腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

手術・TEER非適応の僧帽弁逆流症、経カテーテル僧帽弁置換術が有効/Lancet

 米国・Mayo Clinic College of Medicine and ScienceのMayra E. Guerrero氏らENCIRCLE Trial Executive Committee and Study Investigatorsは、国際的なpivotal試験「ENCIRCLE試験」において、外科手術および経カテーテル的edge-to-edge修復術(TEER)の適応とならない僧帽弁逆流症患者では、SAPIEN M3システム(Edwards Lifesciences製)を用いた新規の経皮・経中隔的なカテーテル僧帽弁置換術(TMVR)により、僧帽弁逆流が効果的に軽減し、合併症や死亡の割合も低下することを示した。Lancet誌オンライン版2025年10月27日号掲載の報告。  ENCIRCLE試験は、6ヵ国(米国、カナダ、英国、オランダ、イスラエル、オーストラリア)の56施設で実施した前向き単群試験であり、2020年6月~2023年10月に、外科手術およびTEERが適応でない、症候性の中等度~重度、または重度の僧帽弁逆流症の成人(年齢18歳以上)患者を登録した(Edwards Lifesciencesの助成を受けた)。

がん研有明病院、病床数を削減し、外来機能を拡充

 公益財団法人がん研究会 有明病院(東京都江東区、病床数644床)は、「病院機能・フロア見直しプロジェクト」の第1弾として、5階西病棟の42床を閉鎖し、外来治療センターを移転・拡充した。2025年9月に新センターが稼働を開始し、10月20日には報道向け説明会・見学会が行われた。  説明会では渡邊 雅之副院長が登壇し、プロジェクトの背景を説明した。「診療報酬の伸び悩み、人件費・薬剤費の上昇などにより、2024年度は4分の3の病院が医業利益で赤字となっている。当院においてもコロナ禍から順調に収支を回復してきたものの、ここ数年の人件費、薬剤・材料費の高騰が大きく響き、2025年度は赤字の見込みとなっている」とした。

高リスク筋層非浸潤性膀胱がん、デュルバルマブ併用でDFS改善(POTOMAC)/Lancet

 BCG未治療の高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)患者において、BCG導入・維持療法+1年間のデュルバルマブ(抗PD-L1抗体)の併用は標準治療であるBCG導入・維持療法単独と比較して、無病生存期間(DFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらし、安全性プロファイルは管理可能であることが、ドイツ・Charite Universitatsmedizin BerlinのMaria De Santis氏らPOTOMAC Investigatorsが行った第III相試験「POTOMAC試験」の結果で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年11月8日号に掲載された。  POTOMAC試験は、日本を含む12ヵ国116施設で実施した非盲検無作為化試験であり、2018年6月~2020年10月に参加者の適格性を評価した(AstraZenecaの助成を受けた)。

小細胞肺がん2次治療、タルラタマブの安全性(DeLLphi-304)/ESMO2025

 DLL3を標的とするBiTE製剤タルラタマブの小細胞肺がん(SCLC)2次治療DeLLphi-304試験における、有害事象(AE)の追加分析結果が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)で発表された。 ・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験 ・対象:プラチナ製剤を含む化学療法±抗PD-1/PD-L1抗体薬による1次治療を受けたSCLC患者(無症候性の脳転移は治療歴を問わず許容) ・試験群(タルラタマブ群):タルラタマブ(1日目に1mg、8、15日目に10mgを点滴静注し、以降は2週間間隔で10mgを点滴静注) 254例 ・対照群(化学療法群):化学療法(トポテカン、アムルビシン、lurbinectedinのいずれか)※ 255例 ・評価項目: [主要評価項目]OS [主要な副次評価項目]PFS、患者報告アウトカム [副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など ※:日本はアムルビシン

生化学的再発前立腺がん、エンザルタミド併用でOS改善(EMBARK)/NEJM

 去勢感受性前立腺がんで生化学的再発リスクが高く、従来型の画像検査で転移の証拠を認めない患者において、エンザルタミド+リュープロレリン併用療法はリュープロレリン単独療法と比較して、8年後の全生存期間(OS)を有意に延長し、新たな安全性シグナルの発現は認められなかった。また、エンザルタミド単独療法はリュープロレリン単独療法と比較して、OSに関する優越性は認められなかった。米国・START CarolinasのNeal D. Shore氏らが、第III相試験「EMBARK試験」の最終解析の結果を発表した。すでに、エンザルタミド+リュープロレリン併用療法およびエンザルタミド単独療法は、リュープロレリン単独療法と比較して、無転移生存期間(主要評価項目)を有意に延長し、前立腺特異抗原(PSA)進行、新たながん治療薬の使用開始、遠隔転移、症候性の病勢進行までの期間も有意に優れることが報告されている。今回は、主な副次評価項目であるOSと共に長期の安全性の最終解析の結果が公表された。NEJM誌オンライン版2025年10月19日号掲載の報告。

