精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

妊娠後期の抗てんかん薬、薬剤ごとの児への影響は?/NEJM

 出生前に抗てんかん薬に曝露された児は、曝露されていない児より自閉症スペクトラム障害の発生率が高いことが示された。ただし、適応症やその他の交絡因子で調整すると、トピラマートとラモトリギンへの曝露児では実質上その関連がみられなくなったのに対し、バルプロ酸への曝露児ではリスクが高いままであった。米国・ハーバード大学T.H. Chan公衆衛生大学院のSonia Hernandez-Diaz氏らが、米国の2つの医療利用データベースを用いた解析結果を報告した。母親の妊娠中のバルプロ酸使用は、児の神経発達障害のリスク上昇との関連が示されている。一方で母親のトピラマート使用に関連した児の自閉症スペクトラム障害のリスクに関しては、限定的だが相反するデータが示されていた。NEJM誌2024年3月21・28日号掲載の報告。

降圧薬治療による認知症リスク低下、超高齢やフレイルでも

 降圧薬治療で認知症リスクが低下するというエビデンスはあるが、これが一般集団の高齢者にも一般化できるかは不明である。今回、イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らが、一般集団の高齢者において、新たに降圧薬の服用を開始した患者について検討したところ、降圧薬治療と認知症リスクの低下の関連が示唆された。また、この関連は超高齢(85歳以上)やフレイルの患者でも同様であったという。Journal of the American College of Cardiology誌2024年4月2日号に掲載。

運転パフォーマンスに対する睡眠薬の残存効果の影響~ネットワークメタ解析

 睡眠薬には残存効果があり、運転中の安全性に悪影響を及ぼす可能性がある。イタリア・フェデリコ2世ナポリ大学のMichele Fornaro氏らは、不眠症患者における睡眠薬の残存効果と運転パフォーマンスへの影響を明らかにするためネットワークメタ解析を実施した。European Neuropsychopharmacology誌2024年4月号の報告。  2023年5月28日までに公表された、不眠症患者と健康対照者を比較した睡眠薬使用および運転に関するランダム化比較試験(RCT)を、PubMed、EMBASE、TRID、Clinicaltrials.gov、WHO-ICTRP、Web Of Scienceより検索した。エンドポイントとして、車両の横位置の標準偏差(SDLP)、朝の最初の運転時における障害率を考慮した。バイアスリスクおよび不均一性(グローバル/ローカル)を測定し、エビデンスの信頼性を評価するためCINeMAを用いた。

統合失調症診断の指標となりえる唾液中ガレクチン3レベル

 精神疾患を特定する生物学的マーカーはほとんどなく、精神疾患患者に対する侵襲的なサンプリング手法は困難なケースも少なくないため、非侵襲的な手法である唾液サンプルの活用は、有用であると考えられる。パキスタン・Islamic International Medical CollegeのSaba Shoukat氏らは、統合失調症患者と健康対照者における血清および唾液中のガレクチン3レベルの比較を行った。Journal of the College of Physicians and Surgeons Pakistan誌2024年2月号の報告。  2022年9月~2023年5月に、Islamic International Medical CollegeとBenazir Bhutto Hospitalの精神医学研究所と共同で横断的研究を実施した。対象は、統合失調症患者30例および年齢性別がマッチした健康対照者30例。統合失調症の診断は、DSM-Vの診断基準に従った。対象者から無刺激で口腔内全体から唾液を摂取するため、唾液を吐きだす方法により収集した。EDTAチューブを用いて血液サンプルを収集し、統合失調症患者の唾液および血清中のガレクチン3レベルを測定した。ガレクチン3の検出にはELISA法を用いた。独立サンプルのt検定およびピアソン相関分析を行った。

日本における認知症教育による潜在的態度の変化

 東京大学の松本 博成氏らは、成人および高齢者における認知症に対する偏見などの潜在的な態度の測定に関して、その実現可能性と妥当性を評価し、仮想現実(VR)を用いた認知症フレンドリー教育が潜在的な態度に及ぼす影響を評価した。Australasian Journal on Ageing誌オンライン版2024年2月15日号の報告。  ランダム化比較試験のデータを2次分析した。東京在住の20~90歳が、VRの有無にかかわらず、認知症フレンドリー教育に参加した。認知症フレンドリー教育プログラム終了後、Implicit Relational Assessment Procedure(IRAP)を用いて、認知症に対するimplicitを測定した。

