外科/乳腺外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

cT1-2N0乳がんにおけるSLNB省略、5年RRFSで非劣性(BOOG2013-08)/SABCS2025

 乳房温存療法(乳房温存手術および全乳房照射)を受けるcT1-2N0乳がんにおけるセンチネルリンパ節生検(SLNB)の省略を検討したBOOG2013-08試験で、SLNB非施行群が5年領域無再発生存(RRFS)率においてSLNB施行群に非劣性を示した。オランダ・Maastricht University Medical CenterのMarjolein L. Smidt氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。  BOOG2013-08試験は、2015~22年にオランダの25施設で実施された多施設共同非劣性無作為化第III相試験である。

ER+/HER2-進行乳がんへのimlunestrant、OS中間解析時点の最新データ(EMBER-3)/SABCS2025

 エストロゲン受容体陽性HER2陰性(ER+/HER2-)の進行乳がんを対象とした経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)imlunestrantの第III相EMBER-3試験において、事前に規定された全生存期間(OS)中間解析時点(追跡期間中央値:28.5ヵ月)での各評価項目の最新データを、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのKomal L. Jhaveri氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。  本試験の1次解析(追跡期間中央値:15.7ヵ月)では、ESR1変異を有する患者においてimlunestrant群が標準内分泌療法群に比べて無増悪生存期間(PFS)が有意に改善し、またESR1変異の有無にかかわらず全患者において、imlunestrant+アベマシクリブ群がimlunestrant群に比べPFSを有意に改善したことが報告されている。

乳房温存術時1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性乳がん、SNLB単独はcALNDに非劣性示せず(INSEMA)/SABCS2025

 乳房温存術時に1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性の浸潤性乳がん患者において、センチネルリンパ節生検(SNLB)のみの施行は、完全腋窩リンパ節郭清(cALND)の施行と比較し無浸潤疾患生存期間(iDFS)に関して非劣性を示さなかった。ドイツ・ロストック大学のToralf Reimer氏が、ドイツの142施設およびオーストリアの9施設で実施した前向き無作為化非劣性試験「Intergroup Sentinel Mamma:INSEMA試験」における、2次無作為化後の副次評価項目の解析結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。  本研究では、18歳以上で乳房温存術と術後放射線治療を受ける予定の浸潤性乳がん患者(腫瘍サイズ≦5cmのcT1またはcT2、かつcN0)を対象として、SNLB省略群とSNLB単独群に1対4の割合で無作為に割り付けた(初回無作為化)。その後、SNLB単独群で1~3個のセンチネルリンパ節転移陽性と診断された患者を、SNLB単独群とcALND群に1対1の割合で無作為に割り付けた(2次無作為化)。

『肝細胞癌診療ガイドライン』改訂――エビデンス重視の作成方針、コーヒー・飲酒やMASLD予防のスタチン投与に関する推奨も

 2025年10月、『肝細胞癌診療ガイドライン 2025年版』(日本肝臓学会編、金原出版)が刊行された。2005年の初版以降、ほぼ4年ごとに改訂され、今回で第6版となる。肝内胆管がんに独自ガイドラインが発刊されたことを受け、『肝癌診療ガイドライン』から名称が変更された。改訂委員会委員長を務めた東京大学の長谷川 潔氏に改訂のポイントを聞いた。  今版の構成上の変更点としては、「診療上の重要度の高い医療行為について、新たにシステマティックレビューを行わなくとも、明確な理論的根拠や大きな正味の益があると診療ガイドライン作成グループが判断した医療行為を提示するもの」については、Good Practice Statement(GPS)として扱うことにした。これにより既存のCQ(Clinical Question)の一部をGPSに移行した。

ER+低リスクDCIS、手術せず内分泌療法単独での有用性を検証(LORETTA)/SABCS2025

 エストロゲン受容体陽性(ER+)の低リスク非浸潤性乳管がん(DCIS)に対して、手術せず内分泌療法のみ実施する治療が選択肢となる可能性がLORETTA試験(JCOG1505)で示唆された。本試験の主要評価項目である5年累積同側乳房内浸潤がん(IPIC)発生割合は事前に設定した閾値を達成しなかったものの、9.8%と低く、また乳がんによる死亡はなかったことを、名古屋市立大学の岩田 広治氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。  LORETTA試験(JCOG1505)は、JCOG乳がんグループによるER+の低リスクDCISに対して、手術と放射線照射なしで内分泌療法のみを実施する低侵襲治療の有効性と安全性の検証を目的とした単群検証的試験である。

