感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

女性に対してもHIV曝露前予防(PrEP)成否の鍵は服薬率(解説:岡慎一氏)

 HIV感染リスクのある人が予防薬を飲むことにより感染を防ぐ(PrEP)取り組みが、試験的に行われていたのは2010年前後である。2012年には、米国でPrEPはHIV感染予防に有効として正式に承認され、その後世界中でその研究が進んだ。2024年4月現在PrEPが承認されていない国は、先進国では日本のみである(12年遅れで日本でもやっと薬事承認される可能性が出てきている)。  感染リスクの高い集団として、まず予防投薬の対象になったのが肛門性交を行う男性同性愛者(MSM)と、膣性交を行う性産業従事者(CSW)の女性であった。MSMは、自ら感染リスクが高いことと認知している人が多いため、多くの臨床試験においてPrEPの有効性は高かった。一方、CSWのPrEP有効率は、MSMに比べるとはるかに低く、プラセボ群と比べてもほとんど差のない試験結果まであった。その原因として考えられていた理由は2つあった。

ベイフォータス、新生児および乳幼児のRSウイルス発症抑制・予防にて製造販売承認取得/AZ

 アストラゼネカとサノフィは2024年3月27日付のプレスリリースにて、長時間作用型モノクローナル抗体であるベイフォータス(一般名:ニルセビマブ[遺伝子組換え])が「生後初回または2回目のRS(Respiratory Syncytial)ウイルス感染流行期の重篤なRSウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児および幼児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制」ならびに「生後初回のRSウイルス感染流行期の前出以外のすべての新生児および乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防」を適応として、3月26日に日本における製造販売承認を取得したことを発表した。

再発性尿路感染症、治療後も続く痛みの原因を解明か

 尿路感染症(UTI)の再発を繰り返す人は、抗菌薬による治療後も骨盤部位の痛みや頻尿が続くことが多いが、その原因は不明だった。しかし、米デューク大学のByron Hayes氏らが実施した研究で、UTIの発症を繰り返すことで膀胱内に非常に感度の高い神経細胞が過剰に増殖することが、これらの症状を引き起こしている可能性のあることが明らかになった。この研究結果の詳細は、「Science Immunology」に3月1日掲載された。  この研究でHayes氏らは、尿検査では陰性であるが痛みが残存する再発性UTI患者とUTIではない対照の膀胱生検を行い、痛みや炎症の調節に関与する神経ペプチドのサブスタンスP(SP)レベルについて比較した。その結果、再発性UTI患者では対照に比べて、粘膜固有層でのSPレベルが有意に高いことが明らかになった。尿検査でも、再発性UTI患者ではSPレベルが高いことが示された。これらのことから、再発性UTI患者では感覚神経が高度に活性化しており、それが長引く痛みや頻尿の原因である可能性の高いことがうかがわれた。

モデルナのコロナワクチン、通常承認を取得し、引き続き供給

 新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンを提供するモデルナは、2024年3月29日付のプレスリリースで、特例承認を受けていた「スパイクバックス筋注」の通常承認を3月27日付で取得したと発表した。  なお厚生労働省によると、2024年4月1日以降、65歳以上の人および60~64歳で対象となる人には、新型コロナウイルス感染症の重症化予防を目的として秋冬に自治体による定期接種が行われ、費用は原則有料となる。ただし、定期接種以外の時期であっても接種を希望するすべての人が、自費による任意接種が可能である。

抗IL-23自己抗体が日和見感染と関連/NEJM

 マイコバクテリア感染、細菌感染、真菌感染を有する患者では、抗インターロイキン-23中和抗体の存在が持続性の重症日和見感染と関連しており、その中和作用の強度が感染症の重症度と相関することが、米国国立アレルギー・感染症研究所のAristine Cheng氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年3月21・28日号に掲載された。  研究グループは、日和見感染において抗インターロイキン-23が役割を担っている可能性を検証する目的で検討を行った(米国国立アレルギー・感染症研究所などの助成を受けた)。

