妊娠初期の抗うつ薬、児への影響は?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2017/05/10

 

 妊娠初期の妊婦の抗うつ薬服用は、交絡因子を調整すると非服用群と比較して早産のリスクがわずかに上昇したものの、在胎不当過小(SGA)、自閉症スペクトラム障害あるいは注意欠如・多動症(ADHD)のリスク増加との関連は確認されなかった。米国・インディアナ大学のAyesha C. Sujan氏らが、「妊娠初期の抗うつ薬服用と出産や神経発達の問題との関連はセロトニンシグナル伝達の機能不全に起因する」という説の、対立仮説を検証する目的で行った後ろ向きコホート研究の結果を報告した。胎児期の抗うつ薬曝露は有害転帰と関連することが示唆されてきたが、先行研究では交絡が十分に検討されていなかった。JAMA誌2017年4月18日号掲載の報告。

スウェーデンの出生児を最長17年追跡
 研究グループは、1996~2012年の期間にスウェーデンで生まれた子供を2013年まで、または死亡や移住による中止まで追跡調査し、妊娠初期の抗うつ薬服用と出産や神経発達の問題との関連性を検証した。解析は、妊娠の共変量(経産歴、出産年)、母親および父親に関する共変量(出生国、出産時年齢、最終学歴、犯罪歴、重度精神疾患歴、自殺企図歴)を補正して行うとともに、兄弟姉妹比較、曝露時期比較、父親についての比較モデルを作成して、関連性を評価した。

 抗うつ薬曝露は、妊娠初期に抗うつ薬を服用したという母親の自己報告と、妊娠初期の抗うつ薬処方で定義した。

 主要評価項目は、早産(在胎週数37週未満)、SGA児(出生体重が在胎週数平均値よりも2SD超低い)、自閉症スペクトラム障害またはADHDの初回の臨床診断(入院または外来)とした。

妊娠初期の抗うつ薬曝露は早産とわずかに関連、SGAや神経発達問題との関連なし
 母親94万3,776例(出産時の平均年齢30歳)から生まれた158万629例が解析対象に含まれた。出生児の平均在胎期間は279日、女児48.6%、妊娠初期の抗うつ薬服用を自己報告した母親から生まれた児は1.4%(2万2,544例)であった。

 このうち早産児は、曝露群6.98% vs.非曝露群4.78%、SGA児はそれぞれ2.54% vs.2.19%、15歳までに自閉症スペクトラム障害と診断されたのは5.28% vs.2.14%、15歳までのADHDの診断は12.63% vs.5.46%であった。

 母集団レベルの解析では、妊娠初期の抗うつ薬曝露は、非曝露群の子供と比較し、すべての転帰と関連していた。早産のオッズ比(OR)は1.47(95%信頼区間[CI]:1.40~1.55)、SGAのORは1.15(95%CI:1.06~1.25)、自閉症スペクトラム障害のハザード比(HR)は2.02(95%CI:1.80~2.26)、ADHDのHRは2.21(95%CI:2.04~2.39)であった。

 しかし、妊娠・母親・父親の特性を補正した兄弟姉妹比較モデルでは、妊娠初期の抗うつ薬曝露は、早産(OR:1.34、95%CI:1.18~1.52)と関連していたが、SGA(OR:1.01、0.81~1.25)、自閉症スペクトラム障害(HR:0.83、0.62~1.13)、ADHD(HR:0.99、0.79~1.25)との関連は確認されなかった。母親の妊娠前の抗うつ薬処方ならびに妊娠初期の父親に対する抗うつ薬処方との関連を評価した解析結果は、兄弟姉妹比較モデルの結果と一致した関連性がみられた。

 著者は研究の限界として、すべての交絡因子を完全に排除できないこと、妊娠初期の曝露に限定していること、他の国で一般化できるかは不明であることを挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)