術前療法後に残存病変を有するHER2+早期乳がん、T-DXd vs.T-DM1(DESTINY-Breast05)/NEJM

 再発リスクの高い、術前化学療法後に浸潤性残存病変を有するHER2陽性(+)の早期乳がん患者において、術後療法としてのトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)はトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較して、無浸潤疾患生存期間(iDFS)を統計学的に有意に改善し、毒性作用は主に消化器系および血液系であったことが、ドイツ・Goethe University FrankfurtのSibylle Loibl氏らDESTINY-Breast05 Trial Investigatorsが行った第III相の国際共同非盲検無作為化試験「DESTINY-Breast05試験」の結果で示された。NEJM誌オンライン版2025年12月10日号掲載の報告。

ER+/HER2-進行・転移乳がん、ESR1変異検出時のcamizestrantへの切り替えでPFS延長(SERENA-6)/SABCS2025

 ASCO2025で第III相SERENA-6試験の中間解析結果が報告され、ER+/HER2-の進行または転移を有する乳がんと診断され、アロマターゼ阻害薬(AI)+CDK4/6阻害薬の併用療法を開始してESR1変異が検出された患者が、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)および完全ER拮抗薬であるcamizestrant+CDK4/6阻害薬へ切り替えることによって、無増悪生存期間(PFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。今回、SERENA-6試験の最終PFS解析結果とESR1変異血中循環腫瘍DNA(ctDNA)動態の探索的解析の結果を、フランス・Institut CurieのFrancois-Clement Bidard氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で報告した。

ブロッコリーやキャベツ摂取量が多いほど乳がんリスク低下/SABCS2025

 ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科野菜の摂取量が多いほど乳がんの発症リスクが低く、とくにER陰性乳がんでその傾向が顕著である可能性を、米国・ハーバード大学医学大学院のAndrea Romanos-Nanclares氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で報告した。  アブラナ科野菜に含まれるグルコシノレート(glucosinolate)は、実験モデルで乳がん細胞増殖抑制作用が示されているが、エビデンスは依然として限定的で一貫性に欠けている。そこで研究グループは、大規模前向きコホート研究のデータを用いて、アブラナ科野菜およびグルコシノレートの摂取量と乳がんリスクとの関連を長期間にわたり検証した。

THP療法後に病勢進行のないHER2+転移乳がん維持療法、tucatinib追加でPFS改善(HER2CLIMB-05)/SABCS2025

 タキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ(THP)併用療法後に病勢進行のないHER2陽性(HER2+)転移乳がん患者における維持療法として、トラスツズマブ+ペルツズマブ(HP)へのtucatinibの追加は、プラセボ+HP療法と比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善した。米国・Sarah Cannon Research InstituteのErika P. Hamilton氏が、日本を含む23ヵ国で実施された第III相HER2CLIMB-05試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2025、12月9~12日)で発表した。なお、この結果はJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年12月10日号に同時掲載されている1)。

ロボット支援直腸がん手術、国内リアルワールドデータが示す新たな標準治療の可能性

 国内約1.8万人分のリアルワールドデータを解析した多施設後ろ向きコホート研究により、進行直腸がんに対するロボット支援手術が、開腹および腹腔鏡手術と比較して短期・長期の両成績で有意に優れていることが示された。5年全生存率はロボット支援手術で94%と最も高く、術後合併症の発症率や総入院費用も最小であったという。研究は東京科学大学消化管外科学分野の花岡まりえ氏、絹笠祐介氏らによるもので、詳細は10月28日付で「Colorectal Disease」に掲載された。  従来の腹腔鏡手術(LRR)は直腸がん治療に有効であるが、長期的な腫瘍学的成績は開腹手術(ORR)と同等で、直腸膜間全切除(TME)が不完全になるリスクがあることが報告されている。ロボット支援手術(RARR)は低侵襲なアプローチとして短期成績に優れるとされる一方、長期成績のデータは限られている。そこで本研究では、国内大規模リアルワールドデータを用いて、進行直腸がん患者に対するORR、LRR、RARRの短期・長期成績を比較することを目的とした。