職場で怒りを表す人は評価されにくい

 職場で怒りをあらわにする人は評価されにくいことが、新たな研究で示された。研究グループは、「先行研究では、職場で怒りを表す人は有能と判断され、より高い地位を維持できることが示唆されていたが、今回の研究ではそれを否定する結果が示された」と説明している。ヘブライ大学(イスラエル)政治学・国際関係学分野のRoni Porat氏と米プリンストン大学のElizabeth Levy Paluck氏によるこの研究の詳細は、「Frontiers in Social Psychology」に2月13日掲載された。  研究グループは今回、総計3,852人を対象にした4つの実験を通じて、職場で感情(怒り、悲しみ、感情を表さない)を実験的に操作し、その感情表現をする人が組織の中でどの程度の地位や権力、独立性、尊敬、年収を得るべきかを試験参加者に尋ねた。実験は、感情表現をする人物の性別だけでなく、感情を向ける対象(別の人物、別の状況)、感情を表すときの状況(面接、通常の就業日)も変えて検討した。

うつ病と診断された双極性障害患者の自殺企図リスク

 多くの場合、自殺には、原因となる精神疾患が関連している。うつ病と診断された双極性障害患者における自殺企図のリスク因子は、十分に明らかとなっているとは言えない。中国・北京大学のLin Chen氏らは、うつ病と診断された双極性障害患者における自殺企図の発生率および臨床的リスク因子を評価するため、本研究を実施した。Asian Journal of Psychiatry誌2024年3月4日号の報告。  対象は、中国の精神保健施設13施設より登録されたうつ病診断患者1,487例。うつ病と診断された双極性障害患者を特定するため、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を用いた。対象患者の社会人口統計学的および臨床的データを収集した。MINIを用いて、自殺企図を有する患者を特定した。

ストレスや託児所不足を理由に多くの医師が離職

 長時間で変動も多い勤務時間に対応可能な託児所を見つけることの困難さや育児にかかる費用が、子どもを持つ医師の大きなストレスのもととなっていることが、英国で実施された新たな調査から明らかになった。フリーランスのヘルスケアジャーナリストであるErin Dean氏がまとめたこの調査結果は、「The BMJ」に2月14日掲載された。調査結果からは、すでに医師を辞めたか辞めることを考えている人、より柔軟な働き方ができるように専門分野を変えた人、子どもを持つ計画を変更した人のいることが浮き彫りになったという。

認知症リスクと喫煙に対する歯の喪失の影響~JAGESコホート研究

 歯の喪失には、さまざまな原因があるが、その原因別に健康への影響を評価した研究は、これまでなかった。東北大学の草間 太郎氏らは、現在また過去の喫煙歴と認知症リスクとの関連が、歯の喪失により媒介されるかを評価した。Journal of Clinical Periodontology誌オンライン版2024年2月7日号の報告。  65歳以上の成人を対象に、9年間のフォローアッププロスペクティブコホート研究を実施した。アウトカムは2013~19年の認知症罹患率、エクスポージャーは2010年の喫煙状況(非喫煙、喫煙歴あり、現在の喫煙)、メディエーターは2013年の残存歯数(19本以下、20本以上)として評価した。媒介分析を用いてCox比例ハザードモデルを適合させ、歯の喪失による認知症発症に対する喫煙の自然間接効果(NIE)のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)、およびそれらの媒介比率を推定した。

抑うつ症状のある人は体温も高い

 抑うつと体温上昇は関連していることが、新たな研究で示唆された。どちらが原因であるのかまでは明らかになっていないものの、研究グループは、体温の調節が抑うつに対する新たな治療法となり得る可能性を示唆する結果だとの見方を示している。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)精神医学分野のAshley Mason氏らによるこの研究の詳細は、「Scientific Reports」に2月5日掲載された。  この研究では、2020年春からおよそ7カ月にわたって実施された研究(TemPredict Study)のデータを用いて、体温と抑うつとの関連が検討された。TemPredict Studyは、大規模集団の中から初期段階の新型コロナウイルス感染症患者を見つけ出すために市販のウェアラブルデバイス(以下、デバイス)で収集したデータを活用できるかどうかを検討した研究である。研究参加者はデバイスの装着により体温を測定したほか、体温計で測定した体温の報告も行っていた。また、毎月1回、電子メールを通じて抑うつ症状に関する調査に回答していた。自己報告による体温に関する解析は2万880人(平均年齢46.9歳、男性53%)、デバイスにより測定された体温に関する解析は2万1,064人(平均年齢46.5歳、男性56%)を対象に行われた。