腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

既治療の非MSI-H/dMMR大腸がん、zanzalintinib+アテゾリズマブがOS改善(STELLAR-303)/Lancet

 再発・難治性の転移を有する大腸がん(高頻度マイクロサテライト不安定性[MSI-H]またはミスマッチ修復機構欠損[dMMR]を持たない)では、免疫療法ベースのレジメンであるzanzalintinib(TAMキナーゼ[TYRO3、AXL、MER]、MET、VEGF受容体などの複数のキナーゼの低分子阻害薬)+アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)によるchemotherapy-freeの併用治療は、標準治療のレゴラフェニブと比較して、肝転移の有無にかかわらず全生存期間(OS)に関して有益性をもたらし、安全性プロファイルは既報の当レジメンや類似の併用療法とほぼ同様だが、治療関連死が多いことが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJ. Randolph Hecht氏らSTELLAR-303 study investigatorsによる第III相試験「STELLAR-303」において示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年10月20日号で発表された。

がん治療の中断・中止を防ぐ血圧管理方法とは/日本腫瘍循環器学会

 第8回日本腫瘍循環器学会学術集会が2025年10月25、26日に開催された。本大会長を務めた向井 幹夫氏(大阪がん循環器病予防センター 副所長)が日本高血圧学会合同シンポジウム「Onco-Hypertensionと腫瘍循環器の新たな関係」において、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の第10章「他疾患やライフステージを考慮した対応」を抜粋し、がん治療の中断・中止を防ぐための高血圧治療実践法について解説した。  がんと高血圧はリスク因子も発症因子も共通している。たとえば、リスク因子には加齢、喫煙、運動不足、肥満、糖尿病が挙げられ、発症因子には血管内皮障害、酸化ストレス、炎症などが挙げられる。そして、高血圧はがん治療に関連した心血管毒性として、心不全や血栓症などに並んで高率に出現するため、血圧管理はがん治療の継続を判断するうえでも非常に重要な評価ポイントとなる。また、高血圧が起因するがんもあり、腎細胞がんや大腸がんが有名であるが、近年では利尿薬による皮膚がんリスクが報告されている。

オピオイド鎮痛薬のトラマドール、有効性と安全性に疑問

 がんによる疼痛や慢性疼痛に対して広く処方されている弱オピオイド鎮痛薬(以下、オピオイド)のトラマドールは、期待されたほどの効果はないことが、新たな研究で明らかにされた。19件の研究を対象にしたメタアナリシスの結果、トラマドールは中等度から重度の疼痛をほとんど軽減しないことが示されたという。コペンハーゲン大学(デンマーク)附属のリグスホスピタレットのJehad Ahmad Barakji氏らによるこの研究結果は、「BMJ Evidence Based Medicine」に10月7日掲載された。研究グループは、「トラマドールの使用は最小限に抑える必要があり、それを推奨するガイドラインを再検討する必要もある」と結論付けている。

ホルモン療法とニラパリブの併用が進行前立腺がんに有効

 がんの標的治療薬であるニラパリブ(商品名ゼジューラ)をホルモン療法に追加することで、前立腺がんの増殖リスクが低下し、症状の進行を遅らせることができる可能性が、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)がん研究所腫瘍内科部門長のGerhardt Attard氏らが実施した臨床試験で示された。詳細は、「Nature Medicine」に10月7日掲載された。  Attard氏は、「現行の標準治療は、進行前立腺がん患者の大多数にとって極めて有効性が高い。しかし、少数ではあるが臨床的には重要な割合の患者では限定的な効果しか得られていない」と指摘し、「ニラパリブを併用することでがんの再発を遅らせ、余命の延長も期待できる」とUCLのニュースリリースの中で述べている。

EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のOS最終解析(FLAURA2)/NEJM

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)オシメルチニブの単剤療法と比較して白金製剤とペメトレキセドによる化学療法+オシメルチニブの併用療法は、全生存期間(OS)を有意に延長させ、Grade3以上の可逆的な有害事象のリスク増加と関連していた。米国・ダナファーバーがん研究所のPasi A. Janne氏らFLAURA2 Investigatorsが、「FLAURA2試験」の主な副次エンドポイントの解析において、OSの事前に計画された最終解析の結果を報告した。同試験の主解析では、化学療法併用群において主要エンドポイントである無増悪生存期間(PFS)が有意に優れることが示されていた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79、p<0.001)。NEJM誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。

