精神科/心療内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:6

職場でのウェルネスプログラムは効果なし?

 多くの企業が、従業員に向けてマインドフルネス、ライフコーチング、睡眠の質の改善、その他多くの問題に焦点を当てた無料のウェルネスプログラムの利用を推奨している。しかし、このようなプログラムの中でウェルビーイングの向上に寄与するのはたった1種類に過ぎなかったことが、4万6,000人以上の英国人労働者を対象にした調査結果の解析から明らかになった。英オックスフォード大学のウェルビーイング・リサーチ・センターのWilliam Fleming氏によるこの研究結果は、「Industrial Relations Journal」に1月10日掲載された。  この研究は、Britain's Healthiest Workplace(BHW)調査の2017年と2018年のデータに基づくもの。BHW調査には、2014年から2018年の間に総計で233企業の従業員4万6,336人が参加し、繰り返し調査に回答していた。調査では、仕事の満足度やストレスレベルなどとともに、帰属意識や会社からのサポートレベル、トレーニングを受ける機会についても問われていた。Fleming氏は、個人レベルのウェルビーイングに対する介入の効果を、介入への参加者と非参加者の間で比較した。介入は、マインドフルネス、レジリエンス、ストレスマネジメント、リラクゼーションクラス、ウェルビーイングアプリなどで、その数は約90種類に及んだ。

高齢統合失調症患者の死亡リスクに対する薬物療法の影響

 人口の高齢化に伴い、統合失調症の罹患においても高齢者の有病率が増加しており、これまで以上に薬剤選択の重要性が増している。現在、高齢統合失調症患者に関するエビデンスが不足していることから、台湾・Far Eastern Memorial HospitalのJia-Ru Li氏らは、向精神薬の使用量および累積投与量が高齢統合失調症患者のすべての原因および原因別の死亡リスクに及ぼす影響を調査するため、コホート研究を実施した。Pharmaceuticals (Basel, Switzerland)誌2024年1月8日号の報告。  対象は、統合失調症と診断された高齢者6,433例。5年間のフォローアップ調査を実施した。抗精神病薬、抗うつ薬、気分安定薬、鎮痛薬/睡眠薬の用量(低用量群、中用量群、高用量群)に関連する死亡リスクを、各用量群と投与なし群とで比較を行った。各用量群におけるすべての原因による死亡率および特定の原因による死亡率を比較するため、Cox回帰を生存分析に用いた。特定の向精神薬の投与量を変数とし、それに応じて共変量を調整した。

日本のプライマリケアにおけるベンゾジアゼピン適切処方化への取り組み

 日本において、プライマリケアにおける質の向上(QI)に対する取り組みは、まだまだ十分とはいえない。QIにおいて重要な領域の1つとして、ベンゾジアゼピンの適切な処方が挙げられており、高齢化人口の増加が顕著なわが国においてとくに重要である。地域医療振興協会の西村 正大氏らは、日本のプライマリケアクリニックにおけるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZRAs)の処方中止に対する医療提供者へのQIイニシアチブの実現可能性について検討を行った。BMC Primary Care誌2024年1月24日号の報告。  調査対象は、2020~21年にBZRAs処方中止イニシアチブに参加した日本の準公立クリニック11施設および医療提供者13人。クリニック規模に応じて層別化し、参加施設を診療監査のみまたは診療監査とコーチングの実施の2群にランダムに割り付けた。診療監査のため、2つのBZRAs関連指標を参加施設に提示した。QIの活動をサポートするため、毎月コーチングミーティングをWebベースで実施した。9ヵ月間の実施後、半構造化インタビューにより、内容分析を用いてテーマを特定した。特定されたテーマを整理し、実装研究のための統合フレームワーク-CFIR-を用いて、主要な要素を評価した。

アルコール依存症の治療期間に応じた薬物療法の有用性~ネットワークメタ解析

 アルコール依存症やアルコール使用障害では、再発が多くみられることから、減酒治療をできるだけ長期間にわたり実施する必要がある。しかし、これまでのレビューでは治療期間が考慮されておらず、減酒治療が適切に評価されていない可能性がある。岡山済生会総合病院の小武 和正氏らは、アルコール依存症またはアルコール使用障害の患者における減酒薬物療法の有効性と安全性を治療期間に応じて評価するため、本研究を実施した。Addiction (Abingdon, England)誌オンライン版2024年1月3日号の報告。  15種類の薬剤を評価したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。2021年5月までに公表された研究をMEDLINE、Embase、PsycINFO、Cochrane Central Register of Controlled Trials、ClinicalTrials.gov、ICTRPより検索した。アウトカムは、多量飲酒日(HDD)、総アルコール摂取量(TAC)、有害事象、禁酒日数とした。

キノコと認知症リスク~日本での研究

 キノコは、食物繊維やいくつかの抗酸化物質が豊富な食材である。このようなキノコの食事摂取が認知症リスクの低下と関連しているかは、不明である。筑波大学の青木 鐘子氏らは、キノコ摂取と認知機能障害リスクとの関連を調査した。その結果、日本人女性において、キノコの食事摂取が認知機能障害リスクの低下と関連していることが示唆された。The British Journal of Nutrition誌オンライン版2024年1月19日号の報告。  1985~99年に毎年実施されていた心血管リスク調査に参加した3つの地域に在住する40~64歳の地域住民3,750人を対象に、プロスペクティブ研究を実施した。認知症による障害が認められた事例を、1999~2020年に調査した。脳卒中の既往歴の有無にかかわらず、キノコの摂取量に応じた認知症発症数のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。

