ドパミンD3受容体拮抗薬、統合失調症治療薬としての可能性は?

提供元:ケアネット

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公開日:2012/11/21

 

 ドパミンD3受容体拮抗作用に着目した統合失調症の陽性および陰性症状や認知症状治療の可能性は、前臨床試験や予備的臨床試験のデータに基づき再検討されている。ドイツ・Abbott Neuroscience ResearchのGerhard Gross氏らは、D3受容体拮抗作用が錐体外路症状を阻害可能であるといった事実に基づけば、依然として治療オプションとなりうるとの見解を報告している。Naunyn-Schmiedeberg's Archives of Pharmacology誌オンライン版2012年11月6日号の報告。

 下記の考察から、新たなD3受容体拮抗薬の開発および臨床試験の実施は十分正当であると報告した。

主な内容は以下のとおり。

・ドパミンD3受容体は、中脳、辺縁系および皮質領域に発現し、統合失調症の発症や認知症状に関連する。
・選択的D33受容体拮抗薬は、精神疾患モデルマウスにおいて、D2受容体拮抗作用が示すような効果が示されていない。
・しかし、選択的D3受容体拮抗薬は脳内微小透析法において、非定型抗精神病薬と同程度の、中脳腹側被蓋野におけるドパミンニューロンの電気的活性に影響を与え、NMDA受容体阻害作用によってもたらされる影響を相殺し、皮質のドパミンおよびアセチルコリンを亢進する。
・ドパミンD2受容体拮抗薬と対照的に、D3受容体拮抗薬は齧歯動物試験によって、さまざまな社会的行動や認知行動(統合失調症患者では障害がみられる柔軟な認知や実行力について)に影響を与えることは明らかである。
・D3受容体拮抗薬に対する高い親和性にもかかわらず、第2世代抗精神病薬のクロザピン、リスペリドン、オランザピンが統合失調症患者に投与されるとき、D3受容体との結合は不十分でD3受容体がもたらす治療的なメリットが認められないようにみえる。
・初の選択的D3受容体拮抗薬であるABT-925は最近、統合失調症患者において試験が行われた。その結果、認知シグナルは認められたが、十分なD3受容体占有率(統合失調症の治療薬として価値ある数値)は達成されなかった。
・それでも機構的、実験的考察と、D3受容体拮抗作用が錐体外路症状を阻害可能であり快感消失および代謝的な有害反応のいずれももたらす可能性がないという事実から、強力なD3受容体拮抗作用を有する新たなD3受容体拮抗薬の開発および臨床試験の実施は十分に正当であると考えられる。

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(ケアネット)