腫瘍科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

悪性黒色腫、個人情報を共有せずにAI診断は可能か?

 悪性黒色腫の人工知能(AI)診断モデルの開発には通常、大規模かつ集中化されたデータセットが必要であり、各施設による患者データの提供が求められ、これによりプライバシーに関する重大な懸念が生じている。そこで、ドイツがん研究センター(DKFZ)のSarah Haggenmuller氏らは、こうした懸念の払拭が可能とされる新たな機械学習の連合学習(federated learning)アプローチを取り入れた検討を行った。その結果、分散化された状態でのデータセット上で、浸潤性悪性黒色腫と母斑の分類が可能であることが示唆された。結果を踏まえて著者は、「連合学習は、悪性黒色腫のAI診断におけるプライバシー保護を改善すると同時に、機関や国をまたいだコラボレーションの促進が可能である。さらに、デジタルパソロジーやその他の画像分類タスクにも拡張できるだろう」と述べている。JAMA Dermatology誌2024年3月号掲載の報告。

HER2+転移乳がん、T-DXd後のtucatinibレジメンの有用性は?

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の治療歴のあるHER2陽性の転移乳がん患者(活動性脳転移例を含む)の後治療において、経口チロシンキナーゼ阻害薬tucatinibとトラスツズマブおよびカペシタビンの併用(TTC療法)が、臨床的に有意義な転帰と関連していたことを、フランス・Institut de Cancerologie de l'OuestのJean-Sebastien Frenel氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年4月1日号掲載の報告。  研究グループは、T-DXdの治療歴のあるHER2陽性の転移乳がん患者におけるTTC療法後の転帰を調査するためにコホート研究を実施した。対象は、2020年8月1日~2022年12月31日にフランスのがんセンター12施設でT-DXdによる治療を受けた転移乳がん患者全例であった。tucatinib(1日2回300mgを経口投与)とトラスツズマブ(21日ごとに6mg/kgを静脈内投与)およびカペシタビン(21日サイクルの1~14日目に1日2回1,000mg/m2を経口投与)を併用した。主要評価項目は、RECIST v1.1に基づく無増悪生存期間(PFS)、次治療までの期間(TTNT)、全奏効率(ORR)、全生存期間(OS)であった。

超音波とMRIによる新治療法が前立腺がん治療に革命を起こす?

 従来の放射線療法と手術ではなく、MRIと超音波を用いた侵襲性の極めて低い新たな治療法(タルサ治療)が、前立腺がんを効果的に治療することを示した研究結果が報告された。この治療を受けた患者の76%は、1年後の追跡生検でがん細胞が見つからなかったという。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイビッド・ゲフィン医学部放射線科、泌尿器科、外科分野教授のSteven Raman氏らによるこの研究結果は、インターベンショナルラジオロジー学会(SIR 2024、3月23〜28日、米ソルトレークシティ)で発表された。

センチネルリンパ節転移乳がん、腋窩リンパ節郭清は省略可?/NEJM

 臨床的リンパ節転移陰性乳がんで、センチネルリンパ節に肉眼的転移を有する患者では、センチネルリンパ節生検のみを行い、完全腋窩リンパ節郭清を省略した場合、センチネルリンパ節生検+完全腋窩リンパ節郭清に対して、5年無再発生存率(RFS)が非劣性であることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJana de Bonifaceらが実施した「SENOMAC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年4月4日号で報告された。  SENOMAC試験は、5ヵ国(スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、イタリア)から67病院が参加した第III相無作為化非劣性試験であり、2015年1月~2021年12月に患者の登録を行った(Swedish Research Councilなどの助成を受けた)。

口腔がんの非侵襲的な検査法の開発に成功

 口腔病変の検体を非侵襲的に採取し、そこに含まれる2種類のタンパク質の比率をもとにスコアを算出することで、口腔がんを迅速に診断できるようになる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学生物科学部門のAaron Weinberg氏らによるこの研究結果は、「Cell Reports Medicine」に3月4日掲載された。  現行の口腔がんの生検は、歯科医やその他の専門医が口の中の疑わしい病変部位の組織を採取し、それを研究所に送って検査してもらうのが通常のプロセスである。しかし、この方法は、侵襲的である上に費用もかかる。

