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2025-11-03 ~ 2025-11-06

2025/11/06

PCI後のDAPT、出血高リスク患者の最適期間は?/Lancet

ジャーナル四天王

 出血リスクが高い(HBR)患者における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の投与期間について、1ヵ月間の投与は3ヵ月間の投与に対して全臨床的有害事象(NACE)に関する非劣性は示されなかった。一方、非HBR患者では、3ヵ月間の投与は12ヵ月間の投与に対してNACEおよび主要心血管/脳血管イベント(MACCE)に関して非劣性が示され、出血に関して優れることが示された。韓国・Seoul National University HospitalのJeehoon Kang氏らが、同国の50ヵ所の心臓病センターで行った非盲検無作為化試験「HOST-BR試験」の結果を報告した。出血リスクに応じたPCI後のDAPT投与の最適期間は十分に確立されていなかった。Lancet誌オンライン版2025年10月23日号掲載の報告。

HER2陽性進行乳がんの1次治療、T-DXd+ペルツズマブvs.THP/NEJM

ジャーナル四天王

 HER2陽性の進行または転移を有する乳がんの1次治療として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブの併用療法は、標準治療のタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(THP)併用療法と比べて進行または死亡のリスクが有意に低く、新たな安全性に関する懸念はみられなかった。米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏らDESTINY-Breast09 Trial Investigatorsが、第III相の「DESTINY-Breast09試験」の中間解析の結果を報告した。T-DXdは、既治療のHER2陽性の進行または転移を有する乳がん患者に対する有効性が示されているが、未治療の同患者に対するT-DXdの有効性および安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2025年10月29日号掲載の報告。

境界性パーソナリティ障害患者における摂食障害の有病率は?

医療一般

 フランス・Universite Bourgogne EuropeのTheo Paudex氏らは、境界性パーソナリティ障害(BPD)患者における摂食障害の有病率を調査するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Clinical Psychology & Psychotherapy誌2025年9〜10月号の報告。  PubMed/MEDLINE、PsycINFO、Web of Science よりBPD患者サンプルにおける1つ以上の摂食障害(ED)の有病率を評価した論文をシステマティックに検索した。バイアスリスクは、有病率データを報告する研究のためのジョアンナ・ブリッグス研究所(JBI)チェックリストを用いて推定し、ランダム効果メタ解析モデルを用いて評価した。本研究は、PRISMA 2020ステートメントに基づき実施した。

がんと心房細動、合併メカニズムと臨床転帰/日本腫瘍循環器学会

医療一般

 がん患者では心房細動(AF)が高率に発症する。がん患者の生命予後が改善していく中、その病態解明と適切な管理は喫緊の課題となっている。第8回日本腫瘍循環器学会学術集会では、がん患者におけるAFの発症メカニズムおよび活動性がん合併AF患者の管理について最新の大規模臨床研究の知見も含め紹介された。  東京科学大学の笹野 哲郎氏はがん患者におけるAF発症について、がん治療およびがん自体との関連を紹介した。  肺がんや食道がんに対する心臓近傍への手術や放射線照射では、術後炎症や心筋の線維化がAF発症と関連している。AF発症が高率な薬剤としてドキソルビシンなどのアントラサイクリン系薬剤やイブルチニブなどのBTK阻害薬が代表的である。これらの抗がん剤は心筋細胞の脱落や線維化など構造的な変化と電気生理的な変化によってAFを発症する。

鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、テゼペルマブの日本人データ(WAYPOINT)/日本アレルギー学会

医療一般

 鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)に対し、生物学的製剤の適応拡大が進んでいるが、生物学的製剤使用患者の約40%は全身性ステロイド薬を用いていたという報告があるなど、依然としてコントロール不十分な患者が存在する。そこで、抗TSLP抗体薬のテゼペルマブのCRSwNPに対する有用性が検討され、国際共同第III相試験「WAYPOINT試験」において、テゼペルマブは鼻茸スコア(NPS)と鼻閉重症度スコア(NCS)を有意に改善したことが、NEJM誌ですでに報告されている。本試験の結果を受け、テゼペルマブは米国およびEUにおいて2025年10月にCRSwNPに対する適応追加承認を取得した。

日本人男性、認知機能と関連する肥満指標は?