FLT3遺伝子変異陽性AMLに対する治療戦略/日本血液学会

 2025年10月10~12日に第87回日本血液学会学術集会が兵庫県にて開催された。10月10日、清井 仁氏(名古屋大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学)を座長に行われた会長シンポジウムでは、「FLT3遺伝子変異陽性急性骨髄性白血病(AML)に対する治療戦略」と題して、FLT3変異陽性AMLの管理についてMark James Levis氏(米国・Johns Hopkins University)、AMLにおけるFLT3阻害薬耐性に関する理解の進展についてはCatherine Smith氏(米国・University of California, San Francisco)から講演が行われた。

CLL治療のアンメットニーズを埋めるピルトブルチニブ

 慢性リンパ性白血病(CLL)の治療において、初回治療の共有結合型BTK阻害薬に無効になった場合、これまでBCL2阻害薬ベネトクラクスとリツキシマブの併用療法が唯一の選択肢であり、この併用療法が無効の場合の対応が課題であった。そのような中、2025年9月に非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブ(商品名:ジャイパーカ)が再発/難治性のCLLに承認され、3次治療はもちろん、2次治療で本剤とベネトクラクス+リツキシマブのどちらかを選択することが可能になった。今回の承認に際し、10月30日に日本新薬によるメディアセミナーが開催され、新潟薬科大学医療技術学部長の青木 定夫氏がCLL治療における最新知見とアンメットニーズ、新たな選択肢であるピルトブルチニブについて講演した。

HER2陽性進行乳がんの1次治療、T-DXd+ペルツズマブvs.THP/NEJM

 HER2陽性の進行または転移を有する乳がんの1次治療として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブの併用療法は、標準治療のタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(THP)併用療法と比べて進行または死亡のリスクが有意に低く、新たな安全性に関する懸念はみられなかった。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏らDESTINY-Breast09 Trial Investigatorsが、第III相の「DESTINY-Breast09試験」の中間解析の結果を報告した。T-DXdは、既治療のHER2陽性の進行または転移を有する乳がん患者に対する有効性が示されているが、未治療の同患者に対するT-DXdの有効性および安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2025年10月29日号掲載の報告。

がんと心房細動、合併メカニズムと臨床転帰/日本腫瘍循環器学会

 がん患者では心房細動(AF)が高率に発症する。がん患者の生命予後が改善していく中、その病態解明と適切な管理は喫緊の課題となっている。第8回日本腫瘍循環器学会学術集会では、がん患者におけるAFの発症メカニズムおよび活動性がん合併AF患者の管理について最新の大規模臨床研究の知見も含め紹介された。  東京科学大学の笹野 哲郎氏はがん患者におけるAF発症について、がん治療およびがん自体との関連を紹介した。  肺がんや食道がんに対する心臓近傍への手術や放射線照射では、術後炎症や心筋の線維化がAF発症と関連している。AF発症が高率な薬剤としてドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬剤やイブルチニブなどのBTK阻害薬が代表的である。これらの抗がん剤は心筋細胞の脱落や線維化など構造的な変化と電気生理的な変化によってAFを発症する。

既治療の非MSI-H/dMMR大腸がん、zanzalintinib+アテゾリズマブがOS改善(STELLAR-303)/Lancet

 再発・難治性の転移を有する大腸がん(高頻度マイクロサテライト不安定性[MSI-H]またはミスマッチ修復機構欠損[dMMR]を持たない)では、免疫療法ベースのレジメンであるzanzalintinib(TAMキナーゼ[TYRO3、AXL、MER]、MET、VEGF受容体などの複数のキナーゼの低分子阻害薬)+アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)によるchemotherapy-freeの併用治療は、標準治療のレゴラフェニブと比較して、肝転移の有無にかかわらず全生存期間(OS)に関して有益性をもたらし、安全性プロファイルは既報の当レジメンや類似の併用療法とほぼ同様だが、治療関連死が多いことが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJ. Randolph Hecht氏らSTELLAR-303 study investigatorsによる第III相試験「STELLAR-303」において示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年10月20日号で発表された。