9割以上の高齢者がエイジズムを日常的に経験

提供元:HealthDay News

印刷ボタン

公開日:2022/07/21

 

 年齢に基づいた偏見や差別をエイジズムという。年齢を理由に雇用しないのも、からかうつもりで大切な人に「もう年なんだから」と伝えるのもエイジズムである。そうしたエイジズムを、ほぼ全ての高齢者が日常的に経験していることが、新たな研究で示された。研究論文の筆頭著者である米オクラホマ大学健康運動科学分野のJulie Ober Allen氏は、「エイジズムは、最もありふれた形の差別であり、また最も社会的に容認されている差別なのかもしれない」と話している。研究の詳細は、「JAMA Network Open」に6月15日掲載された。

 この研究では、健康的に年を取ることに関する2019年の全国調査(National Poll on Healthy Aging;NPHA)のデータが分析された。対象は、50〜80歳の男女2,035人(平均年齢62.6歳、女性54.2%)であった。

 その結果、対象者の93.4%(1,915人)が、日常生活の中でたびたび何らかのエイジズムを経験していることが明らかになった。エイジズムの形として最も多かったのは、健康問題や孤独感、抑うつなどが生じる原因を年齢に求める「内面化されたエイジズム」(81.2%)であった。次いで多かったのは、年を取ることに関わる冗談や、高齢者や加齢に対する否定的な見方などの「エイジストのメッセージ」(65.2%)であり、年齢から携帯電話やコンピューターの使用が困難とみなされたり、記憶力や目、耳に問題があると思われたりするなどの「社会的相互関係におけるエイジズム」(44.9%)がそれに続いた。

 Allen氏は、「このようなエイジズムをたいしたことではないと笑い飛ばす人もいるだろう。しかし、それを自分の価値や規範として受け入れてしまう可能性もある。そのような内面化されたエイジズムの信念とステレオタイプは、心身の健康にも影響を与える可能性があり、最も有害だ」と話す。

 またAllen氏は、「人種差別(レイシズム)、性差別(セクシズム)、同性愛嫌悪(ホモフォビア)やその他のイズム(-ism)が持つ有害性に対する認識は、この60年間で強まったものの、エイジズムは相変わらず見過ごされ、無視されたままだ」と指摘する。その上で、「他の-ismと同様に、エイジズムはストレスの元だ。ストレスによる刺激を受けると、人間はストレス反応を起こす。身体反応もその一部だとわれわれは考えている」と話す。ストレスは、心拍数の増加や血圧上昇を招き、睡眠を妨げ、ウイルスと闘う免疫システムの力を弱めることが知られている。

 こうしたことを説明した上でAllen氏は、「この状況を変えなければならない。われわれは、高齢者をステレオタイプに当てはめるのではなく、一人一人異なる人とみなすべきだ。また年を取ることは、新たなライフステージを迎えることを意味するのであり、死に向かって衰えていく過程とみなすべきではない」と主張する。

 この研究結果をレビューした、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)教授のCatherine Sarkisian氏は、「以前から存在する問題に注意を向けさせる研究結果だ」と話す。同氏は、「高齢者は揶揄することが容認されている集団の1つであり、これは許されることではない。高齢者がこうした偏見や差別を内面化すると、その人の生活の質(QOL)にも影響を及ぼす可能性がある」と危惧を示す。

 さらにSarkisian氏は、「美容業界全体がアンチエイジングに焦点を当てている。これもエイジズムの一つの形だ」と指摘。「われわれは、若く見せようと努力するのではなく、しわを受け入れることができるようになるべきだ」と主張している。

[2022年6月20日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら