循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:215

カテーテルによる三尖弁形成術の初期段階の実用性は?

 機能的な三尖弁逆流(TR)は有病率が高いうえ進行することが多く、予後にも影響を与える。AHA/ACC(American Heart Association/American College of Cardiology guidelines)のガイドラインによると、三尖弁の修復術は、左室の開心術と同時に行う場合のみ、NYHA分類Iの適応となっている。三尖弁の修復術は患者にとって有益であるが、患者の多くは左心の開心術の際に、三尖弁の修復術を受けていない。一方で、経カテーテルによる治療は増えており、重症TRはこれらの患者の予後にも影響を与えている。このような背景から、経カテーテルによるTR治療が注目されている。

善玉ナトリウム利尿ペプチドは急性心不全には効かない?(解説:絹川 弘一郎 氏)-671

心不全の悪玉は交感神経系とレニン・アンジオテンシン系である、といわれてきた。一方、診断や重症度分類に有用なナトリウム利尿ペプチドはANPとBNPが代表であり、血管拡張作用とあわせて善玉ではないかと推察されている。もっとも、この善玉は通常、悪玉に負ける弱いヒーローであるが、ネプリライシンという善玉分解酵素を抑制することで助け舟を出すとやっと力を発揮して、ついに(条件付きではあるけれども)ACE阻害薬を上回る効果を有する薬剤(sacubitril/valsartan)の開発に結実した。

ウラリチド、急性心不全における心血管死の減少示せず/NEJM

 ナトリウム利尿ペプチドのularitideは急性心不全患者において、心筋トロポニン値に影響を及ぼすことなくBNP低下など好ましい生理的作用を示したが、短期間の治療では臨床的な複合エンドポイントや長期の心血管死亡率を減少させることはなかった。米国・ベイラー大学医療センターのMilton Packer氏らが、急性心不全患者に対するularitide早期投与の長期的な心血管リスクへの影響を検証したTRUE-AHF試験の結果を報告した。急性心不全に対してはこれまで、心筋壁応力(cardiac-wall stress)と潜在的な心筋傷害を軽減し、長期予後を改善するための治療として、血管拡張薬静脈投与による早期介入が提唱されていた。NEJM誌オンライン版2017年4月12日号掲載の報告。

低心機能合併の開心術に予防的強心薬投与がイベントを減らすか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-670

冠動脈バイパス術や弁膜症の開心術は術前の心機能が低下している例があり、人工心肺による侵襲ともあわせて、周術期に低心拍出量症候群で難渋することがある。ドブタミンをはじめとしたカテコラミンはほぼルーチンでそのような場合に使用されているが、必ずしも心筋保護という観点で良いものとは考えられていない。カテコラミンの心筋に対する好ましくない作用というのは、その強心作用が心筋酸素消費量の増大を常に伴うという点にあると考えられている。また、静注強心薬では不足で、機械的補助循環を余儀なくされるものもあり、低心拍出量症候群を効果的に回避しうる手段が待たれて久しい。そこで、心筋の酸素消費量を増大させずに強心作用を有する薬剤というのが、以前から開発のターゲットとなってきた。その1つがこの試験で使用されたlevosimendanである。

スタチンで糖尿病患者の下肢切断リスクが低下

 主要な心血管イベントに対するスタチンの効果を裏付けるエビデンスはあるが、四肢のアウトカムにおける保護効果をみた研究はほとんどない。今回、台湾・国立陽明大学のChien-Yi Hsu氏らの観察コホート研究により、末梢動脈疾患(PAD)を有する2型糖尿病(DM)患者において、スタチン使用者では非使用者に比べて、下肢切断および心血管死のリスクが低いことがわかった。The Journal of clinical endocrinology and metabolism誌オンライン版2017年4月7日号に掲載。

上部消化管出血リスク、セレコキシブ vs.ナプロキセン/Lancet

 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)とアスピリンの併用が必要な、心血管および消化管イベントのリスクが共に高い患者に対し、セレコキシブ+プロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与は、ナプロキセン+PPI投与に比べて、上部消化管再出血リスクが半分以下に低減することが示された。中国・香港中文大学のFrancis K L Chan氏らが、514例を対象に行った無作為化二重盲検試験による結果で、Lancet誌オンライン版2017年4月11日号で発表した。著者は結果を踏まえて、「上部消化管再出血リスクを低下させるにはセレコキシブが好ましい治療である。ナプロキセンは心血管系の安全性は確認されているが、投与を回避すべきであろう」とまとめている。

糖尿病の心血管イベント、15年で大きく減少/NEJM

 スウェーデンでは1998~2014年にかけて、糖尿病患者の心血管イベント発生率が減少し、その減少率は糖尿病ではない人に比べ20~40%大きいことがわかった。致死的イベントも減少したが、その減少率については、1型糖尿病患者は糖尿病でない人と同等、2型糖尿病患者ではより小さかった。スウェーデン・ヨーテボリ大学のAidin Rawshani氏らが明らかにしたもので、NEJM誌2017年4月13日号で発表した。糖尿病患者の死亡や心血管イベントの過剰リスクについて、長期的傾向を調べた大規模な試験はなかった。

腎保護効果は見せかけだった~RA系阻害薬は『万能の妙薬』ではない~(解説:石上 友章 氏)-669

CKD診療のゴールは、腎保護と心血管保護の両立にある。CKD合併高血圧は、降圧による心血管イベントの抑制と、腎機能の低下の抑制を、同時に満たすことで、最善・最良の医療を提供したことになる。RA系阻害薬は、CKD合併高血圧の治療においても、ファーストラインの選択肢として位置付けられている。RA系阻害薬には、特異的な腎保護作用があると信じられていたことから、糖尿病性腎症の発症や進展にはより好ましい選択肢であるとされてきた。一方で、CKD合併高血圧症にRA系阻害薬を使用すると、血清クレアチニンが一過性に上昇することが知られており、本邦のガイドラインでは、以下のような一文が付け足してある。