日本発エビデンス|page:43

日本のがん遺伝子パネル検査、初回評価の結果は?/Int J Clin Oncol

 日本では2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険収載され、専門家で構成されるmolecular tumor board(エキスパートパネル)を備えた施設が検査実施施設として当局より指定されている。その実績に関する評価の結果が報告された。エキスパートパネルの標準化は、臨床現場でのがんゲノム医療の実装に重要な課題である。国立がん研究センター中央病院の角南 久仁子氏らは、中核病院でのエキスパートパネルの実績について初期評価を行い、臨床的意義付けの標準化についてさらに調査が必要であることを示した。International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年1月1日号掲載の報告。

双極I型うつ病に対するルラシドンの長期治療

 日本人を含む多民族の双極性うつ病の短期治療に対する抗精神病薬ルラシドンの有効性が示唆されている。CNS薬理研究所の石郷岡 純氏らは、双極性うつ病患者に対するルラシドンの長期治療に対する有効性および安全性を評価するため、28週間のオープンラベル試験での検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年12月8日号の報告。  ルラシドン(20~60mg/日、80~120mg/日)およびプラセボの6週間二重盲検比較試験を終了した患者を28週間の延長試験の対象とした。延長試験では、ルラシドン20~120mg/日のフレキシブルドーズで投与した。安全性については、有害事象、バイタルサイン、体重、心電図、臨床検査、自殺傾向、錐体外路症状の延長試験時のベースラインからエンドポイントまでの変化を評価した。有効性については、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)およびほかの指標で評価した。

日本人就労者における不眠症治療経過と作業機能障害との関係

 睡眠障害、とくに不眠症に対する薬物治療の治療段階が、日本人就労者の日中の仕事に及ぼす影響について、産業医科大学の大河原 眞氏らが、検討を行った。PLOS ONE誌2020年12月10日号の報告。  対象は、日本の企業15社において2015年に実施した作業機能障害のアンケート調査の回答者3万6,375人。公的健康保険のレセプトデータベースより抽出した回答者の医療データとアンケート結果を一緒に分析した。作業機能障害の測定には、作業機能障害スケール(WFun)を用いた。不眠症の治療状況は、過去16ヵ月の健康保険レセプトデータより抽出した、疾患や処方薬のデータを用いて把握した。治療中および治療期間外における重度の作業機能障害のオッズ比を推定するため、ロジスティック回帰分析を用いた。

日本人成人ADHD患者に対するグアンファシン徐放製剤の有効性と安全性

 塩野義製薬の納谷 憲幸氏らは、日本人成人の注意欠如多動症(ADHD)患者に対するグアンファシン徐放製剤(GXR)の有効性と安全性を評価した第III相二重盲検プラセボ対照ランダム化試験の事後分析を行い、ADHDサブタイプ(混合型、不注意優勢型)、年齢(31歳以上、30歳以下)、性別、体重別(50kg以上、50kg未満)のGXRの有効性および安全性について、検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年12月10日号の報告。  有効性の主要エンドポイントは、成人用ADHD評価尺度ADHD-RS-IV with adult prompts日本語版合計スコアのベースラインから10週目までの変化とした。

双極性障害患者における寝室の夜間光曝露と肥満との関係

 肥満や過体重は、双極性障害患者で非常に多く認められており、身体的な問題だけでなく精神疾患の発症リスクにも影響を及ぼす。藤田医科大学の江崎 悠一氏らは、双極性障害患者における寝室の夜間光曝露と肥満との関係を明らかにするため、横断的研究を行った。Physiology & Behavior誌オンライン版2020年12月8日号の報告。  対象は、双極性障害患者200例。就寝時から起床時までの寝室の光度は、携帯型光度計を用いて7夜連続で測定した。自己申告による身長と体重のデータよりBMIを測定し、BMI25kg/m2以上を肥満と定義した。

