降圧薬を開始・追加した高齢者は〇〇に注意?

提供元:ケアネット

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公開日:2024/05/10

 

 高齢者は転倒リスクの1つである起立性低血圧が生じやすい。そこで、米国・Rutgers UniversityのChintan V. Dave氏らの研究チームは、降圧薬が高齢者の骨折リスクへ及ぼす影響を検討した。その結果、降圧薬の開始・追加は骨折や転倒、失神のリスクを上昇させた。本研究結果は、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年4月22日号で報告された。

 研究チームは、2006~19年に長期介護施設へ入所した米国の退役軍人2万9,648人を対象に、target trial emulationの手法を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。50個以上の共変量について1:4の割合で傾向スコアマッチングを行い、降圧薬の開始・追加後30日以内の骨折の発生リスクを評価した。認知症の有無、収縮期血圧(140mmHg以上/未満)、拡張期血圧(80mmHg以上/未満)、降圧薬の使用歴、年齢(80歳以上/未満)別のサブグループ解析も実施した。さらに、入院または救急受診を要する重度の転倒、失神のリスクも評価した。なお、降圧薬の開始・追加は、過去4週間以内に降圧薬を使用していない患者の降圧薬の使用、または過去4週間に使用している降圧薬とは別のクラスの降圧薬の追加と定義した。

 主な結果は以下のとおり。

・100人年当たりの30日以内の骨折の発生率は、対照群が2.2であったのに対し、降圧薬開始・追加群は5.4であり、有意に骨折リスクが高かった(ハザード比[HR]:2.42、95%信頼区間[CI]:1.43~4.08)。
・降圧薬開始・追加群は、対照群と比較して入院または救急受診を要する重度の転倒(HR:1.80、95%CI:1.53~2.13)、失神(同:1.69、1.30~2.19)のリスクが高かった。
・サブグループ解析の結果、認知症あり、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧80mmHg以上、過去4週間以内の降圧薬の使用歴なしの集団において、降圧薬開始・追加による骨折リスクの数値的な上昇がみられた。一方、年齢による差はみられなかった。サブグループ別の対照群に対するHRおよび95%CIは以下のとおり。
 -認知症あり:3.28、1.76~6.10
 -認知症なし:1.61、0.63~4.11
 -収縮期血圧140mmHg以上:3.12、1.71~5.69
 -収縮期血圧140mmHg未満:1.89、1.01~3.53
 -拡張期血圧80mmHg以上:4.41、1.67~11.68
 -拡張期血圧80mmHg未満:1.89、1.01~3.53
 -過去4週間以内の降圧薬の使用歴なし:4.77、1.49~15.32
 -過去4週間以内の降圧薬の使用歴あり:1.27、0.76~2.12
 -80歳以上:2.07、1.08~3.95
 -80歳未満:2.29、1.10~4.79

 本研究結果について、著者らは「降圧薬の開始・追加は、とくに介護施設に入所する高齢者において、骨折リスクを増加させる可能性がある。このことから、降圧薬開始後という骨折リスクの高い期間は、注意深く観察することが勧められる」とまとめた。

(ケアネット 佐藤 亮)