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脳心血管病予防策は40歳からと心得るべき/脳心血管病協議会

 日本動脈硬化学会を含む16学会で作成した『脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート2019』が日本内科学会雑誌第108巻第5号において発表された。2015年に初版が発行されてから4年ぶりの改訂となる今回のリスク管理チャートには、日本動脈硬化学会を含む14学会における最新版のガイドラインが反映されている。この改訂にあたり、2019年5月26日、寺本 民生氏(帝京大学理事・臨床研究センター長)と神﨑 恒一氏(杏林大学医学部高齢医学 教授)が主な改訂ポイントを講演した(脳心血管病協議会主催)。

潰瘍性大腸炎治療の高度化に対応する方法とは

 2015~16年に行われた全国疫学調査によると、潰瘍性大腸炎の全国有病者数は推計22万人であり、クローン病(推計7.1万人)と合わせると29万人を超える。炎症性腸疾患(IBD)は、もはや“common disease”と言えるのかもしれない。  2019年5月、ファイザー株式会社が「潰瘍性大腸炎とチーム医療の重要性」をテーマに、都内にてセミナーを開催した。併せて、新しくオープンした潰瘍性大腸炎に関する情報提供サイト「UC tomorrow」の紹介が行われた。  セミナーでは、伊藤 裕章氏(医療法人錦秀会 インフュージョンクリニック 院長)が「潰瘍性大腸炎診療の歩み」について講演を行った。

せん妄や認知症と院内死亡率との関連

 大規模多施設共同研究において、認知障害の有病率および院内死亡率に対する影響について検討されたエビデンスはほとんどない。イタリア・Fondazione Camplani HospitalのAlessandro Morandi氏らは、認知障害、認知症、せん妄の有病率および院内死亡率への影響を検討するため、高齢入院患者を対象とした大規模多施設共同試験「Italian Delirium Day:2016年」を行った。The Journals of Gerontology. Series A, Biological Sciences and Medical Sciences誌2019年5月16日号の報告。

MET阻害薬capmatinibのMETΔex14変異NSCLCに対する効果(GEOMETRY mono1)/ASCO2019

 METエクソン14スキッピング変異(METΔex14)は非小細胞肺がん(NSCLC)の3~4%にみられ、予後不良かつ標準治療に奏効しにくいとされる。capmatinibは最も強力なMET阻害薬である。第II相多施設マルチコホートGEOMETRY mono1試験の中間解析では、治療ラインにかかわらずMETΔex14変異を有する進行NSCLC患者に深い奏効を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)にて発表された。

BRCA変異膵がんの維持治療におけるオラパリブの効果(POLO)/ASCO2019

 現在なお固形がんの中では最も5年生存率が低いのが膵臓がんであり、また治療薬の選択肢が少ないという厳しい現実が横たわっている。しかし、近年、PARP阻害薬が一部の膵臓がんに有効との報告が相次いでいる。  そうしたPARP阻害薬の1つオラパリブが生殖細胞系BRCA(gBRCA)変異を持つ転移のある膵臓がんの1次治療後の維持療法として無増悪生存期間(PFS)を有意に延長することが明らかになった。米シカゴ大学のHedy L. Kindler 氏らが、gBRCA変異陽性進行膵臓がんの1次治療のプラチナ製剤で増悪しなかった患者での維持療法としてのオラパリブの有効性を検討したプラセボ対照二重盲検無作為化比較第III相POLO試験の結果として米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。

ペメトレキセド+シスプラチンのNSCLC術後アジュバントにおける可能性(JIPANG)/ASCO2019

 非小細胞肺がん(NCSLC)の術後アジュバントのプラチナベース化学療法においては、どの組み合わせが最も効果的かは明らかではない。静岡県立静岡がんセンターの釼持 広知氏らは、完全切除非扁平上皮NSCLCの術後補助療法において、ペメトレキセド+シスプラチン(CDDP)とビノレルビン(VNR)+CDDPを比較する無作為化第III相JIPANG Studyを実施。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)のOral Sessionにおいて、その結果を発表した。

てんかんや統合失調症患者の早期死亡率~コホート研究

 デンマーク・オーフス大学のKatrine M. Andersen氏らは、てんかんおよび統合失調症患者の死亡率を、絶対的および相対的な尺度によって決定するための検討を行った。Epilepsia誌オンライン版2019年5月11日号の報告。  本研究は、1960~87年にデンマークで生まれ、25歳の誕生日時点でデンマークに居住していた住民を対象とした集団ベース全国規模コホート研究である。25歳以前にてんかんおよび統合失調症と診断された患者を特定し、死亡または移住について2012年までフォローアップを行った。主要アウトカムは、全死亡率とした。分析には、Cox回帰を用いた。

日本人肺がんのオシメルチニブ1次治療耐性を探る/ASCO2019

 オシメルチニブはEGFR変異非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において重要な選択肢である。しかし、同薬の耐性機構に対する報告は少ない。近畿中央呼吸器センターの田宮 朗裕氏らは、日本人NSCLC患者におけるオシメルチニブ1次治療の耐性機構を明らかにするため前向き観察研究を開始する。試験の概要を米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)にて発表した。

腎細胞がんへのペムブロリズマブ+アキシチニブ、IMDC分類によらずベネフィット(KEYNOTE-426)/ASCO2019

 進行または転移を有する腎細胞がん(mRCC)の1次治療における、抗PD-1抗体ペムブロリズマブとチロシンキナーゼ阻害薬アキシチニブの併用療法を評価した第III相試験KEYNOTE-426のサブグループ解析から、IMDC分類によらず、また予後不良とされる肉腫様変化を有する患者においても、併用療法のベネフィットが示された。米国・クリーブランドクリニックのBrian I. Rini氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で発表した。なお、本併用療法は同試験の結果に基づき、2019年4月にFDAから承認を受けている。

