日本発エビデンス|page:40

統合失調症に対する抗精神病薬治療の有効性と安全性~日本でのRCTを用いたメタ解析

 さまざまな人種や民族のデータをプールした解析では、生物学的および環境的な不一致性が問題となる場合がある。そこで、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、日本で実施された統合失調症に対する抗精神病薬治療のランダム化比較試験(RCT)のみを使用して、統合失調症に対する抗精神病薬の有効性および安全性の検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年4月30日号の報告。  Embase、PubMed、CENTRALより、文献検索を行った。主要アウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアの改善およびすべての原因による中止とした。副次的アウトカムは、PANSSサブスケールスコアの改善、有害事象または効果不十分による中止、16種の有害事象発生率とした。平均差またはリスク比と95%信頼区間を算出した。

卵巣がん患者のペイシェントジャーニー共同研究/富士通・武田・国がん

 富士通および武田薬品工業は、2021年5月17日、国がん研究センターと卵巣がん患者がたどる「疾患の認識、診断、治療、その後の生活に至る道のり」であるペイシェントジャーニーの分析・可視化に関する共同研究契約を締結した。  同研究は、卵巣がんの個別化治療の質向上、および治療結果向上に寄与する臨床の課題抽出を目的として開始したものである。本研究では、国がん研究センター東病院が保有する電子カルテシステムから抽出した日々の診療や個人の健康管理などから得られるデータ(リアルワールドデータ)を用い、従来の臨床試験やレセプトデータといった手法では取得困難であった、卵巣がん患者のペイシェントジャーニーに関する情報を分析・可視化する。国がん研究センター東病院および先端医療開発センターにおいて2022年4月30日まで実施する。

日本におけるアルツハイマー病と歯数との関連

 日本人高齢者における残存または欠損している歯数とアルツハイマー病との関連について、日本歯科総合研究機構の恒石 美登里氏らは、レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて、横断的な分析を行った。PLOS ONE誌2021年4月30日号の報告。  歯周病(400万9,345例)またはう蝕(虫歯)による抜歯(66万2,182例)の治療を行った60歳以上の患者を対象に、歯科医療レセプトデータを用いて、残存または欠損している歯数に関するデータを収集した。これらの歯数に関するデータとアルツハイマー病の診断を含む医療データを組み合わせて分析を行った。残存する歯数および第3大臼歯(親知らず)を除く欠損している歯数は、歯科医療レセプトの歯科用式を用いて算出し、それぞれ3群に分類した。アルツハイマー病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)の算出には、年齢、性別で調整した後、ロジスティック回帰モデルを用いた。

生活習慣病に対する薬物療法の実効的カバレッジが上昇

 生活習慣病リスク因子に対する、薬物療法の実効的カバレッジ(保健システムを通して、実際に人々に健康増進をもたらすことができる割合)が上昇していることが、医薬基盤・健康・栄養研究所の池田 奈由氏らによって明らかにされた。LDLなどのコレステロール値はスタチン系薬剤によって効果的に抑えられている一方、降圧薬および糖尿病治療薬の有効性を改善するにはさらなる介入が必要だという。Journal of Health Services Research & Policy誌2021年4月号の報告。  保健システム評価指標を用い、日本における高血圧症、糖尿病および脂質異常症治療に対する健康介入の実効的カバレッジについて、その傾向を分析した。

非小細胞肺がん2次治療以降のnab-パクリタキセル、ドセタキセルに非劣性(J-AXEL)/JTO

 既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対するnab-パクリタキセルの有効性と安全性を評価する無作為化非盲検非劣性第II相J-AXEL試験の結果が発表された。 ・対象:既治療(2レジメン以内)の進行NSCLC患者 ・試験群:nabパクリタキセル(n-PTX) ・対照群:ドセタキセル(DTX) ・評価項目: [主要評価項目]全生存期間(OS)非劣性検証 [副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全奏効割合(ORR)、安全性、QOLなど

