外科/乳腺外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

がん治療中のその輸液、本当に必要ですか?/日本臨床腫瘍学会

 がん患者、とくに終末期の患者において最適な輸液量はどの程度なのか? 第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「その治療、やり過ぎじゃないですか?」の中で、猪狩 智生氏(東北大学大学院医学系研究科緩和医療学分野)が、終末期がん患者における輸液の適切な用い方について、ガイドラインでの推奨や近年のエビデンスを交え講演した。  猪狩氏はまず実際の症例として、70代の膵頭部がん(StageIV)患者の事例を紹介した:1次治療(GEM+nab-PTX)後にSDとなったものの、8ヵ月後に腹痛、吐き気で緊急入院し、がん性腹膜炎、麻痺性イレウスと診断。中心静脈確保、絶食補液管理(1日2,000mL)となり、腹痛に対しオピオイドを開始したものの症状コントロール困難となった。

de novo転移乳がん、治療を受けない場合の生存期間

 新規に転移のある乳がん(dnMBC)と診断され、その後治療を受けなかった患者の全生存期間(OS)中央値は2.5ヵ月と、1回以上治療を受けた患者の36.4ヵ月に比べて有意に短かったことが、米国・Duke University Medical CenterのJennifer K. Plichta氏らの研究でわかった。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2024年3月5日号に掲載。

カペシタビンによる手足症候群は外用ジクロフェナクで予防?/JCO

 カペシタビンは、乳がんや消化管がんの治療に用いられるが、頻度の高い副作用の1つに手足症候群があり、減量が必要となることがある。ソラフェニブによる手足症候群の予防には尿素クリームが有用とされているが、カペシタビンによる手足症候群の予防への有用性は明らかになっていない。また、セレコキシブは手足症候群の予防効果があるが長期連用には副作用の懸念が存在する。そこで、全インド医科大学のAkhil Santhosh氏らが、外用ジクロフェナクの手足症候群予防効果を検証する第III相無作為化比較試験を実施した。その結果、外用ジクロフェナクはプラセボと比較して、カペシタビンによる手足症候群を有意に抑制することが示された。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年2月27日号で報告された。

便潜血検査でのがん検診、有効性を評価~38万人を14年間追跡

 便潜血検査を用いた大腸がん定期検診で、大腸がん死亡率をどれくらい低下させられるのか。スウェーデン・SodersjukhusetのJohannes Blom氏らが、便潜血検査による大腸がん定期検診時期による大腸がん死亡率を、前向きコホート研究で検討した。その結果、60~69歳の検診対象住民のうち、最初の5年間に検診案内が届いた人は、それより遅く届いた人や届かなかった人に比べて、14年間の追跡期間において大腸がん死亡率が14%減少したことがわかった。JAMA Network Open誌2024年2月27日号に掲載。  本試験は、スウェーデン・ストックホルム-ゴットランド地域の1938~54年生まれの検診対象者(60~69歳)を対象に、2008年1月1日~2021年12月31日に実施された。住民は2年ごとの便潜血検査(グアヤック法)による大腸がん検診に早期(2008~12年)または後期(2013~15年)に案内されるか、またはまったく案内されておらず、早期に案内された大腸がん人を曝露群、後期に案内された人または案内されなかった人を対照群とした。主要評価項目は大腸がん死亡率とした。超過死亡数は、大腸がんに罹患した人の全死因死亡数から、CRCに罹患しなかった場合に予想される死亡数を引いた。また、死亡数と人年に基づくポアソン回帰分析を用いて、死亡の発生率比(RR)と95%信頼区間(CI)を追跡年数と到達年齢で調整し推定した。

進行固形がんのリキッドバイオプシーにおける偽陽性/日本臨床腫瘍学会

 血漿検体を用いて遺伝子のシークエンス解析を行うリキッドバイオプシーはがん治療で広く用いられている。血漿中にはがん由来のDNAと共に血液由来のDNAも存在するが、通常は結果に影響しない。しかし、加齢などにより、遺伝子異常を持った血液細胞が増殖するクローン性造血(CH)が起こり、これらをがん由来の遺伝子異常と判断することで起こる偽陽性が懸念されている。

局所進行直腸がん術前治療におけるctDNA活用に期待/日本臨床腫瘍学会

 局所進行直腸がんの術前治療の決定において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)解析の有用性が示唆された。  局所進行直腸がんでは手術後の再発が問題だったが、直腸間膜全切除(TME)手術や術前化学放射線療法 (CRT)によって局所再発のコントロールが実現した。近年では術前化学療法 (NAC)や、CRTに化学療法を追加するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が登場し、遠隔再発の抑制が報告されている。一方、すべての患者にTNTを行うべきか明確な基準はなく、一部の患者では過剰治療も懸念されている。  そのような中、術後再発予想因子としてctDNAの役割が期待されている。大阪大学の浜部 敦史氏らは、術前治療後ctDNAの状況が局所進行直腸がんの再発に影響するかを検討したCIRCULATE-Japan GALAXY trialの結果を、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。

乳がん周術期ICI治療、最新情報を総括/日本臨床腫瘍学会

 近年、いくつかのがん種で免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用した周術期治療が開発されている。乳がん領域では2022年9月、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するペムブロリズマブの術前・術後治療が承認されており、他のICIを用いた試験も実施されている。さらにHR+/HER2-乳がんに対する試験も進行中である。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「ICIで変わる、周術期治療」で、乳がんの周術期ICI治療の試験成績や進行中の試験などの最新情報を、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が紹介した。

T-DXd中止後の乳がん治療、最も多いレジメンは?(EN-SEMBLE)/日本臨床腫瘍学会

 切除不能または転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象に、T-DXd中止後に実施した治療レジメンの分布を調査したEN-SEMBLE試験の中間解析の結果、半数以上の患者が抗HER2療法を継続していたことを、愛知県がんセンターの能澤 一樹氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。  現在、T-DXdの後治療に関しては見解が割れており、間質性肺疾患などの有害事象や病勢進行によってT-DXdを中止した後の最適な治療の決定は喫緊の課題である。そこで、研究グループは、T-DXd中止後に使用される治療レジメンの分布とその有効性・安全性を検討するために多施設コホート研究を行った。今回は、中間解析としてT-DXd中止後の治療レジメンの分布に関するデータが発表された(データカットオフ:2023年5月31日)。

進行乳がんへのDato-DXd、アジア人でもPFS延長(TROPION-Breast01)/日本臨床腫瘍学会

 化学療法の前治療歴のあるHR陽性(+)/HER2陰性(-)の手術不能または転移・再発乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験のアジア人サブグループ解析の結果、全体集団と同じく抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は化学療法よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長し、かつ管理可能な安全性プロファイルで、治療薬の減量/中断が少なかったことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)のPresidential Sessionで発表した。  TROPION-Breast01試験は、HR+/HER2-、1~2ラインの全身化学療法歴、内分泌療法で進行または不適、ECOG PS 0~1の手術不能または転移・再発の乳がん患者を、Dato-DXdを受ける群と治験医師選択の化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を受ける群に1:1に無作為に割り付けたグローバル第III相試験である。全体集団において、Dato-DXd群では化学療法群よりも有意にPFSが延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は少なかったことが、2023年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告されている。今回は、東アジア(日本、中国、韓国、台湾)で登録された患者における有効性と安全性が解析された(データカットオフ:2023年7月17日)。