各抗うつ薬のセロトニン再取り込み阻害作用の違いは:京都大学

提供元:ケアネット

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公開日:2013/08/28

 

 臨床使用される抗うつ薬の大半は、シナプス間隙でのモノアミン濃度を急激に上昇させるが、その治療効果のために数週間の投与を必要とする。このように効果が遅発性なのは、セロトニン作動性神経における神経適応変化が緩徐なためと考えられている。京都大学大学院薬学研究科の永安一樹氏らは、抗うつ薬慢性処置のセロトニン遊離への影響について、ラットの縫線核脳切片培養系を用いて調べた。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2013年8月7日号の掲載報告。

 著者らは先の研究において、多量のセロトニン作動性神経を含むラット縫線核脳切片培養系に、選択的セロトニン(5-HT)再取り込み阻害薬(シタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン)を持続的に曝露すると、セロトニンの開口放出の増大が生じることを報告した。そこで今回、まだ明らかになっていない他の抗うつ薬における同様の作用について、2つの三環系抗うつ薬(イミプラミン、デシプラミン)、1つの四環系抗抑うつ薬(ミアンセリン)、3つのセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(ミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラファキシン)、1つのノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(ミルタザピン)について検討した。

 主な結果は以下のとおり。

・9つの抗うつ薬のうち7つについて、0.1~100μmの持続的曝露により、細胞外セロトニン濃度の上昇が認められた。
・その作用強度の順位は、ミルナシプラン>デュロキセチン>シタロプラム>ベンラファキシン>イミプラミン>フルオキセチン>デシプラミンであった。
・ミルタザピン、ミアンセリンは少しも上昇しなかった。
・持続的曝露による作用増強が最も大きかったミルナシプランは、α1-アドレナリン受容体遮断薬(ベノキサチアン)によって部分的に減弱された。一方、デュロキセチン、ベンラファキシン、シタロプラムの伝達増大は影響を受けなかった。
・以上の結果から、5-HTトランスポーターの阻害が、セロトニン遊離増強には必要であることが示唆された。また、ミルナシプランによる増強は、α1-アドレナリン受容体の活性化を伴うことが明らかになった。

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(ケアネット)