メランコリアに特徴的な5つの主観的症状

 近年、うつ病と診断される患者には、さまざまな病態の抑うつ症状患者が含まれていることから、メランコリアが再評価されている。しかし、メランコリアのDSM-5基準(DSM-MEL)を用いて、メランコリーうつ病と非メランコリーうつ病を明確に鑑別することは困難であり、DSM-MELでは不十分であるともいわれている。メランコリアの特徴で唯一、定量的に評価できる精神運動障害は、重要な指標であると考えられる。虎の門病院分院の玉田 有氏らは、精神運動障害と関連する症状を分析し、メランコリアの主観的症状を客観的に特定する試みを行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年4月19日号の報告。

治療抵抗性統合失調症患者におけるオキシトシン系機能障害

 治療抵抗性統合失調症(TRS)は、重度の陽性症状のみならず他の症状とも関連する非常に複雑な病態生理を有している。また、統合失調症では、自閉スペクトラム症と重複する心理的および生物学的プロファイルが注目されている。千葉大学の仲田 祐介氏らは、治療抵抗性統合失調症患者におけるオキシトシン系機能障害について、検討を行った。Journal of Psychiatric Research誌オンライン版2021年3月30日号の報告。  TRS患者30例、寛解期統合失調症(RemSZ)患者28例、ASD患者28例を対象に、一般的な認知機能および社会的認知機能障害とオキシトシン系機能障害との関連について、比較検討を行った。

日本人高齢者における認知症リスクと音楽活動

 認知症リスクの低減のために、余暇の認知活動が推奨されている。大阪大学のAhmed Arafa氏らは、日本人高齢者における認知症リスクとさまざまな音楽活動との関連について調査を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2021年4月6日号の報告。  日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクトに参加した65歳以上の高齢者5万2,601人を対象に、縦断的データを分析した。楽器演奏、カラオケ、合唱、民謡などの音楽活動についてアンケートを用いて評価した。認知症の診断には、介護保険制度で標準的に使用される認知症尺度を用いた。Cox回帰を用いて、音楽活動に関連した認知症のハザード比および95%信頼区間(CI)を算出した。

うつ病と職場や家族のストレスに対する職場のソーシャルキャピタルの影響

 日本では、労働者のメンタルヘルスが問題となっている。公務員の労働環境は、過度なストレスを伴うことが多くなり、うつ病予防の必要性が増している。職場や家庭でのストレスに加えて、ソーシャルキャピタルがうつ病と関連していることが報告されている。敦賀市立看護大学の中堀 伸枝氏らは、うつ病と職場でのストレスまたは家庭でのストレスの軽減に対する職場のソーシャルキャピタルの影響について調査を行った。BMC Public Health誌2021年4月14日号の報告。

統合失調症維持療法における経口剤とLAIとの比較~メタ解析

 統合失調症に対する抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)と経口剤を比較したエビデンスでは、研究デザインが一貫していない。慶應義塾大学の岸本 泰士郎氏らは、臨床的意思決定における情報を整理するため、抗精神病薬LAIと経口剤のベネフィットを比較した3つの研究デザインのエビデンスを評価した。The Lancet. Psychiatry誌2021年5月号の報告。  統合失調症に対する抗精神病薬のLAIと経口剤を比較したランダム化比較試験(RCT)、コホート研究、事後分析研究について、包括的なシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。MEDLINE、PubMed、Cochrane Library、Scopus、Embaseより、2020年3月13日までに公表された研究を、言語制限なしで検索した。未公表の研究およびClinicalTrials.govについても検索した。統合失調症および関連障害を有する成人を対象として、6ヵ月以上継続した研究を選択した(参加者の80%以上)。penfluridol(LAIまたは毎日の経口投与でないため)を用いた研究、症例報告、患者数が20例未満の症例シリーズは対象研究より除外した。独立した2人の研究者がデータを抽出し、3人目の研究者が不一致性を改善した。必要に応じて、研究著者に連絡し、追加情報を入手した。主要アウトカムは、抗精神病薬のLAIと経口剤による入院または再発のリスク比(RR)とし、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った(再発よりも入院を優先して使用)。2次分析により、入院と再発の優先順位を入れ替えて、入院リスクおよび再発リスクを個別に評価した。副次的アウトカムは、メタ解析可能なすべてのデータとし、有効性、安全性、QOL、認知機能、その他のアウトカムにより分類し、研究デザインごとに分析を行った。2値アウトカム(dichotomous outcome)はプールされたRR、連続アウトカム(continuous outcome)は標準平均差(SMD)を用いて評価した。