早期TN乳がん、TIL高値ほど予後良好/JAMA

 術前または術後補助化学療法歴のない早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、乳がん組織中の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)量が高値ほど、有意に生存率が良好であることを、米国・メイヨー・クリニックのRoberto A. Leon-Ferre氏らが後ろ向きプール解析で明らかにした。乳がん組織中のTIL量と早期TNBC患者のがん再発および死亡との関連は不明であった。著者は、「今回の結果は、乳がん組織中のTIL量が早期TNBC患者の予後因子であることを示すものである」とまとめている。JAMA誌2024年4月2日号掲載の報告。

肺がん化学放射線療法の症例データベース検索システムを共同開発/富士フイルム・AZ

 富士フイルムとアストラゼネカは、切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線療法(CRT)の過去症例を検索できるシステムを共同開発した。富士フイルムは、この検索機能を3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT Ver7.0」にオプション機能として搭載した。SYNAPSE VINCENT Ver7.0は富士フイルムメディカルを通じて4月10日より提供を開始した。  今回開発したシステムは両社が2021年から共同で開発を進めてきた医療情報システムで、切除不能Stage III NSCLCに対するCRT症例の検索に加え、放射線治療計画の表示が可能。アストラゼネカが14の医療機関からNSCLCに対するCRT適用例1,900症例の放射線治療計画を収集し、富士フイルムがデータベース化および検索機能の開発を行った。

HER2+早期乳がん、PET pCR例の化学療法は省略可?(PHERGain)/Lancet

 HER2陽性の早期乳がん患者において、18F-FDGを用いたPET検査に基づく病理学的完全奏効(pCR)を評価指標とする、化学療法を追加しないトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法でのde-escalation戦略は、3年無浸潤疾患生存(iDFS)率に優れることが示された。スペイン・International Breast Cancer CenterのJose Manuel Perez-Garcia氏らが、第II相の無作為化非盲検試験「PHERGain試験」の結果を報告した。PHERGain試験は、HER2陽性の早期乳がん患者において、化学療法を追加しないトラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法での治療の実現可能性、安全性、有効性を評価するための試験。結果を踏まえて著者は、「この戦略により、HER2陽性の早期乳がん患者の約3分の1が、化学療法を安全に省略可能であることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年4月3日号掲載の報告。

マルチキナーゼ阻害薬・スニチニブの水平展開-難治性褐色細胞腫への応用 PhaseII試験が、Lancet誌に掲載されました!?(解説:石上友章氏)

 この論文は、進行性の転移性褐色細胞腫とパラガングリオーマの患者を対象にした初の無作為化比較試験の結果を報告している。この分野では以前に無作為化比較試験が行われたことがなく、スニチニブの有用性に関する臨床前および初期臨床データが示され、スニチニブの安全性と有効性を評価することを目的としている。スニチニブは、いわゆるマルチキナーゼ阻害薬であり、本邦ではスーテントの商品名で、イマチニブ抵抗性の消化管間質腫瘍、根治切除不能または転移性の腎細胞がん、膵神経内分泌腫瘍の適応を取得している。

再発高リスクHR+/HER2-乳がんに対する術後ribociclib療法(解説:下村昭彦氏)

NEJM誌2024年3月21日号に、再発高リスクのホルモン受容体陽性HER2-乳がんの術後内分泌療法に対するribociclibの上乗せを検証した「NATALEE試験」の結果が公表された。本試験の結果は2023年のASCOで発表され、さまざまなところで議論になっている。残念ながら日本では第I相試験で標準用量の半分でしか忍容性が確認されなかったため、ribociclibは国内では使用できない。NATALEE試験ではStageII~IIIの再発高リスクと考えられる集団に対して試験が行われ、5年間の内分泌療法にribociclibを3年(!)追加することで、3年無浸潤疾患生存率(IDFS)が90.4% vs.87.1%とribociclib群で3.3%と統計学的有意に良好であった。