筋層浸潤性膀胱がんにおけるデュルバルマブの役割:NIAGARA試験からの展望

 膀胱がんは筋層に浸潤すると予後不良となる。筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の治療にはアンメットニーズが多く、新たな治療戦略が求められる。そのような中、デュルバルマブのMIBCにおける術前・術後補助療法が承認された。都内で開催されたアストラゼネカのプレスセミナーで、富山大学の北村 寛氏がMIBC治療の現状と当該療法の可能性について紹介した。  膀胱がんの5年生存割合は、筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)では70~80%であるのに対して、MIBCでは20~30%と低い。また、病期が進行するにつれ予後不良となり、II期のMIBCでは46.6%、III期では35.7%、IV期では16.6%である。

45〜49歳の成人において局所限局期大腸がんの罹患率が上昇

 45〜49歳の成人において、局所限局期の大腸がん(CRC)の罹患率が2019年から2022年にかけて上昇し、CRCスクリーニング検査の受診率も2019年から2023年にかけて上昇したことを示す2報の研究結果が、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月4日掲載された。  米国がん協会(ACS)のElizabeth J. Schafer氏らは、55歳未満の成人(合計21万9,373人)におけるCRC罹患率の傾向を検討した。解析の結果、20〜39歳のCRC罹患率は、2004年以降一貫して年率1.6%で上昇し、40〜44歳および50〜54歳では、2012年以降年率2.0%~2.6%で上昇していた。45〜49歳では、2004〜2019年は年率1.1%増であったが、2019〜2022年は年率12.0%増に加速していた。この急増は局所限局期での診断の増加が主因であり、その罹患率は2019年が10万人当たり9.4人、2021年には11.7人、2022年には17.5人へと増加した。

HER2陽性尿路上皮がん、disitamab vedotin+toripalimabがPFS・OS改善(RC48-C016)/NEJM

 未治療のHER2陽性局所進行または転移のある尿路上皮がん患者において、HER2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるdisitamab vedotinと抗PD-1抗体toripalimabの併用療法は、化学療法と比較して主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に延長することが認められた。中国・Peking University Cancer Hospital and InstituteのXinan Sheng氏らRC48-C016 Trial Investigatorsが、中国の72施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「RC48-C016試験」の事前に規定されたPFS解析およびOS中間解析の結果を報告した。HER2を標的とするADCの単剤療法は、化学療法後のHER2陽性尿路上皮がんに対する有効な治療選択肢として確立されている。disitamab vedotinは、単剤療法として、またPD-1を標的とした免疫療法との併用において、有望な抗腫瘍活性と安全性が示されていた。NEJM誌オンライン版2025年10月19日号掲載の報告。

75歳以上の乳がん検診は過剰診断か~日本人での検討

 乳がん検診は死亡率低下と関連する可能性があるが、高齢者においては過剰診断が懸念される。今回、石巻赤十字病院の佐藤 馨氏らが、高齢化地域における75歳以上の女性において検討した結果、検診と死亡率低下に有意な関連はみられなかったものの、検診群において乳がんによる死亡は認められなかった。Preventive Medicine Reports誌2025年10月9日号に掲載。  本研究では、石巻赤十字病院で乳がんと診断された75~98歳(中央値81歳)の女性289例(2011~20年)を後ろ向きに解析した。患者を検診群(40歳以上の全女性を対象とした2年ごとの全国規模集団ベース乳がんスクリーニングで診断)と非検診群(症状で診断もしくはCTなどの他疾患の画像検査で偶然発見)に分類した。主要評価項目は全死亡率であった。比較にはMann-Whitney のU検定、カイ二乗検定、Fisherの正確確率検定、生存率はKaplan-Meier法、log-rank検定、予後因子はCox比例ハザードモデルで解析した。

がん治療のICI、コロナワクチン接種でOS改善か/ESMO2025

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、多くのがん患者の生存期間を延長するが、抗腫瘍免疫応答が抑制されている患者への効果は限定的である。現在、個別化mRNAがんワクチンが開発されており、ICIへの感受性を高めることが知られているが、製造のコストや時間の課題がある。そのようななか、非腫瘍関連抗原をコードするmRNAワクチンも抗腫瘍免疫を誘導するという発見が報告されている。そこで、Adam J. Grippin氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンもICIへの感受性を高めるという仮説を立て、後ろ向き研究を実施した。