日本発エビデンス|page:94

わが国の高齢胃がん患者に対する内視鏡的粘膜下層剥離術、医療経済的な効果は?

 高齢の胃がん患者に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の医療経済的な効果についての情報は、現在ほとんどない。産業医科大学の村田 篤彦氏らは、全国の管理データベースを用いて、高齢患者におけるESDの医療経済的な効果を調査した。その結果、胃がんでESDを受けた高齢患者では、非高齢患者と比べて、ESD関連合併症の発症率に差は認められなかったが、在院日数と入院中の医療費の有意な増加が示された。Journal of Digestive Diseases誌オンライン版2013年10月16日版に掲載。

自殺リスクが低い食事パターン~日本人での研究

 食事パターンはうつ病と関連するが、自殺リスクとの関連を調べた研究はまだない。JPHC研究(Japan Public Health Center-based Prospective Study)グループの南里 明子氏らは、食事パターンと自殺による死亡との関連を前向きに調査し、British Journal of Psychiatry誌オンライン版2013年10月10日号に報告した。本研究では、野菜、果物、いも類、大豆製品、キノコ類、海藻、魚介類の摂取量が多い食事が、自殺による死亡リスクの低下と関連している可能性が示唆された。

果物や野菜の摂取量と乳がんリスクの関連~日本人女性での前向き研究

 果物や野菜の乳がんリスクへの影響について、日本人での疫学データは少ない。東京保健医療大学の鈴木 礼子氏らは、日本人女性4万7,289人における果物や野菜の摂取量と乳がん罹患リスクの関連を評価した。その結果、果物・野菜全体の摂取量と乳がんリスクとの間に全体的な関連はないが、閉経前女性においてアブラナ科の野菜の摂取量が乳がんリスク低下と有意に関連していたことを報告した。Cancer Causes Control誌オンライン版2013年10月4日号に掲載。

変形性膝関節症の疼痛構成要素、重症化に伴い変化

 変形性膝関節症(膝OA)の疼痛は、炎症および機械的負荷と関連していることが示唆されていたが、順天堂東京江東高齢者医療センターの清村幸雄氏らは、疾患の重症度別に検討し、初期膝OAの疼痛には滑膜炎を反映している血清インターロイキン(sIL)- 6濃度が、進行期の疼痛は下肢内反アライメントが関与していることを明らかにした。Osteoarthritis and Cartilage誌2013年9月号の掲載報告。

日本の統合失調症入院患者は低栄養状態:新潟大学

 欧米では、健常者と比較して、抗精神病薬治療を受けている統合失調症患者における肥満やメタボリック症候群の有病率が高い。しかし日本では、そもそも一般集団の過体重および肥満の有病率が、欧米と比較してかなり低い。新潟大学の鈴木雄太郎氏らは、日本の統合失調症入院患者について調査を行い、低体重の患者の割合が一般集団と比較して高いことを明らかにした。結果を受けて著者は「入院患者の身体的健康について、診療でより考慮する必要がある」と報告している。Psychiatry and Clinical Neurosciences(PCN)誌オンライン版2013年9月2日号の掲載報告。

起床から喫煙までの時間が短いほど肺がんリスク高:愛知県がんセンター

 喫煙は肺がんの主な原因である。一方、ニコチン依存の明確な指標である、起床から最初の喫煙までの時間(TTFC:time to first cigarette)と肺がんとの関連性について利用可能な情報はほとんどない。愛知県がんセンター研究所の伊藤 秀美氏らは、ケースコントロール研究によって、TTFCによって示されるニコチン依存が肺がんリスク増加に関連することを報告した。Annals of Oncology誌オンライン版2013年9月6日号に掲載。

進化する日本のC型肝炎治療-新規DAAs「シメプレビル」の有効性

 未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型1感染患者に対するシメプレビル/ペグインターフェロン(PegIFN)α-2a/リバビリン(RBV)の3剤併用療法は、PegIFNα-2a/RBVの2剤併用療法と比較して強力な抗ウイルス活性を示し、持続性ウイルス応答率(SVR)が有意に高いことが、関西労災病院 林 紀夫氏らのDRAGON studyで明らかになった。重篤な副作用も認めず、治療期間も大幅に短縮されるため、高齢者を含めた多くの患者に有用であると考えられる。Journal of gastroenterology誌オンライン版9月5日号の報告。

ドパミンD2受容体占有率が服薬に影響?:慶應義塾大学

 慶應義塾大学精神・神経科学教室の竹内 啓善氏らは、Clinical Antipsychotic Trials in Intervention Effectiveness(CATIE)のデータを基に、非定型抗精神病薬の血漿中濃度から推定されるドパミンD2受容体の占有率と患者の服薬態度との関連について検討した。その結果、非定型抗精神病薬の種類により傾向は異なるものの、ドパミンD2受容体占有率が統合失調症患者の服薬態度に影響を及ぼす可能性を示唆した。Schizophrenia Research誌オンライン版2013年9月9日号の掲載報告。

逆流性食道炎、PPI治療を1年以上行っても約40%は寛解せず

 逆流性食道炎(RE)の主な治療薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)は、平均1.1年投与を継続しても、患者の約40%は内視鏡的に寛解しないことが、大阪医科大学 第二内科の樋口 和秀氏らによる研究で明らかになった。REの治療に際しては、定期的な内視鏡検査を行いながら注意深く経過を観察し、適切にPPI治療を選択する必要があると考えられる。Internal medicine誌オンライン版2013年7月1日号の報告。

小腸用カプセル内視鏡は胃食道病変も見つけられるのか?

