日本発エビデンス|page:46

日本人双極I型うつ病に対するルラシドン単剤療法~二重盲検プラセボ対照試験

 主に米国と欧州で実施されたこれまでの研究において、双極I型うつ病に対するルラシドン(20~120mg/日)の有効性および安全性が報告されている。理化学研究所 脳神経科学研究センターの加藤 忠史氏らは、日本人を含む多様な民族的背景を有する患者において、双極I型うつ病に対するルラシドン単剤療法の有効性および安全性を評価した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年8月22日号の報告。  対象患者を、ルラシドン20~60mg/日群(182例)、同80~120mg/日群(169例)、プラセボ群(171例)にランダムに割り付け、6週間の二重盲検治療を実施した。主要評価項目は、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)のベースラインから6週目までの変化とした。

日本における若年性認知症の有病率とサブタイプ

 若年性認知症患者の生活には、その年代に合った社会的支援が求められる。最新情報を入手し、適切なサービスを提供するためには、疫学調査が必要である。東京都健康長寿医療センター研究所の粟田 主一氏らは、若年性認知症の有病率、サブタイプの内訳、患者が頻繁に利用するサービスを明らかにするため、調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2020年8月19日号の報告。  本研究は、マルチサイト人口ベース2ステップ研究として実施された。全国12地域(北海道、秋田県、山形県、福島県、茨城県、群馬県、東京都、新潟県、山梨県、愛知県、大阪府、愛媛県[対象となる人口:1,163万322人])の医療機関、介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所、相談機関などを対象にアンケートを実施した。ステップ1として、過去12ヵ月間で若年性認知症患者がサービス求めたかまたは滞在したかを調査した。ステップ1で「はい」と回答した施設に追加のアンケートの協力を求め、若年性認知症患者へ質問票を配布し、認知症サブタイプなどのより詳細な情報を収集した。

脳画像データの機械学習を用いた統合失調症と自閉スペクトラム症の鑑別

 神経精神疾患の診断は、問診による臨床症状に基づいて行われるため、難しい部分がある。ニューロイメージングなどの客観的なバイオマーカーが求められており、機械学習と組み合わせることで確定診断の助けとなり、その信頼性を高めることが可能である。東京大学のWalid Yassin氏らは、統合失調症患者、自閉スペクトラム症(ASD)患者、健常対照者から得た磁気共鳴画像(MRI)の脳構造データを用いて機械学習を行い、鑑別診断のための機械学習器の開発を試みた。Translational Psychiatry誌2020年8月17日号の報告。

アンジェスの新型コロナワクチン、阪大病院での第I/II相試験開始

 9月8日、アンジェスは、新型コロナウイルス感染症向けDNAワクチンについて、大阪大学医学部附属病院で第I/II相試験を開始したと発表した。同社によると、開発は計画通り進んでおり、接種完了後、経過観察を経て、大阪市立大学医学部附属病院および大阪大学医学部附属病院での第I/II相試験成績を総合的に判断する速報結果を2020年第4四半期に公表する予定という。  大阪市立大学医学部附属病院における第I/II相試験(低用量群15 例および高用量群15 例、筋肉内に2週間間隔で2回接種)は、6月末に開始され、8月半ばに接種が完了している。今回の大阪大学医学部附属病院における第I/II相試験では、用量2mgで、10例による2週間間隔での2回接種、10例による4週間間隔での2回接種、10例による2週間間隔での3回接種の計30例を目標としている。試験期間は、1回目の接種から52週間のフォローアップ期間を含み、2021年9月30日までの予定。

急性期統合失調症に対するルラシドンの有用性~国内第III相試験のネットワークメタ解析

 急性期統合失調症に対するルラシドンの国内第III相試験の結果では、その有効性に一貫性がないことから、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、これらの試験のシステマティックレビューおよびランダム効果モデルネットワークメタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年8月7日号の報告。  日本での急性期統合失調症に対する二重盲検ランダム化試験を分析対象とした。有効性のアウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計、陽性尺度、陰性尺度、総合精神病理尺度の各スコア、臨床全般印象度(CGI-S)スコアの改善および治療反応率とした。中止率および有害事象の発生率も併せて評価した。

