医療一般|page:256

乳がん術前化療から手術までの日数と術後合併症

 乳がん治療において術前化学療法(NAC)が増えているが、化学療法から手術までの期間(TTS)はさまざまである。今回、米国・オレゴン健康科学大学のThomas L. Sutton氏らが、術後合併症におけるTTSの影響を評価したところ、28日未満のTTSが術後創合併症の危険因子であることが示された。ただし、合併症のほとんどは軽微で、外来で治療されていた。American Journal of Surgery誌オンライン版2020年3月10日号に掲載。  本研究は2011年1月~2016年12月に自施設でNACを受けた女性を対象とした後ろ向きレビューで、術後創合併症について調査し多変量解析を実施した。

アルナイラムとVir社、siRNAによるCOVID-19治療薬を共同開発

 Vir Biotechnology社およびアルナイラム社は、2020年3月4日、両社の既存の提携関係を拡大し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスであるSARS-CoV-2を標的とする RNAi治療薬の開発と実用化も共同で行うと発表した。  この合意で、アルナイラム社のsiRNA(低分子干渉 RNA)新規コンジュゲートの最新の肺への薬剤送達技術、およびVir Biotechnology社の感染症の専門知識と能力を合わせ、SARS-CoV-2および他のコロナウイルスによる感染症の治療薬として、一つ以上のsiRNAの開発を前進させる。

左心室中隔ペーシングは両心室ペーシングと比べ有用か【Dr.河田pick up】

 心臓再同期療法(CRT)が導入されて20年以上経過したが、心室収縮能が改善しないノンレスポンダーは3割以上にもなり、CRTに代わるペーシングが試みられている。この論文では、オランダ・マーストリヒト大学のSalden氏ら研究グループが、大動脈経由による左心室中隔ペーシングの有効性を検討している。Journal of the American College of Cardiology誌2020年2月号に掲載。  CRTは、多くの場合、両心室ペーシングによって行われる。一方、左心室心内膜側から心室中隔への経動脈的なペーシングリード留置は以前から試みられており、左心室中隔ペーシングと呼ばれる。本研究で著者らは、左心室中隔ペーシングと両心室ペーシングについて、電気生理学的変化および血行動態への影響を比較した。

双極性障害における強迫症の合併~メタ解析

 双極性障害(BD)患者では、強迫症(OCD)を併発することが多いといわれている。OCD併発のBD患者では、その症状やマネジメントが複雑化する。しかし、BD患者のOCD有病率は、明らかにはなっておらず、研究や最近のメタ解析により大きく異なっていた。ギリシャ・National and Kapodistrian University of AthensのPanagiotis Ferentinos氏らは、BDの横断的研究または生涯OCD有病率に関する研究のシステマティックレビューとメタ解析を実施。推定有病率の決定因子をメタ回帰により評価し、うつ病患者および一般集団との比較を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年2月15日号の報告。  2019年1月までに公表された英語の関連文献を、PubMed、MEDLINEより検索した。有病率は、メタ解析前にFreeman-Tukey double arcsine transformationを用いて算出した。

トラスツズマブ デルクステカン、HER2陽性乳がんに国内承認/第一三共

 2020年3月25日、第一三共株式会社は「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」の効能・効果で、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)トラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ点滴静注用100mg)の製造販売承認を取得した。  トラスツズマブ デルクステカンの有効性と安全性は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療を受けたHER2陽性の再発・転移を有する乳がん患者を対象としたグローバル第II相臨床試験(DESTINY-Breast01、北米、欧州および日本を含むアジアで実施)の結果により確認された。独立中央判定委員会による奏効率は60.9%、奏効期間中央値は14.8ヵ月であり、持続的な腫瘍縮小効果が示されている。

テポチニブ、METΔex14変異肺がんに国内承認/メルクバイオファーマ

 メルクバイオファーマは、2020年3月25日、MET遺伝子エクソン14(METex14)スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬テポチニブ(商品名:テプミトコ)について、厚生労働省から製造販売承認を取得したと発表。  今回のテポチニブの承認は、METex14スキッピング変異のあるNSCLCを対象とした国際共同第II相VISION試験の結果に基づくもの。同試験でのテポチニブの全奏効率は独立判定委員会(IRC)による評価で42.4%、奏効期間中央値は12.4ヵ月であった。また、テポチニブの副作用のほとんどはGrade1または2であり、死亡に至った副作用が1例(急性呼吸不全)認められた。Gradeを問わず10%以上の件数が報告された副作用は、末梢浮腫(53.8%)、悪心(23.8%)、下痢(20.8%)、および血中クレアチニン増加(13.8%)、低アルブミン血症(10.8%)、およびアミラーゼ増加(10.0%)であった。