「高齢者糖尿病の血糖管理目標(HbA1c値)」と死亡リスクの関係

 日本糖尿病学会と日本老年医学会は「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」を公表し、患者を3つのカテゴリーに分類している。しかしその妥当性に関して本邦の縦断研究に基づくエビデンスは不足していた。東京都健康長寿医療センターの荒木 厚氏・大村 卓也氏らはJ-EDIT研究のデータを用い、認知機能、手段的ADL、基本的ADL、併存疾患による種々のカテゴリー分類と死亡リスクとの関連を検討。身体機能と認知機能に基づく分類および併存疾患数に基づく分類が死亡リスクの予測因子となることに加え、8つの簡便な質問項目でカテゴリー分類が可能となることが明らかとなった。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版4月22日号の報告より。

日本におけるアルツハイマー病に伴う経済的負担

 アルツハイマー病は、日本における介護の主要な原因の1つである。国際医療福祉大学の池田 俊也氏らは、65歳以上の日本のアルツハイマー病患者を対象に、2018年度の年間医療費や介護費、さらに家族による個人的な介護ケアの費用や生産性の損失がどの程度かについて調査を行った。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2021年3月23日号の報告。  文献レビューによるレポートを用いて、臨床的認知症尺度(CDR)スコアにより疾患重症度で分類したうえで、アルツハイマー病の医療費と介護費を推定した。介護に費やされた時間的コストは、20~69歳のアルツハイマー病家族の介護による生産性の損失とすべての個人的な介護ケアの費用として算出した。

日本における双極性障害の治療パターンと服薬アドヒアランス

 東京医科大学の井上 猛氏らは、日本における双極性障害患者に対する治療パターンと服薬アドヒアランスについて調査を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年3月18日号の報告。  株式会社JMDCの雇用関連レセプトデータベースを用いて、2013年7月~2018年2月に双極性障害と診断された成人患者を特定した。気分安定薬または抗精神病薬の治療パターンとアドヒアランス(proportion of days covered:PDC[処方日数を調査対象期間の日数で除した割合]で測定)について、フォローアップ期間中の1~3年目に評価した。患者サブグループのアドヒアランスについても評価した。

研修医の基本的臨床能力獲得に施設間差

 2年にわたる新型コロナウイルス感染症の流行という異例の社会環境の中で、本年度の初期臨床研修がスタートした。感染症流行下で患者さんの診療控えなどもあり、臨床研修病院では初期臨床研修医の教育に例年にない苦労があると聞く。  さて、初期臨床研修医の基本的臨床能力の向上について、研修先の施設間で差は生まれるのであろうか。JAMEP(Japan Institute for Advancement of Medical Education Program)が開発した、初期臨床研修医の客観的な臨床能力を測る基本的臨床能力評価試験(GM-ITE: General Medicine In-Training Examination)の解析結果から、大学病院で研修を受けた初期臨床研修医は、市中病院で研修を受けた初期臨床研修医よりもGM-ITE合計スコアが、低い傾向にあることが報告されてきている。しかながら、基本的臨床能力を構成するいくつかの要素のうち、どの要素に差があるのか、その詳細については明らかになっていない。そこで、順天堂大学医学部 医学教育研究室 西﨑 祐史氏らは、GM-ITEの結果を用い、この疑問を解決するべく観察研究を実施した。

