循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:212

中等度リスクの患者に対する外科的大動脈弁置換術と経カテーテル大動脈弁留置術の比較(SURTAVI研究)(解説:今井 靖 氏)-681

大動脈弁狭窄症治療のゴールドスタンダードは外科的大動脈弁置換術であるが、高齢や心臓以外の合併疾患等の理由により開心術に耐えられないと判断された患者に対しては、対症療法しか手段がなかった。そのようななかで経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR/TAVI)が登場し、外科手術がハイリスクと考えられる重症大動脈弁狭窄症に対して実施されるようになった。

スタチンのノセボ効果が明らかに/Lancet

 スタチン治療の有害事象について、いわゆる「ノセボ効果」が認められることが明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAjay Gupta氏らが、ASCOT-脂質低下療法(LLA)試験の二重盲検試験期と非盲検延長試験期の有害事象について解析した結果、盲検下ではみられなかったが非盲検下において、すなわち患者も医師もスタチン療法が実施されていると認識している場合にのみ、筋肉関連有害事象が過剰に報告されたという。これまで、無作為化二重盲検比較試験ではスタチン療法と有害事象との関連は示唆されていなかったが、観察研究では盲検試験に比べてさまざまな有害事象の増加が報告されていた。Lancet誌オンライン版2017年5月2日号掲載の報告。

バイスタンダーによる蘇生処置が予後を大幅に改善/NEJM

 バイスタンダーによる心肺蘇生(CPR)および除細動の実施は、脳障害/介護施設入所や全死因死亡の1年リスクを、いずれも3~4割と有意に低減することが示された。デンマーク・オールボー大学のKristian Kragholm氏らが2,855例を対象に行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2017年5月4日号で発表した。院外心停止へのバイスタンダーによる介入と長期機能アウトカムとの関連について、これまで大規模に検討されたことはなかった。

ヒドロクロロチアジド使用量と口唇がんリスクが相関

 利尿薬であるヒドロクロロチアジドの使用により口唇がんリスクが高まることを示唆する報告がある。この関連を検討した南デンマーク大学のAnton Pottegard氏らの症例対照研究において、ヒドロクロロチアジドの累積使用量と口唇がんリスクに強い相関が認められた。Journal of internal medicine誌オンライン版2017年5月8日号に掲載。

低LDL-Cが認知症リスクを低減する可能性/BMJ

 PCSK9遺伝子およびHMGCR(HMG-CoA reductase)遺伝子のバリアントに起因するLDLコレステロール(LDL-C)の低下は、認知症やパーキンソン病の発症リスクを増加させず、LDL-C値の低下によりアルツハイマー型認知症のリスクが低減する可能性があることが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMarianne Benn氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年4月24日号に掲載された。コレステロールは脳のニューロンを取り囲むミエリンの主成分であるため、低LDL-C値はアルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経疾患のリスクを増大させる可能性が指摘されている。

高感度心筋トロポニンT、非心臓手術後の死亡と関連/JAMA

 非心臓手術施行例では、術後3日間の高感度心筋トロポニンT(hsTnT)のピーク値が30日死亡リスクと関連することが、カナダ・マックマスター大学のP.J.Devereaux氏らが行ったVISION試験で示された。心筋虚血の臨床所見がみられない場合でも、hsTnT値上昇は30日死亡と関連したという。研究の成果は、JAMA誌2017年4月25日号に掲載された。非心臓手術後心筋障害(myocardial injury after noncardiac surgery:MINS)は、術後30日以内に発症した心筋虚血に起因する心筋障害と定義され、死亡との独立の関連が確認されている。非高感度心筋トロポニンTアッセイに基づくMINSの診断基準が確立されているが、米国食品医薬品局(FDA)は最近、hsTnTの使用を承認し、世界的に多くの病院でhsTnTアッセイが用いられている。

冠動脈カルシウムが認知症に関連

 米国の疫学研究であるMESA(Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis)で、ベースライン時の冠動脈カルシウム(CAC)スコアが高いと、血管性危険因子、アポリポ蛋白E(APOE)-ε4、脳卒中発症に関係なく認知症リスクが有意に高かったことを、滋賀医科大学の藤吉 朗氏らが報告した。この結果は、血管損傷が認知症発症に関与するという仮説と一致する。Circulation: Cardiovascular Imaging誌2017年5月号に掲載。

腹部大動脈瘤、治療選択と予後に男女差/Lancet

 腹部大動脈瘤の治療・予後について男女差があることが、2000年以降に行われた試験データについて行った系統的レビューとメタ解析の結果、示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのPinar Ulug氏らが、ステントグラフト内挿術(EVAR)と外科的人工血管置換術(open repair)それぞれについて性別に調べた結果、女性は男性と比べてEVAR適応者の割合が低く、非介入率が高く、また手術死亡率が両修復術ともに高かったことが明らかにされた。本検討は、腹部大動脈瘤の予後は、女性のほうが男性よりも不良の可能性があるとの指摘を踏まえて行われたもので、結果を踏まえて著者は、「女性における腹部大動脈瘤治療マネジメントの改善が必要である」と述べている。Lancet誌オンライン版2017年4月25日号掲載の報告。

冠動脈疾患発症および死亡の転帰に影響する独立危険因子としての体重変動(連続体重測定)の意義(解説:島田 俊夫 氏)-675

過体重、肥満がさまざまな病気の危険因子になることはよく知られた事実である。しかし、その一方で肥満パラドックスに関する報告もあり、肥満が病気の発症、死亡に対して保護的に働く可能性を示唆する論文も散見されるが、最近では選択バイアスと交絡因子とで説明可能であるとの考えが主流である。また、健常人では体重変動が独立した心血管疾患危険因子になることはすでに報告されているが、これまでの対象とは異なり本研究においては心血管疾患を有し、LDLコレステロールが130mg/dL未満の患者を対象に、体重変動が既存のリスクファクターとは独立した心血管疾患、死亡のリスクファクターになることをスタチンの効果を比較検討した臨床試験(TNT試験)の事後解析に基づく臨床研究の成果として、NEJM誌2017年4月6日号に掲載された米国・ニューヨーク大学医学部Sripal Bangalore氏らの論文にコメントする。

欧米化された食事でも死亡リスクは低下?~JPHC研究

 JPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study、主任研究者:津金昌一郎氏)において、日本人の食事パターンと全死因、がん、心血管疾患による死亡との関連を調査した結果、健康的な食事パターンと欧米化された食事パターンでは、全死因および心血管疾患の死亡リスクが低いことが示唆された。欧米化された食事パターンでの結果はこれまでの報告と矛盾するが、研究グループでは塩の摂取が少ないことや飽和脂肪酸の高摂取による寄与の可能性を考察している。PLOS ONE誌2017年4月26日号に掲載。