 小腸用カプセル内視鏡検査(CE)は、門脈圧亢進症における小腸病変のスクリーニングだけでなく、F2/F3およびLs/Lmの食道静脈瘤、胃体部の門脈圧亢進症性胃症の診断においても信頼性が高いことが、広島大学大学院 消化器・代謝内科の青山 大輝氏らによる研究で明らかになった。Journal of gastroenterology and hepatology誌オンライン版2013年8月23日号の報告。

妊娠線とQOLの意外な関係 ―本当は何がQOLに影響するか―

 妊娠線は明確な発現機序は明らかになっていないが、一度生じると治療は困難で、QOLに影響する。妊娠線の予防のため、保湿剤がよく用いられているが、これまでこうした予防策とQOLの関係については不明のままであった。京都大学の山口 琴美氏らは、妊娠線の予防を実施している中部地方の日本人妊婦を対象に横断調査を行い、保湿の効果とQOLについて評価した。

オランザピン服用患者の一部で認められる糖尿病などの代謝異常、原因が明らかに:京都大学

 オランザピン服用患者の一部で認められる、体重増加を伴わない脂質異常症や糖尿病の原因について、オランザピンがインスリン分泌を制御する膵β細胞のアポトーシスを引き起こしている可能性があることを、京都大学大学院理学研究科教授・森 和俊氏らが明らかにした。Cell Structure and Function誌2013年第2号の掲載報告より。

職業性腰痛の直接医療費は年間800億円超

 作業関連性(職業性)腰痛は労働人口において重大な健康問題であるが、有効な対策を講じるには職業性腰痛の総医療費とその内訳を明らかにする必要がある。しかし、米国を除き、職業性腰痛の経済的負担に関する報告はほとんどない。順天堂大学の伊藤弘明氏らは、わが国における職業性腰痛の直接医療費を算出し、2011年度は821億円にものぼることを明らかにした。著者は「職業性腰痛はわが国に相当な経済的負担をもたらしている」とまとめている。Industrial Health誌オンライン版2013年8月13日の掲載報告。  社会医療診療行為別調査、患者調査、労働力調査、全国健康保険協会、国民健康保険、長寿医療制度等のデータを用い、1日当たりの治療費、すべての原因による腰痛の治療日数、雇用率、職業性腰痛の推定患者数に基づき、2011年、2008年、2005年および2002年における職業性腰痛に要する年間医療費を算出した。

各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学

 臨床使用される抗うつ薬の大半は、シナプス間隙でのモノアミン濃度を急激に上昇させるが、その治療効果のために数週間の投与を必要とする。このように効果が遅発性なのは、セロトニン作動性神経における神経適応変化が緩徐なためと考えられている。京都大学大学院薬学研究科の永安一樹氏らは、抗うつ薬慢性処置のセロトニン遊離への影響について、ラットの縫線核脳切片培養系を用いて調べた。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2013年8月7日号の掲載報告。

母乳での哺乳で学童期の肥満リスクが低下~全国縦断調査データより

 これまでの研究では母乳での哺乳が子供の肥満を予防することが示唆されているが、社会経済的な状況や子供の生活習慣による交絡の可能性があるため、決定的なエビデンスはない。また、これまではほとんどが欧米先進国の子供での研究であったため、他の対象における研究が待たれている。岡山大学の山川路代氏らは、日本における母乳での哺乳と学童期の過体重・肥満との関連について、潜在的な交絡因子を調整して検討し、その結果をJAMA pediatrics誌オンライン版2013年8月12日号に報告した。

セロトニン3受容体、統合失調症の陰性症状改善に期待:藤田保健衛生大学

 統合失調症患者に対する5-HT3受容体拮抗薬による治療成績は、それぞれの無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験の結果により異なっている。藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らは、5-HT3受容体拮抗薬は統合失調症治療に有効であると仮説を立て、検証を行った。Neuromolecular medicine誌オンライン版2013年7月30日号の報告。

脳卒中の死亡率と治療コストは病院規模により異なる

 病院規模と脳卒中患者の転帰の関係は明らかではなく、脳卒中のサブタイプごとの関係はほとんど知られていない。ハーバード大学の津川友介氏らは、病院規模(退院数)と脳卒中の院内死亡率や治療コストとの関連を、国立病院データベースの二次データ分析によって検討した。その結果をMedical care誌2013年9月号に報告した。