弁膜症治療のガイドライン、8年ぶり改訂/日本循環器学会

 日本循環器学会は2020年3月13日、「2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン」を学会ホームページで公開した。診断や薬物治療も含めて弁膜症における診療全体に言及するとの意味から、これまでの「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」(2012年に一部改訂版が発行)から名称が変更され、全面改訂が行われている。  僧帽弁閉鎖不全症(MR)については、新たに心房性機能性MRの概念が導入されたほか、重症一次性MRの手術適応の判断において、日本独自の参考値が示された。

日本人女性の出産前後の抗うつ薬処方

 東北大学の石川 智史氏らは、日本人女性における周産期の抗うつ薬処方率や処方パターンについて、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2020年3月1日号の報告。妊娠前180日~産後180日の抗うつ薬処方率を調査するため、大規模管理データベースを用いて評価した。妊娠開始日および出産日は、アルゴリズムを用いて推定した。主な結果は以下のとおり。 ・分析対象は、女性3万3,941人。 ・抗うつ薬が1剤以上処方されていた女性は、妊娠前180日~産後180日の期間で451人(133/1万分娩)、妊娠中では241人(71/1万分娩)であった。 ・抗うつ薬の処方率は、妊娠初期および中期に減少し、産後に増加した。 ・妊娠前に抗うつ薬を処方されていた339人中、妊娠中に抗うつ薬を中止した女性は151人(44.5%)であった。

抗がん剤の末梢神経障害、凍結手袋の効果は?/Ann Oncol

 凍結手袋(frozen gloves)は、抗がん剤治療に伴う手足などの末梢神経障害の予防に有用なのか。オランダ・Maxima Medical Center Eindhoven and VeldhovenのA.J.M. Beijers氏らは、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)に対する凍結手袋の予防効果を検討した無作為化試験を行い、凍結手袋を着用した患者と非着用患者でEORTC QLQ-CIPN20スコアに差はみられなかったものの、着用により手の神経障害症状が軽減され、QOLの改善が示されたと報告した。ただし著者は、「今回の試験では着用群の3分の1が治療終了前に試験を中止しており、その点で留意が必要である」と述べ、「今後の研究では、CIPN予防について四肢低体温法に力を注ぐべきであろう」とまとめている。Annals of Oncology誌2020年1月号掲載の報告。

COVID-19標準治療薬を決めるべく国際共同治験を実施/国立国際医療研究センター

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内発生の初期から本感染症患者の診療にあたってきた国立国際医療研究センター(NCGM)は、3月23日にメディア勉強会を開催し、アメリカ国立衛生研究所(NIH)と共同で抗ウイルス薬remdesivir(ギリアド・サイエンシズ)の医師主導治験を行うと発表した。勉強会ではNCGMの国際感染症センター長の大曲 貴夫氏が、治験の概要と今後の展開について説明した。  大曲氏は冒頭で高齢男性のCOVID-19症例を呈示し、「発症から重症化への進行が速いのが特徴」と述べ、人工呼吸器をつけて容体が好転し装置を外すまで1ヵ月を要したという。また、COVID-19では、致死率が高齢になるほど上がるとの中国の報告を示した。

乳がん術前治療、BRCA1/2変異患者でpCR率高い/JAMA Oncol

 さまざまなサブタイプの乳がんに対する2つの術前治療レジメンの効果を比較した多施設前向き無作為化試験GeparOctoにおいて、ドイツ・ケルン大学病院のEsther Pohl-Rescigno氏らが遺伝子変異の有無別に2次解析したところ、BRCA1/2遺伝子変異のある患者で病理学的完全奏効(pCR)率が高いことが示された。JAMA oncology誌オンライン版2020年3月12日号に掲載。  GeparOctoは、intense dose-denseエピルビシン+パクリタキセル+シクロホスファミド(iddEPC)とweeklyパクリタキセル+非ペグ化リポソームドキソルビシン(PM)の2つの術前治療レジメンの効果を比較した無作為化試験で、2014年12月~2016年6月に実施された。PM群に割り付けられたトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者にはカルボプラチンが追加された(PMCb)。本試験では2群間に差は認められなかった。今回、著者らはBRCA1/2および他の乳がん素因遺伝子の生殖細胞系列変異の有無による治療効果を検討した。

COVID-19のCT所見、919例の系統的レビュー

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のCT画像の特徴についてさまざまな論文が公表されているが、まとまった文献レビューはまだない。今回、南カリフォルニア大学ケック医科大学のSana Salehi氏らが、PubMed、Embase(Elsevier)、Google Scholar、世界保健機関のデータベースから系統的に文献を検索、レビューし、その結果を報告した。American Journal of Roentgenology誌オンライン版2020年3月14日号に掲載。  主な結果は以下のとおり。

