内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:163

歩行速度の低下が認知症リスクと関連

 歩く速さが遅くなったと感じたら、認知症のリスクについて医師に相談したほうが良いかもしれない。歩行速度が年々低下していて、かつ認知機能の低下も進行している場合、それらが単独で進んでいる場合よりも、認知症のリスクがより高いことを示すデータが、「JAMA Network Open」に5月31日掲載された。論文の筆頭著者であるモナッシュ大学(オーストラリア)のTaya Collyer氏は、「われわれの研究結果は、認知症のリスク評価における歩行速度の重要性を浮き彫りにしている」とCNNの取材に対して語っている。

実年齢にかかわりなく肝臓の年齢は3歳未満

 実際の年齢に関係なく、肝臓の年齢は常に3歳未満であることが、新たな研究で明らかにされた。これは、肝臓では絶えず新しい細胞への入れ替わりが起きているためだという。ドレスデン工科大学再生医療センター(ドイツ)のOlaf Bergmann氏らが実施したこの研究の結果は、「Cell Systems」に5月31日発表された。  肝臓は、代謝の際に生じた有害な物質を毒性の低い物質に変えるという重要な解毒作用を持つが、頻繁に毒性物質に曝されることが原因で傷害を受けやすい。そのため、肝臓には傷ついた細胞を生まれ変わらせるというユニークな機能が備わっている。しかし、細胞がどの程度のスパンで入れ替わるのか、また、この機能が加齢に伴い低下するのかどうかについては明らかになっていない。

笑いは体にも心にも良い―メタボ因子のある日本人でのRCT

 笑うことは、体と心の双方に良い影響を及ぼすことを示す研究データが報告された。福島県立医科大学疫学講座の舟久保徳美氏、大平哲也氏らが、国内3カ所でメタボリックシンドローム(MetS)リスクのある地域住民を対象に行った、無作為化比較試験(RCT)の結果であり、詳細は「BMC Geriatrics」に4月23日掲載された。  近年、笑うことがメンタルヘルスだけでなく身体的健康にも良い影響を与えることを示した研究報告が増えている。ただ、多くの研究は、同一対象の介入前と介入後の変化を評価したものであり、また、メンタルヘルスと身体的健康という双方への影響を同時に検討した研究は少ない。それに対して大平氏らの研究は、200人以上の地域住民を介入群と対照群に分けて、笑いによる体と心への影響を、多施設共同RCTで評価した点が特徴と言える。

活性型ビタミンD3は耐糖能異常患者の2型糖尿病発症を予防しない(解説:住谷哲氏)

後ろ向きの観察研究で有効性が示唆されたが、前向きのランダム化比較試験で有効性が否定されることは少なくない。ビタミンD3物語もその1つだろう。がん、心血管病、認知症などの発症を予防できるのではないかと期待されたが、残念ながら現時点でビタミンD3がこれらの疾患の発症を予防するエビデンスは存在しない。今回、新たにその物語に追加されたのが2型糖尿病発症予防効果である。わが国で多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を実施することはかなりの困難があると思われる。

無症候性内頚動脈狭窄症に対する内科治療の高い発症抑制効果が確認された(解説:高梨成彦氏)

本研究では内科治療を適用されたNASCET 70~99%の無症候性高度頸動脈狭窄症患者において、同側脳卒中の発症率が5年間で4.7%と、過去の報告よりも低く抑えられたことが報告された。観察期間中のスタチンと降圧薬のアドヒアランスはそれぞれ70.7%、88.5%と高い水準に保たれており、血中LDLコレステロール濃度と血圧は正常範囲内に管理されていた。近年の進歩した内科治療によって脳卒中の発症率が低く抑えられたと考えられる。この結果を踏まえると、無症候性頸動脈狭窄症については発見時の狭窄度だけを根拠に血行再建術を適用することはできないだろう。本研究ではNASCET 90%以上の狭窄をhigh-grade stenosisと分類して狭窄度の進行を観察している。そして同側脳卒中を発症した患者のうち24.1%が観察中にhigh-grade stenosisに進行した患者で、12.8%は閉塞を来した患者であった。