新型コロナワクチンAZD1222、日本での第I/II相臨床試験を開始/アストラゼネカ

 9月4日、アストラゼネカは、新型コロナウイルスワクチンAZD1222の日本国内における第I/II相臨床試験を開始したことを発表した。国内の複数の施設で18歳以上の被験者約250名を対象に実施し、日本人に接種した際の安全性と有効性を評価していく。  AZD1222は、アストラゼネカと英オックスフォード大学と共に開発を進めており、世界各国で治験を行っている。現在、南アフリカで第I/II相試験、英国で第II/III相試験、ブラジル・米国で第III相試験を実施している。

乳がんに対するsiRNA核酸医薬候補、医師主導治験開始/がん研有明病院

 がん研究会有明病院は9月2日、東京大学医科学研究所らと共同研究を進めてきたsiRNA核酸医薬候補の乳がん治療薬(SRN-14/GL2-800)を用いて、医師主導治験(First In Human 試験)を開始したことを発表した。  SRN-14/GL2-800は、幹細胞関連転写因子であるPR domain containing 14 (PRDM14)分子に対する、キメラ型siRNAとそのナノキャリアーから構成される化合物。川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)、東京大学、東京大学医科学研究所が共同で開発した。

COVID-19での嗅覚・味覚障害、アジア人と白人で3倍の差:メタ解析

 新型コロナウイルス陽性例ではかなりの割合で嗅覚・味覚障害が認められる。しかし、発現率は報告によって大きく異なり、その理由は不明である。米国・ネバダ大学リノ校のChristopher S. von Bartheld氏らは、系統的レビューとメタ解析を実施し、嗅覚・味覚障害の有病率について統合解析を行ったところ、白人がアジア人の3倍高いことがわかった。ACS Chemical Neuroscience誌オンライン版2020年9月1日号に掲載。  著者らは、米国国立衛生研究所のCOVID-19ポートフォリオを検索し、COVID-19患者の嗅覚・味覚障害の有病率を報告した研究を調査した。3万8,198例を含む104件の研究を適格と判断し、系統的レビューとメタ解析を行った結果、推定ランダム有病率は、嗅覚障害が43.0%、味覚障害が44.6%、全体で47.4%であった。

ACE阻害薬とARBがCOVID-19重症化を防ぐ可能性/横浜市立大学

 新型コロナウイルスは、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介して細胞に侵入することが明らかになっており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とレニン-アンジオテンシン系(RAS)との関連が注目されている。  今回、横浜市立大学附属 市民総合医療センター 心臓血管センターの松澤 泰志氏らの研究グループが、COVID-19罹患前からのACE阻害薬またはARBの服用と重症度との関係について、多施設共同後ろ向きコホート研究(Kanagawa RASI COVID-19 研究)を行った。Hypertension Research誌オンライン版2020年8月21日号での報告。

統合失調症患者の肥満と白質微細構造障害との関連

 国立精神・神経医療研究センターの秀瀬 真輔氏らは、統合失調症患者の肥満(BMI 30以上)と症状、向精神薬、全脳構造との関連について調査を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2020年8月5日号の報告。  対象は、日本人統合失調症患者65例(平均年齢:37.2±11.3歳、女性:32例)で、全員が右利きであった。症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。肥満と灰白質および白質構造との関連を分析するため、ボクセル ベース形態計測(VBM)および拡散テンソル画像(DTI)を用いた。

