内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:123

2種利尿薬、大規模試験で心血管転帰を直接比較/NEJM

 実臨床での一般的用量でサイアザイド系利尿薬のクロルタリドン(国内販売中止)とヒドロクロロチアジドを比較した大規模プラグマティック試験において、クロルタリドン投与を受けた患者はヒドロクロロチアジド投与を受けた患者と比べて、主要心血管アウトカムのイベントまたは非がん関連死の発生は低減しなかった。米国・ミネソタ大学のAreef Ishani氏らが、1万3,523例を対象に行った無作為化試験の結果を報告した。ガイドラインではクロルタリドンが1次治療の降圧薬として推奨されているが、実際の処方率はヒドロクロロチアジドが圧倒的に高い(米国メディケアの報告では150万例vs.1,150万例)。研究グループは、こうした乖離は、初期の試験ではクロルタリドンがヒドロクロロチアジドよりも優れることが示されていたが、最近の試験で、両者の効果は同程度であること、クロルタリドンの有害事象リスク増大との関連が示唆されたことと関係しているのではとして、リアルワールドにおける有効性の評価を行った。NEJM誌オンライン版2022年12月14日号掲載の報告。

認知症の根本治療薬により認知症の人は減るか?(解説:岡村毅氏)

人類史に残る論文ではないか。人類はとうとう認知症の進行を遅らせるエビデンスを得たようだ。この領域は日本のエーザイがとてつもない情熱をもって切り開いてきた。またこのレカネバブ論文のラストオーサー(日本人)は、さまざまな不条理にも負けることなく一流の研究を進めてきた。最大限の敬意を表したい。その上で、認知症を専門とする精神科医として、この偉大な一歩を解説しよう。神経学ではなくあくまで精神医学の視点であることを先に言っておく。

コロナ重症化率と致死率、どの程度低下したのか/COVID-19対策アドバイザリーボード

 新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けについて議論が進んでいる。その判断には、病原性(重篤性)と感染力、それらによる国民への影響を考慮する必要があるが、病原性(重篤性)の参考となる重症化率と致死率について、12月21日に開催された新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードで報告された。重症化率・致死率ともに昨年夏から大きく低下しており、病原性が低いとされるオミクロン株が流行株の主体となっていること、多くの人が自然感染あるいはワクチンによる免疫を獲得したことが要因と考えられている。

低炭水化物食は糖尿病リスクの抑制にも良い可能性

 血糖値が極端に高くはない人の糖尿病発症予防という目的でも、低炭水化物の食事スタイルが役立つ可能性が示された。米テュレーン大学のKirsten Dorans氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に10月26日掲載された。  食後の血糖値を上げるように働く炭水化物の摂取量を抑える「低炭水化物食」は、糖尿病患者の治療という場面での有用性を示すエビデンスが増えてきている。ただし、糖尿病の発症予防という点でのエビデンスはまだ少ない。そこでDorans氏らは、まだ糖尿病の治療を受けておらず、HbA1cが6.0~6.9%とそれほど高くない集団を対象とする無作為化比較試験により、この点を検討した。  研究参加者は150人で、平均年齢58.9±7.9歳(範囲40~70歳)、女性72%、BMI35.9±6.7、HbA1c6.16±0.3%。75人ずつの2群に分け、低炭水化物食群に対しては、前半3カ月間は炭水化物を1日40g未満、後半3カ月間は同60g未満を目標とする栄養介入を行った。最初の4週間は毎週1回、それ以降は隔週で個人面接を行ったほか、電話やグループ教育によるフォローアップが継続された。一方、対照群には食事に関する一般的な注意事項を示した書面を手渡し、各自で食事療法を行うように指示したほか、食事とは関係のないトピックの教育セッションが毎月行われた。

認知症リスクと楽器演奏~メタ解析

 高齢者の認知症予防には、余暇の活動が重要であるといわれている。しかし、認知症リスクと楽器の演奏との関連は、あまりわかっていない。国立循環器病研究センターのAhmed Arafa氏らは、高齢者における楽器の演奏と認知症リスクとの関連を調査するため、プロスペクティブコホート研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、楽器の演奏と高齢者の認知症リスク低下との関連が確認された。著者らは、高齢者の余暇の活動に、楽器の演奏を推奨することは意義があると報告している。BMC Neurology誌2022年10月27日号の報告。

睡眠が不規則な人は全死亡リスクが最大1.5倍高い―日本人8万人の縦断的研究

 自分の睡眠が不規則だと自覚している人は、睡眠時間を含む多数の交絡因子を調整後も全死亡(あらゆる原因による死亡)のリスクが高いというデータが報告された。京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の大道智恵氏、小山晃英氏らの研究によるもので、詳細は「Sleep Health」に10月10日掲載された。  睡眠時間の長短がさまざまな疾患の発症や全死亡のリスクと関連のあることは、多くの研究により明らかになっている。また近年では、シフト勤務などによる不規則な睡眠も健康リスクとなり得ることが示唆されている。小山氏らも既に、主観的な評価に基づく不規則な睡眠が、メタボリックシンドロームのリスクと有意な関連のあることを報告している。主観的な評価は客観性に欠けるという欠点があるものの、煩雑な検査を必要としないため、一般住民など大人数の睡眠に関連する健康リスクを、簡便かつ低コストで評価できるというメリットがある。今回、小山氏らは、主観的な評価による不規則な睡眠と全死亡リスクとの関連の有無を、「日本多施設共同コーホート研究(J-MICC研究)」のデータを用いて検討した。

