重症大動脈狭窄症への生体弁SAVRの予後、93試験のメタ解析/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2016/10/12

 

 生体弁による外科的大動脈弁置換術(SAVR)を施行された重症大動脈狭窄症患者は、同年代の一般人口に比べ生存期間がわずかに短いが、長期的には脳卒中の発生率が低減し、20年後までに約半数が弁劣化を経験することが、カナダ・マクマスター大学のFarid Foroutan氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2016年9月28日号に掲載された。重症大動脈狭窄に対する生体弁を用いたSAVRでは、周術期や長期的な死亡率は許容範囲とされることが多いが、統合データに基づく予後は明らかにされていない。SAVR後1年以内の弁劣化はまれだが、それ以降は増加することが知られているという。

93件の観察試験のメタ解析
 研究グループは、症候性の重症大動脈狭窄症の患者において、生体弁を用いたSAVR施行後の予後を検討するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った。

 医学データベース(Medline、Embase、PubMed、Cochrane Database of Systematic Reviews、Cochrane CENTRAL)を用いて、2002~16年6月までに発表された文献を検索した。

 生体弁を用いたSAVR施行後に2年以上のフォローアップを行った観察試験を対象とした。試験の選出やデータの抽出、バイアスの評価は、複数の研究者が別個に行った。効果やエビデンスの質は、GRADEシステムを用いて定量化した。

 生存曲線から生存および構造的弁劣化のない期間のデータを入手し、ランダム効果モデルを用いて脳卒中、心房細動、入院期間の評価を行った。

 1977~2013年に患者登録が行われた93試験に参加した5万3,884例が解析に含まれた。バイアスのリスクが「低い」と判定された試験は51件、「中等度」が21件、「高い」が21件であった。

構造的弁劣化は15年以降に顕著に増加
 85試験(4万5,347例、フォローアップ期間中央値4.7年)の解析では、生体弁によるSAVRを施行された患者の2年生存率は89.7%、5年生存率は78.4%、10年生存率は57.0%、15年生存率は39.7%、20年生存率は24.7%であった。

 また、年齢層別の5年生存率は、65歳以下が83.7%、65~75歳が81.4%、75~85歳が67.4%、85歳以上は52.2%だった。

 年齢層別のSAVR施行後の生存期間中央値は、65歳以下が16年(米国の一般人口の期待余命:22.2年)、65~75歳が12年(同:15.6年)、75~85歳が7年(同:8.7年)、85歳以上は6年(同:3.5年)であった。

 SAVR施行後の脳卒中の発生率(8試験、6,702例、フォローアップ期間中央値5.1年)は、100人年当たり0.26(95%信頼区間[CI]:0.06~0.54)であり、心房細動の発生率(2試験、177例、フォローアップ期間中央値4.1年)は100人年当たり2.90(95%CI:1.78~4.79)だった。

 構造的弁劣化(12試験、7,703例、フォローアップ期間中央値6.4年)の発生率は、10年時は6.0%と低かったものの、その後は急激に増加して15年時には19.3%となり、20年時には48%にまで増加した。また、平均入院期間は12日(95%CI:9~15)だった。

 著者は、「85歳以上の患者の余命が一般人口よりも長いのは、この年代では例外的に健康状態のよい患者にのみSAVRが施行されていることを反映している可能性がある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 許 俊鋭( きょ しゅんえい ) 氏

東京都健康長寿医療センター センター長

J-CLEAR評議員