遺伝子分析とアンケートを組み合わせた日本人うつ病患者の特徴分析

提供元:ケアネット

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公開日:2024/05/21

 

 うつ病は、さまざまな環境的因子や遺伝的因子の影響を受け発症する、気分障害を特徴とする一般的な精神疾患であるが、その病因は、ほとんどわかっていない。ヤンセンファーマのRyo Takano氏らは、日本人うつ病患者のリスク因子を特定するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年7月号の報告。

 対象は、東北メディカル・バンク機構が2021年12月までに募集した2つのコホート参加者(人口ベースコホート、3世代コホート)。社会人口統計学的因子、ライフスタイル、併存疾患、遺伝的因子に焦点を当て、自己申告によるうつ病のプロファイリングを行った。

 主な結果は以下のとおり。

・日本人うつ病患者は、日本にまん延している特定の社会文化的特徴、たとえば社会的孤立、神経症、内向性などや年齢や性別などの既知のリスク因子とよく関連していることが明らかとなった。
・コホートの特徴として考えられる東日本大震災と関連した環境的因子も、うつ病発症と強い関連が認められた。
・全ゲノム配列データのGWAS解析では、日本人のうつ病と関連する染色体21および22に位置する新規の遺伝的リスク変異の候補が特定されたが、これらのリスクバリアントのさらなる検証が求められる。
・本研究の限界として、うつ病の評価に自己申告アンケートを使用した点(臨床的関連性との不明確さ)、コホート人口の偏りが認められた点(男性よりも女性の割合が多い)が挙げられる。

 著者らは、「日本人のうつ病と関連するいくつかのリスク因子が特定された。日本人のうつ病に対処するうえで、対象を絞った介入と個別アプローチが重要であることが裏付けられた」としている。

(鷹野 敦夫)