医療一般

 地域在住の日本人中高年男性において、さまざまな肥満指標と認知機能との関連を調査した結果、腹部の内臓脂肪面積/皮下脂肪面積比(VSR)が低いと認知機能が低いことが示された。滋賀医科大学の松野 悟之氏らがPLoS One誌2025年10月23日号で報告した。  これまでの研究では、内臓脂肪組織が大きい人は認知症リスクが高く、内臓脂肪組織が認知機能低下と関連していたという報告がある一方、内臓脂肪組織と認知機能の関係はなかったという報告もあり一貫していない。この横断研究では、滋賀県草津市在住の40~79歳の日本人男性を対象とした滋賀動脈硬化疫学研究(Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis)に参加した853人のうち、Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI)に回答し、CTで腹部の内臓脂肪面積と皮下脂肪面積を測定した776人のデータを解析した。参加者をVSRの四分位群に分類し、共分散分析を用いて各四分位群のCASI合計スコアおよび各ドメインスコアの粗平均値および調整平均値を潜在的交絡因子を調整して算出した。

世界中で薬剤耐性が急速に拡大

医療一般

 抗菌薬が効かない危険な感染症が世界中で急速に広がりつつあるとする報告書を、世界保健機関(WHO)が発表した。この報告書によると、2023年には、世界の感染症の6件に1件が、尿路感染症や淋菌感染症、大腸菌による感染症などの治療に使われている一般的な抗菌薬に耐性を示したという。  2018年から2023年の間に、監視対象となった病原体と抗菌薬の組み合わせの40%以上で薬剤耐性が増加し、年平均5~15%の増加が見られた。2021年には、このような薬剤耐性はおよそ114万人の死亡と関連付けられていた。WHO薬剤耐性部門ディレクターのYvan Hutin氏は、「薬剤耐性は広く蔓延し、現代医療の未来を脅かす存在となっている。端的に言えば、質の高い医療へのアクセスが乏しいほど、薬剤耐性菌感染症に苦しむ可能性が高くなる」と、New York Times紙に語っている。

2025/11/05

既治療の非MSI-H/dMMR大腸がん、zanzalintinib+アテゾリズマブがOS改善(STELLAR-303)/Lancet

ジャーナル四天王

 再発・難治性の転移を有する大腸がん(高頻度マイクロサテライト不安定性[MSI-H]またはミスマッチ修復機構欠損[dMMR]を持たない)では、免疫療法ベースのレジメンであるzanzalintinib(TAMキナーゼ[TYRO3、AXL、MER]、MET、VEGF受容体などの複数のキナーゼの低分子阻害薬)+アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)によるchemotherapy-freeの併用治療は、標準治療のレゴラフェニブと比較して、肝転移の有無にかかわらず全生存期間(OS)に関して有益性をもたらし、安全性プロファイルは既報の当レジメンや類似の併用療法とほぼ同様だが、治療関連死が多いことが、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のJ. Randolph Hecht氏らSTELLAR-303 study investigatorsによる第III相試験「STELLAR-303」において示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年10月20日号で発表された。

高齢者への高用量インフルワクチン、入院予防効果は?/Lancet

ジャーナル四天王

 高用量不活化インフルエンザワクチン(HD-IIV)は、標準用量不活化インフルエンザワクチン(SD-IIV)と比較して、高齢者におけるインフルエンザまたは肺炎による入院に対して優れた予防効果を示すとともに、心肺疾患による入院、検査で確定したインフルエンザによる入院、全原因による入院の発生率も減少させることが明らかにされた。デンマーク・Copenhagen University Hospital-Herlev and GentofteのNiklas Dyrby Johansen氏らDANFLU-2 Study Group and GALFLU Trial Teamが、2試験の統合解析である「FLUNITY-HD」の結果で報告した。Lancet誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。  FLUNITY-HDは、HD-IIVとSD-IIVを比較する方法論的に統一された2つの実践的なレジストリベースの実薬対照無作為化試験(DANFLU-2、GALFLU)の、事前に規定された個人レベルのデータの統合解析であり、一般化可能性の向上とともに、高齢者における重度の臨床アウトカムに対する2つのワクチンの相対的ワクチン有効率(relative vaccine effectiveness:rVE)の評価を目的とした。

動脈内血栓溶解療法は血栓回収療法後の補助的治療として有効か?(解説:内山真一郎氏)

CLEAR!ジャーナル四天王

PEARL試験は、機械的血栓回収療法により再灌流に成功した、急性期前循環系大血管閉塞性脳梗塞の中国人324例においてアルテプラーゼ動脈内投与群と標準的治療群とを比較した多施設共同非盲検無作為化試験であるが、90日後の転帰良好(改変ランキンスケールスコア0または1)がアルテプラーゼ動脈内投与群で標準的治療群より有意に多かった。血栓回収療法は大血管閉塞性脳梗塞に対する標準的治療となったが、長期の転帰良好例は依然として半数以下であり、転帰を改善するための補助的治療が必要とされている。血栓回収療法による神経症状改善効果が不十分な理由の1つとして、血栓回収療法後の遠位動脈や微小循環の残存血栓によるno-reflow現象の関与が考えられることから、血栓回収療法後の動脈内血栓溶解療法は血栓回収療法の補助的治療として転帰改善効果が期待できるかもしれない。ただし、これまでに行われた同様な臨床試験の結果は一致しておらず、現在進行中の他の試験もあるので、それらの結果やメタ解析によるさらなるエビデンスの集積が必要なように思われる。

寛解後の抗精神病薬の減量/中止はいつ頃から行うべきか?

