に与える実態について、医師と患者を対象に実施された全国意識調査の結果1)を中心に語られた。続いて、日本イーライリリー株式会社 臨床開発医師 榎本 宏之氏より、デュロキセチン(商品名:サインバルタ)の「変形性関節症に伴う疼痛」への適応症追加について語られた。

変形性関節症の有病率は高い
 変形性関節症は、膝関節や股関節、足関節などによくみられる。なかでも変形性膝関節症は、診断上の患者数が2,530万人と推計され、40歳以上の有病率が男性で42.6%、女性で62.4%と非常に高いことがわかっている2)。そこで今回、変形性関節症に伴う痛みが生活に与える影響と治療実態を知る目的で、膝に痛みを認める患者とその治療を行う医師を対象にインターネット調査が実施された。

変形性関節症が日常生活に与える影響は大きい
 それによると、96.7%の患者が変形性関節症に伴う痛みで日常生活に何らかの支障があると回答し、「立ち上がる、しゃがむなどの動作」、「階段の上がり下がり」、「正座」、「歩行」に関しては、半数以上が支障を来していた。また、普段家事をしている患者の62.2%が、変形性関節症に伴う痛みで家事に支障を来し、最も痛みがひどい時期には、71.6%以上が週2~3日以上支障があると回答した。

患者の治療満足度は医師が考えるより低い
 患者は、痛みがひどくなったり、長く続くようになったりすると医療機関を受診するが、「変形性関節症に伴う痛み」に対する現在の治療状況について満足しているかを患者に尋ねたところ、「同意する/ある程度同意する」と回答したのは42.8%であった。一方、自分の患者が治療に満足していると思うかを医師に尋ねたところ、56.3%が「同意する/ある程度同意する」と回答し、患者と医師の意識にギャップがあることがわかった。治療に満足していない患者の主な理由は、「期待していた鎮痛効果が得られなかったから」(65.6%)で、「これ以上痛みは軽減しないと思う」、「相談しても治療法を変えてくれなさそう」という理由から、満足していないことを医師に伝えていないことが多かった。

変形性関節症の痛みは「持続する炎症性の痛み」+「痛みのブレーキ機能の減弱」
 変形性関節症に伴う疼痛は、持続する炎症性の痛みだけでなく、痛みのブレーキ機能である下行性疼痛抑制系の機能減弱も原因の1つと考えられている3)。しかし、今回の調査で、85.5%の医師が変形性関節症に伴う痛みの発生機序は主に「炎症を含む侵害受容性疼痛である」と捉えていた。炎症性の痛みの緩和には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が主に使われるが、下行性疼痛抑制系の機能減弱の改善は見込めない。変形性関節症患者の治療満足度が低い理由は、このあたりにあるのかもしれない。

痛みのブレーキ機能はセロトニンとノルアドレナリンによって賦活化される
 下行性疼痛抑制系は、神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンによって賦活化されることがわかっている。2016年12月には、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるデュロキセチンに、「変形性関節症に伴う疼痛」の適応症が追加され、国内臨床試験において痛みやQOLの改善が認められている。このような薬剤を用いて、末梢神経の侵害刺激だけでなく、中枢神経の機能の面からもアプローチすることで、変形性関節症の痛み治療は、患者にとって、より満足のいくものになるのではないだろうか。

痛みを取り除き、治療の良循環を生むことが大切
 変形性関節症を発症すると、「痛む→力が入らない→動けない→安静にする→筋力が弱る→軟骨がすり減る→痛む」という悪循環が生まれてしまう。しかし、痛みが取り除かれると、「力が入るようになる→動けるようになる→筋力が戻る→軟骨が保護される→運動療法が可能となる→力が入るようになる」という良循環が生まれ、患者のQOLやADLの向上が見込めると内尾氏は語る。そのため、変形性関節症に伴う痛みの発生メカニズムを考慮した治療を行い、しっかりと除痛することが最も重要であるといえるだろう。

1)調査概要
 監修:島根大学医学部整形外科学教室 教授 内尾 祐司 氏
 調査日:2016年12月2日~3日
 対象:変形性関節症患者516名
    20歳以上男女(男性155名/女性361名)
     医療機関で変形性関節症と診断され、現在治療中または治療を行っていた方
     医療機関を受診した際、変形性関節症による痛みの症状が膝にあった方
    変形性関節症の治療経験のある整形外科医110名
 地域:全国
 調査方法:インターネットアンケート調査(実査:株式会社マクロミル)
 調査主体:塩野義製薬株式会社、日本イーライリリー株式会社

2) Yoshimura N, et al. J Bone Miner Metab. 2009;27:620-628.
3) 矢吹省司ほか. 臨床整形外科. 2012; 47:127-134.

(ケアネット 武田 真貴子)

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