双極性障害患者における摂食障害の有病率

 摂食障害と双極性障害は症状が類似しており、摂食行動や感情制御に根付いた特定の類似点が認められる。摂食障害と双極性障害の併存に関する研究は増えているものの、両疾患の同時進行に関する科学的データは十分に体系化されていない。ロシア・V.M. Bekhterev National Medical Research Center for Psychiatry and NeurologyのYana V. Yakovleva氏らは、双極I型およびII型障害患者におけるさまざまなタイプの摂食障害の有病率について、性別および両疾患の同時進行の臨床的特徴を考慮したうえで、スコーピングレビューを実施した。Consortium Psychiatricum誌2023年7月10日号の報告。  スコーピングレビューのためのPRISMAガイドラインに従い分析を行った。研究の検索にはMEDLINEデータベースを用いた。双極性障害および摂食障害と診断された患者に焦点を当てた研究を分析に含めた。摂食障害および双極性障害の診断の検証には、DSM-IV、DSM-5またはICD-10を用いた。レビュー結果の要約には、記述的分析法を用いた。

セマグルチドの使用は自殺念慮と関連しない

 2型糖尿病や肥満症治療のためにオゼンピックやウゴービなどのGLP-1受容体作動薬のセマグルチドを使用していても、GLP-1受容体作動薬の非使用者に比べて自殺念慮が高まる可能性はないことが、電子健康記録(HER)のデータベースを用いた大規模レビューにより明らかにされた。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部Center for Artificial Intelligence in Drug DiscoveryのRong Xu氏らが米国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて実施したこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に1月5日掲載された。  Xu氏は、2023年の夏にヨーロッパの規制当局が、セマグルチドに関連して自殺念慮が報告されたことを受けて調査に乗り出したことから、この問題に取り組むことを決めたと説明している。また、米食品医薬品局(FDA)も、最近公開された四半期報告書の中で、オゼンピックやウゴービを含む肥満症治療薬使用者から同様の報告があることを受けて調査中であることを明らかにしている。同氏は、セマグルチドを使用中の人では、アルコールや喫煙などの中毒性のある行動に対する興味が低下するという報告がある一方で、ヨーロッパではセマグルチドと自殺念慮の関連に関する調査が実施されたことに触れ、「一種のパラドックスとも言える状況が生じている」と話している。

ADHDは神経性無食欲症や大うつ病性障害の独立したリスク因子の可能性

 注意欠如・多動症(ADHD)は、神経性無食欲症や大うつ病性障害(MDD)などに対する独立したリスク因子であるとする研究結果が、「BMJ Mental Health」に9月5日掲載された。  アウグスブルク大学(ドイツ)のChrista Meisinger氏とDennis Freuer氏は、ADHDが、7種類の一般的な精神疾患〔MDD、双極性障害、不安障害、統合失調症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、神経性無食欲症、1回以上の自殺企図〕と関連するかを検討するため、2標本ネットワークのメンデルランダム化分析(MR、操作変数法の中で遺伝子変異を使用)を実施した。まず、単変数MRにより、全体効果(どの疾患がADHDと関係するのか)、および交絡または媒介因子となっているものを特定した。次に、多変数MRにより、いわゆる直接効果を計算して、ADHDが直接影響している程度を推定した。

日本における統合失調症患者の死亡率

 統合失調症患者は、一般集団と比較して、死亡率が高いといわれている。しかし、日本における統合失調症患者の死亡率を調査した最近の研究はなかった。ドイツ・ミュンヘン工科大学の野村 信行氏らは、日本における統合失調症患者の超過死亡率と死亡率に対するリスク因子を評価するため、レトロスペクティブ研究を実施した。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2024年1月20日号の報告。  対象は、2013年1月~2017年12月に山梨県立北病院で統合失調症または統合失調感情障害と診断された患者。統合失調症患者と一般集団の死亡率の比較には、標準化死亡率(SMR)を用いた。死亡率に対するリスク因子を推定するため、ロジスティック回帰分析を用いた。

ADHD治療薬、長期使用で心血管疾患リスク増大

 注意欠如・多動症(ADHD)の罹患者数は過去数十年で大幅に増加しており、治療薬の処方もそれに伴い増加している。ADHD治療薬には心拍数・血圧の上昇との関連が報告されているが、これに関し、重大な心血管疾患(CVD)との関連を調査した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLe Zhang氏らによる本研究の結果は、JAMA Psychiatry誌2024年2月1日号に掲載された。  2007~20年にスウェーデン国内でADHD診断を受けた、または同国で承認されたADHD治療薬である精神刺激薬(メチルフェニデート・アンフェタミン・デキストロアンフェタミン・リスデキサンフェタミン)および非精神刺激薬(アトモキセチン・グアンファシン)のいずれかの処方を受けた6~64歳の患者を対象に、ADHD治療薬の長期使用とCVD(虚血性心疾患・脳血管疾患・高血圧・心不全・不整脈・血栓塞栓症・動脈疾患・その他の心疾患)の関連を調査した。CVDの既往歴がある患者は除外され、ADHD治療薬の累積使用期間は14年以内であった。