糖代謝異常者の循環器病診療、2学会合同でステートメントを作成

 日本循環器学会(代表理事:小室 一成)と日本糖尿病学会(理事長:門脇 孝)は、合同で『糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療に関するコンセンサスステートメント』を作成、発刊した。本ステートメントは、糖尿病と循環器病の密接な関連に鑑み、その病態、治療、予後に関する国内外の最新のエビデンスを踏襲し、双方の専門医が情報共有および相互理解のための指針、さらには両診療科間の紹介基準の提供といった幅広い臨床場面での利活用を想定している。

不眠症や睡眠薬使用と交通事故~コホート研究

 不眠症や睡眠薬使用に関連する交通事故のリスクおよび、これらのリスク因子が性別や年齢によってどのような影響を受けるか、カナダ・ラヴァル大学のCharles M. Morin氏らが調査と検討を行った。Sleep誌オンライン版2020年2月29日号の報告。対象は、不眠症の有無を問わない3,413人の成人(平均年齢:49.0歳、女性の割合:61.5%)。対象者の睡眠パターン、睡眠薬の使用、交通事故について、5年間連続して毎年調査した。主な結果は以下のとおり。

イリノテカン塩酸塩水和物、膵臓がんに国内承認

 日本セルヴィエとヤクルト本社は、イリノテカン塩酸塩水和物(商品名:オニバイド)について、「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵癌」を効能・効果として、2020年3月25日、国内製造販売承認を取得しました。  同剤は、有効成分であるイリノテカンをポリエチレングリコール(PEG)で修飾したリポソームに封入した製剤であり、2020年3月現在、世界21ヵ国で販売されている。国内では 2019年3月に日本セルヴィエが製造販売承認申請を行い、この度、承認を取得した。

重症COVID-19肺炎にアクテムラの第III相試験開始/ロシュ

 ロシュ社(スイス)は3月19日、米国食品医薬品局(FDA)と連携し、米国生物医学先端研究開発局(BARDA、米国保健福祉省の事前準備・対応担当次官補局の一部門)と共同で無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験を開始すると発表した。同試験では、重症 COVID-19肺炎による成人入院患者におけるアクテムラ(一般名:トシリズマブ)と標準的な医療措置の併用の安全性および有効性をプラセボと標準的な医療措置の併用と比較する。

新型コロナウイルスの侵入過程を阻止する薬剤を同定/東大医科研

 東京大学医科学研究所分子発癌分野の井上 純一郎教授らのグループは、3月18日に「新型コロナウイルス感染初期のウイルス侵入過程を阻止、効率的感染阻害の可能性がある薬剤を同定」したとする会見を開き、同時にプレスリリースを同研究所のホームぺージに公開した。  現在世界各国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬、ワクチンの開発が行われている中で同グループは、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2が細胞に侵入する最初の過程であるウイルス外膜と細胞膜との融合を、セリンプロテアーゼ阻害剤ナファモスタット(商品名:フサンほか)が、従来発表されている融合阻害剤カモスタット(同:フォイパンほか)に比べて10 分の1以下の低濃度で膜融合を阻害することを見出した。

MADRSとHAMDの新規抗うつ薬の有効性に関する比較~メタ解析

 ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)に基づく有効性の推定は、その貧弱な心理測定特性のために、抗うつ薬の真の治療効果を過小評価している可能性があるといわれている。スイス・Zurich University of Applied SciencesのMichael P. Hengartner氏らは、ゴールデンスタンダードであるMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)とHAMDに基づく有効性の推定値の比較を行った。PLOS ONE誌2020年2月26日号の報告。Ciprianiらから提供された急性期における抗うつ薬試験の包括的なデータセットを用いて、メタ解析を実施した。対象研究は、HAMD-17またはMADRSに基づき継続的にアウトカムを測定したプラセボ対照試験とした。

単一遺伝子異常に伴う炎症性腸疾患、疑うべき臨床所見は?

 小児の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は発症時期によって特徴が異なり、臨床像が多様だ。とくに早期に発症するケースでは、単一遺伝子異常に伴うIBDの頻度が高く、原発性免疫不全症候群の可能性も考慮する必要がある。しかし、その詳細な有病率は明らかになっていない。今回、カナダ・トロント小児病院のEileen Crowley氏らは、小児IBD患者1,005例のゲノムを解析し、単一遺伝子異常に伴うIBDの有病率を決定するとともに、予測可能な臨床所見を検討した。Gastroenterology誌オンライン版2020年2月18日号掲載の報告。