循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:13

症候性の重症大動脈弁狭窄症に対する新しい非侵襲的超音波治療(NIUT)の可能性(解説:原田和昌氏)

TAVIが開発されたおかげで、手術困難な高齢者の大動脈弁狭窄症も治療が可能となったが、それでも重症大動脈弁狭窄症を有する高齢者の16%程度は治療対象から外れるといわれている。したがって、併存症の多い寿命の限られた高齢の石灰化大動脈弁狭窄症に対する真に非侵襲的な治療の開発が求められている。非侵襲的超音波治療(NIUT)は、超音波を集中させて正確な位置に当て、石灰化した大動脈弁尖を軟らかくして大動脈弁の動きを良くするものである。Valvosoftデバイス(Cardiawave社、ルバロワ・ペレ、フランス)はリアルタイムの超音波画像で位置決めをし、泌尿器科で使う体外衝撃波結石破砕治療よりも低いエネルギー密度の超音波パルスで治療を行うものであり、これを用いたNIUTの安全性と実現可能性(有効性ではない)を多施設共同、シングルアームで検証した。新しいデバイスの少数例のパイロット試験である。

急性冠症候群へのニトログリセリン、高齢者には有害?

 ニトログリセリンは急性冠症候群(ACS)の第1選択薬として長い間使用されてきたが、ACSの転帰改善のための使用を支持する研究は限られている。また、高齢患者の増加や、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と最適な薬物療法(OMT)などのACS管理の進歩により、PCI後の転帰におけるニトログリセリンの有効性を再評価する必要性が高まっている。今回、宮崎大学の小牧 聡一氏らが単施設での後ろ向き研究で検討した結果、とくに75歳以上の高齢患者においてPCI実施前のニトログリセリン投与が血圧低下および有害な臨床転帰と関連することが示された。Open Heart誌2024年1月11日号に掲載。

妊娠高血圧腎症予防のCa補充、低用量vs.高用量/NEJM

 妊娠中のカルシウム補充について、低用量(500mg/日)は高用量(1,500mg/日)に対し、妊娠高血圧腎症のリスクに関して非劣性を示したことが、インドとタンザニアでそれぞれ行われた無作為化試験の結果で示された。また、早産のリスクに関して、インドの試験では非劣性であったが、タンザニアの試験では同様の所見は示されなかったという。インド・St. John's Research InstituteのPratibha Dwarkanath氏らが報告した。世界保健機関(WHO)は、妊娠高血圧腎症のリスク軽減のため、食事からのカルシウム摂取量が少ない住民集団の妊婦に対して、1日1,500~2,000mgのカルシウムを3回に分けて補充するよう推奨している。しかし、服薬アドヒアランスへの懸念と複雑な投与計画に伴う高コストのプログラムのために、現状では高用量カルシウム補充を実施している国は数ヵ国にとどまるという。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

ATTR心アミロイドーシス、acoramidisが予後を改善/NEJM

 トランスサイレチン型(ATTR)心アミロイドーシス患者において、acoramidisの投与により、全死因死亡、心血管関連入院および心機能と身体機能の要素を含む4段階の階層的主要アウトカムがプラセボより有意に改善し、有害事象は両群で類似していた。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJulian D. Gillmore氏らが、第III相無作為化二重盲検比較試験「Efficacy and Safety of AG10 in Subjects with Transthyretin Amyloid Cardiomyopathy:ATTRibute-CM試験」の結果を報告した。ATTR心アミロイドーシスは、単量体がミスフォールドされたトランスサイレチン(TTR)の心臓への蓄積が特徴である。acoramidisは四量体TTRの解離を阻害する高親和性TTR安定化薬で、ex vivoでは異なる投与間隔の全体で90%以上の安定化をもたらし、第II相試験で有効性が確認されていた。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

外科手技に着想を得たレシピ集公開/ゲティンゲ

 ゲティンゲは1月11日付のプレスリリースにて、外科手技に着想を得た「The Heart Surgeon's Cookbook―心臓血管外科医のレシピ集―」の公開を発表した。この料理本は心臓血管外科・胸部外科医のNirav Patel氏とニューヨークのミシュラン二つ星レストランAskaの創設オーナーFredrik Berselius氏のコラボレーションによるもので、本書を通じ、心臓血管外科医のスキルの高さに焦点を当て、心臓血管外科における人材育成の課題を啓発することを目的としている。  料理本に含まれる9つのレシピでは、外科医の手技やメンタルコントロールの向上効果を狙った手術室外で取り組める意外性と遊び心のある訓練法が提案されている。各レシピは、精緻な切開、狭い箇所への注入、縫合、解剖、反復など、繊細な手先の動きと集中力を試す内容となっている。

