精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

日本におけるアルツハイマー病診断の時間短縮フロー〜東京大学

 アルツハイマー病の診断において、血液バイオマーカーによる検査が注目されており、日本でも保険適用が待ち望まれている。東京大学の五十嵐 中氏らは、日本でのレカネマブ治療について、異なるワークフローにおける現在の診断検査の状況を推定するため、本研究を実施した。Alzheimer's & Dementia誌2025年10月7日号の報告。  ダイナミックシミュレーションを用いて、4つのシナリオ(現在の診断ワークフロー、トリアージツールとしての血液バイオマーカー[BBM]検査、確認診断のためのBBM検査およびこれらの併用)に関して、待ち時間と治療対象患者数を推定した。検査の需要を推定するため、オンライン調査により支払意思額(WTP)と無形費用を評価した。

治療抵抗性うつ病の認知機能維持に最適な薬物治療戦略は?

 高齢者における治療抵抗性うつ病に対するさまざまな抗うつ薬治療戦略が認知機能にどのような影響を及ぼすかは、これまで明らかになっていなかった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のHanadi A. Oughli氏らは、高齢の治療抵抗性うつ病に対する薬物療法が認知機能に及ぼす影響を評価した。The Lancet Healthy Longevity誌2025年10月号の報告。  OPTIMUM試験の事前に規定された2次解析を行った。OPTIMUM試験は、さまざまな薬物療法の増強または切り替え戦略を比較した実践的なランダム化有効性比較試験であり、60歳以上の治療抵抗性うつ病患者を対象に実施された試験である。対象患者は、5つの大学医療センター(米国:4施設、カナダ:1施設)から募集された。ステップ1では、治療抵抗性うつ病患者391例をアリピプラゾール増強群(1日最大15mgまで)、bupropion増強群(1日最大450mgまで)、bupropion切り替え群(1日最大450mgまで)に1:1:1の割合でランダムに割り付け分析した。ステップ2では、ステップ1の適応外患者またはこのステップ1で寛解に達しなかった患者182例をリチウム増強群(目標血漿中濃度:0.4~0.8mEq/L)またはノルトリプチリンへの切り替え群(目標血漿中濃度:80~120ng/mL)に1:1でランダムに割り付け分析した。各ステップは10週間継続した。ステップ1またはステップ2の完了後、12ヵ月間のフォローアップ調査を行った。主要アウトカムは、ステップ1およびステップ2終了時の認知機能とし、米国国立衛生研究所(NIH)ツールボックス認知バッテリーの一部であるNIHツールボックス流動性認知複合スコアを用いて評価し、ITT集団において解析した。ITT集団とプロトコール適合集団の両方において実施された探索的事後解析では、流動性認知複合スコアを構成する個々の認知課題の変化を評価した。

多くの若者がAIチャットボットにメンタルヘルスの問題を相談

 米国では、12〜21歳の若者の約8人に1人が、メンタルヘルスに関する助言を求めて人工知能(AI)チャットボットを利用していることが、新たな研究で明らかになった。研究グループは、これは、AIチャットボットが若者の不安や悩み、苦しみを、プライバシーを保ちながら安価かつ即座に聞き出す存在となっていることを反映している可能性が高いとの見方を示している。米国の非営利の研究機関であるランド研究所のJonathan Cantor氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に11月7日掲載された。

日本人小児におけるADHDサブタイプと肥満との関係

 福島県立医科大学の川崎 幸彦氏らは、日本人小児における注意欠如多動症(ADHD)サブタイプの特徴とBMI-SDスコアに基づく肥満との関連を明らかにするため、ADHDの小児患者を対象とした臨床調査を実施した。Brain & Development誌オンライン版2025年10月29日号の報告。  対象は、ADHDと診断された日本人小児115例。患者は、ADHDのサブタイプ別に次の3群に分類された。グループ1は不注意優勢型ADHD(ADHD-I)、グループ2は多動性・衝動性優勢型ADHD(ADHD-HI)、グループ3はこれらの複合サブタイプ(ADHD-C)。各群の臨床的特徴を分析した。

ガイドライン順守率が精神疾患の長期アウトカムに及ぼす影響〜統合失調症とうつ病におけるEGUIDEプロジェクト

 精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)は、精神科医に対してガイドラインの教育の講習を行い、統合失調症およびうつ病のガイドライン順守治療を促進することを目的として、日本で開始されたプロジェクトである。参加医師への短期的な効果は、すでに報告されていたが、長期的および施設全体への効果は依然として不明であった。国立精神・神経医療研究センターの長谷川 尚美氏らは、ガイドライン順守による治療が、施設間で時間の経過とともに改善するかどうかを評価した。その結果、潜在的な拡散効果またはスピルオーバー効果が示唆された。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年12月号の報告。