治療抵抗性統合失調症の認知プロファイルと自閉スペクトラム症の特徴

 治療抵抗性統合失調症(TRS)の複雑な病態生理には、重度の陽性症状だけでなく、ほかの症状領域も含まれている。また、統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)の重複する心理学的プロファイルは、明らかになっていない。千葉大学の仲田 祐介氏らは、統合失調症とASD患者における神経発達および認知機能に焦点を当て、比較検討を行った。Schizophrenia Research. Cognition誌2020年7月27日号の報告。  対象は、TRS患者30例、寛解期統合失調症(RemSZ)患者28例、ASD患者28例。一般的な神経認知機能はMATRICSコンセンサス認知機能評価バッテリーを用いて評価し、社会的な認知機能は心の理論(theory of mind)と感情表出(emotional expression)で評価した。自閉症の特徴は、自閉症スペクトラム指数(AQ)、自閉症スクリーニング尺度(ASQ)、広汎性発達障害評価尺度(PDDRS)を用いて評価した。

双極性障害とうつ病患者における不安症の有病率とその関連因子

 気分障害の患者では、不安症が併発すると、うつ症状の持続、QOL低下、自殺リスク上昇、抗うつ薬治療による気分の不安定化などの悪影響が認められる。しかし多くの場合、このことは臨床診断で認識されていない。東京医科大学の井上 猛氏らは、以前報告したJET-LMBP研究のデータを用いて、日本人気分障害患者における不安症の有病率とその関連因子を調査し、不安症の併発を確認するのに役立つ方法を検討した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2020年7月12日号の報告。  双極性障害患者114例、うつ病患者334例を分析した。不安症の併発は、精神疾患簡易構造化面接法(MINI)を用いて確認した。人口統計学的および臨床的特徴は、日本語版自己記入式簡易抑うつ尺度日本語版(QIDS-SR-J)、SF-36、Child Abuse and Trauma Scale(CATS)を用いて評価した。不安症の併発に関連する因子は、年齢、性別、抑うつ症状の重症度で調整した多変量ロジスティック回帰分析を用いて特定した(事後分析)。

レビー小体型認知症が疑われる患者の初期症状と診断時の特徴

 レビー小体型認知症(DLB)は、さまざまな初期症状がみられるが、多くのDLBの症例に焦点を当てた報告は、これまでほとんどなかった。北海道・砂川市立病院の内海 久美子氏らは、診断時にDLBおよびDLB関連症状が認められた患者234例を対象に、初期症状をレトロスペクティブに評価し、症状プロファイルの性差について検討を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2020年8月2日号の報告。  対象は、2017年に改訂されたDLBの臨床診断に関するコンセンサス基準を満たした、DLBの可能性の高い患者234例。DLBは、ドパミントランスポーターシンチグラフィと123 I-MIBG心筋シンチグラフィで確認した。脳灌流は、SPECTを用いて測定した。これらに加えて、中心および補助的な臨床的特徴を考慮した。

日本人女性の食事パターンとうつ病との関連

 健康的な食事や地中海式の食事のような質の高い食事パターンは、うつ病の予防と関連しているといわれている。昭和女子大学の小西 香苗氏は、西洋的な食事パターンとは異なる健康的な日本の食事パターンが、日本人女性の抑うつ症状と関連しているかについて、調査を行った。Public Health Nutrition誌オンライン版2020年7月17日号の報告。  長野県の20~72歳の日本人女性1,337例を対象に横断的研究を行った。うつ症状は、米国国立精神衛生研究所でうつ病の疫学研究用に開発された自己評価尺度(CES-D Scale)を用いて評価を行った。食事パターンは、検証された簡便な食事歴アンケートを用いて評価し、56食品の摂取量から成分分析を行った。

日本人COVID-19死亡例、80代と2型糖尿病併存で最多

 メディカル・データ・ビジョン株式会社(以下、MDV)は、自社診療データベースから新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の死亡事例を調査。その結果、2020年2月~5月までの期間の死亡者は110例(男性:77例 、女性:33例)で、年代別では80代が4割超を占めていることが明らかになった。また、併存疾患では2型糖尿病が最も多かった。  主な結果は以下のとおり。 ・年代別では、90代が17例(15.5%)、80代が48例(43.6%)、70代が33例(30%)、60代が7例(6.4%)、50代が5例(4.5%)だった。100歳以上と40代から下の年齢層はいなかった。