かかりつけ医のための適正処方の手引き(糖尿病)が完成/日本医師会

 2019年6月4日、日本医師会の江澤 和彦氏(常任理事)が、『超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き(3)糖尿病』の完成を記者会見で発表した。 厚生労働省から発表された平成28年国民健康・栄養調査結果の概要によれば「糖尿病が強く疑われる者」は約1,000万人と推定され、その中で、65歳以上の高齢者が占める割合は約60%以上となっている。今後も高齢化に伴い65歳以上の糖尿病患者の増加が予想される。  高齢者糖尿病では、一般的に老化の特徴としての身体機能、認知機能などの個人差が大きくなる。また、75歳以上の高齢糖尿病患者ではとくに認知機能障害、ADL低下などの老年症候群や重症低血糖、脳卒中の合併症などを起こしやすいと言われている。  本手引きでは、75歳以上の高齢者と老年症候群を合併した65歳から74歳の前期高齢者を「高齢者糖尿病」と想定し、日本老年医学会の協力により作成された。

うつ病や不安と居住地の標高との関連

 いくつかの研究で、居住地の標高が高くなるとうつ病や自殺のリスクが増加すると示唆されているが、標高の変化によるこれらのリスクの変動を評価した研究は多くない。米国・ユタ大学のBrent M. Kious氏らは、医学生を対象に、うつ病や不安と居住地の標高との関連について検討を行った。International Review of Psychiatry誌オンライン版2019年5月14日号の報告。

ペムブロリズマブのNSCLC5年生存、未治療患者で23%(KEYNOTE-001)/ASCO2019

 米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)において、カリフォルニア大学のEdward B. Gron氏が、ペムブロリズマブ単剤治療のマルチコホート第Ib相試験KEYNOTE-001における進行非小細胞肺がん(NSCLC)の5年長期追跡結果を発表した。NSCLCでは未治療および既治療の550例(未治療101例、既治療449例)が対象となっている。

がん患者の偶発的肺塞栓症の再発リスクは?

 画像診断技術の進展により、がん患者に偶発的な所見が見つかる割合は高まっており、その治療に関する検討が各種報告されている。オランダ・アムステルダム大学のNoemie Kraaijpoel氏らは、国際共同前向き観察コホート研究において、偶発的な肺塞栓症を有するがん患者で、抗凝固療法を行った場合の再発リスクについて評価した。その結果、治療を行っても静脈血栓塞栓症の再発リスクが懸念されることが示されたという。リスクは、亜区域枝の肺塞栓症患者と、より中枢部の血栓を有する患者で同等であった。がん患者における偶発的な肺塞栓症は、ルーチンの画像検査で最高5%に発見されるという。しかし、とくに遠位血栓に関して、臨床的な関連や最適な治療法は明らかになっていなかった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年5月22日号掲載の報告。

臨床研究法、J-CLEARメンバーも対応に苦戦

 臨床研究法が施行されて早1年。2019年3月までは移行期間ということもあり、倫理委員会への登録などで忙殺された方が多かったようだ。本年4月からの新たな申請はこれまでに比べ、少ないというが、日本の臨床研究は法律に則り、滞りなく進んでいるのだろうか。NPO法人 臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR/理事長 桑島 巖氏)は2019年4月20日、都内においてJ-CLEAR講演会を開催。6名の先生が特定臨床研究の現状や糖尿病領域の臨床試験の変遷などについて発表した。

エルロチニブ+ラムシルマブ、EGFR陽性NSCLCの新オプションに?(RELAY)/ASCO2019

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、EGFR-TKIエルロチニブと抗VEGF-R2抗体ラムシルマブの併用が、エルロチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を大きく延長した。米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)で、第III相RELAY試験の中間解析結果を、近畿大学の中川 和彦氏が発表した。  エルロチニブを含む第1~第2世代TKIによる治療後、30~60%でT790M変異が発現する。第3世代TKIのオシメルチニブはT790M変異に対して有効だが、1次治療でオシメルチニブを投与した場合、その後の治療選択肢は限られる。

日本のAYA世代がん患者が終末期ケアに望むこと

 2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省)が改訂され、本人が望むエンドオブライフ・ケア(EOLケア)がいっそう推進されているが、国立がん研究センター 中央病院の平野 秀和氏らは、日本のAYA世代(思春期・若年成人、15~39歳)のがん患者が、どのようなEOLケアを選好するのか、初となる調査を行った。同センターによれば、日本のAYA世代では、年間約2万人ががんの診断を受けているという。Journal of Pain and Symptom Management誌オンライン版2019年5月8日号掲載の報告。

尿路上皮がんに対する化学療法後のペムブロリズマブでPFS改善(HCRN GU14-182)/ASCO2019

 転移のある尿路上皮がん(mUC)に対してプラチナベースの抗がん剤治療後の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ単剤によるメンテナンス治療の効果が、第II相の二重盲検比較試験の結果として、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2019)において、米国・マウントサイナイ医科大学のMatt D. Galsky氏より発表された。

高齢者診療の新たな概念“multi-morbidity”とは

 近年、注目されるようになった“multi-morbidity(マルチモビディティ)”という概念をご存じだろうか。multi-morbidityの明確な定義はまだ存在しないが、「同時に2種類以上の健康状態が併存し、診療の中心となる疾患が設定し難い状態」を示し、数年前から問題視されてきている。  このmulti-morbidityについて、2019年5月23日から3日間、仙台にて開催された第62回 日本糖尿病学会年次学術集会のシンポジウム12「糖尿病合併症 co-morbidityかmulti-morbidityか」で行われた竹屋 泰氏(大阪大学大学院医学系研究科 老年・総合内科学講師)の発表が参考になるので、以下に紹介する。