がんに存在する異常なmRNAの全長構造を同定/国立がん研究センター

 東京大学大学院新領域創成科学研究科の関 真秀特任助教と鈴木 穣教授らのグループは、国立がん研究センター先端医療開発センター免疫療法開発分野・中面哲也分野長らとの共同研究により、ナノポアシークエンサーで肺がんに存在する異常なmRNAの網羅的な同定をして、異常なmRNAから生じるペプチドが免疫細胞に認識されることを示した。  従来のシークエンサーは、RNAをばらばらに短くしてから配列を読み取っていたため、mRNAの全長配列を読み取ることはできなかった。それに対して、長い配列を読み取れるナノポアシークエンサーは、mRNAの全長配列を読み取ることができる。

ベンゾジアゼピン依存症自己申告アンケート日本語版を用いた睡眠薬使用障害の現状調査

 ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬は、不眠症治療において頻繁に用いられるが、長期使用は推奨されていない。適切な薬物療法を行うためには、BZD依存に関する現状や背景を明らかにする必要がある。東京女子医科大学の山本 舞氏らは、BZD依存症自己申告アンケート日本語版(Bendep-SRQ-J)を開発し、BZD使用障害に関する研究を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年12月1日号の報告。  開発元の許可を得てBendep-SRQ-Jを作成した。対象は、2012~13年にBZD治療を行った入院および外来患者。Bendep-SRQ-Jスコア、睡眠障害、身体的併存疾患、向精神薬、ライフスタイルに関するデータを収集した。症状重症度に関連する因子を特定するため、ロジスティック分析を行った。

日本人男性における周産期うつ病有病率~メタ解析

 周産期うつ病は、女性のみならず男性においても発症する精神疾患である。父親の周産期うつ病の有病率に関するこれまでの国際的なメタ解析では、異文化または社会経済的環境が父親のうつ病に影響を及ぼす可能性があることを示唆している。しかし、これらのデータが、日本人男性においても当てはまるかどうかは明らかでなく、日本人男性を対象とした報告は少ない。獨協医科大学の徳満 敬大氏らは、日本人男性における周産期うつ病の有病率を推定するため、検討を行った。Annals of General Psychiatry誌2020年11月18日号の報告。

母の子宮頸がん細胞が子に移行、国立がん研究センターが発表/NEJM

 国立がん研究センター中央病院の荒川 歩氏らは、小児の肺がん2例について、腫瘍組織と正常組織のペアサンプルを用いたルーチン次世代シークエンスで偶然にも、肺がん発症は子宮頸がんの母子移行が原因であることを特定したと発表した。移行したがん細胞の存在は同種の免疫応答によって示され、1例目(生後23ヵ月・男児)では病変の自然退縮が、2例目(6歳・男児)では腫瘍の成長速度が遅いことがみられたという。また、1例目は、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブを投与することで、残存するがん細胞の消失に結び付いたことも報告された。腫瘍組織と正常組織のペアサンプルを用いたルーチン次世代シークエンスは、わが国の進行がん患者を対象とした前向き遺伝子プロファイリング試験「TOP-GEAR」の一環として行われた解析で、114のがん関連遺伝子の変異を検出することを目的とする。1例目の患児に対するニボルマブ(3mg/kg体重を2週ごと)投与は、再発または難治固形がんを有する日本人患児を対象としたニボルマブの第I相試験で行われたものであった。症例の詳細は、NEJM誌2021年1月7日号で報告されている。

日本人うつ病就労者における職場での主観的事例の性差

 日本におけるうつ病患者数は、増加を続けている。うつ病による経済的影響には、アブセンティズム(欠勤や遅刻、早退など)とプレゼンティズム(心身の問題によるパフォーマンスの低下)の両方を介した生産性の低下がある。また、うつ病の有病率、発症経緯、自覚症状には、男女間で差があるといわれている。大阪市立大学の仁木 晃大氏らは、日本人うつ病就労者が、職場における問題をどのように認識しているかを調査し、うつ病の初期段階における職場での主観的な機能レベルの性差について検討を行った。Occupational Medicine誌オンライン版2020年11月28日号の報告。