スマートウォッチが子どもの隠れた不整脈を検出

 Connor Heinzさんは12歳のときから動悸を感じるようになったが、医師はその原因究明に苦慮していた。Connorさんが装着していた心臓のモニタリングデバイスは使い心地が悪く、また、不整脈が起こる頻度は数カ月間に1回程度だったため、問題を特定することが難しかったのだ。Connorさんの心臓の問題が何なのか、主治医には見当がついていたが、それを確かめたいと考えていた。そこで主治医は、Connorさんに母親のスマートウォッチを付けてもらうことにした。研究グループによると、小児の心疾患の診断に役立てることを目的としたスマートウォッチの使用は、心臓専門医の間で急速に普及しつつあるという。

脂質異常症に対する遠隔栄養指導の効果は対面と同等

 脂質異常症の患者に対する管理栄養士によるオンラインでの栄養指導は、対面での指導と同等の効果があるとする研究結果が報告された。米ミシガン大学のShannon Zoulek氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Lipidology」に11月17日掲載された。  オンラインによる遠隔医療は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによって急速に普及した。その後、COVID-19は収束したが、引き続き遠隔医療を利用する患者が少なくない。本研究が行われたミシガン大学の心臓病予防のための栄養プログラムでは、2022年時点において受診者の約5人に1人が遠隔での指導を希望している。ただし、これまでのところ、脂質異常症に対する栄養指導の効果が、対面と遠隔で異なるのかどうかは十分検討されておらず、Zoulek氏らはその点を観察研究により検証した。

脂の多い魚の摂取はCVDリスクを低下させる

 心血管疾患(CVD)の家族歴のある人は、サケ、サバ、ニシン、イワシなどの脂肪の多い魚の摂取を増やすと良いようだ。CVDの家族歴がありオメガ3脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)の血中濃度が低い人では、CVDの家族歴がなくEPA/DHAの血中濃度も低くない人に比べて、CVDのリスクが40%以上高いことが新たな研究で明らかになった。一方、EPA/DHAの血中濃度が十分であれば、CVDの家族歴があってもリスクは25%の増加にとどまることも示されたという。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のKarin Leander氏らによるこの研究の詳細は、「Circulation」に12月4日掲載された。

幹細胞治療が進行性心不全患者のQOLを改善

 進行した心不全患者には幹細胞治療が有効であることが、臨床試験で明らかになった。損傷した心臓組織を修復するようにプログラムされた幹細胞の注入を受けた患者では、シャム治療を受けた患者と比べて全体的な生活の質(QOL)が改善することが示されたのだ。米メイヨークリニックの循環器専門医である山田さつき氏らによるこの研究の詳細は、「Stem Cell Translational Medicine」に11月24日掲載された。  心筋梗塞後に心不全が生じる例は珍しくない。これは、心筋が損傷を受けることで心臓から全身に血液を送り出す力が弱まるためだと研究グループは説明する。心不全患者の多くには、息切れ、疲労、足のむくみなどの症状が現れる。病状が進行すると、日常生活が制限され、QOLが低下する。論文の上席著者である、メイヨークリニック再生医療センター長のAndre Terzic氏は、「心不全は急増しつつある疾患で、新規の治療法の開発が必要だ」と同クリニックのニュースリリースで述べている。

レボチロキシンの静注投与は不安定な脳死患者の心臓提供率を向上させるか?(解説:小野稔氏)

脳死による脳圧亢進が起こると、カテコラミンをはじめとしたさまざまなメディエータが放出されることが知られている。脳死後によく遭遇する不安定な血行動態や心機能の障害に甲状腺ホルモンを主体とした神経内分泌障害が寄与しているという理論があり、それを予防あるいは改善する目的で欧米では古くから経験的に脳死ドナーの前処置として甲状腺ホルモンが投与されてきた。補充療法の妥当性についてはいくつかの大規模な観察研究が行われ、有効性が示唆されてきた。しかし、無作為化試験は少数例を対象にドナーの血行動態を評価するに限られ、臓器利用率の向上を評価するには不十分であった。