わが国の急性心不全患者の実態は?1万3千例の調査(JROADHF)/日本循環器学会

 急性心不全の入院患者における全国多施設共同後ろ向き観察研究のJROADHF(Japanese Registry Of Acute Decompensated Heart Failure)研究の結果が、第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で、井手 友美氏(九州大学医学研究院循環器病病態治療講座)より発表された。全体として、左室収縮能が保持された心不全(HFpEF)が多く、予後は依然として悪いことが示唆された。  JROADHF研究の対象患者は、日本循環器学会が実施している循環器疾患診療実態調査(JROAD)からランダムに抽出した施設で、2013年1月1日~12月31日の1年間にJROAD-DPCに登録された16歳以上の急性心不全の入院患者で、1万3,238例が登録された。

DOAC服用心房細動患者のイベント発生予測因子/日本循環器学会

 心房細動患者の抗凝固薬治療と予後を調べた多施設共同前向き観察研究であるRAFFINE研究から、直接経口抗凝固薬(DOAC)服用患者における脳梗塞および全身塞栓症の独立した予測因子として年齢、糖尿病、脳梗塞の既往が、また重大な出血の独立した予測因子として年齢、脳梗塞の既往が示唆された。第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で宮崎 彩記子氏(順天堂大学医学部循環器内科)が発表した。  RAFFINE研究は、心房細動治療の実態把握とDOAC服用者におけるイベント発生の予測因子の調査を目的とした前向き研究である。

PPI服用や便秘がフレイルに影響

 フレイルと腹部症状の関連性はこれまで評価されていなかったー。今回、順天堂東京江東高齢者医療センターの浅岡 大介氏らは病院ベースの後ろ向き横断研究を実施し、フレイルの危険因子として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用、サルコペニア、低亜鉛血症、FSSG質問表(Frequency Scale for the Symptoms of GERD)でのスコアの高さ、および便秘スコア(CSS)の高さが影響していることを明らかにした。Internal Medicine誌2020年6月15日号掲載の報告。  同氏らは、2017~19年までの期間、順天堂東京江東高齢者医療センターの消化器科で、65歳以上の外来通院患者313例をフレイル群と非フレイル群に分け、フレイルの危険因子を調査した。患者情報として患者プロファイル、骨粗しょう症、サルコペニア、フレイル、栄養状態、上部消化管内視鏡検査の所見、および腹部症状の質問結果(FSSG、CSS)を診療記録から入手した。

日本人高齢者における認知症の生涯累積発症率

 日本のコミュニティ在住の高齢者における認知症の累積発症率とそのサブタイプを推定するため、九州大学の吉田 大悟氏らが検討を行った。Neurology誌オンライン版2020年7月7日号の報告。  コミュニティ在住で60歳以上の日本人高齢者1,193例を対象に、17年間プロスペクティブにフォローアップを行った。認知症の累積発症率は、ワイブル比例ハザードモデルを用いて算出した各年の死亡や認知症がない生存関数および認知症のハザード関数に基づいて推定した。認知症の生涯リスクは、母集団の生存確率が0.5%未満と推定された時点での認知症の累積発症率と定義した。

高齢者の睡眠時間と認知症発症因子はどう関連するか?

 高齢者における生活習慣因子と皮質アミロイド負荷および脳グルコース代謝の関連を調べた研究において、総睡眠時間が軽度認知障害の高齢者の脳機能と関連することを示す結果が得られた。大分大学の木村 成志氏による報告で、JAMA Network Open誌2020年7月9日号に掲載された。  本研究は2015年に開始された前向きコホート研究であり、大分県臼杵市において、認知症既往のない65歳以上の成人を対象とした。データ収集は2015年8月~2017年12月、分析は2019年6月に行われた。