統合失調症の新たな治療標的としてのPPARαの可能性

 統合失調症の病態生理は、いまだによくわかっていない。理化学研究所の和田 唯奈氏らは、統合失調症患者における核内受容体の一つであるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)/レチノイドX受容体(RXR)の役割について分析を行った。EBioMedicine誌2020年11月19日号の報告。  日本人統合失調症患者1,200例のDNAサンプルを用いて、分子反転プローブ(MIP)ベースのターゲット次世代シークエンシング(NGS)により、PPAR/RXR遺伝子のスクリーニングを行った。その結果について、日本のコホートデータ(ToMMo)やgnomADの全ゲノムシークエンスデータベースとの比較を行った。PPAR/RXR遺伝子の機能低下と統合失調症との関係を明らかにするため、Ppara KOマウスとフェノフィブラートを投与したマウスを用いて、行動学的、組織学的およびRNA-seq解析により評価を行った。

維持期双極性障害に対する薬物療法~ネットワークメタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、維持期の双極性障害患者に対する薬物療法において、どの抗精神病薬および/または気分安定薬が優れているかを調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2020年11月11日号の報告。  2020年5月22日までに公表された研究を、Embase、PubMed、CENTRALより検索した。2つのカテゴリーにおけるネットワークメタ解析を実施した。カテゴリー1には、単剤療法の研究および2種類の使用薬剤が特定された研究を含めた。カテゴリー2には、リチウム(LIT)またはバルプロ酸(VAL)と第2世代抗精神病薬(SGA:アリピプラゾール、ルラシドン、オランザピン、クエチアピン、ziprasidone)を併用し、プラセボ+LIT/VALと比較した研究を含めた。主要アウトカムは、いずれかの気分エピソードの再発再燃率とした。その他のアウトカムは、うつ病エピソードおよび躁病/軽躁病/混合エピソードの再発再燃率、中止率、死亡率、各有害事象とした。リスク比と95%信頼区間(CI)を算出した。

COVID-19へのシクレソニド、肺炎増悪抑制せず/国立国際医療研究センター

 COVID-19の治療薬候補として期待されているシクレソニドについて、肺炎のない軽症COVID-19患者90例を対象に肺炎の増悪抑制効果および安全性を検討した、全国21施設における多施設共同非盲検ランダム化第II相試験の結果、有効性が示されなかった。2020年12月23日、国立国際医療研究センターが発表した。米国含む海外にて実施されている検証的な臨床試験の結果も踏まえて判断する必要があるが、今回の研究結果からは無症状・軽症のCOVID-19患者に対するシクレソニド吸入剤の投与は推奨できないとしている。

brigatinib、日本人ALK陽性NSCLCでも有望(J -ALTA)/JTO

 日本人を対象とした、ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するbrigatinibの有効性と安全性を検討した第II相無作為化試験「J-ALTA試験」の結果が、がん研有明病院の西尾 誠人氏らにより論文発表された。多施設共同、単群非盲検による検討で、アレクチニブ難治性の日本人患者において、臨床的に意義のある有効性が示されたという。brigatinibは臨床的関連があるALK遺伝子変異に対して強力かつ幅広い活性を有するよう設計された次世代ALK-TKIであり、米国では本年承認された。Journal of Thoracic Oncology誌オンライン版2020年11月25日号掲載の報告。

HER2+進行乳がんへのペルツズマブ再投与でPFS延長(PRECIOUS)/SABCS2020

 ペルツズマブ、トラスツズマブ、および化学療法治療歴のある、局所進行または転移を有するHER2陽性乳がんに対し、3次/4次治療としてのペルツズマブ再投与が無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことが報告された。熊本大学の山本 豊氏が、第III相JBCRG-M05(PRECIOUS)試験の結果をサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表した。 ・対象:1次/2次治療としてペルツズマブ、トラスツズマブ、および化学療法による治療歴のある局所進行または転移を有するHER2陽性乳がん(ECOG PS 0-2、治療歴<4レジメン[直近のレジメンでペルツズマブ投与なし]、ベースライン時のLVEF≧50%)217例 ・試験群:ペルツズマブ+トラスツズマブ+主治医選択による化学療法* 108例 ・対照群:トラスツズマブ+主治医選択による化学療法* 109例