医療一般

 初回エピソード統合失調症患者における寛解後の抗精神病薬の早期減量または中止は、短期的な再発リスクを上昇させる。長期的なアウトカムに関する研究では、相反する結果が得られているため、長期的な機能改善への潜在的なベネフィットについては、依然として議論が続いている。オランダ・University of GroningenのIris E. Sommer氏らは、初回エピソード統合失調症患者の大規模サンプルを対象に、4年間にわたり抗精神病薬の減量/中止と維持療法の短期および長期的影響について比較を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年10月1日号の報告。

がん治療の中断・中止を防ぐ血圧管理方法とは/日本腫瘍循環器学会

医療一般

 第8回日本腫瘍循環器学会学術集会が2025年10月25、26日に開催された。本大会長を務めた向井 幹夫氏(大阪がん循環器病予防センター 副所長)が日本高血圧学会合同シンポジウム「Onco-Hypertensionと腫瘍循環器の新たな関係」において、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の第10章「他疾患やライフステージを考慮した対応」を抜粋し、がん治療の中断・中止を防ぐための高血圧治療実践法について解説した。  がんと高血圧はリスク因子も発症因子も共通している。たとえば、リスク因子には加齢、喫煙、運動不足、肥満、糖尿病が挙げられ、発症因子には血管内皮障害、酸化ストレス、炎症などが挙げられる。そして、高血圧はがん治療に関連した心血管毒性として、心不全や血栓症などに並んで高率に出現するため、血圧管理はがん治療の継続を判断するうえでも非常に重要な評価ポイントとなる。また、高血圧が起因するがんもあり、腎細胞がんや大腸がんが有名であるが、近年では利尿薬による皮膚がんリスクが報告されている。

ソーシャルメディアは子どもの認知能力を低下させる?

医療一般

 ソーシャルメディアは10代の子どもの脳の力を低下させている可能性のあることが、新たな研究で示唆された。9〜13歳にかけてのソーシャルメディアの利用時間の増加は、読解力、記憶力、言語能力などの認知テストの成績が低いことと関連していたという。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)小児科分野のJason Nagata氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に10月13日掲載された。  Nagata氏は、「この研究では、ソーシャルメディアの使用時間が少なくても、認知能力の低下と関連していることが示された。この結果は、思春期初期の脳がソーシャルメディアへの露出に特に敏感である可能性を示唆しており、こうしたプラットフォームは年齢に合った形で導入することと、注意深く監視することの重要性を強調している」と述べている。

脳に異なる影響を及ぼす5つの睡眠パターンを特定

医療一般

 睡眠は、一晩にどれだけ長く眠るか以上の意味を持ち、睡眠パターンは、気分、脳の機能、さらには長期的な健康状態に影響を与える可能性が指摘されている。こうした中、睡眠の多面的な性質と人の健康・認知機能・生活習慣との関係を検討した新たな研究において5つの睡眠プロファイルが特定された。研究グループは、「これらのプロファイルは、ストレスや感情から寝室の快適さまで、睡眠の質に影響を与える生物学的、精神的、環境的要因の組み合わせを反映している」と述べている。コンコルディア大学(カナダ)のValeria Kebets氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS Biology」に10月7日掲載された。Kebets氏は、「人々は睡眠について真剣に考えるべきだ。睡眠は日常生活のあらゆる機能に影響する」とNBCニュースに語った。

オピオイド鎮痛薬のトラマドール、有効性と安全性に疑問

医療一般

 がんによる疼痛や慢性疼痛に対して広く処方されている弱オピオイド鎮痛薬(以下、オピオイド)のトラマドールは、期待されたほどの効果はないことが、新たな研究で明らかにされた。19件の研究を対象にしたメタアナリシスの結果、トラマドールは中等度から重度の疼痛をほとんど軽減しないことが示されたという。コペンハーゲン大学(デンマーク)附属のリグスホスピタレットのJehad Ahmad Barakji氏らによるこの研究結果は、「BMJ Evidence Based Medicine」に10月7日掲載された。研究グループは、「トラマドールの使用は最小限に抑える必要があり、それを推奨するガイドラインを再検討する必要もある」と結論付けている。