メマンチンによるPTSD治療の有効性

 現在、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する薬理学的治療の選択肢は十分でなく、新たな薬物治療アプローチの開発が待たれている。国立精神・神経医療研究センターの堀 弘明氏らは、一般人のPTSDに対するNMDA受容体拮抗薬であるメマンチンの有効性および安全性を評価するため、12週間のオープンラベル臨床試験を実施した。European Journal of Psychotraumatology誌2021年1月15日号の報告。  対象は、一般人女性のPTSD成人患者13例(DSM-IV基準)。対象患者には、4週目までは毎週、その後は12週目まで4週間ごとに外来診療を行った。各患者の現在の治療薬に、メマンチン5mg/日を追加し、その後用量調整を行った。基本的に併用薬は、試験期間中に変更しなかった。主要アウトカムは、外傷後ストレス診断尺度(PDS)で評価したPTSD診断および重症度とした。

全がん・がん種別の10年生存率を初集計/国立がん研究センター

 国立がん研究センターは、全国のがん診療連携拠点病院等から収集した院内がん登録情報を用いて、2008年に診断された患者の10年生存率を発表した。がん診療連携拠点病院等をはじめとする国内240施設約24万例の登録データを集計したもので、10年生存率が発表されるのは初、既存の10年生存率集計としては最大規模となる。  がん種別には、胃がん、大腸がん、肝細胞がん・肝内胆管がん、小細胞肺がん・非小細胞肺がん、女性乳がん、食道がん、膵臓がん、前立腺がん、子宮頸がん・子宮内膜がん、膀胱がん。肺がんや子宮がんをさらに分類した上で、Stage別のデータも集計された。

コロナの現状を鑑み、識者らが東京五輪の再考求め提言/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はここへ来て急拡大の様相を呈している。これに対し政府は、東京など4都府県に対し緊急事態宣言を発出。まん延防止等重点措置よりも強い規制力をもって感染拡大を抑え込みたい考えだ。それは今夏に延期・開催が予定されている東京オリンピックまで3ヵ月を切り、待ったなしの状況への強い憂慮にほかならない。そんな状況の中、4月14日付のBMJ誌に、「大会の安全管理には重大な疑問があり、再考すべき」と断じる論文(エディトリアル)が掲載された。

日本の農家における不眠症と寝酒・迎え酒との関係

 眠りを補助するための寝酒、酔い覚ましや二日酔いを軽減させるための朝の迎え酒のようなアルコール摂取を行う人は少なくない。島根大学の佐藤 利栄氏らは、日本の農家で働く健康な中年における不眠症と寝酒や迎え酒との関連について検討を行った。Alcohol誌オンライン版2021年3月18日号の報告。  746人(平均年齢:59.5歳、女性の割合:25.9%)を対象に自己記入アンケートを用いて、横断的研究を実施した。不眠症の定義には、日本語版アテネ不眠尺度6以上または前年の睡眠薬使用とした。性別、年齢、睡眠障害の有無、アルコール摂取頻度、1回当たりのアルコール摂取量で調整した後、寝酒と迎え酒に関連する不眠症のオッズ比(OR)を算出するため、ロジスティック回帰を用いた。

日本における認知症専門チームに対する金銭的インセンティブの効果

 これまで、急性期治療環境下における認知症治療の質は批判的にみられていた。2016年に日本において、急性期病院の認知症専門家チームによる認知症ケアに対する金銭的インセンティブが導入された。筑波大学の森田 光治良氏らは、この金銭的インセンティブが、短期的な結果(院内死亡率および30日間の再入院)に対して有用であったかを調査した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2021年3月17日号の報告。

統合失調症患者におけるアセナピンとブレクスピプラゾールの治療継続率

 東京・車庫前こころのクリニックの井上 雄一氏らは、アセナピンとブレクスピプラゾールの治療継続率の比較およびブレクスピプラゾールの臨床効果に影響を及ぼす因子を特定するため、検討を行った。Brain and Behavior誌オンライン版2021年3月13日号の報告。  実臨床下で、アセナピン(73例)またはブレクスピプラゾール(136例)を処方した統合失調症患者を対象に、レトロスペクティブ研究を行った。  主な結果は以下のとおり。