中年期の高感度トロポニンI高値が認知症と関連/Eur Heart J

 中年期の高感度心筋トロポニンI(hs-cTnI)高値は、その後の認知症発症リスクの上昇、認知機能低下の加速、脳容積の減少と関連していたことが示された。本結果は、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのYuntao Chen氏らが実施した前向きコホート研究「Whitehall II研究」で示され、European Heart Journal誌オンライン版2025年11月6日号で報告された。  研究グループは、Whitehall II研究の参加者のうち、ベースライン時(1997~99年)に45~69歳で、認知症および心血管疾患の既往がなく、hs-cTnI値が得られた5,985例を対象として解析を行った。hs-cTnI値に基づき、参加者を4群(2.5ng/L未満[定量下限未満:参照群]、2.5~3.4ng/L、3.5~5.2ng/L、5.2ng/L超)に分類した。主要評価項目は認知症の発症とした。認知機能の推移および脳MRI画像指標(2012~16年のサブ解析:641例)についても評価した。また、認知症発症例と非発症例(年齢、性別、教育歴でマッチング)を1:4の割合でマッチングさせたコホート内症例対照研究により、認知症診断前のhs-cTnI値の長期的推移を検討した。

気象関連疼痛に期待される食事性フラボノイドの有用性

 悪天候や気象変動は健康に悪影響を及ぼし、気象関連疼痛と呼ばれる症状を引き起こす可能性がある。症状の緩和には、鎮痛薬などによる薬物療法が一般的に用いられているが、副作用を引き起こす可能性がある。そのため、非薬物療法や食事療法への関心が高まっている。大塚製薬の池田 泰隆氏らは、気象関連疼痛に対する食事性フラボノイドであるケンフェロールの有効性を評価するため、オープンラベルパイロット研究を実施した。International Journal of Biometeorology誌2025年10月号の報告。

断続的断食は成人の認知機能に影響しない

 食事を摂取する時間と断食する時間を定期的に繰り返す断続的断食(インターミッテントファスティング)を行っても、成人の思考力、記憶力、問題解決能力などの知的機能が鈍ることはないことが、新たな研究で明らかになった。オークランド大学(ニュージーランド)心理学准教授のDavid Moreau氏とザルツブルク大学(オーストリア)生理学部のChristoph Bamberg氏によるこの研究結果は、「Psychological Bulletin」に11月3日掲載された。  Moreau氏は、「本研究により、全体的には、短期間の断食が知的機能を低下させるという一貫したエビデンスは存在しないことが明らかになった。断食を行った人の認知機能の成績は、直前に食事をした人と驚くほど似通っていた。これは、食物を摂取していない状態でも認知機能は安定していることを示唆している」と米国心理学会(APA)のニュースリリースで述べている。

軽微な難聴で認知症リスク上昇、APOE ε4保有者で顕著

 加齢に伴う難聴は、認知症の修正可能なリスク因子の1つとされるが、脳構造の変化や遺伝的背景との相互作用については不明な点が多かった。米国・テキサス大学サンアントニオ校のFrancis B. Kolo氏らの研究によると、中年期以降の軽微ないし軽度の難聴であっても、脳容積の減少、白質病変の進行、認知症発症リスクの上昇と有意に関連していることが明らかになった。とくにアルツハイマー病のリスク遺伝子であるAPOE ε4アレル保有者において、正常聴力者よりも、軽微以上の難聴者のほうが、認知症発症リスクが約3倍も高いことが示された。JAMA Network Open誌2025年11月5日号に掲載。

日本人不眠症患者におけるレンボレキサント切り替え後のベネフィット評価

 デュアルオレキシン受容体拮抗薬であるレンボレキサントは、成人の不眠症治療薬として日本で承認されている。久留米大学の小曽根 基裕氏らは、多施設共同SOMNUS試験のデータを用いて、日本人不眠症患者における前治療からレンボレキサントへ切り替え後の睡眠日誌に基づく睡眠パラメーター、自己申告による睡眠の質、不眠症の重症度、健康関連の生活の質(QOL)について報告を行った。Sleep Medicine X誌2025年9月25日号の報告。  SOMNUS試験は、プロスペクティブ多施設共同非盲検試験である。本試験のデータより抽出した、Z薬(単剤療法コホート:25例)、スボレキサント(単剤療法コホート:25例、併用コホート:21例)、ラメルテオン(併用コホート:19例)からレンボレキサントに切り替えた4つのコホートにまたがる90例の患者を対象に、最大14週間までのデータを解析した。