維持期うつ病治療の抗うつ薬比較~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、維持期の成人うつ病の治療に対する抗うつ薬の有効性、許容性、忍容性、安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、維持期の成人うつ病に対する抗うつ薬治療において、妥当な有効性、許容性、忍容性が認められた薬剤は、desvenlafaxine、パロキセチン、ベンラファキシン、ボルチオキセチンであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2022年10月17日号の報告。  PubMed、Cochrane Library、Embaseデータベースより、エンリッチメントデザインを用いた二重盲検ランダム化プラセボ対照試験(非盲検期間中に抗うつ薬治療で安定し、その後、同じ抗うつ薬群またはプラセボ群にランダム化)を検索した。アウトカムは、6ヵ月後の再発率(主要アウトカム、有効性)、すべての原因による治療中止(許容性)、有害事象による治療中止(忍容性)、個々の有害事象発生率とした。リスク比および95%信用区間を算出した。

スタチンが致死的な脳内出血リスクを低減する可能性

 コレステロール低下薬のスタチンは、心臓を守るだけでなく、出血性脳卒中の一種である脳内出血のリスクを低減する可能性のあることが、新たな研究で示された。南デンマーク大学(デンマーク)のDavid Gaist氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に12月7日掲載された。  脳内出血は、動脈または静脈が破れることで生じる。米国脳神経外科学会(AANS)によると、脳内出血は脳卒中の15~30%を占めており、死亡率も極めて高い。また、出血そのものが脳を損傷するだけでなく、出血による頭蓋内の圧力の上昇が脳にさらなる悪影響を及ぼすこともある。Gaist氏は、「スタチンは脳梗塞のリスクを低減することが明らかにされているが、初回の脳内出血リスクに与える影響については、見解が一致していなかった」と述べている。  今回の研究では、デンマークの医療記録を使用し、2009年から2018年の間に初めて脳葉領域に出血を来した55歳以上の患者989人(平均年齢76.3歳、女性52.2%)を特定した。脳葉領域には前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉などの大脳の大部分が含まれる。これらの患者を、脳内出血の既往がなく、年齢、性別、その他の因子が類似する3万9,500人と比較した。さらに、脳葉領域以外の領域(大脳基底核、視床、小脳、脳幹など)に出血を起こした患者1,175人(平均年齢75.1歳、女性46.5%)についても、脳内出血の既往がなく、年齢、性別、その他の因子が類似する4万6,755人と比較した。スタチンの使用状況は処方データを用いて判断した。

有酸素運動で老化した脳が活性化?

 有酸素運動を習慣的に行うことで、脳の血流が良くなることを示すデータが報告された。研究者らは、このような脳の血流改善効果を介して脳の老化が抑制されるのではないかと述べている。  この研究は、米テキサス大学サウスウエスタン医療センターのRong Zhang氏らによるもので、詳細は「Journal of Applied Physiology」に10月4日掲載された。Zhang氏は、「週に4~5回、1回30分以上の速歩またはジョギングを行うと良い。その運動強度は、会議のスタートに遅れそうで急いでいる時の歩行と同じぐらいであって、息切れを感じるぐらいの強度だ」と解説する。

進行期CKDにRA系阻害薬は有益か?―STOP ACEi試験が教えてくれた―(解説:石上友章氏)

CKD診療は、心血管イベント抑制と腎保護を両立させることを目標としている。RA系阻害薬は、CKD診療の標準治療の1つである。一方で、内因性のレニン・アンジオテンシン系には、腎血行動態の恒常性を保つ作用があり、RA系阻害薬の使用により、血清クレアチニンが上昇し、推定GFRが低下することが知られている。こうした変化は、腎血行動態上の変化であって、機能的であり、一過性の変化であることから、必ずしも有害ではないのではないかと許容されてきた。本邦の高血圧診療ガイドラインであるJSH2014においても、「RA系阻害薬は全身血圧を降下させるとともに、輸出細動脈を拡張させて糸球体高血圧/糸球体過剰濾過を是正するため、GFRが低下する場合がある。しかし、この低下は腎組織障害の進展を示すものではなく、投与を中止すればGFRが元の値に戻ることからも機能的変化である」(JSH2014, p.71.)とある。一方で、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学校のSchmidt M氏らが、RAS阻害薬(ACE阻害薬、ARB)の服用を開始した12万例超について行ったコホート試験の結果は、こうした軽微なCrの上昇・推定GFRの低下が、必ずしも無害ではないことを示している(Schmidt M, et al. BMJ. 2017;356:j791.PMID: 28279964)。