ホルモン療法とニラパリブの併用が進行前立腺がんに有効

医療一般

 がんの標的治療薬であるニラパリブ(商品名ゼジューラ)をホルモン療法に追加することで、前立腺がんの増殖リスクが低下し、症状の進行を遅らせることができる可能性が、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)がん研究所腫瘍内科部門長のGerhardt Attard氏らが実施した臨床試験で示された。詳細は、「Nature Medicine」に10月7日掲載された。  Attard氏は、「現行の標準治療は、進行前立腺がん患者の大多数にとって極めて有効性が高い。しかし、少数ではあるが臨床的には重要な割合の患者では限定的な効果しか得られていない」と指摘し、「ニラパリブを併用することでがんの再発を遅らせ、余命の延長も期待できる」とUCLのニュースリリースの中で述べている。

2025/11/04

抗うつ薬30種類の生理学的影響を比較~ネットワークメタ解析/Lancet

ジャーナル四天王

 英国・キングス・カレッジ・ロンドンのToby Pillinger氏らは系統的レビューとネットワークメタ解析を行い、抗うつ薬はとくに心代謝パラメータにおいて薬剤間で生理学的作用が著しく異なるという強力なエビデンスがあることを明らかにした。抗うつ薬は生理学的変化を誘発するが、各種抗うつ薬治療におけるその詳細は知られていなかった。結果を踏まえて著者は、「治療ガイドラインは、生理学的リスクの違いを反映するよう更新すべき」と提唱している。Lancet誌オンライン版2025年10月21日号掲載の報告。

EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法のOS最終解析(FLAURA2)/NEJM

ジャーナル四天王

 上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)オシメルチニブの単剤療法と比較して白金製剤とペメトレキセドによる化学療法+オシメルチニブの併用療法は、全生存期間(OS)を有意に延長させ、Grade3以上の可逆的な有害事象のリスク増加と関連していた。米国・ダナファーバーがん研究所のPasi A. Janne氏らFLAURA2 Investigatorsが、「FLAURA2試験」の主な副次エンドポイントの解析において、OSの事前に計画された最終解析の結果を報告した。同試験の主解析では、化学療法併用群において主要エンドポイントである無増悪生存期間(PFS)が有意に優れることが示されていた(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79、p<0.001)。NEJM誌オンライン版2025年10月17日号掲載の報告。

左室駆出率の保たれた心不全に対するセマグルチドとチルゼパチドの比較―大規模エミュレーション研究から(解説:加藤貴雄氏)

CLEAR!ジャーナル四天王

 本研究は、保険請求データベースを利用して、ランダム化比較試験(セマグルチドのSTEP-HFpEF DM試験とチルゼパチドのSUMMIT試験)の大規模エミュレーションを行った研究で、セマグルチドとチルゼパチドの直接の比較をした点が重要である。エミュレーションとは、「模倣」との意味で、観察データを用いてtarget trialを模倣する手法である。今回のランダム化比較試験2本の組み入れ・除外基準から条件を模倣したものであり、2型糖尿病がありBMI 27以上が模倣的な組み入れ基準である。心血管アウトカムに影響を及ぼさないとされているシタグリプチンを対照として、総死亡と心不全の悪化による入院の複合イベントにおけるセマグルチドとチルゼパチドの優位性を調べた後に、セマグルチドとチルゼパチドの比較も行っている。

肝指向性DGAT2アンチセンスオリゴヌクレオチド阻害薬ION224のMASHに対する治療効果:第II相試験の結果(解説:相澤良夫氏)

CLEAR!ジャーナル四天王

この第II相試験では、肝臓の脂肪新生を亢進し、脂肪毒性の発現と代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)の進展に関わる重要な代謝酵素で中性脂肪合成の律速酵素であるdiacylglycerol O-acyltransferase 2(DGAT2)を選択的に阻害する肝指向性アンチセンスオリゴヌクレオチド製剤ION224が、脂質異常症を惹起することなくMASHに対し有効かつ安全性、忍容性の高い核酸医薬製剤であることが示された。また、このMASH改善効果は体重減少とは関連せず、体重減少効果によりMASH治療効果が期待されるGLP-1などの薬物との併用効果も期待された。近年、次世代の医薬品として注目されている核酸医薬の開発が進み、すでにアンチセンス製剤以外にもsiRNA、アダプタマー、CpGオリゴなどが実用化されている。これらの核酸医薬は抗体医薬品に比べて比較的安価で製造できること、短期間で効率よく製薬化できること、疾患に関連する特定の遺伝子のみを選択的に制御できることなどの利点がある反面、体内で分解されにくい化学修飾や標的臓器へのドラッグデリバリーの工夫が必要なこと、長期にわたる治療での安全性に懸念があるなどの問題点も知られている。

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