日本における自閉症の特徴を有する女性の産後うつ病と虐待リスク

 自閉症の特徴を有する女性が、出産後に母親となり、どのような問題に直面するかはあまりわかっていない。順天堂大学の細澤 麻里子氏らは、出産前の非臨床的な自閉症の特徴と産後うつ病および産後1ヵ月間の子供への虐待リスクとの関連、これらに関連するソーシャルサポートの影響について、調査を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2020年11月5日号の報告。  日本全国の出生コホートである子どもの健康と環境に関する全国調査(Japan Environment and Children's Study)より、精神疾患の既往歴のない単胎児の母親7万3,532人を対象とした。自閉症の特徴は、簡易自閉症スペクトラム指数日本語版を用いて、妊娠第2三半期/第3三半期に測定した。対象者を、自閉症スコアに基づき3群(正常、中等度、高度)に分類した。産後うつ病はエジンバラ産後うつ病尺度日本語版を、子供の虐待は自己報告を用いて、出産1ヵ月後に測定した。妊娠中のソーシャルサポートは、個々に収集した。データ分析には、ポアソン回帰を用いた。

統合失調症における抗精神病薬治療と抗うつ作用~メタ回帰分析

 統合失調症の陽性症状改善には、抗精神病薬が有用である。しかし、抗精神病薬の抗うつ効果および統合失調症の他の症状への影響については、よくわかっていない。福島県立医科大学の三浦 至氏らは、抗精神病薬の抗うつ効果が統合失調症の特定の症状に対する有効性と関連するかについて検討を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2020年11月5日号の報告。  成人統合失調症患者を対象として抗精神病薬の抗うつ効果を検討したランダム化二重盲検試験(RCT)を、電子データベースより検索した。ベースラインからの抑うつ症状の平均変化量についてメタ解析を実施し、他の症状への影響を調査するためメタ回帰分析を行った。

統合失調症スペクトラム障害患者における自閉症症状と自己スティグマの関連

 自己スティグマは、精神疾患患者の自尊心、QOL、自己効力感、治療アドヒアランス、寛解に悪影響を及ぼすことが知られている。自己スティグマに影響する性格特性を明らかにすることができれば、自己スティグマのマネジメントに役立つ情報が得られる可能性がある。これまでのメタ解析では、統合失調症患者は、健康対照者と比較し、自閉症スペクトラム指数(AQ)スコアが高いことが示唆されている。しかし、統合失調症スペクトラム障害患者における自閉症症状と自己スティグマとの関連はよくわかっていない。東北大学の小松 浩氏らは、この関連を明らかにするため、検討を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年10月29日号の報告。

感染経路が不明なCOVID-19症例は診断が遅れやすい/日本での調査

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の診断の大きな遅れ(long diagnostic delays:LDD)は、その後の患者隔離の効果が減少する可能性がある。わが国では当初、軽症の場合は発症から4日間待機という基準が示されたことから、茨城県土浦保健所の緒方 剛氏らは、曝露経路が不明なCOVID-19症例ではLDDが大幅に増加したと想定し、COVID-19症例のLDDの割合と曝露経路検出の関連を調査し報告した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌オンライン版2020年11月21日号に掲載。

研修医は総合診療科も研修したほうがいい

 近年、医師の初期臨床研修において総合診療領域は重要視されている。実際、総合診療科(GM)を研修ローテートした研修医の臨床能力はどの程度向上するのだろう。順天堂大学医学教育研究室 西崎 祐史氏らは、全国の臨床研修施設で調査を行い、初期臨床研修医の基本的臨床能力評価試験(GM-ITE)のスコアとGMローテートとの関連性を評価した。  本研究は、2016~18年にJAMEP基本的臨床能力評価試験を受験した初期研修医1万1,244人を対象とした多施設共同横断研究である。  研究方法として、教育環境(病院情報を含む)とGM-ITE総合スコアとの関連をマルチレベル分析にて評価した。