コロナ後遺症は月経異常、QOLやメンタルヘルスに影響

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した人のうち、約3人に1人が悩まされるといわれる「コロナ後遺症(Long COVID)」。新たに、コロナ後遺症のある18~50歳の女性を対象とする研究が行われた。その結果、約20%の女性がさまざまな月経異常を訴え、それに伴いQOLやメンタルヘルスが悪化していることが明らかとなった。岡山大学病院 総合内科・総合診療科の櫻田泰江氏、大塚文男氏らによる研究であり、詳細は「Journal of Psychosomatic Obstetrics and Gynecology」に1月25日掲載された。  コロナ後遺症の症状は多岐にわたり、オミクロン株の流行期には、倦怠感、頭痛、不眠が増加傾向であると報告されている。また、女性の健康に焦点を当てた最近の研究では、COVID-19の流行が女性の月経にさまざまな悪影響を及ぼしていることなども示されている。そこで著者らは、日本人の女性を対象として、コロナ後遺症としての月経異常の臨床的特徴を明らかにする研究を行った。

Long COVIDの原因は高レベルのサイトカイン産生?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後症状(long COVID)が生じている患者では、通常はウイルスの除去に伴い産生されなくなるサイトカインの一種であるインターフェロン(IFN)-γが、長期にわたって高レベルで産生され続けていることが明らかになった。研究グループは、これがlong COVIDの根本的なメカニズムである可能性があると述べている。英ケンブリッジ大学医学部およびケンブリッジ治療免疫学・感染症研究所のBenjamin Krishna氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に2月21日掲載された。

高齢者への2価コロナワクチン、脳卒中リスクは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するファイザー製またはモデルナ製のいずれかの2価ワクチンを接種後に脳卒中を発症した65歳以上の米国メディケア受給者において、接種直後(1~21日間)に脳卒中リスクが有意に上昇したことを示すエビデンスは確認されなかった。米国食品医薬品局(FDA)のYun Lu氏らが、自己対照ケースシリーズ研究の結果を報告した。2023年1月、米国疾病予防管理センター(CDC)とFDAは、ファイザー製の「BNT162b2」(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)を接種した65歳以上の高齢者における虚血性脳卒中に関する安全性の懸念を指摘していた。JAMA誌2024年3月19日号掲載の報告。

新型コロナウイルス感染症の認知機能障害は徐々に軽症化している(解説:岡村毅氏)

イングランドで80万例を対象にした、新型コロナウイルス感染症と認知機能の大規模調査である。まだよくわかっていないことの全体像をつかむための研究であり、規模が大きく、情報の確度も高く、適切な時期に適切な報告がなされたと思う。対象者は、期間(無症状/4週以内に完治/12週以内に完治/12週以上かかったが完治/12週以上かかってまだ症状がある)、感染株(オリジナル/アルファ/デルタ/オミクロン)、医療(救急受診/入院/集中治療室)などで分類している。認知機能は、直後再生、空間記憶、語義、抽象思考、空間操作、遅延再生などをみっちりとられる。なかなか大変である。まず、認知機能の全体を見ると、2020年1月に始まった世界的流行であるが、それから時間がたてばたつほどに感染者の認知機能低下は軽くなっている。古い株ほど、また症状の期間が長いほど、認知機能低下は重度である。常識的な結果といえる。

麻疹ワクチン不足、定期接種を最優先に/日医

 日本医師会常任理事の釜萢 敏氏が、2024年3月27日の定例記者会見で、現在の麻疹(はしか)の流行状況について報告した。  麻疹の届け出は、2019年は744例、2020年は10例、2021年は6例、2022年は6例、2023年は28例であったが、本年は3月17日までに20例あり、海外から持ち込まれる麻疹の感染者が着実に増えてきているという認識を示した。そのような中で、麻疹含有ワクチンの接種を希望する人が増え、それによって定期接種のMR(麻疹風疹混合)ワクチンが入手できないという懸念が寄せられているという。