日本人高齢者の身体活動強度と認知症リスク

 中等度~強度の身体活動(PA)は、認知症リスクを低減させる可能性があるとされる。しかし、認知症リスクに対するPAの強度の影響について調査した研究は、ほとんどない。筑波大学の永田 康喜氏らは、日本の地域住民の高齢者における認知症疑いの発症率とPAの強度との関連を調査するため、プロスペクティブ研究を実施した。その結果、認知症予防には中等度のPAが有用である可能性が示唆された。Journal of Alzheimer's Disease誌2022年3号の報告。

短期間のテストステロン補充療法は心血管イベントを増やさない

 短期間のテストステロン補充療法では、心血管イベントのリスクが有意に上昇することはないとする論文が発表された。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のChanna Jayasena氏らが行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果であり、米国内分泌学会(ENDO 2022、6月11~14日、アトランタ)で発表されるとともに、「The Lancet Healthy Longevity」6月号に掲載された。  男性更年期障害とも呼ばれる加齢性腺機能低下症に対して、男性ホルモンのテストステロンを補充する治療法が行われることがある。ただしこの治療は、ヘマトクリット〔血液中の血球成分(大半は赤血球)が占める割合〕の上昇を伴いやすく、血栓ができやすくなる可能性が指摘されている。しかし、それによる心血管イベントや死亡リスクへの影響の有無はよく分かっていない。この疑問解明の手がかりを探るため、Jayasena氏らはこれまでの無作為化比較試験(RCT)の結果を統合して解析する、システマティックレビューとメタ解析という手法による検討を行った。

新型コロナ感染リスクに影響を及ぼす意外な因子とは

 新型コロナウイルスの感染に影響する可能性のある因子について、新たな研究で意外な結果が報告された。この研究では、食物アレルギーは感染リスクの低下と関連するが、喘息と感染リスクは関連しないことが示された。一方、肥満およびBMIの高さは感染リスクを上昇させることも明らかにされた。さらに、13歳未満の小児の感染リスクは13歳以上のティーンや成人と同等だが、小児の感染の4分の3は無症候性であり、小児のいる世帯では家庭内の感染率が高いことも確認された。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の支援を受けて、米National Jewish HealthのMax A. Seibold氏らが実施したこの研究結果は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」に5月31日掲載された。

ビーガン食は他の食事療法より減量効果が大きい

 肥満や2型糖尿病の管理がうまくいっていないのなら、ビーガン食を試してみるのも、一つの方法かもしれない。それによって管理状態が改善する可能性を示唆するデータが、欧州肥満学会(EASO2022、5月4~7日、オランダ・マーストリヒト)で報告された。ステノ糖尿病センター(デンマーク)のAnne-Ditte Termannsen氏らの研究によるもの。  ビーガン食は植物性食品のみを摂取する最も厳格なベジタリアン食で、「完全菜食主義食」とも呼ばれる食事スタイル。果物や野菜、ナッツ、マメ科植物、種子などが中心の食事で、動物性食品は乳製品も含めていっさい口にしない。Termannsen氏らはこのビーガン食による体重やBMI、血糖値、血清脂質、血圧などへの影響を、システマティックレビューとメタ解析により検討した。

酸素療法を伴う/伴わない中等度のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法 第III相ランダム化比較試験(解説:寺田教彦氏)

本研究は中等症のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法を評価した論文であり、2020年11月11日から2021年5月31日までに登録された本邦でのCOVID-19罹患患者を対象としている。登録患者は121人で、56人が単独療法、61人が併用療法だった。本研究では、経口ファビピラビルにカモスタットとシクレソニドを併用することで安全性の懸念なしに入院期間の短縮ができたことが示されたが、本論文の結果が本邦のCOVID-19治療に与える影響は小さいと考えられる。理由を以下に示す。まず、執筆時点での中等症のCOVID-19肺炎患者に対する治療とそのエビデンスを確認する。本邦ではCOVID-19に対する薬物治療の考え方 第13.1版等にも記載があるように、抗ウイルス薬としてレムデシビルを投与し、臨床病態によっては(酸素投与がある場合に)抗炎症薬としてデキサメタゾンやバリシチニブの投与が行われている。